説明

振動発生装置

【課題】加速度に基づく振動計の校正をするための振動発生装置において、校正を精度良く行い得る装置であって、体格・質量が大きくなることが抑制され得る装置の提供。
【解決手段】この装置は、振動計の検出部を着脱可能とする可動部20と、可動部20に配設された第1コイル60と、可動部20に内蔵されたサーボ式加速度センサ40と、を備えている。可動部20の加速度が上記センサ40により直接的に検出され得るので、大がかりな計測システムが不要となり得る。また、サーボ式加速度センサ40は、一般的な加速度センサに比して、精度が非常に大きい。以上のことから、振動計の校正を精度良く行い得、且つ、質量が大きくなることが抑制され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体に振動を与える振動発生装置に関するものであり、特に、加速度に基づく振動計の校正等に用いられる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電所のタービン等に異常が発生しているか否かを判定するのに際し、振動計が用いられる場合が多い。即ち、上記可動部の振動を計測する振動計の出力値と、基準値との比較に基づいて上記判定がなされる。従って、精度良い判定を行うためには、振動計の精度を確保することが好ましい。
【0003】
他方、振動計の検出部の経年変化等により、振動計の出力値が標準値から乖離していく場合がある。従って、振動計の精度を確保するためには、定期的に振動計の校正が行われることが好ましい。振動計を校正するための装置としては、例えば、以下に記載するものが案出されている。この装置は下記特許文献1にて開示されている。
【0004】
この装置は、振動計の検出部を着脱可能に構成された可動体と、この可動体に配設された振動鏡とを備えている。振動計を校正する際には、振動計の検出部が可動体に固着させられる。そして、可動体に振動が与えられるとともに、レーザ光が振動鏡に向けて照射される。この照射されるレーザ光と、振動鏡にて反射したレーザ光との干渉を利用して、可動体の加速度が検出され得る。即ち、この装置では、上記検出された加速度に基づいて、振動計の校正が達成され得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−260076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加速度の検出にあたりレーザ光の干渉を利用する場合、光学部品の取り付け位置の微小なズレ等によっても、加速度の検出値が標準値から乖離し易い。従って、検出された加速度に基づく校正を、精度良く行うことが困難であった。換言すれば、トレーサブルな振動計の校正が困難であるという問題があった。加えて、光学システムの構築等が必要となるため、校正装置全体の体格・質量が大きくなるという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、加速度に基づいて振動計の校正を精度良く行い得る装置であって、質量が大きくなることが抑制され得るものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる振動発生装置の特徴は、ハウジングと、少なくとも一部がハウジングの内部に収容されるとともに、ハウジングの外部にて振動を与える対象物体を着脱可能、且つ、ハウジングと相対運動(振動)可能に構成された可動部と、ハウジングの内部にて可動部に配設された第1コイルと、第1コイルが給電された場合に第1コイルと一体的に可動部が相対運動(振動)するようハウジングの内部に配設された第1磁石と、可動部に配設されたケーシングと、ケーシングの内部に収容されるとともにケーシングの内側に基端部を備えることで変位可能に構成された振り子と、ケーシングの内部にて振り子に配設された第2コイルと、第2コイルが給電された場合に第2コイルと一体的に振り子が変位するようケーシングの内部に配設された第2磁石と、振り子の変位量を検出する変位検出部と、変位検出部により検出された変位量に基づいて第2コイルへの給電量を調整するサーボ機構とを備えたサーボ式加速度センサと、サーボ式加速度センサが備えるサーボ機構により調整された給電量に基づいて可動部の加速度を計測する計測部と、を備えたことにある。
【0009】
上記サーボ式加速度センサの検出感度は、他の形式の加速度センサに比して非常に大きい。更に、サーボ式加速度センサは、加速度の計測対象に対し一体的に固設可能であるため、上記計測対象の加速度を直接的に検出することができる。従って、上記計測部によれば、サーボ式加速度センサが用いられることで、可動部の加速度が精度良く計測され得る。加えて、可動部の加速度の測定にあたり、光学システム等の大掛かりな構成の必要性が小さくなる。
【0010】
従って、上記構成において「振動を与える対象物体」として、振動計の振動検出部を固着させれば、精度良く計測される加速度が利用されて振動計が校正され得る。このため、振動計の校正が精度良く行われ得る。また、装置の質量が大きくなることが抑制され得る。ここにおいて、振動計を校正する手段としては、例えば、振動計の振動検出部が可動部に固設され、且つ、可動部が振動しているときにおける振動計の振動検出部により検出される加速度が、計測部により計測される加速度に近づくように、振動計を校正すると好適である。
【0011】
特に、上記サーボ式加速度センサによれば、可動部の加速度が小さい場合であっても、加速度が精度良く計測され得る。従って、例えば、可動部の加速度が小さいものに調整された場合であっても、振動計の校正が精度良く行われ得る。
【0012】
ハウジングの内部にて可動部に配設された第1コイル、及びサーボ式加速度センサのケーシングの内部にて振り子に配設された第2コイルは、第1、第2コイルのそれぞれの中心軸が平行となるように、又は第1、第2コイルのそれぞれの中心軸のなす角が直角となるように、可動部、及び振り子に配設されると好適である。
