説明

振動装置及びそれを用いた画像機器

【課題】小型の防塵部材で大きな振動振幅が得られるようにすること。
【解決手段】全体として板状をなし、当該板状の部材面上のある仮想軸に対して対称な辺を少なくとも一つ有する防塵部材である防塵フィルタ119の上記部材面上に、上記1つの辺に隣接し、かつ、当該1つの辺に沿って、上記部材面に垂直な振動振幅をもつ振動を上記部材面に発生させるための加振部材として圧電素子120を配置する。そして、上記部材面上において、当該記部材面に垂直な振動振幅を有する振動の山の稜線174が閉曲線をなし、当該閉曲線の中心を含む領域が当該部材面に対して垂直な振動振幅を殆ど持たない節エリア173に囲まれている振動を、上記部材面に発生させるように上記圧電素子120を駆動する。また、防塵フィルタ119の板厚をtg、圧電素子120の板厚tpとした場合に、tg/tpが0.8となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子を備える撮像装置や、スクリーンに投影する画像を表示する表示素子を備える画像投影装置等の、画像形成素子を備える画像機器、及び、そのような画像機器において画像形成素子の前面に配される防塵部材を振動させる振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像素子を用いた撮像装置や液晶等の表示素子を用いた画像投影装置のような、画像形成素子を用いた画像機器において、画質の向上は著しい。そのため、撮像素子や表示素子といった画像形成素子の表面またはその前面に位置する透明部材(光学素子)の表面に塵埃が付着することで、生成する画像に塵埃の影を画像に生じさせてしまうことが、大きな問題となっている。
【0003】
例えば、カメラ本体に対して撮影光学系を着脱自在となるように構成し、ユーザが所望するとき所望の撮影光学系を任意に着脱し交換することで、単一のカメラ本体において複数種類の撮影光学系を選択的に使用し得るように構成した所謂「レンズ交換可能な」形態のデジタルカメラが、一般に実用化されている。このようなレンズ交換可能なデジタルカメラにおいては、当該撮影光学系をカメラ本体から取り外した際にカメラが置かれた周囲環境に浮遊する塵埃がカメラ本体内に侵入し、あるいは、カメラ本体内部には例えばシャッタ・絞り機構等の機械的に動作する各種の機構が配されていることから、これら各種の機構等からその動作中にゴミ等が発生し、撮像素子の表面やその前面に位置するレンズやカバーガラス等の透明部材(光学素子)の表面に塵埃が付着してしまう場合がある。
【0004】
また、CRT、液晶等の表示素子に表示した画像を、光源と投影光学系とを用いてスクリーン上に拡大投影し、画像を観賞するといったプロジェクタも実用化されており、そのようなプロジェクタにおいても、表示素子の表面やその前面に位置するレンズやカバーガラス等の透明部材(光学素子)の表面に塵埃が付着して、塵埃の影がスクリーンに拡大投影されてしまうことが発生することもあった。
【0005】
そこで、そのような画像機器内部の画像形成素子表面やその前面に位置するレンズやカバーガラス等の透明部材(光学素子)の表面に付着した塵埃を除去する機構が各種開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1は、円盤状のガラス板(防塵部材)の外周部に円環板状の圧電素子(加振部材)を固着し、圧電素子に所定の周波数の周波電圧を印加することにより、円盤状のガラス板の中心に同心円状の定在波屈曲振動が発生して、円盤状のガラス板に付着している塵埃を除去する塵埃除去機構を備えた電子撮像装置を開示している。ここで、所定の加振周波数で発生する振動(振動モード1)は同心円状に節をもつ定在波であり、この節は振動振幅が小さく、塵埃を除去することができない。そこで、異なる周波数で加振して、円盤状のガラス板に、振動モード1とは異なる所に同心円状の節をもつ定在波振動(振動モード2)を発生させ、上記振動モード1で節であった所に振動振幅が大きな状態を作っている。
【0007】
また、特許文献2では、矩形板状の防塵部材の対向する辺に夫々圧電素子を設け、圧電素子に所定の周波数の振動を発生させ、防塵部材を共振させて、辺に平行な節が発生するような定在波の振動モードにしている。そして、上記特許文献1と同様に節の位置を変更するために、異なる周波数で共振させて定在波の振動モードにしている。これらの振動モードは何れも防塵部材の辺に平行な節をもつ屈曲振動を発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−333391号公報
【特許文献2】特開2007−228246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示の塵埃除去機構では、同心円状の振動が発生することにより、非常に大きな振動振幅が得られ、塵埃を除去する能力は非常に高い。しかしながら、矩形の撮像素子に対して防塵部材は円形のガラス板(光学素子)であるために、防塵除去機構が大きくなってしまっていた。また、円環状の圧電素子は大きく、バラツキ無く高性能に形成するのが難しかった。
【0010】
これに対して、上記特許文献2に開示の塵埃除去機構では、矩形板状にすることで防塵部材は、上記特許文献1に対して円形の内接四角形となるため、より小型に形成できる。しかしながら、矩形の辺に対して平行な節を持つ振動モードのために振動の振幅が大きく出来ず、上記特許文献1で発生出来るような大きな振動振幅が発生できないので、防塵部材から塵埃を除去する能力が低い。振動振幅が小さいのは、節と直交する辺からの反射波を定在波として合成できていないため(一方の辺からの反射波を合成しているために辺に平行な振動の山、谷を持つ定在波となる)であり、特に、防塵部材の矩形の短辺と長辺の比(短辺/長辺)が小さいものは、より顕著である。また、矩形板状の防塵部材の対向する辺に夫々圧電素子を設けているため、防塵部材が大型化し、さらに、各圧電素子に駆動電圧を供給しなければならないことにより、圧電素子を駆動する回路の大型化、制御の複雑化を招いていた。
【0011】
以上述べたように、円形の振動振幅の山を持つ定在波を形成すると、振動振幅を大きくすることが可能で大きな塵埃除去能力が得られるが、防塵部材の形状は円形、あるいは円形に近い形状とする必要があり、機構自体が大きくなってしまっていた。また、矩形の防塵部材を用いたものも有ったが、振動振幅が大きく出来ず、塵埃除去能力が低く、防塵部材の大型化、圧電素子を駆動する回路の大型化、制御の複雑化を招いていた。
【0012】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、防塵部材が小型で、圧電素子を駆動する回路も小型で良く且つ制御も容易であって、大きな振動振幅を得ることが可能な振動装置、及び、そのような振動装置を用いた画像機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の振動装置の一態様は、
全体として板状をなし、当該板状の部材面上のある仮想軸に対して対称な辺を少なくとも一つ有する防塵部材と、
上記防塵部材に形成された1つの辺に隣接し、かつ、当該1つの辺に沿って上記部材面上に配置されていて、当該防塵部材の当該部材面に垂直な振動振幅をもつ振動を上記部材面に発生させるための加振部材と、
上記部材面上において、当該記部材面に垂直な振動振幅を有する振動の山の稜線が閉曲線をなし、当該閉曲線の中心を含む領域が当該部材面に対して垂直な振動振幅を殆ど持たない節領域に囲まれている振動を、上記部材面に発生させるように上記加振部材を駆動する駆動手段と、
を具備し、
上記防塵部材の板厚をtg、上記加振部材の板厚をtpとした場合にtg/tpが0.8となる寸法を持つことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の画像機器の一態様は、
光学的な画像が生成される画像面を有する画像形成素子と、
全体として板状をなし、当該板状の部材面上のある仮想軸に対して対称な辺を少なくとも一つもち、所定の広がりを持つ透明領域が上記画像面に対し所定の間隔を持って対向配設されている防塵部材と、
上記防塵部材が有する1つの辺に隣接し、かつ、当該1つの辺に沿って上記部材面上に配置されていて、当該部材面に垂直な振動振幅をもつ振動を上記部材面に発生させるための加振部材と、
上記加振部材を駆動する駆動手段と、
上記画像形成素子と上記防塵部材とが対向して形成される領域を、当該画像形成素子及び当該防塵部材の周縁側で封止するように構成された封止構造部と、
を具備し、
上記駆動手段は、上記封止構造部の外側であって上記防塵部材の部材面において、上記部材面に垂直な振動振幅を有する振動の山の稜線が閉曲線をなし、当該閉曲線の中心を含む領域が当該部材面に対して垂直な振動振幅を殆ど持たない節領域に囲まれている振動を、上記部材面に発生させるように上記加振部材を駆動し、
上記防塵部材の板厚をtg、上記加振部材の板厚をtpとした場合にtg/tpが0.8となる寸法を持つことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の振動装置の別の態様は、
全体として板状をなし、当該板状の部材面上のある仮想軸に対して対称な辺を少なくとも一つ有する防塵部材と、
上記防塵部材が有する1つの辺に隣接し、かつ、当該1つの辺に沿って上記部材面上に配置されていて、当該防塵部材の部材面に垂直な振動振幅をもつ振動を上記部材面に発生させるための加振部材と、
上記の部材面に垂直な振動振幅を有する振動の山の稜線の一部であって、この稜線が上記防塵部材の上記1つの辺から当該1つの辺に対向して配置されている他方の辺側へ向かって、略同心円状に連続的に位置する振動であって、当該連続する略同心円状の稜線の中心が当該防塵部材の1つの辺を挟んで他方の辺と反対側にある振動を、上記部材面に発生させるように上記加振部材を駆動する駆動手段と、
を具備し、
上記防塵部材の板厚をtg、上記加振部材の板厚をtpとした場合にtg/tpが0.8となる寸法を持つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防塵部材に形成された1つの辺に沿ってのみ加振部材を配置したので、円形形状の防塵部材や対向する辺にそれぞれ加振部材を配置した矩形状の防塵部材よりも小型にすることができ、かつ、圧電素子を駆動する回路も小型で制御容易にすることができる。
また、上記防塵部材の板厚をtg、上記加振部材の板厚をtpとした場合にtg/tpが0.8となる寸法として、防塵部材を屈曲する際の力を制御したので、光が透過する防塵部材の中心部において、円形形状の防塵部材における振動振幅にほぼ匹敵する大きな振動振幅が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の画像機器の第1実施形態としてのデジタルカメラの主に電気的なシステム構成例を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、デジタルカメラの塵埃除去機構を含む撮像素子ユニットの縦断側面図である。
【図3】図3は、塵埃除去機構をレンズ側から見た正面図である。
【図4】図4は、塵埃除去機構を構成する主要部の分解斜視図である。
【図5】図5(A)は、防塵フィルタに発生する振動の様子を説明するための防塵フィルタの正面図であり、図5(B)は、図5(A)のBB線断面図であり、図5(C)は、図5(A)のCC線断面図である。
