説明

排水処理装置

【課題】簡単な構成で、排水中に存在する有機物を効果的に分解し、且つ、分解能力を長期間維持することができる排水処理装置を提供することである。
【解決手段】少なくとも有機物及び金属イオンが含有された排水に紫外線を照射させる第1紫外線照射手段(18)を有する第1反応槽(3)と、前記第1反応槽(3)の排水中に生成された金属水酸化物を除去する金属水酸化物除去手段(5)と、酸化チタンを表面に有する光触媒(30)と、少なくとも該光触媒に紫外線を照射させる第2紫外線照射手段(19)と、を有する第2反応槽(7)と、を備えた排水処理装置(1)であって、第1反応槽(3)の排水が第1紫外線照射手段(18)と金属水酸化物除去手段(5)によって処理された後に、前記第1反応槽(3)の排水が前記第2反応槽(7)に供給されるよう構成されていることを特徴とする排水処理装置(1)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水に含まれる有機物を分解するための排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、排水の再生利用が進められており、再生利用をするために生物処理による排水中に含まれる有機物の分解が行われてきた。しかし、上記生物による排水処理は処理施設の大型化及び処理時間の長時間化は否めない。そのため、排水中に含まれる有機物を効果的に分解、浄化できる排水処理装置が求められている。
【0003】
排水処理方法としては、例えば、有機物含有排水に酸素を加えて高温・高圧容器内で酸化し水と炭酸ガスにまで分解する湿式酸化処理法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−149232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、酸素純度の高い酸素ガスを用いるために、酸素ガスの取扱いに注意が必要となる。また耐圧・耐熱容器などの特殊な装置等が必要となり、高価であり、実用的ではない。さらに処理された排水は、有機物の分解等が不十分であるため工場用排水として排水されているのが現状であり、工場の水洗水などとして再利用することは皆無に等しい。
【0006】
本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであって、簡単な構成で、排水中に存在する有機物を効果的に分解し、且つ、分解能力を長期間維持することができる排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、有機物及び金属イオンを含有する排水において、紫外線を照射することによって有機物が分解すると、排水中の金属イオンと反応して金属水酸化物を生成し、その金属水酸化物によって排水処理能力を長時間維持できないことを知見し、その知見のもと、光触媒に紫外線を照射させて排水中の有機物を分解する前に、排水中の金属水酸化物を生成するとともに、それを除去することによって排水処理能力を長時間維持できることを見出した。すなわち、本発明は、少なくとも有機物及び金属イオンが含有された排水に紫外線を照射させる第1紫外線照射手段を有する第1反応槽と、前記第1反応槽の排水中に生成された金属水酸化物を除去する金属水酸化物除去手段と、酸化チタンを表面に有する光触媒と、少なくとも該光触媒に紫外線を照射させる第2紫外線照射手段と、を有する第2反応槽と、を備えた排水処理装置であって、第1反応槽の排水が第1紫外線照射手段と金属水酸化物除去手段によって処理された後に、前記第1反応槽の排水が前記第2反応槽に供給されるよう構成されていることを特徴とする排水処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明によれば、簡単な構成で、排水中に存在する有機物を効果的に分解し、且つ、分解能力を長期間維持することができる排水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る排水処理装置の概念断面図である。
【図2】光触媒カートリッジの概念図である。
【図3】実施形態に係る工程図である。
【図4】比較例2において用いられた排水処理装置の概念断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る排水処理装置の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る排水処理装置の概念断面図である。排水処理装置1は、有機物及び金属イオンが含有された排水に紫外線を照射可能な第1反応槽3と、第1反応槽3の排水中に生成された金属水酸化物を捕集することによって除去するろ過器5と、酸化チタンを表面に有する光触媒や排水に紫外線を照射させる第2反応槽7と、第1反応槽3と第2反応槽7を連通する流通路12と、を備えている。
【0011】
第1反応槽3は、直方体状に形成された流動槽20と、流動槽20の底面の上流側(図1の左側)と底面の下流側(図1の右側)を連通する循環路10、11と、を備えており、この流通路10と11の間にろ過器5が設けられている。流動槽20の上流側の側面には、排水流入口16が形成され、下流側の側面には、流通路12の上流側が接続された排水流出口17が形成されており、図示しないポンプによって排水流入口16から排水流出口17に排水が流動されるように構成されている。また、図示しないポンプによって流動槽20内の排水が循環路10、11を介して流動槽20とろ過器5の間を循環するように、すなわち排水が流動槽20→循環路10→ろ過器5→循環路11→流動槽20と循環するように構成されている。さらに、流動槽20内には、流動槽20内の排水に紫外線を照射させる紫外線ランプ18と、その排水に酸素を注入する空気注入部22が配置されている。
【0012】
