説明

排気システム及び排気方法

【課題】建物に備えられる空調により形成される気流を利用し、建物に備えられた設備より漏洩する気体を、建物内部に拡散させることなく速やかに建物外部へ排気するための排気システムを提案する。
【解決手段】空気より比重の軽い特定の気体を扱う設備を備えた建物に備えた該気体を排気させるための排気システムにおいて、気体発生設備25の上方に建物外部と連通する排気口13を設け、空調の吹出口17を床16に設けるとともに、空調の吸入口12を天井11に設けて、特定気体30の発生する場所の周囲において床16から天井11に向かう空調による気流を形成した。そして、排気口13が天井11の最高位置に位置するよう天井11に勾配を形成した。また、建物10の床部を二重床として床16をパネル式床とし、天井部を二重天井として天井11をパネル式天井とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス等の空気よりも軽い気体を扱う建物における、空気よりも軽い気体の排気システムであって、建物に備えられる空調システムを利用してより効果的に気体を排気させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガス等の空気よりも軽い気体は、空気よりも比重が軽いために自然に上昇し、さらに、拡散しやすいという特性がある。また、例えば、高濃度の水素ガスは、空気と混合して何らかの原因により着火すれば、爆発が生じるおそれがある。
このため、水素ガス等、爆発の発生や人体に危害を与える虞のある気体等が建物内部で漏洩した場合は、できる限り早急に建物の外に排気して大気拡散させる必要がある。
そこで、従来、水素ガス等、爆発の発生や人体に危害を与える虞のある気体を扱う設備を備えた建物に強制的換気機構を備えて、これらの気体を速やかに建物の外へ排気する技術が公知となっている。
例えば、特許文献1に記載の技術である。この技術では、給水素スタンドの構造であって、水素貯溜タンクの配置される建物の屋根に傾斜を設け、その傾斜の最上部に開口を形成する。これにより、水素貯溜タンクから漏れ出た水素ガスが、屋根の下面の傾斜に沿って建物外部へ速やかに排出され、大気に拡散されるようにしている。
【特許文献1】特開平7−101316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
建物に備えられた設備より、爆発を発生させる虞のある気体が漏洩したことにて生じる爆発の防止及び爆発規模縮小のためや、人体に危害を与える虞のある気体が漏洩したことにて生じる被害発生の防止及び規模縮小のためには、漏洩した気体が拡散するよりも早く排出させることが、より好ましい。
しかし、建物には温度・湿度を調整するために空調設備が備えられていることが一般的であり、この空調設備により形成される空調気流によっては、排気されるべき気体の直線的で速やかな上昇が妨げられることがある。例えば、空調により生じる気流の方向が排気されるべき気体の比重の差による移動方向と異なる場合には、排気されるべき気体は上昇を妨げられ、該気体が建物内部を上昇して排気口へ至るまでに乱流拡散されて、建物内部に不均一に広く拡散してしまうおそれがあった。
【0004】
そこで、本発明では、建物に備えられる空調により形成される気流を利用し、建物に備えられた設備より漏洩する気体を、建物内部に拡散させることなく速やかに建物外部へ排気するための排気システムを提案する。
さらに、設備の配置が変更された場合であっても、容易にその変更に対応することのできる排気システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、空気より比重の軽い特定の気体を扱う設備を備えた建物において該特定の気体を排気させるための排気システムであって、建物内における特定の気体の漏洩が発生する場所の上方に建物外部と連通する排気口を設け、建物に備えた空調の吹出口を床に設けるとともに、空調の吸入口を天井に設けて、特定の気体の漏洩が発生する場所の周囲において床から天井に向かう空調による気流を形成したものである。
【0007】
請求項2においては、前記排気口を天井に設け、該排気口を最高位置とするべく天井に勾配を形成したものである。
【0008】
請求項3においては、前記建物において、床の下方に基礎床を設けて二重床を構成するともに、床を着脱可能な複数のパネルを接続配置したパネル式床としたものである。
【0009】
請求項4においては、前記建物において、天井の上方に基礎天井を設けて二重天井を構成するともに、天井を着脱可能な複数のパネルを接続配置したパネル式天井としたものである。
【0010】
請求項5においては、空気より比重の軽い特定の気体を扱う設備を備えた建物において該特定の気体を排気させるための排気方法であって、建物内における特定の気体の漏洩が発生する場所の周囲において特定の気体の流れに合わせた空調による気流を形成し、特定の気体の漏洩が発生する場所の上方に設けた建物外部と連通する排気口より特定の気体を排気するものである。
