説明

排水処理装置

【課題】光ファイバ1による被処理水への紫外線照射エリアを拡大する。
【解決手段】河川、湖沼、排水処理槽、排水路等の被処理水内に外部から光ファイバ1を介して紫外線を照射し、その底から散気する。紫外線12は、散気による気泡4に当たって乱反射12’するとともに、気泡を水面に滞留させ、その気泡層によって、紫外線の水面からの放射を防止するため、紫外線の槽S内での照射効率が高く、円滑な被処理水の紫外線による消毒・殺菌が行われる。散気は、間欠的に行うことが、気泡4を長く滞留させる点から好ましい。その間欠散気は弁7の選択的な開閉によって行う。仕切板6により、各光ファイバ1を区画すれば、各区画内の消毒・殺菌作用の状態も把握し易いうえに、散気による気泡の流れも上昇速度が一定となるなどの乱れが生じ難く、より円滑な消毒・殺菌作用が行われる。光ファイバは途中で屈曲させて漏洩部を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、河川、湖沼、下水処理場、工場等の廃水処理場及びそれらへの流入路又は流出路等の排水路(廃水路)等における被処理水を紫外線によって消毒殺菌する排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水の消毒殺菌は塩素によるものが主流であったが、その塩素の放流による水棲生物に対する毒性や塩素により生成されるトリハロメタンの人体への毒性が問題視され、その塩素に代わる消毒殺菌法として、紫外線やオゾンによる方法が実用化されている。
【0003】
その紫外線による消毒殺菌法による排水処理装置として、被処理水内に光ファイバを挿入し、その被処理水外部からその内部に前記光ファイバを介して紫外線を照射するものがある(特許文献1 図1〜4参照)。
【特許文献1】特開平8−238476号公報
【0004】
また、オゾンを使用した水処理装置として、被処理水(液)内に紫外線ランプを配置するとともに、そのランプの下側に散気管を設け、その散気管による曝気微細気泡群に紫外線ランプから紫外線を照射し、その照射により、その微細気泡群に含まれるオゾンから発生期酸素と活性酸素を生成させ、その両酸素によって、水中の不純物を酸化・還元・滅菌又は結合して除去するものがある(特許文献2 要約参照)。
【特許文献2】特開2004−329988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の光ファイバを介した紫外線照射による消毒殺菌装置(排水処理装置)は、紫外線ランプなどの紫外線発生器を水の外に設置しているため、その発生器を安価なものとすることができるうえに、メンテナンスもし易い利点がある。
しかし、光ファイバの多くは、その先端からしか光が照射されないため、その照射エリアが狭い問題がある。照射エリアを広くするのは、光ファイバの本数を多くする必要があり、その設置態様が煩雑になるとともに、コストアップとなる。
【0006】
この発明は、光ファイバによる紫外線照射エリアを拡大することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、この発明は、上記特許文献2に記載の散気管を使用した水処理装置において、紫外線が微細気泡群に照射されることにより、その気泡表面に反射し、気泡周りに紫外線が乱反射していることを発見し、光ファイバによる紫外線照射においても、その散気気泡によって紫外線を乱反射させることとしたのである。
【0008】
散気気泡によって、光ファイバから照射される紫外線が乱反射されれば、その紫外線の照射エリアは格段に広くなり、その紫外線による消毒殺菌エリアも広くなって、その消毒殺菌作用が円滑になされる。散気は、光ファイバの洗浄作用も少なからず行う。
また、散気気泡は、紫外線を乱反射させるとともに、水内を上昇する間に種々の不純物が付着するため、水面に滞留する。この滞留した気泡は水面を被うため、その気泡層に紫外線が反射する等によって、紫外線の水面からの放射は防止される。このため、紫外線は、被処理水内で乱反射を繰り返す等により、その消毒・殺菌作用をそのエネルギーが消滅するまで行う。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、光ファイバから照射される紫外線を散気気泡によって乱反射させるとともにその紫外線の水面からの放射を防止するようにしたので、光ファイバ単体での紫外線照射に比べて、その照射エリアが飛躍的に拡大するとともに、紫外線の有効利用が図られるため、処理効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施形態としては、被処理水内に光ファイバを挿入するとともに、その被処理水内の底に散気装置を設け、その被処理水外部からその内部に前記光ファイバを介して紫外線を照射するとともに、前記散気装置から散気し、その散気による気泡に前記紫外線を当てて乱反射させるとともに、前記気泡を水面に滞留させ、その気泡層によって、紫外線の水面からの放射を防止した構成を採用することができる。
【0011】
被処理水としては、河川、湖沼、排水処理槽、排水路等の紫外線によって消毒・殺菌する必要のある水であれば、全てものを含む。特に、下水処理場、工場の廃水処理場及びそれらの流入水路、流出水路などの被処理水が好ましい。
気泡は、水中に長く滞在すればする程、紫外線の乱反射作用を行うため、その滞在時間が長い方が好ましい。このため、できるだけ、微細気泡とすることが好ましい。気泡は細かくなればなるほど、上昇速度が遅くなるからである。
【0012】
この構成の処理装置においては、被処理水中の不純物が上記光ファイバの照射部や上記散気装置の散気部に付着し、その作用の劣化を招き易いが、その照射部と散気部との間に洗浄ブラシを設けて、その洗浄ブラシにより、前記光ファイバの照射部と散気装置の散気部を洗浄するようにすれば、その照射及び散気作用の劣化を防止できる。
このとき、その光ファイバの照射部と散気装置の散気部を同一方向に線状に配置し、洗浄ブラシをその線状に移動可能とすれば、洗浄ブラシを直線的等の線状に移動するだけで、それらの洗浄ができて効率的である。
【0013】
光ファイバには、コアの外面にクラッドを設けた一般的なものを採用すれば良いが、コアのみのものとすることができる。通常、この消毒・殺菌の対象となる被処理水はコアよりも屈折率が低いため、その被処理水がクラッドの役目を果たすからである。コアのみの場合には、被処理水がクラッドの役目を果たすか否かをその性状等を確認して採用する。
【0014】
また、コアの場合、水中で屈曲させると、その屈曲部から紫外線が漏洩するため、その漏洩部も照射部となる。その漏洩部の数及び位置は照射効率を考慮して適宜に選定する。クラッドを有する光ファイバにおいても、屈曲させることにより、この漏洩作用が得られれば、屈曲させることができる。その屈曲部のクラッドを欠如して漏洩部を形成しても良い。
このように、光ファイバの途中に照射部を形成できることは、光ファイバを長くして水深の深い所に導いても、その途中において、紫外線を照射することができることとなる。このため、先端からのみ照射する長短の光ファイバを使用する必要がない。
【0015】
上記光ファイバの設置方向(長さ方向)は、水平、上下、傾斜などと、照射効率を考慮して適宜に設定すれば良いが、例えば、上下方向に設けるとともに、横方向に複数設けた場合、その各光ファイバの間に、上記気泡の仕切板を設けた構成とすることができる。
このように、仕切板によって、各光ファイバ及び散気を区画すれば、各区画内の消毒・殺菌作用の状態も把握し易いうえに、散気による気泡の流れも上昇速度が一定となるなどの乱れが生じ難く、円滑な紫外線乱反射を行って、円滑な消毒・殺菌作用が行われる。
【0016】
散気は、常時行っても良いが、間欠的が好ましい。常時、散気すると、被処理水内に対流が生じて、気泡の上昇経路が固定されて、紫外線の乱反射効果が部分的になるとともに、気泡の上昇速度が速くなって、乱反射の効率が低下するからである。より好ましくは、数秒間隔で一秒程瞬間的に散気する。
また、その散気は、各仕切板の間にそれぞれ個別にするようにすれば、その各仕切板の間の被処理水の性状に合わせて散気できるため、消毒・殺菌作用を効率的に行うことができる。
さらに、気泡に紫外線が当たれば、特許文献2に記載のように、オゾンが発生して、そのオゾンによる消毒・殺菌作用もなされるが、散気中に積極的にオゾンを混入すれば、そのオゾンによる消毒・殺菌作用はさらに向上する。
【実施例】
【0017】
一実施例を図1に示し、この実施例は、下水処理場の処理槽Sにこの発明を実施したものであり、所要本数の光ファイバ1をその処理槽S内に上下方向に複数横方向並列に挿入するとともに、処理槽Sの底に散気装置2を設けたものである。
【0018】
各光ファイバ1は、処理槽Sの外に設けられた紫外線発生装置10に導かれており、その紫外線ランプ11からの紫外線12を処理槽S内に導いて、その先端(照射部13)から照射する。
【0019】
散気装置2は、その散気管に処理槽S外のコンプレッサ又はブロワなどの給気装置3から空気が供給されて散気する。その散気は、処理槽S内において、気泡4となって上昇する。その空気には、オゾンを含ませることができる。散気管は、一端閉塞の管にその周壁長さ方向に一定間隔に孔を形成した等の周知のものを採用する。
【0020】
散気管から散気された気泡4には、図示矢印のごとく、光ファイバ1から照射された紫外線12が当たって乱反射12’し、処理槽Sの全域に満遍なく照射される。このため、処理槽S内は、その全域への紫外線12の照射により、消毒・殺菌がなされる。このとき、散気(気泡4)は、光ファイバ1の洗浄作用を少なからず行う。
また、気泡4は、紫外線12を乱反射させるとともに、処理槽S内を上昇する間に種々の不純物が付着するため、水面に滞留する。この滞留した気泡4は水面を被うため、その気泡層に紫外線12が反射する等によって、紫外線12の水面からの放射を防止する。このため、紫外線12は、処理槽S内で乱反射を繰り返す等により、その消毒・殺菌作用をそのエネルギーが消滅するまで行う。
【0021】
図2に示す実施例は、光ファイバ1の並列方向に散気装置2の散気管を設けたものであり、その光ファイバ1の先端(照射部13)と散気管の間に回転する洗浄ブラシ5を設けている。
この洗浄ブラシ5を回転させながら上記並列方向に移動させることにより、各光ファイバ1の先端及び散気管の散気口(孔)を洗浄して、それらの作用の劣化を防止する(作用を復帰させる)。
洗浄ブラシ5の移動は、洗浄ブラシ5の支持部をレール上に移動させるとともに、その移動によって回転させる等の手段を採用する。その移動は走行ワイヤー、回転はラックとピニオンの噛み合わせなどが考えられる。
【0022】
