説明

挿入実装型リレー用アダプタ基板およびそれを用いる表面実装型リレー

【課題】挿入実装タイプのリレーを表面実装タイプに変換するにあたって、信頼性を向上する。
【解決手段】底部から延びた端子P1〜P7を実装すべき基板に穿設されたスルーホールに挿通し、その裏側のランドと半田付けして使用される(a)で示す挿入実装タイプのリレー1に対して、(b)で示すアダプタ基板52を用い、前記端子P1〜P7を該アダプタ基板52より短い長さにカットした後、挿入してレーザ溶接することで、(c)で示す表面実装タイプのリレー51に変換する。したがって、端子P1〜P7を屈曲させた場合に生じるようなストレスの発生を防止することができる。これによって、リレー1の基台と筐体38との接合部や、端子孔の周囲等にクラックが生じ、気密性が損なわれてしまうことを防止することができ、信頼性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入実装型リレーを表面実装型リレーに変換することができる挿入実装型リレー用アダプタ基板およびそれを用いる前記表面実装型リレーに関する。
【背景技術】
【0002】
前記挿入実装型リレーは、本件出願人による特許文献1を始め、多数提案されている。図15は、その挿入実装型リレー1の典型的な構造を示す分解斜視図である。この挿入実装型リレー1は、高周波リレーであり、大略的に、接点機構11に、その接点機構11を駆動する駆動機構21が並列に配置されて構成されている。前記接点機構11は、シールドボックス12内に可動接点13,14が設けられ、その可動接点13,14が前記駆動機構21によって参照符号X方向に変位駆動されることで、固定接点15,16;16,17と接触/離反し、高周波信号の切換えを行う。したがって、前記可動接点13,14が中心導体、シールドボックス12が外部導体とした同軸線路を構成する。前記可動接点13,14は、前記駆動機構21によって変位駆動される駆動部材18,19にそれぞれ保持されている。前記各固定接点15,16,17は、シールドボックス12内で電気的に絶縁されて立設され、前記可動接点13,14とは反対側が、基台20の裏面から突出して、端子P1,P2,P3となる。
【0003】
そして、中間の固定接点16(端子P2)は、前記可動接点13,14の何れとも接触できる共通接点となる。一方、両端の固定接点15,17(端子P1,P3)は、それぞれ前記可動接点13,14とだけ接触できる個別接点となる。さらに、固定接点15は駆動機構21の非駆動時に可動接点13が接触して固定接点16に接続されるノーマリーオンの接点となり、固定接点17は駆動機構21の非駆動時に可動接点14が離反して固定接点16から遮断されるノーマリーオフの接点となっている。前記各固定接点15,16,17の端子P1,P2,P3間には、接地端子P4,P5が設けられている。
【0004】
前記駆動機構21は、電磁石22と変位部材23とを備えて構成される。電磁石22は、コイル24の巻回されたボビン25内に鉄心26が挿通されるとともに、その鉄心26の一方の端部と他方の端部との間に、継鉄27によって磁路が形成されて構成されている。前記コイル24の各端部は、外部から励磁電流が与えられる端子P6,P7にそれぞれ接続されている。
【0005】
一方、前記変位部材23は、前記駆動部材18,19を介して可動接点13,14を支持するカード31と、前記カード31の一端に設けられる磁石32と、その磁石32の両端にそれぞれ接触し、前記鉄心26を挟み込む一対の接極子33,34と、前記カード31の他端から延びる一対の平衡ばね35,36と、その平衡ばね35,36の他端を前記基台20に取付ける平衡ばね保持板37とを備えて構成される。したがって、前記電磁石22が消磁/励磁することで、カード31は、平衡ばね35,36部分が変形して前記X方向に変位し、前記可動接点13,14を変位駆動することができる。前記基台20内に、前記固定接点15,16,17、シールドボックス12および電磁石22を収納し、電磁石22上に変位部材23を搭載した後、筐体38が被せられる。
【特許文献1】実公平7−24769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような挿入実装型リレー1を表面実装型リレーに変換して使用する場合、典型的な従来技術では、図16で示すように端子P1〜P7をL字に曲折し、必要な長さに切断した後、実装すべき基板のランドに搭載し、リフロー半田などによって取付けられている。このため、曲げ加工の際に、大きなストレスが加わり、基台20と筐体38との接合部や、前記端子P1〜P7が圧入される基台20の端子孔の周囲等にクラックが生じ、気密不良(リーク不良)が生じる可能性がある。その場合、侵入した湿気等による錆や腐食によって、接触不良や動作不良を招くという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、信頼性を向上することができる挿入実装型リレー用アダプタ基板およびそれを用いる表面実装型リレーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板は、挿入実装タイプのリレーを表面実装タイプに変換するためのアダプタ基板であって、スルーホールが穿設される基板本体と、一端が前記スルーホールの内周面に露出して前記スルーホールに挿入された前記挿入実装タイプのリレーの端子と電気的および機械的に接続される接続部となり、中間部分が前記基板本体内または前記基板本体の少なくとも一方の表面に形成される導体パターンとなり、他端が前記基板本体の端面から離反方向に引出され、実装すべき基板のランドに搭載される端子部分となるリード端子とを含み、前記リード端子を前記基板本体にインサート成型して成ることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、底部から延びた端子を実装すべき基板に穿設されたスルーホールに挿通し、その実装すべき基板の裏側のランドと半田付けして使用される挿入実装タイプのリレーに対して、スルーホールが穿設される基板本体と、一端が前記スルーホールの内周面に露出して前記スルーホールに挿入された前記挿入実装タイプのリレーの端子と電気的および機械的に接続される接続部となり、中間部分が前記基板本体内または前記基板本体の少なくとも一方の表面に形成される導体パターンとなり、他端が前記基板本体の端面から離反方向に引出され、前記実装すべき基板のランドに搭載される端子部分となるリード端子とを備えて構成されるアダプタ基板を用意し、該アダプタ基板を実装すべき基板とリレーとの間に介在することで、挿入実装型タイプのリレーを表面実装タイプに変換する。そして、前記リード端子が1枚のリードフレームから打抜かれ、必要に応じてプレス加工で曲折された後、前記基板本体にインサート成型されてアダプタ基板が作製された後、前記挿入実装タイプのリレーの端子が該アダプタ基板より短い長さにカットされ、スルーホールに挿入されて前記接続部とアーク溶接やレーザ溶接などで電気的および機械的に接続されることで、前記挿入実装タイプのリレーを表面実装タイプに変換することができる。
【0010】
したがって、挿入実装タイプのリレーを表面実装タイプに変換するにあたって、端子を屈曲させた場合に生じるようなストレスの発生を防止することができる。これによって、リレーの基台と筐体との接合部や、前記端子が圧入される基台の端子孔の周囲等にクラックが生じ、気密性が損なわれてしまうことを防止することができ、信頼性を向上することができる。また、基板本体を先に成型した後、スルーホール等に導電層を形成してアダプタ基板を作製した場合には、半田付け端子部分の剥がれなど、信頼性に不安が生じたり、外観上も、端面に半田付けパターンが形成されるなどして、既存の表面実装型の部品との違和感が生じるのに対して、インサート成型で作製することで、そのような問題を無くすことができる。
【0011】
また、本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板では、前記導体パターンの少なくとも一部は、実装すべき基板側に形成されるパターンと立体交差するように、前記基板本体内またはリレー側の表面との少なくとも一方に形成されることで、前記リレーの端子位置変換を行うことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、リレーと実装すべき基板との間にアダプタ基板を介在するにあたって、前記リード端子において、リレーの端子と電気的および機械的に接続される接続部と前記実装すべき基板に半田付けされる端子部分との間を連結する導体パターンの少なくとも一部を、前記基板本体内またはリレー側の表面との少なくとも一方に形成することで、前記リレーの端子位置変換を行う。詳しくは、前記実装すべき基板側に形成される高周波信号のパターンとリレーの駆動信号とのパターンや、高周波信号のパターン同士の少なくとも一部を、前記導体パターンを使って立体交差させる。これによって、リレーの一方の端部側において一直線上に配置される端子の内、任意の端子を、前記アダプタ基板における導体パターンによって、前記実装すべき基板側に形成されるパターンを跨いで他方の端部側まで引回すことで、前記端子位置変換を行うことができる。
【0013】
したがって、前記の挿入実装タイプのリレーの表面実装タイプのリレーへの変換とともに、リレーの各端子と、前記実装すべき基板上に実装されるアンプなどの他の素子との間の接続を、前記実装すべき基板上のパターンのみによって行うことができ、該実装すべき基板に、ジャンパー線やコネクタなどを用いた基板外の迂回経路が不要となり、低コストで、良好な高周波特性を得ることができる。
【0014】
さらにまた、本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板は、前記基板本体において、リレー側の面には前記導体パターンを除き、GNDパターンが形成されることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、前記基板本体のリレー側の面にできるだけGNDパターンを形成することで、リレー内のシールド部材などとGNDとを近付けることができる。
【0016】
したがって、挿入損失や反射特性などの高周波特性を改善することができ、高周波リレーに好適である。
【0017】
また、本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板は、前記リレーおよび実装すべき基板のインピーダンスに適合して、インピーダンスが設定されることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、前記リード端子とGNDパターンとの間隔や、基板本体の誘電率が異なることで、該アダプタ基板におけるインピーダンスが変化するので、そのインピーダンスをリレーおよび実装すべき基板のインピーダンスに適合して変化させる。たとえば、リレーと実装すべき基板とのインピーダンスのずれを緩和するようなインピーダンスに設定する。また、インピーダンスの異なる該アダプタ基板を複数種類用意しておき、所望とするインピーダンスに対応した物を使用するようにしてもよい。
【0019】
したがって、端子形状だけでなく、インピーダンスも適合させることができる。
【0020】
さらにまた、本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板では、前記リレーは高周波リレーであることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、上述のように高周波特性を改善したり、インピーダンスを適合させることができるアダプタ基板であるので、高周波リレーに特に好適である。
【0022】
また、本発明の表面実装型リレーは、前記の挿入実装型リレー用アダプタ基板を用いることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、挿入実装型リレー用として作製されたリレーを、信頼性を損なうことなく表面実装型リレーに転用し、共用化によって低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板は、以上のように、底部から延びた端子を実装すべき基板に穿設されたスルーホールに挿通し、その実装すべき基板の裏側のランドと半田付けして使用される挿入実装タイプのリレーに対して、スルーホールが穿設される基板本体と、一端が前記スルーホールの内周面に露出して前記スルーホールに挿入された前記挿入実装タイプのリレーの端子と電気的および機械的に接続される接続部となり、中間部分が前記基板本体内または前記基板本体の少なくとも一方の表面に形成される導体パターンとなり、他端が前記基板本体の端面から離反方向に引出され、前記実装すべき基板のランドに搭載される端子部分となるリード端子とを備えて構成されるアダプタ基板を用意し、該アダプタ基板を実装すべき基板とリレーとの間に介在することで、挿入実装型タイプのリレーを表面実装タイプに変換するとともに、前記リード端子を前記基板本体にインサート成型してアダプタ基板を作製する。
【0025】
それゆえ、挿入実装タイプのリレーを表面実装タイプに変換するにあたって、端子を屈曲させた場合に生じるようなストレスの発生を防止することができる。これによって、リレーの基台と筐体との接合部や、前記端子が圧入される基台の端子孔の周囲等にクラックが生じ、気密性が損なわれてしまうことを防止することができ、信頼性を向上することができる。また、基板本体を先に成型した後、スルーホール等に導電層を形成してアダプタ基板を作製した場合には、半田付け端子部分の剥がれなど、信頼性に不安が生じたり、外観上も、端面に半田付けパターンが形成されるなどして、既存の表面実装型の部品との違和感が生じるのに対して、インサート成型で作製することで、そのような問題を無くすことができる。
【0026】
また、本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板は、以上のように、リレーと実装すべき基板との間にアダプタ基板を介在するにあたって、前記リード端子において、リレーの端子と電気的および機械的に接続される接続部と実装すべき基板に半田付けされる端子部分との間を連結する導体パターンの少なくとも一部を、基板本体内またはリレー側の表面との少なくとも一方に形成することで、前記リレーの端子位置変換を行う。
【0027】
それゆえ、前記の挿入実装タイプのリレーの表面実装タイプのリレーへの変換とともに、リレーの各端子と、前記実装すべき基板上に実装されるアンプなどの他の素子との間の接続を、前記実装すべき基板上のパターンのみによって行うことができ、該実装すべき基板に、ジャンパー線やコネクタなどを用いた基板外の迂回経路が不要となり、低コストで、良好な高周波特性を得ることができる。
【0028】
さらにまた、本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板は、以上のように、基板本体のリレー側の面にできるだけGNDパターンを形成することで、リレー内のシールド部材などとGNDとを近付ける。
【0029】
それゆえ、挿入損失や反射特性などの高周波特性を改善することができ、高周波リレーに好適である。
【0030】
また、本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板は、以上のように、前記リード端子とGNDパターンとの間隔や、基板本体の誘電率が異なることで、該アダプタ基板におけるインピーダンスが変化するので、そのインピーダンスをリレーおよび実装すべき基板のインピーダンスに適合して変化させる。
【0031】
それゆえ、端子形状だけでなく、インピーダンスも適合させることができる。
【0032】
さらにまた、本発明の挿入実装型リレー用アダプタ基板は、以上のように、高周波特性を改善したり、インピーダンスを適合させることができるアダプタ基板であるので、前記リレーを高周波リレーとする。
【0033】
それゆえ、特に好適に実施することができる。
【0034】
また、本発明の表面実装型リレーは、以上のように、前記の挿入実装型リレー用アダプタ基板を用いる。
【0035】
それゆえ、挿入実装型リレー用として作製されたリレーを、信頼性を損なうことなく表面実装型リレーに転用し、共用化によって低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1および図2は、本発明の実施の一形態に係る表面実装型リレー51の構造を示す斜視図である。注目すべきは、本実施の形態の表面実装型リレー51は、前述の図15で示す挿入実装型の高周波リレー1に、アダプタ基板52が取付けられて成ることである。
【0037】
図3は前記アダプタ基板52となるアダプタ基板52a,52bの上面図であり、図4はその底面図である。これらのアダプタ基板52a,52bの基板本体53には、前記各端子P1〜P7が挿通されるスルーホールH1〜H8が穿設されている。スルーホールH8は、リレー1がラッチング型であるときに、その端子に対応したものである。
【0038】
前記スルーホールH1〜H8の内周面には、対応するリード端子F1〜F8の一端に形成される接続部F1a〜F8aが露出している。前記接続部F1a〜F8aは、中間部分の導体パターンF1b〜F8bを介して、該リード端子F1〜F8の他端に設けられる端子部分F1c〜F8cと電気的に接続される。前記シールドボックス12の接地端子P4,P5に対応したリード端子F4,F5にはまた、前記スルーホールH4,H5の周囲の接続部F4a,F5aから、前記導体パターンF1b〜F8bが引出される部分以外はGNDパターンL4,L5が延設されている。リード端子F9はダミー端子である。
【0039】
