説明

排気ガスの脱臭方法並びにその装置

【課題】 排気ガスを脱臭処理するにあたり、触媒の機能低下を確実に防止することのできる、新規な排気ガスの処理方法並びにその装置の開発を技術課題とした。
【解決手段】 ダストを含む有臭の排気ガスを、触媒を用いて脱臭処理する方法において、前記排気ガスG0を加熱することにより、排気ガスG0に含まれるダストDを無機質化し、次いで排気ガスG1に含まれるダストDを捕集するとともに、この時点で無機質化されていないダストDを燃焼させ、その後、排気ガスG2を触媒33bに接触させることにより脱臭処理を行うことを特徴として成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚泥等の有機性廃棄物を処理する際に、乾燥機や焼却炉から排出される排気ガスの、触媒を用いた脱臭処理に関するものであって、特に触媒の機能低下を防止することのできる排気ガスの処理方法並びにその装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、地球温暖化防止の推進等、環境保全の取り組みが盛んになってきており、汚泥等の有機性廃棄物の乾燥、廃棄物焼却等の際に発生する排気ガスに含まれる有害物質や臭気を除去したうえで大気に放出することが求められ、その要求度合いも更に高まっている。
そして前記排気ガスの脱臭装置としては、加熱炉を用いて直接燃焼するものや、あるいは触媒を用いて臭気物質の酸化、分解を行うものが一般的である(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
この種の装置構成は一例として図7に示すように、排気ガスG0を加熱装置1′に送り込み、更にバーナ11′における燃料の燃焼によって加熱装置1′内で排気ガスG0を触媒作用に必要な温度にまで昇温し、その後、触媒装置3′を用いて臭気物質や窒素酸化物等を酸化、分解した後、外部に排気するようなフローが一般的である。
この際、集塵装置4′により排気ガスG0中に含まれるダストDを除去し、その後、排気ガスG0を加熱装置1′に供給することにより、加熱装置1′へのダストDの堆積の軽減が図られ、更に触媒装置3′に具えられる触媒素子の脱臭性能の低下を起こしてしまう被毒の低減が図られている。
【0004】
ここで前記集塵装置4′としては、図7に示すようにサイクロン式のものが一般的に用いられているが、この場合、以下に示すような問題があった。
すなわち、サイクロン式の集塵装置4′では、微細なダストDを除去することができないため、ダストDがリン等の無機物質が含まれた有機成分であった場合には、このものが触媒装置3′における触媒表面に付着し、燃焼することにより、触媒被毒が引き起こされてしまう。このため、触媒の交換サイクル、再生サイクル等が短くなってしまい、ランニングコスト上昇の要因となっていた。
【0005】
そこで前記集塵装置4′として、微細なダストDまで捕捉することができる集塵性に優れたバグフィルタを用いることが考えられる。しかしながらバグフィルタは、一般的なサイクロン式のものよりも高コストであり、且つ、設置空間の制約からすべての設備に適用できるものではない。
更にバグフィルタが濾布を用いたものである場合には、濾布の耐熱温度が200℃程度であるため、200℃以上の排気ガスG0を扱うことが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−52526号
【特許文献2】特開2002−220594
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、特に排気ガスを脱臭処理するにあたり、触媒の機能低下を抑制することのできる、新規な排気ガスの処理方法並びにその装置の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち請求項1記載の排気ガスの脱臭方法は、ダストを含む有臭の排気ガスを、触媒を用いて脱臭処理する方法において、前記排気ガスを加熱することにより、排気ガスに含まれるダストを無機質化し、次いで排気ガスに含まれるダストを捕集するとともに、この時点で無機質化されていないダストを燃焼させ、その後、排気ガスを触媒に接触させることにより脱臭処理を行うことを