図3に示す実施例は、光ファイバ1を途中で屈曲させ、その屈曲部を紫外線12の漏洩部(照射部)13としたものである。この屈曲部(照射部)13の位置及び数は、照射効率等を考慮し実験・実操業等によって適宜に選択すればよい。
このように、光ファイバ1の途中に照射部13を形成することは、光ファイバ1を長くして水深の深い所に導いても、その途中において、紫外線を照射することができることとなる。このため、先端照射のみの長短の光ファイバ1を使用する必要がない。
【0023】
図4に示す実施例は、各光ファイバ1を仕切板6により区画したものである。この仕切板6には、図示矢印のごとく、紫外線12を反射12’する機能を付与することが好ましい。紫外線12はその仕切板6表面での反射12’によって処理槽S内全域により満遍なく行き渡って、消毒・殺菌作用を行うからである。
【0024】
このように、仕切板6によって、各光ファイバ1を区画すれば、各区画内の消毒・殺菌作用の状態も把握し易いうえに、散気による気泡4の流れも上昇速度が一定となるなどの乱れが生じ難く、円滑な紫外線乱反射を行って、円滑な消毒・殺菌作用が行われる。
【0025】
図5に示す実施例は、図4の実施例において、各仕切板6による区画に併せて散気管をそれぞれ個別に設け、その各散気管への空気配管にそれぞれ電磁開閉弁7を介設したものである。
この各電磁開閉弁7を適宜に開閉して間欠的に散気を行う。その散気の間欠度合は、「有効な紫外線による消毒・滅菌作用が行える」及び「散気による光ファイバ1の洗浄」等を考慮して実験・実操業により適宜に設定する。
この部分的な散気は、仕切板6の無い図1〜図3の実施例においても採用することができる。
【0026】
これらの実施例において、気泡4に紫外線12が当たれば、特許文献2に記載のように、オゾンが発生して、そのオゾンによる消毒・殺菌作用もなされる。そのとき、散気中に積極的にオゾンを混入すれば、そのオゾンによる消毒・殺菌作用はさらに向上する。
【0027】
上記実施例は、下水処理場の処理槽Sの場合であったが、この発明は、上述の河川、湖沼、下水処理場、工場等の廃水処理場及びそれらへの流入路又は流出路等の排水路(廃水路)等における被処理水を紫外線によって消毒殺菌する装置であるならば、何れにも採用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施例の概略図
【図2】他の実施例の概略図
【図3】他の実施例の概略図
【図4】他の実施例の概略図
【図5】他の実施例の概略図
【符号の説明】
【0029】
1 光ファイバ
2 散気装置
3 給気装置
4 気泡
5 洗浄ブラシ
6 仕切板
7 電磁開閉弁
10 紫外線発生装置
11 紫外線ランプ
12 紫外線
12’ 乱反射光
13 紫外線照射部
S 下水処理場における処理槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川、湖沼、排水処理槽、排水路等の被処理水内に光ファイバ1を挿入するとともに、前記被処理水内の底に散気装置2を設け、その被処理水外部からその内部に前記光ファイバ1を介して紫外線12を照射するとともに、前記散気装置2から散気し、その散気による気泡4に前記紫外線12を当てて乱反射させるとともに、前記気泡4を水面に滞留させ、その気泡層によって、紫外線12の水面からの放射を防止したことを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
上記光ファイバ1の照射部13と上記散気装置2の散気部との間に洗浄ブラシ5を設けて、その洗浄ブラシ5により、前記光ファイバ1の照射部13と散気装置2の散気部を洗浄するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
上記光ファイバ1の照射部13と上記散気装置2の散気部が同一方向に線状に配置され、上記洗浄ブラシ5をその線状に移動可能としたことを特徴とする請求項2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
上記光ファイバ1を水中で屈曲させて、その屈曲部13から紫外線12を漏洩するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の排水処理装置。
【請求項5】
上記光ファイバ1が上下方向に設けられるとともに、横方向に複数設けられ、その各光ファイバ1の間に、上記気泡4の仕切板6を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の排水処理装置。
【請求項6】
上記散気装置2を間欠的に散気するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の排水処理装置。
【請求項7】
請求項6で引用する請求項5の排水処理装置において、各仕切板6の間に、それぞれ個別に散気できるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−69097(P2007−69097A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257446(P2005−257446)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】