説明

排藁切断装置

【課題】従来、排藁の切断長は予め設定されている長尺と短尺の2種類に限定される点で不利である。
【解決手段】互いに反対方向に回転する一対の回転軸10・20を平行に配置し、一対の回転軸10・20にそれぞれ所定間隔で複数の回転刃11・21を配設し、排藁を投入して切断する排藁切断装置1において、一対の回転軸10・20の断面をそれぞれ小判型形状とし、一対の回転軸10・20はそれぞれねじ軸とし、回転刃11・21を回転軸10・20上それぞれ軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に貫通し、回転刃11・21は両側からナット7a・7bにより固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの後部に配置した排藁切断装置に関し、特に排藁の切断長を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排藁切断装置は、前後平行に設けた一対の回転軸それぞれに円板状の回転刃が一定間隔あけて配置され、それぞれの回転軸の回転刃が対向し先端を側面視で一部重複させ、回転させた両回転軸の間に排藁を投入することで排藁を切断する。
【0003】
このような排藁切断装置において、排藁の切断長を調整するために、切断長切換レバーを備え、前記レバーの操作により両回転軸の軸間距離を調整して排藁を長尺と短尺とに切り分け可能とする技術が公知となっている(特許文献1参照)。
【0004】
また、一方の回転軸は回転刃を一体的に固定し、他方の回転軸は回転刃に前記回転軸を貫通させ両側からダブルナットにより前記回転軸に固定し、前記ダブルナットを軸方向に移動調整することで前記回転刃の固定位置を調整可能とする技術が公知となっている(特許文献2参照)。
【0005】
また、回転軸として排藁切断装置の左右側面内側に一対のアームを短手方向に設け、前記両アームの一端側間には支軸の両端を固設するとともに、前記両アームの他端側間にはねじ杆を回動操作自在に軸架して、前記支軸及び前記ねじ杆には、前記ねじ杆によって往復移動可能な回転刃を備え、前記回転刃の固定位置を調整可能とする技術が公知となっている(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−159555号公報
【特許文献2】実公昭45−012076号公報
【特許文献3】実開昭60−119260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示された構造において、排藁の切断長は予め設定されている長尺と短尺の2種類に限定される点で不利である。
【0008】
また、軸間距離を調整するため、切断長切換レバーや回転軸の移動装置などを備える必要があり、部品数が多く複雑な構成となるので高コストとなる点で不利である。
【0009】
上述した特許文献2に開示された構造において、一方の回転軸においては回転刃が固定位置を軸方向に移動調節することができるが、他方の回転軸においては回転刃が前記回転軸に一体的に固定されているので切断長を自由に変更することはできない点で不利である。
【0010】
また、回転軸の断面と前記回転軸が貫通する回転刃の軸孔とが同一の真円形状であるため、前記回転刃が前記回転軸にダブルナットで締着されていても、例えば一度に多量の排藁が投入され前記回転刃の回転が過負荷になった場合や、長期間の使用により前記ダブルナットが緩んだ場合には前記回転軸が空転することがあり、確実に前記回転刃を駆動することができない点で不利である。
【0011】
上述した特許文献3に開示された構造において、支軸とねじ杆とをアームに備えて回転させるので構造が複雑であり、回転刃を取り替えるなどのメンテナンス作業が困難である点で不利である。
【0012】
また、回転刃を軸方向に移動させ回転刃間の間隔を狭める場合に、前記回転刃間にカラーなどの排藁の巻き取り防止部材を配置すると、前記回転刃と前記防止部材とが干渉して間隔を狭めることができない。従って、前記防止部材を配置することができず、泥土などが付着した排藁が前記回転軸に直接巻き付き、または付着して排藁切断装置の作業効率の低下を招く点で不利である。
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
即ち、請求項1においては、