紫外線ランプ18は、上下方向に5本、流動方向に7列、合計35本が、その長手方向が流動方向に対して垂直で、かつ流動槽20の底面と平行となるように配置されている。紫外線ランプ18の外表面には、円柱状に形成されたカバー部材が設けられ、カバー部材は、250〜260nmだけでなく、180〜190nmのピーク波長を透過する材質からなる。このカバー部材の材質としては、例えば、合成石英が挙げられる。一般的な低圧水銀ランプは、本来、185nmと254nmの2つの波長を有するが、通常のカバー部材の素材であるガラスが短波長の紫外線を透過しないため、254nmの波長のみを照射する。本実施形態に係る排水処理装置において、紫外線ランプ18は、上述のようにカバー部材の素材を特殊なものとすることによって、180〜190nmと250〜260nmにピーク波長を有する紫外線を照射可能にしている。紫外線照射ランプ18から照射される紫外線は、180〜190nm、好ましくは185nmにピーク波長を有し、かつ、250〜260nm、好ましくは254nmにピーク波長を有する。なお、本実施形態において、紫外線照射ランプ18のカバー部材は、円柱状に形成したが、それに限定されない。紫外線照射ランプ18の数は、排水に含まれる有機物の量等に応じて決定される。
【0013】
空気注入部22は、流動槽20の底面に最も近い紫外線ランプ18の紫外線ランプ間に配置され、紫外線ランプ18の長手方向のほぼ全域に亘って空気を注入できるように構成されている。空気注入部22は、第1反応槽3の下部からエアレーション方式でバブリング可能な装置である。空気供給量は、排水200L/minに対して、200〜500L/minであることが好ましく、350L/minであることがさらに好ましい。バブリングした水中の溶存酸素量は、飽和率で50〜100%であることが好ましい。また、この空気注入部22とともに、又はそれに代えてマイクロバブル発生装置を用いて空気を供給してもよい。一般にマイクロバブルの発生方法として加圧溶解式、エジェクタ式、キャビテーション式、及び旋回式があるが、マイクロバブルの発生方法としては、加圧溶解式、及びエジャクタ式が好ましい。マイクロバブルの特性は生成した気泡の直径と生成量に左右されるため、比較的大量かつ微細な気泡を生成できる加圧溶解式の発生方法が特に好ましい。発生したマイクロバブルの直径は30μm以下であることが好ましい。マイクロバブル発生装置でマイクロバブルを発生した水中の溶存酸素量は飽和率で80〜150%であることが好ましい。マイクロバブルの自己加圧効果によって溶存酸素の飽和量以上の酸素を溶存させることができる。
【0014】
本実施態様に係る排水処理装置において、ろ過器5は、そこを通過する排水中の金属酸化物を捕集する機能を有し、このようなろ過器5としては、例えば、吸速ろ過方法として用いられるプレフィルター、砂ろ過、生物ろ過、活性炭、及び分離膜を用いることができるが、プレフィルターを用いることが好ましい。プレフィルターの形状としてはプリーツ型が好ましく、目開きサイズは0.2〜2μmであることが好ましい。
【0015】
第2反応槽7は、直方体状に形成された流動槽28と、流動槽28の底面の上流側と底面の下流側を連通する循環路32と、を備えている。流動槽28の上流側の側面には、連通路12の下流側が接続された排水流入口25が形成され、下流側の側面には、排水流出口26が形成されており、図示しないポンプによって排水流入口25から排水流出口26に排水が流動されるように構成されている。流動槽28内には、光触媒及び流動槽28内の排水に紫外線を照射させる紫外線ランプ19と、その排水に酸素を注入する空気注入部23と、酸化チタンを表面に有する光触媒を有する平板状の光触媒カートリッジ30とが配置されている。
【0016】
紫外線ランプ19は、光触媒カートリッジ30に光を照射するように、上下方向に5本、流動方向に3列、合計15本が、その長手方向が流動方向に対して垂直で、かつ流動槽28の底面と平行となるように配置されている。紫外線ランプ19は、本実施形態においては第1反応槽3で用いられた紫外線ランプ18と同じものを用いることができる。空気注入部23は、流動槽28の底面に最も近い紫外線ランプ19の紫外線ランプ間に配置され、紫外線ランプ19の長手方向のほぼ全域に亘って空気を注入できるように構成されている。空気注入部23は、第1反応槽3で用いられた空気注入部22と同じものを用いることができる。平板状の光触媒カートリッジ30は、その面が排水の流動方向に対して垂直に交わるとともに、その間に紫外線ランプ19を挟むように一対配置されており、流動槽28の流動方向に対して垂直な面全域に至るように構成されている。本実施態様に係る排水処理装置においては一対のみ配置したが、処理能力等に応じて複数対配置してもよい。また、本実施態様に係る排水処理装置において、光触媒カートリッジ30は、このように排水の流動方向に対して垂直に交わるように配置したが、流動する排水が効率よく各平板状不織布34を通過すればよく、例えば、斜めに配置してもよい。平板状不織布34を斜めに配置する場合、流動方向に対して10°前後、傾いて設置されることが好ましく、5°前後であることがさらに好ましい。
【0017】
本実施態様に係る排水処理装置において、光触媒カートリッジ30に用いられている光触媒としては、アナターゼ型の酸化チタンが用いられることが好ましい。この光触媒の形状は、粉末、繊維、薄膜、厚膜の形態をとることができる。繊維形態の場合、大別して三種類の光触媒繊維が存在する。酸化チタンで構成される繊維、ガラス繊維などの表面に酸化チタンがコーティングされている繊維、及び表面が酸化チタン、内部が高強度のシリカの傾斜構造を有する繊維である。酸化チタンで構成されている場合、繊維自体の強度が低く流水圧による破断が生じやすく、またコーティングの場合、コーティング相が流水による剥がれ落ちるという問題がある。本発明者らは、すでに特許第3465699に示すように、繊維同士のブリッジングが全く無く、一本一本の繊維表面に酸化チタンを始めとする光触媒成分が緻密に析出した構造の光触媒繊維を開発している。この光触媒繊維は、従来のコーティングという手法によらないために繊維表面の光触媒成分が脱落するという問題点も解決されているので、好ましく用いることができる。
【0018】
光触媒カートリッジ30は、上述した光触媒繊維を用いて平板状に形成された平板状不織布34と一対の金網36とからなり、図2に示されるように平板状不織布34が一対のステンレス製の金網36によって挟持されている。このように金網36をサポート材として用いてカートリッジ状にすることにより、光触媒機能が劣化した平板状不織布34を容易に取り換えることができる。
【0019】
