排ガス冷却塔
【課題】噴霧された水の蒸発をより促進し得る排ガス冷却塔を提供する。
【解決手段】所定高さの円筒状の胴体部1と、この胴体部の上部に設けられたガス導入部2と、胴体部の下部に設けられたガス導出部3から構成し、胴体部及びガス導出部に排ガスを取り出すガス取出ノズル4を設け、胴体部の上部に、排ガスに水を噴霧するための複数個の第1水噴霧ノズル11及び1個の第2水噴霧ノズル12を設け、この第1水噴霧ノズルより下方位置の胴体部に、排ガスに冷却用空気を吹き込むための気体吹込ノズル13を複数個配置すると共に、これら気体吹込ノズルを、吹き込まれた気体により排ガスが旋回流となるような方向でもって設置し、各気体吹込ノズルを、水噴霧ノズルの設置位置とガス取出ノズルにおけるガス取込部位置との距離の半分より上方に配置し、気体の流入量を排ガス流量の20%以上となるようにしたものである。
【解決手段】所定高さの円筒状の胴体部1と、この胴体部の上部に設けられたガス導入部2と、胴体部の下部に設けられたガス導出部3から構成し、胴体部及びガス導出部に排ガスを取り出すガス取出ノズル4を設け、胴体部の上部に、排ガスに水を噴霧するための複数個の第1水噴霧ノズル11及び1個の第2水噴霧ノズル12を設け、この第1水噴霧ノズルより下方位置の胴体部に、排ガスに冷却用空気を吹き込むための気体吹込ノズル13を複数個配置すると共に、これら気体吹込ノズルを、吹き込まれた気体により排ガスが旋回流となるような方向でもって設置し、各気体吹込ノズルを、水噴霧ノズルの設置位置とガス取出ノズルにおけるガス取込部位置との距離の半分より上方に配置し、気体の流入量を排ガス流量の20%以上となるようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉または溶融炉から排出される排ガスを冷却するための排ガス冷却塔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみなどの焼却炉または灰溶融炉から排出される排ガス中には、未燃の炭化水素や、塩素、重金属を含んだ煤塵などが入っており、300℃前後の雰囲気温度でダイオキシン類が発生する。
【0003】
このため、この温度域での滞留時間をできるだけ短時間とすることが、ダイオキシン類の発生抑制に繋がるため、焼却炉や溶融炉から排出された排ガスは、通常、排ガス冷却塔にて約200℃以下まで急冷されている。
【0004】
ところで、従来、このような排ガス冷却塔としては、排ガスダクトの途中に配置された筒状本体部の上部に、水噴霧ノズルが設けられるとともに、その下部に、空気吹込ノズルが設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような排ガス冷却塔(減温塔とも呼ばれる)においては、筒状本体部の下部位置で且つ旋回流でもって吹き込まれた空気により、その内壁部を冷却して塩素が内壁面に付着するのを防止するとともに、噴霧された水を筒状本体部の中心に導き蒸発を促進させて冷却の効率化が図られていた。
【特許文献1】特開2008−14601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の構成によると、水は本体部の上部にて噴霧されているのに対し、空気は本体部の下部から吹き込まれているため、空気の吹き込みによる効果が得られにくいという問題がある。
【0007】
すなわち、水は中心に向かって噴霧されているため中央に集まりやすく、一方、空気は旋回流でもって吹き込まれているが、下部から吹き込まれているため、水の噴霧近傍においては旋回流が弱く、したがって水分が落下し易く、つまり、水分の滞留時間が短くなって、水分の蒸発が不十分であるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の排ガス冷却塔は、噴霧された水分の蒸発をより促進し得る排ガス冷却塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の排ガス冷却塔は、焼却炉または溶融炉から排出される排ガスを導き冷却するための排ガス冷却塔であって、
