説明

振動発生装置および電動歯ブラシ

【課題】使用時に発生する振動が原因となって使用者に与えられる不快感を低減することが可能な電動歯ブラシを得る。
【解決手段】電動歯ブラシ100は、モータ28と、モータ28によって回転駆動される偏心錘28Wと、偏心錘28Wを内部に含むインナーケース21M,21Nと、インナーケース21M,21Nの外部に設けられた衛生保持部材40と、インナーケース21M,21Nおよび衛生保持部材40の間に設けられ、偏心錘28Wの回転駆動によって発生した振動を衛生保持部材40に伝達する振動伝達部材22と、インナーケース21M,21Nおよび振動伝達部材22の間を弾性的に連結するように設けられる弾性部材21Rと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置および電動歯ブラシに関し、特に、駆動ユニットと振動部材とを備え、駆動ユニットによって振動部材が振動される振動発生装置および電動歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
振動発生装置は、駆動ユニットと振動部材とを備える。特開平6−269317号公報(特許文献1)、特公表2005−530545号公報(特許文献2)、特開2009−136486号公報(特許文献3)、特開平10−192054号公報(特許文献4)、および特開2009−219544号公報(特許文献5)は、振動発生装置の一例として、電動歯ブラシに関する発明を開示する。
【0003】
特許文献1〜3に開示された電動歯ブラシにおいては、ケース内に、駆動ユニットが配置される。ケースの先端に、振動部材としてのブラシが取り付けられる。駆動ユニットには、モータおよび偏心錘が内蔵される。偏心錘は、モータの先端に取り付けられる。モータによって、偏心錘が回転駆動される。偏心錘の回転によって発生した振動は、ブラシに伝達される。
【0004】
特許文献4,5に開示された電動歯ブラシにおいては、ケース内に、駆動ユニットが配置される。ケースの先端に、振動部材としてのブラシ(ステム)が取り付けられる。駆動ユニットには、モータが内蔵される。モータの先端には、回転ロッドが取り付けられる。回転ロッドは、ステム内部に入り込むように延在する。回転ロッドの先端に、偏心錘が取り付けられる。モータによって、回転ロッドおよび偏心錘が回転駆動される。偏心錘は、ステムの内部で回転する。偏心錘の回転によって発生した振動は、ブラシに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−269317号公報
【特許文献2】特公表2005−530545号公報
【特許文献3】特開2009−136486号公報
【特許文献4】特開平10−192054号公報
【特許文献5】特開2009−219544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、使用時に発生する振動が原因となって使用者に与えられる不快感を低減することが可能な振動発生装置および電動歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく振動発生装置は、回転駆動手段と、上記回転駆動手段によって回転駆動される偏心錘と、上記偏心錘を内部に含む第1ケースと、上記第1ケースの外部に設けられた振動部材と、上記第1ケースおよび上記振動部材の間に設けられ、上記偏心錘の回転駆動によって発生した振動を上記振動部材に伝達する振動伝達部と、上記第1ケースおよび上記振動伝達部の間を弾性的に連結するように設けられる弾性部材と、を備える。
【0008】
好ましくは、上記弾性部材は、上記振動伝達部の上記第1ケース寄りの外表面を覆うように設けられる。
【0009】
好ましくは、上記弾性部材は、上記振動伝達部の上記第1ケース寄りの端部を覆うようにキャップ状に形成される。
【0010】
好ましくは、本発明に基づく上記の振動発生装置は、上記第1ケースおよび上記振動部材の間に設けられ、上記振動伝達部の重量を重くする錘部をさらに備える。
【0011】
好ましくは、本発明に基づく上記の振動発生装置は、上記第1ケースの一端側の外表面に対して間隔を空けつつ上記第1ケースの上記一端側の外表面を取り囲むように設けられる第2ケースと、上記第1ケースおよび上記第2ケースの間に設けられる弾性体と、をさらに備える。
【0012】
好ましくは、本発明に基づく上記の振動発生装置は、一端に開口を有し、上記第1ケースの他端側の外表面および上記第2ケースの外表面に対して間隔を空けつつ上記第1ケースの上記他端側の外表面および上記第2ケースの外表面をそれぞれ取り囲むように設けられる第3ケースをさらに備え、上記第2ケースの外表面には、上記第3ケースの上記一端側の内表面に対して固定される固定部が設けられ、上記第3ケースの内表面と上記第1ケースの他端側の外表面および上記第2ケースの外表面との間には、上記第1ケースの他端側の外表面および上記第2ケースの外表面の略全周を取り囲むように隙間がそれぞれ形成される。
【0013】
好ましくは、本発明に基づく上記の振動発生装置は、上記偏心錘の回転駆動によって軸周り方向に回転する上記振動部材の回転方向における位相は、上記偏心錘の回転駆動によって軸周り方向に回転する振動伝達部の回転方向における位相に対して反転する。
【0014】
本発明に基づく電動歯ブラシは、本発明に基づく上記の振動発生装置から構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用時に発生する振動が原因となって使用者に与えられる不快感を低減することが可能な振動発生装置および電動歯ブラシを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態における振動発生装置の一例としての電動歯ブラシ(組み立てられた後の状態)を示す側面図である。
【図2】実施の形態における振動発生装置の一例としての電動歯ブラシ(組み立てられた後の状態)を示す断面図である。
【図3】実施の形態における振動発生装置の一例としての電動歯ブラシの分解した状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。
【図4】実施の形態における振動発生装置の一例としての電動歯ブラシの分解した状態(組み立てられる前の状態)を示す断面図である。
【図5】実施の形態における振動発生装置の一例としての電動歯ブラシに用いられる駆動ユニットの分解した状態(組み立てられる前の状態)を示す第1斜視図である。
【図6】実施の形態における振動発生装置の一例としての電動歯ブラシに用いられる駆動ユニットの分解した状態(組み立てられる前の状態)を示す第2斜視図である。
【図7】実施の形態における振動発生装置の一例としての電動歯ブラシおよびその振動モデルを模式的に示す図である。
【図8】比較例における振動発生装置の一例としての電動歯ブラシおよびその振動モデルを模式的に示す図である。
【図9】実施の形態および比較例のそれぞれにおける振動数と振幅との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態については、振動発生装置の一例として、モータの回転によって振動を発生させる電動歯ブラシに基づき説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0018】
(電動歯ブラシ100)
図1〜図4を参照して、実施の形態における電動歯ブラシ100について説明する。電動歯ブラシ100は、振動発生装置の一例である。図1は、電動歯ブラシ100(組み立てられた後の状態)を示す側面図である。図2は、電動歯ブラシ100(組み立てられた後の状態)を示す断面図である。
【0019】
図2においては、図示上の便宜のため、電動歯ブラシ100の上部側と下部側とが互いに分離して図示される。図3は、電動歯ブラシ100の分解した状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。図4は、電動歯ブラシ100の分解した状態(組み立てられる前の状態)を示す断面図である。
【0020】
図1および図2に示すように、電動歯ブラシ100は、アウターケース10(第3ケース)、駆動ユニット20(図2〜図4参照)、蓋部材30、および衛生保持部材40(振動部材)を備える。
【0021】
(アウターケース10)
アウターケース10は、電動歯ブラシ100の使用者によって把持されることができる。アウターケース10は、筒状部11および底部12を含み、全体として有底筒状に構成される(図3参照)。筒状部11の外表面の所定の位置には、操作部17が設けられる。筒状部11の底部12とは反対側に、蓋部材30が取り付けられる。蓋部材30を挟んでアウターケース10の反対側に、ブラシ部41およびステム部42を含む衛生保持部材40が取り付けられる。
【0022】
図2〜図4(主として図3)に示すように、筒状部11の一端11Aには、開口11Hが形成される。筒状部11の一端11A側の外表面11AS(図3参照)には、Oリング13、凹部14,15、および凸部16が設けられる。Oリング13は、外表面11ASを取り囲むように環状に設けられる。Oリング13は、外表面11ASとこの外表面11ASに嵌め込まれる蓋部材30の内表面との間に形成される隙間を液密状に塞ぐ。Oリング13によって、電動歯ブラシ100の防水性が向上する(図2参照)。
【0023】
詳細は後述されるが、凹部14は、駆動ユニット20の外表面に設けられた固定部24に係合する。凹部15は、駆動ユニット20の外表面に設けられた固定部25(図2および図4参照)に係合する。凸部16は、蓋部材30の内表面に設けられた凹部26M(図2および図4参照)に係合する。
【0024】
底部12は、内表面12Sを有し、筒状部11の他端11Bを塞ぐように設けられる。筒状部11の内表面11Sと底部12の内表面12Sとは、互いに連続するように形成される。筒状部11および底部12は、一体成型されるとよい。当該一体成型によれば、電動歯ブラシ100としての意匠性が向上する。
【0025】
筒状部11および底部12が一体成型される場合、筒状部11および底部12は、たとえば、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene共重合合成樹脂)を射出成型することによって作製される。筒状部11および底部12は、別部材として準備された後に、互いに一体化されてもよい。
【0026】
(駆動ユニット20)
図3および図4に示すように、駆動ユニット20は、一端20Aから他端20Bに向かって略棒状に構成される。矢印AR1に示すように、駆動ユニット20は、筒状部11の開口11Hを通して、アウターケース10内に挿入および配置される。
【0027】
上述のとおり、駆動ユニット20の(ミドルケース21に設けられた)固定部24は、アウターケース10における凹部14に係合する。駆動ユニット20の(ミドルケース21に設けられた)固定部25(図4参照)は、アウターケース10における凹部15に係合する。固定部24および凹部14同士の係合、ならびに固定部25および凹部15同士の係合によって、駆動ユニット20はアウターケース10(筒状部11の内表面11S)に対して固定される。
【0028】
図5および図6を参照して、駆動ユニット20について詳細に説明する。図5は、駆動ユニット20の分解した状態(組み立てられる前の状態)を示す第1斜視図である。図5においては、インナーケース21Mおよびインナーケース21Nが互いに組み合わされ、インナーケース21MN(第1ケース)が構成された状態が示される。図6は、駆動ユニット20の分解した状態(組み立てられる前の状態)を示す第2斜視図である。図6においては、インナーケース21Mおよびインナーケース21Nが分離された状態が示される。
【0029】
駆動ユニット20は、振動伝達部材22(振動伝達部)、キャップ21L、スプリング21P、錘部材22W(錘部)、弾性部材21R、弾性体21J、インナーケース21MN(図5参照)、ミドルケース21(第2ケース)、制御基板23、固定部26、モータ28(回転駆動手段)(図6参照)、偏心錘28W(図6参照)、電源部27(図6参照)、および給電用コイル29(図6参照)から構成される。
