排熱相互利用システム
【課題】エアコンプレッサー及び/又は空冷装置の排熱並びにヒートポンプの排熱を相互に利用することが可能であり、季節を問わず年間を通じて、安定した性能を確保しつつ、エネルギー効率を極めて良好な状態とすることができる排熱相互利用システムを提供する。
【解決手段】排熱相互利用システム1は、コンプレッサー4の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、ヒートポンプ6へ導く連結ダクト30と、当該排気あるいは混合気を、通常室温を上回る状態でヒートポンプ6に吸い込まれるように調節する調節ダンパ52と、ヒートポンプ6の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、コンプレッサー4へ導く室内返戻ダクト38等と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を下回る状態でコンプレッサー4に吸い込まれるように調節するコンプレッサー入口冷却ダンパ64を備えている。
【解決手段】排熱相互利用システム1は、コンプレッサー4の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、ヒートポンプ6へ導く連結ダクト30と、当該排気あるいは混合気を、通常室温を上回る状態でヒートポンプ6に吸い込まれるように調節する調節ダンパ52と、ヒートポンプ6の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、コンプレッサー4へ導く室内返戻ダクト38等と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を下回る状態でコンプレッサー4に吸い込まれるように調節するコンプレッサー入口冷却ダンパ64を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンプレッサー(空気圧縮機)及び/又は空冷装置の排熱とヒートポンプの排熱を互いに利用し合うことで、省エネルギー化等を図ることのできる排熱相互利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンプレッサーに関する省エネルギーシステムとして、下記特許文献1に記載のものが知られている。このシステムは、水冷式ヒートポンプの冷水をエアハンドリングユニットの冷熱源として用いて機械室を冷却してエアコンプレッサーの効率を向上させると共に圧縮空気冷却除湿塔の冷熱源としても用い、更に水冷式ヒートポンプの温水を圧縮空気加熱塔の温熱源として用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−8000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このシステムでは、エアコンプレッサーについてはヒートポンプの熱の利用が考慮されているが、ヒートポンプについてはエアコンプレッサーの熱の利用が特段考慮されておらず、省エネルギー性の向上の余地がある。又、ヒートポンプ等の要素が年間を通じて同じ配置であるため、外気温等の環境条件の差異により省エネルギー性に差が生じ、季節によってはさほど省エネルギーにならない場合もある。
【0005】
そこで、請求項1に記載の発明は、エアコンプレッサー及び/又は空冷装置の排熱並びにヒートポンプの排熱を相互に利用することが可能であり、季節を問わず年間を通じて、安定した性能を確保しつつ、エネルギー効率を極めて良好な状態とすることができる排熱相互利用システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するため、第1吸込温度が、通常室温を上回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるヒートポンプと、第2吸込温度が、前記通常室温を下回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるエアコンプレッサー及び/又は空冷装置と、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、前記ヒートポンプへ導く第1排気路と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を上回る状態で前記ヒートポンプに吸い込まれるように調節する第1調節手段と、前記ヒートポンプの排気あるいは当該排気と空気の混合気を、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置へ導く第2排気路と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を下回る状態で前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置に吸い込まれるように調節する第2調節手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
なお、通常室温とは、ヒートポンプの排気等を混合しない場合の機械室等の気温である。通常室温に関しては、室内等に配置された各種機器等の排熱による温度上昇を含めて考えても良い。又、通常室温につき、適宜、(現在)室温や外気温等に拡張して考えても良い。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記目的に加え、更にヒートポンプをエアコンプレッサーの排気により加熱し過ぎる(ヒートポンプに対する吸込温度が効率悪化あるいは故障に至る特定温度以上となる)事態を防止してヒートポンプ等を保護可能とする目的を達成するため、上記発明において、更に、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気の一部又は全部を室外へ排気可能な第1室外排気路と、当該第1室外排気路への排気の流入量を調節する第3調節手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、上記目的に加え、ヒートポンプにおける吸込温度をより一層適切なものとする目的を達成するため、上記発明において、更に、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気に対する空気の混合量を調節する第4調節手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記目的に加え、エアコンプレッサーにおける吸込温度が下げられない場合にヒートポンプの排気を排出して、エアコンプレッサーの吸込温度の調整をより一層適切なものとする目的を達成するため、上記発明において、更に、前記ヒートポンプの排気の一部又は全部を室外へ排気可能な第2室外排気路を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、上記目的に加え、簡便に各種排気等の熱量を調節する目的を達成するため、上記発明において、前記第1調節手段、第2調節手段、第3調節手段、第4調節手段の内の少なくとも何れかがダンパであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エアコンプレッサーの排気等を、通常室温を上回る状態で前記ヒートポンプに吸い込まれるように調節する第1調節手段と、ヒートポンプの排気等を、通常室温を下回る状態で前記ヒートポンプに吸い込まれるように調節する第2調節手段とを具備している。従って、エアコンプレッサーや空冷装置とヒートポンプについて相互に効率を良好化することが可能となり、季節を問わず年間を通じて、安定した性能を確保しつつ、省エネルギー性を極めて良好なものとすることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1形態に係る排熱相互利用システムの模式図である。
【図2】図1の排熱相互利用システムにおけるコンプレッサー保護ダンパ(第3調節手段)の制御図である。
【図3】図1の排熱相互利用システムにおけるコンプレッサー入口冷却ダンパ(第2調節手段)の制御図である。
【図4】図1の排熱相互利用システムにおける調節ダンパ(第1調節手段)の制御図である。
【図5】図1の排熱相互利用システムにおける(a)ヒートポンプ,(b)エアコンプレッサーの、吸込温度毎の消費電力等を示すグラフである。
【図6】比較例と本発明の各形態における消費エネルギー等を示す表である。
【図7】本発明の第2形態に係る排熱相互利用システムの模式図である。
【図8】図7の排熱相互利用システムにおけるヒートポンプ入口冷却ダンパ(第4調節手段)の制御図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態の例につき、適宜図面に基づいて説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。
【0015】
[第1形態]
≪外的構成等≫
図1は第1形態に係るエアコンプレッサー(コンプレッサー)4とヒートポンプ6の排熱相互利用システム1の模式図であって、排熱相互利用システム1は、工場等における機械室2内において、コンプレッサー4、及びヒートポンプ6を有している。排熱相互利用システム1は、図示しない制御手段(例えばコンピュータ)により制御される。当該制御手段とコンプレッサー4及びヒートポンプ6とは、それぞれ電気的に接続されている。
【0016】
又、機械室2の外壁には、換気口8が設置されており、機械室2の内外において通気可能とされており、機械室2内部の空気につき外気と交換可能、即ち機械室2につき換気可能とされている。機械室2は、どのような形式・大きさ等でも良く、例えば広大な工場内やその一部(片隅)であっても良いし、建物内の一区画あるいは一室であっても良い。なお、コンプレッサー4は、消防に関する規制により、給湯用等のガスボイラーと別部屋に設置されることが多いが、ヒートポンプ6であれば、コンプレッサー4と同部屋に配置することができる。
【0017】
コンプレッサー4は、電動機10により駆動される圧縮機12が、空気(エア)を取込口14(第2吸込口)から取り込んで圧縮することで、圧縮空気Pを生成するものである。圧縮空気Pは、例えば工場における圧縮空気Pの配管を通じ、圧縮空気Pの吹き付けが必要な箇所等に配給される。コンプレッサー4の周囲(機械室2内)には、コンプレッサー4の取込口14に係る空気の温度、換言すれば機械室2内の室温(気温)を検知可能である機械室温度センサT1が配置されている。機械室温度センサT1は、前記制御手段に対し電気的に接続されている(以下各種センサや各種ダンパについて同様)。なお、各種センサにより検知される温度について、センサと同符号で示す。又、圧縮空気を供給するコンプレッサー4について、これに代えて、あるいはこれと共に、生産プロセスにおける各種空冷装置(例えば金属等のワークを熱処理した後でワークの空冷を冷風の供給により行う装置や、食品殺菌後の空冷を行う装置等)を用いても良い。
【0018】
ヒートポンプ6は、吸込口20(第1吸込口)から吸い込んだ空気から熱をくみ上げる熱交換器21と、電動機22により駆動される圧縮機23と、給水S(供給される水)と熱交換を行って温水を供給する給湯用熱交換器24を、閉じた媒体配管26において有するものである。なお、これらにおいて、ヒートポンプサイクルが実行される。
【0019】
熱交換器21は、空気と媒体とで熱交換をし、媒体配管26内の媒体を加熱する。圧縮機23は、加熱された媒体配管26内の媒体を断熱圧縮して、給湯用熱交換器24へ送る。給湯用熱交換器24は、媒体と水とで熱交換をして、給水Sを加熱し、これより温度の高い温水Vを生成する。給水Sないし温水Vは水配管28内を移送され、給水Sの量(熱量)は、ポンプ29等の調整手段により調整される。なお、ヒートポンプ6について、温水Vを供給するヒートポンプ式給湯器に代えて、又はこれと共に、ヒートポンプ式空調機等の他の形式のヒートポンプを採用することができる。
【0020】
なお、本形態では、コンプレッサー4の発熱量が46.1kWであり、ヒートポンプ6の給湯能力が56kWであるとするが、当然この値に限定されることはなく、他の数値等も同様である。又、ファン定格風量は、ヒートポンプ6加熱用で毎分240立方メートル、コンプレッサー4冷却用で毎分100立方メートルとする。更に、ヒートポンプ6の運転可能な吸込空気温度の範囲は、下限−15℃、上限40℃とする。
【0021】
そして、コンプレッサー4とヒートポンプ6の間には、連結ダクト30が配置されており、更に、連結ダクト30のコンプレッサー4側と機械室2の外とを結ぶコンプレッサー保護ダクト32が配置されていると共に、連結ダクト30のヒートポンプ6側と機械室2の外とを結ぶヒートポンプ排気ダクト34が配置されている。加えて、連結ダクト30の途中に、(短い)ヒートポンプ入口冷却ダクト36が接続されている。又、ヒートポンプ排気ダクト34の途中(機械室2内の部分)に、(短い)室内返戻ダクト38が接続されている。なお、ダクトの配置・大きさ・断面形状・区分等につき、様々に変更することができる。
【0022】
連結ダクト30は、コンプレッサー4の排気口40、及びヒートポンプ6の吸込口20(内の熱交換器21)に接続されており、コンプレッサー4の(室温より高い温)排気を、熱交換器21へ案内可能である。なお、排気口40には、排気を送り出すためのファンが設置されている。
【0023】
又、連結ダクト30は、他のダクトとの各種接続部(分岐部)や、ダクト内温度(気温)を検知する各種温度センサ、ないしコンプレッサー4の排気(ダクト内の空気)の方向や流量を調整可能な各種ダンパを備えている。これらは、コンプレッサー4側から順に、排気口40に係る排気温を測定可能なコンプレッサー排気温度センサT2、コンプレッサー保護ダクト32との接続部50、ヒートポンプ6への排気の風量を連続的に調節することで、ヒートポンプ6の入口空気温度(熱交換器21手前における排気の温度)を調節する調節ダンパ52、ヒートポンプ入口冷却ダクト36との分岐部54、ヒートポンプ6の入口空気温度を検知可能なヒートポンプ入口温度センサT3である。なお、調節ダンパ52につき、風量を段階的に調節するものとして良い。
【0024】
コンプレッサー保護ダクト32は、前記接続部50から機械室2外部にかけて延ばされており、連結ダクト30からの排気について自身へ受け入れるか否かを切替可能なコンプレッサー保護ダンパ58を有している。なお、コンプレッサー保護ダンパ58につき、コンプレッサー保護ダクト32に入る風量を、段階的にあるいは連続的に変更するものとして良い。
【0025】
ヒートポンプ排気ダクト34は、連結ダクト30に対しヒートポンプ6内を介して連続するように配置されており、ヒートポンプ6の排気口59から、機械室2外部にかけて延ばされている。排気口59には、排気を送り出すためのファンが設置されている。ヒートポンプ排気ダクト34は、ヒートポンプ6側から順に、当該ファンの外側(排気口59外側)における気温であるヒートポンプ出口温度を測定可能なヒートポンプ出口温度センサT4、排気を機械室2内(コンプレッサー4の取込口14)へ戻す室内返戻ダクト38との接続部60を備えている。
【0026】
ヒートポンプ6の熱交換器21を通過する排気は、適宜熱交換により媒体配管26内の媒体を加熱し、これにより自身が冷却される。熱交換器21は、媒体を循環させる媒体配管26において、給湯用熱交換器24より下流(圧縮機23より上流)に配置され、給水Sとの熱交換により熱を奪われて冷却された媒体を適宜加熱する。適宜加熱された媒体は、圧縮機23に達し、断熱圧縮されて給湯用熱交換器24に入る。
【0027】
室内返戻ダクト38は、前記接続部60から、機械室2内の開口62までに亘っており、その内部に、コンプレッサー入口冷却ダンパ64を有している。コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、ヒートポンプ排気ダクト34からの排気について自身へ受け入れるか否か(オンオフ)を切替可能である。なお、コンプレッサー入口冷却ダンパ64につき、室内返戻ダクト38に入る風量を、段階的にあるいは連続的に変更するものとして良い。
【0028】
なお、連結ダクト30が第1排気路に相当し、ヒートポンプ排気ダクト34の接続部60までと、室内返戻ダクト38と、機械室2内の開口62からコンプレッサー4の取込口14までとが、第2排気路に相当する。又、調節ダンパ52が第1調節手段に相当し、コンプレッサー入口冷却ダンパ64が第2調節手段に相当し、コンプレッサー保護ダンパ58が第3調節手段に相当する。更に、コンプレッサー保護ダクト32が第1室外排気路に相当し、ヒートポンプ排気ダクト34が第2室外排気路に相当する。
【0029】
≪内的構成等≫
図2は、前記制御手段によるコンプレッサー保護ダンパ58の制御図である。前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、コンプレッサー保護ダンパ58を全閉し、コンプレッサー保護ダクト32への排気の流入を阻止して、連結ダクト30へ排気を導く。即ち、コンプレッサー排気温度T2(条件要素A1)が、機械室温度T1(条件要素A2)から所定値(ここでは25℃)を加えた温度以下であり(条件要素A3)、且つ(演算子B1)、ヒートポンプ6が運転を開始していて(条件要素A4)、所定時間経過しており(演算子B2)、且つ(演算子B1)、ヒートポンプ入口温度T3が40℃以下であり(条件要素A5)、且つ(演算子B1)、ヒートポンプ入口温度T3を調節する調節ダンパ52の開度が全開である(条件要素A6)場合である。
【0030】
なお、「励磁」が1に対応し、「非励磁」が0に対応する。又、演算子B2等の「tpu」は、ここでは非励磁状態から励磁状態になる場合には所定時間後に励磁状態となるが、励磁状態から非励磁状態になる場合には直ちに非励磁状態となるものとしているところ、後者の場合にも当該所定時間あるいはこれと異なる特定時間後に動作するようにしても良い。更に、条件を構成する条件要素や演算子につき、省略したり、追加したり、同様のものに差し替えたり、参照する調節ダンパ52の開度について全開ではなく所定値以上の場合としたり、他のダンパの開度を参照し当該開度(開閉状況)に応じて変化するものとしたり、これらを組み合わせたりすることができ、以下同様である。
【0031】
一方、前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、コンプレッサー保護ダンパ58を全開し、コンプレッサー保護ダクト32へ排気の流入を許して、排気(の一部)を(機械室2の)外部へ導く。即ち、ヒートポンプ6が運転中でなく(条件要素A4・演算子B3)、又は(演算子B4)、ヒートポンプ入口温度T3が40℃以下でなく(条件要素A5・演算子B5)、又は(演算子B4)、調節ダンパ52の開度が全開でなく(条件要素A6・演算子B6)、又は(演算子B4)、コンプレッサー4が故障している(条件要素A7)場合である。
【0032】
なお、演算子B7,B8は、異常時等において、排気熱が外部に逃がされる点でコンプレッサー4等にとって安全側である全開状態になるように、全閉となる条件を厳しくするものである。又、機器運転中の把握は、機器からの運転信号を受信することで行ったり、機器全体あるいは部品の電源投入を検知して行ったり、出力を検知して行ったり、これらを組み合わせたりすることができる。更に、機器故障は、コンプレッサー4の制御手段が報知する故障信号を受信することで把握したり、全体あるいは部品の電源断や出力断を検知して把握したり、これらを組み合わせたりすることができる。
【0033】
図3は、前記制御手段によるコンプレッサー入口冷却ダンパ64の制御図である。前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、コンプレッサー入口冷却ダンパ64を全開し、室内返戻ダクト38へヒートポンプ6の排気を導入して、機械室2へ排気を導く。即ち、コンプレッサー4運転開始後(条件要素C1)所定時間経過し(演算子D1)、且つ(演算子D2)、ヒートポンプ6運転開始後(条件要素C2)特定時間経過し(演算子D3)、且つ(演算子D2)、機械室温度T1(条件要素C3)とヒートポンプ出口温度T4(条件要素C4)につき前者が後者を上回っている(条件要素C5)場合である。
【0034】
一方、前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、コンプレッサー入口冷却ダンパ64を全閉し、室内返戻ダクト38への排気の流入を阻止して、ヒートポンプ排気ダクト34における排気の全量の流れを維持する。即ち、コンプレッサー4が運転中でない場合である(条件要素C1・演算子D4)。なお、演算子D5〜D8は、排気を全て室外へ出すという点でヒートポンプ6あるいはコンプレッサー4等にとってより安全である全閉側で条件を比較的に緩く、逆に全開側で条件を比較的に厳しくするものである。
【0035】
図4は、前記制御手段による調節ダンパ52の制御図である。前記制御手段は、ヒートポンプ6に導入される排気の温度であるヒートポンプ入口温度T3等の関数z=f(x)により導出された開度zとなるように調節ダンパ52を作動させ、あるいは全閉状態とする。
【0036】
即ち、前記制御手段は、予め設定されるヒートポンプ入口温度設定値(条件要素E2)から、測定されたヒートポンプ入口温度T3(条件要素E1)を減算し(条件要素E3)、関数z=f(x)における変数の一具体値xとして条件要素E4へ入力し、これを適宜(所定間隔毎等で)繰り返す。
【0037】
なお、ヒートポンプ入口温度設定値は、本形態では35℃とする。又、関数z=f(x)は、xとzが一対一であれば任意のものでよいが、ここではダクト内温度(ヒートポンプ入口温度T3)を35℃プラスマイナス5℃の範囲に収められるように帰納的に(事前のテストで決定した)定めたものを用いる。例えば、35℃マイナス5℃の30℃未満であると開度zを最大とし、30℃以上40℃(35℃プラス5℃)以下で開度zを徐々に絞り、40℃を超えると開度zを0とする。
【0038】
一方、前記制御手段は、ヒートポンプ6の運転開始後(条件要素E5)所定時間経過(演算子F1)したときにyを0から1とし、条件要素E4における関数z=f(x)からの開度zの導出を許す。他方、前記制御手段は、ヒートポンプ6の運転停止後(条件要素E5不成立)直ちにyを1から0とし、条件要素E4において開度zを0として、調節ダンパ52を全閉状態とする。なお、演算子F1は、励磁状態から無励磁状態になる場合は直ちに動作する。
【0039】
他方、前記制御手段は、機械室温度T1が35℃以上であると(条件要素E6)、調節ダンパ52を全閉する。なお、演算子F1,F2は、条件要素E4における前記yと同様、安全側である全閉状態に比較的になり易いようにする目的で設定されている。
【0040】
≪動作等・冬季等≫
このような排熱相互利用システム1の動作例につき、主に季節(外気温)毎に説明する。なお、外気温等に応じて短期(数時間毎等)で動作態様を変えても良い。
【0041】
外気温が低い冬季等の場合(外気温度5℃・相対湿度50%)、換気口8から5.0℃の空気が57.6kW分だけ導入され、コンプレッサー4の取込口14から5.0℃の空気が22.9kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から28.3℃・69.0kWの排気が出される。
【0042】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、条件要素A3〜A6の充足(成立)により閉じており、調節ダンパ52は、主にヒートポンプ入口温度T3が35℃マイナス5℃の30℃に達していないために、関数z=f(x)により開度(最)大となっている。従って、28.3℃・69.0kWの排気がそのままヒートポンプ入口冷却ダクト36との分岐部54に達し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36からの5.0℃・34.7kWの空気と混合され、14.3℃・103.7kWの排気となってヒートポンプ6に吸い込まれる。
【0043】
当該排気は、熱交換器21を通過して媒体を暖め、6.2℃・63.7kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0044】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の非充足により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0045】
≪動作等・中間季等1≫
外気温が比較的に低い中間季等の場合(外気温度15℃)、換気口8から15.0℃の空気が133.6kW分だけ導入され、コンプレッサー4の取込口14から15.0℃の空気が53.1kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から38.9℃・99.2kWの排気が出される。
【0046】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、条件要素A3〜A6の充足により閉じており、調節ダンパ52は、主にヒートポンプ入口温度T3が30℃に達していないために、関数z=f(x)により開度(最)大となっている。従って、38.9℃・99.2kWの排気がそのまま分岐部54に達し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36からの15.0℃・80.5kWの空気と混合され、24.5℃・179.7kWの排気となってヒートポンプ6に吸い込まれる。
【0047】
当該排気は、熱交換器21を通過して媒体を暖め、16.3℃・139.7kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0048】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の不成立により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0049】
≪動作等・中間季等2≫
外気温が比較的に高い中間季等の場合(外気温度25℃)、換気口8から25.0℃の空気が227.1kW分だけ導入され、コンプレッサー4に25.0℃の空気が90.5kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から50.0℃・136.6kWの排気が出される。
【0050】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、条件要素A3〜A6の充足により閉じており、調節ダンパ52は、主に関数z=f(x)により開度大となっている。従って、50.0℃・136.6kWの排気が分岐部54に達し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36からの25.0℃・136.6kWの空気と混合され、34.9℃・273.2kWの排気となってヒートポンプ6に吸い込まれる。
【0051】
当該排気は、熱交換器21を通過して媒体を暖め、26.1℃・233.2kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0052】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の不成立により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0053】
≪動作等・夏季起動時等≫
外気温が高い夏季等における起動時の場合(外気温度35℃)、換気口8から35.0℃の空気が139.0kW分だけ導入され、コンプレッサー4に35.0℃の空気が139.0kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から60.4℃・185.1kWの排気が出される。
【0054】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、主に条件要素A6・演算子B6により開いており、調節ダンパ52は、主に条件要素E6の成立により開度0となっている。従って、60.4℃・185.1kWの排気は、そのままコンプレッサー保護ダクト32を通じて排出される。
【0055】
一方、ヒートポンプ入口冷却ダクト36から35.0・360.1kWの機械室2内の空気が取り込まれ、当該空気は熱交換器21を通過して媒体を暖めることで冷却され、26.4℃・320.1kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0056】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C1,C2,C5の成立により開いており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのまま室内返戻ダクト38を通じて(全量)機械室2内に戻され、機械室2内温度を下げて、コンプレッサー4の吸い込み空気温度を低下させる。
【0057】
≪動作等・夏季定常時等≫
外気温が高い夏季等における定常運転時の場合(外気温度35℃)、換気口8から35.0℃の空気が17.5kW分だけ導入され、コンプレッサー4に26.4℃の空気が126.6kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から51.4℃・172.7kWの排気が出される。
【0058】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、主に条件要素A6・演算子B6により開いており、調節ダンパ52は、主に関数z=f(x)により中程度の開度zとなっている。従って、コンプレッサー保護ダクト32には、51.4℃・23.6kWである排気の一部が振り分けられ、ヒートポンプ入口冷却ダクト36との分岐部54に対しては、51.4℃・150.7kWである排気の一部が導かれる。
【0059】
51.4℃・150.7kWの排気は、ヒートポンプ入口冷却ダクト36からの26.4℃・209.7kWの空気と混合し、35℃・360.4kWの排気となってヒートポンプ6に導入され、当該排気は熱交換器21を通過して媒体を暖めることで冷却され、26.4℃・320.4kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0060】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C1,C2,C5の成立により開いており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのまま室内返戻ダクト38を通じて(全量)機械室2内に戻され、機械室2内温度を外気温より低い状態に維持して、コンプレッサー4の吸い込み空気温度を低くさせる。
【0061】
≪作用効果等≫
以上の排熱相互利用システム1では、吸込口20の温度が、通常室温を上回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるヒートポンプ6と、取込口14の温度が、前記通常室温を下回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるコンプレッサー4と、コンプレッサー4の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、ヒートポンプ6へ導く連結ダクト30と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を上回る状態でヒートポンプ6に吸い込まれるように調節する調節ダンパ52と、ヒートポンプ6の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、コンプレッサー4へ導く室内返戻ダクト38等と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を下回る状態でコンプレッサー4に吸い込まれるように調節するコンプレッサー入口冷却ダンパ64と、を備えている。
【0062】
このような排熱相互利用システム1における作用効果を具体的に論ずる前提として、ヒートポンプ6及びコンプレッサー4のそれぞれにおける、吸込空気温度と消費電力との関係に言及する。
【0063】
まずヒートポンプ6であるが、図5(a)において温水Vの温度が60〜70℃の場合における概念的なグラフとして示すように、最下の折線で表される消費電力は、何れの入水温度(給水Sの水温)においても、どのような吸込空気温度でも15kW程度でさほど変わらず、吸込空気温度15℃以上ではむしろ若干少なくなっている。又、上3本の折線で3種の入水温度で表される能力は、吸込空気温度が15℃程度を下回ると、吸込空気温度が下がる程に悪化する一方、15℃程度を超えると、ほぼ横ばいとなる。従って、運転可能である範囲(上限40℃)を超えない限度内で、吸込空気温度が高い方が、消費電力が少ない状態で所望の水温の給湯が可能となり、効率が良好となる。
【0064】
次にコンプレッサー4であるが、図5(b)において模式的なグラフとして示すように、その動力比は吸込空気温度が高くなるほど多くなり、従って、その消費電力は吸込空気温度が低くなるほど少なくなり、効率は吸込空気温度が低くなるほど良くなる。なお、空冷装置も、このようなコンプレッサー4と同様の特性を備える。
【0065】
これらのように、(室温程度の)空気吸込温度に対する消費電力等が逆の特性を持つ複数の機器において、吸込空気温度が高いと消費電力が少なくなる機器に対し、吸込空気温度が低いと消費電力が少なくなる機器の排気を吸わせ、後者の機器に対し、前者の機器の排気を(室温より低い場合に)吸わせると、互いに消費電力が抑制され、互いに省エネルギーとなり、互いに環境性能も良好となる。
【0066】
具体的には、図6の表に示すように、屋外設置の同様な能力を有する給湯用ヒートポンプの場合(比較例)との対比において、「第1形態」の欄に示されるような省エネルギー性(省エネ性)等となる。なお、省エネ性等の算出に際し、1日24時間で365日運用した場合を想定し、機械室2内温度は機器放熱により外気温より5℃高いこととし、静岡地方の気象データに基づいたある1年間における1時間毎の外気温度と、図5(a)の17℃入水温度時の性能曲線の近似式と、図5(b)を用いている。又、比較例における給湯用ヒートポンプの熱負荷は、56kW×24時間×365日で490560kWhである。
【0067】
即ち、ヒートポンプ6の消費電力は、比較例の142617kWh(キロワット時)に対し、120741kWhに低減され、コンプレッサー4の消費電力も、室温のままで使用する場合に比べて、1440kW省ける。すると、本形態では、比較例に対し合わせて23315kWのエネルギーを節約することができ、比較例の使用エネルギーの16%ものエネルギーを節約することができる。
【0068】
又、冬デマンドを考慮した一般的な料金体系において電気代に換算すると、比較例の1943357円に対し、本形態では1554260円となり、比較例に対して389096円・20%の節約となる。なお、冬デマンド考慮とは、ヒートポンプ駆動により冬季に1時間当たりの最大電力が発生して、契約電力を押し上げ、基本料金が上がる影響を考慮していることであり、ここでは18kWである。
【0069】
そして、本形態において排出する二酸化炭素(炭酸ガス・CO2)は、比較例の59471kg−CO2に比べ、49749kg−CO2となり、9722kg−CO2の炭酸ガスを削減することができ、16%もの炭酸ガスを削減することができる。
【0070】
[第2形態]
≪構成等≫
図7は第2形態に係る排熱相互利用システム101の模式図であって、排熱相互利用システム101は、以下に説明する構成要素以外は第1形態と同様である。なお、同様の構成要素には同じ符号を付して適宜説明を省略する。又、変更例も第1形態のものを適用することができる。
【0071】
