説明

排気ガス浄化液携帯容器

【課題】還元剤を車室内の未利用部分に安定した状態で収納することにより、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等を防止すると共に、還元剤の取扱いを容易にすることを目的とする。
【解決手段】詰替え用排気ガス浄化液を収納可能とし、上下方向へ延出した筒状体の上端部の一端側に抽出口22を有する使い捨て収納容器2と、該収納容器2の上部を支持する第1係合部23と、収納容器2の下部を支持する第2係合部24と、収納容器2の上端部他端側の外方に収納容器2の上下方向に沿って延在したヒンジ部4を回動中心に対向して配置された面状部材間に収納容器2が配置され、第1及び第2係合部23,24と対向した位置に第1及び第2係合部23,24と係合する第3及び第4係合部33,34を配設した支持体3と、支持体3のヒンジ部4の上下方向中間部に配設された把持部5とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる公害物質を選択還元触媒の利用によって無害化する排気ガス浄化装置に用いる液体還元剤を収納して携帯できるようにした携帯容器を車室内に収納する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン(以後「エンジン」と称す)の排気系には、エンジンから排出される排気ガスに含まれ、有害物質とされるディーゼル排気微粒子〔以後「PM(Particulate Matter)」と称す〕及びNOx(窒素酸化物)が含まれており、PMはディーゼルパティキュレートフィルタ〔以後「DPF(Diesel Particulate Filter)」と称す〕にて補足されるが、NOxは、尿素水を排気ガス中に添加し、尿素水を加水分解してNH(アンモニア)を発生させて、該発生させたNHを使用して、NOxを選択還元浄化する選択還元触媒で、NOxをN(窒素)と、HO(水)に還元して、無害化する排気ガス浄化装置によって浄化される。
【0003】
ところが、エンジンの燃料となる軽油は全国の給油サービスステーションにて容易に購入できるが、尿素水はディーゼルエンジンを使用した車両、建設機械及び汎用機械において、前記排気ガス浄化装置を搭載している場合に限定されるので、ディーゼルエンジンを使用した機器の販売店以外では購入し難いのが現状である。
その結果、車両の場合、目的地に向かう途中で排気ガス中に添加する尿素水がなくなると法律的に車両を動かすことができなくなり、業務に与える影響が大きい。
その対応策として、数リットルの尿素水を入れた緊急用の補給容器を携帯することが考えられている。
ところが、尿素水は尿素の規定濃度の維持および、異物混入等の防止管理を適切に行う必要があるが、車室内での適正な保管場所がないのが現状である。
【0004】
先行技術として、実開平6−54543号公報(特許文献1)が開示されている。
この特許文献1の技術は、本願添付の図4(A)及び(B)に示すもので、詰め替え用内容物を収納した注出口0121付きスタンディングパウチ0120と、そのスタンディングパウチ0120を保持する支持体0110と、スタンディングパウチ0120の注出口0121に取付けられるキャップ0131とから構成されたリフィル容器0100が記載されている。
【0005】
そして、支持体0110の天面板0112のA係合切欠き0117と前面板0111のB係合切欠き0115によって形成される挿入孔0116に挿入されたスタンディングパウチ0120の注出口0121にキャップ0131を装着して、注出口0121の台座リング0123、キャップ0131やスタンディングパウチ0120の上縁部によって支持体0110の天面板0112を挟着してスタンディングパウチ0120を天面板0112に固定して、且つ支持体0110の前面板0111、背面板0113側面板0114及び天面板0112にて部分的にスタンディングパウチ0120を囲繞して保持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−54543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
家庭用洗剤、シャンプーのように無害で且つ、悪臭を出す心配がなく、毎日少量ずつ使用し、定位置に保管するような使い方をする場合は問題ないが、エンジンの排気ガス浄化液である尿素水のように、アンモニア(NH)が発生する可能性があり、車両の携帯品として運転席に載置するには臭気に対する安全上、取扱い時の把持部がないために持運び、車体側の尿素水タンクに補給する際の補給方法に不具合が生じる。