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項2記載の排気ガスの脱臭装置は、ダストを含む有臭の排気ガスを、触媒装置を用いて脱臭処理する脱臭装置において、この装置は、前記排気ガスを昇温するとともに排気ガスに含まれるダストを無機質化するための加熱装置を具えて成るものであり、更に前記加熱装置の下流側に、ダストを捕集するとともに、加熱装置において無機質化されなかったダストを燃焼させるための耐熱部材を有する捕捉燃焼装置を具え、更にこの捕捉燃焼装置の下流側に前記触媒装置が具えられて成るものであることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項3記載の排気ガスの脱臭装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記加熱装置は、ダストを無機質化することができる温度にまで、前記耐熱部材を加熱する装置であることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項4記載の排気ガスの脱臭装置は、前記請求項2または3記載の要件に加え、前記触媒装置に具えられる脱臭部材を構成する脱臭素子を、前記耐熱部材を構成する耐熱素子として供することができるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0012】
更にまた請求項5記載の排気ガスの脱臭装置は、前記請求項2、3または4記載の要件に加え、前記耐熱部材における排気ガスの流路は、前記脱臭部材における排気ガスの流路と同等か、あるいは狭く構成されていることを特徴として成るものである。
【0013】
更にまた請求項6記載の排気ガスの脱臭装置は、前記請求項2、3、4または5記載の要件に加え、前記耐熱部材を構成する耐熱素子は、表面に細孔を有するものであることを特徴として成るものである。
【0014】
更にまた請求項7記載の排気ガスの脱臭装置は、前記請求項2、3、4、5または6記載の要件に加え、前記捕捉燃焼装置は、ダウンフロー式のものであることを特徴として成るものである。
【0015】
更にまた請求項8記載の排気ガスの脱臭装置は、前記請求項2、3、4、5、6または7記載の要件に加え、前記触媒装置は、アップフロー式のものであることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0016】
まず請求項1記載の発明によれば、加熱によって排気ガスに含まれるダストを無機化した後、耐熱部材を用いて排気ガスに含まれるダストを捕集するとともに、この時点で無機質化されていないダストを燃焼させるため、排気ガスに含まれる有機物を、極めて高効率で無機質化することができ、触媒被毒を低減することができる。このため脱臭性能をより長期間維持することができるとともに、触媒の交換サイクル、再生サイクル等を著しく延ばすことができ、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0017】
また請求項2記載の発明によれば、加熱によって排気ガスに含まれるダストを無機化した後、耐熱部材を用いて排気ガスに含まれるダストを捕集するとともに、この時点で無機質化されていないダストを燃焼させるため、排気ガスに含まれる有機物を、極めて高効率で無機質化することができ、触媒被毒を低減することができる。このため脱臭性能をより長期間維持することができるとともに、触媒の交換サイクル、再生サイクル等を著しく延ばすことができ、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0018】
また請求項3記載の発明によれば、加熱装置におけるダストの燃焼効率を高めることができるとともに、捕捉燃焼装置におけるダストの燃焼効率をも高めて、有機物を確実に無機質化することができる。
【0019】
更にまた請求項4記載の発明によれば、触媒装置における触媒素子を、本来の用途である触媒部材の構成要素として用いる他、捕捉燃焼装置における耐熱部材の構成要素として利用することも可能となり、イニシャルコスト及びランニングコストを低減することができる。
【0020】
更にまた請求項5記載の発明によれば、ダストは耐熱部材により捕捉され易くなり、ダストが触媒装置に送られてしまうのを大幅に低減することができ、触媒装置における脱臭部材へのダストの付着を大幅に低減することができ、触媒の脱臭性能を安定して維持することができる。
【0021】
更にまた請求項6記載の発明によれば、ダストの捕捉効率を高め、それによりダストの燃焼効率を高めることができる。
【0022】
更にまた請求項7記載の発明によれば、ダストの捕捉効率を高め、それによりダストの燃焼効率を高めることができる。
【0023】
更にまた請求項8記載の発明によれば、ダストによる脱臭部材の目詰まりを低減させることができるため、脱臭性能をより長期間、維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の排気ガスの脱臭装置を示す骨格図である。
【図2】捕捉燃焼装置及び触媒装置を示す縦断面図である。
【図3】排熱の回収機構を具えた排気ガスの脱臭装置を示す骨格図である。
【図4】耐熱部材を示す斜視図である。
【図5】脱臭部材を示す斜視図である。
【図6】捕捉燃焼装置が並列に設けられた実施例を示す骨格図である。
【図7】既存の排気ガスの脱臭装置を示す骨格図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の排気ガスの脱臭方法並びにその装置の最良の形態は以下の実施例に示すとおりであるが、この実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の排気ガスの脱臭装置S(以下、脱臭装置Sと称す)について、基本となる実施例の構成を説明した後、その作動態様とともに、本発明の排気ガスの脱臭方法について説明する。
前記脱臭装置Sは、乾燥機や焼却炉等から排出される排気ガスG0の脱臭処理を行うための装置であって、一例として図1に示すように、排気ガスG0に含まれるダストDを無機質化するための加熱装置1を具えて成るものである。また脱臭装置Sには、前記加熱装置1の下流側に、ダストDを捕集するとともに加熱装置1において無機質化されなかったダストDを燃焼させ、無機質化するための捕捉燃焼装置2が具えられる。更に脱臭装置Sには、前記捕捉燃焼装置2の下流側に触媒装置3が具えられる。
なお脱臭装置Sは、排気ガスG0に含まれる有機物を低温で酸化および/または分解し、最終的に脱臭排ガスG3とする装置であり、この明細書中においては被処理ガスの処理状態毎に呼称を区別するものであり、加熱装置1から排出される気体を排気ガスG1とし、更に捕捉燃焼装置2から排出される気体を排気ガスG2とする。
【0027】
以下、脱臭装置Sを構成する機器について詳しく説明する。
まず前記加熱装置1は、排気ガスG0を加熱することができるように一例として燃焼炉10にバーナ11を具えて成るものであり、バーナ11によって燃料を燃焼させて発生した熱によって、燃焼炉10内に流入口12から供給される排気ガスG0の昇温を行う装置である。
そして加熱装置1によって昇温された排気ガスG1は、流出口13を通じて捕捉燃焼装置2に送られ、ここでダストDを無機質化することができる温度(この実施例では一例として450℃)まで、耐熱部材23を加熱する。
【0028】
次に前記捕捉燃焼装置2は、筐体20に供給口21、排出口22が形成されるとともに、筐体20内に耐熱部材23が具えられて成るものである。
すなわち供給口21から筐体20内に供給された被処理ガス(排気ガスG1)に含まれるダストDは、耐熱部材23上に堆積するように捕捉されたり、後述する耐熱部材23の表面の細孔23aに捕捉され、更にここで燃焼することによりを無機質化(灰化)されることとなる。
なお前記耐熱部材23は、耐熱性金属、陶磁器等のセラミックス等、蓄熱性に優れ、更に洗浄性に優れた素材が適用された耐熱素子23Pを用いて構成されるものであり、ダストDが付着するものの、閉塞することがないような、低圧損の充填状物質として構成される。
この実施例で前記耐熱素子23Pは、一例として図4(a)に示すように、複数の通気孔23bが形成されたハニカム状のセラミックスが立方体状に形成されるものであり、四個の耐熱素子23Pを組み合わせて耐熱部材23が構成されるようにした。
また前記通気孔23bの開口寸法を、後述する脱臭部材33(脱臭素子33P)における通気孔33cの開口寸法よりも小さく設定して、耐熱部材23における排気ガスG1の流路を、脱臭部材33における排気ガスG2の流路よりも狭くすることにより、脱臭部材33の通気孔33cに詰まってしまう粒径のダストDが脱臭装置3に送られるのを防止することが可能になる。
【0029】
また図4(b)に示すように、ペレット状の耐熱素子23Pを用いることもできる。この場合、耐熱素子23Pを、金網27aとフレーム27bとを具えて成るケージ27に収容することにより耐熱部材23が構成される。
ここでペレット状の耐熱素子23Pが、一例として後述する(図5(b)参照)触媒装置3に具えられる脱臭素子33Pと相似形状であり、且つ同寸法以下のものであれば、ゲージ27内に充填された耐熱素子23Pが形成する排気ガスG1の流路が、脱臭部材33における排気ガスG2の流路よりも狭くなるため、ダストDは耐熱素子23Pにより捕捉され易くなり、ダストDが触媒装置3に送られてしまうのを防止することができる。
また前記ペレット状の耐熱素子23P及び後述するペレット状の脱臭素子33Pは、図4、5に示したような球形状のものの他、楕円球状、半球状、円柱状、円錐状、角柱状、角錐状等、適宜の形状が採用される。更に耐熱素子23Pの形状と、脱臭素子33pの形状とを異ならせることもできる。
【0030】
更にまた前記耐熱素子23Pを、表面に細孔(ポア)23aを有するものとしてもよく、この場合、細孔23aが微細なダストDを捉えるため、ダストDの捕捉効率並びに燃焼効率を高めることができる。
なお耐熱部材23が金属製であれば、サンドブラスト等により、排気ガスG1が接する耐熱部材の表面を粗くすることにより、ダストDを捕捉し易くすることもできる。
【0031】
更にまた前記捕捉燃焼装置2は、ダウンフロー式のものが採用される。すなわち図2に示すように、筐体20の上部に供給口21が形成され、筐体20の下部に排出口22が形成されるものであり、下降する被処理ガス(排気ガスG1)が耐熱部材23と接触するように構成されるものである。
このため被処理ガス(排気ガスG1)に含まれるダストDは、耐熱部材23の上面に付着することとなり、ここで燃焼することにより、無機質化(灰化)することとなる。
なお前記耐熱部材23上で無機質化(灰化)したダストDを除去するためのエアパージ用のノズル24が、耐熱部材23の上面に指向して具えられる。そして耐熱部材23上に堆積したダストDは、筐体20の側周部に形成された排出口25から、この排出口25を囲繞するように具えられたダスト受26に排出される。
【0032】
次に前記触媒装置3は、筐体30に供給口31、排出口32が形成されるとともに、筐体30内に、脱臭部材33が具えられて成るものである。そしてこの脱臭部材33は、担持体33aに触媒33bが担持されて成るものである。
すなわち供給口31から筐体30内に供給された被処理ガスに含まれる臭気成分(有機物)は、触媒33bと接触することにより、触媒33bが有する触媒作用によって低温酸化され、CО2 、H2 О等に変化することとなる。
【0033】
また前記支持基材33aとしては、一例として図5(a)に示すように、複数の通気孔33cが形成されたハニカム状のセラミックスが立方体状に形成されるものであり、触媒粉末と水とバインダーとを混合して調製されたスラリーに対し、前記支持基材33aを浸漬させ、その後、乾燥、焼成することにより、支持基材33aの表面に触媒33bが担持された脱臭素子33Pが形成される。なおこの実施例では一例として、四個の脱臭素子33Pを組み合わせて脱臭部材33を構成するようにした。
また前記触媒粉末を、バインダーとともに水で混練し、乾燥、焼成して得られたペレット状の脱臭素子33Pを用いることもできる。この場合、脱臭素子33Pは図5(b)に示すように、金網35aとフレーム35bとを具えて成るケージ35に収容された状態で脱臭部材33を構成し、筐体30内に配されることとなる。
【0034】
更にまたこの実施例では、前記脱臭部材33を構成する脱臭素子33Pを、前記耐熱部材23を構成する耐熱素子23Pとして供することができるような構成が取られるものであり、一例として図5(a)に示す脱臭素子33Pの外形寸法が、図4(a)に示すハニカム状の耐熱素子23Pの外形寸法と同じになるようにした。
また脱臭部材33が耐熱部材23よりも小さく形成される場合には、複数の脱臭素子33Pを組合せることにより、耐熱素子23Pと同じ外形が形成されるようにすればよく、一例として図5(a)に示す立方体状の脱臭素子33Pの各辺の寸法が、図4(a)に示す立方体状の耐熱素子23Pの各辺の寸法の整数分の一となるようにする(相似関係)。
更に図5(a)中、仮想線で示すように、立方体状の脱臭素子33Pを分断して形成されるような直方体状として、脱臭素子33pを構成するようにしてもよい。
なお図5(b)に示したペレット状の脱臭素子33P及び図4(b)に示したペレット状の耐熱素子23Pを用いる場合には、耐熱部材2におけるケージ27に脱臭素子33Pを詰め替えることにより、脱臭素子33Pを耐熱素子23Pとして供することができる。
【0035】
またこの実施例では、前記触媒装置3はアップフロー式のものが採用される。すなわち図2に示すように、筐体30の下部に供給口31が形成され、筐体30の上部に排出口32が形成されるものであり、上昇する被処理ガス(排気ガスG2)が脱臭部材33と接触するように構成されるものである。
なお前述の様に、捕捉燃焼装置2がダウンフロー式のものであり、触媒装置3がアップフロー式のものである場合、排気ガスG2中のダストDは、排出口22と供給口31とをつなぐU字状の管路の底部に溜まり易く、これにより触媒装置3に向かうダストDの量がより低減され、脱臭部材33の脱臭性能の維持に効果をもたらす。
なおアップフローする被処理ガス(排気ガスG2)に含まれるダストDは、脱臭部材33の下面に付着することとなり、これを除去するためのエアパージ用のノズル34が、脱臭部材33の下面に指向して具えられる。
【0036】
そして前記加熱装置1の前段には、集塵装置4が配されるものであり、この実施例では一例としてサイクロン式の装置が適用される。
因みにサイクロン式の集塵装置4は、被処理ガス(排気ガスG0)との接触部位がぼほすべて金属素材によって構成されているため、高温の被処理ガス(排気ガスG0)を扱う場合に好適な装置である。
また前記集塵装置4と加熱装置1との間にはブロワ6が具えられる。
【0037】
本発明の脱臭装置Sは、一例として上述したように構成されるものであり、以下その作動態様について説明するとともに、本発明の排気ガスの脱臭方法について説明する。
〔排気ガス中のダストの除去〕
乾燥機や焼却炉等から排出される排気ガスG0は、初めに集塵装置4に送られ、ここで遠心分離作用によって粗大なダストDが分離・除去される。
【0038】
〔加熱〕
加熱装置1においては、適宜バーナ11の燃焼度が調節され、排気ガスG0の昇温が行われるものであり、この実施例では一例として200℃の排気ガスG0を450℃にまで昇温するようにした。
この際、集塵装置4によって除去することのできなかった微細なダストDの多くは、ここで燃焼し、無機質化(灰化)される。
このように前記排気ガスG0は排気ガスG1となった状態で加熱装置1から排出される。
ここで前記加熱装置1は、脱臭部材33の温度が触媒作用を発揮する温度以上となるように上昇させる役割も担うものである。すなわち加熱装置1は、排気ガスG1(排気ガスG2)の温度を、脱臭部材33の温度が触媒作用を発揮する温度以上とすることができる温度にまで上昇させるものである。
【0039】
〔未無機質化ダストの捕捉・燃焼〕
次いで、前記排気ガスG1は捕捉燃焼装置2に供給されるものであり、供給口21から下降流として筐体20内に進入する。
そして排気ガスG1が耐熱部材23を通過する際に、その上部にダストDが堆積するものであり、前記加熱装置1において無機質化(灰化)されなかったダストDは、ここで耐熱部材23から熱を受けるとともに、排気ガスG1からも熱を受けて燃焼し、無機質化(灰化)することとなる。
なおダストDの排気ガスG1中での濃度が低ければ、耐熱部材23にある程度のダストDが堆積した時点でバーナ11の燃焼度を上げ、ダストDの無機化が行われるように間欠的に昇温することができる。
【0040】
また極微細なダストDは、耐熱部材23上に堆積することなく流下してしまうことがあるが、耐熱部材23を通過する間に熱を受けて燃焼し、無機質化(灰化)されることとなる。
このように捕捉燃焼装置2に供給された排気ガスG1は、排気ガスG2となって排出口22から排出されるものであり、この排気ガスG2には極微細なダストDが含まれることがあるが、このものは既に無機質化(灰化)されている。
