説明

排水構造及び排水構造の施工方法

【課題】スラブとこのスラブに立設された立上り部とを有する構造物において、排水効率が良好な排水構造及びこの排水構造の施工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る排水構造1は、スラブ2と、スラブ2に立設された立上り部3と、スラブ2及び立上り部3に連通して形成された排水管4と、を有し、排水管4は、スラブ2と、立上り部3との間に埋設され、立上り部3の一端側から他端側に向けて連通する本管部5と、スラブ2内に埋設されると共に、本管部5の下部からスラブ2側に向けて延設され、上部が開口された集水樋部6と、を有し、集水樋部6の上縁6eの高さ位置は、スラブ2の上面以下に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅のベタ基礎等において、当該ベタ基礎上に溜まった雨水等を外部に排水するための排水構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、住宅の基礎は、平坦な基礎スラブと、この基礎スラブから立設された立上り部とを有するベタ基礎が多く採用されている。このベタ基礎に係る立上り部は、建物の外周や建物内部の構造壁等に沿って形成されるため、基礎スラブ及び立上り部によって囲繞部が形成される。
ここで、例えば、住宅の施工中において、当該ベタ基礎が完成した後に雨が降ると、当該ベタ基礎の囲繞部に雨水が溜まってしまうという問題があった。このようにベタ基礎内に雨水が溜まった状態で床を構築すると、床にカビや害虫等が発生する原因になるため、雨水はベタ基礎の外部に排水しなければならなかった。排水作業は、例えば、スポンジや吸水ポンプ等を用いて外部に排水しなければならず、作業が煩雑であった。
【0003】
このような問題を解決するものとして、例えば、特許文献1に示すような排水構造(従来発明1)が知られている。従来発明1は、基礎スラブの中央部分に、地面に連通する水抜き孔を形成すると共に、基礎スラブに中央部分に向けて勾配を設けることで、基礎に溜まった雨水を地中に排水することができる構造である。
【0004】
また、例えば、図9に示す排水構造100のように、基礎スラブ101と、基礎スラブ101から立設された立上り部102とを有するベタ基礎において、立上り部102の一端面から他端面に連通する排水管103が埋設された排水構造が知られている。このような構成により、ベタ基礎の内部に溜まった雨水を、排水管103から外部に排水することができる。なお、排水構造100の施工方法は、基礎スラブ101が硬化した後、立上り部102を形成するための型枠を形成し、その型枠内に排水管103を設置し、型枠にコンクリートを打設して形成していた。
【特許文献1】特開昭64−24916号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来発明1によると、例えば透水係数の小さい軟弱地盤においては、水抜き孔から雨水が排水されず、基礎内に雨水が残ってしまうという問題があった。
また、排水構造100によると、排水管103の肉厚P分だけ、雨水が流入する開口部104の位置が基礎スラブ101の上面よりも高くなるので、排水効率が悪いという問題があった。
また、排水構造100に係る施工方法によると、コンクリートの打設工程や養生工程の際に、打設したコンクリートが排水管103の下に回り込むため排水管103が浮き上がってしまい、開口部104の位置がさらに高くなってしまうという問題があった。
このような観点から本発明は、スラブとこのスラブに立設された立上り部とを有する構造物において、排水効率が良好な排水構造及びこの排水構造の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために本発明は、スラブと、このスラブに立設された立上り部と、前記スラブ及び前記立上り部に連通して形成された排水管と、を有する排水構造において、前記排水管は、少なくとも前記スラブに埋設され、一端側から他端側に向けて連通する本管部と、前記スラブ内に埋設されると共に、前記本管部からスラブ側に向けて延設され、上部が開口された集水樋部と、を有し、前記集水樋部の上縁の高さ位置は、前記スラブの上面以下に形成されていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、集水樋部の上部が開口すると共に、集水樋部の上縁の位置は、スラブの上面位置以下となるように形成されているため、スラブに溜まった水は、集水樋部に容易に流れ込み、本管部を介して外部へ排水される。即ち、水が流れ込む開口部分がスラブ側に張り出すと共に、スラブの上面の位置以下に形成されているため、集水効率及び排水効率を高めることができる。
