振動減衰フレキシブル管装置及び振動減衰器
【課題】短時間で具体的な施工現場において振動、騒音を生じさせにくい施工を確実に行うことができる振動減衰フレキシブル管装置及び振動減衰器を提供する。
【解決手段】表面に凹凸部をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管12と、金属製フレキシブル管12に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部20を有するとともに管の長手方向に移動自在な振動減衰器14と、を備える。振動減衰器14は、金属製フレキシブル管12に外嵌された状態で少なくともその一部に管表面に対する非密着部又は空隙Hを有する。
【解決手段】表面に凹凸部をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管12と、金属製フレキシブル管12に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部20を有するとともに管の長手方向に移動自在な振動減衰器14と、を備える。振動減衰器14は、金属製フレキシブル管12に外嵌された状態で少なくともその一部に管表面に対する非密着部又は空隙Hを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動減衰機能を有する流体搬送用の金属製フレキシブル管の振動減衰フレキシブル管装置及び振動減衰器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体搬送用の金属製フレキシブル管が公知である。この金属製フレキシブル管は、素材となる金属がゴム等と異なり騒音や振動に対する減衰能が低い。また、金属製フレキシブル管の内面は襞が連続する形状のため、内面が平滑なゴムホース等に比べ、管の内部に気体又は液体が流れることによって騒音や振動の発生が生じやすい性質がある。このため、例えば住宅地、学校、研究所等の使用場所や使用条件によっては、それらの騒音、振動が問題になる場合がある。騒音、振動が発生した場合にこれらを軽減するための方法として、例えば金属製フレキシブル管の外側全体あるいはある程度の長さにわたり防音マット等を巻きつける方法がある。しかしながら、金属製フレキシブル管の外周に防音マットを巻く方法はクリーンルームや高温状態等の環境下では使用することができない。また、全長あるいはある程度の長さにわたって防音マット等を巻きつける作業に多くの労力や資材を必要とし、防音作業コストが高くなり、作業時間も長時間を要する問題があった。これに対し、特許文献1の振動抑制機能付フレキシブル管が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−32884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1は、フレキシブル管の外周にパイプを配設し、パイプとフレキシブル管の間に例えば粘弾性材料からなる振動抑制体を設けたものである。この特許文献1のフレキシブル管では同文献図1、2に示すように、パイプの一端開口から予めフレキシブル管を挿入し、その後両端開口からパイプとフレキシブル管の間に隙間なく弾性材などを充填したものである。しかしながら、フレキシブル管周りの振動、騒音は具体的な取り付け現場でのフレキシブル管の長さ、曲がり、接続先の機器、振動発生系など複雑な要素があり、この特許文献1のようにフレキシブル管の一部にパイプと弾性材などで固定設置するだけでは騒音を効果的に抑制しうることは困難である。また、この特許文献1のものでは、施工時に予めフレキシブル管をパイプの一端開口から挿入し、その後、弾性材をパイプの両端開口から充填する作業が必要であり、材料コスト、作業時間がかかり、また、このような方法では充填する弾性材の量の調整をすることは極めて困難で、具体的な施工現場で騒音抑制効果を得ることが確認されるまでには相当の時間を要するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、極めて簡単な構成で低コストであり、しかも短時間で具体的な施工現場において振動、騒音を生じさせにくい施工を確実に行うことができる振動減衰フレキシブル管装置及び振動減衰器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、表面に凹凸部16,18をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管12と、金属製フレキシブル管12に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部x1を有するとともに管の長手方向100にスライド自在な振動減衰器14〜14−6と、を備えた振動減衰フレキシブル管装置10〜10−6から構成される。本発明は、金属製フレキシブル管の長さ方向の一箇所又は複数個所に錘体としての振動減衰器を取り付け、金属製フレキシブル管の固有振動数及び振動モードを任意に変化させる手段を提供する。金属に限らず、物体はその質量分布と剛性分布に応じて固有の振動数を備える。金属製フレキシブル管の内部を気体又は液体が流れることによって発生する騒音や振動は、それ自体に振動要素を持っている原動機等、すなわちポンプ等の振動や脈動が伝わり発生する強制振動と金属製フレキシブル管内を流体が流れる渦等で発生する自励振動がある。これらの振動周波数と金属製フレキシブル管の固有振動数が一致又は近いときに、共鳴、共振現象が起き、騒音、振動が増幅される。金属製フレキシブル管は自在に曲げることができ、形状を変えることができるため、設置スペースに応じて種々の形状に変形させて使用される。このため、同じ長さの金属製フレキシブル管であっても使用場所、使用条件で固有振動数及び振動モードが変わり、共振、共鳴現象の事前予測は困難である。本発明では、外部からの操作で簡単にフレキシブル管に対して着脱自在に外嵌でき、さらに外嵌状態で管の長手方向にスライド自在な振動減衰器をフレキシブル管に取り付けることにより、当該現場での当該フレキシブル管についての減衰能を最も高く発揮させることができる取り付け位置を簡単に設定でき、かつ短時間で振動、騒音抑制施工作業を完了させることができる。これによって、もし、騒音、振動がその使用環境において許容できない程度の場合に、その現場で金属製フレキシブル管の長さを変えたり、金属製フレキシブル管を製作する必要がない。振動減衰器は、金属製フレキシブル管に貫挿離脱自在で着脱自在に外嵌される円筒状の外嵌体で形成してもよく、また、軸方向にある程度の長さを有し、かつ、軸方向に連続した切り欠きを備えて全体が断面C字状に形成した円弧体あるいは円弧板形状としてもよい。軸方向に連続した切り欠きを備えた全体が断面C字状の円弧体とすることにより、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向へ向けた押し付け操作で着脱外嵌させることができ、作業現場での取り付け作業性を良好に保持することができる。
【0007】
振動減衰器14〜14−6は、金属製フレキシブル管12に外嵌された状態で少なくともその一部にフレキシブル管表面に対する非密着部又は空隙Hを有する嵌着体からなるとよい。完全密着状態では振動減衰機能が低いことは実験的に検証されている。金属製フレキシブル管に対して非密着部あるいは空隙部分を有すると、振動減衰器14と管12の接触部が微小にすべり、またはその部分でかつ管表面と充分に離れた位置の部分は密着部分の振動とは、遅れや接触形態によって異なる種類の振動を行なうことになり、結果的に管12の振動の減衰能を向上させる。
【0008】
また、振動減衰器14〜14−6は、金属製フレキシブル管12を立てた状態で自重による落下はしないが外力により自在に金属製フレキシブル管12の長手方向に移動するように外嵌されているとよい。
【0009】
また、振動減衰器14〜14−5は、金属製フレキシブル管12の軸100方向と交差する方向に向けた金属製フレキシブル管に対する操作により金属製フレキシブル管に外嵌させるようにするとよい。具体的には、C字状などの円筒部材の一部を軸方向に切欠いた形態のものでは直交方向に押し当てて嵌着操作することとなる。
【0010】
また、振動減衰器14〜14−2、14−4、14−5は、軸方向の切欠きを有する不完全円筒体15〜15−2、15−4,15−5を含むとよい。
【0011】
また、振動減衰器14−1は、複数の不完全円筒体38,39とそれらの円筒軸100を曲がり自在にそれらの不完全円筒体を連結する連結部33を備えるとよい。複数の不完全円筒体は軸方向サイズが大小種々の大きさのものや短い軸方向長さの不完全円筒体も含む。短い軸方向長さの不完全円筒体を連結部でくり返して形成した構成としてもよい。
【0012】
また、振動減衰器14,14−1、14−6の器体自体が弾性変形して金属製フレキシブル管12に対して着脱外嵌自在であるとよく、器体の軽量化、着脱外嵌や軸方向移動などの操作をしやすくさせる。
【0013】
また、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14、14−1、14−2、14−5の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材40を設けるとよい。
【0014】
また、振動減衰器14−3は、挟着方向にバネ付勢され金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌する開閉部材42,44を有するクリップ装置からなるとよい。
【0015】
また、振動減衰器14−4は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌する中空立体円弧体50からなり、該中空立体円弧体は、栓体54付き開口を介して中空部に出し入れ自在に液体または粉粒体を投入させるようにしてもよい。