【0030】
(振動伝達部材22)
振動伝達部材22は、たとえばステンレス製の部材から構成される。振動伝達部材22は、電動歯ブラシ100(図2参照)が組み立てられた状態においては、インナーケース21MN(詳細は後述する)および衛生保持部材40の間に位置する。
【0031】
振動伝達部材22は、略円錐状に形成された取付部22Sと、略円柱状に形成された軸部22Tとを有する。取付部22Sの形状は、衛生保持部材40(図2および図3参照)に設けられた凹部43の形状に対応している。取付部22Sに、衛生保持部材40が取り付けられる。取付部22Sの一端が、駆動ユニット20における一端20Aを構成する。
【0032】
軸部22Tは、軸部22Tの一端20Aとは反対側に設けられる。軸部22Tの端部22Jの近傍は、平板状に構成される。この平板状に構成された部分には、貫通孔22Hが設けられる。詳細は後述されるが、この貫通孔22Hと、弾性部材21Rにおける貫通孔21UHと、インナーケース21Mにおける開口21E1(図5参照)と、インナーケース21Nにおける開口21E2(図6参照)とには、ボルト21Bが挿通される(矢印AR16および図2,図4参照)。
【0033】
キャップ21Lは、ゴム等の弾性を有する部材から、略円環状に形成される。キャップ21Lは、電動歯ブラシ100(駆動ユニット20)が組み立てられた状態においては、後述するミドルケース21の先端部21Kに覆い被さるように配置される(図2および図3参照)。キャップ21Lは、電動歯ブラシ100の内部に対する防水性を向上させる。キャップ21Lは、貫通孔21Gを有する。貫通孔21G内に、振動伝達部材22の軸部22Tが嵌め込まれる(矢印AR12参照)。
【0034】
環状のスプリング21Pは、キャップ21Lの内側に取り付けられる(図2参照)。スプリング21Pは、キャップ21Lと錘部材22Wとの間に挟み込まれるように配置される。
【0035】
(錘部材22W)
錘部材22Wは、たとえばステンレス製の部材から、肉厚の円筒状に形成される。錘部材22Wは、貫通孔21Xを有する。貫通孔21Xに、振動伝達部材22の軸部22Tが嵌め込まれる(矢印AR13参照)。なお、錘部材22Wは、必要に応じて設けられるとよい。
【0036】
電動歯ブラシ100(駆動ユニット20)に錘部材22Wが設けられる場合、振動伝達部材22の他端側の円柱状に形成された部分と錘部材22Wとは、(いわゆる嵌め殺し構造などによって)互いに強固に嵌合し、略一体化するように構成されるとよい。錘部材22Wが振動伝達部材22に取り付けられることによって、キャップ21Lは錘部材22Wと振動伝達部材22との間に固定される。錘部材22Wは、電動歯ブラシ100の振動伝達部材22(振動伝達部)における重量を重くするために設けられる。
【0037】
振動伝達部材22および錘部材22Wは、一つの部材から切削加工などによって一体的に形成されてもよい。この場合、当該一体的に形成された部材における振動伝達部材22に対応する部分が、振動伝達部を構成する。当該一体的に形成された部材における錘部材22Wに対応する部分が、錘部を構成する。振動伝達部材22および錘部材22Wが一つの部材から一体的に形成される場合、スプリング21Pおよびキャップ21Lについては、他の構成によって上記同様の位置に配設されるとよい。
【0038】
(弾性部材21R)
弾性部材21Rは、ゴム等の部材から構成される。弾性部材21Rは、錘部材22Wのキャップ21Lとは反対側に配置される。弾性部材21Rは、次述するインナーケース21MNの一端21D1に設けられた開口21DHに嵌め込まれる(矢印AR15参照)。弾性部材21Rは、円板部21Qおよび基台部21Uを有する。円板部21Qの略中央には、凹部21QH(図5参照)が設けられる。凹部21QHには、振動伝達部材22の下端部が嵌め込まれる(矢印AR14参照)。
【0039】
基台部21Uは、中空のキャップ状に形成される。弾性部材21Rにおいては、基台部21Uが、振動伝達部材22の下端部の外周面22Kおよび振動伝達部材22の端部22Jを覆う。基台部21Uは、中空の略角筒状に形成されてもよい。この場合、中空の略角筒状に形成された基台部21Uは、振動伝達部材22の下端部の外周面22Kのみを覆う。基台部21Uの中央を貫通するように、貫通孔21UHが設けられる。貫通孔21UHは、振動伝達部材22の貫通孔22Hに対応している。
【0040】
上述のとおり、振動伝達部材22の貫通孔22Hと、弾性部材21Rにおける貫通孔21UHと、インナーケース21Mにおける開口21E1(図5参照)と、インナーケース21Nにおける開口21E2(図6参照)とには、これらを連結するようにボルト21Bが嵌め込まれる。ボルト21Bの締結によって、振動伝達部材22は、インナーケース21MNの一端21D1に、弾性部材21Rを挟んで固定される(図2および図4参照)。弾性部材21Rによって、振動伝達部材22およびインナーケース21Mの間が弾性的に連結される。
【0041】
(インナーケース21MN)
第1ケースとしてのインナーケース21MNは、インナーケース21Mおよびインナーケース21Nから構成される。インナーケース21Mは、開口21E1,21F1(図5参照)を有する。インナーケース21Nは、開口21E2,21F2(図6参照)を有する。
【0042】
インナーケース21Mは、駆動ユニット20を構成する基本的な構造部材であり、駆動ユニット20の上部側(駆動ユニット20の一端20A側)から下部側(駆動ユニット20の他端20B側)の略全体にわたって設けられる。
【0043】
図6に示すように、インナーケース21Mの上部は、半割の円筒形状に構成される。この半割の円筒形状の部分の内側に、モータ28および偏心錘28Wが配置される。偏心錘28Wは、モータ28の回転軸に接続され、モータ28によって回転駆動される。
【0044】