そこで、本発明はこのような不具合に鑑み成されたもので、還元剤を車室内の未利用部分に安定した状態で収納することにより、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等を防止すると共に、還元剤の取扱いを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、詰替え用排気ガス浄化液を収納可能とし、上下方向へ延出した筒状体の上端部の一端側に抽出口を有する使い捨て柔軟性袋体と、該柔軟性袋体の上部を支持する第1係合部と、前記柔軟性袋体の下部を支持する第2係合部と、
前記柔軟性袋体の前記上端部他端側の外方に前記柔軟性袋体の上下方向に沿って延在したヒンジ部を回動中心に対向して配置された面状部材間に前記柔軟性袋体が配置され、前記第1及び第2係合部と対向した位置に前記第1及び第2係合部と係合する第3及び第4係合部を配設した支持体と、該支持体の前記ヒンジ部の上下方向中間部に配設された把持部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる発明において、使い捨て詰替え用容器にしたので、産廃物を最小限に抑制することができると共に、支持体は再利用可能なので、利用者の経費負担を軽減できる。
また、支持体に把持部を形成したので、補給時に柔軟性袋体に保持力が直接作用しないので、内容物(排気ガス浄化液)が急激に吐出しないようにすることが容易となり、補給口から外部に排気ガス浄化液が飛散するのを防止できる。
更に、排気ガス浄化液の吐出口が柔軟性袋体の上部の一端側にあるのに対し、把持部が柔軟性袋体の上端部他端側の外方で、支持体の上下方向中間部に配設されているので、注出時、支持体の下部に手を添えなくても、内部の排気ガス浄化液を全量容易に吐出させることができる。
【0010】
また、本願発明において好ましくは、前記把持部は、前記ヒンジ部から前記支持体の開放端側に位置した部位に貫通孔を配設して前記ヒンジ部を把持できるようにするとよい。
【0011】
このような構成にすることにより、把持部を支持体の外周部であるヒンジ部の一部を利用するようにしたので、支持体全体形状をコンパクトにでき、排気ガス浄化液携帯容器の収納場所の自由度が向上する。
【0012】
また、本願発明において好ましくは、前記柔軟性袋体には、前記左右の面状部材夫々に係合する前記第1および、第2係合部を有すると共に、前記支持部材の前記左右の面状部材夫々に前記第1および、第2係合部と係合する前記第3および、第4係合部が配設され流とよい。
【0013】
このような構成にすることにより、柔軟性袋体が左右の面状部材夫々に上下部位で係合支持されるので、左右の面状部材の開き量が規制され、柔軟性袋体の支持が安定し、車両側の排気ガス浄化液タンクへの注入作業が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
使い捨て詰替え容器にしたので、廃棄物を最小限にすることができると共に、支持体は再利用可能となり、利用者の経費負担を軽減できる。
また、支持体に把持部を形成したので、持運びに便利で且つ、補給時に柔軟性袋体に保持力が直接作用しないようにすることができ、内容物が急激に吐出しないので、補給口から外部に飛散するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は本発明の実施形態にかかる排気ガス浄化液携帯容器の外観斜視図を示す。
【図2】は図1のX−X断面の詳細図を示す。
【図3】は本発明の実施形態にかかる収納容器の外観図を示す。
【図4】(A)は従来技術の支持体とスタンディングパウチの分解斜視図、(B)はその組立図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】
図1及び図2に基づいて説明する。図1は排気ガス浄化液携帯容器1を示し、排気ガス浄化液携帯容器1は柔軟性袋体である筒状の収納容器2と、収納容器2を面状部材31,32で挟持する支持体3とで構成されている。
図2に示すように、柔軟性袋体で形成された収納容器2は、排気ガス浄化液を充填した時に、水平断面が台形状を成し、上下方向に延在した筒状の容器本体21と、容器本体21の上面部で且つ、前記台形状の底辺(一端側)に相当する部分に、外側斜め上方へ延出した注出口22を有したポリエチレン、又はポリプロピレン材で形成されている。注出口22の先端は密閉溶着27にして、補給時に先端部を切断する構造になっている。注出口22の先端を密閉溶着27にすることにより、排気ガス浄化液の水分蒸発が防止され、排気ガス浄化液の濃度管理が更に確実になる効果を有している。
