説明

振動及び音響ノイズを減衰させるための装置及び方法

【課題】様々な用途でかつある範囲の動作条件や周波数にわたり十分な吸収を提供できる振動及び音響ノイズを減衰させるためのデバイス及び方法を提供すること。
【解決手段】振動及び音響ノイズを減衰させる装置(20)及び方法を提供する。一装置は、振動周波数に基づいた周波数応答を規定するために変形に対して所定の抵抗レベルを有する非金属材料から形成された第1層(22)を含む。この非金属材料は、少なくとも1つの正弦曲線によって規定されるプロフィールを有する。本装置はさらに、第1層と結合された吸収層を規定している第2層(26)を含む。この第2層は第1層に隣接して質量体を追加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示した主題は全般的には振動及びノイズの吸収体に関し、またさらに詳細には振動及び音響ノイズを減衰させるためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機械や構造の動作時において、振動及び音響ノイズが発生することがある。例えばこうした機械や構造は、ある状況において不快となるような大きな音響ノイズを放出することがある。さらに様々な構成要素の大きな振動によって機械や構造に損傷を生じさせる可能性もある。
【0003】
例えば磁気共鳴撮像(MRI)システムの動作時では、コイルを撮像動作中にパルス動作させたときに、静的な主磁場内での傾斜コイルの振動によってノイズが発生する。さらに傾斜コイルによって、MRIシステムの無線周波数(RF)コイル、マグネット常温ボア及び別の金属構成要素などの任意の金属表面上にうず電流も発生する。うず電流と主磁場との相互作用もまた振動を発生させ、これが音響ノイズとなる。
【0004】
音響ノイズは多くの場合に不快であり(例えば、110〜120dBAレンジにあり)、またこれはMRIシステムを通じて(例えば、RFコイルを通じて)患者の耳に伝わる。したがって、この音響ノイズはかなり大きくなる可能性があり、これがさらに実行するスキャンについて既に理解している患者に対しても悪影響を与える可能性がある。さらに、発生した振動がMRIシステムの構成要素に対して損傷を生じさせる可能性もあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6700304 B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
振動及び音響ノイズの制御を提供するようなデバイスが知られている。これらのデバイスは、振動や音響ノイズを吸収するための減衰構造を有するように形成されている。しかしこうした構造では、様々な用途についてまたある範囲の動作条件や周波数にわたって十分な吸収を提供できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
様々な実施形態では、振動周波数に基づいた周波数応答を規定するために変形に対して所定の抵抗レベルを有する非金属材料から形成された第1層を含む振動/音響減衰器を提供する。この非金属材料は、少なくとも1つの正弦曲線によって規定されるプロフィールを有する。本振動/音響減衰器はさらに、第1層と結合された吸収層を規定している第2層を含む。この第2層は第1層に隣接して質量体を追加する。
【0008】
別の実施形態では、正弦波経路に従う表面を有する非金属材料から形成された剛度(stiffness)層と、該剛度層と結合させた吸収層と、を含んだ振動/音響減衰器を提供する。吸収層は振動を吸収するために剛度層に隣接して質量体を追加している。本振動/音響減衰器はさらに、振動をさらに吸収するために剛度層または吸収層の少なくとも一方に結合させたダンピング層を含む。
【0009】
さらに別の実施形態では、振動及び音響を減衰させるための方法を提供する。本方法は、正弦波経路に従う表面を有する非金属材料から形成された剛度層を提供するステップを含む。本方法はさらに、吸収層を提供すると共に剛度層に該吸収層を結合させるステップを含む。この吸収層は、振動を吸収するために剛度層に隣接して質量体を追加している。本方法はさらに、ダンピング層を提供すると共に振動をさらに吸収するために剛度層または吸収層の少なくとも一方と該ダンピング層を結合させるステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に従って形成した混成型分散振動/音響減衰器の断面を表した横側立面図である。
【図2】別の実施形態に従って形成した混成型分散振動/音響減衰器の断面を表した横側立面図である。
【図3】一実施形態に従って形成した混成型分散振動/音響減衰器の断面の斜視図である。