【0013】
一般に、可動部に振動を与えるため第1コイルへの給電量は、比較的大きい。このため、第1コイルから発生する磁気も比較的大きい。従って、第1コイルと、第2コイルとの配置位置によっては、第1コイルから発生する大きい磁気により第2コイルにて誘導電流が発生するおそれがある。この結果、精度良い加速度の検出が困難になることがあり得る。
【0014】
本発明者は、第1、第2コイルの配置位置と、第2コイルへの磁気の影響度合いとの関係について鋭意研究を行った結果、以下の知見を見出した。即ち、第1、第2コイルの配置位置において、それぞれの中心軸が平行にある場合、及びそれぞれの中心軸のなす角が直角である場合において、上記誘導電流が殆ど発生しないことを見出した。
【0015】
上記構成は、かかる知見に基づくものである。これによれば、第1コイルから発生する大きな磁気が、第2コイルに外乱として影響する度合いを小さくすることができる。従って、サーボ式加速度センサに検出誤差が生じることが、抑制され得る。この結果、振動計の校正をより精度良く行うことができる。
【0016】
また、上記本発明にかかる振動発生装置においては、可動部の実際の振動数、及び/又は可動部の実際の振幅が、可動部の振動数の指令値、及び/又は可動部の振幅の指令値に近づくように第1コイルへの給電の態様(例えば、周波数、電力等)を制御する制御部が備えられると好適である。
【0017】
物体が単振動する場合において、振幅が同一である場合、加速度と振動数との間には以下の関係がある。即ち、振動数が大きいほど加速度(の絶対値の最大値)はより大きくなる。また、振動数が同一である場合、加速度と振幅との間には以下の関係がある。即ち、振幅が大きいほど加速度(の絶対値の最大値)はより大きくなる。従って、可動部の振動数、及び/又は可動部の振幅が変更・調整されることで、可動部の加速度も上記関係に則って変更・調整され得る。上記構成によれば、可動部の加速度が所望の値に設定され得る。従って、所望の加速度をもって、振動計の校正が達成され得る。
【0018】
また、上記本発明にかかる振動発生装置においては、制御部からの信号を増幅するとともに、増幅した電力を第1コイルへ向けて出力する増幅部を備え、計測部と、制御部と、増幅部とが一体に構成されると好適である。
【0019】
上記構成によれば、計測部と、制御部と、増幅部とが一体に構成されているため、精度良い振動計の校正が担保されつつ装置の体格・質量がより小さくされ得る。
【0020】
また、上記本発明にかかる振動発生装置においては、弾性を有し、一端がハウジングに配設され他端が可動部に配設されることで可動部を支持する支持部を更に備え、縦軸と縦軸に直行する横軸とを備える2次元座標上において、計測部にて計測される加速度及び時間を、それぞれ縦軸及び横軸の変数とした場合に、可動部が相対移動するとき、2次元座標上に表される計測部にて計測される加速度と時間との関係を規定する軌跡(以下、「加速度−時間軌跡」と称呼する。)が疑似正弦波となるように、支持部の弾性の度合いが調整されることが好適である。
【0021】
ここにおいて、「支持部」は、弾性を有するように構成されていればその材質・形状において特に限定はなく、たとえば、発條(コイル、ダイヤフラム、リーフスプリング等)、ゴム成型体などが挙げられる。また、「弾性の度合い」とは、支持部の材料・形状から一意に決まる支持部の弾性を特徴付けるパラメータであって、例えば、弾性係数が挙げられる。
【0022】
本発明者は、振動発生装置により発生する振動を利用して、種々の振動計を校正する場合に、校正に適した振動発生装置における相対移動(振動)について鋭意研究を実施した。この結果、上記「加速度−時間軌跡」が、疑似正弦波となることが好ましいということを見出した。即ち、上記「加速度−時間軌跡」の形状が疑似正弦波状となることで、振動計における積分処理による補償の有無に関係なく、精度良い校正が可能となる。
【0023】
一般に、タ―ビン監視用の振動計は、他産業用途の振動計に比して自重が大きくなる傾向が大きい。これは、信頼性や防爆性能を向上させる観点である。このため、自重が大きい振動計に対して、振動発生装置を適用して校正する場合、即ち、その様な振動計と振動発生装置の可動部とを一体的に加振させる場合、正弦波形の加振とすることは困難であり、上記「加速度−時間軌跡」が正弦波から乖離する場合が多かった。その大きな理由として、加振における慣性力と制動力のバランスを適切に調整することが難しいことが挙げられる。本発明者の鋭意研究によれば、既往の振動発生器においては、そのバランス調整が適切になされて、上記「加速度−時間軌跡」の形状が正弦波状となるものは皆無であったことが判明した。
【0024】
上記構成によれば、支持部の弾性の調整により、加振における慣性力と制動力のバランスが適切に調整され得、上記「加速度−時間軌跡」が疑似正弦波となる。従って、簡易な構成により、疑似正弦波化が達成でき、比較的自重が大きい振動計であっても精度良く校正することができる。即ち、幅広い種類の振動計を精度良く校正することができる。
【0025】
また、上記本発明にかかる振動発生装置においては、計測部は、サーボ式加速度センサから給電量に相当する信号を取得し、取得した信号を演算増幅することで可動部の加速度を計測する演算増幅部と、演算増幅部が取得する信号に基づく信号に2次のローパスフィルタ処理を施すローパスフィルタ部とが備えられると好適である。
【0026】
上述した機械的に振動を発生させる装置においては、加速度センサからの信号が急峻に変化するときに、単振動を表す波形に電気的ノイズが入る場合が多い。特に、可動部の加速度がリンギング(加振力の逆転を挟んで、プラス加速からマイナス加速へ、又は、マイナス加速からプラス加速へ)移行するときに、単振動を表す波形に乱れが生じて電気的ノイズが入る場合が多く、これも上記「加速度−時間軌跡」が正弦波から乖離する原因となり得る。