【図6】図6は、防塵フィルタと圧電体の長辺寸法、及び、短辺寸法、厚さ寸法を説明するための図である。
【図7】図7は、防塵フィルタの振動発生の概念を説明するための図である。
【図8】図8は、防塵フィルタに発生する異なる振動の様子を説明するための図である。
【図9】図9は、図5の防塵フィルタにおける縦横比と中心振動領域の振動速度比の関係を示す図である。
【図10】図10は、図5の防塵フィルタに配置される圧電体の長さ比と防塵フィルタにおける中心振動領域の振動速度比の関係を示す図である。
【図11】図11は、図5の防塵フィルタに配置される圧電体の幅比と防塵フィルタにおける中心振動領域の振動速度比の関係を示す図である。
【図12】図12は、図5の防塵フィルタに配置される圧電体の板厚比と防塵フィルタにおける中心振動領域の振動速度比の関係を示す図である。
【図13】図13は、防塵フィルタの異なる形態を示すための図である。
【図14】図14は、防塵フィルタの更に異なる形態を示すための図である。
【図15】図15は、防塵フィルタに発生する定在波を説明するための防塵フィルタの概念図である。
【図16】図16は、圧電素子の周波数を共振周波数付近で変化した場合の振動状態を説明するための図である。
【図17】図17は、防塵フィルタ制御回路の構成を概略的に示す回路図である。
【図18】図18は、防塵フィルタ制御回路における各構成部材から出力される各信号を説明するためのタイムチャートを示す図である。
【図19】図19は、第1実施形態におけるデジタルカメラのBucomが行なうカメラシーケンス(メインルーチン)の手順を例示するフローチャートを示す図である。
【図20】図20(A)は、図19中のサブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図であり、図20(B)乃至(D)はそれぞれ、図20(A)のサブルーチン「無音加振動作」の各タイミングにて並行して実行される「表示動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図である。
【図21】図21は、無音加振動作において、加振部材へ連続的に供給される共振周波数の波形を表わす図である。
【図22】図22は、本発明の画像機器の第2実施形態としてのデジタルカメラにおけるサブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図である。
【図23】図23は、本発明の画像機器の第3実施形態としてのデジタルカメラの主に電気的なシステム構成例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下に具体的に例示する本発明の画像機器は、光電変換によって画像信号を得る撮像素子ユニットの塵埃除去機構を有するものであり、ここでは一例として電子カメラ(以下「カメラ」と略称する)の塵埃除去機能に係わる改良技術として説明する。特に、本第1実施形態では、レンズ交換可能な一眼式電子カメラ(デジタルカメラ)に関して、図1乃至図3を参照して説明する。尚、図1は、本発明の画像機器の第1実施形態としてのデジタルカメラの主に電気的なシステム構成例を概略的に示すブロック図である。また、図2は、該デジタルカメラの塵埃除去機構を含む撮像素子ユニットの縦断側面図(図3でのAA線断面図)であり、図3は、塵埃除去機構をレンズ側から見た正面図である。
【0019】
まず、図1を参照して本実施形態におけるデジタルカメラ10のシステム構成例について説明する。
【0020】
このデジタルカメラ10は、カメラ本体としてのボディユニット100と、アクセサリ装置の一つである交換レンズとしてのレンズユニット200とによりシステム構成されている。
【0021】
レンズユニット200は、ボディユニット100の前面に設けられた図示しないレンズマウントを介して着脱自在である。レンズユニット200の制御は、自身が有するレンズ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Lucom”と称する)201が行う。ボディユニット100の制御は、ボディ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Bucom”と称する)101が行う。これらLucom201とBucom101とは、ボディユニット100にレンズユニット200を装着した状態において通信コネクタ102を介して互いに通信可能に電気的に接続される。そして、カメラシステムとして、Lucom201がBucom101に従属的に協働しながら稼動するように構成されている。
【0022】
レンズユニット200は、撮影レンズ202と絞り203を備える。撮影レンズ202は、レンズ駆動機構204内に設けられた図示しないステッピングモータによって駆動される。絞り203は、絞り駆動機構205内に設けられた図示しないステッピングモータによって駆動される。Lucom201は、Bucom101の指令に基づいてこれら各モータを制御する。
【0023】
ボディユニット100内には、以下のような構成部材が図示の如く配設されている。例えば、撮影光軸上にフォーカルプレーン式のシャッタ108が設けられている。
【0024】
また、シャッタ108の先幕と後幕を駆動するばねをチャージするシャッタチャージ機構112と、これら先幕と後幕の動きを制御するシャッタ制御回路113が設けられている。
【0025】
撮影光軸上には、上述の光学系を通過した被写体像を光電変換するための撮像ユニット116が設けられている。撮像ユニット116は、画像形成素子としての撮像素子であるCCD117と、その前面に配設された光学ローパスフィルタ(LPF)118と、防塵部材である防塵フィルタ119とを、ユニットとして一体化してなるものである。ここで、本実施形態では、少なくとも透明部が空気と異なる屈折率を有する透明なガラス板を、上記防塵フィルタ119として使用している。しかしながら、上記ガラス板(光学素子)に限定されるものではなく、光路上に在り光の透過性をもった部材(光学素子)であれば良い。例えば、透明なガラス板に換えて、光学ローパスフィルタ(LPF)、赤外カットフィルタ、偏向フィルタ、ハーフミラーなどであっても良い。この場合、振動に係わる周波数や駆動時間、加振部材(後述する)の設置位置などは、その部材に対応した値に設定する。
【0026】
以下、防塵部材である防塵フィルタ119については、上述したように光学ローパスフィルタ(LPF)等、様々な材質を用いることができるが、本実施形態では、ガラス板を採用しているとして説明する。
【0027】
上記防塵フィルタ119の周縁部の片側には、圧電素子120が取り付けられている。圧電素子120は、2つの電極を有しており、圧電素子120を駆動手段である防塵フィルタ制御回路121によって、防塵フィルタ119の寸法や材質によって定まる所定の周波数で振動させることで、防塵フィルタ119に所定の振動を発生させ、フィルタ表面に付着した塵埃を除去し得るように構成されている。また、撮像ユニット116に対しては、手ブレ補正用の防振ユニットが付加されている。
【0028】
また、本実施形態におけるデジタルカメラ10は、CCD117に接続したCCDインターフェース回路122と、液晶モニタ123と、記憶領域として機能するSDRAM124やFlash ROM125などを利用して画像処理する画像処理コントローラ126とを備え、電子撮像機能とともに電子記録表示機能を提供できるように構成されている。また、電子撮像機能には、CCD117で撮影された画像を動画として液晶モニタ123に同時に表示してファインダとして用いるいわゆるスルー画表示機能、動画を記録する動画記録機能を持っている。ファインダ機能については光学式の一眼レフファインダ等を設けても良い。ここで、記録メディア127は、各種のメモリカードや外付けのHDD等の外部記録媒体であり、通信コネクタを介してボディユニット100と通信可能且つ交換可能に装着される。そして、この記録メディア127に撮影により得られた画像データが記録される。
【0029】
その他の記憶領域としては、カメラ制御に必要な所定の制御パラメータを記憶する、例えばEEPROMからなる不揮発性メモリ128がBucom101からアクセス可能に設けられている。
【0030】
Bucom101には、当該デジタルカメラ10の動作状態を表示出力によってユーザへ告知するための動作表示用LCD129及び動作表示用LED130と、カメラ操作SW131と、ストロボ132を駆動するストロボ制御回路133と、が接続されている。ここで、動作表示用LCD129あるいは動作表示用LED130には、防塵フィルタ制御回路121が動作している期間、防塵フィルタ119の振動動作を表示する表示部が設けられている。カメラ操作SW131は、例えばレリーズSW、モード変更SW及びパワーSWなど、当該デジタルカメラ10を操作するために必要な操作釦を含むスイッチ群である。さらに、該ボディユニット100内には、電源としての電池134と、該電池134の電圧を、当該デジタルカメラ10を構成する各回路ユニットが必要とする電圧に変換して供給する電源回路135が設けられ、また、外部電源から不図示のジャックを介して電流が供給されたときの電圧変化を検知する電圧検出回路(図示せず)も設けられている。
【0031】
上述のように構成されたデジタルカメラ10の各部は、概略的には以下のように稼動する。まず、画像処理コントローラ126は、Bucom101の指令に従ってCCDインターフェース回路122を制御してCCD117から画像データを取り込む。この画像データは画像処理コントローラ126でビデオ信号に変換され、液晶モニタ123で出力表示される。ユーザは、この液晶モニタ123の表示画像から、ファインダ画像あるいは撮影画像を確認できる。
【0032】
SDRAM124は、画像データの一時的保管用メモリであり、画像データが変換される際のワークエリアなどに使用される。また、画像データは、JPEGデータに変換された後、記録メディア127に保管される。ここで、画像データが動画である場合はMPEGデータ等に変換される。
【0033】
撮影レンズ202の焦点合わせは、撮影レンズ202の位置を順次変更しながら撮像し、撮像画像の最もコントラストの高い位置をBucom101で演算し、通信コネクタ102を通してLucom201に伝達し、Lucom201が撮影レンズ202を位置制御することにより行われる。測光も撮像画像から検出された光量に基づき周知の測光処理が行われる。
【0034】
次に、図2及び図3を参照してCCD117を含む撮像ユニット116について説明する。
【0035】
撮像ユニット116は、撮影光学系を透過し自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子としてのCCD117と、CCD117の光電変換面側に配設され、撮影光学系を透過して照射される被写体光束から高周波成分を取り除く光学LPF118と、この光学LPF118の前面側において所定間隔をあけて対向配置された防塵部材である防塵フィルタ119と、この防塵フィルタ119の周縁部に配設されて防塵フィルタ119に対して所定の振動を与えるための加振部材である圧電素子120と、を備える。
【0036】
ここで、CCD117のCCDチップ136は、固定板137上に配設されたフレキシブル基板138上に直接実装され、このフレキシブル基板138の両端から出た接続部139a,139bが、主回路基板140に設けられたコネクタ141a,141bを介して主回路基板140側と接続されている。また、CCD117が有する保護ガラス142は、スペーサ143を介してフレキシブル基板138上に固着されている。
【0037】
また、CCD117と光学LPF118との間には、弾性部材等からなるフィルタ受け部材144が配設されている。このフィルタ受け部材144は、CCD117の前面側周縁部で光電変換面の有効範囲を避ける位置に配設され、且つ、光学LPF118の背面側周縁部の近傍に当接することで、CCD117と光学LPF118との間を略気密性が保持されるように構成されている。そして、CCD117と光学LPF118とを気密的に覆うホルダ145が配設されている。このホルダ145は、撮影光軸周りの略中央部分に矩形状の開口146を有し、この開口146の防塵フィルタ119側の内周縁部には断面が略L字形状の段部147が形成され、開口146に対してその後方側から光学LPF118及びCCD117が配設されている。ここで、光学LPF118の前面側周縁部を段部147に対して略気密的に接触させるように配置することで、光学LPF118は段部147によって撮影光軸方向における位置規制がなされ、ホルダ145の内部から前面側に対する抜け止めがなされる。なお、CCD117と光学LPF118との気密状態は、塵埃の侵入によって撮影画像に塵埃が写り込み、当該画像に塵埃の影響の出ることを防止可能なレベルであれば良く、必ずしも気体の侵入を完全に防止するレベルでなくても良い。
【0038】
一方、ホルダ145の前面側の周縁部には、防塵フィルタ119を光学LPF118の前面に所定間隔あけて保持するために段部147周りで段部147よりも前面側に突出させた防塵フィルタ受け部148が全周に亘って形成されている。この防塵フィルタ受け部148の開口部分が、結像光線通過エリア149となる。全体として多角形の板状(ここでは四角形)に形成された防塵フィルタ119は、ねじ150で防塵フィルタ受け部148に固定され、板ばね等の弾性体によって形成された押圧部材151による押圧状態で防塵フィルタ受け部148に支持される。ここで、押圧部材151と防塵フィルタ119の間にはゴムや樹脂等の振動減衰性のある受け部材152が介在され、一方、防塵フィルタ119の背面側には、防塵フィルタ受け部148との間にゴム等の振動減衰性のある材料で形成されたシール156が介在され、防塵フィルタ119を押圧支持するように構成されている。また、光軸と垂直な面内における防塵フィルタ119のY方向の位置決めは、押圧部材151のZ方向曲げ部に支持部材154を介して受けることにより行い、一方、同様に光軸と垂直な面内におけるX方向は、図3に示すように、ホルダ145に設けた支持部155に支持部材154を介して受けることにより位置決めしている。支持部材154もゴムや樹脂等の振動減性のある材料で形成され、防塵フィルタ119の振動を阻害しないようにしている。受け部材152の配置位置は、後に述べる防塵フィルタ119に発生する振動の節位置にすると、防塵フィルタ119の振動をほとんど阻害することが無く、振動振幅が大きく、高効率な塵埃除去機構を構成できる。また、防塵フィルタ119の周辺部と防塵フィルタ受け部148との間には、環状のリップ部を持つシール156が設置されて、防塵フィルタ119を支持するとともに、開口146を含む空間を気密状態としている。環状のリップ部が防塵フィルタ119を支持する位置は、後に述べる防塵フィルタ119に発生する振動の節部にすると、防塵フィルタ119の振動をほとんど阻害することが無く、振動振幅が大きく、高効率な塵埃除去機構を構成できることは勿論である。撮像ユニット116は、このようにして、画像形成素子としてのCCD117と防塵フィルタ119とが対向して形成される領域を当該CCD117及び当該防塵フィルタ119の周縁部で封止するように構成された封止構造(CCD117を搭載する所望の大きさに形成されたホルダ145と受け部材152,153)によって、気密構造に構成されている。なお、防塵フィルタ119と防塵フィルタ受け部148との気密状態は、塵埃の侵入によって撮影画像に塵埃が写り込み、当該画像に塵埃の影響の出ることを防止可能なレベルであれば良く、必ずしも気体の侵入を完全に防止するレベルでなくても良い。
【0039】
また、受け部材153は、受け部材152に対応した配置で、防塵フィルタ受け部148に設けられ、防塵フィルタ119に外力が加わって変位した場合に防塵フィルタ119を受けるように構成されている。
【0040】
さらに、加振部材である圧電素子120には、フレキシブルプリント基板であるフレキ157が端部に電気接続され、防塵フィルタ制御回路121からの後に述べる所定の電気信号を圧電素子120に入力し、圧電素子120に所定の振動を発生させている。フレキ157は、樹脂と銅箔等で作製されて柔軟性があることから圧電素子120の振動を減衰させることが少ない。また、振動振幅の小さいところ(後に述べる振動の節位置)に設けることで、より振動の減衰を抑えることができる。一方、以下に述べるような手ブレ補正機構を持つ場合、圧電素子120はボディユニット100に対して相対的に移動するので、防塵フィルタ制御回路121がボディユニット100と一体の固定部材にある場合には手ブレ補正機構の動作に従って、フレキ157は変形し、変位する。この場合、フレキ157は柔軟性があり薄いため、有効であり、本実施形態の場合にはフレキ157は1ヶ所からの引き出しで簡単な構成であるので、手ブレ補正機構をもつカメラには最適である。
【0041】
防塵フィルタ119でその表面から離脱した塵埃は後に述べるように、その振動の慣性力と、重力の作用により、ボディユニット100の下側に落下する。そこで、本実施形態では、防塵フィルタ119の下側直近に設けた台158に、粘着材、粘着テープ等で形成された保持材159を配設し、落下した塵埃を確実に保持し、再び防塵フィルタ119の表面に戻らないようにしてある。
【0042】
次に、簡単に手ブレ補正機能について説明する。この手ブレ補正機構は、図1に示すように、X軸ジャイロ160、Y軸ジャイロ161、防振制御回路162、X軸アクチュエータ163、Y軸アクチュエータ164、X枠165、Y枠166(ホルダ145)、フレーム167、位置検出センサ168及びアクチュエータ駆動回路169から構成され、カメラのX軸回りの手ブレの角速度を検出するX軸ジャイロ160とカメラのY軸周りの手ブレの角速度を検出するY軸ジャイロ161とからの角速度信号から、防振制御回路162により手ブレ補償量を演算し、撮影光軸の方向をZ軸方向とした場合、撮影光軸に直交するXY平面内で直交する第1の方向であるX軸方向及び第2の方向であるY軸方向に、撮像素子であるCCD117を、ブレを補償するように変位移動させるものである。即ち、アクチュエータ駆動回路169から所定の駆動信号を入力するとX軸方向にCCD117を駆動するX軸アクチュエータ163と、同じく、所定の駆動信号を入力するとY軸方向にCCD117を駆動するY軸アクチュエータ164を駆動源として用い、X枠165と撮像ユニット116中のCCD117を搭載したY枠166(ホルダ145)とをフレーム167に対して移動する移動対象物として構成される。ここで、X軸アクチュエータ163及びY軸アクチュエータ164は、電磁回転モータとネジ送り機構等を組み合わせたものや、ボイスコイルモータを用いた直進電磁モータや、直進圧電モータ等が用いられている。尚、位置検出センサ168は、X枠165及びY枠166の位置を検出するものであり、防振制御回路162は該位置検出センサ168での検出結果に基づいて、変位移動可能な範囲を超えてX軸アクチュエータ163及びY軸アクチュエータ164を駆動しないように、アクチュエータ駆動回路169を制御する。
【0043】
ここで、第1実施形態の塵埃除去機構について図4乃至図15を参照してさらに詳しく説明する。図4は、塵埃除去機構を構成する主要部(振動子)の分解斜視図であり、図5は、防塵フィルタ119に発生する振動の様子を説明するための図で、特に図5(A)は防塵フィルタ119の正面図、図5(B)は図5(A)のBB線断面図、図5(C)は図5(A)のCC線断面図である。図6は、防塵フィルタ119、圧電素子120の長辺、短辺、厚さ寸法を示す図である。図7は、防塵フィルタの振動発生の概念を説明するための図である。図8は、防塵フィルタ119に発生する異なる振動の様子を説明するための図である。また、図9は、図5で示される防塵フィルタ119における振動速度比(中心振動領域での面に垂直な振動の最大振動速度Vmaxを基準に振動速度Vの比をとった)と縦横比(長辺の長さを基準に短辺の長さの比をとった)のグラフを示す図である。図10は、図5で示される防塵フィルタ119における振動速度比と圧電体長さ比(圧電素子の配置された防塵フィルタ119の辺の長さを基準に圧電素子のその辺に平行な方向の長さの比をとった)のグラフを示す図である。また、図11は、図5で示される防塵フィルタ119における振動速度比と圧電体幅比(圧電素子の配置された防塵フィルタ119の辺と直交する辺の長さを基準に圧電素子のその辺に並行な辺の長さの比をとった)のグラフを示す図である。さらに、図12は、図5で示される防塵フィルタ119における振動速度比と圧電体板厚比(防塵フィルタ119の板厚を基準に圧電素子120の板厚の比をとった)のグラフを示す図である。図13及び図14はそれぞれ、防塵フィルタの異なる形態を示す図である。図15は、防塵フィルタ119に発生する定在波を説明するための防塵フィルタ119の概念図(図5(B)に相当)である。
【0044】
防塵フィルタ119は、ある対称軸に対して対称な辺を少なくとも一つ持つ、全体として多角形の板状(本実施形態は四角形)のガラス板(光学素子)からなり、少なくとも、最大の振動振幅が得られる位置から放射方向に所定の広がりを持つ領域が、透明部を構成している。尚、防塵フィルタ119は、全体として円形を成し、その円の一部を直線状にカットして一辺を持つD形状であっても良いし、四角形の両辺を円弧状に形成し、上下二辺を持つ形状としたものでも構わない。そして、上述した取り付け手段により、この防塵フィルタ119の透明部が光学LPF118の前面側に所定の間隔をもって対向配置されている。また、防塵フィルタ119の一方の面(本実施形態では背面側)の上側周縁部には、当該防塵フィルタ119に対して振動を与えるための加振部材である圧電素子120が、例えば接着剤による貼着等の手段により配設されている。防塵フィルタ119に圧電素子120を配設することで振動子170が形成され、該振動子170は、圧電素子120に所定の周波電圧を印加すると共振振動し、図5に示す屈曲振動を大きな振幅で発生する。
【0045】
図4に示すように、圧電素子120には、信号電極171と、該信号電極171に対向した裏面に設けられ、側面を通して上記信号電極171のある側の面に引き回された信号電極172とが形成されている。そして、信号電極171と信号電極172に、上記導電性パターンを持つフレキ157が電気的に接続されている。夫々の電極171,172には、フレキ157を介して接続された防塵フィルタ制御回路121によって所定周期を有する駆動電圧を印加することで、防塵フィルタ119に図5に示す2次元の定在波屈曲振動を発生させることができる。防塵フィルタ119の寸法は、長辺の長さがLA、それに直交する短辺の長さがLBである(図6の寸法表記に対応)。ここで、図5に示す防塵フィルタ119は、矩形であるので、後述する本願発明の「仮想矩形」と一致する(長辺の長さLAは仮想矩形の辺の長さLFに等しい)。図5に示す屈曲振動は定在波振動を示し、図5(A)で振動の節エリア(振動振幅の小さいエリア)173を示す黒い線状のエリアは、黒が濃いほど振動振幅が小さくなっている。尚、図5(A)中に示すメッシュは、有限要素法での分割メッシュである。
