説明

掃除機用吸込具および電気掃除機

【課題】高い塵埃除去性能を有する掃除機用吸込具を提供する。
【解決手段】被掃除面に当接するブラシ体31を複数配した回動自在の回転ブラシ33と、回転ブラシ33を駆動する電動機26を有し、回転ブラシ33は、その回転軸に直交する方向の断面形状がブラシ体31も含んで略三角形になるようにブラシ体31を配備し、ブラシ体31の先端の少なくとも一部が、この三角形の頂点に位置するよう形成されているとともに、この三角形の頂点に位置するブラシ体31の先端を、略四角形の軌道を描いて回動させる左・右ギアユニット34、35を有するもので、ブラシ体31の先端が被掃除面を連続して押し掃くため、高い塵埃除去性能を発揮し、しかも同先端が、掃除機用吸込具16の前壁(図示せず)の際まで達するので、壁際の塵埃も確実に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除機用吸込具および電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の掃除機用吸込具として、図10に示されるようなものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、上記特許文献1に記載された従来の掃除機用吸込具の断面図である。従来の掃除機用吸込具は、内部に配された電動機で回転駆動される回転ブラシ101を備え、その回転ブラシ101の外周長手方向に設けた清掃片102で、被掃除面103の塵埃を掻き上げるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4401619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような従来の掃除機用吸込具の回転ブラシ101の回転軌道では、円運動のため、回転ブラシ101の径に対し、被掃除面103に接地する幅が限られてしまう。そのため回転数UPや清掃片102の増量、マイナスイオン付加機能の組合せなどで塵埃除去性能を高めていた。また掃除機用吸込具の前壁と清掃片102の接地位置との間隔が大きく、掃除できない部分が生じるなどの課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、回転ブラシを略四角形の軌道で回動させ、被掃除面に沿って連続的に清掃片を当てることによって、回転ブラシ幅を有効に活用でき、高い塵埃除去性能を発揮することができる掃除機用吸込具および電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために、本発明の掃除機用吸込具は、被掃除面に当接する清掃片を複数配した回動自在の回転ブラシと、伝達手段を介して前記回転ブラシを駆動する駆動源とを有し、前記回転ブラシは、その回転軸に直交する方向の断面形状が前記清掃片も含んで略三角形になるように前記清掃片を配備しており、前記清掃片の先端の少なくとも一部が、この三角形の頂点に位置するよう形成されているとともに、この三角形の頂点に位置する前記清掃片の先端を、略四角形の軌道を描いて回動させる回動機構を有するもので、清掃片の先端が、被掃除面に対し、ほぼ平行に連続して押し掃く動作を成すため、高い塵埃除去性能を発揮するものである。しかも掃除機用吸込具前壁の際まで、前記清掃片の先端が到達するため、壁際掃除においてもほぼ壁際の塵埃を除去することができる。
【0008】
また、清掃片が被掃除面に当接する範囲が、回転ブラシの幅寸法とほぼ同幅となり、掃除機用吸込具の前壁の際まで掃除できる範囲が広がる。しかも往復運動ではなく、連続して清掃片が当接するため、振動も抑制されるという利点がある。さらに、この略四角形軌道は、駆動源の動力を回転ブラシに伝達する伝達手段を構成するギアの比率と変位寸法の設定によって作りだせるので、小スペース内でもスムーズな回動を実現でき、塵埃除去性能を向上させながら、従来と同様の軽量・静音化を実現できるものである。
【0009】
また、本発明の電気掃除機は、電動送風機と、請求項1〜6のいずれか1項に記載の掃除機用吸込具を備えたもので、優れた塵埃除去性能を発揮し、かつ壁際などの塵埃の取れ残りの少ない、使い勝手のよい電気掃除機を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の掃除機用吸込具は、回転ブラシの清掃片先端は、被掃除面に対してほぼ平行の軌道で塵埃を押し掃く動きを成し、高い塵埃除去性能を発揮するため、被掃除面をよりきれいに掃除することができる。また清掃片の接地幅が従来よりも広いため、回転数を下げることができ、運転音の低減、モータ電力の低減にもつながる。
【0011】
さらに、掃除機用吸込具の前壁の際まで掃除できるので、壁際のごみ除去に関しても従来より、さらに際まで除去することができるなど、使い勝手の良い掃除機用吸込具を提供することができる。また、塵埃除去性能の良い掃除機用吸込具を使用することで、塵埃吸引性能が良く、使い勝手のよい電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における掃除機用吸込具を接続した電気掃除機の全体斜視図
【図2】同掃除機用吸込具の平面断面図
【図3】(a)同掃除機用吸込具の回転ブラシユニットの斜視図、(b)同回転ブラシユニットの分解斜視図
【図4】(a)同掃除機用吸込具の回転ブラシ部分の側面断面図、(b)同掃除機用吸込具の左ギアユニット部分の側面断面図、(c)同掃除機用吸込具の受動プーリ部分の側面断面図
【図5】(a)同掃除機用吸込具の回転ブラシ部分の側面断面図、(b)同掃除機用吸込具の左ギアユニット部分の側面断面図、(c)同掃除機用吸込具の受動プーリ部分の側面断面図
【図6】(a)同掃除機用吸込具の回転ブラシ部分の側面断面図、(b)同掃除機用吸込具の左ギアユニット部分の側面断面図、(c)同掃除機用吸込具の受動プーリ部分の側面断面図
【図7】(a)同掃除機用吸込具の回転ブラシ部分の側面断面図、(b)同掃除機用吸込具の左ギアユニット部分の側面断面図、(c)同掃除機用吸込具の受動プーリ部分の側面断面図
【図8】同回転ブラシのブラシ体の平面図
【図9】同ブラシユニットの寸法設定説明図
【図10】従来の掃除機用吸込具の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、被掃除面に当接する清掃片を複数配した回動自在の回転ブラシと、伝達手段を介して前記回転ブラシを駆動する駆動源とを有し、前記回転ブラシは、その回転軸に直交する方向の断面形状が前記清掃片も含んで略三角形になるように前記清掃片を配備しており、前記清掃片の先端の少なくとも一部が、この三角形の頂点に位置するよう形成されているとともに、この三角形の頂点に位置する前記清掃片の先端を、略四角形の軌道を描いて回動させる回動機構を有するもので、清掃片の先端が、被掃除面に対し、ほぼ平行に連続して押し掃く動作を成すため、高い塵埃除去性能を発揮するものである。しかも掃除機用吸込具前壁の際まで、前記清掃片の先端が到達するため、壁際掃除においてもほぼ壁際の塵埃を除去することができる。
【0014】
また、清掃片が被掃除面に当接する範囲が、回転ブラシの幅寸法とほぼ同幅となり、掃
除機用吸込具の前壁の際まで掃除できる範囲が広がる。しかも往復運動ではなく、連続して清掃片が当接するため、振動も抑制されるという利点がある。さらに、この略四角形軌道は、駆動源の動力を回転ブラシに伝達する伝達手段を構成するギアの比率と変位寸法の設定によって作りだせるので、小スペース内でもスムーズな回動を実現でき、塵埃除去性能を向上させながら、従来と同様の軽量・静音化を実現できるものである。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明の回動機構を、固定ギアと、前記固定ギアに対して回転中心が回転軌道に沿って回動しながら自身も回転する遊星ギアで構成するとともに、前記固定ギアと前記遊星ギアのギア比を4:3とし、かつ前記遊星ギアの回転中心から、回転ブラシの略三角形の断面形状の頂点に位置する清掃片の先端までの距離Lを、前記遊星ギアの基準円直径rに対し、L=2.5rの関係になるように設定したもので、連続する回転運動を略四角形の回動軌道にスムーズに変換することができるものである。
【0016】
第3の発明は、特に、第2の発明の固定ギア内で回動運動をする遊星ギアに、回転ブラシを同軸上に連結させたもので、回転ブラシ中心の回動半径、及び回転ブラシ幅を小型化でき、小型・軽量の掃除機用吸込具を実現できるものである。
【0017】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の回動機構を回転ブラシの両端に配備するとともに、互いの回動位置及び回動速度を同期させるようにしたもので、回転軸方向に、長さを有する回転ブラシにおいてもその全長において略四角形の回動軌道を描いて回動するため、掃除機用吸込具の横幅方向の広い範囲に渡って高い塵埃除去性能を発揮することができるものである。
【0018】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明の回転ブラシは、清掃片を保持する溝を長手方向に複数有する軸体を備え、前記溝を、前記回転ブラシの略三角形の頂点の位置に、軸方向に配置した複数の直線溝と、この直線溝に交差して配備した複数の螺旋溝にて形成したもので、前記回転ブラシの回転面に連続して清掃片が配備されることで、塵埃除去性能を高めるとともに、回動時の振動を低減することができる。
【0019】
第6の発明は、特に、第5の発明の清掃片を、直線溝と螺旋溝に連続して固定するとともに、前記清掃片の突出長さを、前記直線溝に配置される部分と前記螺旋溝に配置される部分とで異ならせたもので、清掃片の先端位置が略三角形の投影形状を作り出すことができ、略四角形の回動軌道内に、清掃片の先端が常時内接して回動するため、簡単な構造でスムーズな回動軌道を実現することができ、それにより、低振動で塵埃除去性能の優れた掃除機用吸込具を提供することができる。
【0020】
第7の発明に係る電気掃除機は、電動送風機と、請求項1〜6のいずれか1項に記載の掃除機用吸込具を備えたもので、優れた塵埃除去性能を発揮し、かつ壁際などの塵埃の取れ残りの少ない、使い勝手のよい電気掃除機を提供することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における掃除機用吸込具について、図1〜図9を用いて説明する。図1は、本実施の形態における掃除機用吸込具を接続した電気掃除機の全体斜視図である。
【0023】
本実施の形態における電気掃除機は、図1に示すように、掃除機本体1の後方部に、電動送風機2を内蔵した電動送風機室3が配され、掃除機本体1の前方部に、吸引された塵
埃を捕集する集塵袋(図示せず)を着脱自在に収納するとともに、電動送風機2の吸引側開口(図示せず)と連通する集塵室4が配されている。
【0024】
掃除機本体1の後方下部の左右両側に、1対の走行用車輪6が、水平に配された走行軸(図示せず)に対して回転自在に取り付けられ、また、掃除機本体1の前方下部に、同じく走行用のキャスター7が垂直な軸心周りに回動自在に、且つ水平に配された走行軸(図示せず)に対して回転自在に取り付けられている。掃除機本体1の前面には、吸引ホース8の一端に設けられた接続ジョイント部9が着脱自在に接続されるとともに、集塵室4に連通する吸気口10が設けられている。
【0025】
吸引ホース8の他端には、操作者が掃除の際に把持するとともに、掃除機本体1の運転を操作するための操作部11aを有する把手11を備えた先端ジョイント部12が設けられている。この吸引ホース8の先端ジョイント部12に、伸縮自在あるいは継ぎ自在に構成された延長管13の手元側の一端が着脱自在に接続され、さらに、その延長管13の先端側の他端が、本実施の形態における掃除機用吸込具16に着脱自在に接続される。
【0026】
なお、図2以降の図の説明においては、掃除機用吸込具16の走行方向について、把手11を掴んだ操作者が掃除機用吸込具16を押し進める(前進させる)方向を前方(図2において左方向)といい、操作者が掃除機用吸込具16を引き戻す(後退させる)方向を後方(図2において右方向)という。また、掃除機用吸込具16を前進させる方向に操作者から見て右方を右側(図2において上方向)、左方を左側(図2において下方向)という。
【0027】
図2に示すように、掃除機用吸込具16の本体17は、回転ブラシ収納室18と駆動源収納室19を形成しており、回転ブラシ収納室18の下部には、後述の被掃除面15に向かって開口した塵埃吸引用の吸込口20を設けている。掃除機用吸込具16の本体17の後方中央部には、接続管21が傾動自在に取着され、延長管13の先端が、この接続管21の開口端に着脱自在に嵌合固定される。
【0028】
吸込口20と接続管21との間は、吸気通路22を介して連通状態にあり、23は、回転ブラシ収納室18と駆動源収納室19を隔てる隔壁24に設けた開口部である。なお掃除機用吸込具16の本体17の形成手段、及び接続管21の傾動手段は公知のものでも良く、本発明とは直接関連しないため、詳細説明は省略する。
【0029】
回転ブラシ収納室18には、回転ブラシユニット25がその回転軸を被掃除面15(説明上、仮想線にてその位置を表示している)と平行に、かつ掃除機用吸込具16の進退方向に対して垂直に配備されている。
【0030】
駆動源収納室19には、回転ブラシユニット25の駆動源としての電動機26が収納されており、掃除機本体1の運転に連動して駆動される。電動機26のシャフト27先端には、駆動プーリ28が圧入してあり、この駆動プーリ28と回転ブラシ収納室18内の受動プーリ29との間に、ベルト30が懸架されている。
【0031】
回転ブラシユニット25は、清掃片としての、被掃除面15に当接する3条のブラシ体31を、軸体32上に配してなる回転ブラシ33と、この回転ブラシ33の両端に配備した右ギアユニット35および左ギアユニット34と、前記右ギアユニット35および左ギアユニット34を連結固定する支持板36から構成されている(図3)。
【0032】
左ギアユニット34は、固定ギア37と、遊星ギア38と、中心位置が変位している2本の軸(固定軸39と遊動軸40)を一体に形成した段違い軸41とを有する。
【0033】
本実施の形態では、固定ギア37は、歯数20、基準円直径20mmの内歯ギアであり、遊星ギア38は、歯数15、基準円直径15mmの平歯車である。
【0034】
段違い軸41の2本の軸、固定軸39と遊動軸40の変位量Δhは2.5mmであり、前記固定ギア37の基準円直径と前記遊星ギア38の基準円直径の差の1/2の距離に設定してある。
【0035】
また段違い軸41には、固定軸39と同軸上に径大の連結軸42を一体で形成しており、連結軸42端部に、Hカット加工を施した回り止め43を一体形成している。
【0036】
固定ギア37に嵌合する左側蓋体44は、中央に前記段違い軸41の連結軸42を回転自在に支持する軸受45を固定しており、箱状に形成した固定ギア37に組み合わせることで、遊星ギア38のスラスト方向の位置を規制し、段違い軸41の回り止め43と固定軸39が左側蓋体44から露出する。
【0037】
遊星ギア38は小型軸受46を介して、段違い軸41の遊動軸40に回転自在に軸支されており、さらに遊星ギア38の端部に一体に形成した六角柱の接続体47が掃除機用吸込具16中央方向に突出する。そして回転ブラシ33の端部は、この六角柱の接続体47に接続され、遊星ギア38と連動して回動する。
【0038】
ごみ進入防止用のプレート48は、固定ギア37の端部に位置し、固定ギア37と、遊星ギア38それぞれに対し、回転自在にセットされる。
【0039】
左ギアユニット34の遊星ギア38に連結される段違い軸41の連結軸42に形成した回り止め43には、前記受動プーリ29が接続され、電動機26の駆動力は、駆動プーリ28、ベルト30、受動プーリ29を介して、左側の段違い軸41に減速して伝達される。
【0040】
段違い軸41の固定軸39には、固定軸39を回転自在に支える補助軸受49が接続され、回転ブラシ収納室18の左凹部50に挿入されて保持される。
右ギアユニット35は、前述の左ギアユニット34と同構成で、それぞれが左ギアユニット34と向かい合う位置に、同じく固定ギア37、遊星ギア38、段違い軸41を有している。
【0041】
また、プレート48も、左ギアユニット34同様、固定ギア37と、遊星ギア38それぞれに対し、回転自在にセットされる。
【0042】
右側蓋体54は、左側蓋体44同様、軸受45を固定しているが、段違い軸41を覆う形状をなしており、その端部が、回転ブラシ収納室18の右凹部55に挿入されることで保持される。
【0043】
支持板36は、左右の固定ギア37に接続固定され、かつ回転ブラシ収納室18上方に形成した固定口51に挿入される。このように支持板36が、左・右凹部50、55と、前記固定口51に、保持されることで、回転ブラシユニット25は、回転ブラシ収納室18内に、上下左右方向、回転方向とも動かないように堅持される。
【0044】
回転ブラシ33のブラシ体31は、軸体32に形成した等分して配置した3列の直線溝56と、この3列の直線溝56に交差して配備した略螺旋状の螺旋溝57に、交互に固定することで、一条のブラシ体で回転ブラシ33周囲に連続した植毛状態を形成している。
【0045】
さらに、3本配列したブラシ体31は、一本のブラシ体31のなかでブラシ毛の長さを違えて植毛しており、軸体32に取り付けたときに、直線溝56に位置するブラシ毛の先端52と、回転ブラシ33の中心位置との距離が、前記遊星ギア38の半径rに対し、2.5倍になるよう設定してある。
【0046】
螺旋溝57に位置するブラシ毛の先端53の高さは、ブラシ毛の先端53と、回転ブラシ33の中心位置との距離が、前記遊星ギア38の半径rに対し、1.8倍になるようにカットして形成されている。
【0047】
この状態で、回転ブラシ33のブラシ体31を含む横断面形状(投影形状)は、「Reuleauxの三角形」と呼ばれる略三角形の形状になる。
【0048】
軸体32からブラシ体31が抜けないように配備した止め板58を両端に設置した回転ブラシ33は、左右に配した前記遊星ギア38の六角柱の接続体47に同軸に連結されており、左・右ギアユニット34、35を、支持板36で結合することで、回転ブラシユニット25として形成される。
【0049】
このとき、左右の遊星ギア38の、固定ギア37に対する位置は、同位相にあり、回転ブラシ33は、被掃除面15に対して平行状態に維持される。
【0050】
駆動源収納室19の底面に設けた一対の走行用ローラ59は、掃除機用吸込具16の前後方向の走行を補助するもので、回転ブラシ収納室18の底面に固着した固定ブラシ60は、回転ブラシ33が押し掃く塵埃が後方に抜けないように遮断するためのものである。
【0051】
前記回転ブラシ33のブラシ体31及び固定ブラシ60の吸込口20からの下方向の出代高さは、従来の掃除機用吸込具と同様、被掃除面15に対し、1〜1.5mmオーバーラップするよう設定しており、被掃除面15に対して押し付け力を作用させることで、除塵除去性能が確実に発揮されるようにしている。
【0052】
次に、以上のように構成された掃除機用吸込具16と電気掃除機(掃除機本体1)の動作、作用について説明する。
【0053】
図4〜7は、本実施の形態における掃除機用吸込具の回転ブラシの回転駆動状態の時間的変化を示す断面図(吸込具本体の左方側から見た状態で、図の下方向が底面側)であり、回転ブラシ33の断面、左ギアユニット34の断面、および受動プーリ29部分の断面を示す。
【0054】
各図は、図4を初期値として、受動プーリ29が1/4回転(図5)、3/5回転(図6)、3/4回転(図7)したときの各断面を示し、各部品の移動位置と回転位置の変化を表している。なお段違い軸41の遊動軸40については、中心位置を示すため、2点鎖線にて拡大表記している。
【0055】
掃除機本体1から図示しない電源コードを引き出し、その先端についた電源プラグ(図示せず)を部屋のコンセントに差し込んで、把手11に設けた操作部11aを操作して、電動送風機2および掃除機用吸込具16に内蔵された電動機26に通電すると、掃除機用吸込具16の回転ブラシ収納室18の底面に設けられた吸込口20に、電動送風機2による吸引力が作用し、木床や絨毯などの被掃除面15上の塵埃が回転ブラシ33により掻き上げられ、吸引されて、延長管13、吸引ホース8を通って集塵室4に運ばれ、そこで捕集される。
【0056】
電動機26が駆動すると、ベルト30を介して受動プーリ29が、図4に示す方向において時計回りに回転する。
【0057】
同時に、受動プーリ29に連結した段違い軸41は、連結軸42を中心に、時計回りに回転し、一体に形成した遊動軸40も連結軸42を中心に、時計回りに回転する(図5(c))。
【0058】
遊動軸40に、回転自在に連結した遊星ギア38は、遊動軸40の移動により、固定ギア37と噛み合いながら、中心位置を移動しながら反時計回りに回転する(図5(b))。
【0059】
以上のように、本実施の形態では、左・右ギアユニット34、35が、ブラシ体31の先端を、略四角形の軌道を描いて回動させる回動機構となっている。
同時に遊星ギア38と同軸上に連結された回転ブラシ33は、遊星ギア38と同じく反時計回りに回転しながら移動する。
【0060】
回転ブラシ33は、右ギアユニット35の遊星ギア38とも連結されており、右ギアユニット35にも回転ブラシ33を介して回転力が加わることから、左右のギアユニット34、35は、同期しながら回転する。そのため回転ブラシ33は、常に被掃除面15と平行を保ちながら、回転移動を行う。
【0061】
回転ブラシ33は、段違い軸41が1/4回転したときに、固定ギア37と遊星ギア38のギア比の差により、1/3回転するが、中心位置も移動することから実質1/12の回転となり、ブラシ33の略三角形の頂点に位置するブラシ体31の先端52が、下端に回転してくる。