【0016】
また、振動減衰器14−6は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌するコイルバネ部材60からなるとよい。
【0017】
また、本発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置10〜10−6に用いられる振動減衰器14〜14−6から構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の振動減衰フレキシブル管装置によれば、表面に凹凸部をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管と、金属製フレキシブル管に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部を有するとともに管の長手方向に移動自在な振動減衰器と、を備えた構成であるから、極めて簡単な構成で低コストであり、しかも短時間で具体的な施工現場において振動、騒音を生じさせにくい設置位置を確実に設定して施工を行うことができる。したがって、振動、騒音に起因する施工作業を別に行なったり、施工やり直しなどを行なう必要がなく、作業効率を向上させることができる。
【0019】
また、振動減衰器は、金属製フレキシブル管に外嵌された状態で少なくともその一部にフレキシブル管表面に対する非密着部又は空隙を有する嵌着体からなる構成であるから、金属製フレキシブル管に外嵌させて取り付ける構成であって、かつ、金属製フレキシブル管12の振動を効果的に減衰させることができる。
【0020】
さらに、振動減衰器は、金属製フレキシブル管を立てた状態で自重による落下はしないが外力により自在に金属製フレキシブル管の長手方向に移動するように外嵌されている構成であるから、着脱自在な外嵌構成、金属製フレキシブル管の長手方向に対する移動自在な構成、並びに空隙あるいは非密着部を有して振動減衰機能を確保し得る構成を同時に実現することができる。
【0021】
また、振動減衰器14〜14−5は、金属製フレキシブル管12の軸100方向と交差する方向に向けた金属製フレキシブル管に対する操作により金属製フレキシブル管に外嵌させる構成であるから、金属製フレキシブル管の施工後において振動減衰のための調整工事を行なえ、施工作業の進捗等と無関係に振動減衰工事を行なえて作業効率を向上させ得る。
【0022】
また、振動減衰器は、軸方向の切欠きを有する不完全円筒体を含む構成であるから、金属製フレキシブル管に対する着脱自在な外嵌構成、金属製フレキシブル管の長手方向に対する移動自在な構成を具体的に実現し、同時に装置の軽量化、構造の簡単化に資する。
【0023】
また、振動減衰器は、複数の不完全円筒体とそれらの円筒軸を曲がり自在にそれらの不完全円筒体を連結する連結部を備えた構成であるから、具体的な施工現場に対応して金属製フレキシブル管を曲げて設置する場合にもこれに適応して振動減衰器を外嵌させることができる。
【0024】
また、振動減衰器の器体自体が弾性変形して金属製フレキシブル管に対して着脱外嵌自在である構成とすることにより、構造の簡素化、軽量化を実現し得る。
【0025】
また、振動減衰器の外面に沿って嵌着しフレキシブル管軸に略直交する方向に押し付けて外嵌する補強線材を設けた構成とすることにより、振動減衰の本体を例えば合成樹脂製の成形品等を用い、その嵌合力を補強して確実にフレキシブル管に対して振動減衰器を外嵌させることができる。よって、振動減衰器を低コストに生産し得る。
【0026】
また、振動減衰器は、挟着方向にバネ付勢され金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する開閉部材を有するクリップ装置からなる構成であるから、金属製フレキシブル管の工事のどの段階においても振動減衰工事をすることができる上に、外嵌の操作も簡単で減衰調整操作を簡易に行なうことができる。
【0027】
また、振動減衰器は、金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する中空立体円弧体からなり、該中空立体円弧体は、栓体付き開口を介して中空部に出し入れ自在に液体または粉粒体を投入させる構成であるから、振動減衰器の質量の増減を微調整することができ、減衰器能を最も効果的に発揮させ得る器体の質量やフレキシブル管の長手方向位置を正確に設定することが可能である。
【0028】
また、振動減衰器14−6は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌するコイルバネ部材60からなる構成であるから、振動減衰器全体並びにコイルの1巻き部分自体が伸縮、可撓性を有するから金属製フレキシブル管の施工現場での取り付け状態に対応して無理なく外嵌させることができ、かつ軸方向についても移動可能であるから振動減衰調整を具体的に行なうことができる。
【0029】
また、本発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置10〜10−6に用いられる振動減衰器14〜14−6から構成されるので、それぞれについての振動減衰器の構成を生かして金属製フレキシブル管の振動減衰を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る振動減衰フレキシブル管装置の斜視構成図である。
【図2】図1装置の端面図である。
【図3】(a)は、図1の装置の振動減衰器の端面並びに作用説明図、(b)は、その平面図である。
【図4】図1の装置の金属製フレキシブル管と振動減衰器とを離して示した斜視説明図である。
【図5】(a)は、第2実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の平面図、(b)は、その側面図である。
【図6】図5の振動減衰器の斜視説明図である。
【図7】第3実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の斜視説明図である。
【図8】第4実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の斜視説明図である。
【図9】図8の振動減衰器を金属製フレキシブル管に外嵌させた状態の斜視説明図である。
【図10】第5実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の斜視説明図である。
【図11】第6実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の斜視説明図である。
【図12】第7実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の斜視図である。
【図13】第7実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器のみを断面で示した一部縦断面説明図である。
【図14】図12のコイルバネを金属製フレキシブル管に装着操作する際の端面側から見た作用説明図である。
【図15】(a)は、図12,13の振動減衰器において、他のコイルバネ部材を用いた例を示す一部縦断面説明図、(b)は、そのコイルバネ部材の斜視図である。
【図16】図15(b)のコイルバネ部材の金属製フレキシブル管への装着操作例を示す作用説明図である。
【図17】実施例の騒音値を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1ないし図4は本発明の第1実施形態を示している。本実施形態の振動減衰フレキシブル管装置10は、金属製フレキシブル管12と、振動減衰器14と、を含み、断面C字状の円弧体で構成されて、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができるタイプの振動減衰器を備えている。
【0032】
図1、4において、金属製フレキシブル管12は、例えば、流体搬送途中の配管方向変更、配管芯ずれ吸収、振動吸収、膨張収縮吸収などのために液体やガス等の流体搬送配管系の要所に用いられる。金属製フレキシブル管12は、表面に凹凸部16,18を繰り返し一方向に長く形成された襞付き中空円筒形状の金属製蛇腹管からなり、本実施形態では、ステンレス製の薄いパイプに波付け加工して製造される。この金属製フレキシブル管12は、外周にステンレスのワイヤを編みこんだブレードを被着させて用いる場合がある。
【0033】
振動減衰器14は、金属製フレキシブル管12に外嵌被着されて振動源周波数と共通ないしは近似する金属製フレキシブル管の固有振動数を変動させて共振点あるいは共振領域からずらした振動数とするように外的にずらす擬似固有振動数生成手段であり、例えば振動源が内部流体による自励振動あるいは原動機ポンプのような強制振動によるもののいずれもの周波数と金属製フレキシブル管の固有振動周波数との共振状態についての振動減衰機能を有する。
【0034】
本実施形態において、振動減衰器14は、特に、フレキシブル管に対して着脱自在に外嵌され、かつ、外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部20を有し、同時に他の非密着部を有する。さらに、該振動減衰器14は、金属製フレキシブル管12の長手方向にスライド自在に設けられている。
【0035】