【0027】
本発明者は、上記電気的ノイズの抑制について鋭意研究を実施したところ、サーボ式加速度センサからの信号に2次のローパスフィルタ処理を施すことで、上記リンギングに基づく電気的ノイズが適切に抑制できることを見出した。上記構成は、かかる知見に基づくものである。これによれば、上記「加速度−時間軌跡」をより正弦波に近づけることができる。
【0028】
ここにおいて、「演算増幅部が取得する信号に基づく信号」とは、例えば、サーボ式加速度センサからの信号そのものであってもよいし、演算増幅部を介した信号であってもよい。好ましい形態は、サーボ式加速度センサからの信号そのものに2次のローパスフィルタ処理が施されたものである。
【0029】
なお、本発明においては、「振動を与える対象物体」は、振動計の振動検出部だけに限られない。例えば、大型の装置・機構を固着させてもよい。即ち、本発明にかかる振動発生装置は、振動発生源としても機能し得る。この場合には、サーボ式加速度センサの検出値に基づいて加速度等を設定できるため、より精度良い加速度等をもって対象物に振動を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる振動発生装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示した振動発生装置における、ハウジングの内部構造を示す図である。
【図3】図1に示した振動発生装置における、サーボ式加速度センサの検出部の概略構成を示す図である。
【図4】図1に示した振動発生装置における、第1コイル、及び第2コイルの位置関係を説明するための図である。
【図5】図1に示した振動発生装置を用いて、振動計を校正する場合の作動を示すフローチャートである。
【図6】加速度と、振動数及び振幅との関係を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる振動発生装置における、サーボ式加速度センサの検出部の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる振動発生装置における、第1コイル、及び第2コイルの位置関係を説明するための図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかる振動発生装置における、ハウジングの内部構造を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態にかかる振動発生装置における、計測部の機能ブロック図である。
【図11】本発明の第3実施形態にかかる振動発生装置の「加速度−時間軌跡」を説明するための図である。
【符号の説明】
【0031】
10 振動発生装置
20 可動部
30 ハウジング
40 サーボ式加速度センサ
41a ケーシング
41b 振り子
41c 第2コイル
41d 検出用磁石(第2磁石)
41e 変位検出部
41f サーボ増幅部(サーボ機構)
50 コントロールユニット
51 電力増幅部
52 計測部
52a ローパスフィルタ部
52b 演算増幅部
53 制御部
60 第1コイル
70 駆動用磁石(第1磁石)
80 支持部
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明による振動発生装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる振動発生装置10の概略構成を示す図である。この振動発生装置10は、振動計(図示せず)を校正するため用いられる。振動発生装置10は、可動部20と、ハウジング30と、サーボ式加速度センサ40と、コントロールユニット50とを備えている。
【0034】
可動部20は、円筒キャップ形状を呈しており端部にテーパ部21を備えている。このテーパ部21側の上端面22には、図示しない振動計の検出部を着脱可能とするねじ穴22aが複数個備えられている。
【0035】
ハウジング30は、円筒形状を呈しており、その上端に円形の嵌合穴31を備えている。上記可動部20は、テーパ部21にて所定のクリアランスを有しながら嵌合穴31と嵌合するように、ハウジング30の内部に同軸的に収容されている。これにより、可動部20のうちテーパ部21の一部、及び上端面22が、ハウジング30の外部に露呈するようになっている。このハウジング30は、取り付けられたスタンド32により、地面に設置可能となっている。また、ハウジング30の内部には、後に詳述するように第1コイル60と、駆動用磁石70とが収容されている。更に、ハウジング30は、第1コイル60に電力を供給するためのケーブル33を備えている。即ち、ケーブル33は、第1コイル60と、コントロールユニット50とを電気的に接続するようになっている。
【0036】
サーボ式加速度センサ40は、検出部41と、ケーブル42とを備えている。検出部41は、上記可動部20に内蔵されている。即ち、サーボ式加速度センサ40は、可動部20と一体的に移動(振動)するようになっており、可動部20の加速度が検出可能となっている。ケーブル42は、検出部41と、コントロールユニット50とを電気的に接続するようになっている。
【0037】
コントロールユニット50は、電力増幅部51と、計測部52と、制御部53とを備えている。これらは互いにバスで接続されており、インターフェイスを介して上記ケーブル33、42とも電気的にそれぞれ接続されている。また、これら3つは、互いに分離することなくコントロールユニット50内にて、一体的に配設されている。
【0038】