また、共通接点となる端子P2に対応したリード端子F2の導体パターンF2bは、前記端子P1〜P3が一直線上に配置される一方の端部側から他方の端部側に引回され、これによって実装すべき基板側に形成される高周波信号のパターンや該リレー1の駆動信号とのパターンと立体交差して、前記端子P2の位置変換を行う。
【0040】
このリード端子F1〜F8は、1枚のリードフレームから打抜かれ、プレス加工で曲折されることで、図3(c)および図4(b)で示すような形状に加工される。その後、前記スルーホールH1〜H8の部分に金型のピンが挿通するように成型器にセットされ、前記基板本体53となる樹脂にインサート成型されることでアダプタ基板52a,52bが完成する。
【0041】
図3(a)で示すアダプタ基板52aは、前記接続部F1a〜F8aおよびGNDパターンL4,L5が前記基板本体53の高周波リレー1側の表面に露出している。これに対して、図3(b)で示すアダプタ基板52bは、前記接続部F1a〜F8aおよびGNDパターンL4,L5が前記基板本体53内に埋込まれている。したがって、アダプタ基板52a,52bは、上面側から見た形状は異なるが、底面から見た形状は同様であり、共に図4(a)で示す。以下、これらのアダプタ基板52a,52bを特に区別しない場合は、参照符号52で示す。
【0042】
図5は、上述のようにして作製されたアダプタ基板52を挿入実装型の高周波リレー1に取付ける工程を説明するための斜視図である。図5(a)は、前記図15と同様に挿入実装型リレー1を示し、図5(c)ならびに図1で示す表面実装型リレー51とするには、先ず図5(b)で示すように、前記基台20の底部から延びた端子P1〜P7を、アダプタ基板52より短い長さ、たとえばスルーホールH1〜H7の深さの2/3程度にカットする。その後、前記スルーホールH1〜H7内に、前記の長さの端子P1〜P7が挿入され、アーク溶接やレーザ溶接などで電気的および機械的に接続されることで、前記端子P1〜P7と対応する接続部F1a〜F7aとが電気的に接続されるとともに、高周波リレー1とアダプタ基板52とが機械的に接合され、表面実装型リレー51となる。
【0043】
そして、このアダプタ基板52は、リレー1および実装すべき基板(マザーボード)のインピーダンスに適合して、インピーダンスが設定される。具体的には、図3(c)で示す前記共通接点16となる端子P2に対応したリード端子F2の導体パターンF2bの幅W1およびその導体パターンF2bとGNDパターンL4,L5との間隔W2、ならびに基板本体53の厚さや誘電率が異なることで、該アダプタ基板52におけるインピーダンスが変化するので、そのインピーダンスをリレー1および前記実装すべき基板のインピーダンスに適合して変化する。たとえば、リレー1と実装すべき基板とのインピーダンスのずれを緩和するようなインピーダンスに設定する。また、インピーダンスの異なる該アダプタ基板52を複数種類用意しておき、所望とするインピーダンスに対応した物を使用するようにしてもよい。たとえば、テレビジョンチューナにおいてテレビジョン信号の切換えに使用される場合には75Ω、無線中継装置の混合経路や分岐経路で使用される場合には50Ωである。
【0044】
したがって、このように挿入実装タイプのリレー1を表面実装タイプのリレー51に変換するにあたって、アダプタ基板52を実装すべき基板とリレー1との間に介在することで、端子P1〜P7を屈曲させた場合に生じるようなストレスの発生を防止することができる。これによって、リレー1の基台20と筐体38との接合部や、前記端子P1〜P7が圧入される基台20の端子孔の周囲等にクラックが生じ、気密性が損なわれてしまうことを防止することができ、信頼性を向上することができる。また、挿入実装タイプと表面実装タイプとでリレー1を共用化して、低コスト化を図ることができる。
【0045】
また、アダプタ基板52の、特に図3(a)で示すようにリレー1側の表面にGNDパターンL4,L5を形成することで、図6と図7とで示すように、前記シールドボックス12とGNDパターンL4,L5との距離が近くなる。図6は、図3(a)で示すようにリレー1側の表面にGNDパターンL4,L5を形成したアダプタ基板52aを用いて挿入実装タイプのリレー1を表面実装タイプのリレー51に変換した状態を示す断面図であり、図7は挿入実装タイプのリレー1を、前記図16で示すように、その端子P1〜P7を曲折させて、実装すべき基板(マザーボード)57に装着した状態を示す断面図である。これらの図6および図7から明らかなように、図6のアダプタ基板52aを用いる場合には、リレー1の底面が直ぐGNDパターンL4,L5に対向するのに対して、図7の曲折形成の場合には、曲げ治具の関係で、基板57に形成されているGNDパターンとの間に、その曲折部分の寸法、たとえば0.7〜1mmが必要になる。
【0046】
そこで、図8および図9に、本件発明者の実験結果を示す。これらは、リレー1を前記無線中継装置に対応した50Ωのインピーダンスとして、共通接点となる前記端子P2から高周波信号を入力した場合のタイム・ドメイン・リフレクト特性を示すグラフであり、図8は図6、すなわちアダプタ基板52aを用いる場合に、図9は図7、すなわち端子P1〜P7を曲折させる場合に対応している。また、図8および図9において、丸で囲って示す数字は、同様に図6および図7において付した数字に対応し、すなわち前記端子P2を介する基板52a,57(GND)からの距離を示す。
【0047】
一般に、シールド板に囲まれない端子部分はインピーダンスが構造上大きくなるが、このミスマッチング部分をGND面に近付けることでインピーダンスを小さくできる。したがって、図9から明らかなように、GNDからの距離が遠いと端子P2のインピーダンスが大きくなり、それに連なる固定接点16と可動接点14との境界で大きな反射が生じているのに対して、GNDからの距離が近いと、図8で示すように、反射が小さく、インピーダンスの大きなずれも無くなっている。こうして、アダプタ基板52のリレー1側の面にできるだけGNDパターンL4,L5を形成しておくことで、VSWR、インサーションロス、アイソレーション、インピーダンスマッチングなどの高周波特性を向上することができ、高周波リレーに好適である。
【0048】
また、アダプタ基板52のマッチングを設定(たとえば、前記50Ω)より小さく設計することで、このミスマッチングの影響をより小さくすることができる。こうして、端子形状だけでなく、リレー1とアダプタ基板52とでトータルのインピーダンスマッチングを実現できるとともに、各種の基板(マザーボード)のインピーダンスズレの影響も抑制することができる。
【0049】
さらにまた、本実施の形態では、前記アダプタ基板52を、図3および図4で説明したように、インサート成型によって作製している。これに対して、図10で示す表面実装型リレー51’のように、アダプタ基板52’を、スルーホールH1〜H8を有する基板本体53’の端面に、半田付けパターンF1’〜F8’をメッキなどで形成することで作製することも考えられる。前記半田付けパターンF1’〜F8’は、基板本体53’のリレー1側の表面または実装すべき基板側の表面に形成された導体パターンを介して、前記スルーホールH1〜H8の内周面に形成された導電層と電気的に接続される。
【0050】
しかしながら、このようなアダプタ基板52’を用いる場合、スルーホールH1〜H7に対して前記端子P1〜P7をリフローによって半田付けして表面実装型リレー51’を作製した後、さらにその表面実装型リレー51’を実装すべき基板に半田付けすることになる。このため、後の半田付けで先の半田付けが剥がれないように、先の半田付けに溶融温度の高い半田を使用したり、アダプタ基板52’とリレー1とのずれを抑えたりするなどの対策が必要になる。これに対して本実施の形態のように前記アダプタ基板52をインサート成型によって作製することで、前述のように端子P1〜P7をアーク溶接やレーザ溶接などで電気的および機械的に接続することができ、半田付けに対する問題は無くなり、コスト面および信頼性の面でも優れている。
【0051】
また、前記アダプタ基板52’の場合、その作製方法は、図11で示すようになる。すなわち、大きな基板55に、ドリルなどで前記スルーホールH1〜H8の穿設を行い、続いて、金属メッキ、スパッタ、印刷などによってその内周面へ導電層を形成するとともに、導体パターンを形成する。この時、前記半田付けパターンF1’〜F8’となる部分にもスルーホールおよび導電層を形成しておき、ミシン目56に沿って分割することで、その外周縁の導電層が外部に露出し、該アダプタ基板52’の端面に形成された前記半田付けパターンF1’〜F8’となる。しかしながら、このようにして作製すると、前記ミシン目56に沿って分割する際に、カッター刃が前記半田付けパターンF1’〜F8’を引っ掛けて剥がれてしまい、信頼性が低下する可能性がある。このため、実際は各アダプタ基板52’を隣接して形成することはできず、周囲に余白となる領域が必要となる(前記剥がれが、その余白側に生じるように、前記カッター刃を余白側に寄せて切断する。)。これに対して本実施の形態のように前記アダプタ基板52をインサート成型によって作製した場合、そのような不具合がない。
【0052】
さらにまた、外観上も、アダプタ基板52’では端面に半田付けパターンF1’〜F8’が形成されるのに対して、本実施の形態のアダプタ基板52では、ランドに搭載される端子部分F1c〜F8cを有するので、既存の表面実装型の部品との違和感もない。
【0053】
また、前述のように共通接点となる端子P2に対応したリード端子F2の導体パターンF2bを実装すべき基板側のパターンと立体交差してアダプタ基板52の反対側の端部まで引回し、前記端子P2の位置変換を行うことで、図12で示すように、実装すべき基板72上に実装されるアンプ(LNA)などの他の素子との間の接続を、前記実装すべき基板72上のパターン72,74のみによって行うことができ、該実装すべき基板72に、図13で示すようなジャンパー線89,90,91やコネクタなどを用いた基板82外の迂回経路が不要となり、低コストで、良好な高周波特性を得ることができる。図13は、前記立体交差をさせないアダプタ基板を用いた高周波リレー51’を搭載した高周波モジュール81の構造を示す図である。
【0054】
具体的には、前記図12および図13は、2つの高周波リレー51,51’、1つのアンプ(LNA)および高周波リレー用基板72,82をそれぞれ備えて構成され、アンプ(LNA)を介するライン74,84と、スルーライン73,83とを切換えるものである。なお、図12で用いる高周波リレー51Rは、基本的に図15で示す高周波リレー1の構造となっているが、リレー内部のシールド構造で、ノーマリーコンタクトの接点(図15の例では固定接点15(端子P1))とノーマリーオフの接点(図15の例では固定接点17(端子P3))とが相互に逆に設けられている。
【0055】
したがって、図13で示す高周波モジュール81では、駆動信号のパターン85,86と、前記端子P2に対応した基板82上のパターン87,88とは交差することになるので、ジャンパー線89,90が必要になるのに対して、本実施の形態の高周波モジュール71では、駆動信号のパターン75,76と前記導体パターンF2bとは、前述のように立体交差によって、相互に接触することなく直交しており、前記ジャンパー線89,90が不要になり、低コストで、良好な高周波特性を得ることができる。また、2種類の高周波リレー51と51Rとを用意し、それらを一対として高周波モジュール71に使用することで、ノーマリーコンタクトの接点(P1,P1’)同士およびノーマリーオフの接点(P3,P3’)同士が相互に対向することになり、分岐した2つの信号経路73,74を相互に交差させなくすることができ、これによっては前記図13で示すジャンパー線91を不要にすることができる。
【0056】
上述の実施の形態では、リード端子F1〜F8は、プレス加工でクランク状に曲折され、基板71に実装される際には、リレー51,51Rの底面が該基板71上に搭載されるようになっているけれども、基板71にリレーに対応した孔が形成されている場合には、図14で示すアダプタ基板52cのように、曲折されていなくてもよい。このアダプタ基板52cは、前述のアダプタ基板52aに対応したもので、基板本体53のリレー1側の表面にリード端子F1〜F8およびGNDパターンL4,L5が形成されている。
【0057】
ここで、特表2006−523001号公報には、リレーの基台にパターンが形成されているが、そのパターンは、固定接点を成すものや、コイルへの給電線となるものであり、本発明とは、基板を用いている点が類似しているだけで、そのパターンの機能は全く異なるものである。具体的には、本発明では、表面実装の場合にアダプタ基板52が介挿され、挿入実装の場合にはアダプタ基板52は用いられず、従来とおりリレー1の端子P1〜P7がその基板(マザーボード)の端子孔に直接差込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の一形態に係る表面実装型リレーの構造を示す上面側から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る表面実装型リレーの構造を示す底面側から見た斜視図である。
【図3】図1および図2で示す表面実装型リレーに用いられるアダプタ基板の構造を説明するための上面側から見た斜視図である。
【図4】図1および図2で示す表面実装型リレーに用いられるアダプタ基板の構造を説明するための底面側から見た斜視図である。
【図5】本発明の実施の一形態に係る表面実装型リレーの組立て工程を説明するための斜視図である。
【図6】本実施の形態で挿入実装タイプのリレーを表面実装タイプのリレーに変換した状態を示す断面図である。
【図7】挿入実装タイプのリレーの端子を曲折させて、実装すべき基板に表面実装した状態を示す断面図である。
【図8】図6のタイム・ドメイン・リフレクト特性を示すグラフである。
【図9】図7のタイム・ドメイン・リフレクト特性を示すグラフである。
【図10】他に考えられる構造例のアダプタ基板を用いた表面実装型リレーの構造を示す底面側から見た斜視図である。
【図11】図10で示すアダプタ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図12】本発明の実施の一形態に係るアダプタ基板を用いる表面実装型リレーを搭載した高周波モジュールの構造を示す上面図である。
【図13】さらに他に考えられる構造例のアダプタ基板を用いる表面実装型リレーを搭載した高周波モジュールの構造を示す上面図である。
【図14】図1および図2で示す表面実装型リレーに用いられるアダプタ基板の他の構造を説明するための上面側から見た斜視図である。
【図15】挿入実装型リレーの典型的な構造例を示す分解斜視図である。
【図16】挿入実装型リレーを表面実装する場合の典型的な従来技術を示す側面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 挿入実装型リレー
11 接点機構
12 シールドボックス
13,14 可動接点
15,16,17 固定接点
18,19 駆動部材
20 基台
21 駆動機構
22 電磁石
23 変位部材
24 コイル
25 ボビン
26 鉄心
27 継鉄
31 カード
32 磁石
33,34 接極子
38 筐体
51,51R 表面実装型リレー
52,52a,52b,52c アダプタ基板
53 基板本体
72 実装すべき基板(マザーボード)
L4,L5 GNDパターン
F1〜F8 リード端子
F1a〜F8a 接続部
F1b〜F8b 導体パターン
F1c〜F8c 端子部分
H1〜H8 スルーホール
P1〜P7 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入実装タイプのリレーを表面実装タイプに変換するためのアダプタ基板であって、
スルーホールが穿設される基板本体と、
一端が前記スルーホールの内周面に露出して前記スルーホールに挿入された前記挿入実装タイプのリレーの端子と電気的および機械的に接続される接続部となり、中間部分が前記基板本体内または前記基板本体の少なくとも一方の表面に形成される導体パターンとなり、他端が前記基板本体の端面から離反方向に引出され、実装すべき基板のランドに搭載される端子部分となるリード端子とを含み、
前記リード端子を前記基板本体にインサート成型して成ることを特徴とする挿入実装型リレー用アダプタ基板。
【請求項2】
前記導体パターンの少なくとも一部は、実装すべき基板側に形成されるパターンと立体交差するように、前記基板本体内またはリレー側の表面との少なくとも一方に形成されることで、前記リレーの端子位置変換を行うことを特徴とする請求項1記載の挿入実装型リレー用アダプタ基板。
【請求項3】
前記基板本体において、リレー側の面には前記導体パターンを除き、GNDパターンが形成されることを特徴とする請求項1または2記載の挿入実装型リレー用アダプタ基板。
【請求項4】
前記リレーおよび実装すべき基板のインピーダンスに適合して、インピーダンスが設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の挿入実装型リレー用アダプタ基板。
【請求項5】
前記リレーは高周波リレーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の挿入実装型リレー用アダプタ基板。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の挿入実装型リレー用アダプタ基板を用いることを特徴とする表面実装型リレー。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−226724(P2008−226724A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65472(P2007−65472)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)