具体的には、図1〜図4において、振動減衰器14は、円筒の一部をその円筒軸100に沿って軸方向に切り欠いた切欠き22を有し、断面C字状の円弧体で構成された不完全円筒体15で形成されている。この実施形態の振動減衰器14は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができる。また、管12の長手方向に移動自在である。実施形態において、この不完全円筒体15は例えばある程度のばね性を有する金属製円筒板をその断面で円弧の一部、例えば中心角で40度範囲程度を軸方向に切り欠いて断面C字状にした不完全な円筒板で構成されており、金属製フレキシブル管12の凸部18による直径よりわずかに大きな直径を有して外嵌時に金属製フレキシブル管の外面に嵌め合わせられて嵌着される。この不完全円筒体、あるいは不完全金属製円筒板はその切欠き両端部を内曲げ圧着して補強している。この不完全円筒体15は、図3(a)に示すように、その素材の性質により周方向の両端を押し開く力を加えると弾性変形し、力を解除すると実線示のように復元する。したがって、図4に示すように、切欠き22部分を金属製フレキシブル管12の表面にあてがい、強く押し付けることによりフレキシブル管の直径長さ部分で図3(a)鎖線示のように不完全円筒体15の両端側が変形拡大し、さらに押し込んでフレキシブル管の外面に嵌ると復元して図1のように完全に外嵌被着される。このとき、この不完全円筒体15は平滑な曲面の内壁を有しており、したがって、フレキシブル管の凹凸部表面と不完全円筒体15の内壁とは、例えばx1、x2、x3の点、あるいは部分において密着し、それ以外の部分は両者は離れた非密着部を形成し、さらには凹部16と不完全円筒体15の内面との間には空隙Hが形成されている。このように、振動減衰器14は、フレキシブル管12に外嵌された状態で少なくともその一部にフレキシブル管表面に対する非密着部又は空隙Hを有することが必要である。例えば、振動減衰器14のすべての部分が金属製フレキシブル管12外面に完全密着した状態では金属製フレキシブル管12に比し振動減衰器14の質量が小さい場合にこれを減衰する機能は低く、ほとんど減衰能を有しない。これは、完全密着状態であると振動減衰器14自体が単に管12に付属して一体的に振動するだけとなり、振動減衰器14による質量付加効果の影響が小さすぎるためと考えられる。一部にフレキシブル管表面に対する非密着部又は空隙Hを有する状態で振動減衰器が外嵌されていれば、空隙をあけて管12から離れた部分あるいは非密着部分が独自の質量、バネ機能を有し、これらがフレキシブル管12に一部を密着させる状態で連結されている場合は振動減衰器14による質量付加効果だけでなく、管12との間ですべることによる振動エネルギーの吸収や、振動減衰器14自体の質量分布や剛性分布の影響を効果的に利用できるからである。不完全円筒体15からなる振動減衰器14は、図1の状態から不完全円筒体15の断面両端側を図3(a)の鎖線示のように強制的に拡大させて離脱させることができる。
【0036】
さらに、振動減衰器である不完全円筒体15は、金属製フレキシブル管12の長手方向にスライド自在に設けられている。すなわち、不完全円筒体15は金属製フレキシブル管12を立てた状態で自重による落下はしないが、例えば手動の操作で簡単にフレキシブル管の長手いずれの方向にもスライド移動するように外嵌されていることが必要である。これによって、金属製フレキシブル管の質量分布調整を自在に行なえる。なお、図示しないが、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材を設けるとよい。補強線材は同時に振動減衰器に対する質量付加機能を有する。補強線材は、不完全円筒体15の外面と略同じ円弧曲率として外嵌させるとよい。
【0037】
図5,6は、第2の実施形態の振動減衰フレキシブル管装置10−1の振動減衰器の構成を異ならしめた例を示しており、この第2実施形態において、金属製フレキシブル管12は第1実施形態と同一構成であり、図5,6では装着状態の図示を省略している。振動減衰器の基本構造や素材、機能は図1〜図4記載の第1実施形態のものと同一である。振動減衰器14−1は、円筒の一部をその円筒軸100に沿って軸方向に切り欠いた切欠き22を有し、断面C字状の円弧体で構成された不完全円筒体15−1で形成されている。この実施形態の振動減衰器14は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができる。また、管12の長手方向に移動自在である。本実施形態の振動減衰器14−1の不完全円筒体15−1は、第1実施形態の不完全円筒体15の円筒軸方向中央位置で相互に反対方向となる周方向に2個の切り込み溝32をオフセット状に刻設し小連続部34を有して中央に細長い円弧片36を形成したものである。中央の細い円弧片36と小連続部34,34が請求項5の連結部33に相当する。この実施形態では、不完全円筒体15は細長い円弧片36の両側軸方向に2分割された第1、第2不完全円筒体38,39を形成している。詳細には、第1、第2不完全円筒体38,39は、それぞれ不完全の金属円筒板で形成され、円弧を開閉する方向にバネ性を有している。このように、第2実施形態では、振動減衰器14は、複数の不完全円筒体38,39とそれらの円筒軸100を曲がり自在にそれらの不完全円筒体を連結する小連続部34を備えて構成されている。よって、第1、第2不完全円筒体38,39、小連続部34、円弧片36は一体構成となっている。これによって、施工現場の状況に応じて例えば金属製フレキシブル管12を曲げて配設する場合などで、その曲がりに対応して細い円弧片36部分が曲り、振動減衰器の外嵌着脱自在性と、管長手方向に対するスライド自在性と、軸方向からの曲り自在性を保持しつつ金属製フレキシブル管の振動減衰を行うことができる。なお、図示しないが、この第2実施形態の振動減衰フレキシブル管装置10−1においても、不完全円筒体15の外面から略同じ円弧曲率の図示しない補強線材を外嵌させてもよい。すなわち、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材を設けるとよい。
【0038】
さらに、図7に示す第3実施形態の振動減衰器14−2では、不完全円筒体15−2は、第1実施形態のそれと同様の形状を有し、同様の機能を行うが、材質は例えば硬質のプラスチック成形材で構成されている。振動減衰器14−2は、円筒の一部をその円筒軸100に沿って軸方向に切り欠いた切欠き22を有し、断面C字状の円弧体で構成された不完全円筒体15−2で形成されている。この実施形態の振動減衰器14は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができる。また、管12の長手方向に移動自在である。そして、本実施形態において、不完全円筒体15−2の外面から略同じ円弧曲率の補強線材40が外嵌されている。補強線材40は一部切欠きの円筒板に設けた位置決め凹溝に嵌合されており、不完全円筒体15−2に対して質量を付加するとともに、軸方向の切欠き22の両端部分にバネ性を付加し金属製フレキシブル管12への着脱外嵌操作時の嵌着状態保持を補強している。すなわち、本実施形態において、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材40を設けている。なお、第3実施形態の図7は図示しない金属製フレキシブル管装置に装着されて振動減衰フレキシブル管装置10−2を構成する。
【0039】
また、図8、図9の第4実施形態の振動減衰器14−3では、2個の円弧板を対向配置し、それらの一辺側をコイルバネなどのバネ部材46で連結して開閉側となる他辺側を挟着方向にバネ付勢したクリップ構造で構成されている。すなわち、本実施形態において、振動減衰器14−3は、一部に挟着方向にバネ付勢された円弧板としての開閉部材42,44と、他部においてバネに抗して開閉部材を開操作させる操作部48と、を有するクリップ装置で形成されている。そして、開閉部材42,44は、操作部48の操作により金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する。この実施形態の振動減衰器14は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向からの操作で着脱外嵌させることができる。この第4実施形態の振動減衰器14−3においてもフレキシブル管12に着脱自在に外嵌し、外嵌した状態で少なくとも1箇所の密着部を有し、さらに管12の長手方向に移動自在である。円弧板の開閉側で金属製フレキシブル管の外面を挟み付け、離脱させるときには、開閉側の他端側の摘み部48を摘んで管12との係合を解くことができる。なお、第4実施形態の図9は金属製フレキシブル管装置に装着されて振動減衰フレキシブル管装置10−3を構成する。
【0040】
また、図10は第5実施形態の振動減衰器14−4を示している。振動減衰器14−4は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌する中空立体円弧体50からなり、該中空立体円弧体50は、栓体54付き開口を介して中空内部に出し入れ自在に液体または粉粒体を投入させるものである。なお、第5実施形態の図10は図示しない金属製フレキシブル管装置に装着されて振動減衰フレキシブル管装置10−4を構成する。第5実施形態の振動減衰器14−4では、金属製フレキシブル管12に対して着脱自在に外嵌できる中空立体円弧体50と、その中空内部に充填される質量調整液52と、を備えている。振動減衰器14−4は、円筒の一部をその円筒軸100に沿って軸方向に切り欠いた切欠き22を有し、断面C字状の中空立体形状の円弧体50で構成された不完全円筒体15−3で形成されている。この実施形態の振動減衰器14−4は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができる。また、管12の長手方向に移動自在である。中空立体円弧体50は、例えば合成樹脂プラスチックから形成されており、図示しないベルト、紐、取り付けバンド、両端側のクリップ止め固定等の任意の固定手段により金属製フレキシブル管12の外面にその円弧内壁側をあてがって外嵌固定される。中空立体円弧体50にはその上部の開口を開閉する栓部材54が取り付けられている。栓部材54を開けて例えば水等を投入し該振動減衰器14−4全体の質量を調整し、管12表面の凹凸部との関係で形成される非密着部や空隙Hなどにより金属製フレキシブル管12の質量分布調整を行うことができる。また、管12の長手方向移動自在を確保した状態で管12に着脱外嵌されるから、1つの固定点自体での振動減衰器の質量調整ができ、これによる管12の質量分布を変化させることができる。
【0041】
なお、図11の第6実施形態に係るフレキシブル管12についての振動減衰器14−5は、図1〜図4の実施形態に類似する構成であるが、やや肉厚の金属製立体円弧板を用いた不完全円筒体15−4で振動減衰器を構成し、図示しない任意の固定部材により金属製フレキシブル管12に着脱自在に外嵌させたものである。質量は該不完全円筒体15−4自体の重量で確保している。さらに、この第6実施形態の振動減衰器14−5では、不完全円筒体15−4の内壁にゴムやバネ等の弾性部材58を取り付け金属製フレキシブル管12に外嵌させた状態では、管12の外面と振動減衰器の内壁との間にこの弾性部材58を介装させた状態で嵌め付けている。これによって、該弾性部材があたかもダイナミックダンパのように機能し、効果的に振動吸収を行って減衰させることができる。図示しないが、第6実施形態に係るフレキシブル管12についての振動減衰器14−5についても、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材を設けるとよい。その際、補強線材は同時に振動減衰器に対する質量付加機能を有し、質量調整を行なえる。なお、上記の不完全円筒体15−4として、例えば合成樹脂プラスチック成形材からなる中空立体円弧板に砂や流体などを充填したウエイト部材として構成してもよい。なお、第6実施形態の図11は金属製フレキシブル管装置に装着されて振動減衰フレキシブル管装置10−5を構成する。
【0042】
次に図12、図13により、第7実施形態の振動減衰フレキシブル管装置について、説明するが、第1実施形態と同一構成部材には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図13において、本実施形態の振動減衰フレキシブル管装置10−6は、表面に凹凸部16,18をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管12と、金属製フレキシブル管12に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部を有するとともに管の長手方向に移動自在な振動減衰器14−6と、を備えている。図12に示すように、本実施形態の振動減衰器14−6は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌する円筒コイルバネからなるコイルバネ部材60から形成されている。図13において、振動減衰器14−6は周状に 金属製フレキシブル管12の凸部18と密着する6箇所の密着部206と凹部16間に形成される5箇所の非密着部216を有している。本実施形態のコイルバネは、軸方向に密接して線条を螺旋形に巻回して円筒形に形成してあり、各線条とフレキシブル管の凸部18とが密接するとともに、凹部16との間隙部分が非密着部となる。振動減衰器14−6は、コイルバネ部材60から形成されるが、金属製フレキシブル管12の一端側から予め挿入させられ、金属製フレキシブル管に外嵌される嵌着体で構成される。また、振動減衰器14−6は、金属製フレキシブル管12を立てた状態で自重による落下はしないが外力により自在に金属製フレキシブル管の長手方向に移動するように外嵌される。すなわち、コイルバネ部材60はその円筒内側を金属製フレキシブル管12に貫挿させ、その状態でフレキシブル管との間でガタツキを生じるほどの管径差はなく、軽い嵌合力で金属製フレキシブル管12とコイルバネ部材60は嵌合している。したがって、外力を加えると簡単に管長手方向に移動しうる。また、図14に示すように、コイルバネ部材60はバネ長手軸周りに捩ることによりコイル線材を外側へ押し広げることにより簡単にフレキシブル管の長手方向に移動させることができる。振動減衰器を円筒コイルバネ部材とすることにより、コイルバネ自体が伸縮、曲げ自在に弾性変形し、さらに、軸長手方向、軸から曲がる方向、各線材どうしでの伸縮、曲げ復帰が自在に可能であるから、嵌合する金属製フレキシブル管12の施工現場でのどのような設置状態であっても自在に変形させて適度の嵌合状態を維持させることができる。
【0043】
コイルバネ部材60は、図15(a)、(b)に示すように、バネ軸200方向に1巻きの線材それぞれの間隔Hを設けて各巻きの線材どうしが密接しないように巻回した構成とすることもできる。この場合、例えば線材径を直径0.2mm〜0.5mm程度とすると、変形量の大きな弾性変形が得られ、図16に示すようにその場合にはコイルバネとフレキシブル管の軸を平行に隣接配置し、コイルバネを回してバネの線材をフレキシブル管へ送り込むようにフレキシブル管に振動減衰器を取り付けることもできる。
【実施例】
【0044】
図1〜図4の構成の振動減衰器を用いて外径25mm、内径20mmの金属製フレキシブル管に通水し、その際の機側0.5メートルの位置での騒音変化を計測しその結果を図17に示す。騒音には、ポンプ、その他の騒音も含まれる。なお、振動減衰器はフレキシブル管上で最も減衰効果を得る箇所に1個取り付けた。図17に示すように、通水圧力を1.0MPa程度にすると振動減衰器を取り付けた場合には取り付けない場合に比較して9dB(A)程度の騒音減衰が得られることが確認できた。
【0045】
以上説明した本発明の振動減衰フレキシブル管装置は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の振動減衰フレキシブル管装置は、液体、気体その他の流体搬送用の配管に用いられる種々の金属製フレキシブル管について有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6 振動減衰フレキシブル管装置
12 金属製フレキシブル管
14、14−1,14−2,14−3,14−4,14−5,14−6 振動減衰器
15,15−1,15−2,15−3,15−4 不完全円筒体
20 密着部
22 切欠き
33 連結部
x1、x2、x3 密着点・密着部分
H 空隙
100 円筒軸
50 中空立体円弧体
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動減衰機能を有する流体搬送用の金属製フレキシブル管の振動減衰フレキシブル管装置及び振動減衰器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体搬送用の金属製フレキシブル管が公知である。この金属製フレキシブル管は、素材となる金属がゴム等と異なり騒音や振動に対する減衰能が低い。また、金属製フレキシブル管の内面は襞が連続する形状のため、内面が平滑なゴムホース等に比べ、管の内部に気体又は液体が流れることによって騒音や振動の発生が生じやすい性質がある。このため、例えば住宅地、学校、研究所等の使用場所や使用条件によっては、それらの騒音、振動が問題になる場合がある。騒音、振動が発生した場合にこれらを軽減するための方法として、例えば金属製フレキシブル管の外側全体あるいはある程度の長さにわたり防音マット等を巻きつける方法がある。しかしながら、金属製フレキシブル管の外周に防音マットを巻く方法はクリーンルームや高温状態等の環境下では使用することができない。また、全長あるいはある程度の長さにわたって防音マット等を巻きつける作業に多くの労力や資材を必要とし、防音作業コストが高くなり、作業時間も長時間を要する問題があった。これに対し、特許文献1の振動抑制機能付フレキシブル管が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−32884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1は、フレキシブル管の外周にパイプを配設し、パイプとフレキシブル管の間に例えば粘弾性材料からなる振動抑制体を設けたものである。この特許文献1のフレキシブル管では同文献図1、2に示すように、パイプの一端開口から予めフレキシブル管を挿入し、その後両端開口からパイプとフレキシブル管の間に隙間なく弾性材などを充填したものである。しかしながら、フレキシブル管周りの振動、騒音は具体的な取り付け現場でのフレキシブル管の長さ、曲がり、接続先の機器、振動発生系など複雑な要素があり、この特許文献1のようにフレキシブル管の一部にパイプと弾性材などで固定設置するだけでは騒音を効果的に抑制しうることは困難である。また、この特許文献1のものでは、施工時に予めフレキシブル管をパイプの一端開口から挿入し、その後、弾性材をパイプの両端開口から充填する作業が必要であり、材料コスト、作業時間がかかり、また、このような方法では充填する弾性材の量の調整をすることは極めて困難で、具体的な施工現場で騒音抑制効果を得ることが確認されるまでには相当の時間を要するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、極めて簡単な構成で低コストであり、しかも短時間で具体的な施工現場において振動、騒音を生じさせにくい施工を確実に行うことができる振動減衰フレキシブル管装置及び振動減衰器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、表面に凹凸部16,18をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管12と、金属製フレキシブル管12に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部x1を有するとともに管の長手方向100にスライド自在な振動減衰器14〜14−6と、を備えた振動減衰フレキシブル管装置10〜10−6から構成される。