説明

振動音減衰特性が向上したグレージングユニットと、そのようなグレージングユニットを製造する方法と、車両乗客室内の防音方法

本発明は、振動音減衰特性が向上されたグレージングユニット(1)であって、
少なくとも1つのガラス板(10)と、減衰材料で製作された少なくとも1つの要素(20)を備え、ガラス板の一方の面に固定された少なくとも1つの振動音減衰ストリップ(2)とを備え、ガラス板(10)に面するストリップ(2)の面が、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積よりも必ず小さいガラス板と接触した表面積を有する、グレージングユニット(1)に関する。
本発明により、ほとんど空間を要せずに騒音および振動を減衰させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動音減衰装置を備える振動音減衰特性が向上したグレージングユニットと、特に、車両、とりわけ自動車の移動乗客室などの移動乗客室内の音および振動による不快を軽減する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、あるいはトラック、バス、および農業機械などの他のタイプの車両に加えて、本発明は、閉鎖された乗客室または実質的に閉鎖された乗客室を有する任意の種類の移動手段、例えば航空機、列車、船舶、潜水艦などに適用される。
【0003】
車両、特に自動車に関連付けられるグレージングユニットには、車両内部の音の快適性を向上させる目的で、グレージングユニットを通って伝播する振動波を吸収するように働く振動音減衰手段が設けられる。
【0004】
自動車内の不快さの原因に対しては、それらの発生源が機械的なもの、熱的なもの、視界に関するものなどにせよ、徐々に取り組みがなされている。しかし、音の快適性の向上は依然として現在の問題である。
【0005】
空気力学的な原因による騒音、即ち移動する車両に対する空気の摩擦によって生じる騒音自体は、少なくとも部分的にはその源で対処されている。エネルギーを節約するために形状が修正されて、空気中の通り抜けを向上させ、それ自体が騒音の源である乱流を軽減させてきた。外部の空気力学的騒音の源を、乗客のいる内部空間から離隔する車両の壁の中で、当然のことながら、グレージングユニットは最も対処することが困難なものである。
【0006】
現在、積層グレージングユニットを提供することが知られているが、その熱可塑性中間層は振動音減衰特性が向上するように適切に選択される。
【0007】
このように、欧州特許第0387148号明細書は、特に空気力学的な源による騒音、即ち800Hzから10000Hzの高周波を有する騒音に対して充分な遮断を達成する積層グレージングユニットを提供する。
【0008】
さらに、このような積層グレージングユニットは、臨界周波数での伝播損失の急激な低下を防止する働きがある。伝播損失は遮音を表している。臨界周波数はグレージングユニットの組成(構成要素の密度およびヤング率、厚み)に固有のものであり、グレージングユニット内の屈曲波と、グレージングユニットを取り囲む空気などの流体内の音響波との空間的コインシデンスおよび周波数的コインシデンスに対応する。この臨界周波数は、典型的には、厚み約3mmのグレージングユニットで4000Hzの域内にある。
【0009】
したがって、騒音が増幅されることが可能となるのは、特に人間の耳に聞き取れる周波数域内(1000Hzから6000Hzの間)に存在するこの臨界周波数においてである。したがって、この周波数で騒音に対して充分な遮断能力を有することが望ましい。
【0010】
振動音的特性を有する積層グレージングユニットを使用することに対する代替え的解決法(一部のグレージングユニットは積層状でないことによる)または相補的な解決法は、グレージングユニットの周辺に、ならびに、グレージングユニットと本体の間に振動音減衰特性を有するストリップを接合することからなることができる。ストリップはグレージングユニットと本体の両方に固定され、いくつかの減衰材料を並置したものから成ることもでき、そうでなくともよい。
【0011】
国際公開第04/012952号は、このような振動音減衰特性を実現するために、少なくとも25MPaの等価実線形剛性K’eqと、少なくとも0.25の等価損失係数tanσeqとを有さなくてはならないストリップを開示している。等価線形剛性は、ストリップ1リニアメータ当たりのストリップの等価剛性であり、この剛性はストリップが製作される材料の剛性(主に引張−圧縮の作用に対するヤング率)とストリップの形状とによって特徴付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第0387148号明細書
