説明

排水トラップ

【課題】排水管の周囲等の封水室内に髪の毛が堆積して排水トラップの排水性能が低下することを未然に防ぐことができる排水トラップを提供する。
【解決手段】本発明の排水トラップ1は、洗面器4の排水口4aに接続され、この排水口から流出する排水を導く排水管8と、この排水管からの排水の流路を形成すると共に、排水管の出口部8aを閉塞可能な封水を収容する封水室10と、封水室に接続され、この封水室から溢れた排水を下水側に導く流出管14と、洗面器の上方に開口するオーバーフロー口4bにから流出する排水を導くように、その出口部12aが流出管よりも上流側に位置しているオーバーフロー管12と、を有し、排水管は、封水室内の排水中に含まれる髪の毛が排水管及びオーバーフロー管に付着したままの状態になることを防止する髪の毛付着防止手段18を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水トラップに係わり、特に、洗面台、流しや浴槽等の水槽から排水された水を下水側へ流出させるように水槽の下方に設けられた排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、水槽として用いられる洗面台の洗面器の下方には、キャビネット等、収納部としての収納スペースが設けられ、この収納スペースの一部には、洗面器から排水された水を下水側へ流出させる排水トラップが設けられている。このような従来の排水トラップは、S字型の配管路を備え、キャビネットの収納スペースのほぼ中央付近に配置されるものが一般的であり、洗面器下の収納スペースに収納物を収納する際にはしばしば障害となり、有効な収納スペースを狭めてしまうという問題があった。
そこで、特許文献1に記載されている従来の排水トラップにおいては、S字型の排水トラップの代わりに箱型の排水トラップを採用し、洗面台の洗面器下の有効な収納スペースを確保したものが知られている。
【0003】
また、このような従来の箱型の排水トラップにおいては、洗面器の排水口に接続されている排水管から封水室に排水され、封水室から溢れ出した排水は、封水室の下流側にある流出管に排水されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−71061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の排水トラップにおいては、洗面器の排水口に接続されている排水管の出口部が封水室内の下方に位置している一方、封水室内の排水が流出する流出管の入口部は封水室内の上方に位置している。このため、排水管の出口部から封水室内に流入した排水は、封水室の底面等に一旦衝突して上方に折り返し、排水管の出口部の上方に位置する流出管の入口部に向かって上昇しながら排水管の側面を回り込むような流れを形成する。
また、洗面台の洗面器においては、しばしば洗髪にも利用されるが、洗髪によって洗面器で洗い流された髪の毛が排水口からの排水と共に排水管に流れ込み、排水管の出口部から封水室内に流出する。この排水管の出口部から封水室に流出する排水は、流出管の方向に直接に差し向けられることなく、排水管或いはオーバーフロー管の側面を上昇して回り込もうとする流れを形成するものもある。このような排水の流れによって排水中に含まれる髪の毛が排水管或いはオーバーフロー管の側面等に一旦巻き付いたり、絡み付いたりして付着すると、自然に離脱させることが難しく、この排水管の周囲側面等に付着した髪の毛に排水中の別の髪の毛が次々に付着して堆積してしまうという問題がある。したがって、このように封水室内に堆積した髪の毛によって排水トラップの排水性能が著しく低下してしまうおそれがあるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、排水管の周囲等の封水室内に髪の毛が堆積して排水トラップの排水性能が低下することを未然に防ぐことができる排水トラップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、水槽から排水された水を下水側へ流出させる排水トラップであって、水槽の排水口に接続され、この排水口から流出する排水を導く排水管と、上記排水管に接続され、この排水管からの排水の流路を形成すると共に、上記排水管の出口部を閉塞可能な封水を収容する封水室と、上記封水室に接続され、上記封水室から溢れた排水を下水側に導く流出管と、を有し、上記排水管は、その出口部を形成する流路の外周部が上記流出管に対して反対側方向に突出する流路拡張凸部を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、従来、排水管の出口部から封水室に流出する排水は、流出管の方向に直接に差し向けられることなく、排水管の出口部の側面を上昇して回り込もうとする流れを形成するものもあり、この流れによって排水中に含まれる髪の毛が排水管の側面等に一旦巻き付いて付着すると、自然に離脱させることが難しいが、本発明では、排水管の出口部を形成する流路の外周部が流出管に対して反対側方向に突出する流路拡張凸部を備えているため、排水管の出口部の流路拡張凸部の流路から封水室に排水が流出する際、排水が流出管の方向に直接に差し向けられることなく、排水管の出口部の流出管に対して反対側の部分を上昇して回り込もうとする流れが形成されても、排水中に含まれる髪の毛が排水管の出口部の流路拡張凸部によって一時的に捕捉される。