説明

排出口部材および医療用バッグ

【課題】バッグ本体上部の排出チューブ接続部に負荷をかけずに容易に開封操作を行うことが可能で、排出チューブも完全に露呈し細菌汚染等が生じない排出口部材および医療用バッグを提供する。
【解決手段】排出口部材1は、バッグ本体の上部に接続する排出チューブ2と、一対の樹脂シートの周縁部を融着して袋状に形成され、袋状の内部に排出チューブ2が配置された保護シート3とを備え、保護シート3は、その一方の側部に形成された融着部3aの全長にわたって一体に形成された把持部5を有し、その把持部5は、排出チューブ2に向って切り欠かれた側部切欠部4によって上部把持部5aと下部把持部5bとに区分され、かつ、保護シート3は、その表面に外力によって破断する破断溝7を有し、その破断溝7は、側部切欠部4の近傍を溝開始点Aとし、保護シート3の他方の側部に形成された融着部3bの側端を溝終了点Bとするように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッグ本体の内部に収納された血液等の液体の排出に用いられる排出口部材およびそれを備えた医療用バッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液バッグ等の医療用バッグには、バッグ本体内に収納された血液等を必要時に排出するために、バッグ本体の上部側に排出口部材が接続されている。この排出口部材は、通常は液密に封止されているが、血液等の液体を排出する際には、排出口部材の内部に備えられたバッグ本体内部と連通するチューブの先端側が露呈するように、排出口部材を開封できる構成である必要がある。そのような排出口部材として、特許文献1では、以下のような構成のものが記載されている。
【0003】
図9(a)に示すように、特許文献1に記載されたプロテクター(本発明の排出口部材に相当する)31は、医療用バッグのバッグ本体42の上部側に取り付けられて輸血等に使用されるもので、樹脂シートを融着して袋状に形成し、その内部に輸血口38(本発明の排出チューブに相当する)を配置したプロテクター本体32と、プロテクター本体32の右側部の一部に接続された把持部33と、プロテクター本体32の上に形成された上スリットライン34および下スリットライン35と、下スリットライン35の破断開始点P側の延長線上に形成された切欠部36とを備え、切欠部36は把持部33とプロテクター本体32との接続部37の最下端部Sより下位置に形成され、上スリットライン34および下スリットライン35は最下端部Sを基準として左上斜め方向に形成されている。
【0004】
また、図9(b)に示すように、血液等を排出する際、プロテクター31の開封操作は、医療用バッグのバッグ本体42を片手で把手し、他方の手の指で把持部33を把持し、把持部33を上方に引っ張ることによって行われる。この開封操作によって、プロテクター本体32が切欠部36から破断し、その破断が下スリットライン35および上スリットライン34に移行して、プロテクター本体32の上部が破断して開口部39が形成され、その開口部39から輸血口38の先端側が露呈する。そして、露呈された輸血口38に針体(図示せず)を刺通して、輸血口38および針体を通して、バッグ本体42の内部に収納された血液等を排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平03−14186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のような構成を備えた従来のプロテクター31では、把持部33がプロテクター本体32の側部の一部(上部)としか接続されていないため、プロテクター31を開封する際に切欠部36、下スリットライン35および上スリットライン34に力が十分伝達されないことがある。その結果、プロテクター本体32が破断されず、輸血口38の露呈が妨げられるという問題がある。加えて、プロテクター31が接続されているバッグ本体42の上部に負荷がかかるという問題もある。そして、バッグ本体42の上部に負荷がかかると、バッグ本体42の上部、具体的には輸血口38が接続された輸血口接続部42bに破損等が生じて血液等の液漏れにつながる恐れがある。
【0007】
また、破断されたプロテクター本体32が取り除かれることなく上部に残るため、輸血口38の露呈が不十分となり、輸血口38への針体の刺通の際、輸血口38に手指が触れ、細菌汚染等を生じる恐れがあるという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その目的は、バッグ本体上部の排出チューブ接続部に負荷をかけずに容易に開封操作を行うことが可能で、排出チューブも完全に露呈し細菌汚染等が生じない排出口部材およびそれを備えた医療用バッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る排出口部材は、液体を内部に収納するバッグ本体の上部側に接続され、前記液体の排出に用いられる排出口部材であって、前記バッグ本体の上部に接続する排出チューブと、一対の樹脂シートの周縁部を融着して袋状に形成され、袋状の内部に前記排出チューブが配置された保護シートとを備え、前記保護シートは、その一方の側部に形成された融着部の全長にわたって一体に形成された把持部を有し、その把持部は、前記排出チューブに向って切り欠かれた側部切欠部によって上部把持部と下部把持部とに区分され、かつ、前記保護シートは、その表面に外力によって破断する破断溝を有し、その破断溝は、前記側部切欠部の近傍を溝開始点とし、前記保護シートの他方の側部に形成された融着部の側端を溝終了点とするように形成されていることを特徴とする。
【0010】
前記構成によれば、排出口部材を開封する際、排出口部材の保護シートが、融着部と全長にわたって一体に形成された把持部を有することによって、開封の際の力が保護シートの側部全体に伝達されることとなるため、破断溝に力が十分伝達され、保護シートが破断されやすくなると共に、排出チューブが接続されているバッグ本体上部にかかる負担が小さくなる。また、把持部が側部切欠部によって上部把持部と下部把持部とに区分されることによって、開封する際に誤って把持部の下部、すなわち、下部把持部のみを指で把持して排出口部材を開封することが防止される。そして、上部把持部と下部把持部の両者を指で把持して排出口部材を開封するため、保護シートが破断し易くなる。さらに、破断溝の溝終了点が融着部の側端であることによって、保護シートの破断が破断溝に沿って移行しやすくなると共に、保護シートの上部が破断によって完全に取り除かれるため、排出チューブの露呈が保護シートによって妨げられることなく完全なものとなる。
【0011】
また、本発明に係る排出口部材は、前記溝終了点が前記溝開始点より上方に位置するように前記破断溝が斜め方向に形成されていることを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、破断溝が斜め方向に形成されていることによって、排出口部材を開封する際、バッグ本体上部の排出チューブ接続部にかかる負担をさらに小さくできると共に、保護シートの破断が破断溝に沿ってさらに移行し易くなる。
【0013】
また、本発明に係る排出口部材は、前記破断溝が、互いに平行に形成された複数本の溝で構成されていることを特徴とする。
【0014】
前記構成によれば、破断溝が複数本の溝で構成されていることによって、排出口部材を開封する際、保護シートの破断が破断溝に沿ってさらに移行し易くなる。
【0015】
また、本発明に係る排出口部材は、前記保護シートが、その表面に外力によって破断する補助溝をさらに有し、かつ、前記補助溝が、前記下部把持部の下端を溝開始点とし、前記破断溝を溝終了点とするように形成されていることを特徴とする。
【0016】
前記構成によれば、保護シートが補助溝をさらに有することによって、排出口部材を開封する際、誤って上部把持部でなく下部把持部を指で把持して保護シートを破断しても、補助溝が破断するため、バッグ本体上部にかかる負担を小さくできる。また、補助溝の溝終了点が破断溝であることによって、補助溝の破断が破断溝に移行するため、保護シートの上部が破断によって完全に取り除かれ、排出チューブの露呈が保護シートによって妨げられることなく完全なものとなる。
【0017】
また、本発明に係る排出口部材は、前記補助溝が、互いに平行に形成された複数本の溝で構成されていることを特徴とする。
【0018】
前記構成によれば、補助溝が複数本の溝で構成されていることによって、排出口部材を誤って下部把持部を把持して開封した際にも、保護シートの破断が補助溝に沿ってさらに移行し易くなる。
【0019】
また、本発明に係る排出口部材は、前記保護シートが、前記下部把持部の下端に前記側部切欠部に向って切り欠かれた下部切欠部をさらに有することを特徴とする。
【0020】
前記構成によれば、保護シートが下部切欠部をさらに有することによって、排出口部材を開封する際、誤って上部把持部でなく下部把持部を指で把持して保護シートを破断しても、下部切欠部が側部切欠部に向かって破断するため、バッグ本体上部の排出チューブ接続部にかかる負担を小さくできる。
【0021】
また、本発明に係る排出口部材は、前記保護シートが、前記下部把持部の下部と前記バッグ本体の上部とを融着して形成した接続部をさらに有することを特徴とする。
【0022】
前記構成によれば、保護シートが接続部をさらに有することによって、保護シートとバッグ本体上部との接続強度が増加するため、排出口部材を開封する際にバッグ本体上部に負荷がかかっても、バッグ本体上部に破損等が生じにくくなる。
【0023】