所定高さの筒状胴体部と、この筒状胴体部の上部に設けられて排ガスを導入するためのガス導入部と、上記筒状胴体部の下部に設けられて排ガスを導出するためのガス導出部とから構成するとともに、上記筒状胴体部またはガス導出部に排ガスを取り出すためのガス取出用管体を設け、
上記筒状胴体部の上部に、排ガスに水を噴霧するための水噴霧ノズルを設け、
この水噴霧ノズルより下方位置における上記筒状胴体部に、排ガスに冷却用気体として空気または排ガスを吹き込むための気体吹込ノズルを複数個配置するとともに、これら各気体吹込ノズルを、吹き込まれた気体により排ガスが旋回流となるような方向でもって設置し、
上記各気体吹込ノズルを、水噴霧ノズルの設置位置とガス取出用管体における出口部中心位置との高さ方向での距離の半分より上方に配置し、
さらに気体の吹込流量を排ガス流量の20%以上となるようにしたものであり、
また気体吹込ノズルの設置個数を3〜10個の範囲内としたものである。
【発明の効果】
【0010】
上記排ガス冷却塔の構成によると、気体吹込ノズルを、水噴霧ノズルの設置位置とガス取出用管体における出口部中心位置との高さ方向での距離の半分より上方に配置するとともに、気体の吹込流量を排ガス流量の20%以上となるようにしたので、従来の場合に比べて、水噴霧ノズルに対して気体吹込ノズルが接近して配置されているため、胴体部内で発生する旋回流の影響を大きく受け、したがって噴霧された水が確実に旋回されて胴体部内での滞留時間が長くなるので、水分の蒸発が十分に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る排ガス冷却塔を、図1〜図7に基づき説明する。
この排ガス冷却塔は、例えば灰を溶融させる灰溶融炉からの排ガスを導くとともに水を噴霧させることにより、当該排ガスを所定温度域まで、例えばダイオキシンが発生しない200℃以下の温度に低下させるためのものである。
【0012】
図1に示すように、この排ガス冷却塔は、所定高さhで且つ所定内径dの円筒状胴体部(筒状胴体部の一例で、以下、胴体部という)1と、この胴体部1の上部に設けられて灰溶融炉(または、焼却炉)から排出された排ガスを胴体部1内に導入するための逆ホッパー形状のガス導入部2と、同じく胴体部1の下部に設けられて当該胴体部1から排ガスを導出するための円錐ホッパー形状のガス導出部3とから構成されており、また上記胴体部1の下部には、粉塵などを含む排ガスのガス分だけを取り出すためのガス取出ダクト(ガス取出用管体の一例で、勿論、パイプ、ノズルなどであってもよい)4が設けられている。
【0013】
このガス取出ダクト4は、側面視が逆L字形状(エルボ形状ともいえる)にされており、下向き鉛直ダクト部4aとこの鉛直ダクト部4aの上端に水平方向で接続される水平ダクト部4bとから構成されている。すなわち、鉛直ダクト部4aは胴体部1の水平断面の中心に位置されるとともに水平ダクト部4bはその中心から胴体部1の側壁を挿通して設けられており、したがって排ガスを取り出すための入口部では、胴体部1の中心で下方に開口されている。
【0014】
上記胴体部1の上部、正確には、上端近傍位置には、図2および図3に示すように、円周方向に沿って所定間隔おきに複数個、例えば8個の第1水噴霧ノズル11が設けられるとともに、この第1水噴霧ノズル11より少し下方位置には、第2水噴霧ノズル12が例えば1個(複数個でもよい)設けられている。なお、図1においては、互いに反対側位置にある2個の第1水噴霧ノズル11からの噴霧水の軌跡を強調して図示している。
【0015】
さらに、この第2水噴霧ノズル12より下方位置の胴体部1には、空気(排ガスでもよい)を吹き込むための気体吹込ノズル13が円周方向に沿って複数個、例えば8個設けられている。
【0016】
また、上記各水噴霧ノズル11,12の設置方向は、その噴霧方向が胴体部1の中心に向かうようにされるとともに、気体吹込ノズル13の設置方向は、図4に示すように、その吹込方向が胴体部1内で旋回流となるように、その中心から外れた方向に向かうようにされている。
【0017】
さらに、上記気体吹込ノズル13の上下方向での設置位置(高さ)は、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から第1水噴霧ノズル11より下方の第2水噴霧ノズル12の設置位置(開口部中心位置)までの距離aに対して、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から当該気体吹込ノズル13の設置位置までの高さ方向での距離bが、半分を超える位置(つまり、b/a>1/2)にされている。