その後、再び流水の力により、流路拡張凸部に一時的に付着していた髪の毛が離脱して流水に乗せられるため、排水管に巻き付いたり、絡み付いて付着したままに放置されることなく、流出管から下水側へ確実に排出させることができる。したがって、排水管の周囲等の封水室内に髪の毛が堆積して排水トラップの排水性能が低下することを未然に防ぐことができる。
【0008】
また、本発明は、水槽から排水された水を下水側へ流出させる排水トラップであって、水槽の排水口に接続され、この排水口から流出する排水を導く排水管と、上記排水管に接続され、この排水管からの排水の流路を形成すると共に、上記排水管の出口部を閉塞可能な封水を収容する封水室と、上記封水室に接続され、上記封水室から溢れた排水を下水側に導く流出管と、上記水槽の上方に開口するオーバーフロー口から流出する排水を導くように、その出口部が上記流出管よりも上流側に位置しているオーバーフロー管と、を有し、上記排水管は、上記封水室内の排水中に含まれる髪の毛が上記排水管及び上記オーバーフロー管に付着したままの状態になることを防止する髪の毛付着防止手段を備えている。
このように構成された本発明においては、従来、排水管の出口部から封水室に流出する排水は、流出管の方向に直接に差し向けられることなく、排水管或いはオーバーフロー管の側面を上昇して回り込もうとする流れを形成するものもあり、この流れによって排水中に含まれる髪の毛が排水管或いはオーバーフロー管の側面等に一旦巻き付いて付着すると、自然に離脱させることが難しいが、本発明では、封水室内の排水中に含まれる髪の毛が排水管及びオーバーフロー管に付着したままの状態になることを防止する髪の毛付着防止手段を排水管が備えているため、排水管の出口部から封水室に排水が流出した際、排水管の髪の毛付着防止手段が封水室の排水中に含まれる髪の毛を一時的に捕捉したりすることができると共に、この捕捉された髪の毛は、その後再び流水の力によって離脱して流水に乗せられ、排水管及びオーバーフロー管に巻き付いたり、絡み付いて付着したままに放置されることなく、流出管から下水側へ確実に排出される。したがって、排水管から封水室内に流出した排水中に含まれる髪の毛が排水管やオーバーフロー管自体の側面に巻き付いて付着するのを確実に阻止すると共に、排水管やオーバーフロー管の周囲等の封水室内に髪の毛が堆積して排水トラップの排水性能が低下することを未然に防ぐことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記髪の毛付着防止手段は、上記排水管及び上記オーバーフロー管の少なくともそれぞれの出口部を上記封水室内で連結する連結流路を備えている。
このように構成された本発明においては、髪の毛付着防止手段が排水管及びオーバーフロー管の少なくともそれぞれの出口部を封水室内で連結する連結流路を備えているため、排水管及びオーバーフロー管の少なくともそれぞれの出口部の側面同士の隙間がなくなる。したがって、排水管の出口部から封水室に排水が流出した際、この髪の毛付着防止手段の連結流路を形成する部分が封水室の排水中に含まれる髪の毛を一時的に捕捉したりすることができると共に、この捕捉された髪の毛は、その後再び流水の力によって離脱して流水に乗せられるため、排水管及びオーバーフロー管に巻き付いたり、絡み付いて付着したままに放置されることなく、流出管から下水側へ確実に排出される。これらの結果、排水管から封水室内に流出した排水中に含まれる髪の毛が排水管やオーバーフロー管自体の側面に巻き付いて付着するのを確実に阻止すると共に、排水管やオーバーフロー管の周囲等の封水室内に髪の毛が堆積して排水トラップの排水性能が低下することを未然に防ぐことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記髪の毛付着防止手段は、上記排水管の出口部を形成する流路の外周部が上記オーバーフロー管に近接するように突出する流路拡張凸部を備えている。