本発明は、金属製フレキシブル管の長さ方向の一箇所又は複数個所に錘体としての振動減衰器を取り付け、金属製フレキシブル管の固有振動数及び振動モードを任意に変化させる手段を提供する。金属に限らず、物体はその質量分布と剛性分布に応じて固有の振動数を備える。金属製フレキシブル管の内部を気体又は液体が流れることによって発生する騒音や振動は、それ自体に振動要素を持っている原動機等、すなわちポンプ等の振動や脈動が伝わり発生する強制振動と金属製フレキシブル管内を流体が流れる渦等で発生する自励振動がある。これらの振動周波数と金属製フレキシブル管の固有振動数が一致又は近いときに、共鳴、共振現象が起き、騒音、振動が増幅される。金属製フレキシブル管は自在に曲げることができ、形状を変えることができるため、設置スペースに応じて種々の形状に変形させて使用される。このため、同じ長さの金属製フレキシブル管であっても使用場所、使用条件で固有振動数及び振動モードが変わり、共振、共鳴現象の事前予測は困難である。本発明では、外部からの操作で簡単にフレキシブル管に対して着脱自在に外嵌でき、さらに外嵌状態で管の長手方向にスライド自在な振動減衰器をフレキシブル管に取り付けることにより、当該現場での当該フレキシブル管についての減衰能を最も高く発揮させることができる取り付け位置を簡単に設定でき、かつ短時間で振動、騒音抑制施工作業を完了させることができる。これによって、もし、騒音、振動がその使用環境において許容できない程度の場合に、その現場で金属製フレキシブル管の長さを変えたり、金属製フレキシブル管を製作する必要がない。振動減衰器は、金属製フレキシブル管に貫挿離脱自在で着脱自在に外嵌される円筒状の外嵌体で形成してもよく、また、軸方向にある程度の長さを有し、かつ、軸方向に連続した切り欠きを備えて全体が断面C字状に形成した円弧体あるいは円弧板形状としてもよい。軸方向に連続した切り欠きを備えた全体が断面C字状の円弧体とすることにより、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向へ向けた押し付け操作で着脱外嵌させることができ、作業現場での取り付け作業性を良好に保持することができる。
【0007】
振動減衰器14〜14−6は、金属製フレキシブル管12に外嵌された状態で少なくともその一部にフレキシブル管表面に対する非密着部又は空隙Hを有する嵌着体からなるとよい。完全密着状態では振動減衰機能が低いことは実験的に検証されている。金属製フレキシブル管に対して非密着部あるいは空隙部分を有すると、振動減衰器14と管12の接触部が微小にすべり、またはその部分でかつ管表面と充分に離れた位置の部分は密着部分の振動とは、遅れや接触形態によって異なる種類の振動を行なうことになり、結果的に管12の振動の減衰能を向上させる。
【0008】
また、振動減衰器14〜14−6は、金属製フレキシブル管12を立てた状態で自重による落下はしないが外力により自在に金属製フレキシブル管12の長手方向に移動するように外嵌されているとよい。
【0009】
また、振動減衰器14〜14−5は、金属製フレキシブル管12の軸100方向と交差する方向に向けた金属製フレキシブル管に対する操作により金属製フレキシブル管に外嵌させるようにするとよい。具体的には、C字状などの円筒部材の一部を軸方向に切欠いた形態のものでは直交方向に押し当てて嵌着操作することとなる。
【0010】
また、振動減衰器14〜14−2、14−4、14−5は、軸方向の切欠きを有する不完全円筒体15〜15−2、15−4,15−5を含むとよい。
【0011】
また、振動減衰器14−1は、複数の不完全円筒体38,39とそれらの円筒軸100を曲がり自在にそれらの不完全円筒体を連結する連結部33を備えるとよい。複数の不完全円筒体は軸方向サイズが大小種々の大きさのものや短い軸方向長さの不完全円筒体も含む。短い軸方向長さの不完全円筒体を連結部でくり返して形成した構成としてもよい。
【0012】
また、振動減衰器14,14−1、14−6の器体自体が弾性変形して金属製フレキシブル管12に対して着脱外嵌自在であるとよく、器体の軽量化、着脱外嵌や軸方向移動などの操作をしやすくさせる。
【0013】
また、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14、14−1、14−2、14−5の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材40を設けるとよい。
【0014】
また、振動減衰器14−3は、挟着方向にバネ付勢され金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌する開閉部材42,44を有するクリップ装置からなるとよい。
【0015】
また、振動減衰器14−4は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌する中空立体円弧体50からなり、該中空立体円弧体は、栓体54付き開口を介して中空部に出し入れ自在に液体または粉粒体を投入させるようにしてもよい。
【0016】
また、振動減衰器14−6は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌するコイルバネ部材60からなるとよい。
【0017】
また、本発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置10〜10−6に用いられる振動減衰器14〜14−6から構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の振動減衰フレキシブル管装置によれば、表面に凹凸部をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管と、金属製フレキシブル管に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部を有するとともに管の長手方向に移動自在な振動減衰器と、を備えた構成であるから、極めて簡単な構成で低コストであり、しかも短時間で具体的な施工現場において振動、騒音を生じさせにくい設置位置を確実に設定して施工を行うことができる。したがって、振動、騒音に起因する施工作業を別に行なったり、施工やり直しなどを行なう必要がなく、作業効率を向上させることができる。
【0019】
また、振動減衰器は、金属製フレキシブル管に外嵌された状態で少なくともその一部にフレキシブル管表面に対する非密着部又は空隙を有する嵌着体からなる構成であるから、金属製フレキシブル管に外嵌させて取り付ける構成であって、かつ、金属製フレキシブル管12の振動を効果的に減衰させることができる。
【0020】
さらに、振動減衰器は、金属製フレキシブル管を立てた状態で自重による落下はしないが外力により自在に金属製フレキシブル管の長手方向に移動するように外嵌されている構成であるから、着脱自在な外嵌構成、金属製フレキシブル管の長手方向に対する移動自在な構成、並びに空隙あるいは非密着部を有して振動減衰機能を確保し得る構成を同時に実現することができる。
【0021】
また、振動減衰器14〜14−5は、金属製フレキシブル管12の軸100方向と交差する方向に向けた金属製フレキシブル管に対する操作により金属製フレキシブル管に外嵌させる構成であるから、金属製フレキシブル管の施工後において振動減衰のための調整工事を行なえ、施工作業の進捗等と無関係に振動減衰工事を行なえて作業効率を向上させ得る。
【0022】
また、振動減衰器は、軸方向の切欠きを有する不完全円筒体を含む構成であるから、金属製フレキシブル管に対する着脱自在な外嵌構成、金属製フレキシブル管の長手方向に対する移動自在な構成を具体的に実現し、同時に装置の軽量化、構造の簡単化に資する。
【0023】
また、振動減衰器は、複数の不完全円筒体とそれらの円筒軸を曲がり自在にそれらの不完全円筒体を連結する連結部を備えた構成であるから、具体的な施工現場に対応して金属製フレキシブル管を曲げて設置する場合にもこれに適応して振動減衰器を外嵌させることができる。
【0024】
また、振動減衰器の器体自体が弾性変形して金属製フレキシブル管に対して着脱外嵌自在である構成とすることにより、構造の簡素化、軽量化を実現し得る。
【0025】
また、振動減衰器の外面に沿って嵌着しフレキシブル管軸に略直交する方向に押し付けて外嵌する補強線材を設けた構成とすることにより、振動減衰の本体を例えば合成樹脂製の成形品等を用い、その嵌合力を補強して確実にフレキシブル管に対して振動減衰器を外嵌させることができる。よって、振動減衰器を低コストに生産し得る。
【0026】
また、振動減衰器は、挟着方向にバネ付勢され金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する開閉部材を有するクリップ装置からなる構成であるから、金属製フレキシブル管の工事のどの段階においても振動減衰工事をすることができる上に、外嵌の操作も簡単で減衰調整操作を簡易に行なうことができる。
【0027】
また、振動減衰器は、金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する中空立体円弧体からなり、該中空立体円弧体は、栓体付き開口を介して中空部に出し入れ自在に液体または粉粒体を投入させる構成であるから、振動減衰器の質量の増減を微調整することができ、減衰器能を最も効果的に発揮させ得る器体の質量やフレキシブル管の長手方向位置を正確に設定することが可能である。
【0028】
また、振動減衰器14−6は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌するコイルバネ部材60からなる構成であるから、振動減衰器全体並びにコイルの1巻き部分自体が伸縮、可撓性を有するから金属製フレキシブル管の施工現場での取り付け状態に対応して無理なく外嵌させることができ、かつ軸方向についても移動可能であるから振動減衰調整を具体的に行なうことができる。