【0008】
また、前記本管部及び前記集水樋部の少なくとも一方は、排水方向に向かうほど低くなるように傾斜していることが好ましい。かかる構成によれば、水を外部にスムーズに排水することができる。
【0009】
また、前記スラブと前記排水管との間に補間部材が介設されていることが好ましい。本発明において、補間部材とは、スラブと排水管との隙間を封止し、両者を密着させる部材をいい、例えば、ブチルゴムやポリマーセメント等を示す。
かかる構成によれば、スラブと排水管との間を補間部材で封止することにより、スラブと排水管が密着し一体化する。これにより、スラブの上面に集水樋部を設けることによる鉄筋の被り厚の不足分を補うことができる。また、スラブと排水管が密着することで、排水管の浮き上がりを防止し、施工性を高めることができる。また、スラブと排水管の下面との間に水や空気が入り込むことを防止して、スラブコンクリート及びスラブ鉄筋の劣化を防止することができる。
【0010】
また、前記本管部の開口部のうち少なくとも一方に、蓋部が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、建物の施工中又は完成した後に、害虫等が排水管から構造物内部へ入ってしまうことを防ぐことができる。
【0011】
また、前記スラブは、前記排水管に向かうほど低くなるように傾斜していることが好ましい。かかる構成によれば、スラブに水が溜まることがないため、水を外部にスムーズに排水することができる。
【0012】
また、スラブと、このスラブに立設された立上り部との間に埋設され、前記立上り部の一端側から他端側に向けて貫通する本管部と、前記スラブ内に埋設されると共に、前記本管部からスラブ側に向けて延設され、上部が開口された集水樋部と、を有し、前記集水樋部の上縁の高さ位置は、前記スラブの上面以下に形成された排水構造の施工方法において、前記スラブ用型枠にコンクリートを打設する第一コンクリート打設工程と、前記スラブのコンクリートが固まる前に、前記集水樋部の上縁の高さ位置が、前記スラブの上面以下となるように前記排水管を埋め込む埋設工程と、前記本管部の両端に立上り部用せき板を当接させて、立上り部用型枠を形成する立上り部用型枠形成工程と、前記立上り部用型枠にコンクリートを打設する第二コンクリート打設工程と、前記立上り部用型枠を脱型する脱型工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
かかる工法によれば、スラブのコンクリートが固まる前に排水管を埋設するため、スラブの上面と集水樋部の上縁の埋設位置合わせを容易に行うことができる。また、本管部の両端にせき板を当接させて型枠を形成するため、型枠の位置合せを容易に行うことができる。
【0014】
また、前記脱型工程後に、前記排水管内に形成された余剰コンクリートを取り除く除去工程を含むことが好ましい。
【0015】
かかる工法によれば、立上り部用のコンクリートが硬化した後に、集水樋部及び本管部に流入し、硬化した余剰コンクリートを、例えばドライバー等の先鋭具とハンマー等の打込具を用いて取り除くことで、排水管を容易に連通させることができる。
【0016】
また、前記排水管の内側は、合成樹脂からなることが好ましい。かかる工法によれば、合成樹脂の平滑性が高いため、除去工程における余剰コンクリートの除去作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る排水溝造によれば、スラブとスラブに立設された立上り部とを有する構造物の排水効率を高めることができる。また、本発明に係る排水構造の施工方法によれば、スラブとスラブに立設された立上り部とを有する構造物において、排水効率の高い排水構造を容易に施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第一実施形態]
本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、第一実施形態に係る排水構造を示した全体斜視図である。図2は、第一実施形態に係る排水構造を示した拡大斜視図である。図3は、第一実施形態に係る排水構造を示した側断面図である。図4は、第一実施形態に係る排水構造を外側開口部側から示した断面斜視図である。
【0019】
第一実施形態に係る排水構造1は、図1に示すように、スラブ2とスラブ2から立設された立上り部3と、スラブ2及び立上り部3に連通された排水管4とを有する。