電力増幅部51は、電源からの電力が入力され、制御部53からの信号が周知の手法により増幅されるとともに、増幅された電力を、ケーブル33を介してハウジング30の内部に収容されている第1コイル60へ給電するようになっている。計測部52は、ケーブル42を介してサーボ式加速度センサ40の検出部41へ給電するとともに、後述する検出部41のサーボ増幅部41fにより調整された給電量をモニタするようになっている。これにより、可動部20の加速度が計測部52により算出・計測されるようになっている。制御部53は、振動数の指令値、加速度の指令値、及び振幅の指令値が入力可能となっている。そして、可動部20の実際の振動数、加速度、及び振幅が、上記入力された振動数の指令値、加速度の指令値、及び振幅の指令値に近づくように(一致するように)、第1コイル60へ給電する態様が制御されるようになっている。この計測された加速度、振動数、及び振幅は、図示しないディスプレイにて表示される。
【0039】
図2は、振動発生装置10における、ハウジング30の内部構造を示す図である。ハウジング30の内部における可動部20の側面には、円筒状の第1コイル60が、可動部20と同軸的に配設されている。即ち、可動部20の側面に配設された第1コイル60の巻線方向は、可動部20の円周に沿うようになっている。この第1コイル60の素材は、本例では銅であるが、同様に伝導性が良好な素材(例えば、アルミニウム等)であってもよい。
【0040】
駆動用磁石70は、永久磁石であり、大径部71と小径部72とからなる段付円筒形状を呈している。大径部71は、ハウジング30に同軸的に固設されている。小径部72は、可動部20の開口に所定のクリアランスを有しながら嵌合されている。小径部72と、可動部20との間には、弾性部材34が介装されている。これにより、可動部20は、弾性部材34、及び駆動用磁石70を介して、ハウジング30に支持されるとともに駆動用磁石70に対してエアギャップを有するようになっている。従って、可動部20は、ハウジング30に対して振動可能となっている。
【0041】
なお、可動部20、ハウジング30、第1コイル60、駆動用磁石70は、互いに同軸的に配置されており、その中心軸を軸Xと称呼する。
【0042】
これにより、第1コイル60に給電された場合、第1コイル60に鉛直上下方向のローレンツ力が発生する。即ち、第1コイル60に給電される電流の向きが交互に切り替わる周期(即ち、交流電流の周波数)に応じて、可動部20は第1コイル60と一体的に振動するようになっている。
【0043】
図3は、サーボ式加速度センサ40の検出部41における概略構成を示す図である。この検出部41は、ケーシング41aと、振り子41bと、第2コイル41cと、検出用磁石41dと、変位検出部41eと、サーボ増幅部41fとを備えている。
【0044】
ケーシング41aは、上述のように可動部20に内蔵されている。このケーシング41aの内部に、振り子41b、第2コイル41c、検出用磁石41d、変位検出部41e、及びサーボ増幅部41fが収容されている。
【0045】
振り子41bは、基端部41b1と、基端部41b1とヒンジを介して接続される変位部41b2と、ピース41b3とから構成されている。基端部41b1がケーシング41aの内側に固定されることで、変位部41b2が変位可能となっている。変位部41b2は、円柱形状を呈しており、非磁性材料であるクオーツにて形成されている。なお、この変位部41b2の軸は、上記軸Xと直交するようになっている。ピース41b3は、柱状を呈しており、変位部41b2の径方向の外側に突出するように複数配設されている。
【0046】
ケーシング41aの内部における変位部41b2の側面には、円筒状の第2コイル41cが変位部41b2の軸を挟んで隣合うように配設されている。これらの第2コイル41cは、互いに同軸的に配置されており、その中心軸を軸Yと称呼する。即ち、各第2コイル41cは、ピース41b3を介して変位部41b2の側面にそれぞれ配設されており、それらの中心軸(上記軸Y)は、変位部41b2の軸と直行し、且つ、ピース41b3の突出方向に沿うようになっている。この第2コイル41cの素材は、本例では銅であるが、同様に伝導性が良好な素材(例えば、アルミニウム等)であってもよい。
【0047】
検出用磁石41dは、永久磁石であり、板状を呈している。この検出用磁石41dは、振り子41b(の変位部41b2)を対象軸として、鉛直上下方向から変位部41b2を挟み込むようにケーシング41aに固設されている。従って、振り子41bは、基端部41b1を介してケーシング41aに支持されるとともに、検出用磁石41dに対してエアギャップを有するようになっている。このため、振り子41bの変位部41b2は、第2コイル41cと一体的に、ケーシング41aに対して相対変位可能となっている。
【0048】
なお、本発明にかかる振動発生装置においては、前記振り子は、前記変位部が柱状に構成され、前記振り子には前記第2コイルが2つ前記変位部の軸方向にて隣り合うよう、且つ、互いに同軸的に配設され、前記第2磁石は、3つの凸部と、隣合う前記凸部にて形成された凹部とを備え、前記2つの第2コイルは、前記2つの凹部にそれぞれ1つずつ介装されるとともに、前記3つの凸部の極は、互いに隣合う前記凸部にて互いに異なるように構成されてもよい。
【0049】
これによれば、2つの第2コイル41cに対してそれぞれの磁気回路が形成され得る。それぞれの磁気回路における磁力線は、互いに180度異なった方向のものとなる。このため、例えば、外乱としての外部磁気が検出用磁石41dに作用する場合であっても、その影響(外乱により振り子に作用する力)は相対的に打ち消され得る。また、検出用磁石41dの磁気回路は、磁気的に閉じた構成となる。このため、外部磁気等の外乱に起因する、磁気回路内の磁束の変化の影響を抑制することができる。以上のことから、外部磁気に起因するバイアスの変動、即ち、検出誤差を抑制することができる。
【0050】
変位検出部41eは、リアクタンス式の変位量検出センサであって、振り子41bの変位部41b2の変位量を検出可能に配設されている。また、変位量に応じた信号を検出値として出力するようになっている。
