説明

排気装置

【課題】ナノマテリアルに対して使用するプレフィルター及び又はヘパフィルターを有する排気装置における、フィルターのメンテナンスを安全容易に行うことが出来るようにしたナノ粒子除去装置に用いることの可能な排気装置を得る。
【解決手段】函体にトルクヒンジにより揺動可能に設けられた支持部材により、プレフィルター及び又はヘパフィルターを垂下支持し、かつ、函体内の前記フィルターの上位に、一面に接着剤を塗布してなるフィルムの保持手段及び該フィルム引き出し用ニップロールを配してなる。また、ファンが設けられている陽圧室と前記フィルター室とを貫通口で連通することでフィルター室を陽圧としてなる。そして、フィルムの保持手段は、フィルムをロール状に巻き付けているロール軸をアームにより函体に支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパフィルター或はプレフィルター等の分離部材を交換する際に、当該分離部材に付着しているナノ粒子や有害粒子などがフィルターから脱落し周囲に飛散するのを防止する手段に特徴を有する、ナノ粒子除去装置,クリーンベンチ等の排気装置に関するもので有る。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノマテリアルの生産・利用の拡大が進んでいるが、ナノマテリアルの生体への影響については、十分な知見が得られていない。
しかし、ナノ粒子の場合は、大粒子の様に気道に付着し、痰となって排出されるという事はなく、肺胞まで到達し健康に害をおよぼすことも考えられる。
そのため、アスベスト被害の様に数年〜数十年後に健康被害が発生する可能性を否定する事は出来ない。将来の健康被害を未然に防止する観点からナノマテリアルに対するばく露防止のための予防的対応について種々検討されている。
【0003】
その結果、ヘパフィルターを備えた排気装置等を使用するときは、電動機や排風機の能力を大きくする必要があると共に、発塵の多いナノマテリアル関連作業にあってはフィルターの頻繁なる交換が必要となるが、この場合には、ヘパフィルターの前に、前置きフィルター(プレフィルター)を設けるなどの留意が必要とされている。さらに、定期的な保守・点検を行い、所定期間使用したフィルターは交換しなければならない。その交換にグローブバッグを用いる手段がある(特許文献1〜4参照)。フィルター交換の都度フィルターの取出口部の蓋を開け該部に取り出したフィルターを入れる為のバッグを固定し、バッグに設けられているグローブに手を差し込みグローブ内にフィルターを取り込むことが行われる。そして、フィルターを取り込んだバッグは、その口部を嵌め紐等で固定して取出口部でバッグを切断し、口出し口部の蓋を閉める.この操作は極めて煩わしい。
【0004】
これらのナノ粒子や有害粒子などを取り扱う方法としては、手袋,マスク,防塵衣を着用する方法、上記方法に更に室を陰圧に保ちナノ粒子や有害粒子などを飛散させない方法、バグインバグアウト方法などが行われる。より完全に取り扱う方法は、バグインバグアウトであるが、この方法は装置内のナットやLアングルなどの取り外し作業が多く、また、袋を取り付け目る為に装置にダクトなどを取り付けることが必要で、構造が複雑になり、高価な上、ビニールを破く恐れもあり、非常にやりづらく、不便な方法であった。
【0005】
そこで、今回、極力、ナノ粒子や有害粒子などの飛散を少なくして、プレフィルター及びヘパフィルター等のフィルターの交換を行える装置を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−351283号公報
【特許文献2】特開平7−191189号公報
【特許文献3】実公平2−44816号公報
【特許文献4】特許第3329926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みて、ナノマテリアルに対して使用するプレフィルター及び又はヘパフィルターを有する排気装置における、フィルターのメンテナンスを安全容易に行うことが出来るようにした、ナノ粒子や有害粒子などの除去装置に用いることの可能な排気装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明にあっては、函体にトルクヒンジにより揺動可能に設けられた支持部材により、プレフィルター及び又はヘパフィルターを垂下支持し、かつ、函体内の前記フィルターの上位に、一面に接着剤を塗布してなるフィルムの保持手段及び該フィルム引き出し用ニップロールを配してなる。
請求項2記載の発明にあっては、請求項1記載の排気装置に於て、ファンが設けられている陽圧室とフィルター室とを貫通口で連通することでフィルター室を陽圧としてなる。
