説明

排便器具

【課題】 操作性を維持しつつ更に簡易な構造にしてコストをより低減できるようにした排便器具を提供する。
【解決手段】 下腹部から臀部を覆う面積の可撓性を有する着色防水性のシート11の片面に同シート11を肛門周囲に脱着自在に密着させる環状の粘着層14を設け、同シート11の肛門に位置する部分を密着面と反対側へ膨出させて便Bを収容する所定容量の袋部12を形成し、同袋部12の中央部に指Mをシート11とともに肛門へ挿入する挿入凹所13を形成し、シート11の密着面の肛門周囲位置に環状の吸収パッド15を取り付け、同吸収パッド15の外周に環状の閉塞粘着部16と吸収性の拭取パッド17を設け、シート11の肌面側周縁に同シート11を下腹部及び臀部に付着させる付着層18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自力で排便できない人の便を容易な操作で強制的に排出できるようにする排便器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直腸内から便を強制的に排出するには処置者が便を指で掻き出していた。人の指で処置することは被処置者にとって不快であり、処置に時間を要するという問題もあった。そこで、本発明人は破砕刃によって便を徐々に破砕して排出させる排便器具を発明し、実用に供している。ところで、この排便器具を繰り返し使用することは、洗浄等を行なっていても被処置者にとって不快なものであり、排便器具を使い捨てにするとコストが高くなっていた。
【0003】
これに対し、本発明人はさらに肛門から腸内に挿入できる筒体を先端側から長尺の袋体内に挿入し、袋体の先端部分を筒体内部から外方へ引張する引張部材を設け、肛門から腸内に挿入しながら筒体の先端を便に押し付け、かつ引張部材で袋体を筒体内部へ引き込み、腸内の便を筒体内部の袋体内部へ取り込むようにして、筒体後部から袋体に便を収容した状態で体外に強制的に排出するようにした排便器具を発明した。
【0004】
この排便器具は容易な操作で強制的に排便でき、器具を使い捨て可能になるようにコストを抑制できるものである。しかしながら、近年ではより低コストの排便器具が求められており、本発明はそのような事情に鑑みて成されたものである。
【特許文献1】特開2003−159323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、操作性を維持しつつ更に簡易な構造にしてコストをより低減できるようにした排便器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 下腹部から臀部に渡って覆う面積の防水性のシートの肌面側周縁に同シートを下腹部及び臀部に付着させる剥離紙付きの付着層を設け、同シートの肛門周囲位置に肛門を囲むように配置される吸収パッドを取り付け、同吸収パッドを肌面に密接させる剥離紙付きの粘着層を設け、吸収パッドに囲まれるシート部分を肌面側と反対側へ大きく膨出させて便を収容する可撓性の袋部を形成し、指を袋部の外側からシートを介して直腸へ挿入して便を掻き出して袋部に収容するようにした排便器具
2) 袋部の中央部に指を挿入する凹所を形成し、指を挿入し易くした前記1)記載の排便器具
3) 下腹部から臀部に渡って覆う面積の防水性のシートの肌面側周縁に同シートを下腹部及び臀部に付着させる剥離紙付きの付着層を設け、同シートの肛門周囲位置に肛門を囲むように配置される吸収パッドを取り付け、同吸収パッドを肌面に密接させる剥離紙付きの粘着層を設け、吸収パッドに囲まれるシート部分を肌面側と反対側へ大きく膨出させて便を収容する可撓性の袋部を形成し、同袋部の中央部に直腸へ挿入して便を掻き出す掻出具を貫通させ、同貫通させた掻出具を袋部のシートと固着して袋部の余裕部分で掻出具を進退できるようにし、同掻出具の進退で掻き出された便を袋部に収容するようにした排便器具
4) 下腹部から臀部に渡って覆う面積の防水性のシートの肌面側周縁に同シートを下腹部及び臀部に付着させる剥離紙付きの付着層を設け、同シートの肛門周囲位置に肛門を囲むように配置される吸収パッドを取り付け、同吸収パッドを肌面に密着させる剥離紙付きの粘着層を設け、吸収パッドに囲まれるシート部分を肌面側と反対側へ大きく膨出させて便を収容する可撓性の袋部を形成し、同袋部の中央部に直腸へ挿入して便を掻き出す掻出具を貫通させ、同貫通させた掻出具を袋部のシートと水密状態に保持して袋部に対して掻出具を進退できるようにし、同掻出具の進退で掻き出された便を袋部に収容するようにした排便器具