【0011】
請求項6においては、前記建物において、空調による気流を形成する空調の吹出口及び空調の吸入口を移動可能とするとともに、排気口を移動可能とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、空調により形成される空調気流の流れと、特定の気体が比重の差により移動する方向とが略同一方向となり、空調気流が特定の気体の上昇を妨げない。これにより、特定の気体は、気流に沿って上昇し、拡散することなく、排気口に至る。拡散する特定の気体を低減させることができ、建物内部に残留する特定の気体の量を低減させることができる。
【0014】
請求項2においては、天井近傍において、天井の傾きに沿って上方に位置する排気口へ向かう気流が形成され、天井近傍にある気体はより速やかに排気口へ至ることができる。また、特定の気体の発生場所が多少ずれても、排気口へ至らしめることができる。
【0015】
請求項3においては、排気すべき特定の気体の発生場所が移動した時にも、吹出口を形成した床パネルの位置を変更することで、特定の気体を拡散させることなく排気口に至らしめる空調気流を簡易に形成することができる。吹出口の位置の変更を容易とすることができる。
【0016】
請求項4においては、排気すべき特定の気体の発生場所が移動した時にも、吸入口や排気口を形成した天井パネルの位置を変更することで、特定の気体を拡散させることなく排気口に至らしめる空調気流を簡易に形成することができる。吸入口や排気口の位置の変更を容易とすることができる。
【0017】
請求項5においては、空調により形成される空調気流の流れと、特定の気体が比重の差により上昇する方向とが略同一方向となり、空調気流が特定の気体の上昇を妨げない。これにより、特定の気体は、気流に沿って上昇し、拡散することなく、排気口に至る。拡散する特定の気体を低減させることができ、建物内部に残留する特定の気体の量を低減させることができる。
【0018】
請求項6においては、特定の気体の漏洩が発生する場所が変更しても、これに応じて該特定の気体を排気するために適した気流を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係る循環式の空調を利用した排気システムの構成を示す図、図2は本発明の実施例に係る排出式の空調を利用した排気システムの構成を示す図、図3は天井の別形態を示す図、図4は天井パネルと床パネルの配置構成を示す図、図5は天井パネルと床パネルの配置構成の別形態を示す図である。
【0020】
本発明に係る排気システムを備えた建物の一実施例について説明する。
排気システムを備えた建物10では、空気よりも軽い特定の気体(特定気体30)を発生させる気体発生設備25を備えており、通常その気体は漏洩しないが、万が一、気体発生設備25より特定気体30が漏洩した場合に、その漏洩した特定気体30を強制的に排気させる機構を備えている。特定気体30となる気体は、例えば、水素やアンモニア等の空気よりも軽い気体であって、建物内部に漏洩した場合には排気されるべき気体である。
【0021】
排気システムでは、気体発生設備25にて特定気体30が漏洩したときには、建物10内部に特定気体30を拡散させることなく、建物10外部へ排気して大気へ拡散させることを、特徴としている。
このための構造として、床16に空調の吹出口17を設け、天井11に吸入口12を設けて、気体発生設備25の周囲に常に上昇する空気の流れを形成するとともに、特定気体30の発生する場所である気体発生設備25の上方に建物10外部と連通する排気口13を開口している。これにより、気体発生設備25から特定気体30が漏洩した場合、漏洩した特定気体30が拡散することなく直線的に排気口13へ向かって上昇し、速やかに建物10の外部へ排出されるようにしている。
【0022】
水素等の、空気よりも軽い気体である特定気体30は、建物10の内部に漏洩したときには、その浮力により上昇しようとする。このとき、空調により形成される建物10内部の気流は下から上に向かう方向であって、特定気体30の上昇を妨げることがないので、特定気体30は建物10内部に拡散するよりも前に、大部分が排気口13から排気されるのである。
これより、建物10内部に拡散して残留する特定気体30の量を低減させることができる。従って、特定気体30が水素ガスであったときに、水素ガスに着火した場合の爆発の威力を低減させることが期待される。
【0023】
また、本発明に係る排気システムを備えた建物10は、建物10内部において、気体発生設備25の配置を変更しても、建物10の大幅な改築を必要とすることなく、それに対応することができることを特徴としている。
このための構造として、建物10の天井11及び床16を一定形状の天井パネル又は床パネルを接続して形成した接続パネル式天井又は床としている。吹出口17を形成した床パネル32と、吸入口12を形成した天井パネル34と、排気口13を形成した天井パネル35の配置を変更し、天井裏空間38又は床下空間39に設けられた管を接続し直すことにより、容易に気体発生設備25の配置の変更に対応することができるようにしている。
【0024】
次に、上記排気システムの構造について、詳細に説明する。
排気システムは、循環式の空調を利用した排気システムと、排出式の空調を利用した排気システムの二種類があり、それぞれについて説明する。
【0025】
[循環式の空調を利用した排気システム]
図1は、循環式の空調を利用した排気システムの概要を示す図である。
建物10の床部では、基礎床18の上に複数の吹出口17・17・・・が形成された床16が設けられる。床16と基礎床18との間には床下空間39が形成される。
空調機20では、気体の温度や量の調整が行われ、調整された気体が、送気管21を通じて建物10の基礎床18に形成された送気溜22に送られる。送気溜22は床下空間39に対して開口されており、送気溜22にある調整された気体は、床下空間39を介して、吹出口17・17・・・を通じて、建物10の内部へ吹き出される。
【0026】
前記吹出口17は、建物10の内部に配置される気体発生設備25の周囲に配置される。但し、気体発生設備25の周囲の床16に吹出口17・17・・・を集中的に配置するとともに、床16の他の部分においても適宜位置に吹出口17・17・・・を設けることもできる。
【0027】
そして、建物10の天井部では、天井11が設けられ、該天井11の上方に天井裏空間38を介して基礎天井19が設けられている。天井裏空間38には、配管やその他機器の設置のために利用される。前記天井11には、気体発生設備25の上方において排気口13が開口され、前記吹出口17・17・・・の上方において吸入口12・12・・・が開口される。但し、吹出口17は、天井11ではなく、建物10の壁面上部に設けたり、天井11及び建物10壁面上方の両方に設けたりすることもできる。
【0028】
各吸入口12には吸入管24が接続され、該吸入管24は空調機20へ気体を戻す戻気管23に接続され。戻気管23に開閉可能なバルブ28が備えられる。
前記吸入口12・12・・・に取り込まれた気体は、吸入管24から戻気管23を通じて空調機20へ戻される。従って、空調機20から建物10内部へ送られる気体は循環している。なお、空調機20の吸気機能によって、戻気管23及び吸入管24は減圧状態となっており、建物10内部の空気は、吸入口12・12・・・より強制的に吸入される。
【0029】
また、前記排気口13には、建物10の外部と内部とを連通する排気管15が接続されており、排気管15には、排気ファン14が備えられて、建物10内部の気体は排気管15を通じて強制的に排気される。
【0030】
前記吸入口12・12・・・及び排気口13には、それぞれに気体濃度検出手段27・27・・・が設けられる。なお、各吸入口12に気体濃度検出手段27を設けるかわりに、戻気管23に一つの気体濃度検出手段27を設けることもできる。
前記気体濃度検出手段27は、気体発生設備25から発生する特定気体30の気体濃度を検出する手段である。
【0031】
一方、排気管15に設けられた排気ファン14と、戻気管23に設けられたバルブ28とは、空調機20に設けられた制御手段40にて制御される。また、前記気体濃度検出手段27は、制御手段40に接続されており、検出信号を制御手段40にて受信することができる。
【0032】
そして、気体濃度検出手段27において、予め設定された濃度以上の濃度の特定気体30が検出されれば、その検出信号を受けた制御手段40は、バルブ28を閉じて吸入口12・12・・・からの吸気を停止するとともに、排気ファン14の回転速度を上げて、排気口13から排気管15を通じてより速やかに特定気体30を建物10外部へ排気する。このとき、制御手段40は警報手段41を作動させて、特定気体30が建物10内に異常に存在していることを警報する。
【0033】
[排出式の空調を利用した排気システム]
図2は、排出式の空調を利用した排気システムの概要を示す図である。
建物10の床部では、基礎床18の上に複数の吹出口17・17・・・が形成された床16が設けられる。床16と基礎床18との間には床下空間39が形成される。前記吹出口17は、建物10の床16の適宜位置に設けられる。
空調機20では、気体の温度や量の調整が行われ、調整された気体が、送気管21を通じて建物10の基礎床18に形成された送気溜22に送られる。送気溜22は床下空間39に対して開口されており、送気溜22にある調整された気体は、床下空間39を介して、吹出口17・17・・・を通じて、建物10の内部へ吹き出される。
【0034】
そして、建物10の天井部では、天井11が設けられ、該天井11の上方に天井裏空間38を介して基礎天井19が設けられている。前記天井11には、気体発生設備25の上方において排気口13が開口され、さらに、天井11の適宜位置にも複数の排気口13・13・・・が開口される。
【0035】
各排気口13は天井裏空間38に設けられた排気溜26に開口している。排気溜26には、建物10の外部と内部とを連通する排気管15が接続されており、排気管15には、排気ファン14が備えられて、建物10内部の気体を排気管15を通じて強制的に排気するようにしている。なお、排気ファン14は、空調機20に設けられた制御手段40にて制御される
【0036】
そして、前記排気溜26又は排気管15には、気体濃度検出手段27が設けられる。前記気体濃度検出手段27は、気体発生設備25から発生する特定気体30の気体濃度を検出する手段である。前記気体濃度検出手段27は、制御手段40に接続されており、検出信号を制御手段40にて受信することができる。
【0037】
そして、気体濃度検出手段27において、予め設定された濃度以上の濃度の特定気体30が検出されれば、その検出信号を受けた制御手段40は、排気ファン14の回転速度を上げて、排気口13から排気管15を通じてより速やかに特定気体30を建物10外部へ排気する。このとき、制御手段40は警報手段41を作動させて、特定気体30が建物10内に異常に存在していることを警報する。
【0038】
上記、循環式の空調を利用した排気システム及び排出式の空調を利用した排気システムでは、床16に設けられた吹出口17・17・・・より建物10内部へ吹き出す気体が、天井11に設けられた吸入口12・12・・・や排気口13・13・・・へ流れ込むことによって、床から天井へ上昇する気流が強制的に形成される。しかも、各吹出口17の上方にそれぞれ吸入口12が形成されるため、気体の流れは下方から上方へ向かう略直線的なものとなる。従って、万が一、気体発生設備25から特定気体30が漏洩して、該特定気体30の気体の性質により上昇しようとする際に、気体発生設備25の周囲に形成された上昇気流によって、特定気体30は側方に広がって拡散することなく下方から上方へ略直線的に上昇して、排気口13から排気管15を通じて排気されることになる。
また、気体濃度検出手段27を備えることにより、より迅速に特定気体30の漏洩を検出することができるとともに、特定気体30をより迅速に排気させるために空調システムを運転させることができる。
【0039】
なお、上記循環式の空調を利用した排気システム及び排出式の空調を利用した排気システムにおいて、排気口13への更に速やかな集気を図って、天井11に勾配を形成する事もできる。
【0040】
図3に示す如く、前記天井11に勾配を設け、天井11の最も高い位置に気体発生設備25の直上に設ける排気口13を配置する。なお、勾配を設けた天井11は、傾斜型、山型、錘型とすることができる。
この場合、空調による気流の流れは、床16と天井11との間では、床16から天井11へ向かう直線的な流れであり、天井11近傍では、天井11の傾きに沿って上方に位置する排気口13へ向かう流れとなる。このように、天井11の傾きによって天井11近傍においても気流の流れが形成されることになる。従って、天井11近傍に至った気体は、速やかに排気口13へ至ることができる。
【0041】
例えば、図3(a)に示す如く、特定気体30の漏洩方向が横向きである場合や、図3(b)に示す如く、特定気体30の発生場所が気体発生設備25から離れた場所である場合に、特定気体30は、空調による気流により直線的に上昇したのち、天井11近傍まで至ると、天井11において拡散することなく、速やかに排気口13へ移動し、排出される。このように、天井11が略水平に形成される場合と比較して、天井11近傍での特定気体30の拡散を抑制することができ、これにより、建物10に残留する特定気体30の量を低減させることができるので安全性の向上を図ることができる
【0042】
続いて、天井11と床16の構造について詳細に説明する。
【0043】
前述の如く、建物10の天井部は、天井11とその上方に設けられた基礎天井19との二重天井構造であって、天井11は、複数の天井パネルを接続して構成されたパネル式天井としている。また、建物10の床部は、床16とその下方に設けられた基礎床18との二重床構造であって、床16は複数の床パネルを接続して構成されたパネル式床としている。
なお、本実施例においては、天井部、床部ともにパネル式としているが、いずれか一方のみをパネル式とすることもできる。
【0044】
図4に示す如く、天井パネルは、吸入口12を形成した天井パネル34と、排気口13を形成した天井パネル35と、開口を形成しない天井パネル36との、各種類がある。
これらの天井パネル34・35・36を接合して天井11が形成される。
また、床パネルは、吹出口17を形成した床パネル32と、開口を形成しない床パネル33との、各種類がある。
これらの床パネル32・33を接合して床16が形成される。
【0045】
例えば、気体発生設備25が床16の略中心に設置される場合、図4(c)に示す如く、気体発生設備25を取り囲むようにして、吹出口17を備えた床パネル32を配置し、その他の部分に床パネル33を配置して、床16を構成する。
このとき、循環式の空調を利用した排気システムでは、図4(a)に示す如く、気体発生設備25の直上に排気口13を備えた天井パネル35を配置し、その周囲四方向に吸入口12を備えた天井パネル34を配置し、他の部分に天井パネル36を配置して、天井11を構成する。また、排出式の空調を利用した排気システムでは、図4(b)に示す如く、気体発生設備25の直上とその周囲四方向に排気口13を備えた天井パネル35を配置し、他の部分に天井パネル36を配置して、天井11を構成する。
【0046】
上記図3に示す状態から、気体発生設備25を壁際に配置するときには、図5(c)に示す如く、気体発生設備25を取り囲むようにして、吹出口17を備えた床パネル32を配置し、その他の部分に床パネル33を配置して、床16を構成する。
このとき、循環式の空調を利用した排気システムでは、図5(a)に示す如く、気体発生設備25の直上に排気口13を備えた天井パネル35を配置し、その周囲二方向に吸入口12を備えた天井パネル34を配置し、他の部分に天井パネル36を配置して、天井11を構成する。また、排出式の空調を利用した排気システムでは、図5(b)に示す如く、気体発生設備25の直上とその周囲二方向に排気口13を備えた天井パネル35を配置し、他の部分に天井パネル36を配置して、天井11を構成する。
【0047】
上述の如く、図4の状態から図5の状態に、気体発生設備25の配置を変更するに伴って、天井11に設けた吸入口12及び排気口13と、床16に設けた吹出口17の位置を変更することができる。この際、天井11及び床16はいずれもパネル式であるので、パネルを組み直すことで、気体発生設備25に最適な状態に吸入口12、排気口13及び吹出口17を配置することができる。
なお、吸入管24及び排気管15は、吸入口12又は排気口13の位置に応じて、管を延長・短縮したり、再接続したりして、配管し直す。これらの配管作業は、天井パネルを取り外して天井裏空間38にて行うことができる。
【0048】
これにより、建物10に使用していた部材を廃棄することなく、天井パネル又は床パネルの組み替えや追加等によって、自由に床面積や設備配置を変更することができる。そして、これらの変更に伴って、空調により形成される気流を特定気体30の上昇方向と同じ方向に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例に係る循環式の空調を利用した排気システムの構成を示す図。
【図2】本発明の実施例に係る排出式の空調を利用した排気システムの構成を示す図。
【図3】天井の別形態を示す図。
【図4】天井パネルと床パネルの配置構成を示す図。
【図5】天井パネルと床パネルの配置構成の別形態を示す図。
【符号の説明】
【0050】
10 建物
11 天井
12 吸入口
13 排気口
14 排気ファン
15 排気管
16 床
17 吹出口
18 基礎床
19 基礎天井
20 空調機
25 気体発生設備
26 排気溜
27 気体濃度検出手段
28 バルブ
30 特定気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気より比重の軽い特定の気体を扱う設備を備えた建物において該特定の気体を排気させるための排気システムであって、
建物内における特定の気体の漏洩が発生する場所の上方に建物外部と連通する排気口を設け、
建物に備えた空調の吹出口を床に設けるとともに、空調の吸入口を天井に設けて、特定の気体の漏洩が発生する場所の周囲において床から天井に向かう空調による気流を形成したことを、
特徴とする排気システム。
【請求項2】
前記排気口を天井に設け、
該排気口を最高位置とするべく天井に勾配を形成した、
請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
前記建物において、
床の下方に基礎床を設けて二重床を構成するともに、
床を着脱可能な複数のパネルを接続配置したパネル式床とした、
請求項1又は請求項2に記載の排気システム。
【請求項4】
前記建物において、
天井の上方に基礎天井を設けて二重天井を構成するともに、
天井を着脱可能な複数のパネルを接続配置したパネル式天井とした、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の排気システム。
【請求項5】
空気より比重の軽い特定の気体を扱う設備を備えた建物において該特定の気体を排気させるための排気方法であって、
建物内における特定の気体の漏洩が発生する場所の周囲において特定の気体の流れに合わせた空調による気流を形成し、
特定の気体の漏洩が発生する場所の上方に設けた建物外部と連通する排気口より特定の気体を排気することを、
特徴とする排気方法。
【請求項6】
前記建物において、
空調による気流を形成する空調の吹出口及び空調の吸入口を移動可能とするとともに、
排気口を移動可能とする、
請求項5に記載の排気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−46766(P2006−46766A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227245(P2004−227245)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)