このように構成された本発明においては、髪の毛付着防止手段が、排水管の出口部を形成する流路の外周部がオーバーフロー管に近接するように突出する流路拡張凸部を備えており、排水管及びオーバーフロー管の少なくともそれぞれの出口部の側面同士の隙間がほとんどなくなる。したがって、排水管の出口部から封水室に排水が流出した際、たとえ排水が流出管の方向に直接に差し向けられることなく、排水管の流路拡張凸部とオーバーフロー管との間のわずかな隙間を上昇して回り込もうとする流れが形成されても、排水中に含まれる髪の毛が排水管の髪の毛付着防止手段の流路拡張凸部によって一時的に捕捉される。その後、再び流水の力により、流路拡張凸部に一時的に付着していた髪の毛が離脱して流水に乗せられるため、排水管及びオーバーフロー管に巻き付いたり、絡み付いて付着したままに放置されることなく、流出管から下水側へ確実に排出される。これらの結果、排水管やオーバーフロー管の周囲等の封水室内に髪の毛が堆積して排水トラップの排水性能が低下することを未然に防ぐことができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記排水管は、その出口部が上記流出管と上記オーバーフロー管の出口部との間に配置されている。
このように構成された本発明においては、排水管の出口部が流出管とオーバーフロー管の出口部との間に配置されているため、排水管の出口部から封水室内に流出した排水が流出管に向かって排水管の周囲を回り込むことができるようなスペースをより広く確保することができる。したがって、排水管の出口部から封水室内に流出させる排水によって排水中に含まれる髪の毛を流水に乗せて、流出管から下水側へ確実に排出させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排水トラップによれば、排水管の周囲等の封水室内に髪の毛が堆積して排水トラップの排水性能が低下することを未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による排水トラップが内部に組み込まれた洗面台を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による排水トラップが内部に組み込まれた洗面台の側面を一部破断した概略側面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による排水トラップの部分拡大側面断面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態による排水トラップの部分拡大側面断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態による排水トラップの図5及び図7と同様な断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態による排水トラップが内部に組み込まれた洗面台を示す概略正面図である。
【図10】本発明の第4実施形態による排水トラップが内部に組み込まれた洗面台を示す概略側面図である。
【図11】本発明の第4実施形態による排水トラップの部分拡大側面断面図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による排水トラップについて説明する。
まず、図1は本発明の第1実施形態による排水トラップが内部に組み込まれた洗面台を示す概略斜視図である。つぎに、図2は本発明の第1実施形態による排水トラップが内部に組み込まれた洗面台の側面を一部破断した概略側面図である。また、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。さらに、図4は本発明の第1実施形態による排水トラップの部分拡大側面断面図である。また、図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。また、図4及び図5においては、排水の流れを矢印で示している。
【0015】
図1〜図5に示すように、本実施形態の排水トラップ1は、水槽として用いられる洗面台2の洗面器4の下方に位置する収納部6内に配置され、この洗面器4から排水された水を下水側へ流出させるものである。
この排水トラップ1は、排水管8、封水室10、オーバーフロー管12、及び、流出管14を備えている。
【0016】
まず、排水管8は、その入口部である上端部が洗面台2の洗面器4の排水口4aに接続され、そこから下方に延びて封水室10の上端部10aに接続された後、その出口部8aが封水室10の封水面Wよりも下方の封水内まで延びており、洗面器4の排水口4aから流出した排水が排水管8により封水室10内に導かれるようになっている。すなわち、排水管8は、封水室10の底部よりも下方に突出することがないように封水室10に接続されている。
また、排水管8は、封水室10内の封水によって、排水トラップ1の下流側にある下水配管16からの臭気を遮断することにより、洗面器4に臭気が立ち上るのを防ぐため、「防臭管」或いは「防臭筒」とも呼ばれている。
【0017】
つぎに、封水室10は、図2、図4、及び、図5に示すように、その平面断面が洗面台2の前後方向に細長いほぼ長楕円形状となる箱体の内部に形成され、排水管8の出口部8aを閉塞可能な封水を収容すると共に、排水管8の出口部8aからその下流側に位置する流出管14の上端部である入口部14aまで排水の流路を形成している。
【0018】
つぎに、オーバーフロー管12は、その入口部が洗面器4のオーバーフロー口4bに接続されている。この洗面器4のオーバーフロー口4bは、洗面器4の側面に形成され、洗面器4の排水口4aよりも上方に位置し、洗面器4の上限水位を制限している。
また、オーバーフロー管12は、その下流側の途中部分が封水室10の上端部10aに接続された後、その出口部12aが封水室10の封水面Wよりも下方の封水内まで延びており、洗面器4のオーバーフロー口4bから流出した排水がオーバーフロー管12により封水室10内に導かれるようになっている。すなわち、オーバーフロー管12は、封水室10の底部よりも下方に突出することがないように封水室10に接続されている。
【0019】
さらに、排水管8と封水室10の上端部10aとの接続部から排水管8の出口部8aにかけての流路8b、及び、オーバーフロー管12と封水室10の上端部10aとの接続部からオーバーフロー管12の出口部12aにかけての流路12bは、互いに連結流路18によって連結されており、オーバーフロー管12の出口部12aが封水室10の封水内で排水管8の出口部8aの後側近傍に位置するようになっている。
【0020】
ここで、排水管8の流路8bとオーバーフロー管12の流路12bとを連結する連結流路18を形成する部分は、封水室10内の排水中に含まれる髪の毛が排水管8及びオーバーフロー管12の周囲側面に付着したままの状態になることを防止する髪の毛付着防止手段として機能するようになっている。
また、この髪の毛付着防止手段である連結流路18によって、排水管8の出口部8aを含む流路8b形成する排水管8の側面の後方側(後面)とオーバーフロー管12の出口部12aを含む流路12b形成するオーバーフロー管12の側面の前方側(前面)との間に髪の毛が入り込む隙間がなくなるように設定されている。
さらに、排水管8の前面とこれに対向する封水室10内の前側の内壁面との間の隙間についても、髪の毛がほとんど入り込むことができない隙間に設定されているか、或いは、隙間なく設定されている。
【0021】
つぎに、流出管14は、その上端部である入口部14aが封水室10内に接続され、その下端部14bが封水室10の下端よりも所定長さ下方に位置している。
また、流出管14の下端部14bは、下水配管16に接続されている連結管20に連結されており、封水室10から溢れた排水は、流出管14から連結管20を経て下水配管16に導かれるようになっている。
【0022】
さらに、流出管14は、封水室10の後端側(図4及び図5に示す封水室10の右側端部に相当する部分)に上下方向に延びるように配置され、その上端部である入口部14aの高さ位置から封水室10の下端位置とほぼ等しい高さ位置にかけての流路14cの断面が封水室10内のオーバーフロー管12の外周の一部を取り囲むようにほぼ三日月形状となっている。
【0023】
また、流出管14は、その流路14cの三日月形状の断面積が、排水管8の流路8bの断面積よりも小さく、流出管14における封水室10の下端位置とほぼ等しい高さ位置から下端部14bの高さ位置にかけての流路14dの断面積よりも小さく設定されている。すなわち、流出管14は、その流路の少なくとも一部が絞られるように形成された流路14c(流路絞り部)を備えている。
【0024】
つぎに、特に図4及び図5を参照しながら、上述した本発明の第1実施形態による排水トラップの作用について説明する。
まず、洗面台2の洗面器4において洗髪によって洗い流された髪の毛を含む排水は、洗面器4の排水口4aから排水管8に排水され、排水管8の出口部8aから封水室10内に流出する。
つぎに、この洗面器4の排水口4aから排水管8に流出した髪の毛を含む排水は、排水管8の出口部8aから封水室10に流出する。
【0025】
また、この封水室10に流出した排水管8の出口部8aの近傍における髪の毛を含む排水は、封水室10内の底壁や側壁に衝突して折り返し、封水室10内において排水管8の出口部8a、連結流路18、及び、オーバーフロー管12の出口部12aの外側を回り込みながら、流出管14の上端部である入口部14aに向かって所定方向(例えば、上方)への流れを形成する。