互いに反対方向に回転する一対の回転軸を平行に配置し、
前記一対の回転軸にそれぞれ所定間隔で複数の回転刃を配設し、
排藁を投入して切断する排藁切断装置において、
前記一対の回転軸の断面をそれぞれ小判型形状とし、
前記一対の回転軸はそれぞれねじ軸とし、前記回転刃を前記回転軸上それぞれ軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に貫通し、
前記回転刃は両側からナットにより固定した、
ものである。
【0015】
即ち、請求項2においては、
前記ナットは円筒状のカバーを備えた、
ものである。
【0016】
即ち、請求項3においては、
前記回転刃と該回転刃を両側から固定する前記ナットとの間のいずれか一方に、前記回転軸が軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に貫通したスターホイルを介装し、
前記スターホイルは前記回転刃を圧着固定するため該回転刃に対し略平行に形成された押圧面と、前記回転刃の板面から軸方向に一定の間隔を空けて鍔形状に形成した鍔部とを備えた、
ものである。
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1において、一対の回転軸それぞれの回転刃の固定位置は、軸方向に自由調整可能となる。これによって、隣り合う回転刃間の間隔を広くすると排藁の切断長を長くでき、逆に前記回転刃間の間隔を短くすると切断長を短くでき、切断長は限定されず自由に調整して所望の長さに設定することが可能となる。
【0019】
また、回転刃の位置調整は、ねじ軸である回転軸上を軸方向にナットによって容易に行うことができる。これによって、排藁切断装置は、部品数も少なく容易な構成となり低コスト化が図れる。また、前記回転刃の取り替えなどのメンテナンス作業が容易となる。
【0020】
また、回転軸の断面と前記回転軸が貫通する回転刃の軸孔とが同一の小判型形状である。これによって、前記回転軸に前記回転刃が相対回転不能に嵌装し、前記回転軸に対して回転刃が空転することがなくなり、確実に回転刃を駆動することが可能となる。また、回転刃は、回転させることなく容易に軸方向に平行移動させることが可能となる。
【0021】
請求項2において、回転刃と巻き取り防止部材とが干渉することなく、切断長の長さを設定することが可能となる。これによって、長さの設定にかかわらず回転軸を前記巻き取り防止部材にて被覆し、前記回転軸に泥土などが付着した排藁が付着したり、巻き付いたりすることを防止し、作業効率の低下を防ぐことが可能となる。また、ねじ山を傷つけることがなくなり、ナットを容易回転できる。
【0022】
請求項3において、スターホイルを設けることによって、スターホイルを設けない場合と比して排藁の掻込み及び掻出しを確実に行うことができる。
また、前記スターホイルの押圧面によって、ナットを締め付ければ同時に該スターホイルが回転軸上を回転刃方向に摺動して前記押圧面が前記回転刃を圧着固定することになるので前記回転刃の位置調整を容易に行うことができる。
また、前記スターホイルの掻込突起によって、一定箇所に留まろうとする排藁を低速側の回転軸側へ押し込んで、より確実に排藁を切断することができる。
また、前記回転刃の刃先と、前記スターホイルの鍔部に形成された前記掻込突起との2箇所の支点で排藁を支持することになり、前記回転刃の回転に対して排藁の折り曲がりを軽減し、確実に排藁を切断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係る排藁切断装置の斜視図、図2は同じく側面図、図3は同じく回転刃の取り付け構成(排藁長を長尺設定した場合)を示す正面図、図4は同じく回転軸の斜視図、図5は同じく回転刃の取り付け構成(排藁長を短尺設定した場合)を示す正面図、図6は同じくナットの斜視図、図7(a)は一実施例に係るスターホイルの側面図、(b)は同じく別形状に係るスターホイルの側面図、(c)は同じく別形状に係るスターホイルの側面図、図8は同じくスターホイルの断面斜視図、図9は同じくスターホイルの取り付け構成を示す正面図、図10は同じくスターホイルの取り付けに使用されるナットの斜視図、図11(a)はスターホイルが無い状態での排藁の切断状況を示す図、(b)は本実施例に係るスターホイルを設けた状態での排藁の切断状況を示す図、図12はスターホイル及びナットの別実施例を示すスターホイルが設けられたナットの斜視図である。