本発明に係る医療用バッグは、前記排出口部材と、前記排出口部材が上部側に接続され、内部に液体を収納するバッグ本体とを備えることを特徴とする。
【0024】
前記構成によれば、医療用バッグが前記した排出口部材を備えることによって、排出口部材を開封する際にバッグ本体上部の排出チューブ接続部にかかる負担を小さくできる。また、排出チューブの露呈が保護シートによって妨げられることなく完全なものとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る排出口部材およびそれを備えた医療用バッグによれば、バッグ本体上部の排出チューブ接続部に負荷をかけずに容易に開封操作を行うことが可能で、排出チューブも完全に露呈し細菌汚染等が生じない
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本発明に係る排出口部材の構成を示す正面図、(b)は(a)の変形例の構成を示す正面図である。
【図2】図1の排出口部材の変形例の構成を示す正面図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明に係る排出口部材の別の形態の構成を示す正面図である。
【図4】図3(c)の排出口部材の変形例の構成を示す正面図である。
【図5】本発明に係る排出口部材の別の形態の構成を示す正面図である。
【図6】本発明に係る排出口部材の別の形態の構成を示す正面図である。
【図7】本発明に係る医療用バッグの構成を示す正面図である。
【図8】(a)、(b)は排出口部材を用いて医療用バッグを製造する工程の一部を説明する概略図である。
【図9】(a)は従来の排出口部材の構成を示す正面図、(b)は(a)の排出口部材の開封状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る排出口部材および医療用バッグの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
<排出口部材(第1実施形態)>
本発明に係る排出口部材の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1(a)に示すように、排出口部材1は、排出チューブ2と、排出チューブ2を内部に配置した保護シート3とを備え、保護シート3は把持部5と破断溝7を有する。そして、排出チューブ2、保護シート3の各部材を構成する材料は、ポリ塩化ビニル、オレフィン系エラストマー等の熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、各部材は、それぞれを同種材料で構成してもよいし、異種材料で構成してもよい。
なお、排出口部材1では、医療用バッグ21のバッグ本体22(図7参照)と接続する側を下側、その反対側を上側と定義する。また、排出口部材1の開封操作とは、保護シート3の一部を破断によって取り除いて、排出チューブ2を露呈させる操作をいう。
以下、各構成について説明する。
【0029】
(排出チューブ)
排出チューブ2は、バッグ本体22の内部に収納される液体を排出、または、バッグ本体22の内部に液体を注入するためのもので、外径:3〜15mmの管体で構成される。そして、排出チューブ2は、その下側(基端側)がバッグ本体22を構成する樹脂シート間に挟持され、かつ、融着または接着によって、バッグ本体22の上部に、バッグ本体22の内部と連通するように、接続される(図7参照)。
【0030】
図1(a)に示すように、排出チューブ2は、その内腔を封止する封止膜2aを有する。排出チューブ2が封止膜2aを有することによって、排出口部材1(保護シート3)の未開封、開封にかかわらず、バッグ本体22の内部に収納された液体の排出、および、バッグ本体22の内部への異物、細菌等の浸入を防止できる。なお、保護シート3の破断後、封止膜2aを針体(図示せず)で刺通することによって、バッグ本体22の内部と連通する流路が形成される。そして、針体を通して、バッグ本体22の内部に収納された液体が排出、または、バッグ本体22の内部へ液体が注入される。
【0031】
(保護シート)
保護シート3は、その内部に排出チューブ2を配置し、排出チューブ2への異物、細菌等の浸入を防止するためのもので、樹脂シート(シートの厚さは、通常、0.1〜0.5mm)で構成される。そして、保護シート3は、一対の樹脂シートを重ね、その間に排出チューブ2を挟持して、その周縁部を融着することによって袋状に形成される。すなわち、保護シート3は、融着部3a、融着部3b、融着部3cおよび融着部3dの形成によって袋状に形成される。そして、保護シート3の袋状の内部には、排出チューブ2が配置されることとなる。
【0032】