排熱相互利用システム101は、コンプレッサー4を3台有しており、各排気を連結ダクト30へ導く小ダクト102が3本配置されている。又、コンプレッサー保護ダクト32(接続部50)におけるコンプレッサー保護ダンパ58は省略されている。更に、ヒートポンプ入口冷却ダクト36(分岐部54)には、ヒートポンプ入口冷却ダクト36への機械室2内の空気の流入を開閉により許否するヒートポンプ入口冷却ダンパ104(第4調節手段)が配置されている。ヒートポンプ入口冷却ダンパ104は、コンプレッサー排気温度T2(3台のコンプレッサー4の排気が全て集まったものの気温)と関連付けられている。なお、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104とコンプレッサー保護ダンパ58を併用しても良い。
【0072】
図8は、前記制御手段によるヒートポンプ入口冷却ダンパ104の制御図である。前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104を全閉し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36への空気の流入を阻止して、連結ダクト30における排気の流れをそのままに保持する。即ち、コンプレッサー排気温度T2が40℃以下であり(条件要素G1)、且つ(演算子H1)、ヒートポンプ6が運転を開始していて(条件要素G2)所定時間経過しており(演算子H2)、且つ(演算子H1)、コンプレッサー4が運転を開始していて(条件要素G3)所定時間経過しており(演算子H3)、且つ(演算子H1)、ヒートポンプ入口温度T3が40℃以下であり(条件要素G4)、且つ(演算子B1)、ヒートポンプ入口温度T3を調節する調節ダンパ52の開度が全開である(条件要素G5)場合である。
【0073】
一方、前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104を全開し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36に対する空気の流入を許して、空気を連結ダクト30の分岐部54へ導いて、適宜排気へ混入する。即ち、ヒートポンプ6が運転中でなく(条件G2・演算子H4)、又は(演算子H5)、コンプレッサー4が運転中でなく(条件G3・演算子H6)、又は(演算子H5)、ヒートポンプ入口温度T3が40℃以下でなく(条件G4・演算子H7)、又は(演算子H5)、調節ダンパ52の開度が全開でない(条件G5・演算子H8)場合である。なお、演算子H9,H10は、異常時等において、空気をヒートポンプ6の吸込口20へ導入できる点でヒートポンプ6等にとって安全側である全開状態になるように、全閉となる条件を厳しくするものである。
【0074】
≪動作等・冬季等≫
このような排熱相互利用システム101の動作例につき、主に季節(外気温)毎に説明する。
【0075】
外気温が低い冬季等の場合(外気温度5℃)、換気口8から5.0℃の空気が68.7kW分だけ導入され、各コンプレッサー4の取込口14から5.0℃の空気がそれぞれ22.9kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴いそれぞれ46.1kWの排熱が生じる。そして、各小ダクト102を介して連結ダクト30に各排気が集合し、28.3℃・207.0kWの排気となる。
【0076】
このとき、調節ダンパ52は、主にヒートポンプ入口温度T3が30℃に達していないために、関数z=f(x)により開度(最)大となっている。又、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104は、主に条件要素G1〜G5の充足により閉じている。更に、ヒートポンプ6のファンの風量に応じ、吸込みに必要な風量が吸込口20へ向かい、残余はコンプレッサー保護ダクト32から排出される。従って、28.3℃・207.0kWの排気の内、同温で165.6kWのものが吸込口20へ向かい、同温で41.4kWのものがコンプレッサー保護ダクト32から排出される。
【0077】
吸込口20に達した排気は、熱交換器21を通過して媒体を暖め、20.0℃・125.6kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0078】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の不成立により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0079】
≪動作等・中間季等≫
外気温が中程度である中間季等の場合(外気温度15℃)、換気口8から15.0℃の空気が129.3kW分だけ導入され、各コンプレッサー4の取込口14から15.0℃の空気がそれぞれ53.1kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴いそれぞれ46.1kWの排熱が生じる。そして、連結ダクト30に各排気が集合し、38.9℃・297.6kWの排気となる。
【0080】
このとき、調節ダンパ52は、主に関数z=f(x)により開度zが中程度となっている。又、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104は、主に条件要素G5の不成立により開いている。更に、調節ダンパ52の開度zに応じた風量がヒートポンプ入口冷却ダンパ104の分岐部54へ向かい、残余はコンプレッサー保護ダクト32から排出される。従って、38.9℃・200.8kWの排気が分岐部54へ向かい、同温で62.3kWの排気がコンプレッサー保護ダクト32から排出される。
【0081】
分岐部54への排気は、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104からの15.0℃・21.3kWの空気と混合し(当該空気の流入量はヒートポンプ6のファン風量から分岐部54への排気の量を減じたものに相当する)、35.0℃・222.1kWの排気となって吸込口20に至り、熱交換器21を通過して媒体を暖め、26.4℃・182.1kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0082】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の不成立により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0083】
≪動作等・夏季等≫
外気温が高い夏季等の場合(外気温度35℃)、換気口8から35.0℃の空気が21.5kW分だけ導入され、各コンプレッサー4の取込口14から26.4℃の空気がそれぞれ126.6kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴いそれぞれ46.1kWの排熱が生じる。そして、連結ダクト30に各排気が集合し、51.4℃・518.1kWの排気となる。
【0084】
このとき、調節ダンパ52は、主に関数z=f(x)により開度zが小程度となっている。又、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104は、主に条件要素G5の不成立により開いている。更に、連結ダクト30内の排気は、調節ダンパ52の開度zに応じた量において、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104の分岐部54へ向かうものと、コンプレッサー保護ダクト32へ向かうものとに振り分けられる。即ち、51.4℃・150.7kWの排気が分岐部54へ向かい、同温で401.5kWの排気がコンプレッサー保護ダクト32から排出される。
【0085】
分岐部54への排気は、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104からの26.4℃・209.7kWの空気と混合し、35.0℃・360.4kWの排気となって吸込口20に至り、熱交換器21を通過して媒体を暖め、26.4℃・320.4kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0086】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の成立により開いており、ヒートポンプ6を出た排気は、室内返戻ダクト38の開口62を通じて、機械室2内へ返される。このような冷却された排気の返還により、コンプレッサー4の取込口14やヒートポンプ入口冷却ダクト36から取り込まれる空気の温度(26.4℃)を、外気温(35.0℃)より低くすることができる。
【0087】
≪作用効果等≫
以上の排熱相互利用システム101における作用効果は、前述したヒートポンプ6及びコンプレッサー4の特性から、図6の「第2形態」の欄に示されるような省エネルギー性等となる。
【0088】
即ち、ヒートポンプ6の消費電力は、比較例の142617kWh(キロワット時)に対し、114774kWhに低減され、コンプレッサー4の消費電力も、室温のままで使用する場合に比べて、4319kW省ける。すると、本形態では、比較例に対し合わせて32162kWのエネルギーを節約することができ、比較例の使用エネルギーに対し23%ものエネルギーを節約することができる。
【0089】
又、冬デマンドを考慮した一般的な料金体系において電気代に換算すると、比較例の1943357円に対し、本形態では1402101円となり、比較例に対して541256円・28%の節約となる。
【0090】
そして、本形態において排出する二酸化炭素(炭酸ガス・CO2)は、比較例の59471kg−CO2に比べ、46060kg−CO2となり、13411kg−CO2の炭酸ガスを削減することができ、23%もの炭酸ガスを削減することができる。
【符号の説明】
【0091】
1,101 排熱相互利用システム
4 (エア)コンプレッサー
6 ヒートポンプ
14 取込口(第2吸込温度)
20 吸込口(第1吸込温度)
30 連結ダクト(第1排気路)
32 コンプレッサー保護ダクト(第1室外排気路)
34 ヒートポンプ排気ダクト(第2室外排気路)
38 室内返戻ダクト(第2排気路の一部)
52 調節ダンパ(第1調節手段)
58 コンプレッサー保護ダンパ(第3調節手段)
64 コンプレッサー入口冷却ダンパ(第2調節手段)
104 ヒートポンプ入口冷却ダンパ(第4調節手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンプレッサー(空気圧縮機)及び/又は空冷装置の排熱とヒートポンプの排熱を互いに利用し合うことで、省エネルギー化等を図ることのできる排熱相互利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンプレッサーに関する省エネルギーシステムとして、下記特許文献1に記載のものが知られている。このシステムは、水冷式ヒートポンプの冷水をエアハンドリングユニットの冷熱源として用いて機械室を冷却してエアコンプレッサーの効率を向上させると共に圧縮空気冷却除湿塔の冷熱源としても用い、更に水冷式ヒートポンプの温水を圧縮空気加熱塔の温熱源として用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−8000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このシステムでは、エアコンプレッサーについてはヒートポンプの熱の利用が考慮されているが、ヒートポンプについてはエアコンプレッサーの熱の利用が特段考慮されておらず、省エネルギー性の向上の余地がある。又、ヒートポンプ等の要素が年間を通じて同じ配置であるため、外気温等の環境条件の差異により省エネルギー性に差が生じ、季節によってはさほど省エネルギーにならない場合もある。
【0005】
そこで、請求項1に記載の発明は、エアコンプレッサー及び/又は空冷装置の排熱並びにヒートポンプの排熱を相互に利用することが可能であり、季節を問わず年間を通じて、安定した性能を確保しつつ、エネルギー効率を極めて良好な状態とすることができる排熱相互利用システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するため、第1吸込温度が、通常室温を上回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるヒートポンプと、第2吸込温度が、前記通常室温を下回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるエアコンプレッサー及び/又は空冷装置と、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、前記ヒートポンプへ導く第1排気路と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を上回る状態で前記ヒートポンプに吸い込まれるように調節する第1調節手段と、前記ヒートポンプの排気あるいは当該排気と空気の混合気を、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置へ導く第2排気路と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を下回る状態で前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置に吸い込まれるように調節する第2調節手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
なお、通常室温とは、ヒートポンプの排気等を混合しない場合の機械室等の気温である。通常室温に関しては、室内等に配置された各種機器等の排熱による温度上昇を含めて考えても良い。又、通常室温につき、適宜、(現在)室温や外気温等に拡張して考えても良い。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記目的に加え、更にヒートポンプをエアコンプレッサーの排気により加熱し過ぎる(ヒートポンプに対する吸込温度が効率悪化あるいは故障に至る特定温度以上となる)事態を防止してヒートポンプ等を保護可能とする目的を達成するため、上記発明において、更に、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気の一部又は全部を室外へ排気可能な第1室外排気路と、当該第1室外排気路への排気の流入量を調節する第3調節手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、上記目的に加え、ヒートポンプにおける吸込温度をより一層適切なものとする目的を達成するため、上記発明において、更に、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気に対する空気の混合量を調節する第4調節手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記目的に加え、エアコンプレッサーにおける吸込温度が下げられない場合にヒートポンプの排気を排出して、エアコンプレッサーの吸込温度の調整をより一層適切なものとする目的を達成するため、上記発明において、更に、前記ヒートポンプの排気の一部又は全部を室外へ排気可能な第2室外排気路を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、上記目的に加え、簡便に各種排気等の熱量を調節する目的を達成するため、上記発明において、前記第1調節手段、第2調節手段、第3調節手段、第4調節手段の内の少なくとも何れかがダンパであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エアコンプレッサーの排気等を、通常室温を上回る状態で前記ヒートポンプに吸い込まれるように調節する第1調節手段と、ヒートポンプの排気等を、通常室温を下回る状態で前記ヒートポンプに吸い込まれるように調節する第2調節手段とを具備している。従って、エアコンプレッサーや空冷装置とヒートポンプについて相互に効率を良好化することが可能となり、季節を問わず年間を通じて、安定した性能を確保しつつ、省エネルギー性を極めて良好なものとすることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1形態に係る排熱相互利用システムの模式図である。
【図2】図1の排熱相互利用システムにおけるコンプレッサー保護ダンパ(第3調節手段)の制御図である。
【図3】図1の排熱相互利用システムにおけるコンプレッサー入口冷却ダンパ(第2調節手段)の制御図である。
【図4】図1の排熱相互利用システムにおける調節ダンパ(第1調節手段)の制御図である。
【図5】図1の排熱相互利用システムにおける(a)ヒートポンプ,(b)エアコンプレッサーの、吸込温度毎の消費電力等を示すグラフである。
【図6】比較例と本発明の各形態における消費エネルギー等を示す表である。
【図7】本発明の第2形態に係る排熱相互利用システムの模式図である。
【図8】図7の排熱相互利用システムにおけるヒートポンプ入口冷却ダンパ(第4調節手段)の制御図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態の例につき、適宜図面に基づいて説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。
【0015】
[第1形態]
≪外的構成等≫
図1は第1形態に係るエアコンプレッサー(コンプレッサー)4とヒートポンプ6の排熱相互利用システム1の模式図であって、排熱相互利用システム1は、工場等における機械室2内において、コンプレッサー4、及びヒートポンプ6を有している。排熱相互利用システム1は、図示しない制御手段(例えばコンピュータ)により制御される。当該制御手段とコンプレッサー4及びヒートポンプ6とは、それぞれ電気的に接続されている。
【0016】
又、機械室2の外壁には、換気口8が設置されており、機械室2の内外において通気可能とされており、機械室2内部の空気につき外気と交換可能、即ち機械室2につき換気可能とされている。機械室2は、どのような形式・大きさ等でも良く、例えば広大な工場内やその一部(片隅)であっても良いし、建物内の一区画あるいは一室であっても良い。なお、コンプレッサー4は、消防に関する規制により、給湯用等のガスボイラーと別部屋に設置されることが多いが、ヒートポンプ6であれば、コンプレッサー4と同部屋に配置することができる。
【0017】
コンプレッサー4は、電動機10により駆動される圧縮機12が、空気(エア)を取込口14(第2吸込口)から取り込んで圧縮することで、圧縮空気Pを生成するものである。圧縮空気Pは、例えば工場における圧縮空気Pの配管を通じ、圧縮空気Pの吹き付けが必要な箇所等に配給される。コンプレッサー4の周囲(機械室2内)には、コンプレッサー4の取込口14に係る空気の温度、換言すれば機械室2内の室温(気温)を検知可能である機械室温度センサT1が配置されている。機械室温度センサT1は、前記制御手段に対し電気的に接続されている(以下各種センサや各種ダンパについて同様)。なお、各種センサにより検知される温度について、センサと同符号で示す。又、圧縮空気を供給するコンプレッサー4について、これに代えて、あるいはこれと共に、生産プロセスにおける各種空冷装置(例えば金属等のワークを熱処理した後でワークの空冷を冷風の供給により行う装置や、食品殺菌後の空冷を行う装置等)を用いても良い。
【0018】
ヒートポンプ6は、吸込口20(第1吸込口)から吸い込んだ空気から熱をくみ上げる熱交換器21と、電動機22により駆動される圧縮機23と、給水S(供給される水)と熱交換を行って温水を供給する給湯用熱交換器24を、閉じた媒体配管26において有するものである。なお、これらにおいて、ヒートポンプサイクルが実行される。
【0019】
熱交換器21は、空気と媒体とで熱交換をし、媒体配管26内の媒体を加熱する。圧縮機23は、加熱された媒体配管26内の媒体を断熱圧縮して、給湯用熱交換器24へ送る。給湯用熱交換器24は、媒体と水とで熱交換をして、給水Sを加熱し、これより温度の高い温水Vを生成する。給水Sないし温水Vは水配管28内を移送され、給水Sの量(熱量)は、ポンプ29等の調整手段により調整される。なお、ヒートポンプ6について、温水Vを供給するヒートポンプ式給湯器に代えて、又はこれと共に、ヒートポンプ式空調機等の他の形式のヒートポンプを採用することができる。
【0020】
なお、本形態では、コンプレッサー4の発熱量が46.1kWであり、ヒートポンプ6の給湯能力が56kWであるとするが、当然この値に限定されることはなく、他の数値等も同様である。又、ファン定格風量は、ヒートポンプ6加熱用で毎分240立方メートル、コンプレッサー4冷却用で毎分100立方メートルとする。更に、ヒートポンプ6の運転可能な吸込空気温度の範囲は、下限−15℃、上限40℃とする。
【0021】
そして、コンプレッサー4とヒートポンプ6の間には、連結ダクト30が配置されており、更に、連結ダクト30のコンプレッサー4側と機械室2の外とを結ぶコンプレッサー保護ダクト32が配置されていると共に、連結ダクト30のヒートポンプ6側と機械室2の外とを結ぶヒートポンプ排気ダクト34が配置されている。加えて、連結ダクト30の途中に、(短い)ヒートポンプ入口冷却ダクト36が接続されている。又、ヒートポンプ排気ダクト34の途中(機械室2内の部分)に、(短い)室内返戻ダクト38が接続されている。なお、ダクトの配置・大きさ・断面形状・区分等につき、様々に変更することができる。
【0022】
連結ダクト30は、コンプレッサー4の排気口40、及びヒートポンプ6の吸込口20(内の熱交換器21)に接続されており、コンプレッサー4の(室温より高い温)排気を、熱交換器21へ案内可能である。なお、排気口40には、排気を送り出すためのファンが設置されている。
【0023】
又、連結ダクト30は、他のダクトとの各種接続部(分岐部)や、ダクト内温度(気温)を検知する各種温度センサ、ないしコンプレッサー4の排気(ダクト内の空気)の方向や流量を調整可能な各種ダンパを備えている。これらは、コンプレッサー4側から順に、排気口40に係る排気温を測定可能なコンプレッサー排気温度センサT2、コンプレッサー保護ダクト32との接続部50、ヒートポンプ6への排気の風量を連続的に調節することで、ヒートポンプ6の入口空気温度(熱交換器21手前における排気の温度)を調節する調節ダンパ52、ヒートポンプ入口冷却ダクト36との分岐部54、ヒートポンプ6の入口空気温度を検知可能なヒートポンプ入口温度センサT3である。なお、調節ダンパ52につき、風量を段階的に調節するものとして良い。
【0024】
コンプレッサー保護ダクト32は、前記接続部50から機械室2外部にかけて延ばされており、連結ダクト30からの排気について自身へ受け入れるか否かを切替可能なコンプレッサー保護ダンパ58を有している。なお、コンプレッサー保護ダンパ58につき、コンプレッサー保護ダクト32に入る風量を、段階的にあるいは連続的に変更するものとして良い。
【0025】
ヒートポンプ排気ダクト34は、連結ダクト30に対しヒートポンプ6内を介して連続するように配置されており、ヒートポンプ6の排気口59から、機械室2外部にかけて延ばされている。排気口59には、排気を送り出すためのファンが設置されている。ヒートポンプ排気ダクト34は、ヒートポンプ6側から順に、当該ファンの外側(排気口59外側)における気温であるヒートポンプ出口温度を測定可能なヒートポンプ出口温度センサT4、排気を機械室2内(コンプレッサー4の取込口14)へ戻す室内返戻ダクト38との接続部60を備えている。
【0026】
ヒートポンプ6の熱交換器21を通過する排気は、適宜熱交換により媒体配管26内の媒体を加熱し、これにより自身が冷却される。熱交換器21は、媒体を循環させる媒体配管26において、給湯用熱交換器24より下流(圧縮機23より上流)に配置され、給水Sとの熱交換により熱を奪われて冷却された媒体を適宜加熱する。適宜加熱された媒体は、圧縮機23に達し、断熱圧縮されて給湯用熱交換器24に入る。
【0027】
