説明

排水管接続部材

【課題】筒部が排水管に十分に深く且つ十分にきつく内嵌するように構成された床フランジを提供する。
【解決手段】床フランジ10の筒部20は、上部が急テーパ部22であり下部が緩テーパ部21である筒部長さLが30〜60mmの場合、緩テーパ部21のテーパ角は1〜3°である。急テーパ部22は、長さLがLの5〜20%であり、テーパ角が緩テーパ部21よりも1〜4°大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器の排水口と排水管とを接続するための床フランジ、排水ソケットなどの排水管接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
便器と排水管とを床フランジによって接続する従来例(特開平9−291582の従来技術の欄)について第3図を参照して説明する。
【0003】
トイレルームの床1に排水管2が配設されている。この排水管2の上端に床フランジ3が装着されている。この床フランジ3は、排水管2内に挿入される筒部3aと、該筒部3aの上端に連なる鍔部3bを有する。この筒部3aの外周面と排水管2の内周面とは接着剤によって接着されている。
この床フランジ3に便器4の座枠5が被さっており、該座枠5と床フランジ3との間に粘性ガスケット6が介在されている。この粘性ガスケット6は、非加硫ブチルゴム等の粘塑性及び粘着性を有した素材よりなり、フランジ3及び座枠5の排水口7の周囲部にそれぞれ水密的に密着している。
【0004】
床フランジ3と座枠5とはTボルト8及びナット9によって連結され、これにより便器4が固定される。Tボルト8は、鍔部3bに設けられたボルト挿通孔3cに下から上に向って挿通されている。
【0005】
この床フランジ3の筒部3aは、排水管2に内嵌し易くするために下方に向って縮径するテーパ形状となっている。
【0006】
排水管2と筒部3aとを接合する場合、筒部3aの外周面に接着剤を塗布してから筒部3aを排水管2内に差し込む。
【0007】
床フランジの代わりに排水ソケットを用いて便器と排水管とを接続することも周知である(例えば特許文献2〜5)。
【特許文献1】特開平9−291582
【特許文献2】特開2004−204476
【特許文献3】特開2004−197331
【特許文献4】特開2003−227165
【特許文献5】特開平7−034517
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記排水管2は、塩化ビニル(塩ビ)製であり、その外径及び肉厚はJISによって規定されている。この肉厚はその範囲が規定されているため、塩ビ管の内径は所定の範囲においてバラツクことになる。
【0009】
このように排水管2の口径にバラツキがあっても、床フランジ3の筒部3aは排水管2に対し、きつく且つ十分に深く差し込まれる必要がある。仮に筒部3aが過度に小径であると、鍔部3bが床1に当接するまで筒部3aが排水管2に差し込まれても、筒部3aの外周と排水管2の内周との間に隙間が存在し、漏水や臭気漏れが生じるおそれがある。
【0010】
逆に、筒部3aが過度に大径であると、筒部3aを排水管2に差し込んでいる途中でそれ以上筒部3aを排水管2に押し込むことができなくなり、鍔部3bが床1から浮いてしまうことになる。
【0011】
また、テーパーを過度につけて許容範囲を広くすると、筒部下端が必要以上に絞られることになり、排水性能に影響を与える恐れもでてくる。
【0012】
本発明は、このような従来技術に鑑みて創案されたものであり、筒部が排水管に十分に深く且つ十分にきつく内嵌するように構成された床フランジ、排水ソケットなどの排水管接続部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の排水管接続部材は、トイレルームの床の排水管に内嵌する筒部と、該筒部の上端に連なっており、該床の上面に載置される鍔部とを有してなり、該筒部は、下端に向って縮径するテーパ形状となっている床フランジにおいて、該筒部の上部は、下側よりもテーパ角が大きい急テーパ部となっていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の排水管接続部材は、請求項1において、前記筒部の長さが25〜60mmであり、前記急テーパ部の長さが筒部の5〜30%であり、該急テーパ部よりも下側のテーパ角が1〜3゜であり、該急テーパ部のテーパ角がそれよりも1〜5゜大きいことを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の排水管接続部材は、請求項1又は2において、塩化ビニル製であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の排水管接続部材は、上部がテーパ角が大きいものとなっており、下側がテーパ角が小さいものとなっている。従って、テーパ角が小さい下側部分については、排水管に確実に差し込むことができるように比較的小径としておき、テーパ角が大きい筒部上部(急テーパ部)を排水管の内周面にきつく嵌めるよう構成することができる。
【0017】
筒部に接着剤を塗布すると、筒部の外周面が滑り易い状態となり、筒部の外周面が排水管の内周面に当った後も、さらに筒部を排水管内に押し込むことができ、筒部を排水管内に十分に奥深く押し込むことができる。
【0018】
なお、排水管は一般に塩ビ製であるので、本発明の床フランジも塩ビ製とされることが好ましい。塩ビ用接着剤を塩ビ製床フランジの筒部外周面に塗布すると、接着剤中の溶剤成分によって筒部外周面の表層が溶け、筒部が排水管内に押し込まれ易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、排水管の口径が大き目又は小さ目とは、JIS規格の許容範囲内において口径が大きい又は小さいことを表す。
【0020】
第1図は実施の形態に係る床フランジの断面図、第2図はこの床フランジと排水管との接続途中の断面図である。
【0021】
この床フランジ10は、塩ビ製であり、前記第3図の床フランジと同様に、筒部20と、この筒部20の上端に連なる鍔部30とを有している。鍔部30には、床フランジ10を床に留め付けるための皿ビスの挿通孔31のほか、Tボルトを挿通させるためのボルト挿通孔(第3図参照。第1,2図では図示略。)が設けられている。
【0022】
筒部20は、下方に向って徐々に外径が小さくなるテーパ形状である。
【0023】
この実施の形態では、筒部20の上部は、比較的テーパ角が大きい急テーパ部22であり、この急テーパ部22よりも下側が比較的テーパ角の小さい緩テーパ部21となっている。この筒部20の長さLは25〜60mm特に30〜50mm程度が好ましい。Lが25mmよりも小さいと、筒部20の排水管2への差し込み長さが短くなり、漏水や臭気漏れが生じるおそれがある。一方、Lが60mmよりも長いと、筒部20を排水管2に押し込みにくくなるおそれがある。
【0024】
筒部上部を構成する急テーパ部22の長さLは、Lの5〜30%特に10〜20%程度が好ましい。LがLの5%よりも小さいと、口径が大き目の排水管2の場合に漏水や臭気漏れが生じるおそれがある。LがLの30%よりも長いと、口径が小さ目の排水管2の場合、筒部20を排水管2に押し込みにくくなるおそれがある。
【0025】
緩テーパ部21のテーパ角は1〜3゜特に1〜1.5゜が好適であり、急テーパ部22のテーパ角はそれよりも1〜5゜特に1.5〜4゜大きいことが好適である。緩テーパ部21のテーパ角が1゜よりも小さいと、筒部20を口径が小さ目の排水管2に押し込みにくくなるおそれがある。一方、緩テーパ部21のテーパ角が3゜よりも大きいと、口径が大き目の排水管2の場合、接着面積が小さくなり、漏水や臭気漏れが生じるおそれがある。
【0026】
急テーパ部22のテーパ角が上記範囲よりも小さいと、口径が大き目の排水管2の場合に、筒部20の全体が排水管2に差し込まれても排水管2の内周と筒部20の上部との間に隙間が残り、漏水や臭気漏れが生じるおそれがある。また、急テーパ部22のテーパ角が上記範囲よりも大きいと、口径が小さ目の排水管2の場合に、筒部20の押し込み途中で、それ以上、筒部20を排水管2内に押し込むことができなくなり、鍔部30が床から浮くようになるおそれがある。
【0027】
筒部20の下端の直径(外径)Dminと上端の直径(外径)Dmaxとの差は、1〜4mm特に1.5〜3mmであることが好ましい。
【0028】
このように構成された床フランジも、前記第3図の床フランジ3と同様に、筒部20に接着剤を塗布して該筒部20を排水管2に押し込むことにより排水管2と接合される。
【0029】
筒部20の長さやテーパ角が上記の範囲にあると、JISで許容される範囲の口径の排水管であれば、筒部20の排水管2への差し込み途中で筒部20の外周が排水管2の内周に当接し、しかもそれ以降も筒部20をさらに深く排水管2に押し込むことができる。
【0030】
即ち、排水管2の口径が大き目であったとしても、筒部20の上部の急テーパ部22に排水管2の上端内周が当たり、筒部20と排水管2との間を水密的、気密的に封じることができる。
【0031】
また、排水管2の口径が小さ目であったとしても、緩テーパ部21をこの排水管2内に差し込むことができる。この差し込み途中で排水管2の上端の内周が筒部20の外周面に第2図の如く当接する。このとき、排水管2の上端から鍔部30までの長さPがある程度になっていれば、筒部20を排水管2に十分に奥深くまで差し込み、鍔部30をトイレルームの床に当接させることが可能となる。
【0032】
即ち、前述の通り、塩ビ製の床フランジの場合、塩ビ用接着剤を筒部20の外周面に塗布すると、接着剤中の溶剤成分によって筒部20の外周面の表層が溶ける。そのため、排水管2の上端内周が筒部20の外周に当った後でも、床フランジ10を強く押すと、筒部20が排水管2内に押し込まれる。このように排水管2の上端内周と筒部20の外周とが当った後でも鍔部30が床に当接するまで筒部20を排水管2内に押し込むことが可能である。なお、この押し込み深さは、テーパーの傾斜によって異なるが、20mm以下であることが好ましい。
【0033】
上記実施の形態では、排水管接続部材は床フランジであるが、排水ソケットであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態に係る床フランジの断面図である。
【図2】図1の床フランジと排水管との接合途中の断面図である。
【図3】従来の床フランジの設置構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 床
2 排水管
3,10 床フランジ
3a,20 筒部
3b,30 鍔部
21 緩テーパ部
22 急テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレルームの床の排水管に内嵌する筒部と、該筒部の上端に連なっており、該床の上面に載置される鍔部とを有してなり、
該筒部は、下端に向って縮径するテーパ形状となっている排水管接続部材において、
該筒部の上部は、下側よりもテーパ角が大きい急テーパ部となっていることを特徴とする排水管接続部材。
【請求項2】
請求項1において、
前記筒部の長さが25〜60mmであり、
前記急テーパ部の長さが筒部の5〜30%であり、
該急テーパ部よりも下側のテーパ角が1〜3゜であり、該急テーパ部のテーパ角がそれよりも1〜5゜大きいことを特徴とする排水管接続部材。
【請求項3】
請求項1又は2において、塩化ビニル製であることを特徴とする排水管接続部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−266916(P2008−266916A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108416(P2007−108416)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】