説明

排尿障害治療装置

【課題】侵襲性もなく、患者自身が簡便に治療することができる排尿障害治療装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電極面が凸状の形状を有する刺激印加電極3と、前記人体の所望の部位の皮膚表面上に配置される基準電極4と、下肢内側面のくるぶし9に配置する部分に穴部11を備え、SP−6ポイント10を含む足首8全体を巻装し、前記穴部11を基準として定められる前記SP−6ポイント10の皮膚表面に対応する位置に前記刺激印加電極3を設置した巻装部6と、前記基準電極4の電位に対し定められる所定の大きさの電圧からなる前記刺激印加信号を前記刺激印加電極3へ供給する刺激装置2とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に失禁や頻尿を抑制する排尿障害治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
失禁や頻尿といった排尿障害を、仙骨を通る神経を刺激して治療する方法がある。
【0003】
図5の人体15側断面図で示すように、尿道括約筋16等の骨盤底筋群の動きを制御する陰部神経17と、膀胱18の動きを制御する骨盤内臓神経19とが仙骨20を通っている。そのため、仙骨20を介して、これら陰部神経17と骨盤内臓神経19とを刺激することで蓄排尿を制御することができる。
【0004】
一方、後頚骨神経21は、足底から足首8の内側を通り、坐骨神経23を介して仙骨20に繋がっている。そのため、図6に示すような刺激装置24と針電極25、基準電極26およびリードケーブル27とで構成され、図7に示す下肢内側面28のくるぶし29から大よそ5〜6センチ膝方向部分に存在するSP−6ポイント30部分に針電極25を穿刺し、穿刺した針電極25へ刺激装置24から刺激印加信号を供給する排尿障害治療装置が提案されている(例えば、下記非特許文献1)。
【0005】
SP−6ポイント30は、頸骨の直ぐ後ろの皮膚上にあり、後頸骨神経21に近接する皮膚上に位置する。SP−6ポイント30は経穴に相当し、山陰交とも呼ばれる。山陰交は、泌尿器疾患や消化器官を調節する経穴として知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Klingler HC、Pycha A、Schmidbauer J、Marberger M、「Use of peripheral neuromodulation of the S3 region for treatment of detrusor overactivity:a urodynamic−based study.」、Urology、2000年11月1日、第56巻、第5号、766−771頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、下肢のSP−6ポイントに針電極を穿刺するという侵襲性を有する治療であるから、患者にとって痛みや苦痛を伴うという課題を有していた。
【0008】
また、侵襲性を有する治療であることから、治療の都度、穿刺を医師等の医療従事者のもとで行う必要があり、簡便に治療することができないという課題を有していた。
そこで、本発明は、前記課題を解決するもので、針電極をSP−6ポイントに穿刺する必要がなく、患者自身が簡便に治療できる排尿障害治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明の排尿障害治療装置は、電極面が凸状の形状を有する刺激印加電極と、前記人体の所望の部位の皮膚表面上に配置される基準電極と、下肢内側面のくるぶしに配置する部分に穴部を備え、SP−6ポイントを含む足首全体を巻装し、前記穴部を基準として定められる前記SP−6ポイントの皮膚表面に対応する位
置に前記刺激印加電極を設置した巻装部と、前記基準電極の電位に対し定められる所定の大きさの電圧からなる前記刺激印加信号を前記刺激印加電極へ供給する刺激装置とを備えた構成とし、これにより所期の目的を達成することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の排尿障害治療装置によれば、電極面が凸状の形状を有する刺激印加電極と、前記人体の所望の部位の皮膚表面上に配置される基準電極と、下肢内側面のくるぶしに配置する部分に穴部を備え、SP−6ポイントを含む足首全体を巻装し、前記穴部を基準として定められる前記SP−6ポイントの皮膚表面に対応する位置に前記刺激印加電極を設置した巻装部と、前記基準電極の電位に対し定められる所定の大きさの電圧からなる前記刺激印加信号を前記刺激印加電極へ供給する刺激装置とを備えた構成としたものであり、針電極を患者のSP−6ポイントに穿刺する必要する必要もなく、非侵襲で治療を行うことができる。
【0011】
その結果、患者への負担を軽減することが可能となり、また、穿刺に伴う穿刺部分への細菌等による感染の危険性も伴わないため安全に治療を実施することができる。さらに、治療の都度、医師等の医療従事者のもとで行う必要がなく、患者自身で簡便に治療を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における排尿障害治療装置を示す図
【図2】本発明の実施の形態1における排尿障害治療装置の巻装部を示す図
【図3】本発明の実施の形態2における排尿障害治療装置を示す図
【図4】本発明の実施の形態2における排尿障害治療装置の巻装部を示す図
【図5】排尿障害を司る神経を示した人体側断面図
【図6】従来の排尿障害治療装置を示す図
【図7】SP−6ポイントの位置を示す下肢内側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の排尿障害治療装置の実施の形態を図面と共に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本願発明の実施の形態1における排尿障害治療装置を示している。
【0015】
実施の形態1における排尿障害治療装置1は、刺激装置2、刺激印加電極3、基準電極4、リードケーブル5、巻装部6およびベルト部7から構成される。
【0016】
刺激装置2は、リードケーブル5を介して刺激印加電極3と基準電極4とに電気的に接続されており、基準電極4の電位を基準として、刺激印加信号として矩形波のパルス信号を刺激印加電極3に供給するものである。
【0017】
刺激印加電極3は、足首8の下肢内側面側のくるぶし9から大よそ5〜6センチ膝方向側のSP−6ポイント10の皮膚表面上に当接するものであって、刺激装置2からの刺激印加信号を、SP−6ポイント10を介して生体内部へ供給させるものである。そして、刺激印加電極3は、後述する巻装部6およびベルト部7で足首8を固定した際に確実に皮膚表面に当節するように電極面は凸状で形成されている。基準電極4は、所望の皮膚表面上に配置されるものであって、刺激装置2から刺激印加電極3に刺激印加信号を供給する際に、この基準電極4の電位を基準として刺激印加信号の大きさの電圧を定めるためのものである。
【0018】
巻装部6の構成を図2に示す。巻装部6は、SP−6ポイント10を含む足首8全体を巻装するものであって、その材質は絶縁性を有する材質で構成される。下肢内側面のくるぶしに配置する部分にくるぶしが露出するように穴部11が設けられている。そして、この巻装部6には、足首8全体を巻装した後に、所望の締圧で固定することが可能なベルト部7が設けられている。すなわち、この巻装部6は、下肢内側面のくるぶしに穴部11を配置した後に足首8全体を巻装させ、その後にベルト部7によって巻装部6を足首8に確実に固定させる構成となっている。
【0019】
また、この巻装部6は、その内面に電極面が皮膚に当接するように刺激印加電極3が固定されている。この刺激印加電極3は、穴部11を基準としておおよそ5〜6センチ膝方向に固定されている。これは、SP−6ポイント10が足首8から5〜6センチ膝方向に存在するため、巻装部6を足首8全体に巻装した際、刺激印加電極3が、SP−6ポイント10に配置されるように対応したものである。
【0020】
上記のような構成からなる巻装部6を足首8に装着することで、刺激印加電極3を確実にSP−6ポイント10の皮膚表面上に当接することができるので、巻装部6を足首8に装着後、刺激装置2から刺激印加電極を介してSP−6ポイント10へ刺激印加信号を供給することができる。そして、SP−6ポイント10に供給された刺激印加信号は、その信号が後頚骨神経に伝達し、仙骨にまで伝播するため、陰部神経および骨盤内臓神経を刺激して蓄排尿を制御して排尿障害を治療することができる。
【0021】