第一実施形態に係る排水構造1は、例えば、スラブ2と立上り部3とを有するベタ基礎Tに設置する場合を例にして説明する。ベタ基礎Tは、平面視矩形のスラブ2と、スラブ2の外周を取り囲むと共に、図示しない構造壁に沿って立設された立上り部3とを有する。即ち、立上り部3によって、ベタ基礎Tの内部には囲繞部が形成されている。
【0020】
スラブ2は、図2及び図3に示すように、所定の厚みを有する平板状のコンクリートであって、上面が平坦に形成されている。スラブ2は、排水管4が埋設されている箇所においては、上面が水平に形成されている。また、スラブ2は、後記する留板部6bからベタ基礎Tの内側に向けて上方に傾斜している(傾斜角度=α°)。即ち、ベタ基礎Tの内部に溜まった水は、スラブ2の傾斜に沿って排水管4に向けて流れるように形成されている。スラブ2の傾斜は、必ずしも設けるものではなく、排水管4の設置位置やベタ基礎Tの形状等に基づいて適宜形成すればよい。立上り部3は、所定の幅を有するコンクリート部材であって、スラブ2の上面から垂直に立設されている。
【0021】
排水管4は、図2に示すように、スラブ2と立上り部3との間に埋設された本管部5と、本管部5からスラブ2側に向けて延設された集水樋部6とを有する。また、排水管4の下部の外周には、補間部材9(図3参照)が設けられている。
【0022】
本管部5は、図2及び図3に示すように、集水樋部6から流れてくる水をベタ基礎Tの外部へ排出するための管である。本管部5は、円筒形状を呈する管であって、ベタ基礎Tの内部側に開口する内側開口部7と、外部側に開口する外側開口部8とを有する。本管部5の開口する両端面は、立上り部3の内側面3a及び外側面3bと面一に形成されている。本管部5は、図3に示すように、第一実施形態においては、本管部5の下部側をスラブ2に埋設されており、本管部5の上部側を立上り部3に埋設されている。本管部5は、第一実施形態においては、略水平に埋設されている。
【0023】
なお、本管部5は、第一実施形態においては、円筒形状を呈するように形成したが、これに限定されるものではなく、角筒に形成してもよい。本管部5の管厚や口径Fは、ベタ基礎Tの形状及び排水設計等に基づいて、適宜設定すればよい。また、本管部5は、基礎Tの外部に向かうほど低くなるように傾斜して埋設してもよい。
【0024】
集水樋部6は、スラブ2に溜まった水を取り入れて本管部5へ導くためのものである。集水樋部6は、図2に示すように、スラブ2の上面に上部を開口して埋設されており、本管部5から延設された樋部6aと、樋部6aの先端に形成された留板部6bとを有する。
【0025】
樋部6aは、水の流路となる部分である。樋部6aは、半円筒形状を呈し、本管部5の下部からスラブ2側に向けて延設されている。樋部6aの対向する上面6c,6cは、略同等の高さ位置で、水平に形成されている。図3に示すように、樋部6aの埋設深さfは、図3に示すように、本管部5の口径をFとすると、f=F/2となるように形成されている。
【0026】
留板部6bは、後記する埋設工程の際に、コンクリートが集水樋部6の内部に流入するのを防止すると共に、後記する除去工程の際に、スラブ2のコンクリートと余剰コンクリートの縁を切る役割をする部材である。留板部6bは、半円形の板材であって、樋部6aの先端を塞ぐように形成されている。留板部6bの上面6dは、樋部6aの上面6cと略同等の高さ位置で水平に形成されている。
【0027】
ここで、樋部6aの上面6c、6c及び留板部6bの上面6dを合わせて上縁6eとする。上縁6eは、第一実施形態においては、スラブ2の上面と面一に形成されている。
【0028】
集水樋部6は、第一実施形態においては、前記したように形成したが、これに限定されるものではない。例えば、樋部6aは、半円筒形状ではなく、角形に形成してもよい。また、集水樋部6の上縁6eとスラブ2の上面は、必ずしも面一である必要はなく、集水樋部6の上縁6eの高さ位置が、スラブ2の上面よりも下方に位置するように埋設してもよい。また、樋部6aの埋設深さfは、排水設計に基づいて適宜設定すればよい。また、留板部6bは、必ずしも設けるものではなく、樋部6aの形状や勾配に基づいて適宜設ければよい。
【0029】
補間部材9は、スラブ2と排水管4との隙間を封止して密着させる部材である。補間部材9は、第一実施形態においては、ブチルゴムからなる両面接着テープを用い、排水管4の下半部の外周(円筒面)と、留板部6bの外側面に設けられている。これにより、スラブ2と排水管4とが密着し一体化するため、スラブ2の上面に集水樋部6を設けたことによるスラブ2の鉄筋の被り厚の不足分を補うことができる。また、スラブ2と排水管4とが密着することで、排水管4の浮き上がりを防止し、施工性を高めることができる。また、スラブ2と排水管4の下面との間に水や空気が回りこむことを防止して、スラブ2のスラブコンクリートの中性化やスラブ鉄筋の錆び防止することができる。
