説明

掃除具

【課題】水分の飛散を効果的に防止でき、即ち、飛散した水分が顔に当たると言ったことを効果的に防止でき、かつ、掃除も綺麗に出来る掃除具を提供することである。
【解決手段】把持部1と、前記把持部1からの延在部に対して取り付けられた回転ローラ3と、前記把持部1からの延在部に対して取り付けられた前記回転ローラ3をカバーするカバー体4とを具備した掃除具であって、前記カバー体4は前記把持部1からの延在部に対して回転自在に取り付けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は掃除具に関する。特に、網戸などの掃除に際して用いられる掃除具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の普及に伴って、都会における大気汚染は甚だしい。この為、家庭の窓に設けられた網戸にあっては、その網の目詰まりが酷い。すなわち、自動車の排気ガスの影響によって、網戸の網が油性成分などで黒ずむまで目詰まりしている。網が目詰まりしてしまうと、折角の網戸も意味を失ってしまう。従って、家庭においても、網戸まで拭き掃除することが多くなっている。
【0003】
さて、一口で網戸の網を掃除と言っても簡単なものでは無い。なぜならば、拭き掃除に際して力を加えると、網は簡単に撓んでしまい、網目に詰まった付着物まで綺麗に取ることが出来ない。
【0004】
そこで、本願出願人の一人によって、最近、網戸用の掃除具が提案されている。この網戸用の掃除具は、把持部と、この把持部からの延在部に対して取り付けられた回転ローラとを具備したものであって、前記回転ローラには表面に線材が埋め込まれたものである。そして、この掃除具の回転ローラを網戸の網面上を走行させると、回転ローラ表面から突出している線材が網の目の中に入ると共に、回転ローラ表面によって網面を覆っている付着物が除去されるようになる。
【特許文献1】実開昭57−35880号公報
【特許文献2】実開昭62−202382号公報
【特許文献3】実開平2−48175号公報
【特許文献4】特開2000−197849号公報
【特許文献5】特開2002−143754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、上記提案の掃除具によって網戸の掃除が非常に容易になった。
しかしながら、網戸の掃除に際して、回転ローラには洗浄液が付けられる。従って、回転ローラは、例えば水分を含むものとなる。そうすると、掃除に際して、顔よりも高い位置を走行させたりすると、前記水分が顔に飛散して来たりする問題の有ることが判って来た。
そこで、掃除中に飛散して来る水分が当たらないようにカバーを設けることが考えられるに至った。
【0006】
ところで、掃除具とは用途が全く異なるものの、回転ローラにカバー体を備えたものが知られている。例えば、実開昭57−35880号公報、実開昭62−202382号公報、実開平2−48175号公報、特開2000−197849号公報、特開2002−143754号公報等において、塗料を塗布する為の塗布具として、回転ローラと、この回転ローラをカバーするカバー体とを備えたものが提案されている。
【0007】
そこで、この種の塗布具の如く、上記掃除具にカバー体を取り付けたものを試作した。そして、これを用いて網戸の掃除を試みた。
【0008】
すなわち、カバー体を上記公報の如くに取り付けた掃除具を用いて網戸の掃除を試みた処、カバー体が十分な機能を果たせないものであった。
【0009】
この原因についての検討を鋭意推し進めて行った結果、塗料の塗布と網戸の掃除とでは、用途が異なることから、要求される機能も異なったものでなければならないことが判って来た。すなわち、塗料の塗布に際して、カバー体は、その姿勢が固定されたものでなければならなかった。なぜならば、カバー体の姿勢が固定されていないと、即ち、揺らぐものであると、カバー体が塗料の既設塗膜面に当たってしまい、塗膜面にカバー体接触跡を残すことになり、これでは、綺麗に塗料を塗布しても意味が無いものとなってしまうからである。従って、カバー体が設けられている何れの塗布具にあっても、カバー体は固定タイプである。尚、固定式に違いは無いが、幾つかの姿勢にセットできるよう調節機能を備えたものも提案(特開2000−197849号公報)されている。しかしながら、何れの提案のものでも、塗布作業中にあっては、カバー体は、そのセット位置において、固定のものであることに相違は無い。
【0010】
そして、カバー体を、掃除具にあっても、固定式にしたことから、不具合が引き起こされたのである。
【0011】
すなわち、カバー体が一定姿勢のものであると、或る高さ位置では問題無く網戸を掃除できても、それより高い位置での掃除には、カバー体が逆に邪魔になり、網戸の掃除が上手く出来なかったのである。
【0012】
従って、本発明が解決しようとする課題は、水分の飛散を効果的に防止でき、即ち、飛散した水分が顔に当たると言ったことを効果的に防止でき、かつ、掃除も綺麗に出来る掃除具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
さて、飛散する水が当たるのを防止するには、やはり、カバー体が必要不可欠であろうと考えた。そして、網戸の掃除に際して、前記必要なカバー体が逆に邪魔になっている原因を子細に検討して行った結果、それは、カバー体が固定されているからであることに気付くに至った。
【0014】
そこで、カバー体を回転自在なものにしてみた。その結果、予想以上の好成績を示すものであることが判った。
【0015】
このような知見を基にして本発明が達成されたものである。
すなわち、前記の課題は、把持部と、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた回転ローラと、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた前記回転ローラをカバーするカバー体とを具備した掃除具であって、
前記カバー体は前記把持部からの延在部に対して回転自在に取り付けられてなる
ことを特徴とする掃除具によって解決される。
【0016】
特に、把持部と、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた表面に突出した線材を有する回転ローラと、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた前記回転ローラをカバーするカバー体とを具備した掃除具であって、
前記カバー体は前記把持部からの延在部に対して回転自在に取り付けられてなる
ことを特徴とする掃除具によって解決される。
【0017】
又、上記の掃除具であって、カバー体の回転中心位置よりも下方位置において前方側に突出した突出部がカバー体に設けられてなることを特徴とする掃除具によって解決される。特に、上記の掃除具であって、カバー体の回転中心位置よりも下方位置において回転中心を有するローラがカバー体に設けられてなり、前記ローラは、該ローラ前端が前記カバー体前端より突出している大きさであることを特徴とする掃除具によって解決される。
【0018】
又、上記の掃除具であって、カバー体の回転軸芯と回転ローラの回転軸芯とが同一ライン上に在るように構成されてなることを特徴とする掃除具によって解決される。
【発明の効果】
【0019】
回転自在なカバー体を設けたことから、例えば網戸の掃除に際して、掃除箇所(高さ)の位置に寄らずに支障なく掃除を行える。すなわち、掃除の作業性に優れている。かつ、回転ローラから水が飛散しても、この飛散した水はカバー体によって受け止められ、回転ローラから飛散した水が顔に当たると言ったことを効果的に防止できる。
【0020】
そして、カバー体の回転中心位置よりも下方位置において前方側に突出した突出部がカバー体に設けられていると、例えばカバー体の回転中心位置よりも下方位置において回転中心を有するローラがカバー体に設けられ、このローラはローラ前端がカバー体前端より突出している大きさであると、掃除に際して、カバー体の回転動作がスムーズに行われる。すなわち、カバー体が断面円弧形であるとすると、カバー体の重みで、カバー体は略U状(略凹状)になっている。つまり、掃除具を手にしたに過ぎない通常状態(非掃除時)にあっては、回転ローラの下半分がカバー体でカバーされた姿勢である。ところが、掃除に際しては、これが略90°回転させられた状態に変わらなければ、カバー体が掃除の邪魔になる。この90°の回転動作性は、上記の如きの突出部(ローラ)が設けられていると、非常に良くなる。特に、掃除面に対して回転ローラとローラとが共に接するようになっていると、ローラによっても案内されることになるから、掃除作業性が非常に良いものとなる。
【0021】
又、カバー体の回転軸芯と回転ローラの回転軸芯とが同一ライン上に在るように構成させていると、カバー体の回転に回転ローラが邪魔にならず、好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の掃除具は、例えば網戸の網を掃除する道具である。そして、把持部と、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた回転ローラと、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた前記回転ローラをカバーするカバー体とを具備する。このカバー体は、特に、回転自在に取り付けられている。そして、好ましくは、カバー体の回転中心位置よりも下方位置において前方側に突出した突出部がカバー体に設けられている。例えば、カバー体の回転中心位置よりも下方位置において回転中心を有するローラがカバー体に設けられている。そして、このローラは、ローラ前端がカバー体前端より突出している大きさのものである。又、カバー体の回転軸芯と回転ローラの回転軸芯とが同一ライン上に在るように構成されている。そして、回転ローラには線材が取り付けられており、この線材の先端部が表面から突出している。
【0023】
以下、更に詳しく説明する。
図1は、本発明の第1実施形態になる掃除具の斜視図である。
【0024】
図1中、1は、掃除具Aの把持部である。すなわち、掃除に際して、把持部1を手にして掃除(拭き掃除)する。
【0025】
2は、把持部1から延長した所定形状の延在部である。例えば、略「マ」形状になっている。尚、このような形状は、前記特許文献などに挙げた塗布具でも周知である。
【0026】
3は回転ローラである。回転ローラ3は、その長手方向にそって軸受孔を有しており、この軸受孔に前記把持部1からの延在部2の先端が差し込まれている。従って、延在部2の先端の回りで回転ローラ3は自在に回転できるものとなっている。尚、このような回転構造も前記特許文献などで周知であるから、詳細な説明は省略される。そして、回転ローラ3は、布あるいは不織布、その他の耐水性を有すると共に含水性の材料で構成されている。しかも、回転ローラ3の表面には突出長さが5〜10mm程度の線材(多少の幅を持つものでも良い。)3aが、多数、埋め込まれている。
【0027】
4はカバー体である。このカバー体4のカバー面(枠部および左右の壁面を除いた部分)4aは透明ないしは半透明な樹脂で構成されている。勿論、不透明であっても良いが、掃除に際して、回転ローラ3の汚れ具合・水分含有度合いなどを観察できることから、透明ないしは半透明材で構成されていることが好ましい。カバー体の左右の壁面4b,4cは、例えば半円形の形状をしている。従って、カバー面4aは、断面が半円形である。勿論、半円を多少越えていても足りなくても差し支え無い。
【0028】
本実施形態では、カバー体4の左右壁面4b,4cに軸受部4dが構成されている。そして、一方の壁面4bの軸受部4dには、回転ローラ3の場合と同様に、把持部1からの延在部2の先端が差し込まれている。尚、軸受部4dは、壁面4bに形成された凹部と、壁面4bに設けられた先端内側に掛止用凸部を有する弾撥性の略Y形状部材とで構成されている。従って、軸受部4dを延在部2から取り外すことが出来る。すなわち、着脱式のものとなっている。又、他方の壁面4cの軸受部(軸受部4dの構造とは異なり、壁面4cに形成された貫通孔)には軸6が差し込まれ、この差し込まれた軸6の先端が前記回転ローラの軸受孔に嵌っている。従って、回転ローラ3の回転軸芯を軸心としてカバー体4も自在に回転できるように取り付けられている。
【0029】
5a,5b,5c,5dは円板(ローラ)である。そして、このローラ5a,5b,5c,5dも回転自在なように取り付けられている。ローラ5a,5bは壁面4bに取り付けられ、ローラ5c,5dは壁面4cに取り付けられている。円板5a,5b,5c,5dの取り付け中心位置(高さ)は、カバー体4の回転中心位置よりも下方の位置である。尚、この下方位置とは、掃除具Aの把持部1を自然な状態で手にしている場合、即ち、重力以外の力が作用していない状態(図1に示される状態)において、円板5a,5b,5c,5dの取り付け中心位置(高さ)がカバー体4の回転中心(延在部2)位置よりも下方の位置と言うことである。そして、円板5a,5b,5c,5dの大きさは、例えば円板5a,5cの前端がカバー体4の前端より前方側に飛び出し、円板5b,5dの後端がカバー体4の後端より後方側に飛び出す大きさである。
【0030】
さて、網戸を掃除しようとして、把持部1を手にした状態では、図1に示される如く、カバー体4は自身の重みでカバー面が凹状の姿勢である。すなわち、カバー体4の開口面は上側を向いている。
【0031】
この状態(カバー体4の開口面を上側)にて、掃除具Aを網戸の垂直な網面に近付けると、先ず、網に円板5a,5cが当たる。そうすると、この接触位置(高さ)はカバー体4の回転軸芯の高さより低い位置に在るから、作用・反作用の原理から判る通り、網からカバー体4を時計方向に回転させる力が作用する。つまり、図2に示される如く、カバー体4が回転ローラ3を背後から覆う如く、カバー体4の開口面は水平方向から垂直方向に回転する。従って、難なく、このままで掃除モードに入ることが出来、そして掃除に際して、回転ローラ3から水分が飛散しても、カバー体4でカバーされているから、顔に水が飛び散ることも無い。
【0032】
さて、垂直面に対する掃除に大きな特長を奏することは上記した通りであるが、水平な天井面の掃除にも威力を発揮する。水平な天井面の掃除には、下から天井に向かって掃除具Aが近付けられる。この時、カバー体4が回転自在であるにしても、自身の重さの関係で、カバー体4の開口面は常に上側を向いたままである。従って、回転ローラ3が水分を含んでいて、回転ローラ3から水分が滴るような場合が起きても、滴下した水分はカバー体4で受け止められ、顔に当たったり、床に落ちることも無い。従って、予め、床にシートを敷いた後で天井面の清掃と言った養生(予備)作業が不要であり、非常に簡便である。
【0033】
尚、上記カバー体4を脱着できるものとしておくと、洗浄液(薬剤)に回転ローラを漬す場合にカバー体4を外した状態で出来、非常に便利である。勿論、完全に取り外すのみでは無く、回転ローラ3の位置から離れた位置に移動できる構造のものであっても良い。
【0034】
図3は、本発明の第2実施形態になる掃除具の説明図である。
本実施形態の掃除具Bも基本的な構造は前記実施形態の掃除具と同じである。
但し、前記実施形態の掃除具Aは、回転ローラ3とカバー体4とが同一軸に回転自在に取り付けられたものであるのに対して、本実施形態の掃除具Bは回転ローラ3の取付軸とは異なる部材に取り付けられた点が異なる。
【0035】
すなわち、把持部1(延在部2)からの第2の延在部11に対して回転自在にカバー体4が取り付けられている。つまり、延在部11の先端部11aが案内溝部12を円周方向に動くことが出来るようになっている。そして、この回転自在な取付機構は、図3からも判る通り、遊星機構的なものである。尚、このような取付機構も取付方としては公知であるから、詳細な説明は省略される。但し、回転ローラ3を取り付けた延在部2とカバー体4を取り付けた延在部11とが別部材であると、機構的には複雑になるものの、回転ローラ3を洗浄液などの薬剤中に浸ける場合、延在部2に対して延在部11を取り外す(両者の嵌合状態を解除する)ことが簡単に出来、カバー体4を洗浄液などの薬剤中に浸けないように出来、この点では有利である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明になる第1実施形態の掃除具の斜視図
【図2】第1実施形態の掃除具を網戸に当てた時の説明図
【図3】本発明になる第2実施形態の掃除具の説明図
【符号の説明】
【0037】
1 把持部
2 延在部
3 回転ローラ
3a 線材
4 カバー体
4a カバー面
4b,4c 左右壁面
4d 軸受部
5a,5b,5c,5d 円板(ローラ)

代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた回転ローラと、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた前記回転ローラをカバーするカバー体とを具備した掃除具であって、
前記カバー体は前記把持部からの延在部に対して回転自在に取り付けられてなる
ことを特徴とする掃除具。
【請求項2】
カバー体の回転中心位置よりも下方位置において前方側に突出した突出部がカバー体に設けられてなる
ことを特徴とする請求項1の掃除具。
【請求項3】
カバー体の回転中心位置よりも下方位置において回転中心を有するローラがカバー体に設けられてなり、前記ローラは、該ローラ前端が前記カバー体前端より突出している大きさである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の掃除具。
【請求項4】
カバー体の回転軸芯と回転ローラの回転軸芯とが同一ライン上に在るように構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの掃除具。
【請求項5】
回転ローラは表面から突出した線材を有する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの掃除具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−272044(P2008−272044A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116495(P2007−116495)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000206934)株式会社マルテー大塚 (26)
【出願人】(000204608)大下産業株式会社 (13)