説明

掃気前遅延を含む酸化による高温ガスの製造方法

本発明は、回転式反応器、または模擬回転式反応器を用いて、酸化形および還元形を有する活性物質を酸化することによって高温ガスを製造するための最適化された方法に関する。本発明は、製造サイクルが酸化段階と掃気段階の間での流れの停止を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特に、石油産業、ガラス製造業のための、またセメントプラントにおける、エネルギー生産、ガスタービン、ボイラーおよび炉の分野に関する。本発明の分野はまた、電気、熱または水蒸気を製造するための、これらの様々な手段の使用を包含する。
【0002】
より詳細には、本発明の分野は、活性相の酸化−還元反応を通じて、炭化水素または炭化水素混合物により高温ガスを製造すること、および、生成した二酸化炭素を捕捉できるようにそれを分離することが可能な装置および方法に関する。本発明はまた、水素または酸素の製造分野にも適用される。
【0003】
増大する全世界のエネルギー需要のために、新しい火力発電所が建設され、環境に害のある二酸化炭素の排出量は増加する。したがって、二酸化炭素の隔離(sequestration)を目的とした二酸化炭素の捕捉は、どうしても避けられなくなっている。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
二酸化炭素の捕捉に用いることができる技術の1つは、通常用いられる燃焼反応を、順次行なわれる次の2つの反応に分割するように、活性相の酸化−還元反応を実施することからなる:
− 空気による活性相の酸化反応は、酸化の発熱性により、そのエネルギーを利用できる高温ガスを得ることを可能とする、
− 次いで、こうして酸化された活性相の、還元性ガスによる還元反応は、再使用できる活性相、および、本質的に二酸化炭素と水を含むガス混合物を得ることを可能とする。
【0005】
酸化段階と還元段階との間のこうして実現される分離により、実際的に酸素および窒素を含まないガス混合物からの二酸化炭素の後の分離が容易になる。
【0006】
文書US−5,447,024は、還元性ガスによる金属酸化物の還元反応のための第1反応器、および、加湿空気による酸化反応により前記金属酸化物を生成する第2反応器を含む方法を記載する。これらの2つの反応器からの排出ガスは、発電所のガスタービンに供給される。しかし、このような方法の実施には、2つの別個の反応器と、固体粒子状の活性相の移送手段とを必要とする。したがって、このような方法は実施が比較的複雑であり、それは、高い運転およびメンテナンスのコストを伴う。さらに、排出ガスに同伴されて運ばれる活性相の微粒子は、このガスの後の処理にとっての障害の原因となり得る。
【0007】
文書FR−2,846,710は、反応器が、活性物質塊(active mass)の逐次的な酸化、次いで還元反応を実施するように静止した部分と動いている部分との間での物質の回転(rotation)を示すという意味における、真の回転式反応器を記載する。
【0008】
本出願人により出願された文書FR−04/08,549は、特許出願FR−2,846,710に記載の反応器と同じ反応が実施されるが、実際の回転のないタイプの反応器を記載する。回転、または一層正確には、反応器のある1つの構成から別の構成への切替えは、1組の好ましくは同一のモジュールに、一定の周期で適用される遅延により得られ、モジュールの各々の1つには、固有の手段によって、酸化性ガス、還元性ガスまたは不活性ガス(掃気ガス(scavenging gas)と呼ばれる)を供給できる。
【0009】
本質的に、これらの固有の手段は、考えられた時間に従って、各モジュールに、酸化性ガス、掃気ガスまたは還元性ガスを送り届けることのできるバルブシステムからなる。これらの手段は各モジュールに固有である。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明の目的は、炭化水素、または炭化水素混合物により高温ガスを製造し、また生成する二酸化炭素を容易に捕捉するように併せてそれを分離するために、活性相の酸化および還元反応を可能にするデバイスを実行するための最適化された方法を提供することである。
【0011】
詳細な説明
このため、本発明は、酸化性ガス、掃気ガスまたは還元性ガスをそれぞれ順次流通させること(circulation)による接触により時間の関数として順次、酸化、掃気および還元段階において機能する、少なくとも1つの反応モジュールに含まれる活性物質の酸化によって高温ガスを製造する方法に関する。
【0012】
本発明によれば、酸化性ガスと掃気ガスの流通による2つの接触段階は、掃気ガスの流通の前の、予め決められた持続時間の酸化性ガスの流れの停止により隔てられている。
【0013】
流れの停止の持続時間は、酸化性ガスと活性物質との接触時間を増加させるように決めることができる。
【0014】
掃気ガスの流通速度は酸化性ガスの流通速度より大きくすることができる。
【0015】
活性物質塊での酸化サイクル、次いで、還元サイクルの進行が、この後、記載される。
【0016】
酸化−還元活性物質塊の酸化−還元サイクルは、可燃性ガスの注入段階を含む。この段階の間に、可燃性ガスは、部分的に酸化された状態にある酸化−還元活性物質塊と接触する。この物質塊により捕集されている酸素は、酸化するガスに移り、同時に二酸化炭素および水が放出される。
【0017】
参考文献として本明細書に挙げた文書FR−2,846,710またはFR−04/08,549によるデバイスは、1組の反応モジュールを含み、各モジュールは、酸化性、掃気または還元性ガスとそれぞれ接触することにより時間の関数として順次、酸化、掃気および還元段階において機能する活性物質を含む。この活性物質塊との接触は、酸化性、掃気または還元性ガスを時間の関数として受け入れることができる、各モジュールに固有の供給システム、あるいは、分配セットに対して回転する回転セットのいずれかを用いて達成される。
【0018】
燃料注入段階の開始時には、ガスの酸化反応(したがってまた、酸化−還元性物質塊の還元)は、例えばモノリス状のモジュールの入口近くで主に起こる。時間の経過と共に、上流の酸化−還元性物質塊は還元されてしまい、もはや燃焼に必要な酸素を含んでいないために、この酸化−還元は、モジュールの下流に移動する。
【0019】
出願人は、未燃焼可燃性ガスに関する問題を認めた。モノリスの下流でより多く反応が起こるほど、酸化−還元性物質塊と接触する時間を有することなくモノリスを通って流れることができる可燃性ガスの比率は大きくなり、このために、未燃焼ガスの容積が増加する。
【0020】
模擬実験が、50μmの厚さの活性物質塊(ウォッシュコート)により被覆された、内径2mm、長さ1メートルの円柱状流路を考えて実施された。この酸化−還元サイクルの模擬実験において、ガスは約500℃、30bar(3MPa)の圧力で注入される。想定した標準的サイクルは、次の逐次注入時間を含む:空気3s − 水蒸気0.5s − メタン1.5s − 水蒸気0.5s。空気、水蒸気およびメタンの各々の注入速度は、20m/s、5m/sおよび1m/sである。水蒸気は、酸化剤または燃料の次の導入の前に、酸化剤または燃料を流路から除去するために導入される。
【0021】
図1において、曲線1は、時間(横軸)の関数として、チャネルに対して注入された可燃性ガスの流量を、曲線2は未燃焼ガスの量(縦軸にmol/sで)を示す。ガスの酸化段階の間(時間14.5と16sの間)、最初のある量の未燃焼ガスが流路出口に現れる(曲線2)ことに注目できる。次いで、ピーク3により示されるように、16sと16.5sとの間で、未燃焼ガスの「吹き出し(puff)」が生じる。
【0022】
この「吹き出し」は、それが大量の未燃焼ガスを含むので、プロセス収率にとって非常に有害である。さらに、それは、二酸化炭素の同様の「吹き出し」を伴って現れる。この時、この方法によれば、このCO2の流れは、CO2捕集デバイスに向けられなければならず、ガスタービンに向けられてはいけない。したがって、これは、また、この可燃性ガスの「吹き出し」(未燃焼ガス)にも当てはまる。その結果、かなりの量の未燃焼ガスがCO2を捕集するために用いられるガス流体に送られなければならないということになる。その場合、CO2の捕集のために選択されるガス流体は酸素を全く含まないので、このガスは、その後で燃焼させることができない。
【0023】
こうして、反応収率は低下し、CO2の捕集および分離はより複雑になる。
【0024】
本発明によれば、提供されるのは、前記の未燃焼ガスの「吹き出し」(図1のピーク3)に存在する未燃焼ガスの量を約25%だけ減らす方法またはプロセスである。それゆえに、その間に何も注入されない短い時間が、可燃性ガス注入段階の終わりと水蒸気による次の掃気段階の間に加えられる。この場合、チャネルに閉じ込められた可燃性ガスには、酸化−還元性物質塊で酸化される時間があるので、未燃焼ガスの量が減少する。
【0025】
図2は、本発明による方法の新しいサイクルを例示する。曲線1は、上と同じく、燃料の注入後で掃気水蒸気の注入前に0.5sの注入停止を付け加える以外は、標準のサイクルと同一の条件における1つのサイクルにおける燃料の注入速度を示す。この停止は、図2において参照番号4により示されている。この新しいサイクルでは、曲線2’が、燃焼の間の未燃焼の流量を示し、ピーク3’が未燃焼ガスの「吹き出し」に対応する。
【0026】
数値結果
本発明の方法の模擬試験による数値は、提供される解決策の有効性を示す。表1は、図2により例示される、本発明によるサイクルに対応する結果を纏めている。
【0027】
【表1】

【0028】
表の最後の行は、1サイクルでの未燃焼ガスの全量、すなわち、曲線2+3、および2’+3’の下の積分値を記載する。本発明によるサイクルは、1サイクル当たり、全体としての未燃焼ガスの21%の低減をもたらすことが指摘できる。しかしながら本発明の目標は前記「吹き出し」の容積に効果のあることであり、本発明の寄与は、本発明による容積と、標準の場合による容積を比較することによって一層明瞭であろう。この比較は表の第2行に示されている。本発明は吹き出しにおける未燃焼ガスの容積を26%だけ減らすように思われる。
【0029】
また、この一層良好な燃焼は、酸化−還元性物質塊の一層広い使用をもたらし、このことは、可燃性ガス注入段階の間に現れた未燃焼ガスの容積の15%の付加的な減少(表の第1行)に表れていることが指摘できる。
【0030】
本発明は、有利には、文書FR−2,846,710またはFR−04/08,549に記載のデバイスに適用される。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化性ガス、掃気ガスまたは還元性ガスをそれぞれ順次流通させることによる接触により時間の関数として順次、酸化、掃気および還元段階において機能する、少なくとも1つの反応モジュールに含まれる活性物質の酸化によって高温ガスを製造する方法であって、前記酸化性および掃気ガスの流通による前記接触段階が、前記掃気ガスの流通の前に、予め決められた時間、前記酸化性ガスの流れを停止することにより隔てられていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記時間が、前記活性物質への前記酸化性ガスの接触時間を増すように決められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記掃気ガスの流通速度が前記酸化性ガスの流通速度より大きい、請求項1または2に記載の方法。

【公表番号】特表2009−509904(P2009−509904A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532824(P2008−532824)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002194
【国際公開番号】WO2007/036636
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】