【図4】別の実施形態に従って形成した混成型分散振動/音響減衰器の断面を表した横側立面図である。
【図5】別の実施形態に従って形成した混成型分散振動/音響減衰器の断面を表した横側立面図である。
【図6】様々な実施形態に従って磁気共鳴撮像(MRI)システム内部にある構成で形成した混成型分散振動/音響減衰器を表した簡略ブロック図である。
【図7】様々な実施形態に従ってMRIシステム内部に別の構成で形成した混成型分散振動/音響減衰器を表した簡略ブロック図である。
【図8】様々な実施形態に従ってMRIシステム内部に別の構成で形成した混成型分散振動/音響減衰器を表した簡略ブロック図である。
【図9】様々な実施形態に従って形成した混成型分散振動/音響減衰器をその内部に実現し得るMRIシステムの外観図である。
【図10】様々な実施形態に従って混成型分散振動/音響減衰器を形成するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した要約、並びにある種の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むことによってさらに十分な理解が得られよう。これらの図面が様々な実施形態の機能ブロックからなる図を表している場合も、必ずしもこれらの機能ブロックがハードウェア間で分割されることを意味するものではない。したがって例えば、1つまたは複数の機能ブロックを単一のハードウェアの形で実現させることも、複数のハードウェアの形で実現させることもあり得る。こうした様々な実施形態は図面に示した配置や手段に限定されるものではないことを理解すべきである。
【0012】
本明細書で使用する場合、単数形で「a」や「an」の語を前に付けて記載した要素やステップは、これに関する複数の要素やステップも排除していない(こうした排除を明示的に記載している場合を除く)と理解すべきである。さらに、「一実施形態」に対する言及は、記載した特徴を同様に組み込んでいる追加的な実施形態の存在を排除すると理解されるように意図したものではない。さらに特に明示的に否定する記述をしない限り、ある具体的な性状を有する1つまたは複数の構成要素を「備える(comprising)」または「有する(having)」実施形態は、こうした構成要素で当該性状を有しない追加的な構成要素も含むことがある。
【0013】
様々な実施形態によれば、振動及び音響ノイズを減衰させるための装置及び方法が提供される。具体的には様々な実施形態によって、多層構造から形成した混成型分散(hybrid distributed)振動/音響減衰器が提供される。様々な実施形態の実施によって、振動及び/または音響ノイズの減衰の増大が得られる。
【0014】
図1には混成型分散振動/音響減衰器20の一実施形態を表している。図1は、混成型分散振動/音響減衰器20の断面を表した横側立面図である。様々な実施形態では混成型分散振動/音響減衰器20は、2層以上の層を有する多層構造である。図示した実施形態では、ある規定の面積にわたってある厚さを有するようなプロフィールを生成するようにして第1層22が形成されている。第1層22は、例えば振動または音響ノイズを1つまたは複数の周波数において吸収するような減衰構造の周波数応答を規定する動作をするように構成または微調整されている。例えば磁気共鳴撮像(MRI)用途ではその第1層は、MRIシステムの無線周波数(RF)コイル、マグネット常温ボア及び/または別の金属構成要素など混成型分散振動/音響減衰器20を取り付ける相手となるMRIシステムの1つまたは複数の構成要素の振動周波数に基づいた周波数応答を有するように形成されている。
【0015】
第1層22は、所望のまたは必要な周波数応答を提供するようなタイプの材料または剛度からその層を形成することによってある具体的な周波数応答向けに構成または微調整されることがある。様々な実施形態ではその第1層22は、幾つかの実施形態では非金属材料(所望のまたは必要な剛度/単位面積に基づかせることがある)から形成された複数ロッド24(円筒状ロッドとして図示)から形成されている。幾つかの実施形態での第1層22の剛度プロフィールは、単位面積あたりの剛度を変化させるロッド24の形成に用いられる材料あるいは使用するロッド24の数またはサイズによって規定される。
【0016】