【0030】
なお、補間部材9は、スラブ2と排水管4との隙間を封止し、スラブ2と排水管4とを密着させる部材であればよく、例えば、接着性を有する公知の合成樹脂やポリマーセメントを用いればよい。また、補間部材9は、本実施形態においては、排水管4の下半部の外周の全てに設けたが、一部に設けてもよい。補間部材9は、必ずしも設けるものではなく、必要に応じて適宜設ければよい。
【0031】
第一実施形態に係る排水管4は、所定の長さの円筒形状の塩化ビニル管の一部を切断すると共に、切断した側の先端に、留板部6bを設置して形成されている。
なお、第一実施形態においては、排水管4は、塩化ビニル管を用いたがこれに限定するものではない。排水管4は、他の合成樹脂材や金属管等他の材料であってもよいが、錆びにくく、コンクリートとの剥離性が高い材料であることが好ましい。また、排水管4は、直線状に形成したが、例えば、本管部5と集水樋部6とで屈折するように形成してもよい。また、排水管4は、一体的に形成したが、2以上の部材を接合して形成してもよい。また、排水管4は、切断加工により形成したが、射出成形などにより一体的に形成してもよい。
【0032】
ここで、排水構造1は、図4に示すように、本管部5の外側開口部8に蓋部10を設けてもよい。
蓋部10は、ベタ基礎Tが完成して床の施工に入る場合に、排水管4を塞いで床下空間に害虫等が入らないようにするためのものである。
蓋部10は、ネジ山を有し、外側開口部8の内周に形成されたネジ溝に螺入されている。蓋部10の頭部10aは、平坦に形成されており、スラブ2及び立上り部3の外側面3bと面一に形成されている。蓋部10の頭部10aには、直線状の切欠き溝10bが設けられており、コイン等で簡易に回動するように形成されている。
【0033】
なお、蓋部10は、前記した形態に限定されるものではなく他の形態であってもよい。例えば、ネジ式のものではなく、嵌め殺し形態であってもよい。また、蓋部10は、ベタ基礎Tの外部と床下空間の通気性を考慮して頭部10aが網目状のものを用いてもよい。また、スラブ2及び立上り部3の外側面3bに所定の厚みでモルタル(図示省略)等を塗着する場合には、頭部10aに厚みを持たせることにより、当該モルタルの表面と蓋部10の頭部10aが面一になるように形成してもよい。また、本管部5の内側開口部7(図3参照)に蓋部10を設けてもよい。
【0034】
以上説明したように、第一実施形態に係る排水構造1によれば、集水樋部6の上部が開口すると共に、集水樋部6の上縁6eの高さ位置は、スラブ2の上面と面一に形成されているため、スラブ2に溜まった水は、集水樋部6にスムーズに流れ込み、本管部5を介して外部へ排水される。
ここで、例えば、図9に示す従来の排水構造100と対比すると、排水構造100の場合は、例えばレーキなどで水を排水管103側に送り込んだとしても、排水管103の肉厚P分だけ開口位置が高いため、水がスラブ2側に押し戻されてしまう可能性がある。
一方、図2に示す第一実施形態に係る排水構造1によれば、水が流れ込む開口部分が、スラブ2側に張り出すと共に、スラブ2の上面の高さ位置以下に形成されているため、水を本管部5側へ送り込み易く、集水効率及び排水効率を高めることができる。
【0035】
また、スラブ2は、排水管4に向けて下方に傾斜しているため、スラブ2に水が溜まることなく、効率よく排水することができる。また、排水管4は、スラブ2の上面、立上り部3の内側面3a及び外側面3bから突出していないため、景観上も良好である。また、排水管4は、簡易な構成であるため、安価かつ容易に製造することができる。
【0036】
次に、第一実施形態にかかる排水構造1の施工方法について説明する。図5は、排水構造1の施工方法を示した斜視図であって、(a)は、第一コンクリート打設工程、(b)は、埋設工程、(c)は、立上り部用型枠形成工程及び第二コンクリート打設工程、(d)は、除去工程を示す。
【0037】
第一実施形態に係る排水構造1の施工方法は、スラブ用の型枠にコンクリートを打設する第一コンクリート打設工程と、スラブ用のコンクリートが固まる前に、集水樋部の上縁の高さ位置が、スラブの上面以下となるように排水管を埋め込む埋設工程と、本管部の両端に立上り部用せき板を当接させて、立上り部用型枠を形成する立上り部用型枠形成工程と、立上り部用型枠にコンクリートを打設する第二コンクリート打設工程と、立上り部用型枠を脱型する脱型工程と、排水管内に形成された余剰コンクリートを取り除く除去工程と、を含むものである。
