説明

排泄物処理材およびその製造方法

【課題】 少ない芳香物質添加量で長期間優れた悪臭解消効果を発揮できる排泄物処理材と、そのような排泄物処理材の製造方法を提供する
【解決手段】 吸水性を有する基材14の表面に芳香物質を包接した環状オリゴ糖18を配設しているので、製造段階や流通段階において排泄物処理材10から芳香物質が揮発するのを防止できると共に、芳香物質による悪臭のマスキングのみならず環状オリゴ糖18による悪臭の吸着も同時に実行することができる。したがって、少ない芳香物質使用量であっても極めて高い悪臭解消効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜、愛玩動物または実験用動物等の排泄物処理材に関し、特に排泄物の悪臭を効果的に解消することが可能な排泄物処理材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、愛玩動物または実験用動物等の排尿・排便などの排泄物処理を行うため、便床に排泄物処理材を敷き詰めて、そこに排泄させ、排泄後には、糞尿の水分によって固まった排泄物処理材を取り除き、これをトイレに流すか若しくは可燃ゴミとして焼却処分することが一般的に行われている。このため、排泄物処理材には、愛玩動物等が排泄する尿などを素早く吸収する高い吸水能力と排泄物から生ずる悪臭を効果的に解消する防臭能力、更には、使用後の処理の容易性などが要求されている。
【0003】
このうち排泄物から生ずる悪臭を解消する技術として、溶媒に炭素数2以下のアルコールを用いた芳香剤溶液を粒状ゼオライトに含浸させたのち乾燥することにより芳香剤を粒状ゼオライトに担持させたペット用排泄物処理材(例えば、特許文献1参照。)や、植物繊維又は植物粉を造粒して粗粒体を得、その表面に液状の香料と香料揮発抑制材とを噴霧し、粗粒体の表面部に香料含浸層を形成した動物用排泄物処理材(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【0004】
これらの技術によれば、排泄物から生ずる悪臭を芳香剤や香料などの芳香物質でマスキングして解消することができる。
【特許文献1】特開2000−236766号公報
【特許文献2】特開2004−33047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、芳香剤溶液含浸後の乾燥を短時間で行うべく芳香剤の溶媒としてアルコールを使用する前者の技術では、気化したアルコールへの引火や製造環境の悪化を防止するため、製造の際に気化したアルコールを回収する回収装置を設けなければならない。かかる装置の設置はコストアップの要因となり、経済的に排泄物処理材を製造することができないという問題があった。
【0006】
一方、後者の技術では、製造段階や流通段階において、香料と香料揮発抑制材とが接触していない部分、換言すれば香料揮発抑制材が作用していない部分から香料が揮発しており、ユーザーが実際に使用する際には既に前記部分の香気成分の多くが亡失している。このため期待する悪臭解消効果が得られないという問題があった。
【0007】
さらに、両技術共に微量とはいえ常に芳香物質が揮発していることから、ある種の動物では芳香物質を嫌い当該排泄物処理材を忌避する傾向を示すものもある。また、このように常時芳香物質が揮発している排泄物処理材では期待する悪臭解消効果が得られる期間(すなわち有効使用期間)が短く、芳香物質による悪臭のマスキング効果を長期的に維持しようとした場合、多量の芳香物質を添加しなければならず、経済的でないという問題があった。
【0008】
それゆえ、この発明の主たる課題は少ない芳香物質添加量で長期間優れた悪臭解消効果を発揮できる排泄物処理材と、そのような排泄物処理材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明は、「粒状の基材(14)の表面に、芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)が配設されている」ことを特徴とする排泄物処理材(10)である。
【0010】
この発明では、芳香物質が環状オリゴ糖(18)に包接されている(閉じ込められている)ので、製造段階や流通段階で排泄物処理材(10)から芳香物質が揮発する心配はない。また、当該排泄物処理材(10)を便床(12)に敷き詰めた状態においても排泄物処理材(10)から芳香物質が揮発しないので、芳香物質を嫌い動物が排泄物処理材(10)を忌避するのを防止することができる。
【0011】
