説明

排藁搬送装置

【課題】排藁稈量が変動するような場合、排藁搬送チェーンの搬送力によりガイドレールの可動レールが引っ張られて伸長する。
【解決手段】固定レール61に、断面逆U字状の中間レール62を固定する。該中間レール62から伸縮自在となる可動レール63は、その上部を中間レール62にて覆われると共に、そのプレート80の長孔81が支持ブラケット75のピン76aに案内されて、後部レール支持機構77にスライド自在に支持される。中間レール62は、当接面Cを介して後部レール支持機構77に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に備えられる排藁搬送装置に係り、詳しくは、排藁搬送チェーンと該排藁搬送チェーンの下方に配置されたガイドレールとによって排藁を挟持して搬送する排藁搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、脱穀処理された排藁を該コンバインの後部に配置された排藁処理部に搬送する排藁搬送装置を有しており、該排藁処理部には、排藁を細かく切断して機外に排出するカッタや、該カッタ上を通過して搬送されてきた排藁を集束して排出するドロッパや、カッタ上を通過して搬送されてきた排藁を結束し、藁束として排出するノッタ等がある。なお、ノッタやドロッパを搭載していないコンバインの場合には、搬送されてきた排藁をそのまま(長稈のまま)機体後方に放出する。
【0003】
上記コンバインに備えられた排藁搬送装置には、これら複数の排藁処理部に選択的に排藁を搬送できるようにしたものがある。つまり、排藁搬送装置は、排藁を搬送するための排藁搬送チェーンと、該排藁搬送チェーンの下方に配置され、固定レール及び可動レールを有するガイドレールとを備えており、これらによって排藁を挟持しながら搬送し、固定レールに対して可動レールを伸縮させる伸縮機構によって排藁の搬送先の選択を可能にしている。
【0004】
従来、上記ガイドレールは、その固定レールが始端側に配置されたパイプ部材からなり、該パイプ部材に中実丸棒部材からなる可動レールが出没自在に内装されて、終端側が伸縮自在に構成されている。また、固定レールは、固定レール支持機構により排藁搬送チェーンに向けて付勢支持されており、可動レールは、可動レール支持機構により排藁搬送チェーンに向けて付勢されていると共に、長孔及びピンによりスライド自在にかつ軸回り方向の回動が規制されて支持されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−333631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ガイドレールは、固定レールに可動レールが抜差し自在に嵌挿されており、可動レールは、その伸長位置にあっては勿論、収納位置にあっても可動レール支持機構からの付勢力により排藁搬送チェーンとの間に排藁を直接挟持する。従って、可動レールには、排藁搬送チェーンからの搬送方向の力が作用し、特に排藁稈量が変化する場合、可動レールが上記チェーンからの搬送力により伸長方向に移動し、カッタ位置に操作しているつもりが、カッタを越えた位置に排出してしまうことがある。
【0007】
そこで、本発明は、可動レールの上方を、特にその収縮位置にあっては、中間レールで覆い、もって上述した課題を解決した排藁搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
排藁を搬送する排藁搬送チェーン(21)と、該排藁搬送チェーンの下方に配置されると共に該排藁搬送チェーンに向けて付勢・支持されるガイドレール(22)と、該ガイドレール(22)を前記排藁搬送チェーン(21)に向けて付勢・支持するレール支持機構(77)と、を備え、
前記排藁搬送チェーン(21)及び前記ガイドレール(22)によって排藁を挟持しつつ搬送し、前記ガイドレールを伸長・収縮させることで排藁の搬送先を変更し得る排藁搬送装置(20)において、
前記ガイドレール(22)は、前記排藁搬送チェーンの搬送方向に固定されている固定レール(61)と、該固定レールに一端が固定されかつ下方が開放している中間レール(62)と、該中間レールの開放部(62c)を通って前記レール支持機構(77)にスライド自在に支持される可動レール(63)と、を有し、
前記可動レール(63)は、前記中間レール(62)の他端側から伸縮自在となり、かつその収縮位置にあっては、前記中間レール(62)にてその下方開放側以外の略々全体が覆われてなる、
ことを特徴とする。
【0009】
前記レール支持機構(77)は、レール支持ロッド(71)と、該レール支持ロッドを前記排藁搬送チェーン(21)に向けて付勢するスプリング(73)とを有し、
前記中間レールの下端面の一部(62b)と前記レール支持ロッド(71)の上端面(75)とを当接して、該当接面(C)を介して前記スプリング(73)にて前記中間レール(62)を前記排藁搬送チェーン(21)に向けて付勢支持してなる。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明によると、固定レールに固定されかつ下方が開放している中間レールを設け、該中間レールに上方を覆われて可動レールが、レール支持機構にスライド自在に支持されるので、特にガイドレールの収納位置(カッタへの排藁供給位置)にあっては、可動レールは略々そのすべてを中間レールに覆われ、例え大きな排藁束を排藁搬送チェーンとの間で挟持しても、可動レールには該チェーンからの搬送力が作用することがなく、例えばスプリングに抗して可動レールが引っ張られて伸長することはなく、収縮位置に保持することができる。
【0012】
請求項2にかかる本発明によると、中間レールが、レール支持ロッドに当接してレール支持機構により支持されるので、該中間レールの下方への動きは、上記当接面を介してレール支持機構により支持され、レール支持機構により支持される可動レールも共に下動するので、例えばチェーンの自重等が中間レールに作用したとしても、可動レールの滑らかな移動を保持して、例えばスプリングによる可動レールのカッタ位置への収納移動を阻害してカッタ入口での詰り等の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に関する実施の形態を図1乃至図6に沿って説明する。
【0014】
本実施の形態に係るコンバイン1は、図1に示すように、左右のクローラ走行装置4R,4Lに支持された走行機体2を有しており、該走行機体2に対して昇降自在に接続されている前処理部3と、脱穀部10と、運転席部5とを備えて構成される。
【0015】
上記走行機体2は、右側前方に座席シート6を有する運転席部5と、該運転席部5の後方側に穀粒を一時的に貯留するためのグレンタンク7と、該グレンタンク7の後部から略々垂直に立設されかつ旋回自在な長筒を有する排出オーガ8とがそれぞれ配置されている。また、走行機体2の左側には、搬送された穀稈を脱穀する脱穀部10が配置され、該脱穀部10の後方には、詳しくは後述する排藁搬送装置20と排藁処理部30とが配置されている。
【0016】
上記前処理部3は、穀稈を分草するデバイダ42と、穀稈引起し装置41とを有しており、該前処理部3の後方には、穀稈搬送装置等を有している。前処理部3で穀稈引起し装置41によって引起されて刈取られた穀稈は、穀稈搬送装置を介して外側をカバー45aに覆われた脱穀フィードチェーンに引継がれて脱穀部10に供給される。脱穀部10で脱穀・選別された穀粒は、揚上移送されてグレンタンク7に一時的に貯留され、該貯留された穀粒は、排出オーガ8により機外に搬出される。一方、脱穀部10にて脱穀された後の穀稈(排藁)は、排藁搬送装置20により機体後部に搬送され、排藁処理部30に供給される。上記排藁処理部30は、カッタケース35と、該カッタケース35の上面部分に配置された切換え板33aと、回転刃ユニット31とを備えている。
【0017】
排藁搬送装置20は、図2ないし図6に示すように、脱穀フィードチェーンから引継いだ排藁を搬送する排藁搬送チェーン21と、該排藁搬送チェーン21の下方に配置され排藁搬送チェーン21との間に排藁を挟持するためのガイドレール22とによって構成されている。排藁搬送チェーン21は、駆動スプロケット51、従動スプロケット52、両スプロケットの間に配置されたフレーム53、爪付きチェーン55及び巻付防止プレート56を有しており、上記チェーン55は、両スプロケット51,52に巻掛けられると共に、その内側をフレーム53に案内されて回転する。
【0018】
ガイドレール22は、固定レール61、中間レール62及び可動(スライド)レール63を有し、固定レール61及び中間レール62は一体に固定され、可動レール63は、上記中間レール62に対して伸縮自在となっている。固定レール61は、搬送チェーン21の始端側(駆動スプロケット51側)に配置され、パイプ材からなり、その始端側が搬送チェーンから離れる方向に折曲されていると共に、搬送チェーン21の対接する部分は直線状になっている。該直線部分61aの背面側にはレール支持ロッド65及びプレート66が一体に固着(溶着)されており、レール支持ロッド65は機体フレームに固定されたプレート68に上下方向移動自在に支持され、かつ該支持ロッドに固定されたストッパ67との間にスプリング69が縮設されて搬送チェーン21に向けて付勢されて、前部レール支持機構78を構成している。