インナーケース21Nも、半割の円筒形状に構成される。インナーケース21Mの上部とインナーケース21Nとは、互いに組み合わされことによって円筒形状部分21Yを構成する。モータ28および偏心錘28Wは、この円筒形状部分21Y(図5参照)の内部に含まれる。互いに組み合わされたインナーケース21Mおよびインナーケース21Nによって、第1ケースとしてのインナーケース21MN(図5参照)が構成される。
【0045】
インナーケース21MNの一端21D1側と他端21D2側との間(換言すると、円筒形状部分21Yの他端21D2側の部分)には、台座部21Zが設けられる。弾性体21Jは、円環状のゴム等の部材から構成され、台座部21Z上に載置される(矢印AR10および図2参照)。
【0046】
制御基板23(図5参照)は、駆動ユニット20(インナーケース21M)の外形形状に沿いつつ、駆動ユニット20(インナーケース21M)の長手方向に沿って延在するように設けられる。制御基板23の表面には、各種のスイッチが実装される。これらのスイッチは、アウターケース10(図2参照)に設けられた操作部17の位置に対応するように配置される。
【0047】
電源部27(図6参照)は、インナーケース21Mの内部に配置され、制御基板23およびモータ28に電気的に接続される。給電用コイル29(図6参照)も、インナーケース21Mの内部に配置される。給電用コイル29は、電源部27に接続され、電動歯ブラシ100が充電機(図示せず)上に載置された際に、電源部27を充電する。
【0048】
(ミドルケース21)
図5および図6に示すように、第2ケースとしてのミドルケース21は、円筒状に形成される。ミドルケース21は、インナーケース21MNの円筒形状部分21Yを取り囲むように配置される(矢印AR11参照)。
【0049】
上述のとおり、ミドルケース21の外表面には、固定部24(図5参照)および固定部25(図6参照)が設けられる。駆動ユニット20がアウターケース10(図2参照)内に配置された状態では、固定部24はアウターケース10における凹部14(図2参照)に係合する。固定部25は、アウターケース10における凹部15(図2参照)に係合する。
【0050】
ミドルケース21は、弾性体21Jが台座部21Z上に載置された後、インナーケース21MNの円筒形状部分21Yの周りに嵌め込まれる。弾性体21Jは、ミドルケース21の後端部21Vとインナーケース21MNの台座部21Zとの間に挟まれる。弾性体21Jは、インナーケース21MNからミドルケース21に伝わる振動を低減する。弾性体21Jによって、インナーケース21MNのミドルケース21に対する防振(制振)効果を得ることができる。
【0051】
ミドルケース21の内径は、インナーケース21MNの円筒形状部分21Y(図5参照)の外径よりもわずかに大きく構成されるとよい。当該構成によれば、ミドルケース21は、円筒形状部分21Yの外表面を、外側から間隔を空けて取り囲むように配置される。インナーケース21MNの円筒形状部分21Yの外表面とミドルケース21の内表面との間には、隙間SS(図2参照)が形成される。隙間SSは、円筒状の空間である。隙間SSによって、インナーケース21MNのミドルケース21に対する防振(制振)効果を得ることができる。
【0052】
円筒形状部分21Yの周りにミドルケース21が嵌め込まれた後、インナーケース21MN(円筒形状部分21Y)の一端21D1に設けられた開口21DHに、弾性部材21Rが嵌め込まれる(矢印AR15参照)。弾性部材21Rの円板部21Q上に錘部材22Wが載置される(矢印AR14参照)。錘部材22Wの上に、スプリング21Pおよびキャップ21Lが順次積み上げられる(矢印AR13参照)。
【0053】
この状態で、振動伝達部材22が、キャップ21Lの貫通孔21G内、スプリング21P内、錘部材22Wの貫通孔21X内、および弾性部材21Rの凹部21QH内に差し込まれる。振動伝達部材22が、キャップ21Lの貫通孔21G内、スプリング21P内、および錘部材22Wの貫通孔21X内に差し込まれた状態(振動伝達部材22および錘部材22Wが相互に固定された状態)で、振動伝達部材22の下端部が弾性部材21Rの凹部21QH内に差し込まれてもよい。振動伝達部材22の貫通孔22H、弾性部材21Rの貫通孔21UH、インナーケース21Mの開口21E1(図5参照)、およびインナーケース21Nの開口21E2が互いに連通する。ボルト21Bがこれらに嵌め込まれる。
【0054】
ボルト21Bの締結によって、振動伝達部材22の下端は、インナーケース21MNの一端21D1に、弾性部材21Rを挟んで固定される(図2および図4参照)。図2に示すように、振動伝達部材22の下端は、モータ28に取り付けられた偏心錘28Wに対向するように配置される。
【0055】
開口21F2および開口21F1に、ボルト21Cが嵌め込まれる(矢印AR17、および図2参照)。ボルト21B,21Cの締結によって、インナーケース21Nおよびインナーケース21Mは相互に接合される。振動伝達部材22の取付部22S(図5参照)は、ミドルケース21およびキャップ21Lの上方から突出する(図2および図3参照)。
【0056】
(固定部26)
固定部26は、インナーケース21Mの他端21D2に設けられた嵌合凸部21Tに取り付けられる(矢印AR18参照)。固定部26は、駆動ユニット20の他端20Bに位置する。固定部26の詳細については、後述する。駆動ユニット20は、以上のように構成される。
【0057】
(蓋部材30・衛生保持部材40)
図3および図4を再び参照して、蓋部材30は、一端31から他端32に向かって徐々に直径が大きくなる円環状に形成される。蓋部材30の内表面には、アウターケース10の凸部16に係合する環状の凹部26M(図4参照)が設けられる。
【0058】
蓋部材30は、アウターケース10内に駆動ユニット20が配置された状態で、アウターケース10(筒状部11)の一端11Aに取り付けられる(矢印AR2参照)。筒状部11の一端11A側における外表面11AS(図3参照)、および、駆動ユニット20(ミドルケース21)の一端20A側に設けられたキャップ21Lは、筒径方向の外側から蓋部材30によって覆われる。
