説明

排水設備の漏れ試験用冶具

【課題】本発明は、排水設備の漏れ試験のための設備コストを低減させることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る排水設備の漏れ試験用冶具は、縮径、あるいは拡径可能に構成されており、縮径状態で排水経路14に設けられた開口部18hからその排水経路14内に挿入でき、拡径状態で排水経路14内を閉塞できるように構成された閉塞部材30と、閉塞部材30に連結可能に構成されており、開口部18hの外から縮径状態の閉塞部材30を排水経路14の閉塞位置で支えることができる支持部材24と、閉塞部材30に連結可能に構成されており、開口部18hの外から支持部材24に支えられた閉塞部材30を拡径方向、あるいは縮径方向に駆動させることができる閉塞部材動作機構27とを有しており、閉塞部材動作機構27と支持部材24とは、開口部18hの外からの操作で、拡径後の閉塞部材30から外せるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水設備の排水経路を閉塞できるように構成されており、その排水経路を所定範囲で仕切って漏れ試験する際に使用される排水設備の漏れ試験用冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、集合住宅の排水設備における排水立て管を所定範囲で仕切って漏水試験する際に使用される満水試験用継手が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載された満水試験用継手100は、図11に示すように、排水立て管110の途中位置(集合住宅の3階毎)に設置されており、その満水試験用継手100の位置で排水立て管110を閉塞できるように構成されている。満水試験用継手100は、図10、図11に示すように、上下の排水立て管110をつなぐ継手本体部102と、その継手本体部102の空間内にセットされる管路形成部材104(図10参照)と、継手本体部102の側面開口102hを塞ぐ蓋体106と、満水試験時に使用される試験用冶具108(図11参照)とから構成されている。
管路形成部材104は、通常時(満水試験時以外)に継手本体部102の空間内にセットされる部材であり、上下の排水立て管と同径の管路104tを備えている。そして、管路形成部材104は、管路104tが上下の排水立て管と同軸になるように、継手本体部102の空間内にセットされる。
【0003】
試験用冶具108は、満水試験時に管路形成部材104が取外された継手本体部102の空間内にセットされる。試験用冶具108は、図11に示すように、上下の円板108eと、円板108eに設けられたパッキン108p(図では上側)と、両円板108eの間隔を増加、あるいは減少させるネジ機構108wと、前記ネジ機構108wのネジを回転させるハンドル108hとを備えている。そして、ハンドル108hによりネジ機構108wを動作させて上下の円板108eの間隔を増加させることで、継手本体部102の空間内に形成された上側開口と下側開口とを上下の円板108eで塞ぐことができる。
即ち、満水試験用継手100を使用することで、排水立て管110の所定の位置で仕切ることができるため、この上側に水を注入して配管の漏れ試験を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−285920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した満水試験用継手100は、満水試験時に使用される試験用冶具108の他に、専用の継手本体部102と、管路形成部材104とが必要となるため、設備コストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の技術的課題は、 排水設備の漏れ試験のための設備コストを低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、排水設備の排水経路を閉塞できるように構成されており、その排水経路を所定範囲で仕切って漏れ試験する際に使用される排水設備の漏れ試験用冶具であって、縮径、あるいは拡径可能に構成されており、縮径状態で前記排水経路に設けられた開口部からその排水経路内に挿入でき、拡径状態で前記排水経路内を閉塞できるように構成された閉塞部材と、前記閉塞部材に連結可能に構成されており、前記開口部の外から縮径状態の前記閉塞部材を前記排水経路の閉塞位置で支えることができる支持部材と、前記閉塞部材に連結可能に構成されており、前記開口部の外から前記支持部材に支えられた前記閉塞部材を拡径方向、あるいは縮径方向に駆動させることができる閉塞部材動作機構とを有しており、前記閉塞部材動作機構と支持部材とは、前記開口部の外からの操作で、拡径後の前記閉塞部材から外せるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、排水経路に設けられた開口部を利用して、閉塞部材を排水経路内に挿入し、その閉塞部材を拡径させて前記排水経路を閉塞することができる。