本実施形態では、注出口22の先端は密閉溶着27にした構造としたが、注出口22の外周部にネジ部を形成してキャップを螺合する密閉構造にしてもよい。
この場合は、注出口22の先端を切断する切断具が不要となる。
【0018】
収納容器2は既知の製造方法である、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)とポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて押し出しラミネーション法でポリエチレン(PE)を積層した、積層フィルムを製作し、この積層フィルムを製袋したものである。
そして、水平断面が台形形状の高さ方向に相当する面28(以後「A側面28」と称す)の上部と下部にA側面28から外方へ延出.した突出部が形成され、夫々に上下方向へ貫通した貫通孔Kが形成され、上側が第1係合部である第1A係合部23、下側が第2係合部である第2A係合部24と成っている。
また、A側面28と対向した面29(以後「B側面29」と称す)にも、A側面28と同様に上側が第1係合部である第1B係合部25、下側が第2係合部である第2B係合部26がB側面29から外方へ延出.した状態に形成されている。
【0019】
図1に示すように、支持体3は、面状部材であるA面状部材31と、A面状部材31と対向して配設された面状部材であるB面状部材32と、A面状部材31及び、B面状部材32の上下方向に延在して、端縁(容器本体21の上端部他端側の外方に相当する)を回動可能に連結するヒンジ部4とで構成され、ヒンジ部4を中心にA面状部材31とB面状部材32の自由端側が開閉可能に形成されている。
また、A面状部材31は、A面状部材上縁部の一端側をW1の幅を有して外方に延出.させて、先端部に内周部が中空円筒状を有した第1軸受部42と、下端縁から上方にW4だけ位置した部分から更に、上方へW2の幅を有し、該第1軸受部42の軸線Lと同一軸線上に中空円筒状を有する第2軸受部43と、第1軸受部42と第2軸受部43との間には、軸線Lに沿ってA面状部材31の自由端側に切込んだ矩形状の切欠き部(A貫通孔38)と、A面状部材31の軸線Lと自由端側との中間部で、上下方向2箇所に第3A係合部33(上側)及び第4A係合部34(下側)係合部材とが形成されている。
【0020】
また、B面状部材32は、B面状部材上縁部の一端側から下方へW1だけ位置した部分から、さらに下方へW3の幅を有して、第1軸受部42の軸線Lと同一軸線上に中空円筒状を有する第3軸受部44と、下端縁から上方にW4の幅を有し、該第1軸受部42の軸線Lと同一軸線上に中空円筒状を有する第4軸受部45と、第3軸受部44と第4軸受部45との間には、軸線Lに沿ってB面状部材32の自由端側に切込んだ矩形状の切欠き部(B貫通孔39)と、B面状部材31の軸線Lと自由端側との中間部で上下方向2箇所に第3B係合部(上側)及び第4B係合部(下側)とが形成されている。
そして、第1軸受部42、第2軸受部43、第3軸受部44及び第4軸受部45夫々の中空円筒状部分にヒンジピン41を嵌入して、ヒンジ部4を形成している。
尚、本実施形態では、W1,W2,W3及び,W4は同一寸度に形成されている。
【0021】
従って、A面状部材31の矩形状の切欠き部(A貫通孔38)及び、B面状部材32の矩形状の切欠き部(B貫通孔39)はヒンジピン41によって、貫通孔状態になり、当該貫通孔に指を通して、ヒンジピン41を把持するようにして把持部5を形成している。
把持部5(A貫通孔38及びB貫通孔39)はW1,W2,W3及び,W4は同一寸度に形成されているので、支持体3の上下方向中心に位置するようになっている。
把持部5を支持体3の外周部であるヒンジ部4の一部を利用するようにしたので、支持体3の全体形状をコンパクトにでき、排気ガス浄化液携帯容器1の収納場所の自由度が向上する。
【0022】
本実施形態において、夫々の係合部はA面状部材31の第3A係合部33とB面状部材32の第3B係合部35及び、A面状部材31の第4A係合部34とB面状部材32の第4B係合部36とはヒンジ部4を中心にして対向させた時に、夫々の係合部は対向した位置に配設されている。
係合部の構造について第4A係合部34を他の係合部を代表して、図2に基づいて説明する。
A面状部材31の下部に幅がG1、高さがG2の矩形状の貫通孔342が形成され、貫通孔342の下辺から幅H3を有してB面状部材32側に向け突出H1し、上方へ延出H2した係合片341がA面状部材31と一体的に形成されている。
係合片341は高さH2が貫通孔342の高さG2より低く、幅H3が貫通孔342の幅G1より狭くなっている。
【0023】