【0051】
サーボ増幅部41fは、変位検出部41eからの検出値を受信し、その信号を増幅するようになっている。その増幅された電力は、第2コイル41cへ供給されるようになっている。より具体的には、変位部41b2の変位量が大きいほど、第2コイル41cへ給電される量がより大きくなるように、サーボ増幅部41fにより給電量が調整されるようになっている。
【0052】
例えば、振り子41bに慣性力が作用して、変位部41b2が鉛直下方向(又は、鉛直上方向)へ変位した場合を考える。この場合、その変位量に相当する分の給電量をもって、第2コイル41cに給電される。従って、第2コイル41cより、上記変位量に相当する分の鉛直上方向(又は、鉛直下方向)のローレンツ力が発生する。即ち、そのローレンツ力は変位部41b2の慣性力に抗するように作用する。そして、変位部41b2は、最終的には基準位置(即ち、変位量がゼロである場合の位置)に維持される。即ち、変位検出部41e、及びサーボ増幅部41fにより、変位部41b2の変位量がゼロとなるようにフィードバック制御が実行される。
【0053】
また、サーボ増幅部41fは、第2コイル41cへ給電した量と同じ量だけ、第2コイル41c、及びケーブル42を介して計測部52へ給電するようになっている。この計測部52へ出力される給電量は、振り子41bの変位部41b2の変位量に相当する。また、変位部41b2の変位量は、振り子41bに作用する慣性力に比例する。従って、サーボ増幅部41fから計測部52へ給電される給電量は、振り子41bに作用する慣性力に比例する。即ち、上記給電される給電量は、上記慣性力に相当するものとなり得る。計測部52では、この給電量(即ち、振り子41bの慣性力)と、振り子41bの変位部41b2の質量とに基づいて加速度が算出される。
【0054】
図4は、第1コイル60、及び第2コイル41cの位置関係を説明するための図である。上述したように、第1コイル60は、上記軸Xと同軸的にハウジング30の内部にて可動部20に配設されている。第2コイル41cは、上記軸Yと同軸的にサーボ式加速度センサ40のケーシング41aの内部にて振り子41bに配設されている。ここで、上述したように、上記軸Xと、上記振り子41bの変位部41b2の軸は直交する関係にある。変位部41b2の軸と、上記軸Yとも直行する関係にある。従って、軸Xと軸Yとは、互いに平行となる関係にある。従って、第1コイル60、及び第2コイル41cのそれぞれの中心軸は平行となる。
【0055】
以下、このようにコイルを配置する理由について述べる。本発明者は、本実施形態と同様の装置における2つのコイルの配置について、それぞれの中心軸のなす角を変更させながら、コイルに発生する誘導電流の測定を行った。この「誘導電流」は、一方のコイルが、他方のコイルから発生する磁力を受けたときに、一方のコイルにて発生する電流である。本発明者は、上記中心軸のなす角度と、誘導電流の大きさとの関係を明らかにし、以下の知見を得た。即ち、2つのコイルのそれぞれの中心軸が平行である場合、又はそれぞれの中心軸が直交する場合に、誘導電流は極小となる。
【0056】
上記知見に基づき、本実施形態にかかる振動発生装置10においては、第1コイル60、及び第2コイル41cが、図4に示すようにそれぞれの中心軸が平行となるよう配設されている。従って、本実施形態にかかる振動発生装置10においては、第1コイル60に大きい交流電流が供給された場合であっても、それが原因として第2コイル41cに誘導電流が発生することが抑制され得る。即ち、第1コイル60から発生する比較的大きい磁気が、第2コイル41cに対して影響し難くなり得る。従って、サーボ式加速度センサ40に検出誤差が生じることが抑制され得る。この結果、振動計の校正をより精度良く行うことができる。
【0057】
(実際の作動)
以下、上述のように構成された振動発生装置10を用いて振動計の校正を行う際の作動について、図5のフローチャートを参照しながら説明していく。
【0058】
図5は、振動計の校正を行う際の作動を表すフローチャートである。振動計の校正を行う場合、ステップ処理が、ステップ500から開始されてステップ505〜520へ順に移行されるようになっている。ステップ505では、振動計の検出部が、振動を与える対象物として可動部20に取り付けられる。具体的には、振動計の検出部は、可動部20の上端面22に着装される。
【0059】
次に、ステップ510では、可動部20の振動数の指令値、及び可動部20の振幅(即ち、可動部20の変位。本例では、両振幅)の指令値が設定されるとともに、それらの指令値が制御部53に入力される。制御部53は、可動部20の実際の振動数、及び可動部20の実際の振幅が上記入力された指令値と一致するように制御する。具体的には、制御部53は、上記入力された振動数の指令値が大きいほど、第1コイル60に給電される交流電流の周波数がより大きくなるように、電力増幅部51に指示する。また、制御部53は、上記入力された振幅の指令値が大きいほど、第1コイル60に給電される電力がより大きくなるように、電力増幅部51に指示する。これにより、上記指令値に応じた振動数、及び振幅をもって可動部20が振動する。なお、振幅に代えて、可動部20の変位量の指令値を設定し制御部53に入力してもよい。この場合、制御部53は、可動部20の実際の変位量が上記入力された指令値と一致するように制御する。
【0060】
図6は、加速度(の絶対値の最大値)と、振動数及び振幅(両振幅)との関係を示したグラフである。加速度は、振動数が大きいほど、また、振幅が大きいほどより大きくなる。より具体的には、a、f、d、及びπを加速度(m/s)、振動数(Hz)、振幅(mm)、及び円周率としたとき、下記(1)式で表される関係が成立する。
a=(2d・π・f)/1000・・・ (1)