【0059】
振動部材としての衛生保持部材40は、インナーケース21MNの外部に位置する。衛生保持部材40は、口内の衛生を保持するためのブラシ部41およびステム部42を含む。ブラシ部41は、たとえばナイロン(毛状)などから構成される。ステム部42は、たとえばポリカーボネートなどから構成される。意匠上の観点からは、ステム部42の下部側が不透明の部材から構成され、ステム部42の上部側が透明の部材から構成されてもよい。
【0060】
ステム部42の内部には、凹部43が設けられる。凹部43は、振動伝達部材22における取付部22S(図5および図6参照)の表面形状に対応する。凹部43と振動伝達部材22とが互いに嵌合することによって、衛生保持部材40が駆動ユニット20に固定される(矢印AR3参照)。
【0061】
衛生保持部材40が駆動ユニット20に対して固定された状態では、衛生保持部材40は蓋部材30を挟んでアウターケース10の反対側に位置する。衛生保持部材40としては、マッサージ用のシリコン片などであってもよい。
【0062】
(電動歯ブラシ100の組み立て)
電動歯ブラシ100が組み立てられる際には、駆動ユニット20が、筒状部11の開口11Hを通して、アウターケース10内に挿入および配置される。駆動ユニット20の(ミドルケース21に設けられた)固定部24は、アウターケース10における凹部14に係合する。駆動ユニット20の(ミドルケース21に設けられた)固定部25(図4参照)は、アウターケース10における凹部15に係合する。固定部24および凹部14同士の係合、ならびに固定部25および凹部15同士の係合によって、駆動ユニット20はアウターケース10(筒状部11の内表面11S)に対して固定される。
【0063】
駆動ユニット20の他端20Bに設けられた固定部26は、アウターケース10における底部12の内表面12Sに対して互いに固定されるように構成されてもよい。駆動ユニット20の他端20Bに固定部26が設けられることによって、駆動ユニット20は筒状部11の内表面11Sに対してより安定した状態で固定されることができる。
【0064】
アウターケース10における凹部14および駆動ユニット20における固定部24同士、ならびにアウターケース10における凹部15および駆動ユニット20における固定部25同士が、互いに強固に固定される場合などには、固定部26が底部12の内表面12Sに固定されるという構成は、必要に応じて採用されるとよい。
【0065】
駆動ユニット20における固定部26が底部12の内表面12Sに固定される場合、固定部26はシリコンゴムなどの弾性体から構成されるとよい。駆動ユニット20のアウターケース10に対する防振(制振)効果を得ることができる。固定部26としては、インナーケース21Mと一体的に構成されてもよい。この場合、インナーケース21Mの下端(駆動ユニット20の他端20B)は、比較的柔らかい樹脂などから、インナーケース21Mの一部として構成されるとよい。
【0066】
駆動ユニット20における固定部26が底部12の内表面12Sに固定される場合、底部12の内表面12Sは球面状に凹設されるとよい。固定部26は、底部12の内表面12Sの形状に対応する半球状に凸設されるとよい。当該構成によれば、固定部26は、内表面12Sに対してより安定した状態で固定されることができる。
【0067】
図2に示すように、駆動ユニット20がアウターケース10に対して固定された状態においては、駆動ユニット20と筒状部11の内表面11Sとの間には、隙間Sが形成されるとよい。駆動ユニット20のアウターケース10に対する防振(制振)効果を得ることができる。電動歯ブラシ100における隙間Sは、駆動ユニット20の略全周を取り囲むように形成される。隙間Sは、凹部14,15および固定部24,25同士の係合部分から、固定部26まで略全体にわたって連通する円筒状の空間を形成している。
【0068】
電動歯ブラシ100においては、駆動ユニット20が、凹部14,15および固定部24,25同士による固定(ならびに必要に応じて固定部26および底部12同士による固定)によって、アウターケース10に対して固定される。筒状部11の内表面11Sには、駆動ユニット20を固定するためのリブ(弾性を有する部材)などがさらに設けられてもよい。また、駆動ユニット20のミドルケース21の外周面に、弾性を有する部材がさらに設けられていてもよい。
【0069】
(電動歯ブラシ100の動作)
図4を再び参照して、電動歯ブラシ100においては、操作部17が操作されることによって、電源のON/OFFが切り替えられる。電源ON時には、制御基板23の制御によって、電源部27からモータ28に電力が供給される。モータ28によって、偏心錘28Wが回転駆動される。
【0070】
偏心錘28Wの回転によって、偏心錘28Wおよびモータ28が振動する。この振動は、インナーケース21MN(インナーケース21M,21N)に伝達される。上述のとおり、振動伝達部材22の下端は、弾性部材21Rを挟んで、インナーケース21MNの一端21D1(図5参照)に固定される。インナーケース21MNに生じた振動は、弾性部材21Rを通して、振動伝達部材22に伝達される。
【0071】
振動伝達部材22に伝達された振動は、振動伝達部材22に取り付けられた衛生保持部材40(特に、ブラシ部41)に伝達される。ブラシ部41の振動によって、電動歯ブラシ100は歯磨きなどに使用されることが可能となる。
【0072】
(電動歯ブラシ100の振動モデル)
図7および図8を参照して、電動歯ブラシ100の振動モデルおよび比較例としての電動歯ブラシ200の振動モデルについてそれぞれ説明する。図7は、電動歯ブラシ100の振動モデルを模式的に示す図である。図8は、電動歯ブラシ200の振動モデルを模式的に示す図である。電動歯ブラシ200は、電動歯ブラシ100とは異なり、インナーケース21MNおよび振動伝達部材22の間を弾性的に連結する弾性部材21Rおよび振動伝達部材22を重くするための錘部材22Wを備えていない。
【0073】