次に、本実施態様に係る排水処理装置に用いられる光触媒繊維からなる平板状不織布34の好ましい例について詳細に説明する。光触媒繊維は、シリカ成分を主体とする酸化物相(以下、第1相という。)とTiを含む金属酸化物相(以下、第2相という。)との複合酸化物であるシリカ基複合酸化物繊維からなることが好ましい。
【0020】
第1相は、シリカ成分を主体とする酸化物相であり、非晶質であっても結晶質であってもよく、またシリカと固溶体あるいは共融点化合物を形成し得る金属元素あるいは金属酸化物を含有してもよい。シリカと固溶体を形成し得る金属元素(A)としては、例えば、チタン等が挙げられる。シリカと固溶体を形成し得る金属酸化物の金属元素(B)としては、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、リチウム、ナトリウム、バリウム、カルシウム、ホウ素、亜鉛、ニッケル、マンガン、マグネシウム、及び鉄等が挙げられる。
【0021】
第1相は、シリカ基複合酸化物繊維の内部相を形成しており、力学的特性を負担する重要な役割を演じている。シリカ基複合酸化物繊維全体に対する第1相の存在割合は40〜98重量%であることが好ましく、目的とする第2相の機能を十分に発現させ、なお且つ高い力学的特性をも発現させるためには、第1相の存在割合を50〜95重量%の範囲内に制御することがさらに好ましい。
【0022】
一方、第2相は、Tiを含む金属酸化物相であり、光触媒機能を発現させる上で重要な役割を演じるものである。金属酸化物を構成する金属としては、Tiが挙げられる。この金属酸化物は、単体でもよいし、その共融点化合物やある特定元素により置換型の固溶体を形成したもの等でもよい。第2相は、シリカ基複合酸化物繊維の表層相を形成しており、シリカ基複合酸化物繊維の第2相の存在割合は、金属酸化物の種類により異なるが、2〜60重量%が好ましく、その機能を十分に発現させ、また高強度をも同時に発現させるには5〜50重量%の範囲内に制御することがさらに好ましい。第2相のTiを含む金属酸化物の結晶粒径は15nm以下が好ましく、特に10nm以下が好ましい。
【0023】
第2相に含まれる金属酸化物のTiの存在割合は、シリカ基複合酸化物繊維の表面に向かって傾斜的に増大しており、その組成の傾斜が明らかに認められる領域の厚さは表層から5〜500nmの範囲に制御することが好ましいが、繊維直径の約1/3に及んでもよい。尚、第1相及び第2相の「存在割合」とは、第1相を構成する金属酸化物と第2相を構成する金属酸化物全体、即ちシリカ基複合酸化物繊維全体に対する第1相の金属酸化物及び第2相の金属酸化物の重量%を示している。
【0024】
シリカ基複合酸化物繊維からなる光触媒繊維は、次の製造方法により得ることができる。
【0025】
(溶融紡糸法)
シリカ基複合酸化物繊維は、下記化1で表される主鎖骨格を有する数平均分子量が200〜10,000のポリカルボシランを、有機金属化合物で修飾した構造を有する変性ポリカルボシランあるいは変性ポリカルボシランと有機金属化合物との混合物を溶融紡糸し、不融化処理後、空気中又は酸素中で焼成することにより、シリカ基複合酸化物繊維を製造することができる。以下、これらを第1工程乃至第4工程に分けて詳細に説明する。
【0026】
【化1】

【0027】
(第1工程)
シリカ基複合酸化物繊維を製造するための出発原料として使用する数平均分子量が1,000〜50,000の変性ポリカルボシランを製造する工程である。変性ポリカルボシランの基本的な製造方法は、特開昭56−74126号に極めて類似しているが、その中に記載されている官能基の結合状態を注意深く制御する必要がある。これについて以下に概説する。
【0028】
出発原料である変性ポリカルボシランは、主として上記化1で表される主鎖骨格を有する数平均分子量が200〜10,000のポリカルボシランと、一般式、M(OR’)nあるいはMR”m(Mは金属元素、R’は炭素原子数1〜20個を有するアルキル基又はフェニル基、R”はアセチルアセトナート、mとnは1より大きい整数)を基本構造とする有機金属化合物とから誘導されるものである。
【0029】
傾斜構造を有するシリカ基複合酸化物繊維を製造するには、前記有機金属化合物の一部のみがポリカルボシランと結合を形成する緩慢な反応条件を選択する必要がある。その為には280℃以下、好ましくは250℃以下の温度で、不活性ガス中で反応させる必要がある。この反応条件では、有機金属化合物は、ポリカルボシランと反応したとしても、1官能性重合体として結合(即ちペンダント状に結合)しており、大幅な分子量の増大は起こらない。この有機金属化合物が一部結合した変性ポリカルボシランは、ポリカルボシランと有機金属化合物の相溶性を向上させる上で重要な役割を演じる。
【0030】
尚、2官能基以上の多くの官能基が結合した場合は、ポリカルボシランの橋掛け構造が形成されると共に顕著な分子量の増大が認められる。この場合は、反応中に急激な発熱と溶融粘度の上昇が起こる。一方、1官能基しか反応せず未反応の有機金属化合物が残存している場合は、逆に溶融粘度の低下が観察される。
【0031】
傾斜構造を有するシリカ基複合酸化物繊維を製造するには、未反応の有機金属化合物を意図的に残存させる条件を選択することが望ましい。主として上記変性ポリカルボシランと未反応状態の有機金属化合物あるいは2〜3量体程度の有機金属化合物が共存したものを出発原料として用いるが、変性ポリカルボシランのみでも、極めて低分子量の変性ポリカルボシラン成分が含まれる場合は、同様に出発原料として使用できる。
【0032】
(第2工程)
第1工程で得られた変性ポリカルボシラン、あるいは変性ポリカルボシランと低分子量の有機金属化合物の混合物(以下、前駆体という場合がある。)を溶融させて紡糸原液を造り、場合によってはこれをろ過してミクロゲル、不純物等の紡糸に際して有害となる物質を除去し、これを通常用いられる合成繊維紡糸用装置により紡糸する。紡糸する際の紡糸原液の温度は原料の変性ポリカルボシランの軟化温度によって異なるが、50〜200℃の温度範囲が有利である。上記紡糸装置において、必要に応じてノズル下部に加湿加熱筒を設けてもよい。尚、繊維径は、ノズルからの吐出量と紡糸機下部に設置された高速巻き取り装置の巻き取り速度を変えることにより調整される。
【0033】