このような形状にすることにより、容器本体21の第2A係合部24の貫通孔Kを係合片341に外嵌させるときに、外側(B面状部材32と反対側)から第2A係合部24の端縁を引き易くして、確実に係合させると共に、端縁を外側に出すことにより第2A係合部24が係合片341から外れ難くする効果を有する。
尚、本実施形態では、係合片341をB面状部材32側に突出させたが、外側(B面状部材32と反対側)に突出させてもよい。
【0024】
支持体3をヒンジ部4を中心にして、A面状部材31及び、B面状部材32の自由端側を開き、容器本体21の第1A係合部23をA面部材31の第3A係合部33に、第2A係合部24を第4A係合部34に、第1B係合部25を第3B係合部35及び、第2B係合部26を第4B係合部36に夫々係合することにより、支持体3に容器本体21が装着され、把持部331(H区間)を把持することにより、携帯が容易になる。
【0025】
そして、把持部5を支持体3の外周部であるヒンジ部4の一部を利用するようにしたので、支持体3全体形状をコンパクトにでき、排気ガス浄化液携帯容器1の収納場所の自由度が向上するので、車内の足の踏み場で邪魔にならない処(例えば、ディーゼルエンジンを搭載したキャブオーバ型トラック等においては、運転席の後側)に載置しても、全体形状が三角柱に近い構造となるので、安定した維持管理ができる。
排気ガス浄化液の吐出口が収納容器2の上部で、にあるのに対し、把持部5が支持体の上下方向中間部に配設されているので、注入時、支持体の下部に手を添えなくても、内部の排気ガス浄化液を全量容易に注出させることができる。
【0026】
また、収納容器2を使い捨てとしたので、廃棄がし易く、補給後収納容器2内に残った水滴程度の排気ガス浄化液の車室内蒸散による悪臭も防止できる。
更に、注出口22の先端部を密閉溶着27して、補給時に先端部を切断する構造にすると、排気ガス浄化液の水分蒸発が防止され、排気ガス浄化液の濃度管理が更に確実になる効果を有している。
【0027】
更に、容器本体21を柔軟性袋体としたので、車両が左右に揺れた際に、排気ガス浄化液の揺れに対し容器本体21が変形するので、尿素水の揺れにより発生する音も抑制でき、ドライバーに不安感を与えることが抑制できる効果を有している。
【産業上の利用可能性】
【0028】
ディーゼルエンジンを搭載する機械の排気系に配設され、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス浄化を図る汎用機械、建設機械及び、車両等に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 排気ガス浄化液携帯容器
2 収納容器(柔軟性袋体)
3 支持体
4 ヒンジ部
5 把持部
21 容器本体
22 注出口
23 第1A係合部
24 第2A係合部
25 第1B係合部
26 第2B係合部
31 A面状部材(面状部材)
32 B面状部材(面状部材)
33 第3A係合部
34 第4A係合部
35 第3B係合部
36 第4B係合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
詰替え用排気ガス浄化液を収納可能とし、上下方向へ延出した筒状体の上端部の一端側に抽出口を有する使い捨て柔軟性袋体と、該柔軟性袋体の上部を支持する第1係合部と、前記柔軟性袋体の下部を支持する第2係合部と、前記柔軟性袋体の前記上端部他端側の外方に前記柔軟性袋体の上下方向に沿って延在したヒンジ部を回動中心に対向して配置された面状部材間に前記柔軟性袋体が配置され、前記第1及び第2係合部と対向した位置に前記第1及び第2係合部と係合する第3及び第4係合部を配設した支持体と、該支持体の前記ヒンジ部の上下方向中間部に配設された把持部とを備えたことを特徴とする排気ガス浄化液携帯容器。
【請求項2】
前記把持部は、前記ヒンジ部から前記支持体の開放端側に位置した部位に貫通孔を配設して前記ヒンジ部を把持するようにしたことを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化液携帯容器。
【請求項3】
前記柔軟性袋体には、前記左右の面状部材夫々に係合する前記第1および、第2係合部を有すると共に、前記支持部材の前記左右の面状部材夫々に前記第1および、第2係合部と係合する前記第3および、第4係合部が配設されていることを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化液携帯容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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