説明

捕獲用竿及び捕獲法

【課題】 昆虫などの小動物を捕獲網により直接捕獲するに比し、昆虫などの小動物を高能率に捕獲することができる捕獲用竿を提供することを目的とする。
【解決手段】 一端を尖端部1aに形成した長尺の中空竿1と該中空竿1の長さを少なくとも等しい長さを有し且つ該中空竿1内に前後動自在に嵌挿した可動杆2とから成る捕獲用竿A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫類、小型爬虫類などの小動物の捕獲に用いる竿及び捕獲法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昆虫採集に捕虫網を使用する場合、例えば、草思社発行の奥本大三郎・岡田朝雄共著「楽しい昆虫採集」に記載されているように、樹の幹に潅木の茂みの木や草などに止まっているカブトムシやバッタ、キリギリスなどの昆虫を取るには、掬い網採集法(スウィーピング)がある。即ち、止まっている昆虫を直接網で掬い取る方法である。また、捕虫網として特殊な形状のビーティングネットを木の枝や茂みの下に広げて、棒で上から叩いて落ちてくる昆虫を捕獲する叩き網採集法がある。
【非特許文献1】草思社 1992年5月15日 第3版、奥本大三郎・岡田朝雄「楽しい昆虫採集」P93〜94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の非特許文献1に記載の掬い網採集法では、捕虫網で掬い取る方法は、捕獲率が低い。また、叩き網採集法では、捕集作業が煩わしいばかりでなく、人が近づく気配で昆虫が逃げ出すなどにより捕虫率が低下する。
また、救い網を用い、蛙やトカゲなどの小動物を捕獲することも同様にその捕獲率は低い。
そこで、本願の発明者等は、先ず、長尺の竿の先を尖らし、その尖端に、特定の昆虫の好む餌を突き刺した状態で、例えば、草叢に止まっている例えば、バッタの近くまで草叢の隙間から該棒の尖端を徐々に差し出し、その餌にその香りなどにより昆虫を誘引して乗り移らせ、摂食中に、その前方から捕虫網を該昆虫に被せて捕獲することを試みた。狙ったバッタが該餌に乗り移る誘引率は98%と高いが、これに捕虫網を被せる過程で瞬時に逃げ去るか、被せた後は、捕虫網の中に竿の先端部が挿入された状態となるので、該網の開口面側を手で閉じ難く、その間に、バッタはその開放面から外部へ逃げ出してしまい、結局、その捕獲率は、約50%位に低下した。
本願の発明は、この竿の尖端に餌を突き刺し、昆虫や蛙、トカゲなどの小動物を乗り移らせて捕獲する式の竿を改良し、上記従来の課題を解決し、その捕獲率を著しく向上し得る捕獲用竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、一端を尖端部に形成した長尺の中空竿と該中空竿の長さと少なくとも等しい長さを有し且つ該中空竿内に前後動自在に嵌挿した可動杆とから成る捕獲用竿に存する。
更に本発明は、上記の発明において、該長尺の中空竿に少なくとも1個所に窓を開口したことを特徴とする請求項1に記載の捕獲用竿。
更に本発明は、捕獲法を提供するもので、本発明の前記の捕獲用竿の該中空筒の尖端部に取り付けた餌に捕獲対象の小動物を乗り移らせた後、該捕獲用竿の該尖端部を、受け容器の上方に移動させ、その位置で、該可動杆を前進させ該餌を押し該尖端部から該餌を離脱させ、該小動物と共に該受け容器内へ落下させることを特徴とする捕獲法。
更に本発明は、上記の捕獲法において、該受け容器は、網本体の深さ方向の中間部の全周を、柔軟で且つ滑性を有する面材で構成して成る捕獲用網であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に係る発明によれば、該捕獲竿を上記のように構成したので、該中空筒の尖端部に取り付けた餌に捕獲すべき小動物が乗り移った後、該可動杆を前進させ、該尖端部から餌を押し離脱させることができるので、これにより、摂食中の小動物は、該餌の落下と共に落下させることができ、捕虫網、カゴ、その他の適当な容器で受けて捕獲することができる。
請求項2に係る発明によれば、該中空筒に窓を設けたので、該捕獲用竿を握っている手の親指の腹で該窓を介してその内部の可動杆を抑え乍ら該可動杆を該中空筒内を摺動せしめることが可能となるため、捕獲に当たり、適当な時点でこれを前進させて該中空筒の該尖端部に差し込まれている餌を前方へ押し該尖端部から脱落させる操作を容易になし得られる。
請求項3に係る発明によれば、該捕獲用竿の先端の餌に乗り移った小動物を略100%の確率で該受け容器内に落下捕獲することができる。
請求項4に記載の発明に係る構成の捕獲用網によれば、落下してくる小動物を受容後、上向きの開口面を反転させ閉塞し、捕獲を確実にすることができるばかりでなく、該網内に捕獲された小動物は、その網の底面から這い上がっても、その中間に位置する滑性材面があるので、それ以上這い上がることができないので、網から外部に逃げ出すことが防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の1例の捕獲用竿を添付図面に基づいて説明する。図1〜図3において、参照符号Aは本発明の捕獲用竿を示す。
図1は、該捕獲用竿Aの平面図を示す。該捕獲用竿Aは、下記に詳述する長尺の中空筒1と該中空筒1内にその長さ方向に、前後動自在に嵌挿された可動杆2とから成る。図2は、図1に示す該捕獲用竿Aの一部の縦断面図、更に詳細には、該捕獲用竿Aの一部を構成する中空筒1をその全長に亘り、その中心軸線に沿って裁断した縦断面図を示す。図3は、図1示の該捕獲用竿のI-I線截面図を示す。
該捕獲用竿Aを構成する該中空筒1及び該可動杆2は、各種の硬質合成樹脂製金属製のいずれでもよく、その両者とも合成樹脂製又は金属製で成形するか、その一方を合成樹脂製で、その他方を金属製で成形するか、所望に選択できる。金属製の場合は、ステンレス、アルミニウム、アルミ合金などの所望の金属材料で作製できる。図示の例は、該中空筒1は硬質合成樹脂を材料として円筒状に成形したもので、長さは一般に1.5〜2.5メートルの範囲あればよい。該可動杆2は金属を材料として図3に明示のように、中空の軽量な丸棒に成形したものである。
【0007】
該可動杆2は、該中空筒1の長さと少なくとも略等しい長さを有するものに作製すれば足りるが、該中空筒1より少許、1〜5cm程度長いことが好ましく、一般である。
図示の該中空筒1と該可動杆2の寸法は下記の通りであるが、これに限定されないことは勿論である。該中空筒1は、長さ200cm、断面は円形で外径1.8cm、内径1.2cm、肉厚3mmを有する長尺の合成樹脂製の中空筒に成形したものである。更に本発明によれば、その長尺の中空筒1は、その先端部を図1及び図2に示すように、その長さ方向に対し斜めに削ぎ、その先が尖った尖端部1aに形成し、その先端部1aに所望の餌を突き刺して取り付けるようにした。
尚、斜めに削いだ切削面の水平面に対する傾斜角度は、図示の例では20°程度であるが、これに限定されない。また、必要に応じ、尖端部2aを図1の平面図からみて左右の側壁を切削し、先端が更に尖った三角形状などの細幅の尖端部に形成することができる。
該可動杆2は、該中空筒1より3cm長い203cmとし、外径1cm、内径8mm、肉厚1mmの中空の円筒状の軽量な可動杆に成形したものである。かくして、該中空筒1を外筒とし、該中空筒1内に、円筒状の軽量な可動杆2をその長さ方向に前後動自在に嵌挿して、本発明の軽量で且つ持ち運び易く、且つ把持し易い円筒状の捕獲用竿Aに構成したものである。その構成部材1及び2の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、楕円形、四角形、多角形など所望の形状を選択できる。
【0008】
尚、上記のように該中空筒1内に該可動杆2は、少許の外力で該中空筒1内を前後動自在に移動し得るよう比較的緩く嵌挿されて捕獲用竿Aが組み立てられることが好ましく、この場合は、該捕獲用竿Aを立てたとき、該可動杆2が該中空筒1から離脱しないように、該可動杆2の後端部に係止用膨出部2bを設けることが好ましい。該係止用膨出部2bの形成は、該可動杆2の成形時にその後端部を膨出部2bに一体成形するか、或いはその膨出部の変わりに、該可動杆2の後端部にゴム製、合成樹脂製などの係止用キャップを嵌着して、これにより、係止用膨出部2bとするか、いずれでもよい。かくして、該捕獲用竿Aを該係止用膨出部2bを上にして把持するときは、その可動杆2の自重により、該係止用膨出部2bは自ら下動し、その外周の該中空筒1の後端に係止するので、該捕獲用竿Aを円滑に持ち運ぶことができる。