この際、排水管8の流路8bとオーバーフロー管12の流路12bとを連結する連結流路18を形成する部分によって、排水管8の後面とオーバーフロー管12の前面との間に髪の毛が入り込む隙間がないため、排水中に含まれている髪の毛は、排水管8及びオーバーフロー管12の周囲側面に巻き付いたり、絡み付いたりして付着することなく流水に乗せられ、排水と共に流出管14に排出され、連結管20を経て下水配管16に排出される。
一方、封水室10内の排水中に含まれている髪の毛は、連結流路18の下端部分等において一時的に捕捉されたりすることもあるが、その後再び流水の力によって離脱して流水に乗せられ、排水管8及びオーバーフロー管12に巻き付いたり、絡み付いて付着したままに放置されることなく、流出管14から下水側へ確実に排出される。
【0026】
上述した本発明の第1実施形態による排水トラップ1によれば、排水管8の流路8bとオーバーフロー管12の流路12bとを連結する連結流路18を形成する部分が髪の毛付着防止手段として機能するため、封水室10内の排水中に含まれている髪の毛が排水管8及びオーバーフロー管12に巻き付いたり、絡み付いて付着したままに放置されることを確実に阻止し、流出管14から下水側へ確実に排出することができる。したがって、排水管8やオーバーフロー管12の周囲等の封水室10内に髪の毛が堆積して排水トラップ1の排水性能が低下することを未然に防ぐことができる。
【0027】
つぎに、図6及び図7を参照して、本発明の第2実施形態による排水トラップについて説明する。
図6は、本発明の第2実施形態による排水トラップの部分拡大側面断面図であり、図7は、図6のVII−VII線に沿った断面図である。ここで、図6及び図7において、図1〜図5に示す本発明の第1実施形態による排水トラップの部分と同一の部分については同一の符号を付し、これらの説明は省略する。
【0028】
図6及び図7に示すように、本発明の第2実施形態による排水トラップ30においては、第1実施形態の排水トラップ1の連結流路18に代わる髪の毛付着防止手段として、排水管8が流路拡張凸部32を備えている点で、第1実施形態の排水トラップ1とは異なった構成となっている。
この髪の毛付着防止手段である排水管8の流路拡張凸部32は、その内部及び出口部を形成する流路32aがその上流側から下流側に向かって、すなわち、封水室10の上端部10aに近接した流路拡張凸部32の上端部32bから下端部(出口部)32cに向かって拡張すると共に、排水管8の後方側に並列且つ独立に配置されているオーバーフロー管12に近接するように後方側へ突出している。
なお、流路拡張凸部32の流路32aにおける上流側から下流側に向かって拡張している部分の断面については、流路拡張凸部32の上端部32bから下端部32cに排水が誘導され、下端部32cから排出できるように形成されていれば、上流側から下流側に一律の大きさでもよい。
また、排水管8の流路拡張凸部32の後面と、これに対向するオーバーフロー管12の前面との間は、髪の毛がほとんど入り込むことができない隙間に設定されている。
【0029】
上述した本発明の第2実施形態による排水トラップ30においては、排水管8が髪の毛付着防止手段である流路拡張凸部32を備えており、互いに対向する排水管8の後面とオーバーフロー管12の前面との隙間が髪の毛がほとんど入り込むことができない隙間に設定されているため、排水管8の出口部8a及び流路拡張凸部32の下端部(出口部)32cから封水室10に排水が流出した際、たとえ排水が流出管14の入口部14aの方向に直接に差し向けられることなく、封水室10内の底壁や側壁に衝突して折り返し、排水管8の流路拡張凸部32とオーバーフロー管との間のわずかな隙間を上昇して回り込もうとする流れが形成されても、排水中に含まれる髪の毛は、排水管8の髪の毛付着防止手段である流路拡張凸部32によって一時的に捕捉されるか、そのまま流水に乗せられて流出管14に排出される。
また、髪の毛が流路拡張凸部32によって一時的に捕捉されたとしても、その後、再び流水の力により、流路拡張凸部32に一時的に付着していた髪の毛が離脱して流水に乗せられるため、排水管8及びオーバーフロー管12に巻き付いたり、絡み付いて付着したままに放置されることなく、流出管14から下水側へ確実に排出される。これらの結果、排水管8やオーバーフロー管12の周囲等の封水室10内に髪の毛が堆積して排水トラップ30の排水性能が低下することを未然に防ぐことができる。
【0030】
つぎに、図8を参照して、本発明の第3実施形態による排水トラップについて説明する。
図8は、本発明の第3実施形態による排水トラップの図5及び図7と同様な断面図である。ここで、図8において、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による排水トラップの部分と同一の部分については同一の符号を付し、これらの説明は省略する。
【0031】