室内返戻ダクト38は、前記接続部60から、機械室2内の開口62までに亘っており、その内部に、コンプレッサー入口冷却ダンパ64を有している。コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、ヒートポンプ排気ダクト34からの排気について自身へ受け入れるか否か(オンオフ)を切替可能である。なお、コンプレッサー入口冷却ダンパ64につき、室内返戻ダクト38に入る風量を、段階的にあるいは連続的に変更するものとして良い。
【0028】
なお、連結ダクト30が第1排気路に相当し、ヒートポンプ排気ダクト34の接続部60までと、室内返戻ダクト38と、機械室2内の開口62からコンプレッサー4の取込口14までとが、第2排気路に相当する。又、調節ダンパ52が第1調節手段に相当し、コンプレッサー入口冷却ダンパ64が第2調節手段に相当し、コンプレッサー保護ダンパ58が第3調節手段に相当する。更に、コンプレッサー保護ダクト32が第1室外排気路に相当し、ヒートポンプ排気ダクト34が第2室外排気路に相当する。
【0029】
≪内的構成等≫
図2は、前記制御手段によるコンプレッサー保護ダンパ58の制御図である。前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、コンプレッサー保護ダンパ58を全閉し、コンプレッサー保護ダクト32への排気の流入を阻止して、連結ダクト30へ排気を導く。即ち、コンプレッサー排気温度T2(条件要素A1)が、機械室温度T1(条件要素A2)から所定値(ここでは25℃)を加えた温度以下であり(条件要素A3)、且つ(演算子B1)、ヒートポンプ6が運転を開始していて(条件要素A4)、所定時間経過しており(演算子B2)、且つ(演算子B1)、ヒートポンプ入口温度T3が40℃以下であり(条件要素A5)、且つ(演算子B1)、ヒートポンプ入口温度T3を調節する調節ダンパ52の開度が全開である(条件要素A6)場合である。
【0030】
なお、「励磁」が1に対応し、「非励磁」が0に対応する。又、演算子B2等の「tpu」は、ここでは非励磁状態から励磁状態になる場合には所定時間後に励磁状態となるが、励磁状態から非励磁状態になる場合には直ちに非励磁状態となるものとしているところ、後者の場合にも当該所定時間あるいはこれと異なる特定時間後に動作するようにしても良い。更に、条件を構成する条件要素や演算子につき、省略したり、追加したり、同様のものに差し替えたり、参照する調節ダンパ52の開度について全開ではなく所定値以上の場合としたり、他のダンパの開度を参照し当該開度(開閉状況)に応じて変化するものとしたり、これらを組み合わせたりすることができ、以下同様である。
【0031】
一方、前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、コンプレッサー保護ダンパ58を全開し、コンプレッサー保護ダクト32へ排気の流入を許して、排気(の一部)を(機械室2の)外部へ導く。即ち、ヒートポンプ6が運転中でなく(条件要素A4・演算子B3)、又は(演算子B4)、ヒートポンプ入口温度T3が40℃以下でなく(条件要素A5・演算子B5)、又は(演算子B4)、調節ダンパ52の開度が全開でなく(条件要素A6・演算子B6)、又は(演算子B4)、コンプレッサー4が故障している(条件要素A7)場合である。
【0032】
なお、演算子B7,B8は、異常時等において、排気熱が外部に逃がされる点でコンプレッサー4等にとって安全側である全開状態になるように、全閉となる条件を厳しくするものである。又、機器運転中の把握は、機器からの運転信号を受信することで行ったり、機器全体あるいは部品の電源投入を検知して行ったり、出力を検知して行ったり、これらを組み合わせたりすることができる。更に、機器故障は、コンプレッサー4の制御手段が報知する故障信号を受信することで把握したり、全体あるいは部品の電源断や出力断を検知して把握したり、これらを組み合わせたりすることができる。
【0033】
図3は、前記制御手段によるコンプレッサー入口冷却ダンパ64の制御図である。前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、コンプレッサー入口冷却ダンパ64を全開し、室内返戻ダクト38へヒートポンプ6の排気を導入して、機械室2へ排気を導く。即ち、コンプレッサー4運転開始後(条件要素C1)所定時間経過し(演算子D1)、且つ(演算子D2)、ヒートポンプ6運転開始後(条件要素C2)特定時間経過し(演算子D3)、且つ(演算子D2)、機械室温度T1(条件要素C3)とヒートポンプ出口温度T4(条件要素C4)につき前者が後者を上回っている(条件要素C5)場合である。
【0034】
一方、前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、コンプレッサー入口冷却ダンパ64を全閉し、室内返戻ダクト38への排気の流入を阻止して、ヒートポンプ排気ダクト34における排気の全量の流れを維持する。即ち、コンプレッサー4が運転中でない場合である(条件要素C1・演算子D4)。なお、演算子D5〜D8は、排気を全て室外へ出すという点でヒートポンプ6あるいはコンプレッサー4等にとってより安全である全閉側で条件を比較的に緩く、逆に全開側で条件を比較的に厳しくするものである。
【0035】
図4は、前記制御手段による調節ダンパ52の制御図である。前記制御手段は、ヒートポンプ6に導入される排気の温度であるヒートポンプ入口温度T3等の関数z=f(x)により導出された開度zとなるように調節ダンパ52を作動させ、あるいは全閉状態とする。
【0036】
即ち、前記制御手段は、予め設定されるヒートポンプ入口温度設定値(条件要素E2)から、測定されたヒートポンプ入口温度T3(条件要素E1)を減算し(条件要素E3)、関数z=f(x)における変数の一具体値xとして条件要素E4へ入力し、これを適宜(所定間隔毎等で)繰り返す。
【0037】
なお、ヒートポンプ入口温度設定値は、本形態では35℃とする。又、関数z=f(x)は、xとzが一対一であれば任意のものでよいが、ここではダクト内温度(ヒートポンプ入口温度T3)を35℃プラスマイナス5℃の範囲に収められるように帰納的に(事前のテストで決定した)定めたものを用いる。例えば、35℃マイナス5℃の30℃未満であると開度zを最大とし、30℃以上40℃(35℃プラス5℃)以下で開度zを徐々に絞り、40℃を超えると開度zを0とする。
【0038】
一方、前記制御手段は、ヒートポンプ6の運転開始後(条件要素E5)所定時間経過(演算子F1)したときにyを0から1とし、条件要素E4における関数z=f(x)からの開度zの導出を許す。他方、前記制御手段は、ヒートポンプ6の運転停止後(条件要素E5不成立)直ちにyを1から0とし、条件要素E4において開度zを0として、調節ダンパ52を全閉状態とする。なお、演算子F1は、励磁状態から無励磁状態になる場合は直ちに動作する。
【0039】
他方、前記制御手段は、機械室温度T1が35℃以上であると(条件要素E6)、調節ダンパ52を全閉する。なお、演算子F1,F2は、条件要素E4における前記yと同様、安全側である全閉状態に比較的になり易いようにする目的で設定されている。
【0040】
≪動作等・冬季等≫
このような排熱相互利用システム1の動作例につき、主に季節(外気温)毎に説明する。なお、外気温等に応じて短期(数時間毎等)で動作態様を変えても良い。
【0041】
外気温が低い冬季等の場合(外気温度5℃・相対湿度50%)、換気口8から5.0℃の空気が57.6kW分だけ導入され、コンプレッサー4の取込口14から5.0℃の空気が22.9kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から28.3℃・69.0kWの排気が出される。
【0042】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、条件要素A3〜A6の充足(成立)により閉じており、調節ダンパ52は、主にヒートポンプ入口温度T3が35℃マイナス5℃の30℃に達していないために、関数z=f(x)により開度(最)大となっている。従って、28.3℃・69.0kWの排気がそのままヒートポンプ入口冷却ダクト36との分岐部54に達し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36からの5.0℃・34.7kWの空気と混合され、14.3℃・103.7kWの排気となってヒートポンプ6に吸い込まれる。
【0043】
当該排気は、熱交換器21を通過して媒体を暖め、6.2℃・63.7kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0044】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の非充足により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0045】
≪動作等・中間季等1≫
外気温が比較的に低い中間季等の場合(外気温度15℃)、換気口8から15.0℃の空気が133.6kW分だけ導入され、コンプレッサー4の取込口14から15.0℃の空気が53.1kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から38.9℃・99.2kWの排気が出される。
【0046】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、条件要素A3〜A6の充足により閉じており、調節ダンパ52は、主にヒートポンプ入口温度T3が30℃に達していないために、関数z=f(x)により開度(最)大となっている。従って、38.9℃・99.2kWの排気がそのまま分岐部54に達し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36からの15.0℃・80.5kWの空気と混合され、24.5℃・179.7kWの排気となってヒートポンプ6に吸い込まれる。
【0047】
当該排気は、熱交換器21を通過して媒体を暖め、16.3℃・139.7kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0048】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の不成立により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0049】
≪動作等・中間季等2≫
外気温が比較的に高い中間季等の場合(外気温度25℃)、換気口8から25.0℃の空気が227.1kW分だけ導入され、コンプレッサー4に25.0℃の空気が90.5kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から50.0℃・136.6kWの排気が出される。
【0050】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、条件要素A3〜A6の充足により閉じており、調節ダンパ52は、主に関数z=f(x)により開度大となっている。従って、50.0℃・136.6kWの排気が分岐部54に達し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36からの25.0℃・136.6kWの空気と混合され、34.9℃・273.2kWの排気となってヒートポンプ6に吸い込まれる。
【0051】
当該排気は、熱交換器21を通過して媒体を暖め、26.1℃・233.2kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0052】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の不成立により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0053】
≪動作等・夏季起動時等≫
外気温が高い夏季等における起動時の場合(外気温度35℃)、換気口8から35.0℃の空気が139.0kW分だけ導入され、コンプレッサー4に35.0℃の空気が139.0kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から60.4℃・185.1kWの排気が出される。