【特許文献2】国際公開第04/012952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このタイプのストリップでは、グレージングユニットに対して垂直方向に引張−圧縮で作用する、材料が受ける応力および歪みだけが考慮される。せん断作用は極僅かである。実際、ストリップと比較して、本体は極めて硬質であり、変形せず、振動エネルギーを吸収することは可能でない。ストリップだけが、主に引張−圧縮で作用することによって著しく変形し、機械エネルギーを消散させることが可能である。
【0014】
したがって、このタイプの減衰ストリップは、グレージングユニットの周囲密閉部を構成することでも、グレージングユニットと本体の連結をもたらすことから適切である。しかし、車両では、全てのグレージングユニットがそれらの周囲全体で本体に固定される訳ではなく、一部のもの、例えば開閉側面のグレージングユニットなどは可動である。したがって、減衰手段として作用するこの周囲密閉構成は開閉側面のグレージングユニットには適切でない。
【0015】
さらに開閉側面のグレージングユニットでは、可動性の制約が加わる。とりわけ、グレージングユニットは車両本体のスロット内で、例えばドア内で開放位置と閉鎖位置の間を滑動することが可能でなくてはならない。
【0016】
したがって、ほとんど空間を要さずに騒音を減衰させることを可能にするグレージングユニットが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、振動音減衰特性が向上したグレージングユニットであって、
少なくとも1つのガラス板と、
減衰材料で製作された少なくとも1つの要素を備え、ガラス板の一方の面に固定された、少なくとも1つの振動音減衰ストリップとを備え、
ガラス板に面するストリップの面は、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積よりも必ず小さい、ガラス板と接触した表面積を有する、グレージングユニットを提案する。
【0018】
他の特徴によると、ガラス板に接触したストリップの表面積は、ガラス板に面するストリップの面の表面積の25%よりも大きい。
【0019】
他の特徴によると、ガラス板に接触したストリップの表面積は、ガラス板に面するストリップの面の表面積の70%前後である。
【0020】
他の特徴によると、減衰材料で製作された要素は、20℃で、グレージングユニットの臨界周波数のプラスマイナス30%の範囲内に対応する特定の周波数fに対して、0.2よりも大きい損失係数と800MPaよりも大きいヤング率とを有する。
【0021】
他の特徴によると、ストリップはガラス板の反対側で他の装置には接合されない。
【0022】
他の特徴によると、ストリップは最大でグレージングユニットの長さにわたって延在する。
【0023】
他の特徴によると、ストリップは減衰材料で製作された複数の要素を備える。
【0024】
他の特徴によると、グレージングユニットは、グレージングユニットの同じ面に、かつ/またはグレージングユニットの両面に接合された、いくつかのストリップを備える。
【0025】
他の特徴によると、ストリップは減衰材料で製作された少なくとも1つの要素、ならびに、減衰材料で製作された要素とガラス板との間に配置された硬質の中間層要素を備え、硬質の中間層要素は、20℃で、選択された特定周波数fに対して、0.2未満の損失係数と1600MPaよりも大きいヤング率とを有する。
【0026】
他の特徴によると、ストリップは、ガラス板に面するその面に両面接着タイプの結合手段を備える。
【0027】
本発明は、本体と上述のグレージングユニットとを備える、ストリップは本体内で目につかないところに隠されている、車両、特に自動車にも関する。
【0028】
他の特徴によると、グレージングユニットは開閉側面のグレージングユニットである。
【0029】
本発明は、上述のグレージングユニットを備える車両、とりわけ自動車の乗客室内の音および振動による不快を軽減する目的で、そのようなグレージングユニットを製造する方法であって、以下の、
少なくとも1つのガラス板を備えるグレージングユニットを提供するステップと、
減衰材料で製作された少なくとも1つの要素を備える少なくとも1つの振動音減衰ストリップを提供するステップと、
ガラス板に面する振動音減衰ストリップの面が、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積よりも必ず小さい、ガラス板と接触した表面積を有するように、ストリップをグレージングユニットの面の少なくとも一方に固定するステップとを備える方法にも関する。