【0046】
振動速度が大きい場合、図5(A)に示すように節エリア173の間隔が小さいと、節エリア173には大きな面内振動が発生し、節エリア173にある塵埃には面内振動方向に大きな慣性力が発生する(後述する図15の質点Y2の動きを参照。節を中心にY2とY2’の間を円弧振動する)。塵埃の付着面に沿った力が作用するように防塵フィルタ119面を重力に対して平行になる方向に傾けると、慣性力と重力が作用して節エリア173に付着した塵埃も除去することができる。
【0047】
また、図5(A)での白色のエリアは、振動振幅が大きなエリアを示し、この白色エリアに付着した塵埃は、振動により与えられる慣性力により除去される。振動の節エリア173に付着した塵埃は、節エリア173に振幅をもつ別の振動モードで加振することによっても除去することができる。
【0048】
図5に示す屈曲の振動モードは、X方向の屈曲振動と、Y方向の屈曲振動との合成で形成される。この合成の基本状態の様子を示したのが、図7である。2つの圧電素子120、120’を防塵フィルタ119の中心軸Xに対称に配置した振動子170をスポンジ等の振動減衰の殆どない部材の上に置いて自由振動させると、図7に示すような格子状の節エリア173が発生する振動モードが通常簡単に得られる(上記特許文献2参照)。なお、図7における正面図では、節エリア173を破線で示している(線幅方向に振動の最も小さい位置を線として表示)。その場合に、X方向に波長λxの定在波屈曲振動が発生し、且つY方向に波長λyの定在波屈曲振動が発生して、両方の定在波が合成されている状態を示している。その場合に、X方向に波長λxの定在波屈曲振動が発生し、且つY方向に波長λyの定在波屈曲振動が発生して、両方の定在波が合成されている状態を示している。O点をx=0,y=0の原点として取ると、任意の点P(x,y)のZ方向の振動Z(x,y)は、Aを振幅(ここでは一定値としたが、実際には振動モードや圧電素子に入力される電力により変わる)、m、nは振動モードに対応した固有振動の次数で0を含む正の整数、γを任意の位相角とすると、次の(1)式で表される。
【0049】
Z(x,y)=A・Wmn(x,y)・cos(γ)
+A・Wnm(x,y)・sin(γ) …(1)
但し、
Wmn(x,y)=sin(nπ・x+π/2)・sin(mπ・y+π/2)
Wnm(x,y)=sin(mπ・x+π/2)・sin(nπ・y+π/2)
である。
【0050】
ここで、例えば、位相角γ=0とすると、上記(1)式は、
Z(x,y)=A・Wmn(x,y)
=A・sin(n・π・x/λx+π/2)
・sin(m・π・y/λy+π/2)
となり、ここでλx=λy=λ=1とする(屈曲の波長を単位長さとしてx,yを表記)と、
Z(x,y)=A・Wmn(x,y)
=A・sin(n・π・x+π/2)
・sin(m・π・y+π/2)
となる。図7は、m=nの場合の振動モードを示し(X方向、Y方向の振動の次数と波長が同じなので防塵フィルタ119の形状は正方形になる)、X方向、Y方向に等間隔で振動の山、節、谷が現れ、碁盤目状に振動の節エリア173が現れている(従来の振動モード)。また、m=0、n=1の振動モードでは、Y方向に平行な辺(辺LB)に対して、平行な山、節、谷が出来る振動になる。以上の碁盤目状あるいは辺に平行な振動モードではX方向、Y方向の振動が独立に現れるだけで、合成されて振動振幅が大きくなることがない。
【0051】
ここで、防塵フィルタ119の形状を僅かに長方形側にすると、本実施形態のように圧電素子を1つの辺に沿って配置しても、振動振幅が非常に大きくなる振動モードとなる(最大振幅は従来の円形の防塵フィルタと同じレベル)。このとき、図5の振動モードとなり、防塵フィルタ119が矩形であるにも拘わらず、防塵フィルタ119の重心119aに対して、振動振幅の山の稜線174が閉曲線を構成し、X方向の辺からの反射波と、Y方向の辺からの反射波を効率良く、合成して定在波が作られる。ここで、防塵フィルタ119は、その重心119aを通るある仮想軸に対して対称な辺を少なくとも一つ持ち、圧電素子120の重心120aがその仮想軸にあるように、圧電素子120をその1つの辺に沿って配置している。また、振動振幅の山の稜線174が構成する閉曲線の中心は、最も大きな振動速度、振動振幅を持つ中心振動領域175となり、その重心175aと、該中心振動領域175の重心175aを含む、上記防塵フィルタ119に形成された面に対して垂直な振動振幅を殆ど持たない節エリア173に囲まれた領域の重心173aとは、ほぼ一致して、同様に上記仮想軸上にある。但し、圧電素子120を上記1つの辺に沿ってのみ配置するため、この中心振動領域175の重心175aは、防塵フィルタ119の重心119aから、上記1つの辺に対向して配置されている他方の辺側へずれる。
【0052】
また、図8は、図5の防塵フィルタ119の加振用周波数を変えることにより発生するモードで、防塵フィルタ119の重心119aを通るある仮想軸に対して対称な1つの辺から当該1つの辺に対向して配置されている他方の辺側へ向かって、略同心円状に連続的に位置する振動振幅の山の稜線174が形成される振動モードである。ここで、当該連続する略同心円状の稜線174の中心174aは、当該防塵フィルタ119の上記1つの辺を挟んで他方の辺とは反対側で、上記仮想軸上にある。また、圧電素子120の重心120aがその仮想軸にあるように、圧電素子120を上記1つの辺に沿って配置している。そのため、最も大きな振動速度、振動振幅を持つ中心振動領域175の重心175aは、防塵フィルタ119の重心119aから、上記1つの辺に対向して配置されている他方の辺側へずれる。
【0053】
なお、図5に示す振動子170の防塵フィルタ119は、30.5mm(X方向:LA、LF)×31.5mm(Y方向:LB)×0.65mm(厚さ)のガラス板(光学素子)である。なお、上記防塵フィルタ119は、X方向の辺LAを含み、当該LA(30.5mm)を短辺とし、LB(31.5mm)を長辺とする矩形であるので、防塵フィルタ119の部材面の面積と同一の面積を有する、本願発明の「仮想矩形」とは一致する。圧電素子120は、21mm(X方向)×3mm(Y方向)×0.8mm(厚さ)のチタン酸ジルコン酸鉛のセラミックで作られ、防塵フィルタ119の上下の辺(X方向)に沿って、当該辺の端部側にエポキシ系の接着剤で接着固定されている。より詳細には、X方向において上記圧電素子120は、Y方向に沿った防塵フィルタ119の中心線(ある仮想軸)に対して左右対称となるように配置されている。ここで、防塵フィルタ119の縦横比は0.968、圧電体長さ比は0.689、圧電体幅比は0.095、圧電体板厚比は0.813となっている。このとき、図5で示される振動モードの共振周波数は78kHz付近であり、防塵フィルタ119中央位置に、四角形の防塵フィルタ119が内接する大きさの円形に防塵フィルタを構成した場合にほぼ匹敵する最も大きな振動速度、振動振幅を持つ中心振動領域175が得られる。その中心振動領域175の重心175aでの面に垂直な振動速度Vを基準に最大速度Vmaxとの比をとることで、図9に示すような振動速度比が得られ、その最大値は1.000となる。なお、図9において、圧電素子120を防塵フィルタ119の長辺に平行に配置した場合が長辺側、短辺に平行に配置した場合が短辺側のグラフである。図5では、防塵フィルタ119の短辺に圧電素子120を配置しているが、長辺に配置した場合の最大振動速度比100%に対して約95%の最大振動速度比を得ている。図5の様に圧電体を配置すると、当然、圧電素子120の長辺長さを短くすることができ、また、防塵フィルタ119の短辺側を短くできるため、カメラの横幅を小さくすることが可能になる。
【0054】
図8の振動モードは、図5の振動子170を93kHzで振動させると発生し、この場合も防塵フィルタ119の中央部の最大振動速度比は、圧電体長さ比が0.7付近で、最大値をとる。また、圧電体幅比が0.1付近で、防塵フィルタ119の中心振動領域175の最大振動速度比は最大値をとる。さらに、圧電体板厚比0.8付近で、防塵フィルタ119の中心振動領域175の最大振動速度比は最大値をとる。また、図5の振動モードの最大振動速度に対して、50%から70%程度の最大振動速度になる。
【0055】
図13は、振動子170の変形例を示す図であり、防塵フィルタ119として、円盤状の一部が切り欠かれて一つの辺を形成している。即ち、Y方向の対称軸に対して対称な一辺を持つD形状の防塵フィルタ119を使用する。圧電素子120は、この一辺に平行で、且つ、辺の中点(Y方向の対称軸(ある仮想軸))に対して対称に、防塵フィルタ119の面上に配置されている。防塵フィルタ119の形状をこのように形成すると、防塵フィルタ119の中心(防塵フィルタ119の重心119a)に対する形状の対称性が高くなり、より本実施形態の振動状態が作り易くなる。加えて、形状が、円形よりも小型になることは勿論である。さらに、圧電素子120を辺に平行に配置することで、切り欠きの発生で生ずる振動に対する非対称性は、剛性を上げることでより対称なものとすることができ、求める振動状態をより形成し易くなる。なおここで、図13での短辺、長辺は、図に示すごとく、1辺は防塵フィルタ119の上記1辺に沿い、それに対向する辺は上記1辺と平行で、防塵フィルタ119と面積が等しくなる仮想矩形176の1辺とし、その辺に直交する辺は、同じく防塵フィルタ119と面積が等しくなる仮想矩形176の辺とする。
【0056】
図14は、振動子170の別の変形例を示す図であり、防塵フィルタ119として、円盤に対称に切り欠きを入れて二辺を平行に形成している。即ち、Y方向の対称軸に対して対称な辺を2つ持つ防塵フィルタ119を使用する。この場合、圧電素子120は、辺近傍ではなく、円周を形成する部分に円弧上形態の素子を配置している。このような形態にすると、圧電素子120が効率的に配置されているので、より小型の振動子170を形成できる。なおここで、図14での防塵フィルタ119の長辺、短辺は、図に示すごとく、1辺及びそれに対向する辺は防塵フィルタ119の2つ辺に沿い、防塵フィルタ119と面積が等しくなる仮想矩形176の長辺、短辺とする。また、圧電素子120の仮想矩形120bは、長辺の長さLPFFが実体形状の長さLPと同じであり、短辺の幅WFは、仮想矩形120bの面積が圧電素子120の面積と等しくなるような幅とする。
【0057】
次に、図15を用いて塵埃の除去について詳しく説明する。図15は、図5のBB線断面図と同じ断面を示してある。
【0058】
図15に矢印177で示す方向に分極された圧電素子120に所定の周波電圧が印加された場合は、振動子170がある時点t0で実線に示した状態となる。振動子170表面の任意の位置yにある質点Yの任意の時刻tでのZ方向の振動zは、振動の角速度ω、Z方向の振幅A、Y=2πy/λ(λ:屈曲振動の波長)として、下記の(2)式の通りに表される。
【0059】
z=Asin(Y)・cos(ωt) …(2)
この式は、図5での定在波振動を表す。即ち、y=s・λ/2の時(ここで、sは整数)にY=sπとなり、sin(Y)は零になる。従って、時間に関係なくZ方向の振動振幅が零になる節178をλ/2ごとに持つことになり、これは定在波振動である。図15において破線で示した状態は、時間t0の状態に対して振動が逆相となるt=kπ/ωでの状態を示す(ここで、kは奇数)。
【0060】
次に、防塵フィルタ119上の点Y1の振動は、屈曲定在波の振動の腹179の位置になるので、振動振幅はAとなり、Z方向の点Y1の位置z(Y1)は、
z(Y1)=Acos(ωt) …(3)
となる。
【0061】
Y1の振動速度Vz(Y1)は、振動の周波数をfとすると、ω=2πfであるので、上記(3)式を時間で微分して、
Vz(Y1)=d(z(Y1))/dt
=−2πf・Asin(ωt) …(4)
となる。Y1の振動加速度αz(Y1)は、上記(3)式をさらに時間で微分して、
αz(Y1)=d(Vz(Y1))/dt
=−4π・Acos(ωt) …(5)
となり、Y1に付着している塵埃180は、上記(5)式の加速度を受けることとなる。
この時、塵埃180の受ける慣性力Fkは、塵埃180の質量をMとして、
Fk=αz(Y1)・M
=−4π・Acos(ωt)・M …(6)
となる。
【0062】
上記(6)式から、慣性力Fkは、周波数fを上げると、fの2乗に比例して大きくなるのでも効果的なことが判るが、その時の振動振幅Aが小さいと、いくら周波数を上げたからと言って、慣性力を上げることは出来ない。一般的には、加振の振動エネルギーを発生させる圧電素子120の大きさを一定とすると、所定の振動エネルギーしか発生することができない。従って、同じ振動モードで周波数を上げると振動振幅Aは周波数fの2乗に逆比例し、共振周波数を上げて高次の共振モードにすると、振動振幅は低下し、振動速度が上がらず、振動加速度も上がらない(むしろ、周波数が高くなると、理想的に共振させることが難しく、振動エネルギー損失が大きくなり、振動加速度は下がる)。即ち、単に共振モードで振動を発生させることでは大きな振幅を持つモードにはならず、塵埃除去の効果が著しく悪化してしまう。
【0063】
防塵フィルタ119が矩形であるにも拘わらず、図5に示す本実施形態の振動モードは、振動振幅の山の稜線174が光軸中心に対して閉曲線を構成し、また、図8に示す本実施形態の振動モードは、振動振幅の山の稜線174が辺の中心を取り囲む曲線を構成し、X方向の辺からの反射波と、Y方向の辺からの反射波を効率良く合成して定在波を作っている。
【0064】
この合成定在波を効率良く作るためには、防塵フィルタ119の形状寸法と圧電素子120の形状寸法が大きく寄与しており、図9に示すように、防塵フィルタ119の長辺の長さに対する短辺の長さの比である縦横比(短辺/長辺)を1にする即ち正方形にするよりも、縦横比を1より小さく設定した方が、圧電素子120が1つしか配置されていないにも拘わらず、防塵フィルタ119の中央位置(中心振動領域175の重心175aは、防塵フィルタ119の重心119aからは、ずれる)のZ方向の振動速度が最も大きな領域(振動速度比が0.7以上)になる。図9では、グラフの縦軸はこの中心振動領域175での最大振動速度Vmaxを基準に振動速度Vの比(V/Vmax)が示されている。勿論、縦横比(短辺/長辺)の最大値は1であり、縦横比0.9以下で急速に振動速度比が小さくなっている。従って、防塵フィルタ119の縦横比(短辺/長辺)は、0.9以上、1未満とすることが好ましい。また、図9の「短辺側」のグラフは、何れも防塵フィルタ119の長辺側に圧電素子120を配置した「長辺側」の曲線よりも低い振動速度比となっている。このことより、圧電素子120の配置位置は、防塵フィルタ119の長辺側にした方が、短辺側に配置するよりも、振動速度比が高くなり、高い塵埃除去性能が得られる。
【0065】
一方、防塵フィルタ119の圧電素子120を設置する辺の長さLFを基準にした、圧電素子120の面積が同一の仮想矩形120bのその辺に平行な方向の長さLPFFの比(圧電体長さ比:LPFF/LF)に関しても、X方向の辺からの反射波と、Y方向の辺からの反射波を効率良く合成して定在波を作るための最適値を持つ。また、圧電素子120が発生可能な振動エネルギー(振動エネルギーは振動振幅の2乗に比例)は、圧電素子120の体積に比例する。従って、圧電素子120の仮想矩形120bの長さLPFFを小さくすると、(直交する辺の長さWFが同じであれば)圧電素子120の体積(面積)は小さくなり、発生する振動エネルギーが小さくなってしまう。従って、圧電素子120の長さLPFFは大きな方が良いこととなるが、図10に示すように、1にする(即ち防塵フィルタ119の辺と同寸法(LA,LF)とする)よりも、1より小さく設定した方が、防塵フィルタ119の長辺及び短辺方向の反射波を含む振動の重ね合わせが、効果的に行われるので、防塵フィルタ119の中心振動領域175のZ方向の振動速度が最も大きな領域になることが実験的に判明した。図10では、グラフの縦軸はこの領域での最大振動速度Vmaxを基準に振動速度Vの比(V/Vmax)が示されている。勿論、圧電体長さ比の最大値は1であり、圧電体長さ比0.7付近では振動速度比が1である。従って、圧電体長さ比は、防塵フィルタ119の中心振動領域175のZ方向の振動速度を大きくするために、0.7とすることが好ましい。ここでは振動速度比0.9以上の圧電体長さ比は0.688以上、0.710以下となり、圧電体長さ比はこの数値範囲であれば、大きな振動速度を得られるは勿論である。
【0066】
また、圧電素子120の面積が同一の仮想矩形120bの短辺の長さ(幅)WFに関するその短辺と並行な防塵フィルタ119の仮想矩形176の辺の長さ(LFw)を基準とした比である圧電体幅比(WF/LFw)に関しても、X方向の辺からの反射波と、Y方向の辺からの反射波を効率良く合成して定在波を作るための最適値を持つ。また、圧電素子120の仮想矩形120bの短辺の長さWFを大きくすると、(直交する辺の長さLPFFが同じであれば)圧電素子120の体積(面積)は大きくなり、圧電素子120を駆動する回路を小形化できるが、圧電素子120を貼り付ける領域が増えることから防塵フィルタ119が大型化してしまう。従って、圧電素子120は最適な短辺の長さWFをもつ。この圧電体幅比は、図11に示すように、0.095以上、0.105以下とすると、振動速度比0.9以上が得られることが実験的に判明した。これも、防塵フィルタ119の長辺及び短辺方向の反射波を含む振動の重ね合わせが、効果的に行われることによるものである。
【0067】
さらに、圧電素子120の板厚(tp)を基準とした防塵フィルタ119の板厚(tg)の比である圧電体板厚比(tg/tp)に関しても、X方向の辺からの反射波と、Y方向の辺からの反射波を効率良く合成して定在波を作るための最適値を持つ。上述したように、圧電素子120が発生可能な振動エネルギーは圧電素子120の体積に比例するので、圧電素子120の厚さを薄くすると、圧電素子120の面積を大きくしなければならず、防塵フィルタ119を大きくしなければ圧電素子120を貼り付けることが出来ない。よって、圧電素子120を薄くしていくと、逆に防塵フィルタ119が大型化してしまう。一方、圧電素子120の板厚を厚くしていくと、発生可能なエネルギーは大きくなるが、圧電素子120の伸び縮み(圧電素子120の発生振動の振幅は伸び縮みに比例)は圧電素子120の板厚方向の電界Eに比例する(E=V/tp(V:圧電素子の板厚方向にかかる電圧、tp:圧電素子の板厚))ので、電圧Vを大きくする必要があり、今度は圧電素子120を駆動する回路が大型化する。従って、圧電素子120は最適な厚さをもつ。ところで、屈曲振動を発生させる防塵フィルタ119の形状は、設計的に最適化されたものとすると、防塵フィルタ119を屈曲させるのに必要な力は防塵フィルタ119の板厚tgの3乗に比例するので、防塵フィルタ119の板厚は防塵フィルタ119の振動振幅の大きさに関係している(屈曲に必要な力が小さければ、小さなエネルギーで大きな振幅が得られる)。以上のことをまとめると、圧電体板厚比tg/tpは最適値をもつことになる。この圧電体幅比に関しては、図12に示すように、圧電素子120(圧電体)の板厚が一定の場合と、防塵フィルタ119(ガラス板)の板厚が一定の場合とで、振動速度比0.9以上が得られる範囲は異なっているが、振動速度比が最大となる板厚比はいずれも0.8付近となることが実験的に判明した。ちなみ、圧電素子120の板厚が一定の場合は、板厚比を0.8以上、0,82以下とすると、振動速度比0.9以上が得られ、防塵フィルタ119の板厚が一定の場合は、板厚比を0.73以上、0,86以下とすると、振動速度比0.9以上が得られる。防塵フィルタ119の板厚を変化させた時の振動速度比の変化が大きいのは、防塵フィルタ119の面積が圧電素子120の面積より大きいことによる。
【0068】
このように振動振幅の山の稜線174が光軸中心に対して閉曲線を構成する振動や辺の中心を取り囲む曲線を構成する振動では、防塵フィルタ119が円盤状の形状の場合に発生する同心円状の振動の振幅と同等の振動振幅が発生できる。単に辺に平行な振動振幅を発生する振動モードでは、本実施形態の数分の1から10分の1程度の振動加速度しか得ることが出来ない。
【0069】
また、振動振幅の山の稜線174が閉曲線を構成する振動や辺の中心を取り囲む曲線を構成する振動では、振動子170の中心が最も振動振幅が大きく、周辺の閉曲線又は取り囲む曲線ほど振動振幅は小さくなる。これによって、画像の中心ほど塵埃除去の能力が高くなり、振動子170の中心を光軸に合わせることにより、中心の画質が高いところほど塵埃180が写り込まなくなると言った利点もある。
【0070】
さらに、結像光線通過エリア149内の振動振幅の小さいエリアである節エリア173は圧電素子120に与える駆動周波数を変えることで異なる振動モードで共振させることにより、節178位置を変化させて塵埃180を除去できることは勿論である。
【0071】
次に、図16により、圧電素子120の周波数を共振周波数付近で変化した場合の振動状態を説明する。
圧電素子120の振動子170の共振周波数付近の電気等価回路は、図16(A)の圧電素子の等価回路に示すようになる。この中で、C0は圧電素子120の静電容量であり、L、C、Rは振動子170の機械的振動を電気回路素子であるコイル、コンデンサ、抵抗に置き換えた等価回路上の数値で、当然、周波数に依存して変化する。
【0072】
周波数が機械的な共振周波数f0になった時には、図16(B)に示すように、LとCの共振となる。全く共振していない周波数から共振周波数側に周波数を上げていくと、圧電素子120の加振の位相に対して、振動子170の振動位相が変化していき、共振の時には位相がπ/2進み、さらに周波数を上げていくと位相はπまで進む。それ以上周波数を上げていくと位相は減少し、共振域で無くなると周波数が低い非共振のときと同じ位相となる。実際には振動子170の構成により、理想状態とはならず、位相がπまで変化しない場合もあるが、駆動周波数を共振周波数に設定することは可能である。
【0073】
なお、図5及び図8の4隅にある支持エリア181は、振動振幅が殆ど無いエリアとなるため、この部分をZ方向に押圧し、ゴム等の振動減衰性のある受け部材152,153を介して防塵フィルタ119を押圧すれば、振動の減衰が発生せず、確実な押圧ができる(ゴム等の受け部材152,153は、防塵フィルタ119の面内方向の振動を許容するので、面内方向の振動も殆ど減衰させることが無い)。
【0074】
一方、防塵フィルタ119を受けるシール156は、振動振幅があるエリアにも設けなければならないが、本実施形態の振動モードでは、周辺の振動振幅の山ほど振動振幅が小さいので、防塵フィルタ119の周辺部をリップ形状で受けることにより、屈曲振動振幅方向には力が強く作用せず、元々の振動振幅も小さいため、シール156による振動の減衰は極めて少なくすることができる。本実施形態では、図5及び図8に示すように、振動振幅の小さいエリアである節エリア173にシール接触部182が多く接触するように構成しているので、さらに振動減衰は小さい。