【0062】
しかしながら同時に回転ブラシ33の中心は、遊動軸40回道軌道の上端に移動しているので、ブラシ体31の先端が、吸込口20から突出する長さは、図4に示す初期値状態と同一である(図5(a))。
【0063】
段違い軸41が、1/2回転した状態の回転ブラシユニット25は、図4に示す初期値状態と左右対称になるので、説明を割愛し、段違い軸41が3/5回転した状態を図6に示す。
【0064】
段違い軸41が3/5回転した際は、遊動軸40は、右斜め下まで移動し、遊動軸40に連結する遊星ギア38は、1/5回転する。
【0065】
このとき、回転ブラシ33の略三角形の頂点は、連結軸42中心から最も離れた位置付近に達する。
【0066】
続いて段違い軸41が3/4回転した状態を説明する。遊動軸40は、遊動軸40の回動軌道の下端に位置するが、回転ブラシ33は、略三角形の辺の部分(螺旋溝57に位置するブラシ毛の先端53)が下端に回転してくるため、やはりブラシ体31の先端の吸込口20からの突出代は、初期値状態と同一である(図7)。
【0067】
このように、回転ブラシ33のブラシ体31を含む略三角形の断面形状は、その頂点が、図4〜7に示す略四角形の軌道61を描いて回動するとともに、この略四角形の軌道61の範囲からブラシ体31先端が著しくはみ出すことはない。
【0068】
これは、図9に示す寸法関係から成り立つもので、「Reuleauxの三角形」が描く軌道として知られているものである。
【0069】
本実施の形態1においては、この略四角形の軌道を描くための略三角形の形状を、軸体32の直線溝56と螺旋溝57に配置したブラシ毛の長さを互い違いに変化させたブラシ体31を3本取り付けることで形成している。また回転ブラシ33の回転角度と、回転ブラシ33の中心位置の移動との相関関係を同期させるために、4:3のギア比を有する2つのギアの中心位置を変位させて設置することで略四角形の回動軌道を実現している。
【0070】
さらに電動機26の回転運動を遊星ギア38の中心の移動にスムーズに変換する段違い軸41を配備することで省スペースながら複雑な回動軌道を実現したものである。
【0071】
この種の掃除機用吸込具16は、軽量化のために駆動源として、吸引力で回転するエアタービン、もしくは小型モータが搭載され、回転ブラシ33が被掃除面を掻き上げるトルクを発揮するために、駆動力の伝達手段内に減速機構を構成するのが常であり、ベルト減速やギア減速機構が利用されている。
【0072】
本実施の形態の構成では、固定ギア37と遊星ギア38のギア比を4:3のギア比にするとともに、遊星ギア38の中心が回動することで、実質1/3に減速されるので、充分な回転トルクを発揮することができる。
【0073】
またベルト30を省略して、受動プーリ29の代わりに、段違い軸41に直接駆動源を直結する構成をとることも可能である。
【0074】
回転ブラシ33の略三角形の頂点が描く略四角形の軌道61は、回転ブラシ33の幅とほぼ同幅であり、吸込口20の幅ともほぼ同幅である。また掃除機用吸込具16の前壁62に近接しており、ブラシ体31の先端が、掃除機用吸込具16の前壁62の際まで到達することを意味する。
【0075】
つまり、本実施の形態における掃除機用吸込具16の回転ブラシ33のブラシ毛の先端は、掃除機用吸込具16の前壁から吸込口20の全幅に渡って、被掃除面15を押し掃く作用をなし、被掃除面15の塵埃を広範囲に連続して掻き上げることができる。よって高い塵埃除去性能を発揮できるとともに、壁際まで塵埃を除去することができ、取り残しがほとんどなくなる。
【0076】
しかも、回転ブラシ33の軸体32の外周に配したブラシ体31が、略三角形の頂点だけでなく、辺部分にあるブラシ体31も被掃除面15に順次当接するため、回転ブラシ33の振動が抑制されるとともに、高い塵埃除去性能を発揮するため回転数を下げることも可能となり、静音化を容易に実現することができる。
【0077】
なお、略四角形の回動軌道については、本実施の形態1に示した2つのギアにおいて、遊星ギア38側の中心を固定し、回転ブラシ33を固定ギア37と連結させた構成で、固定ギア37の中心を回動させても描くことが可能であり、2つのギアのどちらを回動させるかを限定するものではないが、小型の遊星ギア38側を回動させ、そこに回転ブラシ33を連結させる方が全体を小型化するという点で有利であることは、言うまでもない。