【0030】
本発明は、車両、とりわけ自動車の乗客室内の防音方法であって、以下の、
少なくとも1つのガラス板と、少なくとも1つの振動音減衰ストリップとを備える、振動音減衰特性が向上したグレージングユニットを車両の本体内に取り付けるステップにおいて、ストリップは減衰材料で製作された少なくとも1つの要素を備え、グレージングユニットの一方の面に固定され、ガラス板に面するストリップの面は、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積よりも必ず小さい、ガラス板と接触した表面積を有するステップを備える方法にも関する。
【0031】
他の特徴によると、グレージングユニットは上述のようである。
【0032】
次に、本発明の他の詳細および利点が添付図面を参照して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ストリップが設けられた、発明によるグレージングユニットの斜視図である。
【図2】図1のグレージングユニットの部分横断面図である。
【図3】変形形態のストリップが設けられた、本発明によるグレージングユニットの部分横断面図である。
【図4】変形形態のストリップが設けられた、本発明によるグレージングユニットの部分横断面図である。
【図5】変形形態のストリップが設けられた、本発明によるグレージングユニットの部分横断面図である。
【図6】2つのストリップがグレージングユニットの両面に配置された、本発明によるグレージングユニットの部分横断面図である。
【図7】2つのストリップがグレージングユニットの同一面に配置された、本発明によるグレージングユニットの部分斜視図である。
【図8】変形形態の補助ストリップが設けられた、本発明によるグレージングユニットの斜視図である。
【図9】同じガラス厚みを備えた、ブランクのグレージングユニットとストリップが設けられた本発明によるグレージングユニットとの未加工の遮音性の比較曲線を示す図である。
【図10】3.85mmの厚みを有するブランクのグレージングユニットとストリップが設けられた3.15mmのガラス厚みを備える本発明によるグレージングユニットとの未加工の遮音性の比較曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1から図8は、理解し易くするために一定の縮尺で描かれていない。さらに、様々な図面にわたって同一の参照符号は、同一または類似の要素を表す。
【0035】
本発明は、振動音減衰特性が向上したグレージングユニットであって、少なくとも1つのガラス板と、減衰材料で製作された少なくとも1つの要素を備える少なくとも1つの振動音減衰ストリップとを備えるグレージングユニットに関する。このように、グレージングユニットは騒音を減衰させることを可能にする。
【0036】
ストリップはガラス板の一方の面に固定される。ガラスシートに面するストリップの面は、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積よりも必ず小さい、ガラス板と接触した表面積を有する。
【0037】
このように、ストリップの一部分はガラス板に固定されず、ガラス板の表面区域から分離している。したがって、ストリップのこの部分はガラス板の縁部から突き出ている。このように、ストリップはガラス板上で小さな空間しか要しない。グレージングユニットが閉鎖位置にあるときでも、ストリップ全体が、車両のグレージングユニットのフレームの雨よけシールの下に簡単に配置されることが可能である。
【0038】
したがって、本発明によるグレージングユニットは、ほとんど空間を要せずに騒音を減衰することを可能にする。
【0039】
図1および図2は、少なくとも1つのストリップ2が固定された少なくとも1つのガラス板10を備えるグレージングユニット1を示す。ストリップ2は、ガラス板と接触するストリップの表面積が、ガラス板に面したストリップの面の総表面積よりも必ず小さくなるように、ガラス板に固定される。ストリップ2は、例えば平行六面体である。
【0040】
全ての図面で単一のガラス板が表されている。しかし本発明のグレージングユニットは積層状にされることができ、プラスチックの中間シートが間に挟まれる2つのガラス板を備えることができる。理解し易くするために、本明細書の以下の部分では1つのガラス板についてのみ参照がなされるが、それに限定されると理解されるべきではない。
【0041】
グレージングユニット1は、自動車の本体などの車両本体内に、例えば、側面のグレージングユニット、有利には開閉側面のグレージングユニットを形成するようにドアシェル内に収容されることを目的とする。