【0019】
上記固定レール61の直線部分61aの先端には中間レール62が一直線に延長するように固着(溶着)されている。中間レール62は、図4〜6に詳示するように、固定レール側は固定レール側の一部のみが断面円形のパイプ状部からなり、その他の部分(略々全長のすべて)は、下方が開放した逆U字状部62aからなる。更に、逆U字状部62aの一部は、U字状の両端が下方に向けて突出した突出部62bが形成されている。前記可動レール63は、中間レール62の後端側から挿入され、一部がパイプ状の固定レール61内にかつ中間レール62の逆U字状部62a内に抜差し自在となって、ガイドレール22の長さを調整し得る。
【0020】
機体フレームに固定されたブラケット70にレール支持ロッド71が上下方向移動自在に支持され、かつ支持ロッドに固定されたストッパ72との間にスプリング73が縮設されて搬送チェーン21に向けて付勢され、後部レール支持機構77を構成している。該レール支持ロッド71の上端には、図4,図5に詳示ように、U字状の支持ブラケット75が固着されており、該ブラケットにはガイドローラ76がピン76aにより回転自在に支持されている。なお、後部支持機構77のストッパ72は、ブラケット70の上部折曲部70aに当接して、中間レール62及び可動レール63の上方付勢位置が規制されている。
【0021】
前記可動レール63は、先端(終端)側がチェーン21と反対側に折曲しており、かつその直線部63aの下方に突出して逆U字状のブラケット80が一体に固着(溶着)されている。該ブラケット80は、前記中間レール62の逆U字状部62aの下方開放部62cを通って下方に突出しており、かつ該ブラケット80には可動レールの直線部63aと平行に長孔81が形成されていると共に、その始端側(固定レール側)と固定レール61のプレート66との間にスプリング79が張設されており、該可動レール63を固定レール61側(可動レールが収縮する方向)に付勢している。そして、前記長孔81には前記ガイドローラ76のピン76aが嵌挿されており、従って可動レール63は、上記ピン76a及び長孔81を介して、後部レール支持機構77にスライド自在に支持されている。一方、該後部レール支持機構77の上記レール支持ロッド71の上端面となる支持ブラケット75のU字状上面は、前記中間レール62の突出部62b下面と当接しており、上記後部レール支持機構77は、該当接面Cを介して中間レール62をも支持している。
【0022】
前記逆U字状ブラケット80の固定レール側にはピン82cによりワイヤ82が連結されており、該ワイヤは上記ブラケット80の逆U字内を通って、上記ガイドローラ76に案内されて外部に露出している。上記ワイヤ82は、両端が固定部に設けられたアウタワイヤ82aに案内されて、機体の適所に配置された操作レバー83に連結されている。該操作レバー83は、ガイド溝85aを有するガイド板85に案内され、長藁排出位置Aとカッタ位置Bとに切換え操作される。該操作レバー83の枢支軸83bに対して上記ガイドレール操作用ワイヤ82の取付け位置と反対側に他のワイヤ86が連結されており、該ワイヤ86の他端は前記カッタ切換え板33aに連結されている。
【0023】
ついで、本実施の形態に係る排藁搬送装置の作用について説明する。脱穀部10にて脱穀された排藁は、フィードチェーンから排藁搬送装置20に受け渡される。
【0024】
操作レバー83がカッタ位置Bに操作されていると、ボーデンワイヤ82は弛められて、スプリング79の張力により可動レール63は、図2に示すように、中間レール62内に収納された収縮位置にある。また、他のワイヤ86を介してカッタ切換え板33aが開(起立)位置(図1参照)に操作される。この状態で、フィードチェーンから受け渡された排藁は、排藁搬送装置20の始端部に供給され、前部及び後部支持機構78,77にて付勢支持されているガイドレール22と排藁搬送チェーン21との間に挟持されつつ、チェーンの走行と共に後端に向って搬送される。そして、収縮位置にある可動レール63(殆ど中間レール62の先端に整列)から落下され、カッタ切換え板33aに案内されてカッタケース35に導かれ、回転刃ユニット31により細かく裁断されてコンバイン1の機体後方から圃場面に散蒔かれる。
【0025】
この際、排藁は、支持機構78,77のスプリング69,73により付勢されているガイドレール22により搬送チェーン21に押付けられており、チェーン21の進行に伴い