請求項3記載の発明にあっては、請求項1記載の排気装置において、フィルムの保持手段は、フィルムをロール状に巻き付けているロール軸をアームにより函体に支持したものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明排気装置は、函体にトルクヒンジにより揺動可能に設けられた支持部材により、プレフィルター及び又はヘパフィルターをフィルター室内に垂下支持し、フィルター室内を、ファンを設置してある陽圧室と貫通口により連通することによって陽圧としているため、パッキンの一部に微量の隙間が発生しても、その隙間からナノ粒子や有害粒子などがヘパフィルターを通過せずに排気されることはない。フィルターから剥落した塵埃等が函内に飛散することがなく、かつ、函体内の前記フィルターの上位に、一面に接着剤を塗布してなるフィルムの保持手段、及び該フィルム引き出し用ニップロールを配してなるため、フィルター交換の際にフィルターをスイングさせフィルターの下縁を装置外に出し、それにフィルム端部を巻き付けることでフィルムの接着剤によりフィルムをフィルターに接着固定し、以後支持部材からフィルターを取り外すと共にフィルムをフィルターに巻き付けるようにしてフィルターをフィルムで覆うようにするため、フィルターに付着しているナノ粒子や有害粒子などは飛散することなくフィルターと共に取り出すことが可能となった。フィルムはその一面に接着剤が塗布されているのでフィルターを密封した状態でカバーするためにナノ粒子や有害粒子などのもれを効果的に防止している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】フィルムを引き出した状態の本発明排気装置の正面図。
【図2】フィルム引き出し用ニップロールを収納した状態の縦断面図。
【図3】ヘパフィルター取付金具の、Aは正面図、Bは側面図。
【図4】プレフィルター取付金具の、Aは正面図、Bは側面図、Cは取付の過程を示す説明図。
【図5】A乃至Gはプレフィルターを包装する際の過程を順に示す、本発明装置の縦断面図。
【図6】A乃至Gはヘパフィルターを包装する際の過程を示す、本発明装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明排気装置1の実施形態につき図面と共に説明する。
排気装置1は、函体2の内部にファン3を配した陽圧室4及び隣接する陰圧室5,フィルター室6を設け、函体2内の矢印に示す如き通気路7で外気を吸引排出し、フィルター室6内にはヘパフィルター8を、フィルター室6の入口にはプレフィルター9をそれぞれ設け、それぞれ取付金具10,19により揺動自在に支持されている。
【0012】
ヘパフィルター8の支持部材10は次の如く構成されている。支持部材10は梁状の断面コ字形をなした取付金具で、陰圧室5とフィルター室6との間に位置する隔壁11にトルクヒンジ12で旋回動自在に支持されている。トルクヒンジは軸支されている2枚の羽根のなす角度を変更する場合には、所定の価以上の力を羽根に加えたときのみ羽根を開き或は閉じることが出来るようにしてあり、所定の開き角度で外力の賦与を止めればその開き角度でヒンジは停止している。図3に示す如く取付金具10は、その長さがヘパフィルター8の幅方向長さと一致させてあり、かつ、取付金具10の両端部にはL字状のヘパフィルター固定爪13を設け両固定爪13,13でヘパフィルター8の上縁部を両側から挟持する状態で取付金具10にヘパフィルター8を垂下している。垂下されているヘパフィルター8は隔壁11との間にパッキン14を接して気流の漏洩を防止している。
【0013】
プレフィルター9の支持は次の如く行われる。
函体2の外気吸入側にロ字状の枠体よりなる前面蓋15を、前面蓋15の下縁に設けたヒンジ16,16(このヒンジ16はトルクヒンジである必要はない)により蝶着し、開蓋時に前面蓋15の上部が函体2の前方に倒れるように支持する。前面蓋15の上縁には前面蓋固定ビス17により常時は前面蓋15が開かないように固定している。前面蓋15のロ字状の開口部18内には、プレフィルター9を前記開口部18内に取り付けるためのプレフィルター取付金具19を、トルクヒンジ20によって揺動自在に取り付ける。プレフィルター取付金具19は断面コ字状のガイド部材が、正面視下方が開いた倒コ字状の枠体を構成しており、枠体の前記下方の開いた部分からプレフィルター9をガイド部材に挿入し、プレフィルター取付金具19の左右両肩部分にあるプレフィルター固定爪21の弾発力でプレフィルター9が取付金具19からの脱落を防止され支持されている。
【0014】
22はストッパーで、プレフィルター9がトルクヒンジ20を中心に勝手に揺動するのを防止するためにプレフィルター9の下端縁を押さえている。前面蓋15の内面に接するヘパフィルター8の前面には、一次側パッキン23が設けられている。パッキン23は前記したパッキン14と共にヘパフィルター8に設けられているが、その目的は塵埃等の漏出を防止するためで、更に、それを効果的にするためにフィルター室6を陽圧にしてヘパフィルター側からフィルター室6への気体の流出がないようにフィルター室6を陽圧にしている。その手段はファン3を設けてある陽圧室4とフィルター室6とを貫通口24で結び陽圧室4の圧力をフィルター室6に賦与している。