図8に示すように、本発明の第3実施形態による排水トラップ40においては、第2実施形態の排水トラップ30の封水室10内における排水管8とオーバーフロー管12の配置を前後方向に入れ替えた配置となっている。すなわち、本発明の第3実施形態による排水トラップ40は、排水管8の出口部8aが流出管14とオーバーフロー管12の出口部12aとの間に配置されている点で、第1実施形態及び第2実施形態の排水トラップ1,30とは異なった構成となっている。
【0032】
上述した本発明の第3実施形態による排水トラップ40においては、排水管8の出口部8aが流出管14とオーバーフロー管12の出口部12aとの間に配置されているため、第1実施形態及び第2実施形態の排水トラップ1,30に比べて、排水管8の出口部8aから封水室10内に流出した排水が流出管14に向かって排水管8の流路拡張凸部32の周囲を回り込むことができるようなスペースを広く確保することができる。したがって、排水管8の出口部8a及び流路拡張凸部32の下端部(出口部)32cから封水室10内に流出させる排水によって、排水中に含まれる髪の毛を流水に乗せて、流出管14から下水側へ確実に排出させることができる。
【0033】
なお、上述した本発明の第3実施形態による排水トラップ40においては、一例として、オーバーフロー管12と排水管8が前後方向に並列且つ独立に配置されると共に、排水管8が髪の毛付着防止手段として流路拡張凸部32を備えた形態について説明したが、このような形態に限定されず、第1実施形態の排水トラップ1の連結流路18のような髪の毛付着防止手段によって、排水管8とオーバーフロー管12の少なくともそれぞれの出口部8a,12aを連結するようにしてもよい。
【0034】
つぎに、図9〜図12を参照して、本発明の第4実施形態による排水トラップについて説明する。
まず、図9は、本発明の第4実施形態による排水トラップが内部に組み込まれた洗面台を示す概略正面図である。つぎに、図10は、本発明の第4実施形態による排水トラップが内部に組み込まれた洗面台を示す概略側面図である。また、図11は、本発明の第4実施形態による排水トラップの部分拡大側面断面図である。さらに、図12は、図11のXII−XII線に沿った断面図である。ここで、図9〜図12において、上述した本発明の第1実施形態〜第3実施形態による排水トラップの部分と同一の部分については同一の符号を付し、これらの説明は省略する。
【0035】
図9〜図12に示すように、本発明の第4実施形態による排水トラップ50においては、オーバーフロー管12の出口部12bが、排水時の排水トラップ50の流路において封水室10と同様に比較的内圧が高い領域となっている排水管8と封水室10の上端部10aとの接続部52に接続されている。
【0036】
また、図11及び図12に示すように、本実施形態の排水トラップ50の排水管8は、第2実施形態の排水トラップ30と同様に、髪の毛付着防止手段として、流路拡張凸部54を備えている。
この排水管8の流路拡張凸部54は、その内部及び出口部を形成する流路54aがその上流側から下流側に向かって、すなわち、封水室10の上端部10aに近接した流路拡張凸部54の上端部54bから下端部(出口部)54cに向かって拡張すると共に、その外周部が封水室10の前側内壁面に近接するように排水管8の前面から前方側方向(流出管56に対して反対側方向)に突出しており、排水管8の流路拡張凸部54の前面と、これに対向する封水室10の前側内壁面との間は、髪の毛がほとんど入り込むことができない隙間に設定されている。
なお、流路拡張凸部54の流路54aにおける上流側から下流側に向かって拡張している部分の断面については、流路拡張凸部54の上端部54bから下端部54cに排水が誘導され、下端部54cから排出できるように形成されていれば、上流側から下流側に一律の大きさでもよい。
【0037】
さらに、流出管56は、封水室10の後端側に上下方向に延びるように配置され、その上端部である入口部56aの高さ位置から封水室10の下端位置よりも下方にかけての流路56bの断面がほぼ円形形状となっている。
【0038】
上述した本発明の第4実施形態による排水トラップ50においては、排水管8が髪の毛付着防止手段である流路拡張凸部54を備えており、互いに対向する排水管8の前面と封水室10の前側内壁面との隙間が髪の毛がほとんど入り込むことができない隙間に設定されているため、排水管8の出口部8a及び流路拡張凸部54の下端部(出口部)54cから封水室10に排水が流出した際、たとえ排水が流出管56の入口部56aの方向に直接に差し向けられることなく、封水室10内の底壁や側壁に衝突して折り返し、排水管8の流路拡張凸部54と封水室10の前側内壁面との間のわずかな隙間を上昇して回り込もうとする流れが形成されても、排水中に含まれる髪の毛は、排水管8の髪の毛付着防止手段である流路拡張凸部54によって一時的に捕捉されるか、そのまま流水に乗せられて流出管14に排出される。