前記溶融紡糸の他に、第1工程で得られた変性ポリカルボシラン、あるいは変性ポリカルボシランと低分子量の有機金属化合物の混合物を、例えばベンゼン、トルエン、キシレンあるいはその他変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物を溶融することのできる溶媒に溶解させ、紡糸原液を造り、場合によってはこれをろ過してマクロゲル、不純物等紡糸に際して有害な物質を除去した後、前記紡糸原液を通常用いられる合成繊維紡糸装置により乾式紡糸法により紡糸し、巻き取り速度を制御して目的とする繊維を得ることができる。
【0034】
これらの紡糸工程において、必用ならば、紡糸装置に紡糸筒を取り付け、その筒内の雰囲気を前記溶媒のうち少なくとも1つの気体との混合雰囲気とするか、あるいは空気、不活性ガス、熱空気、熱不活性ガス、スチーム、アンモニアガス、炭化水素ガス、有機ケイ素化合物ガスの雰囲気とすることにより、紡糸筒中の繊維の固化を制御することができる。
【0035】
(第3工程)
第2工程で得られた紡糸繊維を酸化雰囲気中で、張力または無張力の作用の下で予備加熱を行い、前記紡糸繊維の不融化を行う。この工程は、後工程の焼成の際に繊維が溶融せず、且つ隣接繊維と接着しないことを目的として行うものである。処理温度並びに処理時間は、組成により異なり、特に限定されないが、一般に50〜400℃の範囲内で、数時間〜30時間の処理上条件が選択される。酸化雰囲気中には、水分、窒素酸化物、オゾン等、紡糸繊維の酸化力を高めるものが含まれていてもよく、酸素分圧を意図的に変えてもよい。
【0036】
ところで、原料中に含まれる低分子量物の割合によっては、紡糸繊維の軟化温度が50℃を下回る場合もあり、その場合は、あらかじめ上記処理温度よりも低い温度で、繊維表面の酸化を促進する処理を施す場合もある。尚、同第2工程並びに第3工程の際に、原料中に含まれている低分子量化合物の繊維表面へのブリードアウトが進行し、目的とする傾斜組成の下地が形成されるものと考えられる。
【0037】
(第4工程)
第3工程により不融化された繊維を、張力または無張力下で、500〜1800℃の温度範囲で酸化雰囲気中において焼成し、目的とする、シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属酸化物相(第2相)との複合酸化物相からなり、表層に向かって第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が傾斜的に増大するシリカ基複合酸化物繊維を得る。この工程において、不融化繊維中に含まれる有機物成分は基本的には酸化されるが、選択する条件によっては、炭素や炭化物として繊維中に残存する場合もある。このような状態でも、目的とする機能に支障を来さない場合はそのまま使用されるが、支障を来す場合は、更なる酸化処理が施される。その際、目的とする傾斜組成並びに結晶構造に問題が生じない温度、処理時間が選択されなければならない。
【0038】
第4工程により得られた光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維を短繊維にした後、ニードルパンチ等を行い、平板状不織布34とすることができる。
【0039】
(メルトブロー法)
また、他の製造方法としては、シリカ基複合酸化物繊維からなる平板状不織布は、メルトブロー法を用いて、前記前駆体を溶融し、溶融物を紡糸ノズルから吐出するとともに、紡糸ノズルの周囲から加熱窒素ガスを噴出させて紡糸し、紡糸ノズルの下部に配置した受器に紡糸繊維を捕集することにより不織布を形成させ、次いで、その不織布を不融化処理後、酸化雰囲気中で焼成することにより製造することができる。
【0040】
紡糸ノズルの直径は通常100〜500μm程度のものを用いる。窒素ガス噴出速度は30〜300m/s程度であり、速度が速いほど細い繊維が得られる。また、窒素ガスの加熱温度は、所望の紡糸繊維が得られれば特に制限はないが、通常500℃程度に加熱した窒素ガスを噴出させる。従来、一般的なメルトブロー法では、噴出ガスとして空気が用いられているが、前記前駆体を紡糸するには窒素を用いる必要がある。噴出ガスとして窒素を用いることにより安定して紡糸を行うことができる。
【0041】
紡糸ノズルの下部に配置した受器に紡糸繊維を捕集する際、吸引可能な受器を用いて、受器の下側から吸引しながら紡糸することが好ましい。吸引することにより、繊維が効果的にからまり、高強度の不織布が得られる。吸引速度は2〜10m/s程度の範囲が好ましい。
【0042】
得られた不織布に上記溶融紡糸の場合と同様の不融化処理及び焼成を行うことにより、シリカ基複合酸化物繊維の不織布とすることができる。上記メルトブロー法により製造されるシリカ基複合酸化物繊維は、平均繊維径が1〜20μm、好ましくは、1〜8μm、より好ましくは、2〜6μmと、溶融紡糸で製造される繊維に比べてより細いものとすることができる。これにより、繊維の表面積も大きくでき、触媒活性が増大する。また、メルトブロー法により製造される不織布は、溶融紡糸法で製造された長さ40〜50mm程度の短繊維をニードルパンチ法で不織布としたものに比べて繊維が長いものとなる。その結果、不織布は強度が高く(引張強度2N以上)、フィルター等に加工する際に十分なプリーツ加工性を有する。
【0043】
平板状不織布の目付けや厚みについては特に限定は無いが、通常目付けが50〜500g/m、厚みは好ましくは0.5〜20mmのものが用いられる。厚みは、必要に応じて不織布を積層することにより調整できる。厚みは、0.5mmよりも薄い場合には、光触媒量そのものが少なすぎて水の浄化効果が十分に得られない。20mmよりも厚い場合は平板状不織布が抵抗となり、圧力損失が増大し、水処理が難しくなる。平板状不織布の形状は特に制限はないが、平板状不織布34を挿入する流動槽の形状に合わせて、丸型、角型などにすることができ、平板状不織布34の表面積を大きくするために波板状にすることもできる。
【0044】