【0024】
まず、図1及び図2を用いて、本発明に係る排藁切断装置の一実施例である排藁切断装置1の全体構成を説明する。
【0025】
排藁切断装置1は、コンバインなどの脱穀装置の後工程側に配設され、通常は機体後部において図示しない排藁チェーンの後部下方に配置される。脱穀後の排藁は前記排藁チェーンより排藁切断装置1へ搬送されて切断され、圃場面上に放出される。
【0026】
前記機体後部に配置される左右のカッター側板8L・8Rの間には、一対の回転軸10・20がそれぞれ回転自在に横架され、回転軸20は回転軸10よりも高い位置で回転軸10よりも前方(前記排藁チェーンに近い位置)で回転軸10と平行に配置される。回転軸10・20は互いに反対方向に回転し、回転軸10は回転軸20よりも高速に回転する。
【0027】
回転軸10・20には、それぞれ複数の回転刃11・21が等しい枚数だけ配設される。また、回転刃11・21は、側面視で互いの先端の一部が重複するように配置される。これによって、回転させた回転軸10と回転軸20との間に排藁を投入することで、回転刃11・21によって排藁が切断される。
【0028】
次に、図3を用いて、回転刃11・21の回転軸10・20への取り付け構成について説明する。なお、回転刃11・21の取り付け構成は互いに同一であるので、回転刃11の回転軸10への取り付け構成を例にあげて説明する。また、回転刃11・21の位置調整も同様に行われる。
【0029】
図3に示すように、回転刃11は、それぞれ左右両側からナット7aとナット7bとによって締め付けられて回転軸10に固定される。回転軸10には、カッター側板8L側から順番に、ナット7a、回転刃11、ナット7bを一組とする回転刃取り付け構成のセットが、所定の間隔をあけて回転刃11の枚数分だけ配設される。
【0030】
回転軸10は、ねじ軸にて構成され、両側面が平行な面で削られた二面幅状に構成される。つまり、その断面3の形状は、図4に示すように小判型形状となっている。回転刃11の中心位置には、断面3と同一形状の軸孔11a(ナット7bにおいては「軸孔21a」)が穿孔されている。軸孔11aは回転軸10の断面3より若干大きく、回転刃11は軸方向に摺動自在に回転軸10を貫通させて、回転軸10に対して相対回転不能に取り付けられる。
【0031】
また、回転軸10は、図4に示すように、外周に雄ねじ(ねじ山)が形成されてねじ軸となっており、ナット7a・7bは回転することによりその位置を容易に変更可能である。従って、回転刃11の位置調整は、回転軸10上でナット7a・7bを回転させて、所望の位置に回転刃11を移動させて、両側からナット7a・7bを締め付けることで回転刃11を固定して行うことができる。こうして、回転刃11の位置調整は、軸方向に容易に行うことができ、排藁切断装置1は、部品数も少なく容易な構成となり低コスト化が図れる。また、回転刃11の取り替えなどのメンテナンス作業が容易となる。
【0032】
また、回転刃11の固定位置は、軸方向に自由調整可能となるので、隣り合う回転刃間の間隔を広くすると排藁の切断長が長くでき、逆に前記回転刃間の間隔を短くすると切断長が短くでき、切断長は限定されず自由に調整して所望の長さに設定することが可能となる。例えば、畜産の飼料や敷き藁、野菜栽培の敷き藁や肥料など、目的に合わせて排藁の切断長を変更でき、また、穀稈の長さに合わせて、切断位置の変更も可能となる。
【0033】
また、回転軸10の断面3と回転軸10が貫通する回転刃11の軸孔11aとが同一の小判型形状であるので、回転軸10に回転刃11を嵌装すると、回転刃11は回転軸10に対して相対回転不能となり、回転刃11に過負荷がかかった場合でも回転軸10に対して回転刃11が空転することがなくなり、確実に回転刃を駆動することが可能となる。また、回転刃11は、回転させることなく容易に軸方向に平行移動させることが可能となる。
【0034】
次に、図3、図5及び図6を用いて、ナット7a・7bについて説明する。
【0035】
ナット7a・7bは、締付部4a・4bと円筒部5a・5bとがそれぞれ同一軸心上に一体的に構成されている。
締付部4a・4bは、ねじ軸である回転軸10にナット7a・7bを螺嵌させるねじ溝を内側に備える。そして、締付部4aと締付部4bとが回転軸10上で回転刃11を挟んで固定面9aと固定面9bとを対向するように螺装し、両者を互いに反対方向に回転させて回転刃11を圧着するように締め付けることによって、回転軸10上に回転刃11を固定する。
