説明

振動粉砕機

【課題】メンテナンスが容易で、しかも信頼性のある振動粉砕機を提供する。
【解決手段】被粉砕物を装入する円筒ドラム1とこれを囲むフレーム2とをそれぞれの重心を合わせて配置し、円筒ドラム1とフレーム2とを上下左右に配置されたバネ3で接合するとともに、円筒ドラム1の上下左右に電磁加振用マグネット4a〜4dを配置した振動粉砕機である。バネ3はそれぞれ同じバネ定数を有するとともに各バネの合力が円筒ドラム1及びフレーム2の重心を向くように配置する。電磁加振用マグネット4a〜4dはそれぞれ同じ性能を有するとともに各電磁加振用マグネットの振動方向が円筒ドラム1及びフレーム2の重心を向くように配置する。そして、固有振動制御により、上下に配置された電磁加振用マグネット4c,4dに流す電流と左右に配置された電磁加振用マグネット4a,4bに流す電流の位相を90度ずらすようにして円筒ドラム1に円振動を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉱物等の被粉砕物を粉砕する粉砕機に関し、とくに被粉砕物を装入した円筒ドラムを振動させて被粉砕物を粉砕する振動粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉱物等の被粉砕物を粉砕する粉砕機として、被粉砕物を装入した円筒ドラムを振動させて被粉砕物を粉砕する振動粉砕機が多用されている。この振動粉砕機の基本構成は、例えば特許文献1に開示されているように、円筒ドラムを加振機等の加振手段によって振動させるというものである。そして、従来、この加振手段としては、例えば特許文献2に開示されているように、偏心モータを使用して、あるいはモータによって偏心重を回転させて、強制振動力を発生させ、円筒ドラム内の被粉砕物を粉砕するのが主流であった。
【0003】
しかし、このようなモータを使用した加振手段では、モータの回転軸等を保持するためにベアリングが不可欠であり、とくに装置が大きくなると、ベアリングの発熱損失が大きくなると同時に、給油、交換等のメンテナンスも大変である。また、モータを使用した加振手段では、モータの起動時に通常運転時の数倍の振動を起こすので、この対策にも大きな費用を要し、信頼性にも欠けていた。
【特許文献1】特開平7−299374号公報
【特許文献2】特開平7−185377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、メンテナンスが容易で、しかも信頼性のある振動粉砕機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の振動粉砕機は、被粉砕物を装入する円筒ドラムとこれを囲むフレームとをそれぞれの重心を合わせて配置し、この円筒ドラムとフレームとを円筒ドラムの上下左右に配置されたバネで接合するとともに、円筒ドラムの上下左右に電磁加振用マグネットを配置したものである。この本発明の振動粉砕機において、円筒ドラムとフレームとを接合するバネは、それぞれ同じバネ定数を有するとともに、それぞれのバネの合力が前記円筒ドラム及びフレームの重心を向くように配置される。また、円筒ドラムの上下左右に配置された電磁加振用マグネットは、それぞれ同じ性能(同じコアに同じ巻線をしたもの)を有するとともに、それぞれの電磁加振用マグネットの振動方向が前記円筒ドラム及びフレームの重心を向くように配置される。そして、固有振動制御により、上下に配置された電磁加振用マグネットに流す電流と左右に配置された電磁加振用マグネットに流す電流の位相を90度ずらすようにして円筒ドラムに円振動を発生させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の振動粉砕機は、上記の構成としたことで、起動して直ちに共振周波数で運転し、起動時も通常運転時と全く同じでスムーズな運転ができる。また、ベアリングが不要であるので、その発熱による損失もなく、省エネ効果も大である。加えて、従来のように、ベアリングの給油、交換等が不要であり、メンテナンスも容易に行うことができる。
【0007】
このように、本発明によれば、メンテナンスが容易で、しかも信頼性のある振動粉砕機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1は本発明の原理を説明するための断面図である。同図に示すように、本発明の振動粉砕機では、被粉砕物を装入する円筒ドラム1とこれを囲むフレーム2とをそれぞれの重心を合わせて配置し、この円筒ドラム1とフレーム2とを円筒ドラム1の上下左右に配置されたバネ3で接合するとともに、円筒ドラム1の上下左右に電磁加振用マグネット4a〜4dを配置する。フレーム2は、防振バネ5を介して基礎6に接合される。
【0010】
円筒ドラム1とフレーム2とを接合するバネ3は、それぞれ同じバネ定数を有するとともに、それぞれのバネ3の合力が円筒ドラム1及びフレーム2の重心を向くように配置される。また、円筒ドラム1の上下左右に配置された電磁加振用マグネット4a〜4dは、それぞれ同じ電磁加振特性を有するとともに、それぞれの電磁加振用マグネット4a〜4dの振動方向(電磁加振用マグネットの中心線の向き)が円筒ドラム1及びフレーム2の重心を向くように配置される。
【0011】
このような構成において、本発明では、上下に配置された電磁加振用マグネット4c、4dに流す電流と左右に配置された電磁加振用マグネット4a、4bに流す電流の位相を90度ずらすようにして円筒ドラム1に強力な円振動を発生させて、円筒ドラム1内の被粉砕物を粉砕する。
【0012】
この電磁加振用マグネット4a〜4dによる加振方法について、図1を参照してより具体的に説明する。図1において、左右の電磁加振用マグネット4a、4bの中心線をX−X、上下の電磁加振用マグネット4c、4dの中心線をY−Yとすると、まず、X−X軸の電磁加振用マグネット4aには電気位相用の0〜180度の間に固有振動制御された電流を流し、180〜360度の間は電流は流さず、電磁加振用マグネット4bには0〜180度の間は電流は流さず、180〜360度の間は電流を流し、以下この順で電流制御すれば、X−X方向に発生する振動力Fxは次式(1)のとおりになる。
Fx=Fsinωt (F:振動力) …(1)
【0013】
一方、Y−Y軸の電磁加振用マグネット4cには上記より電気用で90度進んだ電流を90〜270度の間流し、270〜450度の間は電流を流さず、電磁加振用マグネット4dには90〜270度の間電流を流さず、270〜450度の間電流を流せばY−Y方向に発生する振動力Fyは次式(2)のとおりになる。
Fy=Fsin(ωt+π/2)=Fcosωt …(2)
【0014】
したがって、FxとFyの合力Fは次式(3)のとおりになる。
F=(Fx+Fy1/2=F(sinωt+cosωt)1/2=F …(3)
すなわち、Fの振動力が角速度ωで回転していることになる。これによって、円筒ドラム1に強力な円振動を発生させることができる。
【0015】
図2は本発明を適用した振動粉砕機の断面を示す。また、図3は図2の振動粉砕機の側面を示し、その右上半分には図2のa−a断面を示し、左上半分には図2のb−b断面を示す。
【0016】
図3において、7は巻線されたSコアであり、これに間隙gを取ってAコア8がギャップ調整用ボルト9にて円筒ドラム1に取り付けられている。このSコア7とAコア8とによって図1で説明した電磁加振用マグネットが構成される。
【0017】
チャンネル10にはSコア7が取り付けられ、また、バネ3が本実施例ではバネ取付座11に合計16本取り付けられている。このバネ3は、圧縮されて円筒ドラム1との間に弾接して取り付けられている。12は端子箱でSコア7の巻線はここに集められ、外部より固有振動制御による電力が供給されるようになっている。
【0018】
そして、図1で説明したように、それぞれの電磁加振用マグネット(Sコア7の巻線)に流す電流を制御することにより、円筒ドラム1とフレーム2とはそれぞれ反対方向に大きく振動し、強力な円振動を発生して円筒ドラム1内の被粉砕物が粉砕される。
【0019】
このように固有振動制御による本発明の振動粉砕機は、円筒ドラム内部で消費される消費電力のみが電磁加振用マグネットの吸引力に関係し、円筒ドラムの耐久力を高めるために板厚を厚くして補強しても消費電力及び吸引力に関係なく共振用のバネをその分増すだけでよい。
【0020】
また、本発明の振動粉砕機にはベアリングはなく、従来の振動粉砕機のようなベアリング交換が不要となり、メンテナンスも楽である。また、従来の共振型振動粉砕機は運転安定性のため共振周波数より10〜15%高い周波数で運転するので、共振用のバネが一本でも破損すると共振点と近くなるためますます大きな振幅になり、全体的にバネ破損を招いたが、本発明の固有振動制御による振動粉砕機は、2,3本バネが切損したとしても、振動振幅は一定で変化がないから、全体的に破損する心配は全くない。さらに、起動又は停止時に従来のものは通常運転時の振幅の数倍大きく振動するのでその対策が大変で、防振バネが非常に高価につく欠点があった。これに対して本発明の振動粉砕機は、固有振動制御を行うので、起動又は停止時の振幅と通常運転時の振幅が同じとなり、防振バネが小さくて安価なもので済む。
【0021】
また、従来の振動粉砕機では、スケールアップするとき、ベアリングが一番問題になり、また高価になっていたが、本発明の振動粉砕機では、共振用のバネを増やせばよく、また、そのバネもビッグテルバネと違って標準仕様であるから安価に入手でき、安価に大型の振動粉砕機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の原理を説明するための断面図である。
【図2】本発明を適用した振動粉砕機の断面を示す。
【図3】図2の振動粉砕機の側面を示し、その右上半分には図2のa−a断面を示し、左上半分には図2のb−b断面を示す。
【符号の説明】
【0023】
1:円筒ドラム
2:フレーム
3:バネ
4:電磁加振用マグネット
5:防振バネ
6:基礎
7:Sコア
8:Aコア
9:調整ボルト
10:チャンネル
11:バネ取付座
12:端子箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被粉砕物を装入する円筒ドラムとこれを囲むフレームとをそれぞれの重心を合わせて配置し、この円筒ドラムとフレームとを円筒ドラムの上下左右に配置されたバネで接合するとともに、円筒ドラムの上下左右に電磁加振用マグネットを配置してなり、
前記円筒ドラムとフレームとを接合するバネは、それぞれ同じバネ定数を有するとともに、それぞれのバネの合力が前記円筒ドラム及びフレームの重心を向くように配置され、
前記円筒ドラムの上下左右に配置された電磁加振用マグネットは、それぞれ同じ性能を有するとともに、それぞれの電磁加振用マグネットの振動方向が前記円筒ドラム及びフレームの重心を向くように配置され、
さらに、固有振動制御により、上下に配置された電磁加振用マグネットに流す電流と左右に配置された電磁加振用マグネットに流す電流の位相を90度ずらすようにして前記円筒ドラムに円振動を発生させる振動粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−130522(P2007−130522A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323493(P2005−323493)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000148690)株式会社村上精機工作所 (4)
【出願人】(597125623)
【出願人】(598155313)
【Fターム(参考)】