即ち、排水経路に設けられた開口部を利用できるため、従来のように、漏れ試験専用の継手等を設ける必要がなくなる。ここで、開口部、例えば、掃除口等は排水経路の掃除用に一定の間隔で設けられているため、例えば、一つの開口部の位置と別の開口部の位置で前記排水経路を閉塞することで、この範囲の漏れ試験を実施できるようになる。
また、閉塞部材動作機構と支持部材とは、開口部の外からの操作で、拡径後の閉塞部材から外せるように構成されているため、前記排水経路を、例えば、二箇所で閉塞する場合でも閉塞部材のみ2台用意し、閉塞部材動作機構と支持部材とは1台づつ用意すれば良くなる。
このため、従来のように、排水経路の途中に漏れ試験専用の継手を設け、その継手内で試験用冶具により排水経路内を閉塞する構成と比較して、大幅なコスト低減を図ることができる。
【0009】
請求項2の発明によると、閉塞部材は、筒状の弾性体と、前記弾性体の軸方向一端側と、軸方向他端側とにその弾性体と同軸に固定された一対の平板と、前記一対の平板が互いに接近方向、あるいは離隔方向に相対移動可能なように、それらの平板を位置決めする位置決め機構とを備えており、前記位置決め機構が前記閉塞部材動作機構の働きで、前記一対の平板を接近させる方向に動作することで、前記弾性体が拡径方向に変形し、前記位置決め機構が前記一対の平板を離隔させる方向に動作することで、前記弾性体が縮径方向に変形することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明によると、閉塞部材の位置決め機構は、ネジ軸とネジ穴との螺合作用を利用して一対の平板を接近方向、あるいは離隔方向に相対移動させられるように構成されていることを特徴とする。
即ち、閉塞部材動作機構によりネジ軸を軸心回りに回転させることで、一対の平板を接近方向、あるいは離隔方向に相対移動させることができる。このため、閉塞部材の弾性体の拡径量、あるいは縮径量を微調整することが可能になる。
【0011】
請求項4の発明によると、閉塞部材動作機構は、回転電動工具と、前記回転電動工具の回転力を前記閉塞部材の位置決め機構のネジ軸に伝達する回転力伝達部材とを備えていることを特徴とする。
このように、閉塞部材動作機構は、回転電動工具の回転力を利用して閉塞部材の位置決め機構のネジ軸を回転させる構成のため、前記閉塞部材の弾性体の拡径、あるいは縮径作業が容易になる。
請求項5の発明によると、閉塞部材の一方の平板には、ネジ軸が通されるフランジ付きの筒部が設けられており、その筒部のフランジに前記支持部材の先端爪部が係合可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、排水設備の漏れ試験のための設備コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る排水設備の漏れ試験用冶具の全体側面図である。
【図2】排水設備の漏れ試験用冶具で排水立て管を閉塞した状態を表す側面図である。
【図3】排水設備の漏れ試験用冶具の拡径した閉塞部材から閉塞部材動作機構と支持部材とを外した状態を表す側面図である。
【図4】排水設備の漏れ試験用冶具の閉塞部材を表す縦断面図(A図)、A図の部分拡大図(B図)、及び閉塞部材の拡径状態を表す縦断面図(C図)である。
【図5】排水設備の漏れ試験で使用される空気充填装置を表す側面図である。
【図6】排水設備の漏れ試験の手順を表す側面図(A図、B図)である。
【図7】排水設備の漏れ試験の手順を表す側面図(A図、B図)である。
【図8】排水設備の漏れ試験の手順を表す側面図(A図、B図)である。
【図9】排水設備の漏れ試験の手順を表す側面図である。
【図10】従来の満水試験用継手の分解斜視図である。
【図11】従来の満水試験用継手の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、図1〜図9に基づいて本発明の実施形態1に係る排水設備10の漏れ試験用冶具20及びこの漏れ試験用冶具20を使用した排水設備10の漏れ試験方法について説明する。
<排水設備10の概要について>