ロッド24は、中実のロッドとすることや中空のロッド/チューブとすること、あるいはこれらの組み合わせとし得ることに留意すべきである。一実施形態ではそのロッド24をゴムや別のエラストマから形成させている。例えばロッド24を、ヤング率が概して低く(例えば、0.01〜4ギガパスカル(GPa))かつ降伏歪みが概してより高い(例えば、25〜100MPaの降伏強度)材料から形成させることがある。さらに、ロッド24を円筒状としかつ円形の断面を有するように図示しているが、別の形状や構成(例えば、長円形、5角形、6角形、8角形(ただしこれらに限らない))も企図されることに留意すべきである。断面形状の変化はまた、第1層22の剛度/面積(k’/面積)も変化させる(ここでkは、第1層22によって提供される変形に対する抵抗の計測値である剛度である)。例えば第1層22は、変形に対して様々な抵抗レベルを提供する様々な弾性体から形成させることがある。
【0017】
したがって第1層22のロッド24によって、「8の字」のプロフィールを有する非平面性の構造が規定される。具体的には、第1層22のこのプロフィールは、マルチ正弦曲線プロフィールによって規定されるロッド24によって形成されている。例えば、ロッド24の最上部及び底部によって規定される第1層24の上表面及び底表面は、少なくとも1つの正弦波タイプの経路に従う。
【0018】
第1層22は第2層26と結合させている。例えばロッド24は、混成型分散振動/音響減衰器20の動作環境に基づいて選択し得る適当なエポキシなどの接着剤または糊によって結合させることがある。しかし第1層22と第2層26などの様々な構成要素は、機械的締結手段(例えば、ブラケット)によるなど適当な任意の結合手段を用いて一体に結合させることがある。
【0019】
様々な実施形態による第2層26は、規定の厚さを有する平面シート材料から形成させ得る吸収層(m’/面積層)としている。例えば第2層26は、金属、非金属あるいは複合材料から形成させることがあり得る。様々な実施形態ではその第2層26を、スチール、アルミニウム、鉛、繊維強化プラスチックまたはガラスから形成させることがある。第2層26は、混成型分散振動/音響減衰器20の最上部に対して質量を追加するような任意の材料から形成させることがある。
【0020】
したがって様々な実施形態では第1層22は、幾つかの実施形態では電気的に作動させることが可能であるように、面積あたり低い剛度を有する。第1層22は任意選択で、セラミックまたは電気機械的デバイスなどの別の構造から形成させる得ることに留意すべきである。一般に、振動及び音響ノイズを減衰させるために1層または複数層の材料を用いることがある。第2層26は、第1層22の全部または一部分に沿って延びることがある振動の分散が可能な質量を規定する層である。第2層26に関して選択される材料の厚さやタイプは、異なる応答特性(1つまたは複数の周波数応答を含み得る)を提供するために混成型分散振動/音響減衰器20を取り付ける相手となる構造に基づくことがある。第2層26の厚さ、サイズまたは重量はまた、混成型分散振動/音響減衰器20を取り付ける相手となる構造に基づいて選択されることがある。
【0021】
第1層22及び/または第2層26は、交互配列で、倍数単位であるいはこれらの組み合わせで一体に複数層重ね合わすことがあることを理解すべきである。したがって、異なる層または層の組を別々に微調整することができる。
【0022】
混成型分散振動/音響減衰器20は、振動し得る任意の構造など任意の構造28に取り付けることがある。したがって動作時において混成型分散振動/音響減衰器20は、所定の周波数(例えば、500Hzと1000Hzの間の周波数)などにおいて振動及び音響ノイズを減衰させるために適当な任意の手段(糊や機械的締結具とし得る)を用いて構造28に取り付けられている。
【0023】
混成型分散振動/音響減衰器20は構造28に直接結合させることも間接的に結合させることもあることに留意すべきである。例えば混成型分散振動/音響減衰器20は、混成型分散振動/音響減衰器20が(例えば、構造28と物理的に接触した状態で)構造28と隣接しかつ当接するようにして構造28に直接結合させることがある。しかし別の実施形態ではその混成型分散振動/音響減衰器20を、例えばその間に1つまたは複数の構造または構成要素を有するような構造28に対して間接的に結合させている。
【0024】
様々な実施形態では、混成型分散振動/音響減衰器40を形成するためにダンピング材料を追加しており、減衰器40をダンピング材料の1層または複数層を含むように形成させることがある。例えば図2に示したように、第1層22と構造28の間にダンピング層30を設けている。ダンピング層30は、第1層22に対して糊や機械的締結具などの適当な任意の手段を用いて結合させることがある。
【0025】