【0078】
また本実施の形態では、回転ブラシ33の両端に、同期して回動運動を作り出す左右のギアユニット34、35を配備したが、回転ブラシ33の長さが短ければ、電動機26側の左ギアユニット34だけでも回道軌道を実現させ、略四角形の回道軌道で清掃を行えるのは、明白である。
【0079】
但し、掃除機用吸込具16の横幅を広く設定し、少ない操作で掃除するためには、長い回転ブラシ33がその全長に渡って安定して被掃除面15に接する本発明の実施の形態1が優れた効果を広範囲に発揮することができる。
【0080】
勿論その場合、電動機26による駆動を片側だけでなく、両方に直接伝達する手段を講じる構造であっても良く、また、回転ブラシ33が被掃除面15に対し、平行状態を維持しながら回動するのであれば、一端が、レールなどで軌道を誘導するガイド手段であってもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明に係る掃除機用吸込具は、略四角形の回動軌道を描く回転ブラシによって高い塵埃除去性能を発揮するもので、電気掃除機に限らず掃除機用吸込具を備えた各種電気機器に広範囲に利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 掃除機本体
15 被掃除面
16 掃除機用吸込具
18 回転ブラシ収納室
19 駆動源収納室
20 吸込口
25 回転ブラシユニット
26 電動機(駆動源)
28 駆動プーリ
29 受動プーリ
30 ベルト(伝達手段)
31 ブラシ体(清掃片)
32 軸体
33 回転ブラシ
34 左ギアユニット(回動機構)
35 右ギアユニット(回動機構)
36 支持板
37 固定ギア
38 遊星ギア
39 固定軸
40 遊動軸
41 段違い軸
42 連結軸
43 回り止め
44 左側蓋体
45 軸受
46 小型軸受
47 接続体
48 プレート
49 補助軸受
51 固定口
52、53 先端
54 右側蓋体
56 直線溝
57 螺旋溝
58 止め板
61 軌道
62 前壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被掃除面に当接する清掃片を複数配した回動自在の回転ブラシと、伝達手段を介して前記回転ブラシを駆動する駆動源とを有し、前記回転ブラシは、その回転軸に直交する方向の断面形状が前記清掃片も含んで略三角形になるように前記清掃片を配備しており、前記清掃片の先端の少なくとも一部が、この三角形の頂点に位置するよう形成されているとともに、この三角形の頂点に位置する前記清掃片の先端を、略四角形の軌道を描いて回動させる回動機構を有する掃除機用吸込具。
【請求項2】
回動機構を、固定ギアと、前記固定ギアに対して回転中心が回転軌道に沿って回動しながら自身も回転する遊星ギアで構成するとともに、前記固定ギアと前記遊星ギアのギア比を4:3とし、かつ前記遊星ギアの回転中心から、回転ブラシの略三角形の断面形状の頂点に位置する清掃片の先端までの距離Lを、前記遊星ギアの基準円直径rに対し、L=2.5rの関係になるように設定した請求項1に記載の掃除機用吸込具。
【請求項3】
固定ギア内で回動運動をする遊星ギアに、回転ブラシを同軸上に連結させた請求項2に記載の掃除機用吸込具。
【請求項4】
回動機構を回転ブラシの両端に配備するとともに、互いの回動位置及び回動速度を同期させるようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の掃除機用吸込具。
【請求項5】
回転ブラシは、清掃片を保持する溝を長手方向に複数有する軸体を備え、前記溝を、前記回転ブラシの略三角形の頂点の位置に、軸方向に配置した複数の直線溝と、この直線溝に交差して配備した複数の螺旋溝にて形成した請求項1〜4のいずれか1項に記載の掃除機用吸込具。
【請求項6】
清掃片を、直線溝と螺旋溝に連続して固定するとともに、前記清掃片の突出長さを、前記直線溝に配置される部分と前記螺旋溝に配置される部分とで異ならせた請求項5に記載の掃除機用吸込具。
【請求項7】
電動送風機と、請求項1〜6のいずれか1項に記載の掃除機用吸込具を備えた電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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