【0054】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、主に条件要素A6・演算子B6により開いており、調節ダンパ52は、主に条件要素E6の成立により開度0となっている。従って、60.4℃・185.1kWの排気は、そのままコンプレッサー保護ダクト32を通じて排出される。
【0055】
一方、ヒートポンプ入口冷却ダクト36から35.0・360.1kWの機械室2内の空気が取り込まれ、当該空気は熱交換器21を通過して媒体を暖めることで冷却され、26.4℃・320.1kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0056】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C1,C2,C5の成立により開いており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのまま室内返戻ダクト38を通じて(全量)機械室2内に戻され、機械室2内温度を下げて、コンプレッサー4の吸い込み空気温度を低下させる。
【0057】
≪動作等・夏季定常時等≫
外気温が高い夏季等における定常運転時の場合(外気温度35℃)、換気口8から35.0℃の空気が17.5kW分だけ導入され、コンプレッサー4に26.4℃の空気が126.6kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴い46.1kWの排熱が生じて、排気口40から51.4℃・172.7kWの排気が出される。
【0058】
このとき、コンプレッサー保護ダンパ58は、主に条件要素A6・演算子B6により開いており、調節ダンパ52は、主に関数z=f(x)により中程度の開度zとなっている。従って、コンプレッサー保護ダクト32には、51.4℃・23.6kWである排気の一部が振り分けられ、ヒートポンプ入口冷却ダクト36との分岐部54に対しては、51.4℃・150.7kWである排気の一部が導かれる。
【0059】
51.4℃・150.7kWの排気は、ヒートポンプ入口冷却ダクト36からの26.4℃・209.7kWの空気と混合し、35℃・360.4kWの排気となってヒートポンプ6に導入され、当該排気は熱交換器21を通過して媒体を暖めることで冷却され、26.4℃・320.4kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0060】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C1,C2,C5の成立により開いており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのまま室内返戻ダクト38を通じて(全量)機械室2内に戻され、機械室2内温度を外気温より低い状態に維持して、コンプレッサー4の吸い込み空気温度を低くさせる。
【0061】
≪作用効果等≫
以上の排熱相互利用システム1では、吸込口20の温度が、通常室温を上回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるヒートポンプ6と、取込口14の温度が、前記通常室温を下回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるコンプレッサー4と、コンプレッサー4の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、ヒートポンプ6へ導く連結ダクト30と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を上回る状態でヒートポンプ6に吸い込まれるように調節する調節ダンパ52と、ヒートポンプ6の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、コンプレッサー4へ導く室内返戻ダクト38等と、当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を下回る状態でコンプレッサー4に吸い込まれるように調節するコンプレッサー入口冷却ダンパ64と、を備えている。
【0062】
このような排熱相互利用システム1における作用効果を具体的に論ずる前提として、ヒートポンプ6及びコンプレッサー4のそれぞれにおける、吸込空気温度と消費電力との関係に言及する。
【0063】
まずヒートポンプ6であるが、図5(a)において温水Vの温度が60〜70℃の場合における概念的なグラフとして示すように、最下の折線で表される消費電力は、何れの入水温度(給水Sの水温)においても、どのような吸込空気温度でも15kW程度でさほど変わらず、吸込空気温度15℃以上ではむしろ若干少なくなっている。又、上3本の折線で3種の入水温度で表される能力は、吸込空気温度が15℃程度を下回ると、吸込空気温度が下がる程に悪化する一方、15℃程度を超えると、ほぼ横ばいとなる。従って、運転可能である範囲(上限40℃)を超えない限度内で、吸込空気温度が高い方が、消費電力が少ない状態で所望の水温の給湯が可能となり、効率が良好となる。
【0064】
次にコンプレッサー4であるが、図5(b)において模式的なグラフとして示すように、その動力比は吸込空気温度が高くなるほど多くなり、従って、その消費電力は吸込空気温度が低くなるほど少なくなり、効率は吸込空気温度が低くなるほど良くなる。なお、空冷装置も、このようなコンプレッサー4と同様の特性を備える。
【0065】
これらのように、(室温程度の)空気吸込温度に対する消費電力等が逆の特性を持つ複数の機器において、吸込空気温度が高いと消費電力が少なくなる機器に対し、吸込空気温度が低いと消費電力が少なくなる機器の排気を吸わせ、後者の機器に対し、前者の機器の排気を(室温より低い場合に)吸わせると、互いに消費電力が抑制され、互いに省エネルギーとなり、互いに環境性能も良好となる。
【0066】
具体的には、図6の表に示すように、屋外設置の同様な能力を有する給湯用ヒートポンプの場合(比較例)との対比において、「第1形態」の欄に示されるような省エネルギー性(省エネ性)等となる。なお、省エネ性等の算出に際し、1日24時間で365日運用した場合を想定し、機械室2内温度は機器放熱により外気温より5℃高いこととし、静岡地方の気象データに基づいたある1年間における1時間毎の外気温度と、図5(a)の17℃入水温度時の性能曲線の近似式と、図5(b)を用いている。又、比較例における給湯用ヒートポンプの熱負荷は、56kW×24時間×365日で490560kWhである。
【0067】
即ち、ヒートポンプ6の消費電力は、比較例の142617kWh(キロワット時)に対し、120741kWhに低減され、コンプレッサー4の消費電力も、室温のままで使用する場合に比べて、1440kW省ける。すると、本形態では、比較例に対し合わせて23315kWのエネルギーを節約することができ、比較例の使用エネルギーの16%ものエネルギーを節約することができる。
【0068】
又、冬デマンドを考慮した一般的な料金体系において電気代に換算すると、比較例の1943357円に対し、本形態では1554260円となり、比較例に対して389096円・20%の節約となる。なお、冬デマンド考慮とは、ヒートポンプ駆動により冬季に1時間当たりの最大電力が発生して、契約電力を押し上げ、基本料金が上がる影響を考慮していることであり、ここでは18kWである。
【0069】
そして、本形態において排出する二酸化炭素(炭酸ガス・CO2)は、比較例の59471kg−CO2に比べ、49749kg−CO2となり、9722kg−CO2の炭酸ガスを削減することができ、16%もの炭酸ガスを削減することができる。
【0070】
[第2形態]
≪構成等≫
図7は第2形態に係る排熱相互利用システム101の模式図であって、排熱相互利用システム101は、以下に説明する構成要素以外は第1形態と同様である。なお、同様の構成要素には同じ符号を付して適宜説明を省略する。又、変更例も第1形態のものを適用することができる。
【0071】
排熱相互利用システム101は、コンプレッサー4を3台有しており、各排気を連結ダクト30へ導く小ダクト102が3本配置されている。又、コンプレッサー保護ダクト32(接続部50)におけるコンプレッサー保護ダンパ58は省略されている。更に、ヒートポンプ入口冷却ダクト36(分岐部54)には、ヒートポンプ入口冷却ダクト36への機械室2内の空気の流入を開閉により許否するヒートポンプ入口冷却ダンパ104(第4調節手段)が配置されている。ヒートポンプ入口冷却ダンパ104は、コンプレッサー排気温度T2(3台のコンプレッサー4の排気が全て集まったものの気温)と関連付けられている。なお、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104とコンプレッサー保護ダンパ58を併用しても良い。
【0072】
図8は、前記制御手段によるヒートポンプ入口冷却ダンパ104の制御図である。前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104を全閉し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36への空気の流入を阻止して、連結ダクト30における排気の流れをそのままに保持する。即ち、コンプレッサー排気温度T2が40℃以下であり(条件要素G1)、且つ(演算子H1)、ヒートポンプ6が運転を開始していて(条件要素G2)所定時間経過しており(演算子H2)、且つ(演算子H1)、コンプレッサー4が運転を開始していて(条件要素G3)所定時間経過しており(演算子H3)、且つ(演算子H1)、ヒートポンプ入口温度T3が40℃以下であり(条件要素G4)、且つ(演算子B1)、ヒートポンプ入口温度T3を調節する調節ダンパ52の開度が全開である(条件要素G5)場合である。
【0073】
一方、前記制御手段は、次の条件を満たす場合に、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104を全開し、ヒートポンプ入口冷却ダクト36に対する空気の流入を許して、空気を連結ダクト30の分岐部54へ導いて、適宜排気へ混入する。即ち、ヒートポンプ6が運転中でなく(条件G2・演算子H4)、又は(演算子H5)、コンプレッサー4が運転中でなく(条件G3・演算子H6)、又は(演算子H5)、ヒートポンプ入口温度T3が40℃以下でなく(条件G4・演算子H7)、又は(演算子H5)、調節ダンパ52の開度が全開でない(条件G5・演算子H8)場合である。なお、演算子H9,H10は、異常時等において、空気をヒートポンプ6の吸込口20へ導入できる点でヒートポンプ6等にとって安全側である全開状態になるように、全閉となる条件を厳しくするものである。
【0074】
≪動作等・冬季等≫
このような排熱相互利用システム101の動作例につき、主に季節(外気温)毎に説明する。
【0075】
外気温が低い冬季等の場合(外気温度5℃)、換気口8から5.0℃の空気が68.7kW分だけ導入され、各コンプレッサー4の取込口14から5.0℃の空気がそれぞれ22.9kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴いそれぞれ46.1kWの排熱が生じる。そして、各小ダクト102を介して連結ダクト30に各排気が集合し、28.3℃・207.0kWの排気となる。
【0076】
このとき、調節ダンパ52は、主にヒートポンプ入口温度T3が30℃に達していないために、関数z=f(x)により開度(最)大となっている。又、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104は、主に条件要素G1〜G5の充足により閉じている。更に、ヒートポンプ6のファンの風量に応じ、吸込みに必要な風量が吸込口20へ向かい、残余はコンプレッサー保護ダクト32から排出される。従って、28.3℃・207.0kWの排気の内、同温で165.6kWのものが吸込口20へ向かい、同温で41.4kWのものがコンプレッサー保護ダクト32から排出される。