【0061】
上述のように可動部20の振動数、及び振幅の指令値がそれぞれ設定されれば、上記(1)式の関係から、可動部20の加速度が一意に決定され得る。換言すれば、可動部20の加速度を所望の値とするためには、上記(1)式の関係を利用して振動数、及び振幅の指令値が設定されると好適である。このように、制御部53により、可動部20の振動数、及び可動部20の振幅が制御されることで、可動部20の加速度も制御され得るようになっている。
【0062】
上述のように、上記指令値に応じた振動数、及び振幅をもって可動部20が振動することで、サーボ式加速度センサ40により可動部20の加速度が検出される。即ち、計測部52にて、上記指令値に応じた加速度が表示される。
【0063】
本実施形態においては、振動数の指令値が、5.00Hzから200Hzまでの範囲にて設定可能となっている。また、振幅の指令値が、0から10mmまで設定可能となっている。従って、振動数の指令値、及び振幅の指令値がそれぞれ微小なものに設定されることで、可動部20が微小な加速度をもって振動し得る。他方、可動部20の加速度を検出するのに、サーボ式加速度センサ40が用いられる。従って、加速度が微小な場合であっても、精度良く加速度が検出され得る。
【0064】
また、本実施形態の可動部20においては、従来の振動計の校正装置の可動部に比して、振動数が比較的小さく、且つ、振幅が比較的大きい振動が可能となる。以上のことから、種々の振動数・振幅の組み合わせを用いて、振動計の校正を精度良く行うことができる。
【0065】
次に、ステップ515では、振動計の加速度(の検出値)が、計測部52にて表示された加速度と一致するように、振動計が校正される。より具体的には、計測部52にて表示された加速度の値と、振動計にて表示された加速度の値との偏差を算出して、その偏差が所定の値以下となるようにフィードバック的に校正がなされる。
【0066】
次に、ステップ520では、校正終了条件が成立したか否かが判定される。ここにおいて、「校正終了条件」は、k個の互いに異なる加速度(即ち、k個の振動数・振幅の組み合わせ、kは自然数)にて振動計の校正が完了した場合に成立する。この校正終了条件が成立していない場合、ステップ520にて「No」と判定され再びステップ510〜520の処理が実行される。一方、校正終了条件が成立した場合、ステップ520にて「Yes」と判定されステップ595に進んで、振動計の校正が終了される。
【0067】
なお、上記校正終了条件における「k」の値は、振動計が計測し得る加速度のレンジに応じて調整されてもよい。より具体的には、例えば、上記加速度のレンジが広いほど、kの値がより大きく設定されると好適である。これにより、加速度のレンジの大きさに応じて、簡易かつ適切に振動計が校正され得る。
【0068】
以上説明したように、本発明にかかる振動発生装置の実施形態によれば、可動部20の加速度を検出するに際し、サーボ式加速度センサ40が用いられる。このサーボ式加速度センサ40は、可動部20に一体的に固設されている。また、サーボ式加速度センサ40の検出感度が非常に大きい。このサーボ式加速度センサ40に基づき計測部52にて、可動部20の加速度が計測される。このため、可動部20の加速度が精度良く計測され得る。加えて、可動部20の加速度の測定にあたり、光学システム等の大掛かりな構成の必要性が小さくなる。従って、精度良く計測される加速度が利用されて振動計が校正され得るため、振動計の校正が精度良く行われ得る。また、装置の質量が大きくなることが抑制され得る。
【0069】
また、上記実施形態の構成においては、第1コイル60、及び第2コイル41cの中心軸が平行となっている。このように第1コイル60、及び第2コイル41cが配設されることで、第1コイル60から発生する比較的大きい磁気が、第2コイル41cに対して影響し難くなり得る(図4を参照)。即ち、サーボ式加速度センサ40に検出誤差が生じることが、抑制され得る。従って、振動計の校正をより精度良く行うことができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態にかかる振動発生装置について説明する。第2実施形態は、サーボ式加速度センサ40が備える第2コイル41cの巻線方向についてのみ、上記第1実施形態と異なる。以下、図7、及び図8を参照しながら第2実施形態の上記第1実施形態と異なる点のみについて説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ、又は等価な部位、構成に関しては、同じ符号を付すことでその説明を省略する。
【0071】
図7は、第2実施形態が備えるサーボ式加速度センサ40の検出部41における概略構成を示す図であり、上述した図3に対応するものである。ケーシング41aの内部における変位部41b2の側面には、円筒状の第2コイル41cが変位部41b2の軸方向にて隣合うように配設されている。これらの第2コイル41cは、変位部41b2と互いに同軸的に配置されている。即ち、各第2コイル41cは、ピース41b3を介して変位部41b2を囲むようにそれぞれ配設されており、それらの中心軸(上記軸Y)は、変位部41b2の軸と一致し、且つ、ピース41b3の突出方向と直行するようになっている。
【0072】
図8は、第1コイル60、及び第2コイル41cの位置関係を説明するための図であり、上述した図4に対応するものである。ここで、上述したように、上記軸Xと、上記振り子41bの変位部41b2の軸は直交する関係にある。上記軸Yは、変位部41b2の軸と一致する関係にある。従って、軸Xと軸Yとは、互いに直交する関係にある。
【0073】