【0036】
円筒部5a・5bは、ナット7a・7bの側面に固設され、内径を回転軸10の外径よりも大きく構成して、回転刃11と回転刃11との間の回転軸10を覆って排藁の付着などを防ぐ円筒形状のカバーである。ここで、一方のナット7bの円筒部5bの外径は、他方のナット7aの円筒部5aの内径よりも若干小径となっている。従って、一方の円筒部5bは、他方の円筒部5aの内側と回転軸10との間に形成される空間内を摺動可能となる。なお、回転刃11と回転刃11の間隔が容易に認識できるように、径が小さい側の円筒部5bの外周面に、調整(軸心)方向に目盛りを設けておくことで、回転刃11の固定位置が容易に認識できるようになる。
【0037】
これにより、隣り合う回転刃11と回転刃11との間の間隔を狭くして切断長を短尺に設定する場合は、図5に示すように、一方のナット7aを緩める側に回転し、または、他方のナット7bを締め付ける側に回転することにより、円筒部5aの軸方向長さだけ円筒部5bを円筒部5a内部に挿入するので、円筒部5aと円筒部5bとが互いに干渉することなく回転刃11と回転刃11との間の間隔を狭くすることが可能である。
【0038】
但し、全ての回転刃11の間隔を一様に狭くする場合には、右側または左側(通常は株元側)に寄せるため、例えば、左側に寄せる場合には、左側端の回転刃11を固定した状態で、その右側の回転刃11を所望の間隔となるように、ナット7aを緩める側に、ナット7bを締め付ける側に回転させて移動して回転刃11を固定し、その右側の回転刃11はその左側の回転刃11を移動した距離の二倍の長さ左に移動させる。その右側の回転刃11は三倍の長さ、その右側は四倍の長さと順に整数倍づつの長さに左に移動させて固定するのである。
【0039】
逆に、隣り合う回転刃間の間隔を広くして切断長を長尺に設定する場合には、図3に示すように、前述の例とは逆に、一方のナット7aを締め付ける側に回転し、または、他方のナット7bを緩める側に回転することにより、円筒部5aから円筒部5bが抜け出ることになり、側面視で重複した部分の長さが短くなり、回転軸10に排藁などが付着することを防止するために、回転軸10は外部に現れることがない範囲で、回転刃11と回転刃11の間の間隔を長くすることができる。
【0040】
これによって、回転刃11と巻き取り防止部材である円筒部5aとが干渉することなく、切断長の長さを設定することが可能となるので、長さの設定にかかわらず回転軸10を円筒部5aにて被覆し、回転軸10に泥土などが付着した排藁が付着したり、巻き付いたりすることを防止し、作業効率の低下を防ぐことが可能となる。また、ねじ山を傷つけることがなくなり、ナット7a・7bを容易に回転できる。
【0041】
但し、全ての回転刃11の間隔を一様に長くする場合には、右側または左側(通常は穂先側)へ広げるため、例えば、右側へ伸ばす場合には、左側端の回転刃11を固定した状態で、最右端に位置する回転刃11から所望の間隔となるように、ナット7aは締め付ける側に、ナット7bは緩める側に回転させて移動して回転刃11を固定し、その右端の回転刃11とその左側の回転刃11との間隔が所望の長さとなるように移動させ、順に所望の間隔となるように右側へ移動させて固定するのである。
【0042】
また、本実施形態の排藁切断装置1において、回転刃11・21と、該回転刃11・21を両側から固定するナットとの間のいずれか一方に、スターホイルを介装することができる。
即ち、図9にて示すように、回転軸20においては、正面視でカッター側板8Lから順番に、ナット7a、回転刃21、スターホイル23、ナット17b、を一組とする、また、回転軸10においては、正面視でカッター側板8Lから順番に、ナット17a、スターホイル13、回転刃11、ナット7b、を一組とする回転刃取り付け構成のセットが、所定の間隔をあけて回転刃11・21の枚数分だけそれぞれ配設される。
これによって、スターホイル13・23を設けることで、スターホイル13・23を設けない場合と比して排藁の掻込み及び掻出しを確実に行うことができる。
【0043】
図7、図8及び図9を用いて、スターホイル13・23について説明する。
スターホイル13・23は、図8及び図9で示すように、有底筒状の凹部30と、該凹部の軸方向一端側(底側の反対側)の開口部の外縁に形成される鍔形状の鍔部31と、該凹部30に穿孔された軸孔32から主構成されている。
【0044】
軸孔32は、スターホイル13・23の中心位置に、回転軸10・20の断面3の形状と同一の小判型形状に穿孔されたものであり、回転刃11・21と同様に回転軸10・20を軸孔32に軸方向に摺動自在に貫通させて、スターホイル13・23を回転軸10・20に対して相対回転不能に取り付ける。
【0045】
また、凹部30の底面は、軸方向に回転刃11・21を圧着固定する押圧面28として、回転刃11・21の板面と略平行に構成されている。後述の隣接するナット17a・17bを締め付けることにより回転軸10・20上を回転刃側へ摺動し、該回転刃11・21を挟んで対向するナット7b・7aの締付部4b・4aの固定面9b・9aとともに回転刃11・21を両側から圧着して回転軸10・20に固定する。
【0046】
鍔部31は、スターホイル13・23が圧着固定する回転刃11・21の板面と略平行に、軸心方向に一定間隔をあけて設けられる。
【0047】
スターホイル23は、図7(a)にて示すように、側面視でそれぞれ頂点を掻込突起24とする略三角形状(スターホイル23a)か、または図7(b)にて示すように、鍔部31である真円形状の外周に連続した複数の掻込突起25・25・25・・・が形成され、該掻込突起25のうち一定の割合で掻込突起25より径(スターホイル23の中心点から掻込突起の先端までの長さと規定する)の長い掻込突起26を設けた形状(スターホイル23b)のいずれかにより構成されている。
【0048】
スターホイル23の直径は、図9にて示すように、回転刃21の直径と略同一である。
ここで「直径」とは、スターホイル23aに関しては、スターホイル23aの中心点から掻込突起24の先端までの長さを半径とした場合の直径であり、スターホイル23bに関しては、スターホイル23bの中心点から掻込突起25の先端までの長さを半径とした場合の直径と規定する。
即ち、スターホイル23bに関しては、掻込突起26が、掻込突起25より前記径が長いため、側面視で回転刃21の外周から掻込突起26の先端が外側に突出して構成されている。
これによって、掻込突起26を設けることで、回転刃11と回転刃21との間において、一定箇所に留まろうとする排藁を低速側の回転軸20側へ押し込んで、より確実に排藁を切断することができる。
また、上述の通り、スターホイル23は回転軸20に相対回転不能に取り付けられるため、所定の間隔をあけて設けられたスターホイル23・23・23・・・は、それぞれの掻込突起26が長期間使用した場合でも位相がずれることなく、本発明の効果を維持することができる。
【0049】
一方、スターホイル13は、図7(a)にて示すように、側面視でスターホイル23aと同一の略三角形状(スターホイル13a)か、または図7(b)にて示すように、真円形状(スターホイル13b)のいずれかにより構成されている。
また、スターホイル13の直径は、図9にて示すように、スターホイル23とは異なり、回転刃11の直径より小径に構成されている。
【0050】
上述の通り、排藁切断装置1において回転刃11と回転刃21とは、側面視で互いの先端の一部が重複するように配置される。本実施例においては、回転軸10の回転刃11の先端は、対向する回転軸20の回転刃21の先端と、該回転刃21を圧着固定するスターホイル23の鍔部31との間に介装され、該回転刃21及び該スターホイル23と側面視で重複するように配置される。
【0051】
なお、スターホイル13と回転刃11との径の長さの差は、半径方向に回転刃11と回転刃21とが重複した長さより長いため、スターホイル13と、回転刃21及びスターホイル23とは側面視で先端が重複することはない。
【0052】
これによって、図11(a)にて示すように、排藁を切断する際に高速側の回転刃11の回転によって、排藁が回転刃21の刃先を支点として折り曲がり切断できなくなる場合があったのを、図11(b)にて示すように、回転刃21の刃先と、スターホイル23の鍔部31に形成された前記掻込突起との2箇所の支点で排藁を支持することになり、回転刃11の回転に対して排藁の折り曲がりを軽減し、確実に切断することができる。
【0053】
また、高速側の回転軸10に設けられたスターホイル13は、排藁を回転刃11と回転刃21との間に掻込み、掻出しを行うので、切断効率をより向上させることができる。
なお、スターホイル13は、主として低速側の回転軸20に設けられたスターホイル23の効果を補助するものであるので、スターホイル13を使用しない場合においてもスターホイル23による本発明の効果は得られる。
【0054】
次に図10を用いて、ナット17a・17bについて説明する。なお、上述のナット7a・7bと略同一の構成部材には同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0055】
図10に示すように、ナット17a・17bは、円筒部15a・15bと、締付部4a・4bと、円筒部5a・5bとが、それぞれ同一軸心上に一体的に構成されている。円筒部15a・15bはナット7a・7bにおけるの固定面9a・9b中心部に設けられた円筒形状のカバーであり、円筒部5a・5bと略同一の構成となっている。即ち、ナット17a・17bは、ナット7a・7bと同様に回転軸10・20上を移動し、スターホイル13・23を介して回転刃11・21を回転軸10・20に固定することができる。
【0056】
円筒部15a・15bを設けたことにより、締付部4a・4bはスターホイル13・23の凹部30内側(隣接する回転刃10・20と反対側)に内設されず、締付部4a・4bを締め付け、または緩める場合に締結道具等の工具をスターホイル13・23に干渉することなく使用することができる。
【0057】
また、図12に示すように、別実施例としてナットとスターホイルとを一体構成とすることができる。即ち、ナット27a・27bにおいては、一端側から順番に締付部4a・4bと、スターホイル19・29と、円筒部5a・5bとがそれぞれ同一軸心上に一体的に構成されている。
スターホイル19・29は、正面視で円板状に形成される他はスターホイル13・23と同一の構成となっている。
これによって、ナット27a・27bを使用することで、スターホイル13・23及びナット17a・17bによって排藁切断装置1を構成した場合と同様の本発明の効果を得ることができる。
【0058】
以上の如く、本実施形態の排藁切断装置1は、互いに反対方向に回転する一対の回転軸10・20を平行に配置し、一対の回転軸10・20にそれぞれ所定間隔で複数の回転刃11・21を配設し、排藁を投入して切断する排藁切断装置1において、一対の回転軸10・20の断面をそれぞれ小判型形状とし、一対の回転軸10・20はそれぞれねじ軸とし、回転刃11・21を回転軸10・20上それぞれ軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に貫通し、回転刃11・21は両側からナット7a・7bにより固定したものである。
このように構成することにより、一対の回転軸10・20それぞれの回転刃11・21の固定位置は、軸方向に自由調整可能となる。これによって、隣り合う回転刃間の間隔を広くすると排藁の切断長を長くでき、逆に前記回転刃間の間隔を短くすると切断長を短くでき、切断長は限定されず自由に調整して所望の長さに設定することが可能となる。また、回転刃11・21の位置調整は、ねじ軸である回転軸10・20上を軸方向にナット7a・7bによって容易に行うことができる。これによって、排藁切断装置1は、部品数も少なく容易な構成となり低コスト化が図れる。また、回転刃11・21の取り替えなどのメンテナンス作業が容易となる。また、回転軸10・20の断面3と回転軸10・20が貫通する回転刃11・21の軸孔11aとが同一の小判型形状である。これによって、回転軸10・20に回転刃11・21が相対回転不能に嵌装し、回転軸10・20に対して回転刃11・21が空転することがなくなり、確実に回転刃11・21を駆動することが可能となる。また、回転刃11・21は、回転させることなく容易に軸方向に平行移動させることが可能となる。
【0059】
また、排藁切断装置1において、ナット7a・7bは円筒状のカバーを備えたものである。
このように構成することにより、回転刃11・21と巻き取り防止部材とが干渉することなく、切断長の長さを設定することが可能となる。これによって、長さの設定にかかわらず回転軸10・20を巻き取り防止部材にて被覆し、回転軸10・20に泥土などが付着した排藁が付着したり、巻き付いたりすることを防止し、作業効率の低下を防ぐことが可能となる。また、ねじ山を傷つけることがなくなり、ナット7a・7bを容易に回転できる。
【0060】
また、排藁切断装置1において、回転刃11・21と該回転刃11・21を両側から固定するナット7a・7bとの間のいずれか一方に、回転軸10・20が軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に貫通したスターホイル13・23を介装し、該スターホイル13・23は回転刃11・21を圧着固定するため該回転刃11・21に対し略平行に形成された押圧面28と、回転刃11・21の板面から軸方向に一定の間隔を空けて鍔形状に形成した鍔部31とを備えたものである。
このように構成することにより、スターホイル13・23を設けることによって、該スターホイル13・23を設けない場合と比して排藁の掻込み及び掻出しを確実に行うことができる。
また、スターホイル13・23の押圧面28によって、ナット17a・17bを締め付ければ同時に該スターホイル13・23が回転軸上を回転刃方向に摺動して押圧面28が前記回転刃11・21を圧着固定することになるので回転刃11・21の位置調整を容易に行うことができる。
また、スターホイル23の掻込突起26によって、一定箇所に留まろうとする排藁を低速側の回転軸20側へ押し込んで、より確実に排藁を切断することができる。
また、回転刃21の刃先と、スターホイル23の鍔部31に形成された前記掻込突起との2箇所の支点で排藁を支持することになり、回転刃11の回転に対して排藁の折り曲がりを軽減し、確実に排藁を切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施例に係る排藁切断装置の斜視図。
【図2】同じく側面図。
【図3】同じく回転刃の取り付け構成(排藁長を長尺設定した場合)を示す正面図。
【図4】同じく回転軸の斜視図。
【図5】同じく回転刃の取り付け構成(排藁長を短尺設定した場合)を示す正面図。
【図6】同じくナットの斜視図。
【図7】(a)一実施例に係るスターホイルの側面図(b)同じく別形状に係るスターホイルの側面図(c)同じく別形状に係るスターホイルの側面図。
【図8】同じくスターホイルの断面斜視図。
【図9】同じくスターホイルの取り付け構成を示す正面図。
【図10】同じくスターホイルの取り付けに使用されるナットの斜視図。
【図11】(a)スターホイルが無い状態での排藁の切断状況を示す図(b)本実施例に係るスターホイルを設けた状態での排藁の切断状況を示す図。
【図12】スターホイル及びナットの別実施例を示すスターホイルが設けられたナットの斜視図。
【符号の説明】
【0062】
1 排藁切断装置
4a 締付部
5a 円筒部
7a ナット
9a 固定面
10 回転軸
11 回転刃
11a 軸孔
13 スターホイル
17a ナット
23 スターホイル
27a ナット
30 凹部
31 鍔部
32 軸孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対方向に回転する一対の回転軸を平行に配置し、
前記一対の回転軸にそれぞれ所定間隔で複数の回転刃を配設し、
排藁を投入して切断する排藁切断装置において、
前記一対の回転軸の断面をそれぞれ小判型形状とし、
前記一対の回転軸はそれぞれねじ軸とし、前記回転刃を前記回転軸上それぞれ軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に貫通し、
前記回転刃は両側からナットにより固定した、
ことを特徴とする排藁切断装置。
【請求項2】
前記ナットは円筒状のカバーを備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の排藁切断装置。
【請求項3】
前記回転刃と該回転刃を両側から固定する前記ナットとの間のいずれか一方に、前記回転軸が軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に貫通したスターホイルを介装し、
前記スターホイルは前記回転刃を圧着固定するため該回転刃に対し略平行に形成された押圧面と、前記回転刃の板面から軸方向に一定の間隔を空けて鍔形状に形成した鍔部とを備えた、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排藁切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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