そして、芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)に動物の糞尿が接触し、糞尿から多量の水分が与えられると、環状オリゴ糖(18)の中に包接されている芳香物質が水の分子と置き換わる。つまり環状オリゴ糖(18)から芳香物質が放出され揮発するようになる。このため排泄物から生ずる悪臭が芳香物質によってマスキングされるようになり当該悪臭を解消することができる。
【0012】
さらに、芳香物質を放出して水の分子を取り込んだ環状オリゴ糖(18)に悪臭の分子が接触すると、環状オリゴ糖(18)に取り込まれた水の分子が悪臭の分子に置き換わる。つまり、悪臭の分子が環状オリゴ糖(18)に閉じ込められ脱臭されるようになる。
【0013】
このように、基材(14)の表面に芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)を配設することによって、芳香物質による悪臭のマスキングのみならず環状オリゴ糖(18)による悪臭の吸着・脱臭も同時に実行することができる。
【0014】
請求項2に記載した発明は、請求項1記載の排泄物処理材(10)において「芳香物質が樹脂精油、ハーブ抽出成分および茶葉抽出成分から選ばれる少なくとも1種である」ことを特徴とするもので、このように芳香物質として植物由来成分を用いることによって人や動物に対する安全性が高くなると共に、悪臭のマスキング効果のみならず、抗菌効果や心身沈静効果などの副次的な効果を与えることができるようになる。また、特に前記植物由来成分がフラボノイドやクロロフィル等を含むものである場合には、これらが消臭効果を発揮する、つまり悪臭をマスキングするのではなく悪臭自体を消去することができるので、悪臭の解消効果をより一層増強させることができる。
【0015】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載の排泄物処理材(10)において、「基材(14)が、親水性の有機短繊維(14a)と高吸水性樹脂(14b)とで構成されている」ことを特徴とするもので、これにより、使用済みの排泄物処理材(10)を何ら特別な処理方法を採ることなく一般の可燃ゴミとして普通に焼却処分することができる。
【0016】
請求項4に記載した発明は、基材(14)として例えば有機短繊維(14a)のように水を加えて造粒するものを用いる場合の排泄物処理材(10)の製造方法であって、「水分を含んだ粒状の基材(14)の表面に、芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)の粉末と再湿糊(16)の粉末とをまぶし付け、然る後、これらを加熱して基材(14)に含まれる水分を除去する」ことを特徴とする。また、請求項5に記載した発明は、主に基材(14)として例えばシリカゲルやゼオライトやベントナイト等のようにそのままの形で利用可能なものを用いる場合の排泄物処理材(10)の製造方法であって、「粒状の基材(14)の表面に、芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)の粉末と再湿糊(16)の溶液、または芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)の粉末と再湿糊(16)の粉体と水とをスプレーし、然る後、これらを加熱して基材(14)表面の水分を除去する」ことを特徴とする。
【0017】
これらの発明では、まず、水分が介在する状態で基材(14)の表面に芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)と再湿糊(16)とを付着させる。すると、前記水分が選択的に再湿糊(16)に吸収され(再湿糊(16)が溶液の場合には水分を保持したまま)、再湿糊(16)が軟化して粘着性を帯び、基材(14)と環状オリゴ糖(18)とを接合する。
【0018】
そして、これを加熱して乾燥させると、基材(14)に含まれる(或いは基材(14)の表面に存在する)水分が短時間のうちに蒸発して再湿糊(16)が固化し、芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)が再湿糊(16)を介して基材(14)の表面に強固に固着するようになる。
【0019】
ここで、芳香物質は環状オリゴ糖(18)に包接されているので、芳香物質を付着させた基材(14)を加熱しても芳香物質が揮発して亡失する心配はない。換言すれば、基材(14)に付着させた芳香物質の殆ど全てを基材(14)表面に定着させることができる。
【0020】