ダンピング層30は様々な実施形態では、振動及び/または音響ノイズに対する追加的な減衰を提供するように形成かつ構成されている。ダンピング層30は、例えばダンピング材料からなる平面状シートとして適当な任意の材料からかつ所定の厚さで形成させることがある。例えば様々な実施形態ではそのダンピング層30は、振動吸収を提供する適当な任意の粘弾性材料から形成されている。例えばダンピング層30は、非晶質ポリマー、半結晶性ポリマー、バイオポリマーなどのポリマー、または瀝青材料(ただしこれらに限らない)から形成させることがある。したがってこの実施形態によるダンピング層30は、変形を受けたときに粘性と弾性の両方の特徴を有する振動減衰層である。ダンピング層30は1層または複数層(同じとすることも異ならせることもできる)のダンピング材料から形成させる得ることに留意すべきである。さらに、拘束型のダンピング層構造を規定するなどのために複数のダンピング層30を設けることがある。
【0026】
したがって様々な実施形態によるダンピング層30では、その振動及び/または音響ノイズの減衰が、そうでない場合に予測されるものと比べて増大される。
【0027】
図3は、第2層26を想像線でまたダンピング層30を破線で示した混成型分散振動/音響減衰器40の図である。ロッド24は互いに平行に整列させることも互いからオフセットさせることもあり得ることに留意すべきである。さらにロッド24を配列の長手方向軸(L)と概して直交して配列されるように示しているが、ロッドは軸Lを横断した斜めの角度で配列させることもある。さらにロッド24をその間にギャップがなく互いに概して隣接するように示しているが、1つまたは複数のロッド24の間に間隔(等しい間隔のことも不均等の間隔のことがある)を設けることがある。
【0028】
さらにダンピング層30は混成型分散振動/音響減衰器20の内部で異なる箇所に位置決めし得ることに留意すべきである。例えばダンピング層30は第1層22と第2層26の間に位置決めされることがある。
【0029】
変形形態及び修正形態が企図される。例えば、図4に示したような混成型分散振動/音響減衰器50を提供することができる。様々な実施形態において同じ番号は同じ部分を意味することに留意すべきである。混成型分散振動/音響減衰器50は、混成型分散振動/音響減衰器20や混成型分散振動/音響減衰器40と異なる第1層22を有する。具体的には混成型分散振動/音響減衰器50は、非平面性の構造から形成した第1層22を含む。第1層22は記載した他の実施形態を参照しながら本明細書で説明したのと同じ材料(複数のこともある)から形成させ得ることに留意すべきである。
【0030】
図4に示したような一実施形態ではその第1層22を、例えば形状が平滑な反復振動となったゴム製体部などの正弦波状の構造52から形成している。この振動の高さ及び幅は様々な周波数応答プロフィールを提供するように変更することができる。さらに正弦波状構造52を形成するこの体部の厚さも変更することができる。
【0031】
したがってこの実施形態では、第1層22の形状は正弦曲線によって規定されている。しかし別の反復性形状の構造も提供し得ることに留意すべきである。例えば、正方形状の体部、三角形状の体部、鋸歯状の体部(ただしこれらに限らない)によって第1層22を規定することがある。
【0032】
図示した実施形態ではダンピング層30は、第1層22と混成型分散振動/音響減衰器50が取り付けられる構造28との間に設けられる。しかし混成型分散振動/音響減衰器60を表している図5に示したように、ダンピング層30を第1層22と第2層26の間に設けることがある。ダンピング層30は、本明細書に記載したような適当な任意の材料から形成させることがある。
【0033】
様々な実施形態は、任意のタイプのシステム(例えば、その構造28が振動するかつ/または音響ノイズ(または、任意のタイプの音響)を発生させる場合)で実現することができる。例えば一実施形態ではそのシステムは、図6にその一部分を示した混成型分散振動/音響減衰器20がRFコイル72と結合されているMRIシステム70である。この実施形態における混成型分散振動/音響減衰器20は、RFコイル72から半径方向内方に位置決めされている。
【0034】
したがって混成型分散振動/音響減衰器20は患者74に最も近い表面であり、これによりMRIシステム70のボア76の最内側表面が規定されることになる。この例では混成型分散振動/音響減衰器20としたある具体的な減衰器に関連してこの実施形態あるいは任意の実施形態について説明しているが、本明細書に記載したまたはこれにより企図されるような混成型分散振動/音響減衰器のいずれをも用い得ることに留意すべきである。
【0035】