、可動レール63をスプリング79に抗して引きずり出そうとする力が作用するが、可動レール63の上部は、その殆どが断面逆U字状の中間レール62で覆われており、該中間レールは固定レール61に一体に固定されて、可動レール63が引出されることはない。
【0026】
作業者が操作レバー83を長藁排出位置Aに操作すると、ボーデンワイヤ82を介して、可動レール63をスプリング79に抗して引出すと共に、他のワイヤ86を介してカッタ切換え板33aを閉じ位置に操作する。この際、上記ワイヤ82は、可動レール63の固定レール側ピン82cからU字状のプレート80内を通って、ガイドローラ76に案内されて導かれているので、可動レール63は、長孔81及びピン76aに案内されつつスプリング79に抗して滑らかに軸方向に伸長される。
【0027】
可動レール63は、長孔81及びピン76aを介して後部レール支持機構77に支持されていると共に、中間レール62は、当接面Cを介して後部レール支持機構77に支持され、固定レール61が前部レール支持機構78に支持され、これらが相俟って、ガイドレール22が排藁搬送チェーン21に向けて付勢されて支持されている。
【0028】
上記フィードチェーンからの排藁は、伸長状態にあるガイドレール22に案内されて、排藁搬送チェーン21により長藁排出位置まで搬送され、長藁の状態で直接又は結束装置により結束されて、コンバイン機体後方から落下される。この際、排藁束により可動レール63及び中間レール62に下方へ向けて大きな力が作用するが、可動レール63からの力は、ブラケット80の長孔81及びピン76aを介してレール支持ロッド71及びスプリング73(後部支持機構77)により受けられ、また中間レール62からの力は、突出部62b及び支持ブラケット75の当接面Cを介してレール支持ロッド71及びスプリング73(後部支持機構77)により受けられる。これにより、可動レール63と中間レール62との隙間を常に一定に保持して、可動レール63の中間レール62に対する軸方向移動を滑らかな移動を保持する。
【0029】
そして、操作レバー83を長藁排出位置Aからカッタ位置Bに操作すると、ワイヤ82が弛められ、スプリング79により可動レール63は収縮位置に移動される。この際、上述したように、可動レール63は、滑らかな相対移動を保持されているので、スプリング79の引張り力により、逆U字状の中間レール62内に滑らかに収納される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る排藁搬送装置を適用し得るコンバイン全体を示す側面図。
【図2】本発明に係る排藁搬送装置のカッタ作業位置にある状態を示す側面図。
【図3】その長藁作業状態を示す側面図。
【図4】その後面図。
【図5】その要部の斜視図。
【図6】その分解斜視図。
【符号の説明】
【0031】
1 コンバイン
20 排藁搬送装置
21 排藁搬送チェーン
22 ガイドレール
61 固定レール
62 中間レール
62a 逆U字状部
62b 下端面の一部(突出部)
63 可動レール
71 レール支持ロッド
72 ストッパ
73 スプリング
75 (支持ロッドの)上端面(支持ブラケット)
77 (後部)レール支持機構
C 当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排藁を搬送する排藁搬送チェーンと、該排藁搬送チェーンの下方に配置されると共に該排藁搬送チェーンに向けて付勢・支持されるガイドレールと、該ガイドレールを前記排藁搬送チェーンに向けて付勢・支持するレール支持機構と、を備え、
前記排藁搬送チェーン及び前記ガイドレールによって排藁を挟持しつつ搬送し、前記ガイドレールを伸長・収縮させることで排藁の搬送先を変更し得る排藁搬送装置において、
前記ガイドレールは、前記排藁搬送チェーンの搬送方向に固定されている固定レールと、該固定レールに一端が固定されかつ下方が開放している中間レールと、該中間レールの開放部を通って前記レール支持機構にスライド自在に支持される可動レールと、を有し、
前記可動レールは、前記中間レールの他端側から伸縮自在となり、かつその収縮位置にあっては、前記中間レールにてその下方開放側以外の略々全体が覆われてなる、
ことを特徴とする排藁搬送装置。
【請求項2】
前記レール支持機構は、レール支持ロッドと、該レール支持ロッドを前記排藁搬送チェーンに向けて付勢するスプリングとを有し、
前記中間レールの下端面の一部と前記レール支持ロッドの上端面とを当接して、該当接面を介して前記スプリングにて前記中間レールを前記排藁搬送チェーンに向けて付勢支持してなる、
請求項1記載の排藁搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate