説明

捩り水晶振動子

【目的】 音叉腕に溝を設け、等価直列抵抗R1 の小さい、小型捩り水晶振動子を提供することにある。
【構成】 長さ、幅x0 を有する音叉腕に長さ方向に一対の溝を設け、この溝の中に励振電極を配置して形成することにより、一対の溝が対向する面の間に電界ができ、電気機械効率がよくなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、捩り水晶振動子の形状と励振電極構成に関する。特に、小型化、耐衝撃性、低廉化の要求の強い腕時計、ポケットベル、ICカードや移動体無線等の基準信号源として最適な捩り水晶振動子に関する。
【0002】
【従来の技術】周波数が200kHz〜600kHzの水晶振動子は、音叉形状した屈曲水晶振動子と縦水晶振動子が用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来から使用されている音叉型屈曲水晶振動子は高調波モードを使用するため、電極形成が複雑で、リード線等の支持による振動エネルギー損失が多く、その結果、等価直列抵抗R1 が上昇するなどの課題が成されていた。一方、縦水晶振動子は、周波数が振動腕の長さに反比例するために、600kHz以下の振動子を実現しようとすると、自ずからサイズが大きくなり、小型化できないという課題が残されていた。このようなことから、周波数が200kHz〜600kHzで、しかも、超小型で零温度係数を有し、等価直列抵抗R1 の小さい、化学的エッチング加工が容易な水晶振動子が所望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の方法で従来の課題を解決するものである。すなわち、捩り振動モードで振動する音叉形状水晶振動子で、音叉腕の長手方向に溝を設けることにより課題を解決している。
【0005】
【作用】このように、本発明は捩り水晶振動子で、しかも、音叉腕の長手方向に溝を設けることにより、幅方向に負荷質量を有するので、低周波数で、R1 の小さい超小型捩り水晶振動子が化学的エッチング法によって得られる。
【0006】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて具体的に述べる。図1は、本発明の音叉型捩り水晶振動子の形状と励振電極構成を示す。図2は、本発明の音叉型捩り水晶振動子の音叉上部から見た断面図である。音叉型捩り水晶振動子1は音叉腕2、3と音叉基部10から構成されている。そして、音叉腕2にはエッチング法によって溝4と溝5が形成されている。図2に示すように、対向の裏面にも厚みに対して対称の位置に溝が設けられている。一方、音叉腕3にも音叉腕2と同様に溝6と7が設けられている。又、音叉腕2の溝4と5には励振電極9と8が異極となるように配置され、音叉基部10を介してそれぞれ溝6と7に配置された励振電極に接続されている。図2に示すように、厚みに対して対称となる裏面の溝にも励振電極が配置されている。このとき、厚みに対して異極となるように励振電極は配置される。この振動子はy”軸(機械軸であるy軸の座標回転後の結晶軸)方向に電界を有し、y軸方向に電界成分を持つカット角(φ、θ)で形成される。
【0007】このような溝を有する音叉型捩り水晶振動子を形成することにより、励振電極8、9間に電圧を加えると、溝4に設けた励振電極9のうち溝5に近い面9aと、溝5に設けた励振電極8のうち溝4に近い面8aとの間に電界ができ、従来の同一平面に設けた2個の励振電極に比べ、電気機械変換効率が良くなるので、等価直列抵抗R1 の小さい、Q値の高い、しかも200kHz〜600kHzと低周波数で、小型の捩り水晶振動子が得られる。
【0008】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の音叉型捩り水晶振動子は次の著しい効果を有する。
(1)音叉腕の長さ方向に溝を設け、この溝の中に励振電極を配置することにより、等価直列抵抗R1 の小さい、Q値の高い音叉型捩り水晶振動子が得られる。
(2)化学的エッチング法によって容易に形成できるので、小型化、薄型化ができる。同時に、1枚のウエハ上に多数個の振動子を一度にバッチ処理できるので、低廉化が可能である。
(3)音叉腕に溝を設け、音叉腕の幅端部に負荷質量効果を持たせることにより、200kHz〜600kHzの低周波数の捩り水晶振動子を小型サイズで実現できる。
(4)音叉形状に加工されるので、リード線等の外部支持による振動エネルギー損失が小さくなり、耐衝撃性に優れた捩り水晶振動子か得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の音叉型捩り水晶振動子の形状と励振電極構成を示す。
【図2】本発明の音叉型捩り水晶振動子の音叉上部から見た断面図である。
【符号の説明】
1 音叉型捩り水晶振動子
2、3 音叉腕
4、5、6、7 溝
8、8a、9、9a 励振電極
10 音叉基部
x’ 座標回転後の電気軸
y” 座標回転後の機械軸
z’ 座標回転後の光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 捩り振動モードで振動する音叉形状水晶振動子で、各音叉腕の長手方向に一対の溝を設け、前記溝の面のうち少なくとも一対の溝が対向する面に励振電極を設けたことを特徴とする捩り水晶振動子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平6−112760
【公開日】平成6年(1994)4月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−256450
【出願日】平成4年(1992)9月25日
【出願人】(000108007)セイコー電子部品株式会社 (3)