図7に示すように、モータ28によって偏心錘28Wが回転駆動される際、電動歯ブラシ100は、或る瞬間においてはラインL101に示すようにねじれるように湾曲し、他の瞬間においてはラインL102に示すようにねじれるように湾曲する。
【0074】
電動歯ブラシ100においては、ラインL101およびラインL102が交差する位置(弾性体21Jの近傍)に、電動歯ブラシ100の回転動作(円運動)の中心C20が形成される。
【0075】
また、上述のとおり、弾性部材21Rによって、振動伝達部材22およびインナーケース21Mの間が弾性的に連結される。ラインL101およびラインL102が交差する他の位置(弾性部材21Rの近傍)に、電動歯ブラシ100の回転動作(円運動)の他の中心R20が形成される。
【0076】
電動歯ブラシ100においては、冒頭に説明した特開平10−192054号公報(特許文献4)および特開2009−219544号公報(特許文献5)とは異なり、モータ28と振動伝達部材22とは直接的には結合されていない。モータ28および偏心錘28Wは、インナーケース21MNによって覆われている。弾性部材21Rの配設によって振動の節としての中心R20が形成されるため、インナーケース21MNにおける防振(制振)効果が得られる。
【0077】
電動歯ブラシ100は、中心C20および中心R20を振動の節として、軸周りにねじれるように振動(円運動)する。ラインL101(およびラインL102)上の質量部M101〜M103は、電動歯ブラシ100の質量を三つに分割し、それぞれの部分における等価的な質量をそれぞれ示している。質量部M102の近傍は、振幅W100(回転直径)をもって回転(円運動)する。電動歯ブラシ100の把持部の近傍は、振幅W101(回転直径)をもって回転(円運動)する。
【0078】
一方、図8に示す比較例としての電動歯ブラシ200は、モータ28によって偏心錘28Wが回転駆動される際、或る瞬間においてはラインL201に示すようにねじれるように湾曲し、他の瞬間においてはラインL202に示すようにねじれるように湾曲する。
【0079】
電動歯ブラシ200は、中心C20を振動の節として、軸周りにねじれるように振動(円運動)する。ラインL201(およびラインL202)上の質量部M201〜M203は、電動歯ブラシ200の質量を三つに分割し、それぞれの部分における等価的な質量をそれぞれ示している。質量部M202の近傍は、振幅W200(回転直径)をもって回転(円運動)する。電動歯ブラシ200の把持部の近傍は、振幅W201(回転直径)をもって回転(円運動)する。
【0080】
図7および図8を対比して、質量部M101における質量と質量部M201における質量とが等しいと仮定する。質量部M103における質量と質量部M203における質量とが等しいと仮定する。この場合、錘部材22Wの分だけ、電動歯ブラシ100の質量部M102における質量は、電動歯ブラシ200の質量部M202における質量よりも大きくなる(質量部M102>質量部M202)。
【0081】
同一の特性を有するモータ28が同一の条件で駆動された場合、電動歯ブラシ100における振幅W100は、電動歯ブラシ200における振幅W200よりも小さくなる(振幅W100<振幅W200)。把持部付近においても、電動歯ブラシ100における振幅W101は、電動歯ブラシ200における振幅W201よりも小さくなる(振幅W101<振幅W201)。
【0082】
また、上述のとおり、弾性部材21Rの配設によって振動の節としての中心R20が形成されるため、インナーケース21MNにおける防振(制振)効果が得られる。同一の特性を有するモータ28が同一の条件で駆動された場合、電動歯ブラシ100における振幅W100は、電動歯ブラシ200における振幅W200よりも小さくなる(振幅W100<振幅W200)。把持部付近においても、電動歯ブラシ100における振幅W101は、電動歯ブラシ200における振幅W201よりも小さくなる(振幅W101<振幅W201)。弾性部材21Rによる防振(制御)効果は、電動歯ブラシ100に錘部材22Wが設けられない場合も同様に得られる。
【0083】
使用時における把持部の近傍の振幅(円運動の回転直径)は、電動歯ブラシ200よりも電動歯ブラシ100の方が小さくなる。結果として、電動歯ブラシ100は、電動歯ブラシ200に比べて、使用時に発生する振動が原因となって使用者に与えられる不快感を低減することが可能となる。
【0084】
偏心錘28Wの回転駆動によって軸周り方向に回転する衛生保持部材40の回転方向における位相は、節P100を中心として、偏心錘28Wの回転駆動によって軸周り方向に回転する振動伝達部材22の回転方向における位相に対して反転するように構成されるとよい。当該構成によれば、使用時に発生する振動が原因となって使用者に与えられる不快感は、さらに低減されることが可能となる。
【0085】
図9を参照して、電動歯ブラシ100における振動数と振幅との関係は、ラインL100のように表される。電動歯ブラシ100の固有振動数(共振周波数)は、振動数H100である。電動歯ブラシ200における振動数と振幅との関係は、ラインL200のように表される。電動歯ブラシ200の固有振動数は、振動数H200である。
【0086】
電動歯ブラシ100は、弾性部材21Rの分だけ、電動歯ブラシ200よりも剛性が低い(振動系全体としてのバネ定数が低い)。固有振動数(共振周波数)は、√(k/m):(kはバネ定数、mは質量)で表されるため、振動数H100は、振動数H200よりも値が小さくなる(振動数H100<振動数H200)。換言すると、電動歯ブラシ100の固有振動数は、電動歯ブラシ200の固有振動数に比べて小さくなる。電動歯ブラシ200に弾性部材21Rを付加することによって、固有振動数(共振周波数)が振動数H200から振動数H100にシフトすることとなる(矢印AR参照)。
【0087】
また、電動歯ブラシ100は、錘部材22Wの分だけ、電動歯ブラシ200よりも重い。固有振動数(共振周波数)は、√(k/m):(kはバネ定数、mは質量)で表されるため、振動数H100は、振動数H200よりも値が小さくなる(振動数H100<振動数H200)。この点においても、電動歯ブラシ100の固有振動数は、電動歯ブラシ200の固有振動数に比べて小さくなる。電動歯ブラシ200に錘部材22Wを付加することによって、固有振動数(共振周波数)が振動数H200から振動数H100にシフトすることとなる(矢印AR参照)。なお、錘部材22Wは、必要に応じて電動歯ブラシ100に用いられるとよい。
【0088】
ここで、電動歯ブラシ200が振動数H300(図9参照)で振動するように、モータ28に所定の電圧を印加したとする。振動数H300は、電動歯ブラシ200の固有振動数(振動数H200)よりも大きな値である。モータ28が小型である場合など、モータ28の出力の大きさによっては、モータ28に印加する電圧を増大させたとしても、電動歯ブラシ200は振動数H200以上では振動しない(振動数H300に到達しない)ことがある。その理由は次の通りである。
【0089】
モータ28に印加する電圧を増大させると、電動歯ブラシ200の振動数も大きくなる。やがて、電動歯ブラシ200の振動数は、固有振動数(振動数H200)に到達する。電動歯ブラシ200は、系全体が大きく振動する。モータ28に印加する電圧を、さらに増大させたとする。モータ28が小型である場合などには、電動歯ブラシ200が共振状態から抜け出すことができず、電動歯ブラシ200は共振状態に飲み込まれたままとなる。結果として、電動歯ブラシ200は、振動数H200以上では振動しない(振動数H300に到達しない)こととなる。
【0090】
これに対して、電動歯ブラシ100が振動数H300(図9参照)で振動するように、モータ28に所定の電圧を印加したとする。振動数H300は、電動歯ブラシ100の固有振動数(振動数H100)よりも大きな値である(振動数H100<振動数H200<振動数H300)。モータ28に印加する電圧を増大させると、電動歯ブラシ100の振動数も大きくなる。やがて、電動歯ブラシ100の振動数は、固有振動数(振動数H200)に到達する。電動歯ブラシ100は、系全体が大きく振動する。
【0091】
電動歯ブラシ100の固有振動数(振動数H100)は、電動歯ブラシ200の固有振動数(振動数H200)よりも小さいため、電動歯ブラシ100の共振によって発生するエネルギーは、電動歯ブラシ200の共振によって発生するエネルギーよりも小さい。モータ28に印加する電圧を、さらに増大させたとする。モータ28が小型の場合であっても、電動歯ブラシ100は共振状態から抜け出すことができる。モータ28に印加する電圧をさらに増大させたとする。モータ28による駆動(入力)は、電動歯ブラシ100の振動数(出力)にそのまま反映されることができる。結果として、電動歯ブラシ100は、振動数H200よりも高い振動数H300で振動することが可能となる。
【0092】
電動歯ブラシ100は、電動歯ブラシ200に比べて高い振動数で振動することができる。したがって、電動歯ブラシ100によれば、電動歯ブラシ200に比べて、使用時に発生する振動が原因となって使用者に与えられる不快感を低減することができるだけでなく、ブラシ部41における高い洗浄力を発揮することも可能となる。錘部材22Wが付加されることによって衛生保持部材40における慣性力が増大する。この点においても、電動歯ブラシ100はブラシ部41における高い洗浄力を発揮することが可能となる。
【0093】
電動歯ブラシ100が共振周波数で振動しないため、電動歯ブラシ100を構成する機器への影響(たとえば、モータ28の消費電流の低下、各種機器の寿命、各種機器の破損など)を低減したり、電動歯ブラシ100から発生する騒音を低減したりすることも可能となる。
【0094】
弾性部材21Rは、ゴムまたはラバー等の部材から構成される。弾性部材21Rは、その材質から形状の自由度が高い。弾性部材21Rは、振動伝達部材22の下端部を覆うように設ける際における、設計上の利便性が高い。弾性部材21Rによれば、振動伝達部材22およびインナーケース21MNを金属によって連結する場合に比べて、振動による異音の発生も抑制される。また、弾性部材21Rによれば、振動によって金属粉が発生したりすることもなく、パッキンとしての機能を発揮することも可能となる。
【0095】
弾性部材21Rは、振動伝達部材22とインナーケース21MNとの間において薄膜状に形成される。電動歯ブラシ100の長手方向の寸法を短くすることができる。振動伝達部材22とインナーケース21MNとの弾性的な連結を構成するために、短い寸法範囲で面積を大きく確保することができる。弾性部材21Rによれば、電動歯ブラシ100の意匠設計上の自由度も向上する。弾性部材21Rがキャップ状に形成されることによって、振動伝達部材22およびインナーケース21MNの開口21DHに対する組立て上の利便性も高い。
【0096】
弾性部材21Rの基台部21Uは、振動伝達部材22の下端部の外周面22Kを覆うように(巻き付くように)設けられる。仮に、弾性部材21Rが、振動伝達部材22の端部22Jとインナーケース21MNの一端21D1とを端面接合するとする。この場合、電動歯ブラシ100のアタッチメント仕様に応じた振動を実現する内部構造を得るためには、弾性部材21Rの材質または厚さが調整される必要がある。これに対して、本実施の形態における弾性部材21Rは、弾性部材21Rの基台部21Uは、振動伝達部材22の下端部の外周面22Kを覆うように(巻き付くように)設けられるため、インナーケース21MNと弾性部材21Rとの接触位置を調整する(金型の入れ子を交換する)だけで、電動歯ブラシ100のアタッチメント仕様に応じた振動を実現する内部構造を得ることが可能となる。
【0097】
電動歯ブラシ100に錘部材22Wを用いる場合、錘部材22Wの重量は、電動歯ブラシ100に所望する振動数、電動歯ブラシ100の全体の質量、電動歯ブラシ100のバネ定数(電動歯ブラシ100の全体の剛性)、電動歯ブラシ100に所望する洗浄力(ブラシ部41の振幅)、およびモータ28の出力などに応じて最適化されるとよい。
【0098】