動作時において混成型分散振動/音響減衰器20は、振動及び/または音響ノイズや音響を低減するあるいはこれらがボア76内を貫通しないようにMRIシステム70が発生させる振動及び音響ノイズや音響を減衰させている。例えば同じくMRIシステム70のガントリ80上に支持された傾斜コイル78が発生させるノイズなどMRIシステム70が発生させる空気伝達のノイズは、混成型分散振動/音響減衰器20によって一部分がまたは完全に阻止される。さらに傾斜コイル78のパルス動作に起因するRFコイル72上のうず電流が発生させるノイズも、混成型分散振動/音響減衰器20によって低減または排除される。したがって混成型分散振動/音響減衰器20は、RFコイル72及び/または傾斜コイル78が発生させる振動または音響ノイズに基づいた周波数応答プロフィールを有するように微調整することができる。傾斜コイル78は、RFコイル72及び/または傾斜コイル78が発生させる振動または音響ノイズに対応する1つまたは複数の周波数に合わせて周波数応答の微調整をすることができる。
【0036】
様々な実施形態では混成型分散振動/音響減衰器20は、RFコイル72並びにMRIシステム70内部にある傾斜コイル78などの別の任意の振動性構造と機械的に結合させることも、脱結合させることもある。したがって混成型分散振動/音響減衰器20は、MRIシステム70の振動性または非振動性の部分や構成要素に結合または装着させることがある。混成型分散振動/音響減衰器20は、MRIシステム70の寸法に一致したサイズ及び形状とさせる(例えば、概して弓形状を有する)ことがあることに留意すべきである。
【0037】
さらに混成型分散振動/音響減衰器20は、患者74に対して別の安全保護レベルまたは安全保護層を提供可能であることに留意すべきである。例えば混成型分散振動/音響減衰器20はさらに、高レベルの熱を発生する可能性があるようなMRIシステム70のコンデンサ、インダクタ、ダイオード、高電力ケーブル(ただし、これらに限らない)の電気的及び/または熱的な破壊により生じる熱傷からの保護を提供することができる。
【0038】
したがって混成型分散振動/音響減衰器20は、図6に示したMRIシステム70のボア76の最内側の半径方向表面を規定することがある。MRIシステム70を単一モダリティの撮像システムとすることがあるが、画像(特に、人の画像)の作成が可能な別のシステムと組み合わせたものなどマルチモダリティ撮像システムにおいてまたはこれと共に様々な実施形態を実現し得ることを理解されたい。さらにこれら様々な実施形態は人の撮像を対象とした医用撮像システムに限定されるものではなく、人以外の対象、手荷物、その他を撮像するための獣医学システムや非医用システムを含むことができる。さらにこれらの様々な実施形態は、輸送手段、建物、橋その他の内部の構造など任意のタイプの振動性構造と連携して実現することができる。
【0039】
混成型分散振動/音響減衰器20は例えばMRIシステム70などのシステムの様々な部分内に位置決めし得ることに留意すべきである。例えば混成型分散振動/音響減衰器20は、図7に示したように傾斜コイル78とRFコイル72の間に位置決めすることができる。さらに別の実施形態ではその混成型分散振動/音響減衰器20は、図8に示したようにマグネット常温ボア82と傾斜コイル78の間に位置決めすることができる。
【0040】
例えば混成型分散振動/音響減衰器20の長さ、形状及び/またはサイズなど混成型分散振動/音響減衰器20の寸法及び構成は、ボア76に対するまたはボア76内部の振動及び音響ノイズ伝達(例えば、振動性ノイズ)や患者74に聞こえる振動及び音響ノイズ伝達に対する混成型分散振動/音響減衰器20の効果を増大または最大化するように選択または最適化することができる。
【0041】
混成型分散振動/音響減衰器20を含む様々な構成要素は、適当な機構を用いて装着または支持されている。例えば、適当な装着用構造(例えば、支持ブラケット)を用いてRFコイル72を傾斜コイル78と結合させることがある。
【0042】
この様々な実施形態は、様々なタイプのMRIシステムと連携して実現することができる。例えばこの様々な実施形態は、図9に示したMRIシステム70と連携して実現することができる。システム70を単一モダリティの撮像システムとして図示しているが、この様々な実施形態はマルチモダリティ撮像システムにおいてまたはこれと共に実現し得ることを理解されたい。システム70はMRI撮像システムとして図示していると共に、画像(特に、人の画像)の作成が可能な様々なタイプの医用撮像システムや別の任意のシステムと組み合わせることがある。さらにこの様々な実施形態は人の撮像を対象とした医用撮像システムに限定されるものではなく、人以外の対象、手荷物、その他を撮像するための獣医学システムや非医用システムを含むことができる。
【0043】