【0018】
そして、空気の吹込流量は、当該排ガス冷却塔つまり胴体部1に導入される排ガス流量の20%以上の値にされている。
上記構成において、灰溶融炉から排出された高温の排ガスは、ガス排出ダクトなどを介して、排ガス冷却塔における排ガス導入部2から胴体部1内に導かれ、まず胴体部1の上部に配置された第1および第2水噴霧ノズル11,12から水が中心部に向かって噴霧されて排ガスの冷却が行われるとともに、その下方に配置された気体吹込ノズル13から空気が旋回流を形成するように吹き込まれる。
【0019】
すなわち、胴体部1内では、排ガス中に水が噴霧されて冷却が行われるとともに、この排ガスは下方に配置された気体吹込ノズル13からの空気により旋回されるため、特に、空気の吹込位置は、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から第2水噴霧ノズル12の設置位置までの高さ方向での距離aに対して、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から当該気体吹込ノズル13の設置位置までの高さ方向での距離bが、半分を超える位置にされているため、つまり、従来の場合よりも、水噴霧部分例えば第2水噴霧ノズル12に対して気体吹込ノズル13がより近い場所に設けられているため、胴体部1内で発生する旋回流の影響を大きく受け、したがって噴霧された水が確実に旋回されて胴体部1内での滞留時間が長くなる。すなわち、噴霧された水の蒸発が十分に行われる。言い換えれば、未蒸発の水分は最終的に旋回流に乗って旋回することにより滞留時間が延び、完全蒸発に至る。
【0020】
図5には、気体吹込ノズル13の設置位置を変化させた場合の水噴霧状態のシミュレーション結果を示す。このときの吹込条件を下記の[表1]に示しておく。
図5は、b/a>1/2となる場合のシミュレーション結果であり、冷却塔の底面に到達する粒子や出口から流出する粒子がなくなっていることが分かる。なお、従来の場合に比べると、噴霧水の落下距離が約3/4以下になっていた。すなわち、水分が早く蒸発していることが分かる。図5中、(イ)は第1水噴霧ノズル11による噴霧位置を示し、(ロ)は第2水噴霧ノズル12による噴霧位置を示している(図6および図7も同じ)。
【0021】
【表1】
また、図6に、気体吹込ノズル13から吹き込まれる空気流量を変化させた場合の水噴霧状態のシミュレーション結果を示す。このときの吹込条件を下記の[表2]に示しておく。
【0022】
図6から、吹き込まれる空気流量が排ガス流量に対して20%以上になると、噴霧水の到達距離が短くなっていることがよく分かる。勿論、図示していないが、吹き込まれる空気流量が排ガス流量に対して20%未満になると、噴霧水の到達距離が長くなってしまう。
【0023】
【表2】
さらに、図7に、気体吹込ノズル13の設置個数を変化させた場合の水噴霧状態のシミュレーション結果を示す。このときの吹込条件を下記の[表3]に示しておく。
【0024】
図7から、気体吹込ノズル13の設置個数については、3〜10個の範囲内であれば、大きな差はないことが分かる。
【0025】
【表3】
上述したように、気体吹込ノズル13を、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から第2水噴霧ノズル12の噴霧中心位置までの高さ方向での距離の半分を超える位置に配置するとともに、空気の吹込流量を排ガス流量の20%以上となるようにしたので、従来の場合に比べて、水噴霧ノズル11,12に対する気体吹込ノズル13の位置が接近して設けられるため、胴体部1内で発生する旋回流の影響を大きく受け、したがって噴霧された水が確実に旋回されて胴体部1内での滞留時間が長くなるので、水分の蒸発が十分に行われる。言い換えれば、未蒸発の水分は最終的に旋回流に乗って旋回し、滞留時間が延びて完全蒸発に至る。
【0026】
簡単に言えば、冷却塔の長さが短くても、または噴霧の粒子直径が大きくても、噴霧された水を完全に蒸発させることが可能となる。この条件は、上述したように、気体吹込ノズル13の設置位置が、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から第2水噴霧ノズル12の噴霧中心位置までの高さ方向での距離の半分を超える位置であるとともに吹込流量が排ガス流量に対して20%以上であるときに現れる。
【0027】
なお、本発明に係る構成を、既設の装置に適用する場合、つまり改造する場合、流入する気体として、冷却塔下流で流入する希釈用空気や排ガスの全部あるいは一部を用いることが可能で、新たな機器設置の必要もほとんどなく、改造費を抑えることができる。
【0028】
ところで、上記実施の形態においては、第1水噴霧ノズルと第2水噴霧ノズルとを2段でもって配置するとともにガス取出ダクト4をL字形状としたが、例えば図8および図9に示すように、筒状胴体部1に設置される水噴霧ノズル31については一段でもって(つまり、8個)配置するとともに、ホッパ形状のガス導出部3の側壁部に水平方向の管状のガス取出ダクト24を接続するようにしたものでもよい。勿論、この胴体部1に設けられる水噴霧ノズル31および気体吹込ノズル33と管状のガス取出ダクト24の出口部中心位置との距離a,bは、b/a>1/2を満足するようにされている。
【0029】
また、上記実施の形態においては、筒状胴体部の水平断面形状を円筒として説明したが、例えば図10および図11に示すように、胴体部の水平断面形状を正方形とした角筒状胴体部1′であってもよい(勿論、ガス導入部2′およびガス導出部3′も、四角錐のホッパー形状にされている)。
【0030】
この場合も、胴体部1′に設けられる水噴霧ノズル51および気体吹込ノズル53と管状のガス取出ダクト44の出口部中心位置との距離a,bは、b/a>1/2を満足するようにされている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る排ガス冷却塔の概略構成を示す図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】同排ガス冷却塔における水の噴霧状態をシミュレーションした概略断面図である。
【図6】同排ガス冷却塔における空気の吹き込みによる影響を調べるために水の噴霧状態をシミュレーションした概略断面図である。
【図7】同排ガス冷却塔における気体吹込ノズルの設置個数による影響を調べるために水の噴霧状態をシミュレーションした概略断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る排ガス冷却塔を示す概略斜視図である。
【図9】図8のD−D断面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る排ガス冷却塔を示す概略斜視図である。
【図11】図10のE−E断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 円筒状胴体部
1′ 角筒状胴体部
2 ガス導入部
3 ガス導出部
4 ガス取出用ダクト
4a 鉛直ダクト部
4b 水平ダクト部
11 第1水噴霧ノズル
12 第2水噴霧ノズル
13 気体吹込ノズル
24 ガス取出用ダクト
31 水噴霧ノズル
33 気体吹込ノズル
44 ガス取出用ダクト
51 水噴霧ノズル
53 気体吹込ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉または溶融炉から排出される排ガスを冷却するための排ガス冷却塔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみなどの焼却炉または灰溶融炉から排出される排ガス中には、未燃の炭化水素や、塩素、重金属を含んだ煤塵などが入っており、300℃前後の雰囲気温度でダイオキシン類が発生する。
【0003】
このため、この温度域での滞留時間をできるだけ短時間とすることが、ダイオキシン類の発生抑制に繋がるため、焼却炉や溶融炉から排出された排ガスは、通常、排ガス冷却塔にて約200℃以下まで急冷されている。
【0004】
ところで、従来、このような排ガス冷却塔としては、排ガスダクトの途中に配置された筒状本体部の上部に、水噴霧ノズルが設けられるとともに、その下部に、空気吹込ノズルが設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような排ガス冷却塔(減温塔とも呼ばれる)においては、筒状本体部の下部位置で且つ旋回流でもって吹き込まれた空気により、その内壁部を冷却して塩素が内壁面に付着するのを防止するとともに、噴霧された水を筒状本体部の中心に導き蒸発を促進させて冷却の効率化が図られていた。
【特許文献1】特開2008−14601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の構成によると、水は本体部の上部にて噴霧されているのに対し、空気は本体部の下部から吹き込まれているため、空気の吹き込みによる効果が得られにくいという問題がある。
【0007】
すなわち、水は中心に向かって噴霧されているため中央に集まりやすく、一方、空気は旋回流でもって吹き込まれているが、下部から吹き込まれているため、水の噴霧近傍においては旋回流が弱く、したがって水分が落下し易く、つまり、水分の滞留時間が短くなって、水分の蒸発が不十分であるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の排ガス冷却塔は、噴霧された水分の蒸発をより促進し得る排ガス冷却塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の排ガス冷却塔は、焼却炉または溶融炉から排出される排ガスを導き冷却するための排ガス冷却塔であって、
所定高さの筒状胴体部と、この筒状胴体部の上部に設けられて排ガスを導入するためのガス導入部と、上記筒状胴体部の下部に設けられて排ガスを導出するためのガス導出部とから構成するとともに、上記筒状胴体部またはガス導出部に排ガスを取り出すためのガス取出用管体を設け、
上記筒状胴体部の上部に、排ガスに水を噴霧するための水噴霧ノズルを設け、
この水噴霧ノズルより下方位置における上記筒状胴体部に、排ガスに冷却用気体として空気または排ガスを吹き込むための気体吹込ノズルを複数個配置するとともに、これら各気体吹込ノズルを、吹き込まれた気体により排ガスが旋回流となるような方向でもって設置し、
上記各気体吹込ノズルを、水噴霧ノズルの設置位置とガス取出用管体における出口部中心位置との高さ方向での距離の半分より上方に配置し、
さらに気体の吹込流量を排ガス流量の20%以上となるようにしたものであり、
また気体吹込ノズルの設置個数を3〜10個の範囲内としたものである。
【発明の効果】
【0010】
上記排ガス冷却塔の構成によると、気体吹込ノズルを、水噴霧ノズルの設置位置とガス取出用管体における出口部中心位置との高さ方向での距離の半分より上方に配置するとともに、気体の吹込流量を排ガス流量の20%以上となるようにしたので、従来の場合に比べて、水噴霧ノズルに対して気体吹込ノズルが接近して配置されているため、胴体部内で発生する旋回流の影響を大きく受け、したがって噴霧された水が確実に旋回されて胴体部内での滞留時間が長くなるので、水分の蒸発が十分に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る排ガス冷却塔を、図1〜図7に基づき説明する。
この排ガス冷却塔は、例えば灰を溶融させる灰溶融炉からの排ガスを導くとともに水を噴霧させることにより、当該排ガスを所定温度域まで、例えばダイオキシンが発生しない200℃以下の温度に低下させるためのものである。
【0012】
図1に示すように、この排ガス冷却塔は、所定高さhで且つ所定内径dの円筒状胴体部(筒状胴体部の一例で、以下、胴体部という)1と、この胴体部1の上部に設けられて灰溶融炉(または、焼却炉)から排出された排ガスを胴体部1内に導入するための逆ホッパー形状のガス導入部2と、同じく胴体部1の下部に設けられて当該胴体部1から排ガスを導出するための円錐ホッパー形状のガス導出部3とから構成されており、また上記胴体部1の下部には、粉塵などを含む排ガスのガス分だけを取り出すためのガス取出ダクト(ガス取出用管体の一例で、勿論、パイプ、ノズルなどであってもよい)4が設けられている。
【0013】
このガス取出ダクト4は、側面視が逆L字形状(エルボ形状ともいえる)にされており、下向き鉛直ダクト部4aとこの鉛直ダクト部4aの上端に水平方向で接続される水平ダクト部4bとから構成されている。すなわち、鉛直ダクト部4aは胴体部1の水平断面の中心に位置されるとともに水平ダクト部4bはその中心から胴体部1の側壁を挿通して設けられており、したがって排ガスを取り出すための入口部では、胴体部1の中心で下方に開口されている。
【0014】
上記胴体部1の上部、正確には、上端近傍位置には、図2および図3に示すように、円周方向に沿って所定間隔おきに複数個、例えば8個の第1水噴霧ノズル11が設けられるとともに、この第1水噴霧ノズル11より少し下方位置には、第2水噴霧ノズル12が例えば1個(複数個でもよい)設けられている。なお、図1においては、互いに反対側位置にある2個の第1水噴霧ノズル11からの噴霧水の軌跡を強調して図示している。
【0015】
さらに、この第2水噴霧ノズル12より下方位置の胴体部1には、空気(排ガスでもよい)を吹き込むための気体吹込ノズル13が円周方向に沿って複数個、例えば8個設けられている。
【0016】
また、上記各水噴霧ノズル11,12の設置方向は、その噴霧方向が胴体部1の中心に向かうようにされるとともに、気体吹込ノズル13の設置方向は、図4に示すように、その吹込方向が胴体部1内で旋回流となるように、その中心から外れた方向に向かうようにされている。
【0017】
さらに、上記気体吹込ノズル13の上下方向での設置位置(高さ)は、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から第1水噴霧ノズル11より下方の第2水噴霧ノズル12の設置位置(開口部中心位置)までの距離aに対して、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から当該気体吹込ノズル13の設置位置までの高さ方向での距離bが、半分を超える位置(つまり、b/a>1/2)にされている。
【0018】
そして、空気の吹込流量は、当該排ガス冷却塔つまり胴体部1に導入される排ガス流量の20%以上の値にされている。
上記構成において、灰溶融炉から排出された高温の排ガスは、ガス排出ダクトなどを介して、排ガス冷却塔における排ガス導入部2から胴体部1内に導かれ、まず胴体部1の上部に配置された第1および第2水噴霧ノズル11,12から水が中心部に向かって噴霧されて排ガスの冷却が行われるとともに、その下方に配置された気体吹込ノズル13から空気が旋回流を形成するように吹き込まれる。
【0019】
すなわち、胴体部1内では、排ガス中に水が噴霧されて冷却が行われるとともに、この排ガスは下方に配置された気体吹込ノズル13からの空気により旋回されるため、特に、空気の吹込位置は、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から第2水噴霧ノズル12の設置位置までの高さ方向での距離aに対して、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から当該気体吹込ノズル13の設置位置までの高さ方向での距離bが、半分を超える位置にされているため、つまり、従来の場合よりも、水噴霧部分例えば第2水噴霧ノズル12に対して気体吹込ノズル13がより近い場所に設けられているため、胴体部1内で発生する旋回流の影響を大きく受け、したがって噴霧された水が確実に旋回されて胴体部1内での滞留時間が長くなる。すなわち、噴霧された水の蒸発が十分に行われる。言い換えれば、未蒸発の水分は最終的に旋回流に乗って旋回することにより滞留時間が延び、完全蒸発に至る。
【0020】
図5には、気体吹込ノズル13の設置位置を変化させた場合の水噴霧状態のシミュレーション結果を示す。このときの吹込条件を下記の[表1]に示しておく。
図5は、b/a>1/2となる場合のシミュレーション結果であり、冷却塔の底面に到達する粒子や出口から流出する粒子がなくなっていることが分かる。なお、従来の場合に比べると、噴霧水の落下距離が約3/4以下になっていた。すなわち、水分が早く蒸発していることが分かる。図5中、(イ)は第1水噴霧ノズル11による噴霧位置を示し、(ロ)は第2水噴霧ノズル12による噴霧位置を示している(図6および図7も同じ)。
【0021】
【表1】
また、図6に、気体吹込ノズル13から吹き込まれる空気流量を変化させた場合の水噴霧状態のシミュレーション結果を示す。このときの吹込条件を下記の[表2]に示しておく。
【0022】
図6から、吹き込まれる空気流量が排ガス流量に対して20%以上になると、噴霧水の到達距離が短くなっていることがよく分かる。勿論、図示していないが、吹き込まれる空気流量が排ガス流量に対して20%未満になると、噴霧水の到達距離が長くなってしまう。
【0023】
【表2】
さらに、図7に、気体吹込ノズル13の設置個数を変化させた場合の水噴霧状態のシミュレーション結果を示す。このときの吹込条件を下記の[表3]に示しておく。
【0024】
図7から、気体吹込ノズル13の設置個数については、3〜10個の範囲内であれば、大きな差はないことが分かる。
【0025】
【表3】
上述したように、気体吹込ノズル13を、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から第2水噴霧ノズル12の噴霧中心位置までの高さ方向での距離の半分を超える位置に配置するとともに、空気の吹込流量を排ガス流量の20%以上となるようにしたので、従来の場合に比べて、水噴霧ノズル11,12に対する気体吹込ノズル13の位置が接近して設けられるため、胴体部1内で発生する旋回流の影響を大きく受け、したがって噴霧された水が確実に旋回されて胴体部1内での滞留時間が長くなるので、水分の蒸発が十分に行われる。言い換えれば、未蒸発の水分は最終的に旋回流に乗って旋回し、滞留時間が延びて完全蒸発に至る。
【0026】
簡単に言えば、冷却塔の長さが短くても、または噴霧の粒子直径が大きくても、噴霧された水を完全に蒸発させることが可能となる。この条件は、上述したように、気体吹込ノズル13の設置位置が、ガス取出ダクト4の出口部中心位置から第2水噴霧ノズル12の噴霧中心位置までの高さ方向での距離の半分を超える位置であるとともに吹込流量が排ガス流量に対して20%以上であるときに現れる。
【0027】
なお、本発明に係る構成を、既設の装置に適用する場合、つまり改造する場合、流入する気体として、冷却塔下流で流入する希釈用空気や排ガスの全部あるいは一部を用いることが可能で、新たな機器設置の必要もほとんどなく、改造費を抑えることができる。
【0028】
ところで、上記実施の形態においては、第1水噴霧ノズルと第2水噴霧ノズルとを2段でもって配置するとともにガス取出ダクト4をL字形状としたが、例えば図8および図9に示すように、筒状胴体部1に設置される水噴霧ノズル31については一段でもって(つまり、8個)配置するとともに、ホッパ形状のガス導出部3の側壁部に水平方向の管状のガス取出ダクト24を接続するようにしたものでもよい。勿論、この胴体部1に設けられる水噴霧ノズル31および気体吹込ノズル33と管状のガス取出ダクト24の出口部中心位置との距離a,bは、b/a>1/2を満足するようにされている。
【0029】
また、上記実施の形態においては、筒状胴体部の水平断面形状を円筒として説明したが、例えば図10および図11に示すように、胴体部の水平断面形状を正方形とした角筒状胴体部1′であってもよい(勿論、ガス導入部2′およびガス導出部3′も、四角錐のホッパー形状にされている)。
【0030】
この場合も、胴体部1′に設けられる水噴霧ノズル51および気体吹込ノズル53と管状のガス取出ダクト44の出口部中心位置との距離a,bは、b/a>1/2を満足するようにされている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る排ガス冷却塔の概略構成を示す図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】同排ガス冷却塔における水の噴霧状態をシミュレーションした概略断面図である。
【図6】同排ガス冷却塔における空気の吹き込みによる影響を調べるために水の噴霧状態をシミュレーションした概略断面図である。
【図7】同排ガス冷却塔における気体吹込ノズルの設置個数による影響を調べるために水の噴霧状態をシミュレーションした概略断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る排ガス冷却塔を示す概略斜視図である。