また、電動歯ブラシ100においては、インナーケース21MNの円筒形状部分21Yの外表面とミドルケース21の内表面との間に、隙間SS(図2参照)が形成される。隙間SSは、円筒状の空間である。隙間SSによって、インナーケース21MNのミドルケース21に対する防振(制振)効果を得ることができる。この点においても、電動歯ブラシ100は、使用時に発生する振動が原因となって使用者に与えられる不快感を低減することができる。
【0099】
また、電動歯ブラシ100においては、駆動ユニット20と筒状部11の内表面11Sとの間に、隙間S(図2参照)が形成される。隙間Sも、円筒状の空間である。隙間Sによって、駆動ユニット20のアウターケース10に対する防振(制振)効果を得ることができる。この点においても、電動歯ブラシ100は、使用時に発生する振動が原因となって使用者に与えられる不快感を低減することができる。
【0100】
以上、本発明に基づいた実施の形態として、振動発生装置について電動歯ブラシを一例に説明したが、今回開示された形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。たとえば、本発明に基づく振動発生装置は、電動歯ブラシに限られず、バイブレータ機能付きの頭皮用ブラシ、髭剃り、歯科用電動施術器具、または電動工具などにも適用されることが可能である。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
10 アウターケース(第3ケース)、11 筒状部、11A,20A,21D1,31 一端、11AS 外表面、11B,20B,21D2,32 他端、11H,21DH,21E1,21E2,21F1,21F2 開口、11S,12S 内表面、12 底部、13 Oリング、14,15,21QH,26M,43 凹部、16 凸部、17 操作部、20 駆動ユニット、21 ミドルケース(第2ケース)、21B,21C ボルト、21G,21UH,21X,22H 貫通孔、21J 弾性体、21K 先端部、21L キャップ、21M,21N インナーケース、21MN インナーケース(第1ケース)、21P スプリング、21Q 円板部、21R 弾性部材、21T 嵌合凸部、21U 基台部、21V 後端部、21Y 円筒形状部分、21Z 台座部、22 振動伝達部材、22J 端部、22K 外周面、22S 取付部、22T 軸部、22W 錘部材、23 制御基板、24,25,26 固定部、27 電源部、28 モータ(回転駆動手段)、28W 偏心錘、29 給電用コイル、30 蓋部材、40 衛生保持部材(振動部材)、41 ブラシ部、42 ステム部、100,200 電動歯ブラシ、AR,AR1,AR2,AR3,AR10,AR11,AR12,AR13,AR14,AR15,AR16,AR17,AR18 矢印、C20,R20 中心、H100,H200,H300 振動数、L100,L101,L102,L200,L201,L202 ライン、M101,M102,M103,M201,M202,M203 質量部、P100 節、S,SS 隙間、W100,W101,W200,W201 振幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動手段と、
前記回転駆動手段によって回転駆動される偏心錘と、
前記偏心錘を内部に含む第1ケースと、
前記第1ケースの外部に設けられた振動部材と、
前記第1ケースおよび前記振動部材の間に設けられ、前記偏心錘の回転駆動によって発生した振動を前記振動部材に伝達する振動伝達部と、
前記第1ケースおよび前記振動伝達部の間を弾性的に連結するように設けられる弾性部材と、を備える、
振動発生装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記振動伝達部の前記第1ケース寄りの外表面を覆うように設けられる、
請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記振動伝達部の前記第1ケース寄りの端部を覆うようにキャップ状に形成される、
請求項2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記第1ケースおよび前記振動部材の間に設けられ、前記振動伝達部の重量を重くする錘部をさらに備える、
請求項1から3のいずれかに記載の振動発生装置。
【請求項5】
前記第1ケースの一端側の外表面に対して間隔を空けつつ前記第1ケースの前記一端側の外表面を取り囲むように設けられる第2ケースと、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの間に設けられる弾性体と、をさらに備える、
請求項1から4のいずれかに記載の振動発生装置。
【請求項6】
一端に開口を有し、前記第1ケースの他端側の外表面および前記第2ケースの外表面に対して間隔を空けつつ前記第1ケースの前記他端側の外表面および前記第2ケースの外表面をそれぞれ取り囲むように設けられる第3ケースをさらに備え、
前記第2ケースの外表面には、前記第3ケースの前記一端側の内表面に対して固定される固定部が設けられ、
前記第3ケースの内表面と前記第1ケースの他端側の外表面および前記第2ケースの外表面との間には、前記第1ケースの他端側の外表面および前記第2ケースの外表面の略全周を取り囲むように隙間がそれぞれ形成される、
請求項5に記載の振動発生装置。
【請求項7】
前記偏心錘の回転駆動によって軸周り方向に回転する前記振動部材の回転方向における位相は、前記偏心錘の回転駆動によって軸周り方向に回転する前記振動伝達部の回転方向における位相に対して反転する、
請求項1から6のいずれかに記載の振動発生装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の振動発生装置から構成される、
電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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