【0077】
吸込口20に達した排気は、熱交換器21を通過して媒体を暖め、20.0℃・125.6kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0078】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の不成立により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0079】
≪動作等・中間季等≫
外気温が中程度である中間季等の場合(外気温度15℃)、換気口8から15.0℃の空気が129.3kW分だけ導入され、各コンプレッサー4の取込口14から15.0℃の空気がそれぞれ53.1kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴いそれぞれ46.1kWの排熱が生じる。そして、連結ダクト30に各排気が集合し、38.9℃・297.6kWの排気となる。
【0080】
このとき、調節ダンパ52は、主に関数z=f(x)により開度zが中程度となっている。又、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104は、主に条件要素G5の不成立により開いている。更に、調節ダンパ52の開度zに応じた風量がヒートポンプ入口冷却ダンパ104の分岐部54へ向かい、残余はコンプレッサー保護ダクト32から排出される。従って、38.9℃・200.8kWの排気が分岐部54へ向かい、同温で62.3kWの排気がコンプレッサー保護ダクト32から排出される。
【0081】
分岐部54への排気は、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104からの15.0℃・21.3kWの空気と混合し(当該空気の流入量はヒートポンプ6のファン風量から分岐部54への排気の量を減じたものに相当する)、35.0℃・222.1kWの排気となって吸込口20に至り、熱交換器21を通過して媒体を暖め、26.4℃・182.1kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0082】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の不成立により閉じており、ヒートポンプ6を出た排気は、そのままヒートポンプ排気ダクト34を通じて、機械室2外へ排出される。
【0083】
≪動作等・夏季等≫
外気温が高い夏季等の場合(外気温度35℃)、換気口8から35.0℃の空気が21.5kW分だけ導入され、各コンプレッサー4の取込口14から26.4℃の空気がそれぞれ126.6kW分だけ吸い込まれ、圧縮空気Pが生成されるのに伴いそれぞれ46.1kWの排熱が生じる。そして、連結ダクト30に各排気が集合し、51.4℃・518.1kWの排気となる。
【0084】
このとき、調節ダンパ52は、主に関数z=f(x)により開度zが小程度となっている。又、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104は、主に条件要素G5の不成立により開いている。更に、連結ダクト30内の排気は、調節ダンパ52の開度zに応じた量において、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104の分岐部54へ向かうものと、コンプレッサー保護ダクト32へ向かうものとに振り分けられる。即ち、51.4℃・150.7kWの排気が分岐部54へ向かい、同温で401.5kWの排気がコンプレッサー保護ダクト32から排出される。
【0085】
分岐部54への排気は、ヒートポンプ入口冷却ダンパ104からの26.4℃・209.7kWの空気と混合し、35.0℃・360.4kWの排気となって吸込口20に至り、熱交換器21を通過して媒体を暖め、26.4℃・320.4kWの排気となって、ヒートポンプ排気ダクト34を通り、ヒートポンプ6を出る。ヒートポンプ6は、熱交換器21による40kWの吸熱と、圧縮機23による断熱圧縮による16kWを加算した、56kWの給湯を行っている。
【0086】
このとき、コンプレッサー入口冷却ダンパ64は、主に条件要素C5の成立により開いており、ヒートポンプ6を出た排気は、室内返戻ダクト38の開口62を通じて、機械室2内へ返される。このような冷却された排気の返還により、コンプレッサー4の取込口14やヒートポンプ入口冷却ダクト36から取り込まれる空気の温度(26.4℃)を、外気温(35.0℃)より低くすることができる。
【0087】
≪作用効果等≫
以上の排熱相互利用システム101における作用効果は、前述したヒートポンプ6及びコンプレッサー4の特性から、図6の「第2形態」の欄に示されるような省エネルギー性等となる。
【0088】
即ち、ヒートポンプ6の消費電力は、比較例の142617kWh(キロワット時)に対し、114774kWhに低減され、コンプレッサー4の消費電力も、室温のままで使用する場合に比べて、4319kW省ける。すると、本形態では、比較例に対し合わせて32162kWのエネルギーを節約することができ、比較例の使用エネルギーに対し23%ものエネルギーを節約することができる。
【0089】
又、冬デマンドを考慮した一般的な料金体系において電気代に換算すると、比較例の1943357円に対し、本形態では1402101円となり、比較例に対して541256円・28%の節約となる。
【0090】
そして、本形態において排出する二酸化炭素(炭酸ガス・CO2)は、比較例の59471kg−CO2に比べ、46060kg−CO2となり、13411kg−CO2の炭酸ガスを削減することができ、23%もの炭酸ガスを削減することができる。
【符号の説明】
【0091】
1,101 排熱相互利用システム
4 (エア)コンプレッサー
6 ヒートポンプ
14 取込口(第2吸込温度)
20 吸込口(第1吸込温度)
30 連結ダクト(第1排気路)
32 コンプレッサー保護ダクト(第1室外排気路)
34 ヒートポンプ排気ダクト(第2室外排気路)
38 室内返戻ダクト(第2排気路の一部)
52 調節ダンパ(第1調節手段)
58 コンプレッサー保護ダンパ(第3調節手段)
64 コンプレッサー入口冷却ダンパ(第2調節手段)
104 ヒートポンプ入口冷却ダンパ(第4調節手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吸込温度が、通常室温を上回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるヒートポンプと、
第2吸込温度が、前記通常室温を下回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるエアコンプレッサー及び/又は空冷装置と、
前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、前記ヒートポンプへ導く第1排気路と、
当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を上回る状態で前記ヒートポンプに吸い込まれるように調節する第1調節手段と、
前記ヒートポンプの排気あるいは当該排気と空気の混合気を、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置へ導く第2排気路と、
当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を下回る状態で前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置に吸い込まれるように調節する第2調節手段と、
を備えていることを特徴とする排熱相互利用システム。
【請求項2】
更に、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気の一部又は全部を室外へ排気可能な第1室外排気路と、
当該第1室外排気路への排気の流入量を調節する第3調節手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の排熱相互利用システム。
【請求項3】
更に、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気に対する空気の混合量を調節する第4調節手段
を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排熱相互利用システム。
【請求項4】
更に、前記ヒートポンプの排気の一部又は全部を室外へ排気可能な第2室外排気路
を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の排熱相互利用システム。
【請求項5】
前記第1調節手段、第2調節手段、第3調節手段、第4調節手段の内の少なくとも何れかがダンパである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の排熱相互利用システム。
【請求項1】
第1吸込温度が、通常室温を上回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるヒートポンプと、
第2吸込温度が、前記通常室温を下回ると、当該通常室温である場合より効率が良好となるエアコンプレッサー及び/又は空冷装置と、
前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気あるいは当該排気と空気の混合気を、前記ヒートポンプへ導く第1排気路と、
当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を上回る状態で前記ヒートポンプに吸い込まれるように調節する第1調節手段と、
前記ヒートポンプの排気あるいは当該排気と空気の混合気を、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置へ導く第2排気路と、
当該排気あるいは混合気を、前記通常室温を下回る状態で前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置に吸い込まれるように調節する第2調節手段と、
を備えていることを特徴とする排熱相互利用システム。
【請求項2】
更に、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気の一部又は全部を室外へ排気可能な第1室外排気路と、
当該第1室外排気路への排気の流入量を調節する第3調節手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の排熱相互利用システム。
【請求項3】
更に、前記エアコンプレッサー及び/又は前記空冷装置の排気に対する空気の混合量を調節する第4調節手段
を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排熱相互利用システム。
【請求項4】
更に、前記ヒートポンプの排気の一部又は全部を室外へ排気可能な第2室外排気路
を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の排熱相互利用システム。
【請求項5】
前記第1調節手段、第2調節手段、第3調節手段、第4調節手段の内の少なくとも何れかがダンパである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の排熱相互利用システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−220122(P2012−220122A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87601(P2011−87601)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
[ Back to top ]