【0042】
グレージングユニット1は、両面11と12を有する。一方の面11は車両の内部に面することを目的とし、他方の面12は外的環境の方へ向けられる。ストリップは、車両本体の内側の利用可能空間の理由から、ガラス板の外側面に固定されることが好ましい。
【0043】
加えて、グレージングユニット1は辺縁部分13を有し、これは図1で点線によって境界を示されている。この辺縁部分は、ストリップが装備されたグレージングユニット1が車両に取り付けられた後は、車両本体内に存在するように意図されている。辺縁部分13は、開閉側面のグレージングユニットの場合、底部バンドと呼ばれる。このように、辺縁部分13は、グレージングユニットが車両に取り付けられているとき、グレージングユニットの底部分にあることが好ましい。辺縁部分13は、グレージングユニットを窓調整システムに固定するために本体内に収容されるように意図されていることから、見えなくなることを意図されている。したがって、辺縁部分13は、グレージングユニットのフレームの底部に位置付けられたグレージングユニットの雨よけシールの下になる。これは、グレージングユニットの開閉の程度には関係ない。
【0044】
ストリップ2のガラス板10に固定された部分は、辺縁部分13に固定される。このように、ストリップ2は、グレージングユニットが車両に取り付けられると、視界から隠される。
【0045】
ストリップ2は、特に図2で分かるように、ガラス板10の縁部から突き出る。このことは、辺縁部分13上で空間が節約されることを可能にする。ガラス板10に固定されるストリップ2の表面積は、ガラス板に面するストリップの面の表面積の25%よりも大きいことが好ましく、必ず100%よりは小さくなくてはならない。このように、接触している表面積は、大きな音響減衰を可能にすることにも、ストリップのガラス板への耐久性のある接着を保証することにも充分であると同時に、ガラス板上で空間が節約されるのを可能にするように縮小されている。ガラス板10に固定されるストリップ2の表面積は、70%前後であることがより好ましい。これは、相反する基準(空間の節約、音響減衰、および接着)の間でうまく折り合いを付けることを可能にしている。
【0046】
ストリップ2はシールを形成しない。ストリップ2は好ましくは、グレージングユニットの単一面に沿って配置される。また、ストリップ2は好ましくは、最大でグレージングユニットの長さにわたって延在する。このように、窓調整のレールにてグレージングユニットがスライドする可能性を妨害しない。
【0047】
ストリップ2も、減衰材料で製作された少なくとも1つの要素20を備える。図1および図2の実施形態では、ストリップは減衰材料で製作された単一の要素20を備える。
【0048】
減衰材料で製作された要素20は、20℃で、有利に、グレージングユニットの臨界周波数、またはこの臨界周波数のプラスマイナス30%の範囲内に対応するグレージングユニットの特定の周波数fに対して、0.2よりも大きい損失係数と800MPaよりも大きいヤング率とを有する。
【0049】
減衰材料は、例えば瀝青質材料または炭素系充填ポリマである。
【0050】
減衰材料のヤング率およびその損失係数は粘度分析装置を使用して測定される。
【0051】
知られている方法で、グレージングユニットの臨界周波数fは、関係式
【数1】

によって与えられ、hはグレージングユニットのm単位での厚みである。このように、典型的には、グレージングユニットの臨界周波数は、特にグレージングユニットの厚みに応じて2000Hzから5000Hzの間である。
【0052】
具体的には、車両、特に自動車の可動グレージングユニットについて、遮断を向上させることが望まれる周波数範囲は、グレージングユニットの臨界周波数前後の周波数範囲内に対応することが発見されている。したがって、グレージングユニットの臨界周波数fのプラスマイナス30%である特定の周波数f
【数2】

を選択することが有利である。実際に、車両の外側からグレージングユニットを通る騒音の伝達が最も著しいのがこの臨界周波数前後である。これは、測定から、遮音の顕著な低下によって明らかにされる。したがって、減衰材料の特徴が、とりわけグレージングユニットの振動音減衰を向上させることを可能にする。このように、特定の周波数fは、とりわけグレージングユニットの臨界周波数に対応することができる。
【0053】
このように、グレージングユニットは、それが車両本体とどのように関連していても、本体とは無関係に振動音減衰特性を提供する。減衰材料は、振動エネルギーを消散させるというその役割を完全に果たすが、グレージングユニットに垂直の平面内で引張−圧縮に作用するのではなく、ストリップは、グレージングユニットの平面内で引張−圧縮に作用する。グレージングユニットの平面内の、伸張の作用と呼ぶことが好まれるこの引張−圧縮の作用は、驚くほど効果的であることが判明する。
【0054】
このように、本発明者は、ストリップの材料が減衰性であること(これは損失係数に関連付けられる)、またとりわけストリップが硬質であって伸張の作用を保証すること(これはストリップを構成する材料(複数)のヤング率に関連付けられる)から、振動エネルギーを消散させるためにストリップをグレージングユニットに組み合わせることはなおさら効果的であることを実証している。
【0055】
例えば、図1によると、600mmの長さL1と100mmの幅L2と5mmの厚みeとを有するストリップが、3.85mmの厚みと800mm x 500mmの寸法とを有するガラス板に固定されることができる。幅L2の70%だけがガラス板10に固定されることが好ましい。ストリップの幅の残りの部分(30mm)はガラス板から突き出る。
【0056】
減衰要素20は、ガラス板の面11の一方に固定する面21と自由反対面22とを備える。
【0057】
ガラス板への固定は、減衰要素およびガラスの構成材料のそれぞれと調和性を有する接着手段によって実施される。接着手段は知られているタイプ、例えば自己接着性の手段または熱活性化接着剤で構成された手段である。例えば、ストリップは、ガラス板に面するその面には、両面接着タイプの結合手段を備える。接着手段は、ガラス板に接触するストリップの面の部分にだけあることが好ましい。変形形態として、製造を単純にするために、接着手段は、ガラス板に面するストリップの面の表面全体を覆うようにあり、望まない結合を回避するために、ガラス板に面してそれに接触していないストリップの面の部分に非接着フィルムが貼付される。
【0058】
図3は一変形形態の横断面図を表す。この変形形態では、ストリップは平行六面体ではない。ストリップは、ガラスシートに面するその面の周囲部に刻み目を有する。このT字形状ストリップは音響減衰を実質的に向上させることを可能にする。
【0059】
図4は第2の変形形態の横断面図を示す。ストリップ2は複数の減衰要素20、23、24を備える。
【0060】
ストリップ2の厚みeが大きいほど、減衰は効果を増すことが観察されている。このように、厚みの大きな1つの減衰要素を製造するのではなく、厚みの小さな減衰要素をいくつか製造し、それらを重ねる方が簡単である。これは、ストリップ2の総厚を増大して減衰を向上させることを可能にする。しかし、留意される点として、ストリップ2の総厚は、車両本体の内側の空間の制約によって制限されることがある。
【0061】
それぞれの減衰要素20、23、24のそれぞれの材料は、20℃で、グレージングユニットの臨界周波数のプラスマイナス30%の範囲内に対応するグレージングユニットの特定の周波数fに対して、0.2よりも大きい損失係数と800MPaよりも大きいヤング率とを有する。
【0062】
図5は第3の変形形態の横断面図を表す。ストリップ2は減衰要素20と非減衰硬質中間層要素3とを備え、非減衰硬質中間層要素3は減衰要素20とガラス板の間に挟まれている。
【0063】
非減衰硬質要素3は、0.2未満の損失係数と1600MPaよりも大きなヤング率とを有する材料で構成される。非減衰硬質要素3は、例えばガラスまたはポリカーボネートで製作される。非減衰硬質要素3は、例えば3mmの厚みを有する。様々な要素同士を固定する手段は、前記要素の構成材料に調和性を有するように適合される。
【0064】
図6は第4の変形形態の横断面図を表す。ガラス板10に2つのストリップ2が、ガラス板10の面11と12にそれぞれある状態で接合される。これは、片面にある1つのストリップに対して、減衰を増大させることを可能にする。さらに、ストリップの厚みは、それが車両本体内で収容されなければならない空間の寸法によって制限される。このように、厚みをガラス板の両側に分配することは、より良好な減衰を可能にする。
【0065】
図7は第5の変形形態の斜視図を示す。グレージングユニットは、ガラス板の同一面に、複数の(少なくとも2つの)ストリップ2を備える。それらは並置されても並置されなくても、接しても接さなくともよい。これは、小さなストリップを製造し、それらを必要に応じてガラス板に分配することを可能にし、これによって、例えば、ストリップを備えるグレージングユニットの厚みの配置を、グレージングユニットを受け取るように意図された車両本体内の空間に応じて調整することができる。図7では、2つのストリップ2がガラス板10に固定されている。ガラス板と接触するストリップの表面積は2つのストリップで異なる。
【0066】
図8は第6の変形形態の斜視図を表す。ストリップは、ガラス板の形状に適合された幾何形状を有する。特にストリップは、グレージングユニットの底部バンド13の底縁部14の形状に適合された形状を有する。これは本明細書では直線的ではなく、切り欠き部を備える。
【0067】
このように、ストリップは、例えば台形状であることができる。
【0068】
図1から図8の様々な実施形態は全て組み合わせることができる。
【0069】
これらの実施形態のいずれにおいても、ストリップは、ガラス板の反対側では他の装置に接合されない。
【0070】
さらに、本発明は、このようなグレージングユニットを備える車両、とりわけ自動車の乗客室内の音響および振動による不快を軽減する目的で、本発明によるグレージングユニットを製造する方法であって、以下の
少なくとも1つのガラス板を備えるグレージングユニットを提供するステップと、
減衰材料で製作された少なくとも1つの要素を備える少なくとも1つの振動音減衰ストリップを提供するストリップと、
ガラス板に面する振動音減衰ストリップの面が、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積より必ず小さいガラス板と接触した表面積を有するように、ストリップをグレージングユニットの面の少なくとも一方に固定するステップとを備える方法にも関する。
【0071】
この製造方法は、ほとんど空間を要さずに騒音を減衰することを可能にするグレージングユニットが得られることを可能にする。
【0072】
本発明は、車両、とりわけ自動車の乗客室内の防音方法であって、以下の
車両本体内に、少なくとも1つのガラス板と少なくとも1つの振動音減衰ストリップとを備える振動音減衰特性が向上したグレージングユニットを取り付けるステップにおいて、ストリップは、減衰材料で製作された少なくとも1つの要素を備え、ストリップはグレージングユニットの一方の面に固定され、ガラス板に面するストリップの面は、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積よりも必ず小さいガラス板と接触した表面を有する、ステップを備える方法にも関する。
【0073】
このように、本発明によるグレージングユニットが装備された車両は、あまり嵩高くない騒音減衰装置から利益を受ける。
【0074】
以下の表は、全く限定的なものではない実施例として、本発明のグレージングユニットのストリップのいくつかの減衰材料を挙げている。損失係数およびヤング率は20℃で3100Hzの周波数(3.85mm厚みのグレージングユニットの臨界周波数)で与えられており、これらの値は粘度分析装置を使用して測定される:
【表1】

【0075】
本発明の減衰手段の効率性を実証するために、減衰手段が装備されたグレージングユニットの振動レベルの緩和が、ブランクの同じグレージングユニットとの比較で、グレージングユニットの臨界周波数3700Hzを含む200Hzから6300Hzの周波数の範囲にわたって実証された。
【0076】
空気経由の経路で励起される本発明の減衰手段が装備されたグレージングユニットは、グレージングユニットの振動エネルギーがストリップ2を通って消散されることから、ブランクのグレージングユニットよりも低い振動レベルを有する。したがって、乗客室内の圧力レベルが低く、その結果騒音が緩和される。
【0077】
このように、図9は、一方の本発明の減衰手段が設けられたグレージングユニットと、他方の本発明の手段を有さない同等のグレージングユニットとによって得られた未加工の遮音性の比較曲線を示す。
【0078】
試験で使用されたグレージングユニットは、3.15mmの厚みおよび0.39mの表面積を有するMegane II(Renault SA)のフロントドアの可動グレージングユニットである。このように、その臨界周波数は3700Hzの付近である。
【0079】
曲線Crefはブランクのグレージングユニットに対応する。曲線C1はストリップ2が装備されたグレージングユニットに対応する。ストリップは平行六面体であり、以下の寸法、即ち600mmの長さL1、50mmの幅L2、5.4mmの厚みeを有する。ストリップの材料は、Rieter AutomotiveのIK9709テープである(上記表参照)。このストリップは、ガラスへの結合のためのガラスに適合した両面接着テープが予め貼付された状態で市販されている。
【0080】
ストリップはその表面積の70%がガラス板に固定される。表面積の残りの30%には非接着フィルムが装備される。
【0081】
このグレージングユニットはMegane IIタイプの車両の右フロントドア内に据え付けられ、その他方のグレージングユニットは隔壁を使用して被覆された。このようにして、200Hzから6300Hzの範囲の周波数に対して、3分の1オクターブについての未加工の遮断性が測定された。これらの測定は18℃の周囲温度で実施された。
【0082】
図9の曲線を比較することによって、臨界周波数におけるグレージングユニットの未加工の遮音性が向上されることが証明される(約4000Hzを中心に3分の1オクターブについて3.2dBの差異あり)。
【0083】
この結果、本発明の第1の目的によって、グレージングユニットの臨界周波数域内で(臨界周波数のマイナス30%からプラス30%に及ぶ範囲にわたって)最大の振動エネルギーを消散させることが可能であるが、本発明は、中間周波数を含むより広い範囲の周波数にわたって充分な振動音減衰を保証することも可能にする。具体的には、図9で、本発明のグレージングユニットに関係する遮断曲線C1は、500Hzを超えたところで、ブランクのグレージングユニットに対応する曲線Crefよりも上にあることが分かる。
【0084】
さらに、本発明は、その防音能力を低下させずに、ガラス板(複数)の厚みを縮小することによってグレージングユニットの総重量を低減させることも可能にする。例えば、ガラスの厚みを3.85mmから3.15mmに縮小することは、ガラスの重量を18%低減することを可能にする。20℃で、グレージングユニットの臨界周波数のプラスマイナス30%の範囲内に対応する特定の周波数fに対して、0.2よりも大きい損失係数と800MPaよりも大きいヤング率とを有する減衰材料で製作された要素を有するストリップを加えると、重量を僅か8%加えるだけで、厚みの縮小に関連付けられる防音の低下を補償することを可能にする。このように、同等の防音能力について、グレージングユニットの総重量の10%の節約が得られることができる。
【0085】
図10は、3.85mmの厚みを有する何もブランクのグレージングユニットと、ストリップの設けられた3.15mmのガラス厚みを備える本発明によるグレージングユニットとの未加工の遮音性の比較曲線を示す。
【0086】
試験に使用されたグレージングユニットは、Megane II(Renault SA)のフロントドアの可動グレージングユニットであり、0.39mの表面積を有する。
【0087】
曲線C2refは、3.85mmの厚みを有するブランクのグレージングユニットに対応する。このように、その臨界周波数は3150Hz付近である。
【0088】
曲線C1は、3.15mmのガラス厚みとストリップ2とを備えた本発明によるグレージングユニットに対応する。このように、本発明によるグレージングユニットの臨界周波数は4000Hz付近である。曲線C1は図9の曲線C1と同一である。ストリップは平行六面体であり、以下の寸法、即ち600mmの長さL1、50mmの幅L2、および5.4mmの厚みeを有する。ストリップの材料はRieter AutomotiveのIK9709のテープである(上記表参照)。このストリップは、ガラスへの結合のためのガラスに適合した両面接着テープが予め貼付された状態で市販されている。
【0089】
ストリップは、その表面積の70%がガラス板に固定される。表面積の残りの30%には非接着フィルムが装備される。
【0090】
このグレージングユニットはMegane IIタイプの車両の右フロントドア内に据え付けられ、その他方のグレージングユニットは隔壁を使用して被覆された。このようにして、200Hzから6300Hzの範囲の周波数に対して、3分の1オクターブについての未加工の遮音性が測定された。これらの測定は18℃の周囲温度で実施される。
【0091】
図10の曲線を比較することによって、臨界周波数におけるグレージングユニットの遮音性が向上されることが証明される(臨界周波数を中心に3分の1オクターブについて4.1dBの差異あり)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動音減衰特性が向上されたグレージングユニット(1)であって、
少なくとも1つのガラス板(10)と、
減衰材料で製作された少なくとも1つの要素(20)を備え、ガラス板の一方の面に固定された少なくとも1つの振動音減衰ストリップ(2)とを備え、
ガラス板(10)に面するストリップ(2)の面が、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積よりも必ず小さいガラス板と接触した表面積を有する、グレージングユニット(1)。
【請求項2】
ガラス板と接触したストリップ(2)の表面積が、ガラス板に面するストリップの面の表面積の25%以上である、請求項1に記載のグレージングユニット。
【請求項3】
ガラス板と接触したストリップ(2)の表面積が70%前後である、請求項2に記載のグレージングユニット。
【請求項4】
減衰材料で製作された要素が、20℃で、グレージングユニットの臨界周波数のプラスマイナス30%の範囲内に対応する特定の周波数fに対して、0.2よりも大きい損失係数と800MPaよりも大きいヤング率とを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のグレージングユニット。
【請求項5】
ストリップ(2)がガラス板の反対側の他の装置には接合されない、請求項1から4の一項に記載のグレージングユニット。
【請求項6】
ストリップ(2)がグレージングユニットの長さの大部分にわたって延在する、請求項1から5の一項に記載のグレージングユニット。
【請求項7】
ストリップ(2)が減衰材料で製作された複数の要素(20、23、24)を備える、請求項1から6に記載のいずれか一項に記載のグレージングユニット。
【請求項8】
グレージングユニットの同一面および/またはグレージングユニットの両面に接合された、いくつかのストリップ(2)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のグレージングユニット。
【請求項9】
ストリップ(2)が、減衰材料で製作された少なくとも1つの要素(20)、ならびに、減衰材料で製作された要素(20)とガラス板(10)との間に配置された硬質の中間層要素(3)を備え、硬質の中間層要素が、20℃で、選択された特定の周波数fに対して0.2未満の損失係数と1600MPaよりも大きいヤング率とを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のグレージングユニット。
【請求項10】
ストリップが、ガラス板に面するその面に両面接着タイプの結合手段を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のグレージングユニット。
【請求項11】
本体と請求項1から10のいずれか一項に記載のグレージングユニットとを備え、ストリップ(2)が本体内で視界から隠される、車両、特に自動車。
【請求項12】
グレージングユニットが開閉側面のグレージングユニットである、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
グレージングユニットを備える車両、特に自動車の乗客室内の音および振動による不快を軽減する目的で、請求項1から10のいずれか一項に記載のグレージングユニット(1)を製造する方法であって、以下の、
少なくとも1つのガラス板(10)を備えるグレージングユニットを提供するステップと、
減衰材料で製作された少なくとも1つの要素を備える少なくとも1つの振動音減衰ストリップ(2)を提供するステップと、
ガラス板に面する振動音減衰ストリップ(2)の面が、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積よりも必ず小さい、ガラス板と接触した表面積を有するように、ストリップ(2)をグレージングユニットの面の少なくとも一方に固定するステップとを備える方法にも関する。
【請求項14】
車両、とりわけ自動車の乗客室内の防音方法であって、以下の、
少なくとも1つのガラス板と、少なくとも1つの振動音減衰ストリップ(2)とを備える、振動音減衰特性が向上したグレージングユニット(1)を車両の本体内に取り付けるステップにおいて、ストリップが減衰材料で製作された少なくとも1つの要素(20)を備え、グレージングユニットの一方の面に固定され、ガラス板に面するストリップ(2)の面が、ガラス板に面するストリップの前記面の表面積よりも必ず小さい、ガラス板と接触した表面積を有する、ステップを備える方法。
【請求項15】
グレージングユニットが請求項2から10のいずれか一項に記載の通りである、請求項13に記載の車両乗客室内の防音方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−523981(P2012−523981A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505203(P2012−505203)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050701
【国際公開番号】WO2010/119217
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)