【0041】
〔脱臭処理〕
次いで排気ガスG2は触媒装置3に送られ、ここで脱臭部材33と接触し、その表面に担持されている触媒33bの作用によって脱臭処理が施され、臭気成分が所定値以下(一例として臭気指数30以下)に除去された脱臭排ガスG3となる。
この際、排気ガスG2に含まれる極微細なダストDが触媒33bに接したとしても、このものは無機質化(灰化)されているため、ダストD中の有機成分の燃焼による触媒被毒の影響が低減され、脱臭性能を長期間維持できるとともに、触媒33bの交換サイクルや洗浄サイクルを延ばして、ランニングコストを低減することが可能となるものである。
なお前記耐熱部材23における排気ガスG1の流路が、脱臭部材33における排気ガスG2の流路よりも狭く構成されている場合には、ダストDは耐熱部材23により捕捉され易くなり、ダストDが触媒装置3に送られてしまうのを大幅に低減することができ、触媒装置3における脱臭部材33へのダストDの付着を大幅に低減することができ、触媒33bの脱臭性能を安定して維持することができる。
【0042】
〔耐熱部材の交換〕
なお耐熱部材23上に、灰化したダストDが所定量以上堆積したときには、ノズル24からエアーを噴出させて、ダストDを排出口25を通じてダスト受26に送り込み、適宜廃棄する。更に耐熱部材23に付着したダストDの除去が、ノズル24のエアーの噴出だけでは困難である場合、所定時間の経過毎に耐熱部材23の交換が行われる。このとき前述のように、脱臭素子33Pが耐熱素子23Pとして供することができるように構成されている場合には、触媒装置3に組み込まれていた脱臭素子33Pを、捕捉燃焼装置2に組み込んで耐熱素子23Pとして用いることもできる。
【0043】
〔熱交換器を具えた実施例〕
次に、触媒装置3から排出される脱臭排ガスG3から熱を回収して有効利用する実施例を説明する。
具体的には図2に示した脱臭装置Sに熱交換器5が付加されるものであり、このものは図3に示すように、筐体50内に管路51が配され、筐体50の外周部に流入口52、流出口53、流入口54、流出口55が形成されて成る。そして流入口52から供給された被処理ガスが管路51を通過して流出口53から排出される際に、管路51の外側に位置する熱媒との間で熱交換を行うことにより、管路51内を流れる流体の昇温等が行われるものである。
なお前記筐体50には流入口54から熱媒が供給され、この熱媒は流出口55から排出される。
【0044】
そして熱交換器5における流出口53と、加熱装置1における流入口12との間は管路によって接続され、更に触媒装置3における排出口32が、熱交換器5における流入口54と管路によって接続される。
【0045】
上述のように熱交換器5が具えられて構成された脱臭装置Sの場合、排気ガスG0(一例として200℃)は、集塵装置4からブロワ6によって熱交換器5に供給され管路51を通過する際に脱臭排ガスG3(一例として450℃)との間で熱交換が行われ、一例として325℃となって加熱装置1に送られることとなり、一方、脱臭排ガスG3は一例として325℃に温度が低下した状態で流出口55から外部に放出される。
したがって加熱装置1においては、325℃の排気ガスG0が450℃にまで昇温されることとなり、先に述べた熱交換器5が具えられていない脱臭装置Sよりも、バーナ11により排気ガスG0を加熱する程度が少なくて済むため、燃料を節約してランニングコストを低減することができる。
【0046】
〔加熱装置内に捕捉燃焼装置が具えられた実施例〕
更に前記捕捉燃焼装置2を、前記加熱装置1の内部に具えるような構成とすることができる。
具体的には図3中、仮想線で示すように筐体10内における流出口13の内側に耐熱部材23を配することにより、筐体10内における燃焼時に無機質化(灰化)されなかったダストDを耐熱部材23において無機質化(灰化)することができる。
【0047】
〔捕捉燃焼装置が並列に設けられた実施例〕
更に図6に示すように、一例として二基の捕捉燃焼装置2A、2Bを並列状に設けることにより、これらを切り替えて用いるような構成とすることができる。
具体的には 筐体20内における供給口21付近及び排出口22付近に、仕切板28aを具えたスライドダンパ28を設け、前記仕切板28aによって流路を開閉することにより、捕捉燃焼装置2Aまたは捕捉燃焼装置2Bの何れかが選択されるものである。