5) シートの肌面側の外周部に袋部を閉塞する剥離紙付きの閉塞粘着部を設けた前記1)〜4)いずれか記載の排便器具
6) シートの閉塞粘着部の内側に吸収性の拭取パッドを取り付けた前記5)記載の排便器具
7) 拭取パッドに消毒・消臭・抗菌のいずれか薬剤を浸漬させた前記6)記載の排便器具
8) シートを不透明の材料で構成し、肌面が見えないようにした前記1)〜7)いずれか記載の排便器具
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来と比較して操作性を損なわずに構造を簡易化しているから、より低コストに製造して処置に供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のシートは、ポリエチレン,ポリプロピレン等の可撓性を有する合成樹脂シートなど収容される便及びその臭気が外部へ漏洩しない防水性且つ不透明でしかも廃棄時に環境に影響を与えないものが望ましく、シートは下腹部から臀部へ渡って拡幅して局部を隠蔽できるようにし、被処置者に配慮する。
【0009】
掻出具は軟質の傘部を備えた弾性を有するプラスチックで構成し、肛門への挿入時の痛みを軽減するとともに腸壁の傷付きを防止する。掻出具の進退は、袋部の貫通部分と固着して袋部を構成するシートの余裕部分又はシートの伸縮性で進退させる方法、袋部の貫通部分と水密状態に保持して袋部に対して進退させる方法があり、シートの材質やコストに応じて任意に選ばれる。
【0010】
シートの肌面側には拭取パッドを取り付けて、処置後の拭清を行い、別途タオル等の用意を不要にする。拭取パッドには必要に応じて予め消毒・消臭・抗菌のいずれかの薬剤を浸漬しておくとより衛生的に処置できる。また、シートの肌面側の外周部に袋部を閉塞する閉塞粘着部を設けておくと、処置後袋部の口元を容易に閉塞して緊縛等を行うことなく臭気の漏洩を防止した状態で廃棄できる。以下、本発明の各実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜4に示す実施例1は、指により掻き出し操作を行なう排便器具の例である。図1は実施例1の排便器具の正面図、図2は図1のA−A断面図、図3,4は実施例1の排便器具の使用状態を示す説明図である。図中、10は排便器具、11はシート、11aは足と密接させる張出部、12は袋部、13は挿入凹所、14は粘着層、14aは剥離紙、15は吸収パッド、16は閉塞粘着部、16aは剥離紙、17は拭取パッド、18は付着層、Bは便、Hは直腸、Mは指である。
【0012】
実施例1の排便器具10は、図1,2に示すように下腹部から臀部に渡って覆う面積の可撓性を有する着色不透明の防水性のシート11の肌面側に同シート11を肛門周囲に脱着自在に密着させる環状の粘着層14を設け、同シート11の肛門に位置する部分を密着面と反対側へ膨出させて便Bを収容する所定容量の袋部12を形成し、同袋部12の中央部に指Mをシート11とともに肛門へ挿入する挿入凹所13を形成し、シート11の密着面の肛門周囲位置に環状の吸収パッド15を取り付け、同吸収パッド15の外周に環状の閉塞粘着部16と吸収性の拭取パッド17を設け、シート11の肌面側周縁に同シートを下腹部及び臀部に付着させる付着層18を設けている。
【0013】
まず、被処置者の肛門に必要に応じて潤滑クリーム等を塗布して滑り易くした後、図3(a)に示すように肛門周囲の肌面に吸収パッド15を配置して剥離紙14aを剥離した粘着層14でシート11を密着し、剥離紙(図示せず)を剥離した付着層18で下腹部及び臀部にシート11を付着し、図3(b)に示すように指Mを挿入凹所13を通じてシート11とともに肛門へ挿入する。指Mはシート11に覆われているから汚れることはなく、指Mを奥深く挿入しても袋部12を構成するシート11の余裕部分が追随するので破れることもない。
【0014】