したがって、基材(14)に対する芳香物質付着量が少ない場合であっても基材(14)の表面には確実に芳香物質が配設されるようになり、(上述したように)その後、環状オリゴ糖(18)に多量の水分が与えられると、環状オリゴ糖(18)の中に包接されている芳香物質が揮発して悪臭をマスキングすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、吸水性を有する基材の表面に芳香物質を包接した環状オリゴ糖を配設しているので、製造段階や流通段階において排泄物処理材から芳香物質が揮発するのを防止できると共に、芳香物質による悪臭のマスキングのみならず環状オリゴ糖による悪臭の吸着も同時に実行することができる。したがって、少ない芳香物質使用量であっても極めて高い悪臭解消効果を得ることができる。
【0022】
また、前記芳香物質として植物由来成分を用いることによって人や動物に対する安全性が高くなると共に、悪臭のマスキング効果のみならず、心身沈静効果や抗菌効果などの副次的な効果を与えることができる。
【0023】
さらに、芳香物質を環状オリゴ糖に包接させているので、製造時に加熱を行っても芳香物質が揮発して亡失する心配はない。それ故、基材に芳香物質を配設した場合であってもこれを加熱して乾燥時間を短縮することができ、効率的且つ経済的に排泄物処理材を製造することができる。
【0024】
したがって、少ない芳香物質添加量で長期間優れた悪臭解消効果を発揮できる排泄物処理材と、そのような排泄物処理材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。本発明における一実施例の排泄物処理材(10)は、図1に示すように愛玩動物用の便床(12)などに敷設して使用するものであり、主として粒状の基材(14)と、再湿糊(16)を介して基材(14)の表面全体に固着させた環状オリゴ糖(18)とで構成されている(図2参照)。なお、後述するように、この環状オリゴ糖(18)には芳香物質が包接されている。
【0026】
基材(14)は、動物の排泄物(すなわち糞尿)の水分を吸収して固定するためのものであり、親水性の有機短繊維(14a)と高吸水性樹脂(14b)とに水を加えて造粒したもの或いは多孔質構造の粒状ゼオライトや粒状シリカゲルなどで構成されている。このうち基材(14)として親水性の有機短繊維(14a)と高吸水性樹脂(14b)とに水を加えて造粒したものを用いた場合には、使用済みの排泄物処理材(10)を何ら特別な処理方法を採ることなく一般の可燃ゴミとして普通に焼却処分することができる。このため、以下の説明では基材(14)として親水性の有機短繊維(14a)と高吸水性樹脂(14b)とに水を加えて造粒したものの例を中心に説明する。
【0027】
この基材(14)の平均粒径は、猫を想定した場合においては3〜10mmの範囲であることが好ましい。平均粒径が3mm未満である場合には、排泄物処理材(10)の1粒当たりの重量が軽くなるので、特に猫が排泄後に排泄物を隠す所謂砂かき行為を行う際に排泄物処理材(10)が周囲に飛散したり、静電気などによって排泄物処理材(10)が動物の体毛に付着し、排泄物処理材(10)が便床(12)から簡単に持ち出されて便床(12)の周囲を汚すようになるからである。また逆に、平均粒径が10mmより大きい場合には、排泄物処理材(10)の比表面積が小さくなり、排泄物の吸収および脱臭効率が低下したり、猫などの愛玩動物が排泄物処理材(10)の上に乗って排泄することを嫌がる傾向が出てくるからである。なお、ハムスターやモルモットなどの小動物の使用を想定した場合においては、基材(14)を更に小粒(例えば、2mm以下)とする方がよい。
【0028】
有機短繊維(14a)は、排泄物処理材(10)の骨格を形成するとともに、排泄物処理材(10)に接触した尿などの液体を毛細管現象によって基材(14)内部へと移動させ、かつ、自身でもその液体を保持できる親水性の繊維部材である。
【0029】
この有機短繊維(14a)としては、木材パルプ,非木材パルプ,紙を粉砕した紙粉,パルプや紙を加工するときに発生する粉塵およびパルプ製造や製紙の工程において発生する繊維質を含んだスラッジ類などの製紙系短繊維類、トウモロコシの芯やコーヒー豆の抽出くずを粉砕した植物系繊維類、コットンや麻などの天然繊維を短く裁断したもの、レーヨンやビニロンなどの親水性化学繊維を短く断裁したもの、樹木や竹の破砕物、ケナフ・笹など草葉の破砕物等を用いることができる。また、これらの繊維類には少量のタルクやベントナイト、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機物が含まれていても差し支えない。
【0030】
高吸水性樹脂(14b)は、有機短繊維(14a)の毛細管現象によって基材(14)内を移動する尿などの液体を吸収すると共にこれを固定する高分子である。
【0031】