【0038】
(第一コンクリート打設工程)
まず、図5の(a)に示すように、スラブ2を形成するために、スラブ用せき板21,21を固定して、スラブ用型枠20を形成した後、このスラブ用型枠内20にコンクリートCを打設する。
【0039】
(埋設工程)
次に、図3の(b)に示すように、打設されたコンクリートCが硬化する前において、排水管4の下半部をスラブ2に埋設する。ここで、埋設工程の前に予め、排水管4の集水樋部6の外周には、ブチルゴムからなる両面接着テープ(図3参照)を貼着し、内周には、図示しないコンクリート剥離剤を塗布する。排水管4を埋設する際には、本管部5の外側開口部8側の端部をスラブ用せき板21に略垂直に当接させると共に、集水樋部6の上縁6eと、スラブ2の上面が面一となるように埋設する。即ち、本管部5の上部側のみがスラブ2の上面から突出するように埋設する。
なお、排水管4は、留板部6bを有するため、コンクリートCが集水樋部6の内部に流入するのを防止することができる。
【0040】
(立上り部用型枠形成工程)
次に、図5の(c)に示すように、スラブ2のコンクリートCが硬化してスラブ2が完成した後、本管部5の内側開口部7側の端部に立上り部用せき板を略垂直に当接させて、立上り部用型枠24を形成する。
なお、第一実施形態においては、ベタ基礎の犬走り部分は形成しないため、スラブ用せき板21は脱型せず、立上り部用型枠形成工程においてもそのまま用いる。
【0041】
(第二コンクリート打設工程・脱型工程)
次に、図5の(c)に示すように、立上り部用型枠24内に立上り部3を形成するためのコンクリートCを打設する。そして、立上り部3が硬化したら、立上り部用型枠24を脱型する。この際、排水管4内には、第二コンクリート打設工程時及び養生時に立上り部用型枠24からはみ出したコンクリートCが流れ込み、硬化している。以下、排水管4内で硬化したコンクリートを余剰コンクリートYとする。
【0042】
(除去工程)
最後に、図5の(d)に示すように、余剰コンクリートYを取り除く。具体的には、集水樋部6又は本管部5が埋設された位置に、ドライバーなどの先の尖った先鋭具Dを当接し、ハンマー等の打込具Eで先鋭具Dを衝打して、余剰コンクリートYを取り除く。この際、スラブ2側から立上り部3に向かって衝打すると、余剰コンクリートYが本管部5を通ってベタ基礎Tの外部へ抜け落ちる。
なお、除去工程は、余剰コンクリートYが形成されていない場合は、当然行う必要はない。
【0043】
なお、ベタ基礎Tの施工が完成し、床の施工段階に入ったら、前記した蓋部10を取り付けて構造物内に虫等が入らないようにしてもよい。
【0044】
以上説明した排水構造1の施工方法によれば、スラブ2用のコンクリートCが固まる前に排水管4を埋設するため、スラブ2の上面と集水樋部6の上縁6eの高さ位置を容易に合わせることができる。また、本管部5の外側開口部8側の端部をスラブ用せき板21に垂直に当接させることで、排水管4の埋設角度を容易に合わせることができる。また、本管部5の内側開口部7側の端部に立上り部用せき板22を略垂直に当接させて型枠を形成するため、立上り部用型枠24を容易に構築することができる。また、施工が非常に容易なため、施工期間を短縮することができ、施工コストを下げることができる。
【0045】
また、除去工程においては、排水管4内に形成された余剰コンクリートYを、工具で衝打して取り除くだけで容易に排水管4を連通させることができる。また、排水管4は、塩化ビニル管を用いると共に、排水管4の内部にコンクリート剥離剤を塗布しているため、除去工程を容易に行うことができる。また、集水樋部6に留板部6bを有することで、スラブ2に係るコンクリートと余剰コンクリートYの縁をガイドすることができる。これにより、留板部6bに沿って綺麗に余剰コンクリートYを除去することができる。
【0046】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。説明においては、第一実施形態と重複する部材は同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図6は、本発明の第二実施形態に係る排水構造31を示した側断面図である。第二実施形態に係る排水構造31は、排水管34が水平面に対して下方に傾斜している点で第一実施形態と相違する。
【0047】
排水構造31に係る排水管34は、水平面に対して角度βとなるように、外側開口部38側が下方に向けて傾斜している。即ち、スラブ2の傾斜角度αと排水管4の傾斜角度βが、α=βとなるように形成されている。これにより、スラブ2の上面と、集水樋部36の上縁36eが面一となるように形成されている。