排水設備10は、図6等に示すように、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラブCSを貫通して各階に設置されている排水管継手12と、集合住宅の高さ方向に配管される排水立て管14と、各階でコンクリートスラブCS上を横方向に配管される排水横枝管16とから構成されている。前記排水設備10は、下階の排水管継手12に排水立て管14の下端部が接続され、さらにその排水立て管14の上端部に上階の排水管継手12の下端部が接続されるように、下から上に順番に積み上げられるように施工される。
ここで、図6等は集合住宅の最上階を表しており、排水立て管14の上端部が最上階立て短管17の下端位置に設けられた連結部17cに接続されている。さらに、排水立て管14の途中位置には、例えば、2階〜3階毎に掃除口付き継手18が設けられている。掃除口付き継手18は、蓋18e付きの掃除口18hを備えており、その掃除口18hから掃除用の洗浄ノズル(図示省略)を挿入できるように構成されている。
即ち、上記排水設備10において排水が流れる部分が本発明における排水経路に相当する。
【0015】
<漏れ試験用冶具20について>
漏れ試験用冶具20は、掃除口付き継手18の掃除口18hを利用して排水設備10の排水経路(排水立て管14)の所定範囲内を漏れ試験するための冶具である。漏れ試験用冶具20は、図1、図2等に示すように、排水立て管14内で、その排水立て管14を気密状態で閉塞するための閉塞部材30と、掃除口18hの外から閉塞部材30を支えられるように構成された支持部材24と、掃除口18hの外から支持部材24に支えられた閉塞部材30を拡径、あるいは縮径動作させられるように構成された閉塞部材動作機構27とから構成されている。
即ち、前記掃除口18hが本発明の排水経路に設けられた開口部に相当する。
【0016】
<閉塞部材30について>
閉塞部材30は、縮径、あるいは拡径可能に構成されており、縮径状態で掃除口18hから排水立て管14内に挿入でき、拡径状態で排水立て管14内を気密状態で閉塞できるように構成されている。閉塞部材30は、図4(A)等に示すように、略車輪状に形成されており、車輪の外周面に相当する位置に、軸方向中央位置が半径方向外側に張り出した略円筒状(樽状)のゴム製の弾性体32が設けられている。そして、前記弾性体32の軸方向一端側(上端側)に上側円板部33がその弾性体32の開口を塞ぐように同軸に固定されている。また、弾性体32の軸方向他端側(下端側)に下側円板部34が同じく弾性体32の開口を塞ぐように同軸に固定されている。上側円板部33と下側円板部34には、互いに対向する面の周縁部分にリング状の角溝33m,34mが形成されており、それらの角溝33m,34mに弾性体32の軸方向両側に形成されたリング状の突条32tが嵌め込まれている。
【0017】
閉塞部材30の上側円板部33には、図4(A)(B)に示すように、中心位置に軸方向上側に突出する肉厚の円筒部33eが形成されている。前記円筒部33eの外周面には、その円筒部33eの軸心を挟んで対向する位置に、前記軸心に対して直角方向に延びる一対の断面角形溝33xが形成されている。これらの断面角形溝33xにより、前記円筒部33eの上端位置には、一対の扁平半円状のフランジ部33fが形成されるようになる。ここで、前記フランジ部33fの端位置には、前記閉塞部材30と後記する空気充填装置40の蓋部材47とをつなぐワイヤ49が連結される連結穴33wが形成されている。
また、上側円板部33の中心位置には、その上側円板部33から円筒部33eにかけて貫通孔33hが軸方向に形成されており、その貫通孔33hにネジ軸35の首部35kが軸心回りに回転可能な状態で通されている。また、貫通孔33hの内壁面にはリング溝(図番省略)が形成されており、そのリング溝に上側円板部33とネジ軸35の首部35k間をシールするシール材33rが装着されている(図4(B)参照)。
前記ネジ軸35の上端位置には、上側円板部33の貫通孔33hよりも大径の頭部35aが設けられており、その頭部35aが上側円板部33のフランジ部33fの上側に配置されている。さらに、ネジ軸35の頭部35aの上面中心には、図1に示すように、後記する閉塞部材動作機構27の断面多角形の縦向き回転軸27jの先端が嵌合する凹部(図示省略)が形成されている。
また、閉塞部材30の下側円板部34には、ネジ軸35の雄ネジ部35wが螺合するように構成された雌ネジ穴34nが貫通状態で形成されている。
【0018】
<閉塞部材動作機構27について>