この高吸水性樹脂(14b)としては、自重の数十倍〜数百倍の水を吸収するとともに膨潤し、且つ保水時に粘着性を発現させるデンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物,デンプン−アクリル酸グラフト共重合体の中和物,架橋カルボキシメチルセルロース,架橋ポリビニルアルコール,アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体のケン化物,架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体および部分中和ポリアクリル酸塩架橋体などの樹脂が好適である。とりわけ、入手の容易さ、および吸水性能やゲル強度の安定性などの観点から、反応性基としてカルボキシル基などを有する部分中和ポリアクリル酸塩架橋体の高吸水性樹脂が最も好適である。
【0032】
また、この高吸水性樹脂(14b)の純水に対する吸水性能は、少なくとも50ml/gであることが好適であり、更に好ましくは100〜1000ml/gの範囲である。吸水性能が50ml/g未満の場合には、基材(14)を有機短繊維(14a)のみで構成した場合と、基材(14)を有機短繊維(14a)および高吸水性樹脂(14b)で構成した場合とにおける夫々の吸水性能に有意差がなくなり、高吸水性樹脂(14b)添加の効果が現れなくなるからである。
【0033】
さらに、この高吸水性樹脂(14b)はゲル強度の高いものであることが好ましい。高吸水性樹脂(14b)のゲル強度が低いものだと、当該樹脂(14b)を微粉にして基材(14)に配合した際、尿吸収後に当該樹脂(14b)のゲルが分解して基材(14)における尿の保持効果が低下するようになり、基材(14)に保持された尿が温度変化等によって基材(14)の外へと蒸発・放散して悪臭が漂うようになるからである。
【0034】
なお、基材(14)を構成する有機短繊維(14a)と高吸水性樹脂(14b)との混合割合は重量比で3:7〜9:1の範囲であることが好ましく、より好ましくは、4:6〜8:2の範囲である。この範囲の混合割合よりも有機短繊維(14a)の混合割合が少なくなると、基材(14)の機械的強度が弱くなるため排泄物処理材(10)が崩壊しやすくなり、逆に、この範囲の混合割合よりも高吸水性樹脂(14b)の混合割合が少なくなると、尿が十分に吸収されなくなるからである。
【0035】
再湿糊(16)は、尿などの液体と接触することによって粘着性を発現する高分子で構成されており、環状オリゴ糖(18)を基材(14)の表面に固着させると共に、排泄物を吸収した処理材(10)どうしを固めるものである。
【0036】
この再湿糊(16)を構成する高分子としては、にかわ,アラビアガム,グアガム,デキストリン,澱粉,ポリビニルアルコール,酢酸ビニル,アクリル系接着剤,ポリアクリルアミド,ポリエチレンオキサイド,カルボキシメチルセルロースおよびこれらの変性物などを単独または併用で使用するのが好適である。
【0037】
また、再湿糊(16)によって基材(14)表面に構成される薄膜層の厚みは、10〜500μmの範囲であることが好ましい。薄膜層の厚みが10μm未満の場合には、再湿糊(16)が粘着性を発現した際の粘着力が弱くなり、逆に、500μmより厚くした場合には、薄膜層の粘着力が強くなりすぎるので、愛玩動物などが砂かき行為を行なう際に、排泄物処理材(10)が愛玩動物などの足に付着して便床(12)から持ち出されやすくなると共に、例えば水洗トイレなどに流して廃棄処分する際に、排泄物処理材(10)が水中で崩壊し難くなり配管を詰まらせるようになるからである。
【0038】
環状オリゴ糖(18)は、複数のブドウ糖が環状につながった糖質であり、デンプン類に微生物酵素を作用させて製造される。この環状オリゴ糖(18)は、分子の中心に空洞を有しており、物理的な引力によってこの空洞に化合物を取り込む(すなわち包接する)機能を有する。
【0039】
ここで、本発明ではこの環状オリゴ糖(18)に、排泄物から生ずる悪臭をマスキングする芳香物質を包接させたものを用いる。芳香物質は一般的に揮発性が高く取扱いが難しいが、このように環状オリゴ糖(18)に包接させることによって260℃程度の高温まで揮発を抑制することができるようになる。
【0040】
なお、この環状オリゴ糖(18)としては、入手のしやすさ等を考慮するとD−グルコースが環状に6個つながったα−シクロデキストリン、同7個つながったβ−シクロデキストリン、同8個つながったγ−シクロデキストリンおよびこれらの誘導体を用いるのが好適である。
【0041】