保護シート3は、排出口部材1の開封操作の際に指で把持される把持部5を有すると共に、外力によって破断する破断溝7を有する。そして、破断溝7の破断によって、保護シート3の上部が取り除かれ、保護シート3の内部に配置された排出チューブ2の上側(先端側)が露呈されることとなる。
【0033】
(把持部)
把持部5は、排出口部材1の開封操作の際に指で把持されるもので、保護シート3の一方の側部に形成された融着部3aの全長にわたって一体に形成される。このような把持部5を形成することよって、把持部5が保護シート3の側部全体と接続することとなるため、排出口部材1を開封する際に、破断溝7に力が十分伝達され、保護シート3が破断され易くなる。加えて、バッグ本体上部、具体的には、バッグ本体22の上部に排出チューブ2が接続されるチューブ接続部22b(図7参照)にかかる負担を小さくできるため、チューブ接続部22bにおける樹脂シートの破損等が生じず、液漏れ等を防止できる。また、このような把持部5は、保護シート3の融着部3aを形成する際に、同時に融着によって形成すること、例えば、融着部3aの融着幅を拡げて樹脂シートの融着を行うことによって形成される。
【0034】
把持部5は、排出チューブ2に向かって切り欠かれた側部切欠部4によって上部把持部5aと下部把持部5bとに区分される。そして、把持部5が側部切欠部4によって上部把持部5aと下部把持部5bとに区分されることによって、排出口部材1を開封する際の把持場所が上部把持部5aと下部把持部5bであることが明確となるため、誤って下部把持部5bのみを指で把持して排出口部材1を開封することが防止される。そして、一方の手で下部把持部5bを把持して排出口部材1を固定し、他方の手で上部把持部5aを把持して引っ張ることにより排出口部材1を開封するため、保護シート3が破断し易くなる。なお、側部切欠部4の形成位置は、保護シート3の側部の1/3〜1/2の高さとなる位置が好ましい。側部切欠部4が前記の形成位置であることによって、保護シート3の破断状態、および、保護シート3の破断による排出チューブ2の露呈状態が良好となる。
【0035】
上部把持部5aの表面には、凸状のリブ6aが形成されていることが好ましい。このようなリブ6aを形成することによって、排出口部材1を開封する際に、上部把持部5aを把持した指が滑ることが防止され、排出口部材1の開封操作が容易となる。また、リブ6aの形状は、指の滑りが防止される形状であれば特に限定されないが、開封方向を示す矢印形状が好ましい。
【0036】
下部把持部5bの表面には、凸状のリブ6bが形成されていることが好ましい。このようなリブ6bを形成することによって、排出口部材1の開封時に下部把持部5bを把持した指が滑ることが防止され、排出チューブ2に手指が接触することが防止されると共に、開封操作が確実になる。また、排出口部材1の開封後、保護シート3から露呈した排出チューブ2に針体(図示せず)を刺通する際に、下部把持部5bを把持した指が滑ることが防止され、排出チューブ2に手指が接触することが防止されると共に、刺通操作も容易となる。なお、排出チューブ2への針体の刺通は、バッグ本体22(図7参照)の内部に収納された液体の排出、または、バッグ本体22の内部に液体を注入する目的で行うものである。
【0037】
リブ6bの形状は、指の滑りが防止される形状であれば特に限定されないが、丸型形状が好ましい。また、下部把持部5bに形成するリブ6bの形状を、上部把持部5aの表面に形成するリブ6aの形状と異なるものにすることによって、排出口部材1を開封する際に、誤って下部把持部5bのみを把持して開封操作する(引っ張る)ことが防止できる。
【0038】
(破断溝)
破断溝7は、保護シート3の表面に形成され、排出口部材1の開封操作の際の外力によって破断する。そして、破断溝7は、側部切欠部4の近傍を溝開始点Aとし、保護シート3の他方の側部に形成された融着部3bの側端を溝終了点Bとする。ここで、溝開始点Aとなる側部切欠部4の近傍とは、排出口部材1を開封する際、側部切欠部4を保護シート3の破断の開始点として、通常の開封操作で側部切欠部4から破断溝7に破断が容易に移行する位置を意味する。そして、その位置は、保護シート3を構成する樹脂シートの強度に応じて適宜設定されるが、ポリ塩化ビニルシート(シート厚さ:0.4mm)の場合には、側部切欠部4と重複した位置であることが好ましい。
【0039】
溝終了点Bを融着部3bの側端とすることによって、排出口部材1の開封操作で保護シート3の上部を取り除くことができるため、排出チューブ2を完全に露呈することができる。それによって、排出チューブ2に針体を刺通する際に、排出チューブ2に手指が触れることが防止でき、細菌汚染等が生じる恐れがなくなる。
【0040】
破断溝7は、その深さが保護シート3を構成する樹脂シートの厚さの1/3〜3/4であることが好ましい。破断溝7の深さが樹脂シートの厚さの1/3未満であると、破断溝7の深さが浅く、保護シート3の破断が困難となり易い。また、破断溝7の深さが樹脂シートの厚さの3/4を超えると、破断溝7の深さが深すぎて、医療用バッグ21の製造の際に保護シート3が容易に破断して、排出チューブ2が露呈して細菌汚染等が生じ易くなる。また、破断溝7は、溝開始点Aから溝終了点Bまで連続して形成されたものに限定されず、所定間隔(例えば、0.5〜1mm)をおいて所定長(例えば、1〜3mm)の溝が不連続に形成されたものであってもよい(図示せず)。なお、破断溝7は、高周波ウエルダー、超音波ミシン、ヒートカッター等で形成される。
【0041】
破断溝7は、溝終了点Bが溝開始点Aより上方に位置するように斜め方向に形成されていることが好ましい。破断溝7が斜め方向に形成されていることによって、排出口部材1を開封する際、バッグ本体上部にかかる負担をさらに小さくできると共に、保護シート3の破断が破断溝7に沿ってさらに移行しやすくなる。そして、斜め方向に形成された破断溝7の傾斜角度は、通常の開封操作で保護シート3の破断が溝開始点Aから溝終了点Bまで容易に移行できるように、保護シート3を構成する樹脂シートの強度に応じて適宜設定されるが、ポリ塩化ビニルシート(シート厚さ:0.4mm)の場合には、10〜40度であることが好ましい。
【0042】
図1(b)に示すように、破断溝7は、1本でもよいが、互いに平行に形成された複数本の溝で構成されていることが更に好ましい。破断溝7が複数本の溝で構成されていることによって、排出口部材1を開封する際、保護シート3の破断が破断溝7に沿ってさらに移行しやすくなる。破断溝7の本数は、通常の開封操作で保護シート3の破断が破断溝7に沿って移行できるように、保護シート3を構成する樹脂シートの強度に応じて適宜設定されるが、ポリ塩化ビニルシート(シート厚さ:0.4mm)の場合には、1〜9本であることが好ましい。
【0043】
次に、前記した排出口部材1の変形例について説明する。
前記した排出口部材1は、医療用バッグの製造工程において、後記する外芯金方式(図8(a)参照)でバッグ本体22の樹脂シート22aと接続する際に用いられる排出口部材1である。本発明に係る排出口部材は、このような外芯金方式に用いられる排出口部材1に限定されるものではなく、後記する内芯金方式(図8(b)参照)でバッグ本体22の樹脂シート22aと接続する際に用いられる図1(b)に示す排出口部材1Aであってもよい。
【0044】
排出口部材1Aは、その構成は排出口部材1(図1(a)参照)と同一であるが、排出チューブ2の長さにおいて排出口部材1と相違し、排出チューブ2の保護シート3の下端からの突出長さLが、排出口部材1と比べて長く設定されている。具体的には、排出口部材1における排出チューブ2の保護シート3からの突出長さLが0〜3mmであるのに対し、排出口部材1Aでは突出長さLが10〜15mmである。
【0045】
<排出口部材(第2実施形態)>
次に、本発明に係る排出口部材の第2実施形態について、図面を参照して説明する。
図3(a)〜(c)に示すように、第2実施形態の排出口部材1は、排出チューブ2と、保護シート3とを備え、保護シート3が把持部5と破断溝7とを有する第1実施形態と同様の構成に加えて、保護シート3が補助溝8をさらに有する。以下、各構成について説明する。なお、第1実施形態と同一構成については、前記したとおりであるので、説明を省略する。
【0046】
(補助溝)
補助溝8は、保護シート3の表面に形成され、排出口部材1の開封操作の際の外力によって破断する。そして、補助溝8は、下部把持部5bの下端を溝開始点Cとし、破断溝7を溝終了点Dとする。このような補助溝8を保護シート3が有することによって、排出口部材1を開封する際、誤って下部把持部5bのみを指で把持して引っ張ることにより開封操作した際にも、補助溝8が破断するため、保護シート3を破断できると共に、開封の際にバッグ本体上部の排出チューブ接続部にかかる負担を小さくできる。
【0047】
補助溝8において、溝開始点Cが下部把持部5bの下端であることによって、排出口部材1の通常の開封操作、すなわち、上部把持部5aを指で把持して開封する際には、補助溝8の破断が開始し難くなる。また、下部把持部5bのみを指で把持して引っ張ることにより排出口部材1を開封した際には、補助溝8の溝終了点Dが破断溝7であることによって、補助溝8の破断が破断溝7に移行するため、保護シート3の上部が破断によって完全に取り除かれ、排出チューブ2の露呈が保護シート3によって妨げられることなく完全なものとなる。
【0048】
補助溝8において、溝開始点Cの下部把持部5bの下端における左右方向の位置は、特に限定されないが、補助溝8の破断状態が良好となる破断溝7の溝開始点Aの直下の位置が好ましい。また、溝終了点Dの破断溝7における位置は、図3(a)〜(c)に示された位置のいずれでもよい。すなわち、図3(a)の溝終了点Dは、破断溝7の溝開始点Aと同一位置であり、図3(b)の溝終了点Dは、破断溝7の溝開始点Aと溝終了点Bとの間の位置であり、図3(c)の溝終了点Dは、破断溝7の溝終了点Bと同一位置である。なお、補助溝8における溝終了点Dは、補助溝8および破断溝7の破断によって排出チューブ2の露呈が完全となる図3(c)に示された破断溝7の溝終了点Bと同一位置であることが好ましい。
【0049】
補助溝8は、破断溝7と同等以上の破断強度を有することが好ましく、破断溝7よりも大きい破断強度を有することが更に好ましい。補助溝8がこのような破断強度を有することによって、排出口部材1の通常の開封操作、すなわち、上部把持部5aを指で把持して開封する際には、破断溝7のみが破断し、補助溝8は破断しない。その結果、保護シート3の破断形状が不均一とならないため、開封作業性が向上する。そして、このような補助溝8は、その深さが保護シート3を構成する樹脂シートの厚さの1/3〜2/3であることが好ましい。
【0050】
補助溝8は、破断溝7と同様に、溝開始点Cから溝終了点Dまで連続して形成されたものに限定されず、所定間隔(例えば、0.5〜1mm)をおいて所定長(例えば、1〜3mm)の溝が不連続に形成されたものであってもよい(図示せず)。なお、補助溝8は、高周波ウエルダー、超音波ミシン、ヒートカッター等で形成される。
【0051】
図4に示すように、補助溝8は、1本でもよいが、互いに平行に形成された複数本の溝で構成されていることが更に好ましい。補助溝8が複数本の溝で構成されていることによって、保護シート3の破断が補助溝8に沿ってさらに移行しやすくなる。補助溝8の本数は、保護シート3の破断が補助溝8に沿って移行できるように、保護シート3を構成する樹脂シートの強度に応じて適宜設定されるが、ポリ塩化ビニルシート(シート厚さ:0.4mm)の場合には、1〜5本であることが好ましい。
【0052】
<排出口部材(第3実施形態)>
次に、本発明に係る排出口部材の第3実施形態について、図面を参照して説明する。
図5に示すように、第3実施形態の排出口部材1は、排出チューブ2と、保護シート3とを備え、保護シート3が把持部5と破断溝7とを有する第1実施形態と同様の構成に加えて、保護シート3が下部切欠部9をさらに有する。以下、各構成について説明する。なお、第1実施形態と同一構成については、前記したとおりであるので、説明を省略する。
【0053】
(下部切欠部)
下部切欠部9は、保護シート3の下部把持部5bの下端に、側部切欠部4に向って切り欠かれた切欠部である。このような下部切欠部9を保護シート3が有することによって、排出口部材1を開封する際、誤って下部把持部5bのみを指で把持して引っ張ることにより開封操作した際にも、下部切欠部9から破断が開始するため、保護シート3を破断できると共に、開封の際にバッグ本体上部の排出チューブ接続部にかかる負担を小さくできる。また、下部切欠部9は、溝開始点A(破断溝7)の直下の位置に形成されていることが好ましい。このような位置に下部切欠部9が形成されていることによって、下部切欠部9で開始された破断が破断溝7に移行し易くなる。
【0054】
下部切欠部9は、側部切欠部4に対して小さく形成されていることが好ましい。下部切欠部9を小さく形成することによって、排出口部材1の通常の開封操作、すなわち、上部把持部5aを指で把持して引っ張ることにより開封操作した際には、側部切欠部4のみで破断が開始され、下部切欠部9では破断が開始されない。その結果、保護シート3の破断形状が不均一とならないため、開封作業性が向上する。
【0055】
下部切欠部9は、図示しないが、複数の切欠部で構成されていてもよい。下部切欠部9を複数の切欠部で構成することによって、下部把持部5bを指で把持して排出口部材1を開封する際、下部切欠部9で破断が開始し易くなる。
【0056】
<排出口部材(第4実施形態)>
次に、本発明に係る排出口部材の第4実施形態について、図面を参照して説明する。
図6に示すように、第4実施形態の排出口部材1は、排出チューブ2と、保護シート3とを備え、保護シート3が把持部5と破断溝7とを有する第1実施形態と同様の構成に加えて、保護シート3が接続部10をさらに有する。以下、各構成について説明する。なお、第1実施形態と同一構成については、前記したとおりであるので、説明を省略する。
【0057】
(接続部)
接続部10は、下部把持部5b(保護シート3)の下部とバッグ本体22の上部とを融着して形成したものである。このような接続部10を保護シート3が有することによって、下部把持部5b(保護シート3)とバッグ本体上部との接続強度が増加するため、排出口部材を開封する際にバッグ本体上部に負荷がかかっても、バッグ本体上部に破損等が生じ難くなる。
【0058】
接続部10は、医療用バッグの製造工程において、排出口部材1の排出チューブ2とバッグ本体22の上部とを融着によって接続する際に、下部把持部5bの下部とバッグ本体22の上部とを同時に融着することによって形成する。なお、接続部10は、排出チューブ2の融着後に、下部把持部5bとバッグ本体22の上部との融着によって形成してもよい。
【0059】
接続部10の大きさ、すなわち、下部把持部5bのバッグ本体22との融着面積は、下部把持部5b(保護シート3)およびバッグ本体22を構成する樹脂シートの強度に応じて適宜設定されるが、ポリ塩化ビニルシート(シート厚さ:0.4mm)の場合には、100〜250mmであることが好ましい。
【0060】
図1〜図6に示すように、本発明に係る第1〜第4実施形態の排出口部材1は、保護シート3が誘導溝12をさらに有し、その誘導溝12の溝開始点が側部切欠部4、溝終了点が破断溝7の溝開始点Aであることが好ましい。また、誘導溝12は、その溝深さを破断溝7と同程度とすることによって、その破断強度を破断溝7と同程度とすることが好ましい。このような誘導溝12を保護シート3が有することによって、排出口部材1を開封する際、側部切欠部4で開始された破断が破断溝7に移行し易くなる。なお、破断溝7の側部切欠部側の長さを延長して、すなわち、破断溝7の溝開始点Aを側部切欠部4とすることによって、破断溝7の側部切欠部側の一部を誘導溝12として用いてもよい。
【0061】
<医療用バッグ>
本発明に係る医療用バッグは、血液バッグ、輸液バッグ、栄養剤バッグ等であって、医療用途に使用されるバッグ(容器)であれば、特に限定されない。
図7に示すように、医療用バッグ21は、排出口部材1と、排出口部材1が上部側に接続され、内部に液体を収納するバッグ本体22とを備える。バッグ本体22に収納される液体としては、血液、血液成分(赤血球、バフィーコート、白血球、血小板、血漿等)、抗凝固剤、赤血球保存液、血小板保存液、輸液剤(薬液、生理食塩水等)、栄養剤等で、特にこれらに限定されるものではない。以下、各構成について説明する。
【0062】
(バッグ本体)
バッグ本体22は、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料からなる可とう性を有する樹脂シートで構成され、樹脂シートを2枚重ね、周縁部を融着(例えば、熱融着、高周波融着)または接着することによりシールして袋状に成形したものである。また、樹脂材料を円筒押出成形により筒状に成形し、その両縁部を融着または接着して袋状にしたものでもよい。なお、バッグ本体22は、内部に液体を収納できるように袋状に成形されたものであれば、特に限定されない。そして、バッグ本体22の大きさは、その内容量(200〜1000ml)によって、適宜決定する。
【0063】
バッグ本体22の上部側には、本発明に係る排出口部材1が液密に接続されている。また、バッグ本体22の上部側には、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料からなる可とう性を有するチューブ23およびコネクター231が液密に接続されている。この場合、排出口部材1およびコネクター231は、その下側(基端側)が、バッグ本体22を構成する樹脂シート間に挟持され、かつ、バッグ本体22の内部と連通するように融着または接着によって接続されている。また、図示しないが、チューブ23の上側(先端側)には、例えば、針体(採血針)、または、バッグ本体22と同様のバッグまたは異なる構成のバッグと接続されている。なお、チューブ23の用途や接続相手、接続本数等は、特に限定されない。
【0064】
排出口部材とバッグ本体との接続方法としては、外芯金方式または内芯金方式が用いられる。以下、外芯金方式または内芯金方式について図面を参照して説明する。なお、排出チューブ2の突出長さLが短い排出口部材1(図1(a)参照)には外芯金方式が用いられ、排出チューブ2の突出長さLが長い排出口部材1Aには内芯金方式内が用いられる。
【0065】
(外芯金方式)
図8(a)に示すように、バッグ本体22を構成する2枚の樹脂シート22a、22aの間に、樹脂シート22a、22aの外側から芯金24を用いてコネクター11を挿入する。そして、コネクター11が挿入された部分の樹脂シート22a、22aを融着または接着する。次に、樹脂シート22aに融着または接着されたコネクター11に排出口部材1を嵌合して、融着または接着によって排出口部材1をコネクター11に接続することによって、バッグ本体22の上部側に排出口部材1が接続される。
【0066】
(内芯金方式)
図8(b)に示すように、バッグ本体22を構成する2枚の樹脂シート22a、22aの内側に芯金24を挿入し、その挿入された芯金24に排出口部材1Aを嵌合する。これによって、樹脂シート22a、22aの所定位置に排出口部材1Aがセットされる。次に、芯金24を排出口部材1Aから抜いて、樹脂シート22a、22aと排出口部材1Aを融着または接着することによって、バッグ本体22の上部側に排出口部材1Aが接続される。
【0067】
(排出口部材)
排出口部材1は、バッグ本体22の上部側に接続され、バッグ本体22の内部に収納される液体を排出するためのもので、その構成については、前記したとおりである。なお、排出口部材1は、バッグ本体22の内部からの液体の排出だけでなく、外部からバッグ本体22の内部に液体を注入するために用いてもよい。また、バッグ本体22の上部側に接続される排出口部材1の個数は、本発明の実施形態では図7に示すように2個であるが、2個に限定されず、1個または2個以上であってもよい。
【0068】
<排出口部材および医療用バッグの使用方法>
次に、排出口部材および医療用バッグの使用方法について説明する。ここで、排出口部材および医療用バッグの各構成については、図1(a)、図7を参照して説明する。
【0069】
医療用バッグ21を机上に置いた状態もしくはスタンド等に吊り下げた状態で、バッグ本体22に接続された排出口部材1の下部把持部5bを一方の手の指で把持して排出口部材1を固定し、上部把持部5aを他方の手の指で把持して、上部把持部5aの表面にリブ6aによって示された矢印方向に上部把持部5aを引っ張る。これによって、保護シート3の側部切欠部4から破断が開始し、破断溝7に沿って破断が移行して、保護シート3の一部が取り除かれ、保護シート3の内部に配置された排出チューブ2が露呈する。次に、露呈した排出チューブ2に針体を刺通し、排出チューブ2および針体を介して、バッグ本体22の内部に収納された液体を針体に接続された輸血セットや他のバッグに排出する。
【符号の説明】
【0070】
1 排出口部材
2 排出チューブ
3 保護シート
3 保護シート
3a、3b、3c、3d 融着部
4 側部切欠部
5 把持部
5a 上部把持部
5b 下部把持部
7 破断溝
8 補助溝
9 下部切欠部
10 接続部
21 医療用バッグ
22 バッグ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を内部に収納するバッグ本体の上部側に接続され、前記液体の排出に用いられる排出口部材であって、
前記バッグ本体の上部に接続する排出チューブと、
一対の樹脂シートの周縁部を融着して袋状に形成され、袋状の内部に前記排出チューブが配置された保護シートとを備え、
前記保護シートは、その一方の側部に形成された融着部の全長にわたって一体に形成された把持部を有し、その把持部は、前記排出チューブに向って切り欠かれた側部切欠部によって上部把持部と下部把持部とに区分され、かつ、
前記保護シートは、その表面に外力によって破断する破断溝を有し、その破断溝は、前記側部切欠部の近傍を溝開始点とし、前記保護シートの他方の側部に形成された融着部の側端を溝終了点とするように形成されていることを特徴とする排出口部材。
【請求項2】
前記破断溝は、前記溝終了点が前記溝開始点より上方に位置するように斜め方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排出口部材。
【請求項3】
前記破断溝は、互いに平行に形成された複数本の溝で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排出口部材。
【請求項4】
前記保護シートは、その表面に外力によって破断する補助溝をさらに有し、かつ、前記補助溝は、前記下部把持部の下端を溝開始点とし、前記破断溝を溝終了点とするように形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の排出口部材。
【請求項5】
前記補助溝は、互いに平行に形成された複数本の溝で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の排出口部材。
【請求項6】
前記保護シートは、前記下部把持部の下端に前記側部切欠部に向って切り欠かれた下部切欠部をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の排出口部材。
【請求項7】
前記保護シートは、前記下部把持部の下部と前記バッグ本体の上部とを融着して形成した接続部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の排出口部材。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の排出口部材と、
前記排出口部材が上部側に接続され、内部に液体を収納するバッグ本体とを備えることを特徴とする医療用バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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