このような構成が採られた場合には、一方の捕捉燃焼装置2A(2B)における耐熱部材23の洗浄や交換が行われている間は、他方の捕捉燃焼装置2B(2A)を用いることにより、脱臭装置Sを停止する必要が無くなるため、24時間連続運転することが可能となる。
なお図6に示した実施例では、触媒装置3が熱交換器5内に組み込まれるように構成されている。具体的には熱交換器5における管路51内にペレット状の脱臭素子33Pを充填するものであり、このような構成が採られることにより、脱臭装置Sを構成する機器の設置空間を低減することができる。
【符号の説明】
【0048】
S 脱臭装置
1 加熱装置
10 燃焼炉
11 バーナ
12 流入口
13 流出口
2 捕捉燃焼装置
2A 捕捉燃焼装置
2B 捕捉燃焼装置
20 筐体
21 供給口
22 排出口
23 耐熱部材
23P 耐熱素子
23a 細孔
23b 通気孔
24 ノズル
25 排出口
26 ダスト受
27 ケージ
27a 金網
27b フレーム
28 スライドダンパ
28a 仕切板
3 触媒装置
30 筐体
31 供給口
32 排出口
33 脱臭部材
33P 脱臭素子
33p 脱臭素子
33a 担持体
33b 触媒
33c 通気孔
34 ノズル
35 ケージ
35a 金網
35b フレーム
4 集塵装置
5 熱交換器
50 筐体
51 管路
52 流入口
53 流出口
54 流入口
55 流出口
6 ブロワ
D ダスト
G0 排気ガス
G1 排気ガス
G2 排気ガス
G3 脱臭排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダストを含む有臭の排気ガスを、触媒を用いて脱臭処理する方法において、前記排気ガスを加熱することにより、排気ガスに含まれるダストを無機質化し、次いで排気ガスに含まれるダストを捕集するとともに、この時点で無機質化されていないダストを燃焼させ、その後、排気ガスを触媒に接触させることにより脱臭処理を行うことを特徴とする排気ガスの脱臭方法。
【請求項2】
ダストを含む有臭の排気ガスを、触媒装置を用いて脱臭処理する脱臭装置において、この装置は、前記排気ガスを昇温するとともに排気ガスに含まれるダストを無機質化するための加熱装置を具えて成るものであり、更に前記加熱装置の下流側に、ダストを捕集するとともに、加熱装置において無機質化されなかったダストを燃焼させるための耐熱部材を有する捕捉燃焼装置を具え、更にこの捕捉燃焼装置の下流側に前記触媒装置が具えられて成るものであることを特徴とする排気ガスの脱臭装置。
【請求項3】
前記加熱装置は、ダストを無機質化することができる温度にまで、前記耐熱部材を加熱する装置であることを特徴とする請求項2記載の排気ガスの脱臭装置。
【請求項4】
前記触媒装置に具えられる脱臭部材を構成する脱臭素子を、前記耐熱部材を構成する耐熱素子として供することができるように構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の排気ガスの脱臭装置。
【請求項5】
前記耐熱部材における排気ガスの流路は、前記触媒装置に具えられる脱臭部材における排気ガスの流路と同等か、あるいは狭く構成されていることを特徴とする請求項2、3または4記載の排気ガスの脱臭装置。
【請求項6】
前記耐熱部材を構成する耐熱素子は、表面に細孔を有するものであることを特徴とする請求項2、3、4または5記載の排気ガスの脱臭装置。
【請求項7】
前記捕捉燃焼装置は、ダウンフロー式のものであることを特徴とする請求項2、3、4、5または6記載の排気ガスの脱臭装置。
【請求項8】
前記触媒装置は、アップフロー式のものであることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の排気ガスの脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−147912(P2011−147912A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13094(P2010−13094)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】