【図9】図8のD−D断面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る排ガス冷却塔を示す概略斜視図である。
【図11】図10のE−E断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 円筒状胴体部
1′ 角筒状胴体部
2 ガス導入部
3 ガス導出部
4 ガス取出用ダクト
4a 鉛直ダクト部
4b 水平ダクト部
11 第1水噴霧ノズル
12 第2水噴霧ノズル
13 気体吹込ノズル
24 ガス取出用ダクト
31 水噴霧ノズル
33 気体吹込ノズル
44 ガス取出用ダクト
51 水噴霧ノズル
53 気体吹込ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉または溶融炉から排出される排ガスを導き冷却するための排ガス冷却塔であって、
所定高さの筒状胴体部と、この筒状胴体部の上部に設けられて排ガスを導入するためのガス導入部と、上記筒状胴体部の下部に設けられて排ガスを導出するためのガス導出部とから構成するとともに、上記筒状胴体部またはガス導出部に排ガスを取り出すためのガス取出用管体を設け、
上記筒状胴体部の上部に、排ガスに水を噴霧するための水噴霧ノズルを設け、
この水噴霧ノズルより下方位置における上記筒状胴体部に、排ガスに冷却用気体を吹き込むための気体吹込ノズルを複数個配置するとともに、これら各気体吹込ノズルを、吹き込まれた気体により排ガスが旋回流となるような方向でもって設置し、
上記各気体吹込ノズルを、水噴霧ノズルの設置位置とガス取出用管体における出口部中心位置との高さ方向での距離の半分より上方に配置し、
さらに気体の吹込流量を排ガス流量の20%以上となるようにしたことを特徴とする排ガス冷却塔。
【請求項2】
気体吹込ノズルの設置個数を3〜10個の範囲内にしたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス冷却塔。
【請求項3】
気体吹込ノズルから吹き込む気体が空気または排ガスであることを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス冷却塔。
【請求項1】
焼却炉または溶融炉から排出される排ガスを導き冷却するための排ガス冷却塔であって、
所定高さの筒状胴体部と、この筒状胴体部の上部に設けられて排ガスを導入するためのガス導入部と、上記筒状胴体部の下部に設けられて排ガスを導出するためのガス導出部とから構成するとともに、上記筒状胴体部またはガス導出部に排ガスを取り出すためのガス取出用管体を設け、
上記筒状胴体部の上部に、排ガスに水を噴霧するための水噴霧ノズルを設け、
この水噴霧ノズルより下方位置における上記筒状胴体部に、排ガスに冷却用気体を吹き込むための気体吹込ノズルを複数個配置するとともに、これら各気体吹込ノズルを、吹き込まれた気体により排ガスが旋回流となるような方向でもって設置し、
上記各気体吹込ノズルを、水噴霧ノズルの設置位置とガス取出用管体における出口部中心位置との高さ方向での距離の半分より上方に配置し、
さらに気体の吹込流量を排ガス流量の20%以上となるようにしたことを特徴とする排ガス冷却塔。
【請求項2】
気体吹込ノズルの設置個数を3〜10個の範囲内にしたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス冷却塔。
【請求項3】
気体吹込ノズルから吹き込む気体が空気または排ガスであることを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス冷却塔。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−84957(P2010−84957A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251955(P2008−251955)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
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