本実施形態における第1コイル60、及び第2コイル41cの配置は、上述した「2つのコイルのそれぞれの中心軸が平行である場合、又はそれぞれの中心軸が直交する場合に、誘導電流は極小となる。」という知見に基づいている。即ち、本実施形態にかかる振動発生装置10においては、第1コイル60、及び第2コイル41cが、図8に示すようにそれぞれの中心軸のなす角度が直角となるよう配設されている。従って、本実施形態にかかる振動発生装置10においては、上記第1実施形態と同様、第2コイル41cにて誘導電流が発生することが抑制され得、サーボ式加速度センサ40に検出誤差が生じることが抑制され得る。この結果、振動計の校正をより精度良く行うことができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態にかかる振動発生装置について説明する。第3実施形態は、支持部80を備えている点、及び計測部52内にローパスフィルタ部52aと、演算増幅部52bとを備えている点のみ、上記第1実施形態と異なる。以下、図9、及び図10を参照しながら第3実施形態の上記第1実施形態と異なる点のみについて説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同じ、又は等価な部位、構成に関しては、同じ符号を付すことでその説明を省略する。
【0075】
図9は、第3実施形態にかかる振動発生装置10における、ハウジング30の内部構造を示す図である。支持部80は、その一端がハウジング30に配設され、その他端が可動部20に配設されることで、ハウジング30に対して可動部20を支持するようになっている。この支持部80は、所定の弾性係数をもつ弾性材料で構成されており、後に詳述するように弾性係数が調整されている。
【0076】
図10は、計測部52における加速度を計測するための機能ブロック図を示している。この計測部52は、ローパスフィルタ部52aと、演算増幅部52bとを備えている。サーボ式加速度センサ40からの信号である電圧Vは、計測部52のローパスフィルタ部52aに入力される。この電圧Vは、サーボ式加速度センサ40のサーボ増幅部41fが第2コイル41cへ供給する給電量に相当するものである。
【0077】
ここで、この給電量は、上述のように変位部41b2の変位量(即ち、加速度)が大きいほどより大きくなるように調整される。即ち、上記電圧Vは、サーボ式加速度センサ40と一体的に変位する可動部20の加速度が大きいほどより大きくなる。
【0078】
ローパスフィルタ部52aは、所定のカットオフ周波数を有する2次のローパスフィルタで構成されており、上記電圧Vをローパスフィルタ処理してフィルタ処理後電圧Vfを出力する。このローパスフィルタは、振動特性に応じてバタワース型、チェビシェフ型、及びベッセル型のうちの何れかから選択される1つの型となるよう設定されると好適である。
【0079】
演算増幅部52bは、上記出力されたフィルタ処理後電圧Vfが入力されるようになっており、このフィルタ処理後電圧Vfと、図示しないメモリに予め記憶されている振り子41bの変位部41b2の質量に相当する値とに基づいて加速度が算出されるようになっている。そして、このように算出された加速度が、上述したディスプレイに表示されるようになっている。
【0080】
図11は、計測部52にて計測される加速度及び時間を、それぞれ2次元座標上の縦軸及び横軸の変数とした場合に、可動部20が相対移動(振動)するとき計測される加速度と時間との関係を規定する軌跡(上記「加速度−時間軌跡」)を示すグラフである。
【0081】
本実施形態における「加速度−時間軌跡」は、図11の実線で示すように、正弦波によく近似した疑似正弦波となる。これは、支持部80の弾性係数が、加振における慣性力と制動力のバランスが適切となるように調整されまた、ローパスフィルタ部52aが、電気的ノイズが適切に抑制されるように設定されているためである。
【0082】
仮に、振動発生装置10が、支持部80及びローパスフィルタ部52aを備えていない(2次のローパスフィルタ処理がOFFされる)場合(即ち、第1、第2実施形態に相当)には、「加速度−時間軌跡」は、図11の破線で示すように正弦波から大きく乖離したものとなる。これは、加振における可動部20の慣性力と制動力のバランス調整がなされてないことに基づき、特に、タ―ビン監視用の振動計など自重が大きいものの検出部を可動部20に固着させた場合に、正弦波からの乖離が発生し易い。加えて、可動部20の加速度がリンギング(プラスからマイナスへ、又は、マイナスからプラスへ)移行するときに、信号に乱れが生じ電気的ノイズが発生することにも基づく。
【0083】
この仮の実施形態に対し、本実施形態によれば、支持部80の弾性係数が、加振における慣性力と制動力のバランスが適切となるように調整されており、且つ、サーボ式加速度センサ40からの電圧Vに2次のローパスフィルタ処理がなされる。このため、加振における慣性力と制動力のバランスが適切に調整され、加えて、電気的ノイズも適切に抑制され得、「加速度−時間軌跡」は、正弦波によく近似した疑似正弦波となる。この「加速度−時間軌跡」の形状が疑似正弦波状となることで、振動計の自重の大小に関係なく、また、振動計における積分処理による補償の有無に関係なく、精度良い校正が可能となる。従って、簡易な構成により、疑似正弦波化が達成でき、幅広い種類の振動計を精度良く校正することができる。また、本実施形態によれば、他の振動計校正装置に比して、計測精度(特に低周波で大振幅の領域において)、直線性、温度特性、経年変化の観点で特に優れている。
【0084】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、制御部53にて振動数、及び振幅両方が制御されるが、これに代えて、振動数、及び振幅のうち一方のみが制御されるようにしてもよい。また、制御部53を備えず、成り行きの振動数、及び振幅が用いられるようにしてもよい。
【0085】
加えて、上記実施形態においては、電力増幅部51、計測部52、及び制御部53がコントロールユニット50内にて一体となるよう構成されているが、これに代えて、それらが別体となるよう構成されていてもよい。
【0086】
加えて、上記第3実施形態においては、第1コイル60、及び第2コイル41cが、上記第1実施形態と同様それぞれの中心軸が平行となるように配置されているが、これに代えて、上記第2実施形態と同様それぞれの中心軸が直交するように配置されてもよい。
【0087】
加えて、上記第3実施形態においては、支持部80、及び計測部52にローパスフィルタ部52aの両方が備えられているが、これに代えて、これらのうち何れか1つのみが備えられていてもよい。これによれば、少なくとも、支持部80、及びローパスフィルタ部52aが両方とも備えられていない場合に比して、「加速度−時間軌跡」が正弦波に近づき得る。
【0088】
加えて、上記第3実施形態においては、サーボ式加速度センサ40からの電圧Vがローパスフィルタ部52aに入力され2次のローパスフィルタ処理がなされ、フィルタ処理後電圧Vfが演算増幅部52bに入力されるようになっているが、これに代えて、サーボ式加速度センサ40からの電圧Vが演算増幅部52bに入力されて加速度が算出され、算出された加速度に2次のローパスフィルタ処理がなされるようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
少なくとも一部が前記ハウジングの内部に収容されるとともに、前記ハウジングの外部にて振動を与える対象物体を着脱可能、且つ、前記ハウジングと相対移動可能に構成された可動部と、
前記ハウジングの内部にて前記可動部に配設された第1コイルと、
前記第1コイルが給電された場合に前記第1コイルと一体的に前記可動部が前記相対移動するよう前記ハウジングの内部に配設された第1磁石と、
前記可動部に配設されたケーシングと、前記ケーシングの内部に収容されるとともに前記ケーシングの内側に基端部を備えることで変位可能に構成された振り子と、前記ケーシングの内部にて前記振り子に配設された第2コイルと、前記第2コイルが給電された場合に前記第2コイルと一体的に前記振り子が変位するよう前記ケーシングの内部に配設された第2磁石と、前記振り子の変位量を検出する変位検出部と、前記変位検出部により検出された変位量に基づいて前記第2コイルへの給電量を調整するサーボ機構とを備えたサーボ式加速度センサと、
前記サーボ式加速度センサが備える前記サーボ機構により調整された給電量に基づいて前記可動部の加速度を計測する計測部と、
を備えた振動発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動発生装置において、
前記ハウジングの内部にて前記可動部に配設された前記第1コイル、及び前記サーボ式加速度センサの前記ケーシングの内部にて前記振り子に配設された前記第2コイルは、
前記第1、第2コイルのそれぞれの中心軸が平行となるように、又は前記第1、第2コイルのそれぞれの中心軸のなす角が直角となるように、前記可動部、及び前記振り子に配設された振動発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の振動発生装置において、
前記ハウジングの内部にて前記可動部に配設された前記第1コイル、及び前記サーボ式加速度センサの前記ケーシングの内部にて前記振り子に配設された前記第2コイルは、
前記第1、第2コイルのそれぞれの中心軸が平行となるように、前記可動部、及び前記振り子に配設された振動発生装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の振動発生装置であって、
前記可動部の実際の振動数、及び/又は前記可動部の実際の振幅が、前記可動部の振動数の指令値、及び/又は前記可動部の振幅の指令値に近づくように前記第1コイルへの給電の態様を制御する制御部を備えた振動発生装置。
【請求項5】
請求項4に記載の振動発生装置であって、
電源からの電力を増幅するとともに、前記増幅した電力を前記第1コイルへ向けて出力する増幅部を備え、
前記計測部と、前記制御部と、前記増幅部とが一体に構成された振動発生装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の振動発生装置であって、
弾性を有し、一端が前記ハウジングに配設され他端が前記可動部に配設されることで前記可動部を支持する支持部を更に備え、
縦軸と前記縦軸に直行する横軸とを備える2次元座標上において、前記計測部にて計測される加速度及び時間を、それぞれ前記縦軸及び前記横軸の変数とした場合に、
前記可動部が相対移動するとき、前記2次元座標上に表される前記計測される加速度と前記時間との関係を規定する軌跡が疑似正弦波となるように、前記支持部の弾性の度合いが調整された振動発生装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の振動発生装置において、
前記計測部は、
前記サーボ式加速度センサから前記給電量に相当する信号を取得し、前記取得した信号を演算増幅することで前記可動部の加速度を計測する演算増幅部と、
前記演算増幅部が取得する信号に基づく信号に2次のローパスフィルタ処理を施すローパスフィルタ部と、
を備えた振動発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−47927(P2011−47927A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168458(P2010−168458)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(391061691)三興コントロール株式会社 (1)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【出願人】(593040391)エミック株式会社 (1)