上記のような平板状不織布34の製造方法によれば、繊維同士のブリッジングが全く無く、一本一本の繊維表面に酸化チタンを始めとする光触媒成分が緻密に析出した構造の光触媒繊維からなる平板状不織布34が得られる。また、この光触媒繊維は、従来のコーティングという手法によらないため、繊維表面の光触媒成分が脱落するという問題がない。さらにこの繊維からなる平板状不織布34は、繊維一本一本がある程度の空隙を有して分散した構造になっているために、処理流体と光触媒との接触面積が非常に大きくなる。一般に、光触媒の機能を十分に引き出すためには、光触媒への光の照射効率と処理流体との接触効率を高めることが必要である。
【0045】
上記光触媒繊維の表面は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)及びスズ(Sn)のうち少なくとも1以上の金属が担持しているのが好ましい。
【0046】
前記金属の担持方法は、特に制限はないが、前記金属の金属イオンが含まれる液と前記シリカ基複合酸化物繊維を接触させながら、第2相を構成する金属酸化物のバンドギャップに相当するエネルギー以上のエネルギーを有する光を照射することによって、前記金属酸化物の還元サイト(光の非照射面)に還元した金属粒子を担持することができる。例えば、第2相がアナターゼ型の酸化チタンの場合、そのバンドギャップは3.2eVであるので、これに相当するエネルギー、すなわち387nm以下の波長を有する光を照射することによって、酸化チタン粒子の表面に金属粒子を担持することができる。
【0047】
第1反応槽3と第2反応槽7を連通する流通路12には、バルブ14が設けられており、バルブの閉口状態とすることにより、第1反応槽3と第2反応槽7をそれぞれ独立させた系とすることができる。本実施形態に係る排水処理装置において、バルブ14は、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ、ニードルバルブ、ストップバルブ、及びチェックバルブなどを用いることができ、ボールバルブを用いることが好ましい。また、バルブ14は、任意の時間で開閉できる機能を有することが好ましく、このようなバルブとして、電磁バルブや電動バルブが好ましい。開閉のタイミングは、第1反応槽3内のpHで制御することが好ましく、pH5.5になった時にバルブの開閉を行うことが好ましい。
【0048】
次に、図3に示す工程図を用いて本実施形態に係る排水処理装置の動作を詳細に説明する。本実施形態に係る排水処理装置の動作は、有機物及び金属イオンが含有された排水に紫外線を照射する第1紫外線照射工程と、第1紫外線照射工程によって生成された金属水酸化物を捕集する金属水酸化物捕集工程と、酸化チタンを表面に有する光触媒に第1紫外線照射工程及び金属酸化物除去工程により処理された排水を接触させ、前記光触媒に紫外線を照射する第2紫外線照射工程とを備える。
【0049】
(第1紫外線照射工程)
まず、バルブ14を閉口状態とし、次いで、図示しないポンプを稼働することによって、金属イオン及び有機物を含んだ排水を排水流入口16から第1反応槽3内に流入する。この際、バルブ14が閉口状態であるので、第1反応槽3内に流入した排水は、第2反応槽7に流入することはない。この流入と同時に紫外線ランプ18及び空気注入部22を稼働することによって、排水に紫外線を照射するとともに空気を供給し、これにより排水中の有機物が酸化分解される。空気は、紫外線ランプ18を稼働する前から供給してもよい。分解された有機物によって排水のpHは、4以下の酸性側から徐々に中性側に移行する。pHが中性側に移行してくると、水中の金属イオンが反応し金属水酸化物を形成する。一般的に水中のpHが5.5のとき、金属イオンはイオンとして溶存することはほとんどできなく、金属水酸化物として析出することが知られている。また、水酸化物として析出する金属イオンとしては、アルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、及び亜鉛などがある。
【0050】
(金属酸化物捕集工程)
次に、図示しないポンプを稼働することによって、循環路10を介して第1反応槽3内で処理された金属水酸化物を含む排水をろ過器5に供給すると、このろ過器5により排水中の金属水酸化物が捕集され、次いで、循環路11を介して第1反応槽3に戻す。戻された排水に対して、再度紫外線を照射し、その排水をろ過器5に送るという操作を排水のpHが好ましくは5.5、さらに好ましくは6.5になるまで繰り返す。所定のpHになった後、バルブ14を開口状態とし、第1反応槽3と第2反応槽7とを連通状態とするとともに、図示しないポンプを稼働して、第1反応槽3内の排水を第2反応槽7に供給する。本実施形態に係る排水処理装置においては、このようにろ過器5によって金属酸化物が捕集され除去され、金属イオンをほとんど含まない状態で、排水が第2反応槽7に供給される。排水が第2反応槽7に供給された後、バルブ14を閉口状態とする。その後、第1反応槽3内に新たな排水を流入して、前述した第1紫外線照射工程及び金属水酸化物捕集工程を再度同様に行い、これと同時に、後述の第2紫外線照射工程を行う。
【0051】
(第2紫外線照射工程)
次に、第1紫外線照射工程及び金属水酸化物捕集工程によって処理された排水が第2反応槽7に流入すると同時に、紫外線ランプ19及び空気注入部23を稼働することによって、排水及び光触媒カートリッジ30に紫外線を照射するとともに、排水中に空気を供給し、これにより、排水中の有機物が酸化分解される。空気は、紫外線ランプ19を稼働する前から供給してもよい。紫外線ランプ19は、波長180〜190nmと250〜260nmにピーク波長を有する短波長紫外線ランプを用いている。一般的に、このような短波長紫外線ランプによる有機物の分解機構としては、180〜190nmの紫外線によって水中に溶存する酸素が酸化されOHラジカルが発生し、この発生したOHラジカルによって水中の有機物が分解される。すなわち、有機物の分解は水中のOHラジカルの発生量に支配されることから、常に空気を供給することで水中の溶存酸素量を高い状態で維持することができ、分解効果を高く維持することができる。
【0052】