該中空筒1内に、該可動杆2を嵌合したとき、該中空筒1内周面に該可動杆2の外周面が摩擦するような摺接状態に設計するときは、上記の係止用膨出部2bは不要である。
【0009】
該捕獲用竿Aは、図2に明らかなように、該可動杆2の後端側を把持して実線示から仮想線示のように該中空筒1をその長さ方向に沿い前後動自在であり、前方へ押すことにその可動杆2の前端部を実線示の状態から仮想線示のように、該中空筒1の尖端部1aまで或いはそれより前方へ前進させることができるように作動するものである。
この場合、該捕獲用竿Aの該中空筒1を把持した片手を利用して該中空筒1内の可動杆2を前進後退させることができるようにすることが好ましい。これを可能にするため、該中空筒1に、少なくとも1個の窓1bを穿設した。図示の実施例では、図1及び図2に示すように、該中空筒1を把持する長さ領域内において、複数個、図示の例では、前後に2個所に窓1b,1bを配設した。該窓1bの大きさは、手の親指の腹が入りその内側の可動杆2の露出面を押さえることができ、その腹で一度に2〜3cm程度前後にスライドし得るような大きさである。かくして、該捕獲用竿Aを把持した手で可動杆2を所望の長さを前方へ移動することが可能となり、使用に便利をもたらす。
【0010】
本発明が捕獲対象とする小動物は、例えば、キリギリス科、コオロギ科、スズムシ科、カネタタキ科、オンブバッタ科、ヒシバッタ科、イナゴ科、バッタ科、カマキリ科、ナナフシ科、クワガタ科、コガネムシ科、ホタル科、テントウムシ科、カミキリムシ科、アシダグモ科などに夫々属する各種の虫類、リス、ハムスター、ネズミなどの小型げっ歯類に属するもの、トカゲなどの小型爬虫類、カエルなどの小型両生類などである。
次に、該捕獲用竿Aを用い、捕獲すべき小動物、例えば、コオロギ科に属する昆虫、例えば、キリギリスを捕獲する場合につき例示する。
キリギリスの好物は、ネギ、リンゴ、キュウリ、ナスなどの植物、生きたケムシ、小さなバッタ、チョウやガの幼虫などから選択した所望の餌Eを、図4(a)では、長ネギを長さ5cmに切断した切片を、該中空筒1の尖端部1aに突き刺す。その後、所望により、該可動偏2を親指で少許前進させ、突き刺された餌Eの側面に当接した状態にしておくことが好ましい。該尖端部1aは、斜めに切削された傾斜面をもつ半円錐形であるので、餌Eを安定に保持することができる。
このように餌Eをつけた捕獲用竿Aの後部側を片方の手で持ち、草叢の葉に止まっているキリギリスの近傍まで、草叢の隙間から気付かれないように、徐々に差し出す。しばらくすると、キリギリスは、ネギのもつ香りに誘引されて該餌Eに飛び移り、そのうちに、該餌Eに喰い付き食べ始めるので、その食中の頃を見計らい、該捕獲用竿Aの側方に予め配置してある受け容器の上方まで、該捕獲用竿Aをゆっくり移動させ、その位置で、該竿Aを把持している手の親指で、該窓1bを介して該可動竿2を前方に瞬時に図4(b)示のように突き出す。然るときは、該可動杆2の先端で該餌Eは該尖端部1aから離脱すると共に、キリギリスは該餌Eと共にその下方の該受け容器内に瞬時に落下し、捕獲することができる。受け容器が捕獲用網の場合は、もう一方の手に持ち、落下するキリギリスを受けた後、直ちにその反転し、開口部を閉じるように使用することが好ましい。
【0011】
該受け容器としては、ポリ容器などの合成樹脂製容器、竹かご、ボール箱、通常の昆虫採集用網など所望の受け容器が使用できる。
また、受け容器としては、蓋付きの容器でも良く、落下してくる小動物を受容後、直ちに蓋を閉める。上面が開口したままの受け容器の場合は、新聞紙や古雑誌などの手持ちの材料を蓋として使用してもよい。上記の捕獲法により、略100%の捕獲率で、キリギリスを捕獲することができる。
【0012】
餌としては、捕獲すべき小動物の食性に合わせて選択する。食性は、一般に、肉食性、植物性、腐食性、雑食性に大別されるが、本発明は、捕獲した小動物を飼育するに適した餌を用いることが一般である。従って、例えば、キリギリス、スズムシ、コオロギは、キリギリスと同じ餌でよい。トノサマバッタは、ススキ、ササなどのイネ科の植物の葉や茎、クワガタムシは、リンゴ、スイカなどの果物、或いはこれに蜂蜜を付けたもの、トノサマガエルは、ゴキブリ、バッタなどの昆虫などである。しかし乍ら、餌に、人工香料やフェロモン、性フェロモンなどの誘引剤を付与すれば、該餌は、特定の飼育用の餌に限らず、肉だんご、生又は調理したジャガイモ、サツマイモなどの小片などの所望の物質を誘引性餌として用いることができる。或いはまた、各種小動物の疑似餌でもよく、性フェロモンを付与したものが好ましく使用できる。
【0013】
図4は、上記本発明の捕獲法に用いる好ましい捕獲用網Bを示す。
該捕獲網Bは、開口面から底面までの深さが40cm程度の深い網本体3とその開口面を囲繞する保持する円環状部材に取り付けた伸縮自在の柄4とから成る構成は、通常の昆虫採集用の網の構成と変わりがないが、本発明によれば、該網本体3の深さ方向の中間部を柔軟で滑性を有する面材6で構成したことを特徴とする。参照符号7は、該滑性面材6の上縁及び下縁とこれに対向する上部網体の下縁及び下部網体の上縁とを夫々縫い合わせた接合部を示す。該接合部7,7は、縫着の代わりに、接着剤により接着した接合部としてもよい。該滑性面材6としては、ビニールなどの合成樹脂フィルム、箔などを選択使用する。
図示の実施例の変わりに、図示しないが、通常の網本体の内周面の中間部に該面材を貼着や縫着により裏張りしてもよい。
同図で5は、該柄4の長尺の円筒状部4aに伸縮自在に差し込んだ該網体3の開口を囲繞する円環状部材から延接した細杆4bを所望の長さで締め付け自在とする螺筒部を示す。
上記に構成した捕獲用網Bを本発明の捕獲法の受け容器として用いるときは、該捕獲用網B内に落下した捕獲されたキリギリスなどの小動物は、その中間部に滑性面材6が介在するので、その上方の開口部まで這い上がり逃げ出すことを防止できる。従って、該網B内に小動物が落下した後、直ちに該網Bを反転して開口部を閉塞する必要がない。
また、該捕獲用網Bは、その柔軟で且つ滑性を有する面部材は、網本体3の深さの中間部に設け、その下方の底面側は網で構成されているため、通常の昆虫採集に当たり、振り廻した場合でも、網本体3内部に空気が溜まることなく、通風性が確保されるので、通常の捕虫網として支障なく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の1例の捕獲用竿の平面図。
【図2】図1示の捕獲用竿の一部縦断側面図。
【図3】図1のI-I線截断面図。
【図4】該捕獲用竿の使用法を説明する図であり、図4(a)は尖端部に餌を付けた状態を示す該捕獲用竿の先端側の一部の縦断面図、図4(b)は可動杆により該尖端部から餌を脱落させた状態を示す該捕獲用竿の先端側の一部の縦断面図。
【図5】本発明の捕獲法に用いる捕獲用網の斜視図。
【符号の説明】
【0015】
A 捕獲用竿
1 長尺の中空筒
1a 尖端部
2 長尺の可動杆
B 捕獲用網
3 網本体
6 柔軟で滑性を有する面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を尖端部に形成した長尺の中空竿と該中空竿の長さと少なくとも略等しい長さを有し且つ該中空竿内に前後動自在に嵌挿した可動杆とから成る捕獲用竿。
【請求項2】
該長尺の中空竿に少なくとも1個所に窓を開口したことを特徴とする請求項1に記載の捕獲用竿。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の捕獲用竿の該中空筒の尖端部に取り付けた餌に捕獲対象の小動物を乗り移らせた後、該捕獲用竿の該尖端部を、受け容器の上方に移動させ、その位置で、該可動杆を前進させ該餌を押し該尖端部から離脱させ、該餌を該小動物と共に該受け容器内へ落下させることを特徴とする捕獲法。
【請求項4】
該受け容器は、網本体の深さ方向の中間部の全周を、柔軟で且つ滑性を有する面材で構成して成る捕獲用網であることを特徴とする請求項3に記載の捕獲法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−22809(P2008−22809A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201393(P2006−201393)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(506255083)株式会社高島商店 (2)
【出願人】(596119892)
【出願人】(596119906)
【出願人】(592001115)
【出願人】(592001104)
【Fターム(参考)】