排水管34は、第一実施形態に係る排水管4と略同等のものを使用しているが、傾斜をつけることに伴って、本管部35の両端部が、立上り部3の内側面3aと外側面3bと面一になるように、一部を切断して形成されている。
【0048】
排水構造31によれば、スラブ2の傾斜に連続して排水管34が傾斜しているため、水の流れが良好になり、より排水効率を高めることができる。
なお、第二実施形態においては、スラブ2の傾斜角度αと、排水管の傾斜角度βが同等となるように形成したが、それぞれの傾斜角度を変えて形成してもよい。また、スラブ2の傾斜は、均しモルタル等を用いて形成すればよい。
【0049】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。図7は、本発明の第三実施形態に係る排水構造41を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、側断面図である。第三実施形態に係る排水構造41は、集水樋部46に留板部6b(図3参照)を備えない点で第一実施形態と相違する。
【0050】
排水管44は、水平に埋設された本管部45と、流水面が傾斜を有する集水樋部46とを有する。即ち、集水樋部46は、図7の(b)に示すように、本管部45の下部からスラブ2の上面に向けて斜めに延設されている。また、集水樋部46の上縁46eは、スラブ2の上面と面一に形成されている。排水管44は、円筒管である本管部45と、円筒管を斜めに切断して形成された集水樋部46とを接着して形成されている。
このように、集水樋部46は、留板部6b(図3参照)を設けずにスラブ2の上面から直接傾斜をつけることで、集水樋部6の排水効率を高めることができる。また、排水管44のように、本管部45と集水樋部46とで水の流路の傾斜角度を変えてもよい。
【0051】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。図8は、本発明の第四実施形態に係る排水構造51を示した斜視図である。第四実施形態に係る排水構造51は、排水管54の断面が矩形である点及び本管部55がスラブ2側に全て埋設されている点で、第一実施形態と相違する。
【0052】
排水管55は、断面視矩形の管であって、スラブ2に全て埋設された本管部55と、本管部55からスラブ2側に延設された集水樋部56とを有する。集水樋部56の上部は、平面視矩形に切り欠いて、上方が開口するように形成されている。集水樋部56の上縁56eとスラブ2の上面は面一になるように形成されている。このように、本管部55をスラブ2に全て埋設した構成とすることもできる。
【0053】
以上、本発明に係る最良の実施形態について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更が可能である。
【0054】
本実施形態においては、補間部材9は、ブチルゴムからなる両面接着テープを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、ポリマーセメントを用いてもよい。
ここで、打設されたコンクリートCが硬化する前において、排水管4の下半部をスラブ2に埋設する埋設工程(図5の(b)参照)においては、排水管4の重量が軽いため、養生中に排水管4が浮き上がってしまう可能性がある。
この点、ポリマーセメントは、接着性に優れるため、排水管4とスラブ2の密着性を高めると共に、比重が大きいため排水管4の浮き上がりを防止することができる。
【0055】
また、排水管4自体に重さを出すために、比較的重量のあるものを予め排水管4に設置したり、例えば、炭酸カルシウムを予め混入して排水管4を形成したりしてもよい。また、例えば塩化ビニル管の外周に予めポリマーセメントを周設して排水管4を形成してもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、ベタ基礎を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、RC構造における二階以上の床部分に本発明に係る排水構造を設置してもよい。また、排水管の設置位置や設置個数は、排水設計に基づいて適宜設定すればよい。
【0057】
また、本実施形態においては、スラブの外周に形成された立上り部に、排水構造を形成したが、これに限定されるものではない。例えば、スラブの内部に囲繞部が形成されている場合においても、本発明に係る排水構造を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第一実施形態に係る排水構造を示した全体斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る排水構造を示した拡大斜視図である。
【図3】第一実施形態に係る排水構造を示した側断面図である。
【図4】第一実施形態に係る排水構造を外側開口部側から示した斜視図である。
【図5】第一実施形態に係る排水構造の施工方法を示した斜視図であって、(a)は、第一コンクリート打設工程、(b)は、埋設工程、(c)は、立上り部用型枠形成工程及び第二コンクリート打設工程、(d)は、除去工程を示す。
【図6】第二実施形態に係る排水構造を示した側断面図である。
【図7】第三実施形態に係る排水構造を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、側断面図である。
【図8】第四実施形態に係る排水構造を示した斜視図である。
【図9】従来の排水構造を示した側断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 排水構造
2 スラブ
3 立上り部
4 排水管
5 本管部
6 集水樋部
6e 上縁
7 内側開口部
8 外側開口部
9 補間部材
10 蓋部
20 スラブ用型枠
21 スラブ用せき板
22 立上り部用せき板
24 立上り部用型枠
T ベタ基礎
Y 余剰コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブと、このスラブに立設された立上り部と、前記スラブ及び前記立上り部に連通して形成された排水管と、を有する排水構造において、
前記排水管は、
少なくとも前記スラブに埋設され、一端側から他端側に向けて連通する本管部と、
前記スラブ内に埋設されると共に、前記本管部からスラブ側に向けて延設され、上部が開口された集水樋部と、を有し、
前記集水樋部の上縁の高さ位置は、前記スラブの上面以下に形成されていること
を特徴とする排水構造。
【請求項2】
前記本管部及び前記集水樋部の少なくとも一方は、排水方向に向かうほど低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の排水構造。
【請求項3】
前記スラブと前記排水管との間に補間部材が介設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水構造。
【請求項4】
前記本管部の開口部のうち少なくとも一方に、蓋部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の排水構造。
【請求項5】
前記スラブは、前記排水管に向かうほど低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求工4に記載の排水構造。
【請求項6】
スラブと、このスラブに立設された立上り部との間に埋設され、前記立上り部の一端側から他端側に向けて貫通する本管部と、前記スラブ内に埋設されると共に、前記本管部からスラブ側に向けて延設され、上部が開口された集水樋部と、を有し、前記集水樋部の上縁の高さ位置は、前記スラブの上面以下に形成された排水構造の施工方法において、
前記スラブ用型枠にコンクリートを打設する第一コンクリート打設工程と、
前記スラブのコンクリートが固まる前に、前記集水樋部の上縁の高さ位置が、前記スラブの上面以下となるように前記排水管を埋め込む埋設工程と、
前記本管部の両端に立上り部用せき板を当接させて、立上り部用型枠を形成する立上り部用型枠形成工程と、
前記立上り部用型枠にコンクリートを打設する第二コンクリート打設工程と、
前記立上り部用型枠を脱型する脱型工程と、
を含むことを特徴とする排水構造の施工方法。
【請求項7】
前記脱型工程後に、
前記排水管内に形成された余剰コンクリートを取り除く除去工程と、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の排水構造の施工方法。
【請求項8】
前記排水管の内側は、合成樹脂からなることを特徴とする
請求項7に記載の排水構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−240326(P2008−240326A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81345(P2007−81345)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【出願人】(597081374)西日本産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】