具体的に図9を参照するとMRIシステム70は、撮像ユニット92(例えば、撮像用スキャナ)を有する撮像部分90と、プロセッサ96または別のコンピュータ処理や制御器デバイスを含み得る処理部分94と、を含む。具体的には撮像ユニット92は、対象または患者74の全体または一部分の画像データとし得る画像データを収集するようにMRIシステム70に対して対象または患者74のスキャンを可能とさせている。撮像ユニット92は、画像データの収集を可能とさせる1つまたは複数の撮像用構成要素(例えば、マグネットやマグネット巻き線、並びにガントリ80内部のコイル)を有するガントリ80を含む。さらにガントリ80内部にまたはこれに対して、1つまたは複数の実施形態の混成型分散振動/音響減衰器を装着させることがある。
【0044】
マルチモダリティ撮像システムでは磁気共鳴撮像用のマグネット(複数のこともある)に加えて、コンピュータ断層撮像用のX線源や検出器あるいは核医学撮像用のガンマカメラが設けられることがある。これらの撮像用構成要素は画像データを表す信号を発生させており、これが有線式とすることもワイヤレス式ともし得る通信リンク98を介して処理部分94に伝達される。撮像ユニット92による撮像スキャンの間に、ガントリ80とその上またはその中に装着された撮像用構成要素とは、ボア76を通過する検査軸を規定する回転中心の周りでまたはこれに沿って静止させたままとすることも、この周りでまたはこれに沿って回転させることもあり得る。患者74は、例えばモータ式テーブル100を用いてガントリ80の内部に位置決めされることがある。
【0045】
動作時において撮像用構成要素の1つまたは幾つかの出力が処理部分94に送られ、またこの逆方向に送られており、これには制御インタフェース102を介したプロセッサ96へのまたはこれからの信号の送信を含むことがある。プロセッサ96はさらに、モータ式テーブル100または撮像用構成要素の位置をユーザ入力または所定のスキャンに基づいて制御するための制御信号を発生させることがある。スキャンの間に撮像用構成要素からの磁気共鳴画像データなどの画像データは、例えば1つまたは複数の表面コイル(例えば、躯幹部表面コイルアレイ)による収集に連れて、制御インタフェース102を介してデータインタフェース104を通してプロセッサ96に伝達されることがある。
【0046】
データの収集及び処理に用いられる処理部分94並びに付属のハードウェア及びソフトウェアのことを、一括してワークステーション106と呼ぶことがある。ワークステーション106は、キーボード108及び/またはマウス、ポインタその他など別の入力デバイス、並びに表示デバイス110を含む。表示デバイス110は画像データを表示しており、タッチ画面が利用可能であればユーザからの入力を受け付けることもある。
【0047】
したがって様々な実施形態によって、振動及び/または音響ノイズ(例えば、一実施形態では、MRIシステムのボアまでまたはボア内部に伝わるもの)を低減させる混成型分散振動/音響減衰器が提供される。したがってスキャンを受けている患者が受ける音響ノイズが小さくなる。
【0048】
さらに図10に示したように混成型分散振動/音響減衰器を形成するための方法120が提供される。具体的には方法120は、122において剛度層を提供するステップと、124において吸収層を提供するステップと、を含む。例えば剛度層は、振動周波数に基づいた周波数応答を規定するために変形に対して所定の抵抗レベルを有する非金属材料であって、少なくとも1つの正弦曲線によって規定されるプロフィールを有するような非金属材料から形成させることがある。吸収層は、吸収層により質量体が提供されるように吸収層を規定する材料から形成させることがある。
【0049】
本方法120はさらに、126においてダンピング層を提供するステップを含む。このダンピング層は、振動吸収を提供する粘弾性材料から形成させることがある。剛度層、吸収層及びダンピング層は、128において例えば混成型分散振動/音響減衰器20などの振動/音響減衰器を形成するように結合させている。これらの層は任意の順序または配列でまた異なる時点で結合させ得ることに留意すべきである。
【0050】