【0029】
また、本発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置10〜10−6に用いられる振動減衰器14〜14−6から構成されるので、それぞれについての振動減衰器の構成を生かして金属製フレキシブル管の振動減衰を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る振動減衰フレキシブル管装置の斜視構成図である。
【図2】図1装置の端面図である。
【図3】(a)は、図1の装置の振動減衰器の端面並びに作用説明図、(b)は、その平面図である。
【図4】図1の装置の金属製フレキシブル管と振動減衰器とを離して示した斜視説明図である。
【図5】(a)は、第2実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の平面図、(b)は、その側面図である。
【図6】図5の振動減衰器の斜視説明図である。
【図7】第3実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の斜視説明図である。
【図8】第4実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の斜視説明図である。
【図9】図8の振動減衰器を金属製フレキシブル管に外嵌させた状態の斜視説明図である。
【図10】第5実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の斜視説明図である。
【図11】第6実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の斜視説明図である。
【図12】第7実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器の斜視図である。
【図13】第7実施形態の振動減衰フレキシブル管装置の振動減衰器のみを断面で示した一部縦断面説明図である。
【図14】図12のコイルバネを金属製フレキシブル管に装着操作する際の端面側から見た作用説明図である。
【図15】(a)は、図12,13の振動減衰器において、他のコイルバネ部材を用いた例を示す一部縦断面説明図、(b)は、そのコイルバネ部材の斜視図である。
【図16】図15(b)のコイルバネ部材の金属製フレキシブル管への装着操作例を示す作用説明図である。
【図17】実施例の騒音値を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1ないし図4は本発明の第1実施形態を示している。本実施形態の振動減衰フレキシブル管装置10は、金属製フレキシブル管12と、振動減衰器14と、を含み、断面C字状の円弧体で構成されて、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができるタイプの振動減衰器を備えている。
【0032】
図1、4において、金属製フレキシブル管12は、例えば、流体搬送途中の配管方向変更、配管芯ずれ吸収、振動吸収、膨張収縮吸収などのために液体やガス等の流体搬送配管系の要所に用いられる。金属製フレキシブル管12は、表面に凹凸部16,18を繰り返し一方向に長く形成された襞付き中空円筒形状の金属製蛇腹管からなり、本実施形態では、ステンレス製の薄いパイプに波付け加工して製造される。この金属製フレキシブル管12は、外周にステンレスのワイヤを編みこんだブレードを被着させて用いる場合がある。
【0033】
振動減衰器14は、金属製フレキシブル管12に外嵌被着されて振動源周波数と共通ないしは近似する金属製フレキシブル管の固有振動数を変動させて共振点あるいは共振領域からずらした振動数とするように外的にずらす擬似固有振動数生成手段であり、例えば振動源が内部流体による自励振動あるいは原動機ポンプのような強制振動によるもののいずれもの周波数と金属製フレキシブル管の固有振動周波数との共振状態についての振動減衰機能を有する。
【0034】
本実施形態において、振動減衰器14は、特に、フレキシブル管に対して着脱自在に外嵌され、かつ、外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部20を有し、同時に他の非密着部を有する。さらに、該振動減衰器14は、金属製フレキシブル管12の長手方向にスライド自在に設けられている。
【0035】
具体的には、図1〜図4において、振動減衰器14は、円筒の一部をその円筒軸100に沿って軸方向に切り欠いた切欠き22を有し、断面C字状の円弧体で構成された不完全円筒体15で形成されている。この実施形態の振動減衰器14は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができる。また、管12の長手方向に移動自在である。実施形態において、この不完全円筒体15は例えばある程度のばね性を有する金属製円筒板をその断面で円弧の一部、例えば中心角で40度範囲程度を軸方向に切り欠いて断面C字状にした不完全な円筒板で構成されており、金属製フレキシブル管12の凸部18による直径よりわずかに大きな直径を有して外嵌時に金属製フレキシブル管の外面に嵌め合わせられて嵌着される。この不完全円筒体、あるいは不完全金属製円筒板はその切欠き両端部を内曲げ圧着して補強している。この不完全円筒体15は、図3(a)に示すように、その素材の性質により周方向の両端を押し開く力を加えると弾性変形し、力を解除すると実線示のように復元する。したがって、図4に示すように、切欠き22部分を金属製フレキシブル管12の表面にあてがい、強く押し付けることによりフレキシブル管の直径長さ部分で図3(a)鎖線示のように不完全円筒体15の両端側が変形拡大し、さらに押し込んでフレキシブル管の外面に嵌ると復元して図1のように完全に外嵌被着される。このとき、この不完全円筒体15は平滑な曲面の内壁を有しており、したがって、フレキシブル管の凹凸部表面と不完全円筒体15の内壁とは、例えばx1、x2、x3の点、あるいは部分において密着し、それ以外の部分は両者は離れた非密着部を形成し、さらには凹部16と不完全円筒体15の内面との間には空隙Hが形成されている。このように、振動減衰器14は、フレキシブル管12に外嵌された状態で少なくともその一部にフレキシブル管表面に対する非密着部又は空隙Hを有することが必要である。例えば、振動減衰器14のすべての部分が金属製フレキシブル管12外面に完全密着した状態では金属製フレキシブル管12に比し振動減衰器14の質量が小さい場合にこれを減衰する機能は低く、ほとんど減衰能を有しない。これは、完全密着状態であると振動減衰器14自体が単に管12に付属して一体的に振動するだけとなり、振動減衰器14による質量付加効果の影響が小さすぎるためと考えられる。一部にフレキシブル管表面に対する非密着部又は空隙Hを有する状態で振動減衰器が外嵌されていれば、空隙をあけて管12から離れた部分あるいは非密着部分が独自の質量、バネ機能を有し、これらがフレキシブル管12に一部を密着させる状態で連結されている場合は振動減衰器14による質量付加効果だけでなく、管12との間ですべることによる振動エネルギーの吸収や、振動減衰器14自体の質量分布や剛性分布の影響を効果的に利用できるからである。不完全円筒体15からなる振動減衰器14は、図1の状態から不完全円筒体15の断面両端側を図3(a)の鎖線示のように強制的に拡大させて離脱させることができる。
【0036】
さらに、振動減衰器である不完全円筒体15は、金属製フレキシブル管12の長手方向にスライド自在に設けられている。すなわち、不完全円筒体15は金属製フレキシブル管12を立てた状態で自重による落下はしないが、例えば手動の操作で簡単にフレキシブル管の長手いずれの方向にもスライド移動するように外嵌されていることが必要である。これによって、金属製フレキシブル管の質量分布調整を自在に行なえる。なお、図示しないが、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材を設けるとよい。補強線材は同時に振動減衰器に対する質量付加機能を有する。補強線材は、不完全円筒体15の外面と略同じ円弧曲率として外嵌させるとよい。
【0037】
図5,6は、第2の実施形態の振動減衰フレキシブル管装置10−1の振動減衰器の構成を異ならしめた例を示しており、この第2実施形態において、金属製フレキシブル管12は第1実施形態と同一構成であり、図5,6では装着状態の図示を省略している。振動減衰器の基本構造や素材、機能は図1〜図4記載の第1実施形態のものと同一である。振動減衰器14−1は、円筒の一部をその円筒軸100に沿って軸方向に切り欠いた切欠き22を有し、断面C字状の円弧体で構成された不完全円筒体15−1で形成されている。この実施形態の振動減衰器14は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができる。また、管12の長手方向に移動自在である。本実施形態の振動減衰器14−1の不完全円筒体15−1は、第1実施形態の不完全円筒体15の円筒軸方向中央位置で相互に反対方向となる周方向に2個の切り込み溝32をオフセット状に刻設し小連続部34を有して中央に細長い円弧片36を形成したものである。中央の細い円弧片36と小連続部34,34が請求項5の連結部33に相当する。この実施形態では、不完全円筒体15は細長い円弧片36の両側軸方向に2分割された第1、第2不完全円筒体38,39を形成している。詳細には、第1、第2不完全円筒体38,39は、それぞれ不完全の金属円筒板で形成され、円弧を開閉する方向にバネ性を有している。このように、第2実施形態では、振動減衰器14は、複数の不完全円筒体38,39とそれらの円筒軸100を曲がり自在にそれらの不完全円筒体を連結する小連続部34を備えて構成されている。よって、第1、第2不完全円筒体38,39、小連続部34、円弧片36は一体構成となっている。これによって、施工現場の状況に応じて例えば金属製フレキシブル管12を曲げて配設する場合などで、その曲がりに対応して細い円弧片36部分が曲り、振動減衰器の外嵌着脱自在性と、管長手方向に対するスライド自在性と、軸方向からの曲り自在性を保持しつつ金属製フレキシブル管の振動減衰を行うことができる。なお、図示しないが、この第2実施形態の振動減衰フレキシブル管装置10−1においても、不完全円筒体15の外面から略同じ円弧曲率の図示しない補強線材を外嵌させてもよい。すなわち、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材を設けるとよい。
【0038】
さらに、図7に示す第3実施形態の振動減衰器14−2では、不完全円筒体15−2は、第1実施形態のそれと同様の形状を有し、同様の機能を行うが、材質は例えば硬質のプラスチック成形材で構成されている。振動減衰器14−2は、円筒の一部をその円筒軸100に沿って軸方向に切り欠いた切欠き22を有し、断面C字状の円弧体で構成された不完全円筒体15−2で形成されている。この実施形態の振動減衰器14は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができる。また、管12の長手方向に移動自在である。そして、本実施形態において、不完全円筒体15−2の外面から略同じ円弧曲率の補強線材40が外嵌されている。補強線材40は一部切欠きの円筒板に設けた位置決め凹溝に嵌合されており、不完全円筒体15−2に対して質量を付加するとともに、軸方向の切欠き22の両端部分にバネ性を付加し金属製フレキシブル管12への着脱外嵌操作時の嵌着状態保持を補強している。すなわち、本実施形態において、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材40を設けている。なお、第3実施形態の図7は図示しない金属製フレキシブル管装置に装着されて振動減衰フレキシブル管装置10−2を構成する。
【0039】
また、図8、図9の第4実施形態の振動減衰器14−3では、2個の円弧板を対向配置し、それらの一辺側をコイルバネなどのバネ部材46で連結して開閉側となる他辺側を挟着方向にバネ付勢したクリップ構造で構成されている。すなわち、本実施形態において、振動減衰器14−3は、一部に挟着方向にバネ付勢された円弧板としての開閉部材42,44と、他部においてバネに抗して開閉部材を開操作させる操作部48と、を有するクリップ装置で形成されている。そして、開閉部材42,44は、操作部48の操作により金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する。この実施形態の振動減衰器14は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向からの操作で着脱外嵌させることができる。この第4実施形態の振動減衰器14−3においてもフレキシブル管12に着脱自在に外嵌し、外嵌した状態で少なくとも1箇所の密着部を有し、さらに管12の長手方向に移動自在である。円弧板の開閉側で金属製フレキシブル管の外面を挟み付け、離脱させるときには、開閉側の他端側の摘み部48を摘んで管12との係合を解くことができる。なお、第4実施形態の図9は金属製フレキシブル管装置に装着されて振動減衰フレキシブル管装置10−3を構成する。
【0040】
また、図10は第5実施形態の振動減衰器14−4を示している。振動減衰器14−4は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌する中空立体円弧体50からなり、該中空立体円弧体50は、栓体54付き開口を介して中空内部に出し入れ自在に液体または粉粒体を投入させるものである。なお、第5実施形態の図10は図示しない金属製フレキシブル管装置に装着されて振動減衰フレキシブル管装置10−4を構成する。第5実施形態の振動減衰器14−4では、金属製フレキシブル管12に対して着脱自在に外嵌できる中空立体円弧体50と、その中空内部に充填される質量調整液52と、を備えている。振動減衰器14−4は、円筒の一部をその円筒軸100に沿って軸方向に切り欠いた切欠き22を有し、断面C字状の中空立体形状の円弧体50で構成された不完全円筒体15−3で形成されている。この実施形態の振動減衰器14−4は、金属製フレキシブル管に対して管軸に略直交する方向への押し付け操作で着脱外嵌させることができる。また、管12の長手方向に移動自在である。中空立体円弧体50は、例えば合成樹脂プラスチックから形成されており、図示しないベルト、紐、取り付けバンド、両端側のクリップ止め固定等の任意の固定手段により金属製フレキシブル管12の外面にその円弧内壁側をあてがって外嵌固定される。中空立体円弧体50にはその上部の開口を開閉する栓部材54が取り付けられている。栓部材54を開けて例えば水等を投入し該振動減衰器14−4全体の質量を調整し、管12表面の凹凸部との関係で形成される非密着部や空隙Hなどにより金属製フレキシブル管12の質量分布調整を行うことができる。また、管12の長手方向移動自在を確保した状態で管12に着脱外嵌されるから、1つの固定点自体での振動減衰器の質量調整ができ、これによる管12の質量分布を変化させることができる。
【0041】
なお、図11の第6実施形態に係るフレキシブル管12についての振動減衰器14−5は、図1〜図4の実施形態に類似する構成であるが、やや肉厚の金属製立体円弧板を用いた不完全円筒体15−4で振動減衰器を構成し、図示しない任意の固定部材により金属製フレキシブル管12に着脱自在に外嵌させたものである。質量は該不完全円筒体15−4自体の重量で確保している。さらに、この第6実施形態の振動減衰器14−5では、不完全円筒体15−4の内壁にゴムやバネ等の弾性部材58を取り付け金属製フレキシブル管12に外嵌させた状態では、管12の外面と振動減衰器の内壁との間にこの弾性部材58を介装させた状態で嵌め付けている。これによって、該弾性部材があたかもダイナミックダンパのように機能し、効果的に振動吸収を行って減衰させることができる。図示しないが、第6実施形態に係るフレキシブル管12についての振動減衰器14−5についても、フレキシブル管軸100に略直交する方向に押し付けて振動減衰器14の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器14をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材を設けるとよい。その際、補強線材は同時に振動減衰器に対する質量付加機能を有し、質量調整を行なえる。なお、上記の不完全円筒体15−4として、例えば合成樹脂プラスチック成形材からなる中空立体円弧板に砂や流体などを充填したウエイト部材として構成してもよい。なお、第6実施形態の図11は金属製フレキシブル管装置に装着されて振動減衰フレキシブル管装置10−5を構成する。
【0042】
次に図12、図13により、第7実施形態の振動減衰フレキシブル管装置について、説明するが、第1実施形態と同一構成部材には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図13において、本実施形態の振動減衰フレキシブル管装置10−6は、表面に凹凸部16,18をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管12と、金属製フレキシブル管12に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部を有するとともに管の長手方向に移動自在な振動減衰器14−6と、を備えている。図12に示すように、本実施形態の振動減衰器14−6は、金属製フレキシブル管12の外周に着脱自在に外嵌する円筒コイルバネからなるコイルバネ部材60から形成されている。図13において、振動減衰器14−6は周状に 金属製フレキシブル管12の凸部18と密着する6箇所の密着部206と凹部16間に形成される5箇所の非密着部216を有している。本実施形態のコイルバネは、軸方向に密接して線条を螺旋形に巻回して円筒形に形成してあり、各線条とフレキシブル管の凸部18とが密接するとともに、凹部16との間隙部分が非密着部となる。振動減衰器14−6は、コイルバネ部材60から形成されるが、金属製フレキシブル管12の一端側から予め挿入させられ、金属製フレキシブル管に外嵌される嵌着体で構成される。また、振動減衰器14−6は、金属製フレキシブル管12を立てた状態で自重による落下はしないが外力により自在に金属製フレキシブル管の長手方向に移動するように外嵌される。すなわち、コイルバネ部材60はその円筒内側を金属製フレキシブル管12に貫挿させ、その状態でフレキシブル管との間でガタツキを生じるほどの管径差はなく、軽い嵌合力で金属製フレキシブル管12とコイルバネ部材60は嵌合している。したがって、外力を加えると簡単に管長手方向に移動しうる。また、図14に示すように、コイルバネ部材60はバネ長手軸周りに捩ることによりコイル線材を外側へ押し広げることにより簡単にフレキシブル管の長手方向に移動させることができる。振動減衰器を円筒コイルバネ部材とすることにより、コイルバネ自体が伸縮、曲げ自在に弾性変形し、さらに、軸長手方向、軸から曲がる方向、各線材どうしでの伸縮、曲げ復帰が自在に可能であるから、嵌合する金属製フレキシブル管12の施工現場でのどのような設置状態であっても自在に変形させて適度の嵌合状態を維持させることができる。
【0043】
コイルバネ部材60は、図15(a)、(b)に示すように、バネ軸200方向に1巻きの線材それぞれの間隔Hを設けて各巻きの線材どうしが密接しないように巻回した構成とすることもできる。この場合、例えば線材径を直径0.2mm〜0.5mm程度とすると、変形量の大きな弾性変形が得られ、図16に示すようにその場合にはコイルバネとフレキシブル管の軸を平行に隣接配置し、コイルバネを回してバネの線材をフレキシブル管へ送り込むようにフレキシブル管に振動減衰器を取り付けることもできる。
【実施例】
【0044】
図1〜図4の構成の振動減衰器を用いて外径25mm、内径20mmの金属製フレキシブル管に通水し、その際の機側0.5メートルの位置での騒音変化を計測しその結果を図17に示す。騒音には、ポンプ、その他の騒音も含まれる。なお、振動減衰器はフレキシブル管上で最も減衰効果を得る箇所に1個取り付けた。図17に示すように、通水圧力を1.0MPa程度にすると振動減衰器を取り付けた場合には取り付けない場合に比較して9dB(A)程度の騒音減衰が得られることが確認できた。
【0045】
以上説明した本発明の振動減衰フレキシブル管装置は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の振動減衰フレキシブル管装置は、液体、気体その他の流体搬送用の配管に用いられる種々の金属製フレキシブル管について有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6 振動減衰フレキシブル管装置
12 金属製フレキシブル管
14、14−1,14−2,14−3,14−4,14−5,14−6 振動減衰器
15,15−1,15−2,15−3,15−4 不完全円筒体
20 密着部
22 切欠き
33 連結部
x1、x2、x3 密着点・密着部分
H 空隙
100 円筒軸
50 中空立体円弧体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸部をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管と、
金属製フレキシブル管に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部を有するとともに管の長手方向に移動自在な振動減衰器と、を備えたことを特徴とする振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項2】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管に外嵌された状態で少なくともその一部に管表面に対する非密着部又は空隙を有する嵌着体からなることを特徴とする請求項1記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項3】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管を立てた状態で自重による落下はしないが外力により自在に金属製フレキシブル管の長手方向に移動するように外嵌されていることを特徴とする請求項1または2記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項4】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管の軸方向と交差する方向に向けた金属製フレキシブル管に対する操作により金属製フレキシブル管に外嵌させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項5】
振動減衰器は、軸方向の切欠きを有する不完全円筒体を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項6】
振動減衰器は、複数の不完全円筒体とそれらの円筒軸が曲がり自在にそれらの不完全円筒体を連結する連結部を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項7】
振動減衰器の器体自体が弾性変形して金属製フレキシブル管に対して着脱外嵌自在であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項8】
フレキシブル管軸に略直交する方向に押し付けて振動減衰器の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材を設けたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項9】
振動減衰器は、挟着方向にバネ付勢され金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する開閉部材を有するクリップ装置からなることを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項10】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する中空立体円弧体からなり、該中空立体円弧体は、栓体付き開口を介して中空部に出し入れ自在に液体または粉粒体を投入させるものであることを特徴とする請求項4ないし9のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項11】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌するコイルバネ部材からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置に用いられる振動減衰器。
【請求項1】
表面に凹凸部をくり返し一方向に長く形成された金属製フレキシブル管と、
金属製フレキシブル管に着脱自在に外嵌され外嵌された状態で少なくとも1箇所の密着部を有するとともに管の長手方向に移動自在な振動減衰器と、を備えたことを特徴とする振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項2】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管に外嵌された状態で少なくともその一部に管表面に対する非密着部又は空隙を有する嵌着体からなることを特徴とする請求項1記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項3】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管を立てた状態で自重による落下はしないが外力により自在に金属製フレキシブル管の長手方向に移動するように外嵌されていることを特徴とする請求項1または2記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項4】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管の軸方向と交差する方向に向けた金属製フレキシブル管に対する操作により金属製フレキシブル管に外嵌させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項5】
振動減衰器は、軸方向の切欠きを有する不完全円筒体を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項6】
振動減衰器は、複数の不完全円筒体とそれらの円筒軸が曲がり自在にそれらの不完全円筒体を連結する連結部を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項7】
振動減衰器の器体自体が弾性変形して金属製フレキシブル管に対して着脱外嵌自在であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項8】
フレキシブル管軸に略直交する方向に押し付けて振動減衰器の外面に着脱可能に外嵌し振動減衰器をフレキシブル管に対して弾性的に密着方向に付勢させる補強線材を設けたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項9】
振動減衰器は、挟着方向にバネ付勢され金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する開閉部材を有するクリップ装置からなることを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項10】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌する中空立体円弧体からなり、該中空立体円弧体は、栓体付き開口を介して中空部に出し入れ自在に液体または粉粒体を投入させるものであることを特徴とする請求項4ないし9のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項11】
振動減衰器は、金属製フレキシブル管の外周に着脱自在に外嵌するコイルバネ部材からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の振動減衰フレキシブル管装置に用いられる振動減衰器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−78146(P2010−78146A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187634(P2009−187634)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(594115463)株式会社中野製作所 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(594115463)株式会社中野製作所 (9)
【Fターム(参考)】
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