さらに、環状オリゴ糖(18)に包接させる芳香物質は化学合成したものを用いても良いが、樹脂精油、ハーブ抽出成分および茶葉抽出成分から選ばれる少なくとも1種を用いるのがより好ましい。このように芳香物質として植物由来成分を用いることによって人や動物に対する安全性が高くなると共に、悪臭のマスキング効果のみならず、心身沈静効果や抗菌効果などの副次的な効果を与えることができるようになるからである。また、特に前記植物由来成分がフラボノイドやクロロフィル等を含むものである場合には、これらが消臭効果を発揮する、つまり悪臭をマスキングするのではなく悪臭自体を消去することができるので、悪臭の解消効果をより一層増強させることができる。
【0042】
次に本発明の排泄物処理材(10)の製造方法について説明する。
【0043】
本発明の排泄物処理材(10)を製造する際には、まず、有機短繊維(14a)、高吸水性樹脂(14b)および必要に応じて糊材を所定の割合で混ぜ、攪拌機にて十分に攪拌・混合しながら少量の水をできるだけ均一になるように添加して粘土状の混合材料を得る。なお、ここでいう糊材とは、有機短繊維(14a)どうし、高吸水性樹脂(14b)どうしあるいは有機短繊維(14a)と高吸水性樹脂(14b)とを互いに接合するためのものであり、でんぷんやPVAなどがこれに該当する。また、混合材料は成形性を確保するため、その含水率が概ね30〜50重量%程度となるようにしている。
【0044】
続いて、この混合材料を5〜10mm程度の口径を有する成形孔が多数穿設されているダイスに入れ、加圧部材で加圧して前記成形孔から棒状にて押し出し、これをダイスの押出面に沿って動くカッター或いはダイスの下に設けたカッターにて長さ5〜10mm毎に切断して粒状化した基材(14)を得る。
【0045】
続いて、得られた基材(14)を機械的に攪拌あるいはトレイ上で転動させながら再湿糊(16)の粉末と芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)の粉末とをまぶし付ける。すると、基材(14)の水分が選択的に再湿糊(16)に吸収され、再湿糊(16)が軟化して粘着性を帯びるようになる。その結果、粘着性を発現した再湿糊(16)を介して基材(14)と環状オリゴ糖(18)とが接合するようになる。
【0046】
なお、基材(14)として多孔質構造の粒状ゼオライトや粒状シリカゲルやベントナイトなどを用いる場合には、上述した基材(14)の造粒工程を省くと共に、基材(14) を機械的に攪拌あるいはトレイ上で転動させながら、その表面に芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)粉末と再湿糊(16)の溶液、または芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)粉末と再湿糊(16)の粉末と水とをスプレーする。つまりこれらの基材(14)では基材(14)自体が水分を含んでいないため、その表面に再湿糊(16)と芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)とを配設する際、同時に水分を与えるようにする。すると、上述の場合と同様に再湿糊(16)を介して基材(14)と環状オリゴ糖(18)とが接合するようになる。
【0047】
そして、熱風乾燥機や赤外線ヒータなどの加熱乾燥手段を用い、粘着性が発現した再湿糊(16)を介してその表面に環状オリゴ糖(18)を接合させた基材(14)を、100℃〜250℃程度に加熱して乾燥する。すると、基材(14)の水分が短時間のうちに蒸発し、基材(14)の表面全体に芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)が配設された排泄物処理材(10)が完成する。
【0048】
ここで、本実施例の排泄物処理材(10)では、芳香物質が環状オリゴ糖(18)に包接されている(閉じ込められている)ので、芳香物質を付着させた基材(14)を加熱しても芳香物質が揮発して亡失する心配はない。それ故、基材(14)に芳香物質を配設した場合であってもこれを加熱して乾燥時間を短縮することができ、効率的且つ経済的に排泄物処理材(10)を製造することができる。また、基材(14)に付着させた芳香物質の殆ど全てを基材(14)表面に定着させることができる。
【0049】
次に本発明の排泄物処理材(10)の作用について説明する。本発明の排泄物処理材(10)を愛玩動物用の便床(12)に敷き詰める(図1参照)。本実施例の排泄物処理材(10)によれば、芳香物質が環状オリゴ糖(18)に包接されているので、当該排泄物処理材(10)を便床(12)に敷き詰めた状態では排泄物処理材(10)から芳香物質が揮発しない。このため、芳香物質を嫌い動物が排泄物処理材(10)を忌避するのを防止することができる。
【0050】
そして、排泄物処理材(10)を敷設した便床(12)に向けて動物が排便すると、糞尿と接触した再湿糊(16)が湿潤状態となって粘着性を発現させるとともに、基材(14)を構成する有機短繊維(14a)の毛細管現象によって基材(14)の内部へ向けて移動する。そして、基材(14)内へと移動した尿は有機短繊維(14a)および高吸水性樹脂(14b)にて吸収され、且つ固定される。
【0051】
ここで特筆すべきは、本実施例の排泄物処理材(10)では、芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)に動物の糞尿が接触してこれら糞尿から多量の水分が与えられると、環状オリゴ糖(18)の中に包接されている芳香物質が水の分子と置き換わる。つまり芳香物質が放出され揮発するようになる。このため排泄物から生ずる悪臭が芳香物質によってマスキングされるようになり当該悪臭を解消することができる。
【0052】
さらに、芳香物質を放出して水の分子を取り込んだ環状オリゴ糖(18)に悪臭の分子が接触すると、環状オリゴ糖(18)に取り込まれた水の分子が悪臭の分子に置き換わる。つまり、悪臭が環状オリゴ糖(18)に閉じ込められ脱臭されるようになる。
【0053】
このように、吸水性を有する基材(14)の表面に芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)を配設することによって、芳香物質による悪臭のマスキングのみならず環状オリゴ糖(18)による悪臭の吸着も同時に実行することができる。
【0054】
なお、上述の実施例では、再湿糊(16)を介して基材(14)の表面に芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)を配設する場合を示したが、少なくとも基材(14)の表面に芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)を配設できるのであれば、その製造方法やそれによって得られる排泄物処理材(10)の態様は如何なるものであってもよく、例えば有機短繊維(14a)と高吸水性樹脂(14b)とに水を加えて造粒する際に芳香物質を包接した環状オリゴ糖(18)を加え、基材(14)全体に当該環状オリゴ糖(18)を配設するようにしてもよい。
【0055】
また、必要に応じて染料や顔料などを用い、排泄物処理材(10)を所定の色に着色するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例の排泄物処理材の使用態様を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例の排泄物処理材を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
(10) 排泄物処理材
(12) 便床
(14) 基材
(14a) 有機短繊維
(14b) 高吸水性樹脂
(16) 再湿糊
(18) [芳香物質を包接した]環状オリゴ糖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の基材の表面に、芳香物質を包接した環状オリゴ糖が配設されていることを特徴とする排泄物処理材。
【請求項2】
前記芳香物質が樹脂精油、ハーブ抽出成分および茶葉抽出成分から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の排泄物処理材。
【請求項3】
前記基材が、親水性の有機短繊維と高吸水性樹脂とで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排泄物処理材。
【請求項4】
水分を含んだ粒状の基材の表面に、芳香物質を包接した環状オリゴ糖の粉末と再湿糊の粉末とをまぶし付け、
然る後、これらを加熱して前記基材に含まれる水分を除去することを特徴とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項5】
粒状の基材の表面に、芳香物質を包接した環状オリゴ糖の粉末と再湿糊の溶液、または芳香物質を包接した環状オリゴ糖の粉末と再湿糊の粉末と水とをスプレーし、
然る後、これらを加熱して前記基材表面の水分を除去することを特徴とする排泄物処理材の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−187208(P2006−187208A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381817(P2004−381817)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(591230480)フジライト工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】