【0075】
また、圧電素子120を振動させる上記所定の周波数は、振動子170を構成する防塵フィルタ119の形状寸法と圧電素子120の形状寸法、それらの材質や支持の状態によって決まるものであるが、通常、温度は振動子170の弾性係数に影響し、その固有振動数を変化させる要因の1つとなっている。そのため、運用時にその温度を計測して、その固有振動数の変化を考慮するのが好ましい。この場合、温度測定回路(不図示)に接続された温度センサ(不図示)がデジタルカメラ10内に設けられており、温度センサの計測温度から予め決められた振動子170の振動周波数の補正値を不揮発性メモリ128に記憶させ、計測温度と補正値をBucom101に読み込み、駆動周波数を演算して防塵フィルタ制御回路121の駆動周波数とすることによって、温度変化に対しても効率の良い振動を発生することができる。
【0076】
次に、本実施形態におけるデジタルカメラ10の防塵フィルタ制御回路121について、以下に説明する。
【0077】
図17は、デジタルカメラ10のボディユニット100における防塵フィルタ制御回路121の構成を概略的に示す回路図である。図18は、図17の防塵フィルタ制御回路121における各構成部材から出力される各信号形態を示すタイムチャートである。
【0078】
ここに例示した防塵フィルタ制御回路121は、図17に示す如くの回路構成を有し、その各部において、図18のタイムチャートで表わす波形の信号(Sig1〜Sig4)が生成され、それらの信号に基づいて次のように制御される。
【0079】
防塵フィルタ制御回路121は、図17に例示の如く、N進カウンタ183、1/2分周回路184、インバータ185、複数のMOSトランジスタQ00,Q01,Q02、トランス186及び抵抗R00から構成されている。
【0080】
上記トランス186の1次側に接続されたMOSトランジスタQ01及びMOSトランジスタQ02のON/OFF切替え動作によって、そのトランス186の2次側に所定周期の信号(Sig4)が発生するように構成されており、この所定周期の信号に基づき圧電素子120を駆動させ、防塵フィルタ119を固着した振動子170に共振定在波を発生させるようになっている。
【0081】
Bucom101は、制御ポートとして設けられた2つの出力ポートP_PwCont及び出力ポートD_NCntと、このBucom101内部に存在するクロックジェネレータ187を介して防塵フィルタ制御回路121を次のように制御する。クロックジェネレータ187は、圧電素子120へ印加する信号周波数より充分に早い周波数でパルス信号(基本クロック信号)をN進カウンタ183へ出力する。この出力信号が、図18中のタイムチャートが表わす波形の信号Sig1である。そしてこの基本クロック信号はN進カウンタ183へ入力される。
【0082】
N進カウンタ183は、当該パルス信号をカウントし所定の値“N”に達する毎にカウント終了パルス信号を出力する。即ち、基本クロック信号を1/Nに分周することになる。この出力信号が、図18中のタイムチャートが表わす波形の信号Sig2である。
【0083】
この分周されたパルス信号はHighとLowのデューティ比が1:1ではない。そこで、1/2分周回路184を通してデューティ比を1:1へ変換する。尚、この変換されたパルス信号は、図18中のタイムチャートが表わす波形の信号Sig3に対応する。
【0084】
この変換されたパルス信号のHigh状態において、この信号が入力されたMOSトランジスタQ01がONする。一方、MOSトランジスタQ02へはインバータ185を経由してこのパルス信号が印加される。従って、パルス信号のLow状態において、この信号が入力されたMOSトランジスタQ02がONする。トランス186の1次側に接続されたMOSトランジスタQ01とMOSトランジスタQ02が交互にONすると、2次側には図18中の信号Sig4の如き周期の信号が発生する。
【0085】
トランス186の巻き線比は、電源回路135のユニットの出力電圧と圧電素子120の駆動に必要な電圧とから決定される。尚、抵抗R00はトランス186に過大な電流が流れることを制限するために設けられている。
【0086】
圧電素子120を駆動するに際しては、MOSトランジスタQ00がON状態にあり、且つ、電源回路135からトランス186のセンタータップに電圧が印加されていなければならない。そして、この場合において、MOSトランジスタQ00のON/OFF制御は、Bucom101の出力ポートP_PwContを介して行われるようになっている。N進カウンタ183の設定値“N”は、Bucom101の出力ポートD_NCntから設定でき、よって、Bucom101は、設定値“N”を適宜に制御することで、圧電素子120の駆動周波数を任意に変更可能である。
【0087】
このとき、次の(7)式によって周波数は算出可能である。即ち、
fdrv=fpls/2N …(7)
但し、NはN進カウンタ183への設定値、fplsはクロックジェネレータ187の出力パルスの周波数、fdrvは圧電素子120に印加される信号の周波数である。
【0088】
尚、この(7)式に基づいた演算は、Bucom101のCPU(制御手段)で行われる。
【0089】
さらに、このデジタルカメラ10は、超音波域(20kHz以上の周波数)の周波数で防塵フィルタ119を振動させる場合に、デジタルカメラ10の操作者に防塵フィルタ119の動作を告知する表示部を、動作表示用LCD129あるいは動作表示用LED130に設けている。つまり、上記CCD117の前面に配置され振動可能な透光性をもつ防塵部材(防塵フィルタ119)に対して、加振部材(圧電素子120)で振動を与えるとき、加振部材の駆動回路(防塵フィルタ制御回路121)の動作と連動してデジタルカメラ10の表示部を動作させ、防塵フィルタ119の動作を告知することも実施する(詳細は後述する)。
【0090】
上述の特徴を詳しく説明する為、Bucom101が行なう制御について、図19及び図20を参照しながら具体的な制御動作について説明する。
【0091】
図19には、本実施形態のデジタルカメラ10の動作制御をフローチャートで表わしており、このBucom101が行なうカメラシーケンス(メインルーチン)の手順を例示している。
【0092】
Bucom101で稼動可能な図19に示すフローチャートに係わる制御プログラムはカメラのボディユニット100の電源SW(不図示)がON操作されると、その稼動を開始する。
【0093】
最初に、当該デジタルカメラ10を起動するための処理が実行される(ステップS101)。即ち、電源回路135を制御して当該デジタルカメラ10を構成する各回路ユニットへ電力を供給する。また、各回路の初期設定を行なう。
【0094】
次に、後述するサブルーチン「無音加振動作」をコールすることで、無音(即ち可聴範囲外)で防塵フィルタ119を振動させる(ステップS102)。尚、ここで云う可聴範囲は、一般人の聴力を基準にして約20Hz〜20000Hzの範囲内とする。
【0095】
続くステップS103からステップS124までは、周期的に実行されるステップ群である。即ち、まず、当該デジタルカメラ10に対するアクセサリの着脱を検出する(ステップS103)。これは、例えば、アクセサリの1つであるレンズユニット200が、ボディユニット100に装着されたことを検出する。その着脱検出動作は、Lucom201と通信を行なうことでレンズユニット200の着脱状態を調べる。
【0096】
もし、所定のアクセサリがボディユニット100に装着されたことが検出されたならば(ステップS104)、サブルーチン「無音加振動作」をコールすることで、無音で防塵フィルタ119を振動させる(ステップS105)。
【0097】
このように、カメラ本体であるボディユニット100にアクセサリの特にレンズユニット200が装着されていない期間には特に、各レンズや防塵フィルタ119等に塵埃が付着する可能性が高いので、上述の如くレンズユニット200の装着を検出したタイミングで塵埃を払う動作を実行することは有効である。また、レンズ交換時にボディユニット100内部に外気が循環し塵埃が進入して付着する可能性が高いので、このレンズ交換時に塵埃除去することは有意義である。そして、撮影直前とみなし、ステップS106へ移行する。
【0098】
一方、上記ステップS104で、レンズユニット200がボディユニット100から外された状態であることを検出した場合は、そのまま次のステップS106へ移行する。
【0099】
そして、ステップS106では、当該デジタルカメラ10が有する所定の操作スイッチの状態検出が行なわれる。
【0100】
ここで、レリーズSWを成す1st.レリーズSW(不図示)が操作されたか否かを、当該SWのON/OFF状態で判定する(ステップS107)。その状態を読み出し、もし1st.レリーズSWが所定時間以上ON操作されない場合には、電源SWの状態を判別する(ステップS108)。そして、電源SWがONされていれば上記ステップS103に戻り、OFFされていれば終了処理(スリープ等)となる。
【0101】
一方、上記ステップS107にて1st.レリーズSWがON操作されたと判別した場合には、画像処理コントローラ126からの撮像画像から被写体の輝度情報を入手し、この情報から撮像ユニット116の露光時間(Tv値)とレンズユニット200の絞り設定値(Av値)を算出する(ステップS109)。
【0102】
その後、同じく撮像画像のコントラストを検出する(ステップS110)。そして、その検出されたコントラストが許可された範囲内にあるか否かを判定し(ステップS111)、否の場合は撮影レンズ202の駆動制御を行って(ステップS112)、上記ステップS103へ戻る。
【0103】
一方、許可された範囲内にコントラストが在る場合は、サブルーチン「無音加振動作」をコールして無音で防塵フィルタ119の振動を開始させる(ステップS113)。
【0104】
さらに、レリーズSWを成す2nd.レリーズSW(不図示)がON操作されたか否かを判定する(ステップS114)。この2nd.レリーズSWがON状態のときは、続くステップS115へ移行して所定の撮影動作(詳細後述)を開始するが、OFF状態のときは上記ステップS108へ移行する。
【0105】
尚、撮像動作中では、通常の如く、露出の為に予め設定された秒時(露出秒時)に対応した時間の電子撮像動作を制御する。
【0106】
上記撮影動作として、ステップS115からステップS121までは、所定の順序にて被写体の撮像が行われる。まずLucom201へAv値を送信して、絞り203の駆動を指令する(ステップS115)。そして、シャッタ108の先幕走行を開始させてOPEN制御し(ステップS117)、画像処理コントローラ126に対して「撮像動作」の実行を指令する(ステップS118)。Tv値で示された時間だけのCCD117への露光(撮像)が終了すると、シャッタ108の後幕走行を開始させてCLOSE制御する(ステップS119)。そして、シャッタ108のチャージ動作を行なう(ステップS120)。
【0107】
その後、Lucom201に対して絞り203を開放位置へ復帰させるように指令して(ステップS121)、一連の撮像動作を終了する。
【0108】
続いて、記録メディア127がボディユニット100に装着されているか否かを検出し(ステップS122)、否の場合は、警告表示をする(ステップS123)。そして再び上記ステップS103へ移行して、同様な一連の処理を繰り返す。
【0109】
一方、記録メディア127が装着されていれば、画像処理コントローラ126に対し撮影した画像データを記録メディア127へ記録するように指令する(ステップS124)。その画像データの記録動作が終了すると、再び、上記ステップS103へ移行して、同様な一連の処理を繰り返す。
【0110】
以下、詳しい振動形態と表示の関係について、上述した3つのステップ(S102,S105,S113)でコールされる「無音加振動作」サブルーチンの制御手順を図20に基づき説明する。尚、この「振動形態」とは、加振部材である圧電素子120によって引き起こされる振動の形態である。
【0111】
図20(A)は、上記サブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図であり、図20(B)乃至(D)はそれぞれ、図20(A)のサブルーチン「無音加振動作」の各タイミングにて並行して実行される「表示動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図である。この無音加振動作において、加振部材へ連続的に供給される共振周波数の波形を表わすグラフが図21に示されている。
【0112】
図20のサブルーチン「無音加振動作」と「表示動作」は、防塵フィルタ119の塵埃除去の為にだけの加振動作を目的とするルーチンであるので、振動周波数f0は、その防塵フィルタ119の共振周波数付近の所定の周波数に設定されている。例えば図5の振動モードの場合は、78kHzであり、少なくとも20kHz以上の振動である故に、ユーザにとっては無音である。
【0113】
まず、防塵フィルタ119を振動させるための駆動時間(Toscf0)と駆動周波数(共振周波数:Noscf0)に関するデータを、不揮発性メモリ128の所定領域に記憶されている中から読み出す(ステップS201)。このタイミングで、動作表示用LCD129あるいは動作表示用LED130に設けた表示部への加振モードの表示をONする(ステップS301)。そして、所定時間が経過したかを判定し(ステップS302)、所定時間が経過していないときは加振モードの表示を継続し、所定時間経過後は加振モード表示をOFFする(ステップS303)。
【0114】
次に、Bucom101の出力ポートD_NCntから、駆動周波数Noscf0を、防塵フィルタ制御回路121のN進カウンタ183へ出力する(ステップS202)。
【0115】
続くステップS203〜ステップS205では、次のように塵埃除去動作が行なわれる。即ち、まず塵埃除去動作を開始させ実行する。一方、この時の表示は、出力ポートP_PwContをHighのタイミングで加振動作表示を開始させ(ステップS311)、次に所定時間が経過したかを判定し(ステップS312)、所定時間が経過していないときは加振動作の表示を継続し、所定時間経過後は加振動作表示を終了する(ステップS313)。この時の加振動作表示は時間経過、あるいは塵埃除去経過に応じて変化する表示をする(不図示)。この場合の所定時間は、後に述べる加振動作の継続時間であるToscf0に略等しい。また、塵埃除去のために出力ポートP_PwContをHighに設定すると(ステップS203)、圧電素子120は所定の駆動周波数(Noscf0)で防塵フィルタ119を加振し、防塵フィルタ119面に付着した塵埃180を振り払う。この塵埃除去動作で防塵フィルタ119面に付着した塵埃180が振り払われるとき、同時に、空気振動が起こり、超音波が発生する。(但し、駆動周波数Noscf0で駆動されても、一般人の可聴範囲内の音にはならず、聞こえない)。
【0116】
所定駆動時間(Toscf0)、防塵フィルタ119を振動させた状態で待機し(ステップS204)、その所定駆動時間(Toscf0)経過後、出力ポートP_PwContをLowに設定することで、加振終了表示をONする(ステップS321)とともに、塵埃除去動作を停止させる(ステップS205)。加振終了表示は、所定時間経過後(ステップS322)に、OFFされて表示を終了する(ステップS323)。そして、コールされたステップの次のステップへリターンする。
【0117】
このサブルーチンで適用される振動周波数f0(共振周波数(Noscf0))と駆動時間(Toscf0)は、図21にグラフで表わした如くの波形を示す。即ち、一定の振動(f0=78kHz)が、塵埃除去に充分な時間(Toscf0)だけ続く連続的な波形となる。
【0118】
つまり、この振動形態が、加振部材に供給する共振周波数を調整して制御するものである。
【0119】
[第2実施形態]
図22は、本発明の画像機器の第2実施形態としてのデジタルカメラにおけるBucomが行なうカメラシーケンス(メインルーチン)においてコールされるサブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図である。
【0120】
これは、上記第1実施形態における図20に示すサブルーチン「無音加振動作」の動作を変更したものであり、本第2実施形態は、防塵フィルタ119の動作が、上記第1実施形態と異なる。即ち、上記第1実施形態では、防塵フィルタ119の駆動周波数はf0と言う固定値にして定在波が発生する形態としていたが、本第2実施形態は、駆動周波数を順次変更して加えることで、厳密に駆動周波数を制御しなくても、共振周波数を含む、振動振幅の大きな振動を発生するようにしたものである。
【0121】
また、図9の縦横比0.9付近では縦横比が製造バラツキで変化した場合に振動モードが大きく変化する(振動速度比が急激に減少する)ために、製品ごとに正確に共振周波数を設定して圧電素子120を駆動する必要がある(共振周波数ではない周波数で駆動すると振動速度がさらに下がる)。本第2実施形態のような周波数制御方法を適用すれば、非常に簡単な制御回路で、正確な共振周波数での駆動が可能となり、製造バラツキによる共振周波数のバラツキがあったとしても適正な制御が可能となる。
【0122】
まず、防塵フィルタ119を振動させるための駆動時間(Toscf0)と駆動開始周波数(Noscfs)と周波数変移量(Δf)と駆動終了周波数(Noscft)に関するデータを、不揮発性メモリ128の所定領域に記憶されている中から読み出す(ステップS211)。このタイミングで、図20(B)に示したような加振モードの表示を行うことは上記第1実施形態と同様である。
【0123】
次に、駆動周波数(Noscf)に駆動開始周波数(Noscfs)を設定する(ステップS212)。また、Bucom101の出力ポートD_NCntから、駆動周波数(Noscf)を、防塵フィルタ制御回路121のN進カウンタ183へ出力する(ステップS213)。
【0124】
続くステップS214以降では、次のように塵埃除去動作が行なわれる。即ち、まず塵埃除去動作を開始させ実行する。また、このとき、図20(C)に示したような加振動作表示を行うことは上記第1実施形態と同様である。
【0125】
まず、塵埃除去のために出力ポートP_PwContをHighに設定すると(ステップS214)、圧電素子120は所定の駆動周波数(Noscf)で防塵フィルタ119を加振し、防塵フィルタ119に振動振幅の小さな定在波振動を生じさせる。防塵フィルタ119面に付着した塵埃180は振動振幅が小さいと、除去することができない。駆動時間(Toscf0)の間、この振動は継続される(ステップS215)。次に、駆動周波数(Noscf)が駆動終了周波数(Noscft)であるかを比較判定し(ステップS216)、一致していなければ(NOの判定)、駆動周波数(Noscf)に周波数変移量(Δf)を加算して、再び駆動周波数(Noscf)に設定し(ステップS217)、上記ステップS212の動作から上記ステップS216までの動作を繰り返す。
【0126】
そして、上記ステップS216で駆動周波数(Noscf)が駆動終了周波数(Noscft)に一致したとき(YES)には、P_PwContをLowに設定し、圧電素子120の加振動作が終了して(ステップS218)、一連の「無音加振動作」が終了する。また、このとき、図20(D)に示したような加振終了表示を行うことは上記第1実施形態と同様である。
【0127】
このように周波数を変更していった場合に、定在波振動の振幅が増大していく。そこで、定在波の共振周波数を通過するように駆動開始周波数(Noscfs)と周波数変移量(Δf)と駆動終了周波数(Noscft)を設定すれば、防塵フィルタ119に振動振幅の小さな定在波振動がまず発生し、次第に定在波振動の振幅が増大していき、共振振動になった後、定在波振動振幅が小さくなるといった制御をすることができる。そして、所定以上の振動振幅(振動速度)があれは、塵埃180は除去することが出来るので、ある所定の周波数範囲に渡って塵埃180を除去することが可能であり、本実施形態の場合は共振時の振動振幅が大きいことからその周波数範囲も広くなる。
【0128】
また、駆動開始周波数(Noscfs)と駆動終了周波数(Noscft)の間をある程度広くとれば、振動子170の温度や製造バラツキによる共振周波数の変化を吸収することが可能で、極めて簡単な回路構成で確実に防塵フィルタ119に付着した塵埃180を振り払うことが可能となる。
【0129】
[第3実施形態]
上述した第1及び第2実施形態では、ファインダは液晶モニタを利用したものとなっているが、一眼レフレックス式の光学ファインダをもつカメラでも勿論良い。
【0130】
図23は、本発明の画像機器の第3実施形態としてのレンズ交換可能な一眼レフレックス式電子カメラ(デジタルカメラ)の主に電気的なシステム構成例を概略的に示すブロック図である。ここで、上記第1実施形態に係る図1に示したデジタルカメラと同様の部分には同一の参照番号を付し、その説明は省略する。以下、異なる部分のみを説明する。
【0131】
即ち、このデジタルカメラ10のボディユニット100内には、以下のような構成部材が図示の如く配設されている。例えば、光学系としての一眼レフ方式の構成部材(ペンタプリズム103、スクリーン104、クイックリターンミラー105、接眼レンズ106、サブミラー107)と、サブミラー107からの反射光束を受けてデフォーカス量を検出するためのAFセンサユニット109と、が設けられている。
【0132】
また、AFセンサユニット109を駆動制御するAFセンサ駆動回路110と、クイックリターンミラー105を駆動制御するミラー駆動機構111と、ペンタプリズム103からの光束を検出する測光センサ114に基づき測光処理を行う測光回路115と、が設けられている。
【0133】
ここで、ミラー駆動機構111は、クイックリターンミラー105をアップ位置とダウン位置へ駆動するための機構であり、このクイックリターンミラー105がダウン位置にある時、撮影レンズ202からの光束はAFセンサユニット109側とペンタプリズム103側へと分割されて導かれる。AFセンサユニット109内のAFセンサからの出力は、AFセンサ駆動回路110を介してBucom101へ送信されて周知の測距処理が行われる。一方、ペンタプリズム103を通過した光束の一部は測光回路115内の測光センサ114へ導かれ、ここで検知された光量に基づき周知の測光処理が行われる。
【0134】
このような構成を備える一眼レフレックス式のデジタルカメラ10の動作においては、
図19に示したBucom101が行なうカメラシーケンス(メインルーチン)の手順において、ステップS107にて1st.レリーズSWがON操作されたと判別した場合にステップS109として実行される、撮像ユニット116の露光時間(Tv値)とレンズユニット200の絞り設定値(Av値)の算出を、画像処理コントローラ126からの撮像画像から被写体の輝度情報ではなく、測光回路115からの被写体の輝度情報に基づいて行うこととなる。
【0135】
また、続くステップS110の撮像画像のコントラスト検出に代えて、AFセンサ駆動回路110を経由してAFセンサユニット109の検知データを入手し、このデータに基づきピントのズレ量の算出を行い、次の上記ステップS111の検出コントラストが許可範囲内にあるか否の判定に代えて、その算出されたズレ量が許可された範囲内にあるか否かの判定を行う。そして、否の場合は、ステップS112へ進んで撮影レンズ202の駆動制御を行い、許可された範囲内にズレ量が在る場合は、ステップS113へ進んでサブルーチン「無音加振動作」をコールする。
【0136】
また、ステップS114において2nd.レリーズSW(不図示)がON操作されたときに行われる撮影動作においては、ステップS115での絞り203の駆動後、ステップS117でのシャッタ108のOPEN制御に先だって、クイックリターンミラー105をUP位置へ移動させる動作を行い、また、ステップS120でのシャッタ108のチャージ動作と共に、クイックリターンミラー105をDown位置へ駆動することが必要となる。
【0137】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0138】
例えば、上記の加振部材による塵埃除去機構の他に、空気流によって防塵フィルタ119の塵埃180を除去する方式、あるいはワイパーにより防塵フィルタ119の塵埃180を除去するような機構を組み合わせて用いても良い。
【0139】
また、上述した実施形態では、撮像素子としてCCD117を例に挙げているが、もちろん、CMOSやその他の撮像素子であっても構わない。
【0140】
さらに、上述した実施形態では、加振部材は圧電素子としていたが、電歪材料でも、超磁歪材でも勿論良い。
【0141】
また、振動の際、加振する対象部材に付着している塵埃180をより効率よく振り落とせるよう、その表面に、例えば、透明導電膜であるITO(酸化インジウム・錫)膜、インジウム亜鉛膜、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン膜、吸湿型静電気防止膜である界面活性剤膜、シロキサン系膜、等をコーティング処理しても良い。但し、振動に係わる周波数や駆動時間などは上記膜の部材に対応した値に設定する。
【0142】
また、本願の一実施形態として記載した光学LPF118を、複屈折性を有する複数枚の光学LPFとして構成しても良い。そして、それら複数枚に構成した光学LPFのうちの最も被写体側に配置された光学LPFを、図2に記載した防塵フィルタ119の代わりに防塵部材(加振対象)として使用しても良い。
【0143】
また、本願の一実施形態として図2に記載した光学LPF118を有さないカメラとし、防塵フィルタ119を、例えば、光学LPF、赤外カットフィルタ、偏向フィルタ、ハーフミラー等の何れかの光学素子として使用するようにしても良い。
【0144】
さらに、上記光学LPF118を有さないだけでなく、防塵フィルタ119を、図2記載の保護ガラス142に代用させる構成としても良い。この場合、保護ガラス142とCCDチップ136との防塵・防湿状態を維持するようにすると共に、保護ガラス142を支持しつつ振動させる構成として、図2記載の防塵フィルタ119を支持しつつ振動させる構成を利用すれば良い。なお、保護ガラス142を、光学LPF、赤外カットフィルタ、偏向フィルタ、ハーフミラー等の何れかの光学素子として使用するようにしても良いのはいうまでもない。
【0145】
尚、本発明を適用する画像機器としては、例示した撮像装置(デジタルカメラ)に限らず、塵埃除去機能を必要とする装置であれば良く、必要に応じて変形実施することで実用化され得る。より、具体的には液晶等の表示素子を用いた画像投影装置における表示素子と光源の間、あるいは表示素子と投影レンズとの間に、本発明の塵埃除去機構を設けても良い。
【符号の説明】
【0146】
10…デジタルカメラ、 100…ボディユニット、 101…ボディ制御用マイクロコンピュータ(Bucom)、 108…シャッタ、 116…撮像ユニット、 117…CCD、 118…光学ローパスフィルタ(LPF)、 119…防塵フィルタ、 120…圧電素子、 120a…圧電素子の重心、 120b…圧電素子の仮想矩形、 121…防塵フィルタ制御回路、 122…CCDインターフェース回路、 128…不揮発性メモリ、 129…動作表示用LCD、 130…動作表示用LED、 131…カメラ操作SW、 134…電池、 135…電源回路、 136…CCDチップ、 137…固定板、 138…フレキシブル基板、 139a,139b…接続部、140…主回路基板、 141a,141b…コネクタ、 142…保護ガラス、 143…スペーサ、 144…フィルタ受け部材、 145…ホルダ、 146…開口、 147…段部、 148…防塵フィルタ受け部、 149…結像光線通過エリア、 150…ねじ、 151…押圧部材、 152,153…受け部材、 154…支持部材、 155…支持部、 156…シール、 157…フレキ、 158…台、 159…保持材、 166…Y枠、 170…振動子、 171,172…信号電極、 173…節エリア、 173a…節エリアに囲まれた領域の重心、 174…振動振幅の山の稜線、 174a…略同心円状の稜線の中心、 175…中心振動領域、 175a…中心振動領域の重心、 176…仮想矩形、 177…分極方向を示す矢印、 178…節、 179…振動の腹、 180…塵埃、 181…支持エリア、 182…シール接触部、 183…N進カウンタ、 184…1/2分周回路、 185…インバータ、 186…トランス、 187…クロックジェネレータ、 200…レンズユニット、 201…レンズ制御用マイクロコンピュータ(Lucom)、 202…撮影レンズ、 203…絞り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として板状をなし、当該板状の部材面上のある仮想軸に対して対称な辺を少なくとも一つ有する防塵部材と、
上記防塵部材に形成された1つの辺に隣接し、かつ、当該1つの辺に沿って上記部材面上に配置されていて、当該防塵部材の当該部材面に垂直な振動振幅をもつ振動を上記部材面に発生させるための加振部材と、
上記部材面上において、当該記部材面に垂直な振動振幅を有する振動の山の稜線が閉曲線をなし、当該閉曲線の中心を含む領域が当該部材面に対して垂直な振動振幅を殆ど持たない節領域に囲まれている振動を、上記部材面に発生させるように上記加振部材を駆動する駆動手段と、
を具備し、
上記防塵部材の板厚をtg、上記加振部材の板厚をtpとした場合にtg/tpが0.8となる寸法を持つことを特徴とする振動装置。
【請求項2】
上記防塵部材の部材面は、上記1つの辺に相当する長辺をもち且つ当該防塵部材の部材面の面積と同一の面積を持つ仮想矩形において、当該仮想矩形における長辺の長さに対する短辺の長さの比が、0.9以上、1未満となる形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
上記閉曲線の中心と当該閉曲線の中心を含む領域の中心は、上記仮想軸上にあることを特徴とする請求項1に記載の振動装置。
【請求項4】
上記加振部材は圧電素子からなり、
上記駆動手段は、上記圧電素子に対して、上記防塵部材の寸法及び材質並びに上記圧電素子の寸法及び材質に応じた周波数の周波信号を含む、決められた変移周波数ずつ変化する周波信号を所定時間ずつ印加することを特徴とする請求項1に記載の振動装置。
【請求項5】
光学的な画像が生成される画像面を有する画像形成素子と、
全体として板状をなし、当該板状の部材面上のある仮想軸に対して対称な辺を少なくとも一つもち、所定の広がりを持つ透明領域が上記画像面に対し所定の間隔を持って対向配設されている防塵部材と、
上記防塵部材が有する1つの辺に隣接し、かつ、当該1つの辺に沿って上記部材面上に配置されていて、当該部材面に垂直な振動振幅をもつ振動を上記部材面に発生させるための加振部材と、
上記加振部材を駆動する駆動手段と、
上記画像形成素子と上記防塵部材とが対向して形成される領域を、当該画像形成素子及び当該防塵部材の周縁側で封止するように構成された封止構造部と、
を具備し、
上記駆動手段は、上記封止構造部の外側であって上記防塵部材の部材面において、上記部材面に垂直な振動振幅を有する振動の山の稜線が閉曲線をなし、当該閉曲線の中心を含む領域が当該部材面に対して垂直な振動振幅を殆ど持たない節領域に囲まれている振動を、上記部材面に発生させるように上記加振部材を駆動し、
上記防塵部材の板厚をtg、上記加振部材の板厚をtpとした場合にtg/tpが0.8となる寸法を持つことを特徴とする画像機器。
【請求項6】
上記封止構造部は、
上記画像形成素子と上記防塵部材との間を気密状態にするために配置されたホルダと、
当該ホルダに上記防塵部材を支持する支持手段と、
を含み、
当該支持手段は、上記防塵部材の部材面に対して垂直な振動振幅を殆ど持たない節領域に支持されていることを特徴とする請求項5に記載の画像機器。
【請求項7】
上記加振部材は圧電素子からなり、
上記駆動手段は、上記圧電素子に対して、上記防塵部材の寸法及び材質並びに上記圧電素子の寸法及び材質に応じた周波数の周波信号を含む、決められた変移周波数ずつ変化する周波信号を所定時間ずつ印加することを特徴とする請求項5に記載の画像機器。
【請求項8】
全体として板状をなし、当該板状の部材面上のある仮想軸に対して対称な辺を少なくとも一つ有する防塵部材と、
上記防塵部材が有する1つの辺に隣接し、かつ、当該1つの辺に沿って上記部材面上に配置されていて、当該防塵部材の部材面に垂直な振動振幅をもつ振動を上記部材面に発生させるための加振部材と、
上記の部材面に垂直な振動振幅を有する振動の山の稜線の一部であって、この稜線が上記防塵部材の上記1つの辺から当該1つの辺に対向して配置されている他方の辺側へ向かって、略同心円状に連続的に位置する振動であって、当該連続する略同心円状の稜線の中心が当該防塵部材の1つの辺を挟んで他方の辺と反対側にある振動を、上記部材面に発生させるように上記加振部材を駆動する駆動手段と、
を具備し、
上記防塵部材の板厚をtg、上記加振部材の板厚をtpとした場合にtg/tpが0.8となる寸法を持つことを特徴とする振動装置。
【請求項9】
上記防塵部材の部材面は、上記1つの辺に相当する長辺をもち且つ当該防塵部材の部材面の面積と同一の面積を持つ仮想矩形において、当該仮想矩形における長辺の長さに対する短辺の長さの比が、0.9以上、1未満となる形状をしていることを特徴とする請求項7に記載の振動装置。
【請求項10】
上記連続する円弧状の稜線の中心と上記加振部材の長さ方向における中心は、上記仮想軸上にあることを特徴とする請求項8に記載の振動装置。
【請求項11】
上記加振部材は圧電素子からなり、
上記駆動手段は、上記圧電素子に対して、上記防塵部材の寸法及び材質並びに上記圧電素子の寸法及び材質に応じた周波数の周波信号を含む、決められた変移周波数ずつ変化する周波信号を所定時間ずつ印加することを特徴とする請求項8に記載の振動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−232469(P2011−232469A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101493(P2010−101493)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】