閉塞部材動作機構27は、回転電動工具(図示省略)と、図1等に示すように、その回転電動工具の回転力を掃除口18hの外側から閉塞部材30のネジ軸35に伝える回転力伝達部材27dとから構成されている。回転力伝達部材27dは、側面横L字形に形成されており、横向き回転軸27yの回転力をジョイント機構(図示省略)を介して縦向き回転軸27jまで伝達できるように構成されている。ここで、横向き回転軸27yは回転電動工具(図示省略)の回転軸と嵌合可能なように断面多角形に形成されており、縦向き回転軸27jは、前述のように、ネジ軸35の凹部(図示省略)と嵌合可能なように断面多角形に形成されている。
このため、回転力伝達部材27dの横向き回転軸27yを前記回転電動工具に連結し、その回転力伝達部材27dの縦向き回転軸27jの先端を閉塞部材30のネジ軸35の凹部(図示省略)に嵌合させた状態で、前記回転電動工具により前記ネジ軸35を正転方向、あるいは逆転方向に回転させることができる。また、閉塞部材30のネジ軸35の凹部に対して回転力伝達部材27dの縦向き回転軸27jを軸方向に移動させることで、掃除口18hの外から両者27j,35の嵌合を容易に解除することができる。
【0019】
<支持部材24について>
支持部材24は、図1に示すように、帯状平板を側面略Z字形に折り曲げ成形したスパナ状の部材であり、その支持部材24の先端部分に閉塞部材30の円筒部33eの断面角形溝33x、及びフランジ部33fと係合可能に構成されたフォーク状の先端爪部24kが設けられている。先端爪部24kの中央位置には、先端側で開放されたU字形の切欠き(図示省略)が形成されており、その切欠きに閉塞部材30における円筒部33eの断面角形溝33xの部分が先端側から嵌め込まれるようになっている。そして、支持部材24の切欠きに閉塞部材30における円筒部33eの断面角形溝33xの部分が完全に嵌め込まれた状態で、その閉塞部材30のフランジ部33fが支持部材24の先端爪部24kによって回り止めされた状態で支えられるようになる。また、支持部材24を閉塞部材30に対してその支持部材24の長手方向に移動させることで、支持部材24の切欠きから閉塞部材30における円筒部33eの断面角形溝33xの部分が相対的に引き抜かれ、支持部材24の先端爪部24kと閉塞部材30の連結が解除される。
即ち、閉塞部材30に対して掃除口18hの外から支持部材24を引き抜くことで、その支持部材24の先端爪部24kと閉塞部材30との連結を解除できるようになる。
【0020】
<漏れ試験用冶具20の動作について>
漏れ試験用冶具20を使用する場合には、先ず、支持部材24の先端爪部24kを閉塞部材30の円筒部33e(断面角形溝33xの部分)に嵌め込み、図1に示すように、閉塞部材30のフランジ部33fを支持部材24の先端爪部24kによって支持する。次に、閉塞部材動作機構27の回転力伝達部材27dの縦向き回転軸27jの先端を閉塞部材30のネジ軸35の凹部(図示省略)に嵌合させる。この状態で、閉塞部材動作機構27の回転電動工具を回転力伝達部材27dの横向き回転軸27yに接続する。
次に、前記回転電動工具を、例えば、正転方向に駆動させることで、閉塞部材30のネジ軸35が正転し、そのネジ軸31の雄ネジ部35wと下側円板部34の雌ネジ穴34nとの螺合作用によって閉塞部材30の上側円板部33に対して下側円板部34が接近する。これにより、図2、図4(C)に示すように、閉塞部材30の弾性体32が軸方向に潰れ、半径方向外側に拡径するように弾性変形する。
また、前記回転電動工具を、逆転方向に駆動させることで、閉塞部材30のネジ軸35が逆転し、そのネジ軸31の雄ネジ部35wと下側円板部34の雌ネジ穴34nとの螺合作用によって閉塞部材30の上側円板部33に対して下側円板部34が離隔するようになる。これにより、図1、図4(A)に示すように、閉塞部材30の弾性体32が軸方向に伸ばされ、弾性体32が縮径するよう弾性変形する。
即ち、上側円板部33と下側円板部34とが本発明の一対の平板に相当し、ネジ軸31の雄ネジ部35wと下側円板部34の雌ネジ穴34nとが本発明の位置決め機構に相当する。
【0021】
<排水設備10の漏れ試験方法について>
次に、図6から図9等に基づいて、漏れ試験用冶具20を使用した排水設備10の最上階の漏れ試験方法について説明する。
先ず、掃除口付き継手18の掃除口18hから蓋18e(図6(A)参照)を取外す。次に、図6(B)に示すように、縮径状態の閉塞部材30を支持部材24の先端部分にセットした状態で、その閉塞部材30を掃除口18hから排水立て管14内に挿入する。このとき、閉塞部材30のフランジ部33fには、空気充填装置40の蓋部材47につながれたワイヤ49が連結されているため、前記閉塞部材30の落下防止が図られるようになる。
次に、図7(A)に示すように、支持部材24により前記閉塞部材30を排水立て管14の閉塞位置で支えた状態で、図7(B)に示すように、回転力伝達部材27dの縦向き回転軸27jを閉塞部材30のネジ軸35に接続し、次に、回転電動工具(図示省略)を回転力伝達部材27dに連結する。そして、この状態で、前記回転電動工具を正転駆動させることで、ネジ軸35が回転し、雄ネジ部35wと雌ネジ穴34nとの螺合作用で閉塞部材30の上側円板部33に対して下側円板部34が接近する。これにより、閉塞部材30の弾性体32が半径方向外側に拡径するように弾性変形して、排水立て管14の閉塞位置が閉塞部材30により気密状態で閉塞される。排水立て管14の閉塞後は、図8(A)に示すように、閉塞部材30から回転力伝達部材27d、及び支持部材24が外されて、排水立て管14の閉塞位置には閉塞部材30のみが残される(図3、図8(B)参照)。
次に、上記した手順と同様な手順で、図8(B)に示すように、最上階立て短管17の上端部分が漏れ試験用冶具20の閉塞部材30によって気密状態で閉塞される。これにより、排水立て管14の掃除口付き継手18よりも下側から最上階立て短管17の上端部分までの間が二台の閉塞部材30によって仕切られるようになる。
【0022】
次に、二台の閉塞部材30によって仕切られた範囲内に、図5、図9に示すように、空気充填装置40によって圧縮空気が充填される。ここで、空気充填装置40は、閉塞部材30によって仕切られた範囲内に空気圧を加える装置であり、掃除口18hを塞ぐ蓋部材47と、蓋部材47の貫通孔に接続されるジョイント部46と、ジョイント部46に接続される圧力計45と、圧力計45の上流側に設けられたバルブ43と、前記バルブ43を空気源(図示省略)に接続するチューブ48とから構成されている。ここで、蓋部材47の内側には、リング付きネジ47rが固定されており、そのリング付きネジ47rに閉塞部材30に一端が連結されたワイヤ49の他端が連結されている。
上記した空気充填装置40の蓋部材47で前記掃除口18hを塞ぎ、その空気充填装置40のバルブ43を開くことで、二台の閉塞部材30によって仕切られた排水立て管14、最上階立て短管17内に空気圧を加えられるようになる。この状態で、一定時間、圧力計45により空気圧を監視することで、排水立て管14の上端部と最上階立て短管17の連結部17cとの間の漏れをチェックすることができる。
【0023】
<本実施形態に係る排水設備10の漏れ試験用冶具20の長所について>
本実施形態に係る排水設備10の漏れ試験用冶具20によると、排水立て管14(排水経路)に設けられた掃除口18hを利用して、閉塞部材30を排水経路内に挿入し、その閉塞部材30を拡径させて排水経路を閉塞することができる。即ち、排水経路に設けられた掃除口18hを利用できるため、従来のように、漏れ試験専用の継手等を設ける必要がない。ここで、掃除口18hは排水経路の掃除用に一定の間隔で設けられているため、例えば、一つの掃除口18hの位置と別の掃除口18hの位置で前記排水経路を閉塞することで、この範囲内の漏れ試験を実施できるようになる。
また、閉塞部材動作機構27(回転力伝達部材27d)と支持部材24とは、掃除口18hの外からの操作で、拡径後の閉塞部材30から外せるように構成されているため、前記排水経路を、例えば、二箇所で閉塞する場合でも閉塞部材30のみ2台用意し、閉塞部材動作機構27と支持部材24とは1台づつ用意すれば良くなる。
このため、従来のように、排水経路の途中に漏れ試験専用の継手を設け、その継手内で試験用冶具により排水経路内を閉塞する構成と比較して、大幅なコスト低減を図ることができる。
【0024】
また、閉塞部材30は、ネジ軸35の雄ネジ部35wと雌ネジ穴34nとの螺合作用を利用して上側円板部33と下側円板部34を接近方向、あるいは離隔方向に相対移動させる構成であるため、閉塞部材30の弾性体32の拡径量、あるいは縮径量を微調整することが可能になる。
また、閉塞部材動作機構27は、回転電動工具の回転力を利用して閉塞部材30のネジ軸35を回転させる構成のため、閉塞部材30の弾性体32の拡径、あるいは縮径作業が容易になる。
【0025】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態における閉塞部材動作機構27は、回転電動工具の回転力を回転力伝達部材27dによって閉塞部材30のネジ軸35に伝達し、そのネジ軸35を回転させる構成である。しかし、前記回転電動工具の代わりに手動式の回転ハンドル等を使用することも可能である。
また、本実施形態では、閉塞部材動作機構27の回転力伝達部材27dと、閉塞部材30を支える支持部材24とを別部材により構成する例を示したが、回転力伝達部材27dと支持部材24とを連結可能な構成とすることも可能である。
また、本実施形態では、閉塞部材30の上側円板部33と下側円板部34とをネジ軸35と雌ネジ穴34nとの螺合作用を利用して接近、あるいは離隔させ、弾性体32を拡径、あるいは縮径させる例を示した。しかし、ネジ軸35と雌ネジ穴34nとを使用する代わりに、例えば、圧縮空気の圧力を利用して、弾性体32を拡径、あるいは縮径させることも可能である。
また、本実施形態では、漏れ試験用冶具20を使用して排水立て管14と最上階立て短管17の漏れ試験を行う例を示したが、排水横枝管16と排水立て管14の所定範囲の漏れ試験を行うことも可能である。
また、本実施形態では、圧縮空気を使用して排水経路の漏れ試験を行う例を示したが、圧縮空気の代わりに、例えば、水を使用して排水経路の漏れ試験を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0026】
12・・・・排水管継手(排水経路)
14・・・・排水立て管(排水経路)
16・・・・排水横枝管(排水経路)
17・・・・最上階立て短管(排水経路)
18h・・・掃除口(開口部)
18・・・・掃除口付き継手
20・・・・漏れ試験用冶具
24・・・・支持部材
27d・・・回転力伝達部材
27・・・・閉塞部材動作機構
30・・・・閉塞部材
31・・・・ネジ軸
32・・・・弾性体
33・・・・上側円板部(平板)
34・・・・下側円板部(平板)
34n・・・雌ネジ穴(位置決め機構)
35・・・・ネジ軸(位置決め機構)
35w・・・雄ネジ部(位置決め機構)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水設備の排水経路を閉塞できるように構成されており、その排水経路を所定範囲で仕切って漏れ試験する際に使用される排水設備の漏れ試験用冶具であって、
縮径、あるいは拡径可能に構成されており、縮径状態で前記排水経路に設けられた開口部からその排水経路内に挿入でき、拡径状態で前記排水経路内を閉塞できるように構成された閉塞部材と、
前記閉塞部材に連結可能に構成されており、前記開口部の外から縮径状態の前記閉塞部材を前記排水経路の閉塞位置で支えることができる支持部材と、
前記閉塞部材に連結可能に構成されており、前記開口部の外から前記支持部材に支えられた前記閉塞部材を拡径方向、あるいは縮径方向に駆動させることができる閉塞部材動作機構とを有しており、
前記閉塞部材動作機構と支持部材とは、前記開口部の外からの操作で、拡径後の前記閉塞部材から外せるように構成されていることを特徴とする排水設備の漏れ試験用冶具。
【請求項2】
請求項1に記載された排水設備の漏れ試験用冶具であって、
前記閉塞部材は、
筒状の弾性体と、
前記弾性体の軸方向一端側と、軸方向他端側とにその弾性体と同軸に固定された一対の平板と、
前記一対の平板が互いに接近方向、あるいは離隔方向に相対移動可能なように、それらの平板を位置決めする位置決め機構とを備えており、
前記位置決め機構が前記閉塞部材動作機構の働きで、前記一対の平板を接近させる方向に動作することで、前記弾性体が拡径方向に変形し、前記位置決め機構が前記一対の平板を離隔させる方向に動作することで、前記弾性体が縮径方向に変形することを特徴とする排水設備の漏れ試験用冶具。
【請求項3】
請求項2に記載された排水設備の漏れ試験用冶具であって、
前記閉塞部材の位置決め機構は、ネジ軸とネジ穴との螺合作用を利用して前記一対の平板を接近方向、あるいは離隔方向に相対移動させられるように構成されていることを特徴とする排水設備の漏れ試験用冶具。
【請求項4】
請求項3に記載された排水設備の漏れ試験用冶具であって、
前記閉塞部材動作機構は、
回転電動工具と、
前記回転電動工具の回転力を前記閉塞部材の位置決め機構のネジ軸に伝達する回転力伝達部材とを備えていることを特徴とする排水設備の漏れ試験用冶具。
【請求項5】
請求項3又は請求項4のいずれかに記載された排水設備の漏れ試験用冶具であって、
前記閉塞部材の一方の平板には、前記ネジ軸が通されるフランジ付きの筒部が設けられており、その筒部のフランジに前記支持部材の先端爪部が係合可能に構成されていることを特徴とする排水設備の漏れ試験用冶具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−197652(P2012−197652A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64046(P2011−64046)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(390013516)株式会社小島製作所 (19)
【Fターム(参考)】