通常、酸化チタン光触媒を利用した排水処理装置においては、紫外線ランプは、波長351nmのブラックライト蛍光ランプ又は波長254nmの殺菌ランプが用いられる。酸化チタン光触媒は、387nm以下の波長であれば励起することができ、又これらのランプは製品として入手しやすいためである。本実施形態に係る排水処理装置1においては、従来用いられなかった紫外線を利用し、さらに高い分解効率を得ることができる。すなわち、本実施形態に係る排水処理装置1においては、光触媒繊維からなる平板状不織布34と、180〜190nmと250〜260nmとにピーク波長を有する紫外線を照射する紫外線ランプ19とを有するので、上記光触媒への光照射効率と排水との接触効率を高く維持することができる。このため、250〜260nmの紫外線を平板状不織布34に照射することにより光触媒を励起し、180〜190nmの紫外線によりOHラジカルを発生させ排水中の有機物を直接分解することができ、分解効果を高く維持することができる。この際、金属水酸化物捕集工程により、排水中の金属イオンが捕集されて除去されているので、第2反応槽7において、金属水酸化物が形成されることは少ない。これにより、十分な有機物の分解能力を長期間維持することができる。
【0053】
平板状不織布上の平均紫外線強度は、1〜10mW/cmであることが好ましく、さらに2〜8mW/cmの範囲であることが好ましい。平板状不織布表面での紫外線強度が1〜10mW/cmであると、2つの紫外線成分による水処理を高効率に行うことができる。このような範囲にするには、紫外線ランプと平板状不織布との距離等を適当な範囲になるようにすればよい。ここで、平均紫外線強度は、不織布表面の中央部から端部までの複数個所の紫外線強度を測定し、それらの値を平均して平均紫外線強度とすることができる。
【0054】
有機物の分解が不十分な場合は、流動槽28の底面の排水流出口26側から流通路12側へのびる循環路32によって排水を循環させ、有機物の分解を繰り返す。有機物が十分に分解されたら、排水流出口26から処理された排水を取り出し、排水処理が完了する。
【0055】
本実施形態に係る排水処理装置1によって処理された排水は、再利用できる。この水の導電率は、10μS/m以下であり、純水の導電率と同等レベルである。排水流出口26から排出された処理水は、イオン交換等によって残留する金属イオンや有機物を除去してもよい。また、本排水処理装置前後に適切な前処理装置及び後処理装置を設置することにより排水処理システムとして利用することが可能である。このような前処理装置としては例えば、砂ろ過、マイクロフィルター、及び活性炭フィルターなど主として粒子状の異物を除去するものが挙げられる。また、後処理装置としては、例えば、イオン交換装置、限外ろ過膜、マイクロフィルター、及び活性炭フィルターなど排水中に微量含まれる溶存物質の除去又は粒子状の異物除去を目的としたものが挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明に係る水浄化装置の実施例を説明する。
【0057】
(製造例1)
先ず、実施例に用いられる平板状不織布として酸化チタン/シリカ繊維を製造した。すなわち、5リットルの三口フラスコに無水トルエン2.5リットルと金属ナトリウム400gとを入れ窒素ガス気流下でトルエンの沸点まで加熱し、ジメチルジクロロシラン1リットルを1時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間加熱還流し沈殿物を生成させた。この沈殿をろ過し、まずメタノールで洗浄した後、水で洗浄して、白色粉末のポリジメチルシラン420gを得た。ポリジメチルシラン250gを水冷還流器を備えた三口フラスコ中に仕込み、窒素気流下、420℃で30時間加熱反応させて数平均分子量が1200のポリカルボシランを得た。
【0058】
ポリカルボシラン16gにトルエン100gとテトラブトキシチタン64gを加え、100℃で1時間予備加熱させた後、150℃までゆっくり昇温してトルエンを留去させてそのまま5時間反応させ、更に250℃まで昇温して5時間反応させ、変性ポリカルボシランを合成した。この変性ポリカルボシランに意図的に低分子量の有機金属化合物を共存させる目的で5gのテトラブトキシチタンを加えて、変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物を得た。
【0059】
この変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物をトルエンに溶解させた後、ガラス製の紡糸装置に仕込み、内部を十分に窒素置換してから昇温してトルエンを留去させて、180℃で溶融紡糸を行った。紡糸繊維を空気中、段階的に150℃まで加熱し不融化させた後、1200℃の空気中で1時間焼成を行い、製造例1に係る酸化チタン/シリカ繊維不織布を得た。
【0060】
(製造例2)
製造例1で得られた酸化チタン/シリカ繊維不織布をパラジウム濃度2.5ppmのパラジウムメッキ液(パラデックス:田中貴金属(株)製)内に浸漬し、波長が351nmの紫外線を4mW/cmの強度で4時間照射した。照射後、繊維を取り出し、水洗、さらに乾燥を行うことによって、製造例2に係るパラジウム担持酸化チタン/シリカ繊維不織布を得た。重量測定の結果から、パラジウム担持量は、0.05重量%であった。
【0061】
(実施例1)
製造例1で得られた酸化チタン/シリカ繊維からなる不織布を用いて、図2に示される平板状不織布を含む光触媒カートリッジを作成し、図1に示される排水処理装置を作製した。用いた紫外線ランプは、ヘレウス株式会社製NIQ201/107XL(出力:200W)であり、カバー部材としては合成石英が使用されている。出力は200Wであり、この紫外線ランプを第1反応槽で5本×7列の35本、第2反応槽で5本×3列の15本使用した。紫外線ランプから放射される波長は、254nmと185nmの両方である。第1反応槽における紫外線ランプ間の距離は70mmとし、また第2反応槽では紫外線ランプと光触媒カートリッジの距離は45mmとし、紫外線ランプ間の距離は135mmとした。平板状不織布表面の平均紫外線強度は8mW/cmであった。紫外線強度はTOPCON社製UVR−2紫外線照度計を用いて測定し、平板状不織布表面の中央部から端部まで9箇所を測定し、この平均値を平均紫外線強度とした。ろ過器としては、3M製リキッドカートリッジフィルター742Bを用いた。
【0062】