以上のように、本願発明の実施の形態1における排尿障害治療装置1を用いることで、巻装部6で足首8全体を固定した際に、凸状の刺激印加電極3が皮膚表面に確実に当接し、刺激印加信号を生体へ供給することができる。そして、巻装部6に設けられた穴部11を基準に巻装するだけで、刺激印加電極3を簡便且つ確実にSP−6ポイント位置に配置することができる。従って、非侵襲でかつ、簡便な装着で排尿障害治療を実施することが可能となる。
【0022】
(実施の形態2)
図3は、本願発明の実施の形態2における排尿障害治療装置を示している。
【0023】
実施の形態1と異なる点は、図4に示すように巻装部6の内部に加圧空気を送って膨張させる袋状部材12を備えたことと、その袋状部材12に送気ケーブル14を介して加圧空気を供給する加圧空気供給装置13を備えた点が異なる。従って、実施の形態1と同様の構成については、説明を省略する。
【0024】
実施の形態2における排尿障害治療装置1の巻装部6は、いわゆる血圧計のカフ部に類似する構成である。すなわち、下肢内側面のくるぶしに穴部11を配置した後に足首8全体を巻装させ、ベルト部7によって巻装部6を足首8に固定させた後、加圧空気供給装置13から送気ケーブル14を介して巻装部6の袋状部材12に向けて加圧空気を供給して使用される。
【0025】
従って、実施の形態2の排尿障害治療装置1を用いることで、巻装部6による足首8全体および刺激印加電極4の固定を更に確実にすることができる。
また、凸状の刺激印加電極3を巻装部6の内側面に設けると、巻装部6に加圧空気が供給された時に凸状の刺激印加電極3とSP−6ポイント10部分の皮膚の密着性がより増加するため、皮膚と電極の接触抵抗が小さい状態で効果的な刺激ができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の排尿障害治療装置光治療装置によれば、電極面が凸状の形状を有する刺激印加
電極と、前記人体の所望の部位の皮膚表面上に配置される基準電極と、下肢内側面のくるぶしに配置する部分に穴部を備え、SP−6ポイントを含む足首全体を巻装し、前記穴部を基準として定められる前記SP−6ポイントの皮膚表面に対応する位置に前記刺激印加電極を設置した巻装部と、前記基準電極の電位に対し定められる所定の大きさの電圧からなる前記刺激印加信号を前記刺激印加電極へ供給する刺激装置とを備えた構成としたものであるので、針電極を患者のSP−6ポイントに穿刺する必要する必要もなく、非侵襲で治療を行うことができる。
【0027】
その結果、患者への負担を軽減することが可能となり、また、穿刺に伴う穿刺部分への細菌等による感染の危険性も伴わないため安全に治療を実施することができる。
さらに、治療の都度、医師等の医療従事者のもとで行う必要がなく、患者自身で簡便に治療を行うことができる。
【0028】
このため、家庭用で使用できる排尿障害治療装置として広く活用が期待される。
【符号の説明】
【0029】
1 排尿障害治療装置
2 刺激装置
3 刺激印加電極
4 基準電極
5 リードケーブル
6 巻装部
7 ベルト部
8 足首
9 くるぶし
10 SP−6ポイント
11 穴部
12 袋状部材
13 加圧空気供給装置
14 送気ケーブル
15 人体
16 尿道括約筋
17 陰部神経
18 膀胱
19 骨盤内臓神経
20 仙骨
21 後頚骨神経
22 足首
23 坐骨神経
24 刺激装置
25 針電極
26 基準電極
27 リードケーブル
28 下肢内側面
29 くるぶし
30 SP−6ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極面が凸状の形状を有する刺激印加電極と、
前記人体の所望の部位の皮膚表面上に配置される基準電極と、
下肢内側面のくるぶしに配置する部分に穴部を備え、SP−6ポイントを含む足首全体を巻装し、前記穴部を基準として定められる前記SP−6ポイントの皮膚表面に対応する位置に前記刺激印加電極を設置した巻装部と、
前記基準電極の電位に対し定められる所定の大きさの電圧からなる前記刺激印加信号を前記刺激印加電極へ供給する刺激装置とを備えたことを特徴とする排尿障害治療装置。
【請求項2】
前記巻装部材は、前記足首を所望の締圧で固定するベルト部を備えたことを特徴とする排尿障害治療装置。
【請求項3】
前記巻装部は、その内部に加圧空気を送って膨張させる袋状部材を備えたことを特徴とする排尿障害治療装置。
【請求項4】
前記袋状部材に、加圧空気を送る加圧空気供給装置を備えたことを特徴とする排尿障害治療装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate