説明

排熱回収ボイラ

【課題】約650℃で約50m/s以上の高温高流速のガスタービン排ガスの旋回流によって励起される伝熱管パネルの振動を抑制を図りながらHRSGの安定運用を可能とする排熱回収ボイラを提供することにある。
【解決手段】 例えば約650℃で約50m/s〜100m/sのような高温高流速のガスタービン排ガス11が排熱回収ボイラ内で旋回流を形成して、該旋回流によって伝熱管パネル13AL〜13CRが振動を励起されようとする場合に、排ガス1の流れに直交する方向の配置された伝熱管パネル13AL〜13CRの隣接する2つのパネル同士を連結する第2の連結部材52A、52B、52C又は53A、53Bは、隣接する2つの伝熱管パネル13AL〜13CR同士の相対変位に応じて1つのピン26又は2つのピン25、25により、変位自由度を変化させた構成としているので、全伝熱管パネル13AL〜13CRの安定した振動モードを形成して十分な振動エネルギー吸収効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱回収ボイラ(HRSG)に関し、特にガスタービンからの高温高速の排ガスの流れにより励振される排熱回収ボイラの伝熱管パネルの防振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
急増する電力需要に応えるために、高効率発電の一環として、最近複合発電プラントが注目されている。この複合発電プラントはまず、ガスタービンによる発電を行うとともに、ガスタービンから排出される排ガス中の熱を排熱回収装置(排熱回収ボイラ)によって回収し、この排熱回収ボイラで発生した蒸気により、蒸気タービンを駆動させて発電するものである。
【0003】
この複合発電プラントは、ガスタービンによる発電と蒸気タービンによる発電を同時に行うことができるために、発電効率が高い上にガスタービンは負荷応答性に優れており、急激な電力需要の上昇、下降にも充分対応し得る負荷追従性に優れた利点もあり、特にいわゆる毎日起動停止(Daily Start Stop)運転や、週末起動停止(Weekly Start Stop)運転を行うプラントには有効である。
【0004】
ところが、この複合発電プラントにおいては、LNG、灯油などのクリーンな燃料を使用するので、SOx量やダスト量は少なくなるが、ガスタービンの燃焼においては酸素量が多く、高温燃焼を行うために、排ガス中のNOx量が増加するので、脱硝装置を内蔵した排熱回収ボイラが用いられている。
【0005】
図11には脱硝装置が配置された複合発電プラントの概略系統図を示す。図11において、ガスタービン1からの高温高速の排ガス11は排熱回収ボイラ(HRSG)ダクト12に設置された過熱器3、第1の蒸発器4、脱硝装置5、第2の蒸発器6、節炭器7に順次に接触して熱交換される。また第1の蒸発器4と第2の蒸発器6からの蒸気を含む水が管路28aと管路28bから汽水分離ドラム8にそれぞれ送られ、該汽水分離ドラム8から分離された蒸気は飽和蒸気管37を経て過熱器3でさらに過熱された後、主蒸気管31を経由して蒸気タービン9を駆動する過熱蒸気として利用される。蒸気タービン9で用いられた蒸気は復水器10で水Wに戻され、給水管路32に配置された復水ポンプ30により節炭器7に循環され、節炭器7でガスタービン1からの排ガス11より予熱されてドラム8内に供給される。ドラム8内の水は降水管33を通って下降し、管路35a、35bを経て蒸発器4、6へ導入され、その後、管路28a、28bを経てドラム8内に戻る。主蒸気管31に接続されたタービンバイパス管38は、蒸気タービン9をバイパスして蒸気を直接復水器10に導いても良い。
【0006】
また、図11には、蒸気タービン9への蒸気の流量を調節する蒸気タービン加減弁39、蒸気タービン9への蒸気の供給により蒸気のバイパス量を調節するタービンバイパス弁40および排ガスダクト12のダンパ41が設けられている。
【0007】
以上の説明は、複合発電プラントにおける高温高速の排ガス11、給水W及び蒸気の各流れの概要を説明したものであるが、一般に、排熱回収ボイラ(HRSG)内には、過熱器3、蒸発器4、6及び節炭器7等の熱交換器が組み込まれて、排ガス11の排熱を回収するとともに排ガス11の脱硝を行うために脱硝装置5が配置されている。
【0008】
図12には排熱回収ボイラ(HRSG)内に配置される熱交換器を構成する伝熱管パネル13の斜視図を示している。該伝熱管パネル13は、前記図11の過熱器3、第1の蒸発器4、第2の蒸発器6及び節炭器7等の伝熱面を構成する熱交換器であり、上部、下部管寄せ17、17とそれらの間に多数の伝熱管22を接続し、伝熱管22の外周には排ガス11からの熱を吸収し易くしたフィン23が螺旋状に巻き付けられ、溶接接続されたフィンチューブ24からなる。このような伝熱管パネル13が図12に示す例では、パネル面をガス流れに直交する方向に向けて3つ伝熱管パネル13を一ユニットとして、このユニットを複数並べて配置し、これらをガス流れに直交するボイラ左右方向の水平サポート19とガス流れ方向に沿った連結金具18と水平サポート端部補強板20(図12には図示せず。図19に示すように水平サポート端部補強板20は1つの伝熱管パネル13の並列位置にある2つの水平サポート19間を連結し、2つの隣接伝熱管パネル13の補強板20同士を連結する)で束ねている。
【0009】
3列の伝熱管22を千鳥配置する伝熱管パネル13の横断面図を図13に示し、図14に図13の伝熱管パネルの側面図と、図15に図13の伝熱管パネル13の上下に管寄せを接続する前の状態の側面図を示している。
【0010】
これら図13、図14及び図15の断面図、側面図及び組み立て前の側面図に示す構成からなるフィンチューブ24(伝熱管22とフィン23からなる)をハニカムサポート29(図13)で束ね、さらにハニカムサポート29の外側を連結金具18、水平サポート19及び補強板20(図17〜図20参照)で束ねて一伝熱管パネル13として用いる例である。ここでは、各伝熱管パネル13は伝熱管22とその回りに螺旋状に溶接されるフィン23からなるフィンチューブ24を備え、このフィンチューブ24を2列また3列千鳥配置した例を示している。
【0011】
3列のフィンチューブ24を一伝熱管パネルユニットとして製造する場合には、上部、下部管寄せ17、17の間に図13に示すようにフィンチューブ24の上下にそれぞれ波板からなるハニカムサポート29の互いに接触する部分の要所を溶接接続して溶接部Yとする。
【0012】
図16にHRSGの鳥瞰図を示す。HRSGは、ダクト12の内部に伝熱管パネル13を収納した蒸気発生器である。ダクト12の内部には、ガスタービン(図示せず)からの高温高速の排ガス11が流入され、伝熱管パネル13で熱吸収されて比較的低温になったガスが煙突14から排出される。
【0013】
図17にHRSGの排ガス入口部の側面図を示す。また図18には図17のA−A線断面図を示し、図19には図17のB−B線断面図を示し、例えば伝熱管パネル13Aは排ガス11の流れガスに直交する方向に左、中央、右と3列並列配置された例を示しており、伝熱管パネル13AL、伝熱管パネル13AM、伝熱管パネル13ARからなる。なお、伝熱管パネル13A、13B、13Cをガスタービンからの排ガス11の流れ方向に沿って順次配置する。
【0014】
また各伝熱管パネル13AL、伝熱管パネル13AM、伝熱管パネル13ARはダクト12の前後方向の連結金具18とダクト12の横断方向に水平サポート19がそれぞれ複数段配置されている。連結金具18は水平サポート19の端部に設けられている。
【0015】
また各伝熱管パネル13AL、伝熱管パネル13AM、伝熱管パネル13ARは上部管寄せ17AL、17AM、17ARにそれぞれ吊下げ支持され、また伝熱管パネル13AL、伝熱管パネル13AM、伝熱管パネル13ARは下部管寄せ17AL、17AM、17ARにそれぞれ接続している。また、ダクト12は架構16を介して地面15に支持されている。
【0016】
伝熱管パネル13A、13B、13Cには、約650℃で約20m/sの高温高流速ガス11が作用して振動する。この振動を抑制するため、従来、伝熱管パネル13A、13B、13Cをガスタービンからの排ガス(ガス流れ)11の流れる方向に沿った(前後)方向に連結する金具18を設置していた(特開2000−291901号公報参照)。この連結金具18による伝熱管パネル13A、13B、13Cの前後方向の連結状態を、図17とは異なる方向から表示したものを、図18(図17のA−A線断面図)及び図19(図17のB−B線断面図)に示す。
【0017】
図19に示すように、水平サポート19の端部には補強板20が設置されており、この補強板20にピン21を介して連結金具18が設置されている。図19に示す伝熱管パネル13AL、13AM、13ARに、ガスタービン1からの約650℃で約20m/sの高温高流速ガス11が作用した場合の伝熱管パネル13AL、13AM、13ARの変形状態を図20に示す。
【0018】
排ガス11の流れは、均等流ではなく旋回流であり、これが各伝熱管パネル13AL、13AM、13ARの間隙である圧力損失の小さい部分に流れ込むことが振動のトリガとなり、排ガス11の流れに対して左右方向に連結されていない伝熱管パネル13AL、13AM、13ARの振動が除々に大きくなる。また、この振動により、連結金具18の変形が大きくなり、連結金具18の損傷や破断につながるとともに、伝熱管パネル13AL、13AM、13AR同士が接触して(図20に点線サークルSで示す)により伝熱管パネル13AL、13AM、13ARに損傷が生じることが問題であった。
【0019】
このような従来の問題点を解決すべく、HRSG内での排ガス11の流れに対して左右方向にも連結金具18を設けることが考えられるが、単純に前記左右方向を連結する金具18を設けるだけでは、全伝熱管パネル13AL、13AM、13AR;13BL、13BM、13BR;13CL、13CM、13CRの安定した振動モードを形成できず、連結金具18による十分な振動吸収ができないことが問題であった。
【0020】
また、本出願人が先に出願した発明(特許文献1)では排ガス11の流れの前後方向に配置される一対の伝熱管パネル同士を連結金具で連結することで、伝熱管パネル群の剛性を高めることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2000−291901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
近年、ガスタービンが大型化して、HRSG に流入する排ガスは、従来の約20m/sの流速に比べて遥かに高速流である約50m/sで、しかも約650℃という高温ガスとなっている。そのため、HRSG内で高速高温の排ガス11に偏流が生じると、100m/sにもなる高速ガス流が部分的に発生する場合がある。
【0023】
そのため、上記したように図18、図19記載の伝熱管パネル構成では、前記約650℃で約50m/s以上、局所的には約100m/sの高温高速流のガスタービン排ガス11が旋回流となって作用した場合に図20に示すように伝熱管パネルの振動を抑制することができないことがあり、また、特許文献1記載の方法では剛性が高くなっても高温高速の排ガス流による変形防止を達成させることはできない。
【0024】
本発明の課題は、上記従来技術における問題点を解決し、約650℃で約50m/s以上、場合によっては約100m/sの高温高流速のガスタービン排ガスの旋回流によって励起される伝熱管パネルの振動を抑制を図りながらHRSGの安定運用を可能とする排熱回収ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は以下の請求項に記載した発明により達成される。
請求項1記載の発明は、ガスタービン排ガスが旋回流となって流入するダクト内でのガス流れに直交する方向に2列以上並列配置され、ガス流れに沿って2列以上配置され、複数個の伝熱管を束ねた伝熱管パネルと、前記ダクト内でのガス流れに沿って2列以上配置された伝熱管パネルの隣接する伝熱管パネル同士を連結する第1の連結部材で連結し、またガス流れに直交する方向に2列以上配置された伝熱管パネルの隣接する伝熱管パネル同士を連結する第2の連結部材で連結し、前記第2の連結部材は、隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位に応じて変位自由度を変化させた構成からなることを特徴とする排熱回収ボイラである。
【0026】
請求項2記載の発明は、前記第2の連結部材が、隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位が他の隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位より大きくなる部位は変位自由度のある2以上のピン止め体で第2の連結部材が構成され、隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位が他の隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位より小さくなる部位は変位自由度のある1つのピン止め体で第2の連結部材が構成されることを特徴とする請求項1記載の排熱回収ボイラである。
【0027】
請求項3記載の発明は、前記ピン止め体が、隣接する2つの伝熱管パネルにそれぞれ支持固定された係止板と前記各係止板に設けられたそれぞれの丸孔より小径である、前記丸孔に挿着して2つの伝熱管パネルを係止するピンからなることを特徴とする請求項2記載の排熱回収ボイラである。
【発明の効果】
【0028】
請求項1記載の発明によれば、例えば約650℃で約50m/s以上、局所的には約100m/sの高温高速流のガスタービン排ガスの旋回流によって伝熱管パネルが振動を励起されようとする場合に、前記第2の連結部材は、隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位に応じて変位自由度を変化させた構成であるので、全伝熱管パネルの安定した振動モードを形成して十分な振動エネルギー吸収効果を得ることができる。
【0029】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、ガス流れに直交する方向に配置される隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位が他の隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位より大きくなる部位には変位自由度のある2以上のピン止め体で第2の連結部材が構成され、またガス流れに直交する方向に配置される隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位が他の隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位より小さくなる部位には変位自由度のある1つのピン止め体で第2の連結部材が構成されることで、確実に全伝熱管パネルの安定した振動モードを形成して十分な振動エネルギー吸収効果を得ることができ、確実にHRSGの防振が達成できる。
【0030】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、ガス流れに直交する方向に隣接する2つの伝熱管パネルを連結する第2の連結部材としてピン止めという簡単な構成を用いることができるので、安価にHRSGの防振を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例のHRSGパネル防振構造における図17のB−B線断面図である。
【図2】図1のHRSGの伝熱管パネルの連結用のピンの形状とパネル間の左右方向の相対変形時に荷重Pとその反力(P/2)のピンへの発生部位を説明する図である。
【図3】図1のHRSGの伝熱管パネルの連結用ピンの変位δと荷重Pとの関係を示すグラフである。
【図4】図1のHRSGの中央部の伝熱管パネルに設置した1本のピンを有する左右方向連結金具の詳細を示す平面図である。
【図5】図1のHRSGの中央部の伝熱管パネルに設置した1本のピンを有する左右方向連結金具の詳細を示す側面図である。
【図6】図1のHRSGの前側の伝熱管パネルと後側の伝熱管パネルの各縁部分に設置した2本のピンを有する左右方向連結金具の詳細を示す平面図である。
【図7】図1のHRSGの前側の伝熱管パネルと後側の伝熱管パネルの各縁部分に設置した2本のピンを有する左右方向連結金具の詳細を示す側面図である。
【図8】ガスタービン排ガスの旋回流が、本実施例による防振構造に作用した場合の伝熱管パネルの振動モードを示す図17のB−B線断面図である。
【図9】ガスタービン排ガスの旋回流が、本実施例による防振構造に作用した場合の伝熱管パネルのもう1つの振動モードを示す図17のB−B線断面図である。
【図10】従来の構造と本実施例による防振構造での伝熱管パネルの振動レベルを比較した結果を示すグラフである。
【図11】脱硝装置が配置された複合発電プラントの概略系統図である
【図12】排熱回収ボイラ(HRSG)内に配置される熱交換器を構成する伝熱管パネルの斜視図である。
【図13】排熱回収ボイラ内に配置される伝熱管パネルの断面図である。
【図14】図13の伝熱管パネルの側面図である。
【図15】図13の伝熱管パネルの組み立て前の側面図である。
【図16】HRSGの鳥瞰図である。
【図17】HRSGの入口部分の側面図である。
【図18】図17のA−A線断面図である。
【図19】図17のB−B線断面図である。
【図20】従来のHRSGの伝熱管パネルの振動を抑制することができない場合の伝熱管パネルの排ガス流による変形状態を説明する図17のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1には本発明の実施例のHRSGパネル防振構造における図17のB−B線断面図を示す。本実施例では排ガス流れ方向に3列、排ガス流れに直交する方向に3列の伝熱管パネル(以下単にパネルということがある)13が配置しているものとして説明する。しかし実際は排ガス流れ方向には3列以上、排ガス流れに直交する方向にも3列以上の伝熱管パネル13が配置されているものもある。
【0033】
また、図1において、排ガスの入口側(缶前)の伝熱管パネル13A、中央部の伝熱管パネル13B、出口側(缶後)の伝熱管パネル13Cとし、各伝熱管パネル13A〜13Cのうちで缶前から見て左側のものを伝熱管パネル13AL、13BL、13CL、中央のものを伝熱管パネル13AM、13BM、13CM、そして右側を伝熱管パネル13AR、13BR、13CRということにする。
【0034】
図1に示す全伝熱管パネル13AL、13AM、13AR;13BL、13BM、13BR;13CL、13CM、13CR(以下全パネルということがある。)の縁部分の伝熱管パネル13CLと伝熱管パネル13CRが伝熱管パネル13CMと接合をする連結金具53A、53Bに2本のピン25を設置し、全パネルの中央部分に1本のピン26を有する左右方向連結金具52A、52B、52Cを設置することで、全パネルの安定した振動モードを形成して十分な振動エネルギー吸収効果を得ることを可能にする防振構造である。
ここで、排ガス11が作用しない時点(パネル変形前の時点)でのパネル間のギャップδbとする。
【0035】
本構造では、振動時に生じるパネル間の左右方向の相対変位を利用してエネルギー吸収部材である鋼製ピン25、26により振動エネルギーを吸収する。このピン25、26の詳細を、図2、図3を用いて説明する。
【0036】
図2は、ピン25、26の形状を示したものである。直径Dで長さLのピン25、26の長さ方向の中央部にパネル間の左右方向の相対変形時に荷重Pが発生する。また、荷重Pの反力(P/2)がピン25、26の両端部に発生する。図3は、横軸をピン25、26の変位δ、縦軸を荷重Pとするグラフであり、変位δと荷重Pによる平行四辺形内の面積A分のエネルギー吸収が行われる。
【0037】
図1における全パネルの中央部のパネル13Bに設置した1本のピン26を有する左右方向連結金具52A、52B、52Cの詳細を図4及び図5に示す。図4は平面図であり、図5は側面図である。これらの図に示すように、伝熱管パネル13BL、13BM、13BRに設けた左右のパネルを束ねる水平サポート19と水平サポート端部補強板20の中で、水平サポート端部補強板20にピン支持板固定板52Dを取り付け、伝熱管パネル13BL、13BRのピン支持板固定板52Dにそれぞれ並列状に配置して支持された一対のピン支持板52A、52A又は52C、52Cを設け、伝熱管パネル13BMのピン支持板固定板52Dにはピン支持板52Bを設け、各ピン支持板52A、52B、52Cにはそれぞれ丸孔(図示せず)を設けておく。そして並列配置された一対のピン支持板52A、52A又は52C、52Cの間にピン支持板52Bをそれぞれ差し込み、互いの丸孔同士を重ね合わせて、これに振動吸収部材であるピン26は差し込む。
【0038】