処理水は、蓚酸およびアルミニウムイオンをイオン交換水で溶解し、アルミニウムイオンを30ppm含む200ppmの蓚酸水溶液とした。また、第1反応槽では空気注入部から計350L/minの空気エアレーションを発生させ、一方、第2反応槽では空気注入部から計200L/minの空気エアレーションを発生させた。さらに第1反応槽では、図示しないマイクロバブル発生装置からマイクロバブルを60L/minで発生させた。各反応槽における処理溶液中の平均溶存酸素飽和率は第1反応槽で110%、第2反応槽で80%であった。溶存酸素量はHORIBA製D−50溶存酸素計を用いて測定し、飽和溶存酸素量は温度と水中の酸素溶存量から算出した。
【0063】
前記蓚酸処理溶液400Lを前記排水処理装置を用いて167L/minで循環処理を行った。第1反応槽で10パス処理を行い、処理された液をバルブを開放して第2反応槽に送液し、次いで第2反応槽で12パス処理を行った。前記排水処理装置では、400Lの蓚酸処理溶液を167L/minで循環処理しており、2.4分で全溶液400Lが処理されるこの処理時間を便宜上、1パスと定義する。つまり、第1反応槽で10パス処理を行うと処理時間は24分かかり、第2反応槽で12パス処理を行うと、第2反応槽のみで処理時間は、28.8分経過し、本排水処理装置全体で52.8分処理に要する。また、前記排水処理装置の繰返特性を検討するために、前記排水処理装置を用いて処理した溶液に、アルミニウムイオンが30ppm含む200ppmの蓚酸水溶液を作成し循環処理を行い、これを繰返回数20回まで行った。本条件で検討した結果、第1反応槽処理後、蓚酸濃度10ppm、アルミニウムイオン濃度0.1ppm以下まで減少し、その後、第2反応槽処理後、蓚酸濃度0.6ppmまで分解し得た。なお、繰返回数20回目でもその分解特性はほぼ同等であり、20回目でも初期と同程度の蓚酸分解特性が得られた。
【0064】
(実施例2)
製造例2に記載の方法で得られたパラジウム担持酸化チタン/シリカ繊維からなる不織布用いて、実施例1と同様の条件で検討を行った。アルミニウムイオンが30ppmかつ200ppmの蓚酸を含む処理溶液400Lを167L/minで循環処理した。第1反応槽で10パス処理を行い、処理された液をバルブを開放して第2反応槽に送液し、次いで第2反応槽で12パス処理を行った。前記排水処理装置では、400Lの蓚酸処理溶液を167L/minで循環処理しており、2.4分で全溶液400Lが処理されるこの処理時間を便宜上、1パスと定義する。つまり、第1反応槽で10パス処理を行うと処理時間は24分かかり、第2反応槽で12パス処理を行うと、第2反応槽のみで処理時間は、28.8分経過し、本排水処理装置全体で52.8分処理に要する。また、前記排水処理装置の繰返特性を検討するために、前記排水処理装置を用いて処理した溶液に、アルミニウムイオンが30ppm含む200ppmの蓚酸水溶液を作成し循環処理を行い、これを繰返回数20回まで行った。その結果、第1反応槽処理後、蓚酸濃度10ppm、アルミニウムイオン濃度0.1ppm以下まで減少し、その後、第2反応槽処理後、蓚酸濃度0.2ppmまで分解し得た。なお、繰返回数20回目でもその分解特性はほぼ同等であり、20回目でも初期と同程度の蓚酸分解特性が得られた。
【0065】
(比較例1)
図1に示す第2反応槽に製造例1及び2に記載の方法で得られたパラジウム担持及び担持無し酸化チタン/シリカ繊維からなる不織布を設置せず、実施例1と同様の条件で検討を行った。アルミニウムイオンが30ppmかつ200ppmの蓚酸を含む処理溶液400Lを167L/minで実施例1と同様の循環処理を行った。また、前記排水処理装置の繰返特性を検討するために、前記排水処理装置を用いて処理した溶液に、アルミニウムイオンが30ppm含む200ppmの蓚酸水溶液を作成し循環処理を行い、これを繰返回数20回まで行った。その結果、第1反応槽処理後、蓚酸濃度10ppm、アルミニウムイオン濃度0.1ppm以下まで減少し、その後、第2反応槽処理後、蓚酸濃度2ppmまでしか分解できず、排水処理能力は著しく低かった。しかしながら、繰返回数20回目でもその分解特性はほぼ同等であった。
【0066】
(比較例2)
実施例1および2に示した2槽構造排水処理装置の有用性を調べるために、製造例2に記載の方法で得られたパラジウム担持酸化チタン/シリカ繊維からなる不織布を用いて、図2に示される平板状不織布を含む光触媒カートリッジを作成し、図4に示される1槽構造の比較例2に係る排水処理装置50を作製した。
【0067】
図4に示されるように、排水処理装置50は、直方体状に形成された流動槽52と、流動槽52の底面の上流側(図4の左側)と底面の下流側(図4の右側)を連通する循環路54、55とを備えており、この循環路54と55の間にろ過器52が設けられている。流動槽52の上流側の側面には、排水流入口56が形成され、下流側の側面には、排水流出口58が形成されており、図示しないポンプによって排水流入口56から排水流出口58に、及び循環路54及び56に排水が流動するように構成されている。流動槽52の下流側の側面の下部から接続されているマイクロバブル発生機(図示せず)とを備えている。
【0068】
流動槽52内には、光触媒及び流動槽52内の排水に紫外線を照射させる紫外線ランプ66と、その排水に酸素を注入する空気注入部70と、酸化チタンを表面に有する光触媒を有する平板状の光触媒カートリッジ64とが配置されている。紫外線ランプ66は、光触媒カートリッジ64に光を照射するように、上下方向に5本、流動方向に10列、合計50本が、その長手方向が流動方向に対して垂直で、かつ流動槽52の底面と平行となるように配置されている。空気注入部70は、流動槽52の底面に最も近い紫外線ランプ66の紫外線ランプ間に配置され、紫外線ランプ66の長手方向のほぼ全域に亘って空気を注入できるように構成されている。平板状の光触媒カートリッジ64は、その面が排水の流動方向に対して垂直に交わるとともに、その間に紫外線ランプ66を挟むように一対配置されており、流動槽52の流動方向に対して垂直な面全域に至るように構成されている。
【0069】