次に、図4(a)に示すように指Mで直腸H内の便Bを外部へ掻き出し、挿入凹所13の周囲に案内して袋部12へ収容する。このとき、シート11は粘着層14で密着しているから臭気が外部へ漏洩することがない。これを指Mが届く範囲で繰り返して直腸H内の便Bを排出させていく。
【0015】
便Bの排出が終了すると、図4(b)に示すようにシート11を肛門から脱離し、肛門やその周囲の汚れを拭取パッド17で拭き取り、剥離紙16aを剥離した閉塞粘着部16で袋部12の口元を閉塞して排便器具10を収容した便Bとともに廃棄する。このように、実施例1では便Bの排出操作が容易であり、また極めて簡易な使い捨ての構造であるから低コストで処置できる。
【実施例2】
【0016】
図5〜8に示す実施例2は、掻出具により掻き出し操作を行なう排便器具の例である。図5は実施例2の排便器具の正面図、図6は図5のA−A断面図、図7,8は実施例2の排便器具の使用状態を示す説明図である。図中、20は排便器具、21はシート、21aは足と密接させる張出部、22は袋部、23は掻出具、23aは傘部、23bは把持部、25はシール部、26は粘着層、26aは剥離紙、27は吸収パッド、28は閉塞粘着部、28aは剥離紙、29は拭取パッド、30は付着層である。
【0017】
実施例2の排便器具20は、図5,6に示すように下腹部から臀部に渡って覆う面積の着色不透明の防水性の可撓性を有するシート21の肌面側に同シート21を肛門周囲及び腹部・臀部に脱着自在に密着させる環状の粘着層26を設け、同シート21の肛門に位置する部分を密着面と反対側へ膨出させて便Bを収容する所定容量の袋部22を形成し、同袋部22の中央部に軟質の傘部23aを先端に備えた細長の掻出具23をシート21に貫通させてシール部25による水密状態で進退自在に設け、シート21の密着面の肛門周囲位置に環状の吸収パッド27を取り付け、同吸収パッド27の外周に環状の閉塞粘着部28と吸収性の拭取パッド29を取り付け、シート21の肌面側周縁に同シート21を下腹部及び臀部に付着させる付着層30を設けている。
【0018】
まず、被処置者の肛門に必要に応じて潤滑クリーム等を塗布して滑り易くした後、図7(a)に示すように肛門周囲の肌面に吸収パッド27を配置して剥離紙26aを剥離した粘着層26でシート21を密着し、剥離紙(図示せず)を剥離した付着層30で下腹部及び臀部にシート21を付着し、図7(b)に示すように把持部23bを把持して掻出具23を肛門へ挿入する。掻出具23はシール部25によりシールした状態が保持されるので、便Bや臭気が外部へ漏洩することがない。
【0019】
次に、図8(a)に示すように掻出具23の傘部23aで直腸H内の便Bを外部へ掻き出し、シール部25の周囲に案内して袋部22へ収容する。このとき、シート21は粘着層26で密着しているから臭気が外部へ漏洩することがない。これを掻出具23の傘部23aが届く範囲で繰り返して直腸H内の便Bを排出させていく。
【0020】
便Bの排出が終了すると、図8(b)に示すように掻出具23を退避後シート21を肛門から脱離し、肛門やその周囲の汚れを拭取パッド29で拭き取り、剥離紙28aを剥離した閉塞粘着部28で袋部22の口元を閉塞して排便器具20を収容した便Bとともに廃棄する。このように、実施例2では便Bの排出操作が容易であり、また極めて簡易な使い捨ての構造であるから低コストで処置できる。
【0021】
図9に示すのは実施例2の排便器具の他の例である。図9は実施例2の他の例の排便器具の縦断面図である。図中、24は固着部である。実施例2の他の例の排便器具20は、掻出具23の途中をシート21の貫通させた箇所と固着している。図9に示すように使用時において、掻出具23を進退すると袋部22を構成するシート21がその余裕部分で進退するので掻き出しを阻害することがなく、操作性は何ら変わらないものである。この例はシール部25を省略できるから、より低コストに製造できるものである。その他、符号、構成は実施例2と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の排便器具は、お年寄り,患者,身障者等自力で排便できない人の処置に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の排便器具の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】実施例1の排便器具の使用状態を示す説明図である。
【図4】実施例1の排便器具の使用状態を示す説明図である。
【図5】実施例2の排便器具の正面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】実施例2の排便器具の使用状態を示す説明図である。
【図8】実施例2の排便器具の使用状態を示す説明図である。
【図9】実施例2の他の例の排便器具の縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 排便器具
11 シート
11a 張出部
12 袋部
13 挿入凹所
14 粘着層
14a 剥離紙
15 吸収パッド
16 閉塞粘着部
16a 剥離紙
17 拭取パッド
18 付着層
20 排便器具
21 シート
21a 張出部
22 袋部
23 掻出具
23a 傘部
23b 把持部
24 固着部
25 シール部
26 粘着層
26a 剥離紙
27 吸収パッド
28 閉塞粘着部
28a 剥離紙
29 拭取パッド
30 付着層
B 便
H 直腸
M 指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下腹部から臀部に渡って覆う面積の防水性のシートの肌面側周縁に同シートを下腹部及び臀部に付着させる剥離紙付きの付着層を設け、同シートの肛門周囲位置に肛門を囲むように配置される吸収パッドを取り付け、同吸収パッドを肌面に密接させる剥離紙付きの粘着層を設け、吸収パッドに囲まれるシート部分を肌面側と反対側へ大きく膨出させて便を収容する可撓性の袋部を形成し、指を袋部の外側からシートを介して直腸へ挿入して便を掻き出して袋部に収容するようにした排便器具。
【請求項2】
袋部の中央部に指を挿入する凹所を形成し、指を挿入し易くした請求項1記載の排便器具。
【請求項3】
下腹部から臀部に渡って覆う面積の防水性のシートの肌面側周縁に同シートを下腹部及び臀部に付着させる剥離紙付きの付着層を設け、同シートの肛門周囲位置に肛門を囲むように配置される吸収パッドを取り付け、同吸収パッドを肌面に密接させる剥離紙付きの粘着層を設け、吸収パッドに囲まれるシート部分を肌面側と反対側へ大きく膨出させて便を収容する可撓性の袋部を形成し、同袋部の中央部に直腸へ挿入して便を掻き出す掻出具を貫通させ、同貫通させた掻出具を袋部のシートと固着して袋部の余裕部分で掻出具を進退できるようにし、同掻出具の進退で掻き出された便を袋部に収容するようにした排便器具。
【請求項4】
下腹部から臀部に渡って覆う面積の防水性のシートの肌面側周縁に同シートを下腹部及び臀部に付着させる剥離紙付きの付着層を設け、同シートの肛門周囲位置に肛門を囲むように配置される吸収パッドを取り付け、同吸収パッドを肌面に密着させる剥離紙付きの粘着層を設け、吸収パッドに囲まれるシート部分を肌面側と反対側へ大きく膨出させて便を収容する可撓性の袋部を形成し、同袋部の中央部に直腸へ挿入して便を掻き出す掻出具を貫通させ、同貫通させた掻出具を袋部のシートと水密状態に保持して袋部に対して掻出具を進退できるようにし、同掻出具の進退で掻き出された便を袋部に収容するようにした排便器具。
【請求項5】
シートの肌面側の外周部に袋部を閉塞する剥離紙付きの閉塞粘着部を設けた請求項1〜4いずれか記載の排便器具。
【請求項6】
シートの閉塞粘着部の内側に吸収性の拭取パッドを取り付けた請求項5記載の排便器具。
【請求項7】
拭取パッドに消毒・消臭・抗菌のいずれか薬剤を浸漬させた請求項6記載の排便器具。
【請求項8】
シートを不透明の材料で構成し、肌面が見えないようにした請求項1〜7いずれか記載の排便器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−130226(P2006−130226A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325274(P2004−325274)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(390020709)
【Fターム(参考)】