【0039】
また、髪の毛が流路拡張凸部54によって一時的に捕捉されたとしても、その後、再び流水の力により、流路拡張凸部54に一時的に付着していた髪の毛が離脱して流水に乗せられるため、排水管8に巻き付いたり、絡み付いて付着したままに放置されることなく、流出管56の流路56bから下水側へ確実に排出される。これらの結果、排水管8の周囲等の封水室10内に髪の毛が堆積して排水トラップ50の排水性能が低下することを未然に防ぐことができる。
【0040】
なお、上述した本発明の第4実施形態による排水トラップ50においては、一例として、オーバーフロー管12の出口部12bが、排水時の排水トラップ50の流路において封水室10と同様に比較的内圧が高い領域となっている排水管8と封水室10の上端部10aとの接続部52に接続されている形態について説明したが、このような形態に限定されず、他の形態についても適用可能である。
例えば、他の形態による排水トラップとして、オーバーフロー管12の出口部12bの接続位置については、排水管8における排水時の内圧が比較的高い領域であれば、接続部54よりもさらに上方に位置する排水管8の途中位置に設けてもよい。
また、本発明の第4実施形態による排水トラップ50について、洗面器にオーバーフロー口が設けられていない洗面台に適用する場合には、オーバーフロー管12自体を省略してもよい。
【0041】
なお、上述した本発明の第1〜第4実施形態による排水トラップにおいては、水槽として用いられる洗面台に排水トラップを適用した例について説明したが、このような例に限定されず、洗面台以外の流しや浴槽等の水槽にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1,30,40,50 排水トラップ
2 洗面台
4 洗面器
4a 排水口
4b オーバーフロー口
6 収納部
8 排水管
8a 排水管の出口部
10 封水室
10a 封水室の上端部
12 オーバーフロー管
12a オーバーフロー管の出口部
12b 流路
14,56 流出管
14a 流出管の入口部
14b 流出管の下端部
14c 流路
14d 流路
16 下水配管
18 連結流路(髪の毛付着防止手段)
20 連結管
32,54 流路拡張凸部(髪の毛付着防止手段)
32a,54a 流路拡張凸部の流路
32b,54b 流路拡張凸部の上端部
32c,54c 流路拡張凸部の下端部(出口部)
W 封水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽から排水された水を下水側へ流出させる排水トラップであって、
水槽の排水口に接続され、この排水口から流出する排水を導く排水管と、
上記排水管に接続され、この排水管からの排水の流路を形成すると共に、上記排水管の出口部を閉塞可能な封水を収容する封水室と、
上記封水室に接続され、上記封水室から溢れた排水を下水側に導く流出管と、を有し、
上記排水管は、その出口部を形成する流路の外周部が上記流出管に対して反対側方向に突出する流路拡張凸部を備えていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
水槽から排水された水を下水側へ流出させる排水トラップであって、
水槽の排水口に接続され、この排水口から流出する排水を導く排水管と、
上記排水管に接続され、この排水管からの排水の流路を形成すると共に、上記排水管の出口部を閉塞可能な封水を収容する封水室と、
上記封水室に接続され、上記封水室から溢れた排水を下水側に導く流出管と、
上記水槽の上方に開口するオーバーフロー口から流出する排水を導くように、その出口部が上記流出管よりも上流側に位置しているオーバーフロー管と、を有し、
上記排水管は、上記封水室内の排水中に含まれる髪の毛が上記排水管及び上記オーバーフロー管に付着したままの状態になることを防止する髪の毛付着防止手段を備えていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項3】
上記髪の毛付着防止手段は、上記排水管及び上記オーバーフロー管の少なくともそれぞれの出口部を上記封水室内で連結する連結流路を備えている請求項2記載の排水トラップ。
【請求項4】
上記髪の毛付着防止手段は、上記排水管の出口部を形成する流路の外周部が上記オーバーフロー管に近接するように突出する流路拡張凸部を備えている請求項2記載の排水トラップ。
【請求項5】
上記排水管は、その出口部が上記流出管と上記オーバーフロー管の出口部との間に配置されている請求項2乃至4の何れか1項に記載の排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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