図1におけるHRSG前側の伝熱管パネル13AとHRSG後側の伝熱管パネル13Cの各縁部分に設置した2本のピン25を有する左右方向連結金具53A、53Bの詳細を、図6及び図7に示す。図6は平面図であり、図7は側面図である。これらの図に示すように、左側に図示するパネル13AL、13AM;13CL、13CMと右側に図示するパネル13AM、13AR;13CM、13CRとをそれぞれ束ねる水平サポート19と水平サポート端部補強板20の中で、相対向する水平サポート端部補強板20、20にそれぞれピン支持板固定板53D、53Dを設け、これらピン支持板固定板53D、53Dに丸孔(図示せず)を設け、該ピン支持板固定板53D、53Dを挟むように設けた2枚の並列位置に配置したピン支持板53A、53A又は53B、53Bにもそれぞれ2つの丸孔を設け、前記ピン支持板固定板53Dと2枚のピン支持板53A、53A又は53B、53Bの丸孔同士を重ね合わせてピン25を差し込む。各ピン支持板53A、53Bにはそれぞれ2つの丸孔があるので、それぞれにピン25を差し込む。なお、ピン支持板53A、53Bはピン25を中心に回動自在である。ピン支持板52A、52B、52Cはピン26を中心に回動自在である。
なお、図4、図6で水平サポート19と水平サポート端部補強板20の内部には伝熱管22とフィン23を束ねたハニカムサポート29a、29bと、該ハニカムサポート29a、29bの端部と水平サポート19と水平サポート端部補強板20で囲まれた空間部には充填部材43が配置されている。
【0039】
ただし、フィン24を持たない伝熱管22群を伝熱管パネル13として用いる場合はハニカムサポート29がない構成とすることもできる。
【0040】
このような構造とすることで、HRSGを流れる排ガス1の旋回流による振動時に生じるパネル間の左右方向(排ガス流れに直交する方向)の相対変位を利用したエネルギー吸収が可能となる。
【0041】
本発明による防振構造の効果を、以下に説明する。
図8は、約650℃、約50m/sのガスタービンからの排ガス11の旋回流が、本実施例による防振構造に作用した場合の振動モードを示す。この振動モードは、全パネル(図中の9個のパネル13AL、13AM、13AR;13BL、13BM、13BR;13CL、13CM、13CR)における、HRSG後側のパネル13CL、13CM、13CR間のギャップδa1が振動前のギャップδbより大きく、HRSG前側のパネル13AL、13AM、13AR間のギャップδa3が振動前のギャップδbより小さく、中央部分のパネル13BL、13BM、13BRのパネルのギャップδa2が振動前のギャップδbにほぼ等しくなる形状、つまり1次モードで変形する形状である。
【0042】
上述のように、HRSG後側のパネル13CL、13CM、13CR間のギャップδa1は振動前のギャップδbより大きいため相対変位が生じており、この部分で大きい振動エネルギー吸収が期待できるため、このエネルギー吸収量に対応した2本のピン25が設置されている。同様に、HRSG前側のパネル13AL、13AM、13AR間のギャップδa3は振動前のギャップδbより小さいため相対変位が生じており、この部分におけるこのエネルギー吸収量に対応した2本のピン25が設置されている。
【0043】
これに対し、中央部分のパネル13BL、13BM、13BRのパネルのギャップδa2は振動前のギャップδbにほぼしく、相対変位がほとんど生じず、この部分で大きい振動エネルギー吸収が期待できないため1本のピン26が設置されている。
【0044】
図9は、本発明による防振構造のもう一つの振動モードを示す。このモードでは、HRSG後側のパネル13CL、13CM間のギャップδc1が振動前のギャップδbより大きく、HRSG前側のパネル13AM、13AR間のギャップδc1も振動前のギャップδbより大きい。一方、HRSG後側のパネル13CM、13CR間のギャップδc3が振動前のギャップδbより小さく、下縁側のパネル13AL、13AM間のギャップδc3も振動前のギャップδbより小さい。
【0045】
これに対し、中央部分のパネル13BL、13BM、13BRのパネルのギャップδc2が振動前のギャップδbにほぼ等しくなる。つまりこの振動モード形状は、2次モードで変形する形状である。
【0046】
本モード(2次モード)におけるパネル間の相対変位が大きい場所は、上述した一次モードの場合と同じであり、相対変位が大きくなる部分に2本のピン25が設置され、相対変位が小さい部分に1本のピン26が設置されている。
【0047】
図10に、従来の防振構造と本実施例による構造での、パネルの振動レベルを比較した結果を示す。本図の横軸は運転時間、縦軸は振動レベルを示し、振動レベルは所期の振動変位を1とした時の無次元化した振動変位を表す。
【0048】
点線で示す従来構造のパネルの振動レベルは、ガスタービンからの排ガスの旋回流によって、個々のパネルが振動するため、運転時間に対して2次曲線的に振動レベルが増加していた。これに対し、実線で示す本実施例の防振構造では、運転時間に対して、直線的に振動レベルが増加するものの、その増加の勾配は、従来構造に比べて極めて小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、今後、タービンの大型化等による排ガス偏流が増加することが予想されるため、本発明による伝熱管パネルの防振構造は、今後のHRSGにも利用される可能性が高い。
【符号の説明】
【0050】
1 ガスタービン 3 過熱器
4 第1の蒸発器 5 脱硝装置
6 第2の蒸発器 7 節炭器
8 汽水分離ドラム 9 蒸気タービン
10 復水器 11 排ガス
12 HRSGダクト
13A ガス流れ前側の伝熱管パネル
13B ガス流れ中央部の伝熱管パネル
13C ガス流れ後側伝熱管パネル
13AL、13BL、13CL 左側の伝熱管パネル
13AM、13BM、13CM 中央の伝熱管パネル
13AR、13BR、13CR 右側の伝熱管パネル
14 煙突 15 地面
16 架構
17A、17B、17C 上部、下部管寄せ
18 連結金具 19 水平サポート
20 水平サポート端部補強板
21 ピン 22 伝熱管
23 フィン 24 フィンチューブ
25、26 ピン 28a、28b 管路
29 ハニカムサポート 30 復水ポンプ
31 主蒸気管 32 給水管路
33 降水管 35a、35b 管路
37 飽和蒸気管
38 タービンバイパス管 39 蒸気タービン加減弁
40 タービンバイパス弁 41 ダンパ
43 充填部材
52A、52B、52C ピン支持板
52D ピン支持板固定板 53A、53B ピン支持板
53D ピン支持板固定板 P 荷重
δ 変位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン排ガスが旋回流となって流入するダクト内でのガス流れに直交する方向に2列以上並列配置され、ガス流れに沿って2列以上配置され、複数個の伝熱管を束ねた伝熱管パネルと、
前記ダクト内でのガス流れに沿って2列以上配置された伝熱管パネルの隣接する伝熱管パネル同士を連結する第1の連結部材で連結し、またガス流れに直交する方向に2列以上配置された伝熱管パネルの隣接する伝熱管パネル同士を連結する第2の連結部材で連結し、
前記第2の連結部材は、隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位に応じて変位自由度を変化させた構成からなることを特徴とする排熱回収ボイラ。
【請求項2】
前記第2の連結部材は、隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位が他の隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位より大きくなる部位は変位自由度のある2以上のピン止め体で構成され、隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位が他の隣接する2つの伝熱管パネル同士の相対変位より小さくなる部位は変位自由度のある1つのピン止め体で構成されることを特徴とする請求項1記載の排熱回収ボイラ。
【請求項3】
前記ピン止め体は、隣接する2つの伝熱管パネルにそれぞれ支持固定された係止板と前記各係止板に設けられたそれぞれの丸孔より小径である前記丸孔に挿着して2つの伝熱管パネルを係止するピンからなることを特徴とする請求項2記載の排熱回収ボイラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−57463(P2013−57463A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196510(P2011−196510)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)