さらに、様々な実施形態及び/または構成要素(例えば、モジュール、素子、あるいはこれらの内部にある構成要素や制御器)は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサの一部として実現させることができる。このコンピュータまたはプロセッサは、コンピュータ処理デバイス、入力デバイス、表示ユニット、及び例えばインターネットにアクセスするためのインタフェースを含むことがある。このコンピュータまたはプロセッサは、マイクロプロセッサを含むことがある。このマイクロプロセッサは、通信バスと接続させることがある。このコンピュータまたはプロセッサはさらにメモリを含むことがある。このメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)と読出し専用メモリ(ROM)を含むことがある。コンピュータまたはプロセッサはさらに、ハードディスクドライブ、あるいは光ディスクドライブ、半導体ディスクドライブ(例えば、フラッシュRAM)その他などの取外し可能な記憶ドライブとし得る記憶デバイスを含むことがある。この記憶デバイスはさらに、コンピュータプログラムやその他の命令をコンピュータまたはプロセッサにロードするための別の同様の手段とすることがある。
【0051】
本明細書で使用する場合、「コンピュータ」や「モジュール」という用語は、マイクロコントローラを用いたシステム、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、現場プログラム可能ゲートアレイ(FPGA)、グラフィック処理ユニット(GPU)、論理回路、及び本明細書に記載した機能を実行可能な別の任意の回路またはプロセッサを含めプロセッサベースまたはマイクロプロセッサベースの任意のシステムを含むことができる。上述の例は単に例示であり、またしたがっていかなる意味においても「コンピュータ」という用語の定義及び/または意味を限定することを意図していない。
【0052】
このコンピュータまたはプロセッサは、入力データを処理するために1つまたは複数の記憶素子内に記憶された1組の命令を実行する。この記憶素子はさらに、所望によりまたは必要に応じてデータやその他の情報も記憶することがある。この記憶素子は情報ソースの形態とすることや、処理装置内部にある物理的なメモリ素子とすることがある。
【0053】
この命令の組は、様々な実施形態の方法や処理などの指定の動作を実行するように処理装置としてのコンピュータまたはプロセッサに指令するための様々なコマンドを含むことがある。この命令の組は、有形で非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体(複数のこともある)の一部を形成し得るソフトウェアプログラムの形態とすることがある。このソフトウェアは、システムソフトウェアやアプリケーションソフトウェアなど様々な形態とすることがある。さらにこのソフトウェアは、単独のプログラムやモジュール、より大きなプログラムの内部のプログラムモジュール、あるいはプログラムモジュールの一部分からなる集合体の形態とすることがある。このソフトウェアはさらに、オブジェクト指向プログラミングの形態をしたモジュール型プログラミングを含むことがある。処理装置による入力データの処理は、オペレータコマンドに応答すること、以前の処理結果に応答すること、あるいは別の処理装置が発した要求に応答することがある。
【0054】
本明細書で使用する場合、「ソフトウェア」、「ファームウェア」及び「アルゴリズム」という用語は置き換え可能であり、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含めコンピュータによって実行するためにメモリ内に記憶された任意のコンピュータプログラムを含む。上述のメモリタイプは単に例示であり、またしたがってコンピュータプログラムの記憶に使用可能なメモリのタイプを限定するものではない。
【0055】
上の記述は例示であって限定でないことを理解されたい。例えば上述の実施形態(及び/または、その態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。さらに、具体的な状況や材料を様々な実施形態の教示に適応させるように本趣旨を逸脱することなく多くの修正を実施することができる。本明細書に記載した材料の寸法及びタイプが様々な実施形態のパラメータを規定するように意図していても、これらは決して限定ではなく単なる例示である。上の記述を検討することにより当業者には別の多くの実施形態が明らかとなろう。様々な実施形態の範囲はしたがって、添付の特許請求の範囲、並びに本請求範囲が規定する等価物の全範囲を参照しながら決定されるべきである。添付の特許請求の範囲では、「を含む(including)」や「ようになった(in which)」という表現を「を備える(comprising)」や「であるところの(wherein)」という対応する表現に対する平易な英語表現として使用している。さらに添付の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」及び「第3の」その他の表現を単にラベル付けのために使用しており、その対象に対して数値的な要件を課すことを意図したものではない。さらに、添付の特許請求の範囲の限定は手段プラス機能形式で記載しておらず、また35 U.S.C.§112、第6パラグラフに基づいて解釈されるように意図したものでもない(ただし、本特許請求の範囲の限定によって「のための手段(means for)」の表現に続いて追加的な構造に関する機能排除の記述を明示的に用いる場合を除く)。
【0056】
この記載では、様々な実施形態(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む様々な実施形態の実施を可能にするために例を使用している。様々な実施形態の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、その例が本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、その例が本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0057】
20 振動/音響減衰器
22 層
24 ロッド
26 層
28 構造
30 ダンピング層
40 振動/音響減衰器
50 振動/音響減衰器
52 正弦曲線形状の構造
60 振動/音響減衰器
70 MRIシステム
72 RFコイル
74 患者
76 ボア
78 傾斜コイル
80 ガントリ
82 ボア
90 撮像部分
92 撮像ユニット
94 処理部分
96 プロセッサ
98 通信リンク
100 モータ式テーブル
102 制御インタフェース
104 データインタフェース
106 ワークステーション
108 キーボード
110 表示デバイス
120 方法
122 剛度層を提供する
124 吸収層を提供する
126 ダンピング層を提供する
128 振動/音響減衰器を形成するように各層を一体に結合させる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動周波数に基づいた周波数応答を規定するために変形に対して所定の抵抗レベルを有する非金属材料から形成された第1層(22)であって、該非金属材料は少なくとも1つの正弦曲線によって規定されるプロフィールを有する第1層(22)と、
第1層と結合された吸収層を規定している第2層(26)であって、第1層に隣接して質量体を追加している第2層(26)と、
を備える振動/音響減衰器(20)。
【請求項2】
前記第1層(22)は、隣接しかつ平行に整列した複数の円筒状ロッド(24)を備える、請求項1に記載の振動/音響減衰器(20)。
【請求項3】
前記円筒状ロッド(24)はエラストマから形成されている、請求項2に記載の振動/音響減衰器(20)。
【請求項4】
前記第2層(26)は前記第1層(22)の最上部に結合させており、かつ第1層の底部は振動を受ける構造(28)に結合させている、請求項1に記載の振動/音響減衰器(20)。
【請求項5】
さらにダンピング層(30)を備えており、前記第1層(22)を前記第2層(26)と該ダンピング層の間に位置決めしている、請求項1に記載の振動/音響減衰器(20)。
【請求項6】
さらに、前記第1層と前記第2層(22、26)の間に位置決めされたダンピング層(30)を備える請求項1に記載の振動/音響減衰器(20)。
【請求項7】
前記周波数応答は、磁気共鳴撮像(MRI)システム(70)の無線周波数(RF)コイル(72)または傾斜コイル(78)の少なくとも一方の振動周波数に基づいている、請求項1に記載の振動/音響減衰器(20)。
【請求項8】
さらに、振動吸収を提供する粘弾性材料から形成されたダンピング層(30)を備える請求項1に記載の振動/音響減衰器(20)。
【請求項9】
前記第1層(22)は単一の正弦波経路に従うプロフィールによって規定される体部を有する材料から形成されている、請求項1に記載の振動/音響減衰器(20)。
【請求項10】
振動及び音響を減衰させるための方法(120)であって、
正弦波経路に従う表面を有する非金属材料から形成された剛度層を提供するステップ(122)と、
吸収層を提供すると共に前記剛度層に該吸収層を結合させるステップであって、該吸収層は振動を吸収するために剛度層に隣接して質量体を追加している提供結合ステップ(124)と、
ダンピング層を提供すると共に、振動をさらに吸収するために剛度層または吸収層の少なくとも一方に該ダンピング層を結合させるステップ(126)と、
を含む方法(120)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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