【0015】
次にフィルター包装用のフィルム30につき説明する。フィルム30は、その一面に接着剤が塗布されておりロール状に巻き上げられている。ロール状のフィルムは、フィルター室6の上部空間内に函体2に保持手段31により回転自在に支持されている。引き出されたフィルム30は対のロールよりなるニップロール33に挟持され、端部を引くことによってフィルム30はロールから引き出されニップロール33に案内されて繰り出される。函体2の前面の一部が蓋体35を形成し、ヒンジ34で開くよう構成され、蓋体35の内面にニップロール33が設けられている。ヒンジ34はトルクヒンジでなければならないと云う必要は無いが、ニップロール33の位置を固定するためにはトルクヒンジを選ぶのが好ましい。ニップロール33はフィルム30が引き出される際にフィルムの動きに従動してフィルムを案内するようにしても、或は、適宜の駆動手段を設けニップロール33の回転によりフィルム30を引き出せるようにしても何れでも差し支えない。
【0016】
次にフィルターの包装につき説明する。フィルターの包装はプレフィルター9,ヘパフィルター8の何れが先でも差し支えなく任意に行えるが、以下の例ではプレフィルター9を先に行う手法について説明する。プレフィルター9の包装の過程を図5に示す。
即ち、先ず図5Aの状態からストッパー22を外し、プレフィルター9をプレフィルター取付金具19と共にトルクヒンジ20を中心に旋回動し図5Bの状態にする。この際、開蓋部35を開きニップロール33を排気装置1の前面に位置させる。そしてフィルム30を引き出しその先端をプレフィルター9に接着固定してから図5Cに示す如くプレフィルター取付金具19からプレフィルター9を引き出し、図5D,Eの如くプレフィルター9を数回回転することによってプレフィルター9の周囲にフィルム30を巻き付けプレフィルター9をフィルムで覆った後、適宜、図示しないカッター等の切断用具でフィルムをその幅方向に切断する(図5F)。
【0017】
上記操作によりプレフィルター9は完全にフィルム30に覆われて(図5G)ナノ粒子や有害粒子等を撒き散らすことはない。
次に、ヘパフィルター8を交換するが、ヘパフィルター8の交換時にプレフィルター9の取付金具19及びそれを支持している前面蓋15は作業に差し支えない位置にヒンジ16を曲げることによって倒しておく(図6A)。そしてトルクヒンジ12を中心にしてヘパフィルター8の取付金具10を旋回動し図6Bの如く位置させ、プレフィルター9のときと同様にフィルム30を引き出してその先端をヘパフィルター8に接着する。そしてヘパフィルター8を取付金具10から外し(図6C)、ヘパフィルター8を適宜回数回転(図6D,E)してヘパフィルター8にフィルム30を巻き付けてからフィルム30を切断(図6F)してヘパフィルター8の包装を終了する。
【0018】
次に新フィルターをそれぞれの取付金具に取り付け、取付金具を元位置に復帰させることにより作業は終了する。
【符号の説明】
【0019】
1 排気装置
2 函体
3 ファン
4 陽圧室
5 陰圧室
6 フィルター室
7 通気路
8 ヘパフィルター
9 プレフィルター
10 ヘパフィルター取付金具
11 隔壁
12,20 トルクヒンジ
13 ヘパフィルター固定爪
14 パッキン
15 前面蓋
16,34 ヒンジ
17 前面蓋固定ビス
18 ロ字状開口部
19 プレフィルター取付金具
21 プレフィルター固定爪
22 ストッパー
23 一次側パッキン
24 貫通口
30 フィルム
31 保持手段
33 ニップロール
35 開蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
函体にトルクヒンジにより揺動可能に設けられた支持部材により、プレフィルター及び又はヘパフィルターをフィルター室内に垂下支持し、かつ、函体内の前記フィルターの上位に、一面に接着剤を塗布してなるフィルムの保持手段及び該フィルム引き出し用ニップロールを配してなる排気装置。
【請求項2】
ファンが設けられている陽圧室と前記フィルター室とを貫通口で連通することでフィルター室を陽圧としてなる請求項1記載の排気装置。
【請求項3】
フィルムの保持手段は、フィルムをロール状に巻き付けているロール軸をアームにより函体に支持したものである請求項1記載の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−145032(P2011−145032A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7923(P2010−7923)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(591066465)日本エアーテック株式会社 (27)
【Fターム(参考)】