比較例2に係る排水処理装置50においては、紫外線ランプと光触媒カートリッジの最も近い距離は45mmとし、紫外線ランプ間の距離は70mmとした。紫外線ランプは5本×10列の合計50本使用し、光触媒カートリッジは2枚使用した。平板状不織布表面の平均紫外線強度は8mW/cmであった。使用した紫外線ランプは実施例1と同様にヘレウス株式会社製NIQ201/107XL(出力:200W)であり、カバー部材は合成石英が使用されている。紫外線ランプから放射される波長は、254nmと185nmの両方である。ろ過器62は、3M製リキッドカートリッジフィルター742Bを用いた。
【0070】
処理水は、蓚酸およびアルミニウムイオンをイオン交換水で溶解し、アルミニウムイオンを30ppm含む200ppmの蓚酸水溶液とした。また、空気注入部から計350L/minの空気エアレーションを発生させた。さらにマイクロバブル発生装置からマイクロバブルを60L/minで発生させた。反応槽における処理溶液中の平均溶存酸素飽和率は110%であった。溶存酸素量はHORIBA製D−50溶存酸素計を用いて測定し、飽和溶存酸素量は温度と水中の酸素溶存量から算出した。
【0071】
前記蓚酸処理溶液400Lを前記排水処理装置を用いて167L/minで循環処理を行った。この処理は22パスであった。前記排水処理装置では、400Lの蓚酸処理溶液を167L/minで循環処理しており、2.4分で全溶液400Lが処理されるこの処理時間を便宜上、1パスと定義する。また、前記排水処理装置の繰返特性を検討するために、前記排水処理装置を用いて処理した溶液に、アルミニウムイオンが30ppm含む200ppmの蓚酸水溶液を作成し循環処理を行い、これを繰返回数20回まで行った。
【0072】
本条件で検討した結果、14パス後、蓚酸濃度0.1ppm以下、アルミニウムイオン濃度0.1ppm以下まで減少した。また、繰返性の検討を行った結果、繰返回数の増加に伴って分解特性が低下し、20回目には処理時間14パス後で蓚酸濃度は15ppmと著しい分解特性が低かった。以上の結果を表1にまとめて示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1中、繰返性は、前記排水処理装置の蓚酸分解性能低下を評価しており、具体的に初期処理の1回目と繰返20回目での蓚酸分解性能低下程度を評価している。
【0075】
第1反応槽、金属水酸化物除去手段、及び第2反応槽を組み合わせた排水処理装置は、極めて優れた蓚酸の分解性能、アルミニウムイオンの除去性能、及び極めて優れた繰返性能を示すことがわかる。
【符号の説明】
【0076】
1 排水処理装置
3 第1反応槽
5 ろ過器
7 第2反応槽
14 バルブ
18 紫外線ランプ
19 紫外線ランプ
22 空気注入部
23 空気注入部
30 光触媒カートリッジ
34 平板状不織布
36 金網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機物及び金属イオンが含有された排水に紫外線を照射させる第1紫外線照射手段を有する第1反応槽と、
前記第1反応槽の排水中に生成された金属水酸化物を除去する金属水酸化物除去手段と、
酸化チタンを表面に有する光触媒と、少なくとも該光触媒に紫外線を照射させる第2紫外線照射手段と、を有する第2反応槽と、
を備えた排水処理装置であって、
第1反応槽の排水が第1紫外線照射手段と金属水酸化物除去手段によって処理された後に、前記第1反応槽の排水が前記第2反応槽に供給されるよう構成されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記第1反応槽と第2反応槽を流通させる流通路をさらに備え、
前記流通路には、その流通状態を遮断可能なバルブを備え、
第1反応槽の排水を第1紫外線照射手段と金属水酸化物除去手段によって処理された後に、前記バルブを開口させて、前記第1反応槽の排水が前記第2反応槽に供給されるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記金属水酸化物除去手段は、前記第1反応槽に接続され、排水が循環可能になるように設置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記第1反応槽及び前記第2反応槽の少なくとも一つは、さらに排水中に酸素を注入する酸素注入手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記第2紫外線照射手段は、180〜190nmと250〜260nmとにピーク波長を有する紫外線が照射できることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記光触媒が、酸化チタンを表面に有する光触媒繊維の不織布であることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記光触媒繊維の不織布は、平板状に形成された平板状不織布であり、前記第2紫外線照射手段は、紫外線ランプを備え、
前記平板状不織布は、その面が排水の流動方向に対して交わるように設置され、前記紫外線ランプは、その長手方向が排水の流動方向に対して交わるように設置されてことを特徴とする請求項6記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記光触媒繊維は、シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属酸化物相(第2相)との複合酸化物の繊維からなり、第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が繊維の表層に向かって傾斜的に増大しているシリカ基複合酸化物繊維であることを特徴とする請求項6又は7記載の排水処理装置。
【請求項9】
前記光触媒繊維の表面に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)及びスズ(Sn)のうち少なくとも1以上の金属が担持されていることを特徴とする請求項6乃至8いずれか記載の排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−212578(P2011−212578A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82924(P2010−82924)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】