説明

排藁集束装置

【課題】単位時間あたりの排藁量が増加しても、集束した排藁を乱さずに放出することができる排藁集束装置を提供する。
【解決手段】排藁搬送装置2から搬送されてくる排藁を受け止める集束杆11と、該集束杆11の後方に配置されて排藁を集束杆11に向かって案内する案内杆12と、該集束杆11と案内杆12の先端部12aとを交差可能に回動する駆動手段とを備えて、排藁を所定量ごとに集束して放出するように構成した排藁集束装置であって、前記集束杆11の中途部から後方へ湾曲させる構成とし、集束杆11と案内杆12とが交差して閉じた集束状態のときに、集束杆11の後端部11aを略鉛直下方向へ向かうように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排藁搬送装置から搬送されてくる排藁を所定量ごとに集束して放出する排藁集束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排藁搬送装置から搬送されている排藁を所定量ごとに集束して放出する排藁集束装置は周知となっている。このような排藁集束装置は、排藁搬送装置から搬送されてくる排藁を受け止める集束杆と、該集束杆の後方に配置されて排藁を集束杆に向けて案内し、集束杆上の排藁の落下を防止する案内杆とを上下方向に回動可能に支持し、該集束杆と案内杆とをバネで付勢して互いに交差する排藁集束位置まで回動することで、その集束杆上に排藁を集束し、排藁の集束重量が所定重量となると、集束杆と案内杆をバネに抗して互いに離れるように機体後方を向く放出位置まで回動させて、集束杆上の排藁を所定量の排藁束として地面上に所定間隔ごとに放出するように構成されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開昭63−2439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のような排藁集束装置においては、集束杆を略水平方向を向くように維持して排藁の重量で下方に回動し、該集束杆のみで排藁搬送装置から搬送されてくる排藁を受け止めるように構成されていたため、集束杆と案内杆との間に集束される排藁の荷重が全て集束杆にかかりバネ力で支えることになり、バネが伸びたりして耐久性の低下を招く恐れがあった。
【0004】
また、コンバインの大型化や刈取脱穀作業時における走行速度の上昇により単位時間あたりの収穫量が多くなり、それに伴って排藁搬送装置にて搬送される単位時間あたりの排藁量も多くなると、集束杆と案内杆とが放出位置から集束位置に回動して戻ると即座に所定重量に達し、または、集束位置まで完全に戻らないうちに集束杆上の排藁の集束重量が所定重量に達して、排藁が絶え間なく放出されるようなことが生じる。このように放出された排藁が切れ目なく地面上に大きく広がると、束として集める時に境目が判りづらいために束の大きさがバラバラとなり、分離するための手間も増加していた。
そこで、本発明は斯かる課題に鑑み、単位時間あたりの排藁量が増加しても、集束した排藁を乱さずに放出することができる排藁集束装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、排藁搬送装置から搬送されてくる排藁を受け止める集束杆と、該集束杆の後方に配置されて排藁を集束杆に向かって案内する案内杆と、該集束杆と案内杆の先端部とを交差可能に回動する駆動手段とを備えて、排藁を所定量ごとに集束して放出するように構成した排藁集束装置であって、前記集束杆は機体後部から斜め後下方へ延出し、その中途部から上後方へ湾曲させる構成とし、集束杆と案内杆とが交差して閉じた集束状態のときに、集束杆の後端部を略鉛直下方向へ向かうように構成したものである。
【0007】
請求項2においては、前記排藁搬送装置から搬送されてくる排藁量を測定する手段を排藁搬送装置に配置し、該排藁量測定手段と前記駆動手段を制御手段と接続し、排藁量に応じて前記集束杆及び案内杆を開閉駆動するように構成したものである。
【0008】
請求項3においては、前記測定手段を排藁搬送装置の下方に配置した挟扼杆の上下方向の移動量を測定する装置で構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、単位時間あたりの排藁量が増加した場合、案内杆と集束杆の回動速度が速くなっても、集束した排藁を垂直に落下させることにより、集束杆に残る排藁をなくして、集束した排藁ごとに放出することができる。また、斜め後下方に放出する場合に比べ、排藁が分散しにくいため、排藁同士の境目を目視することが容易となる。
【0011】
請求項2においては、刈取条数が本体の最大刈取可能条数より少ない場合など、排藁量が初期の設定値より少ない場合であっても、排藁の集束を一定に近づけることが可能となる。
【0012】
請求項3においては、実際に搬送される排藁量を検出することが可能となるため、排藁量が初期の設定値より少ない場合であっても、排藁の集束を一定に近づけることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は排藁集束装置の閉状態を示す側面図、図2は排藁集束装置の開状態を示す側面図、図3は排藁集束装置の制御機構を示すブロック図、図4は排藁集束装置の開閉制御方法を示すフローチャート図、図5は従来の排藁集束装置が閉状態から再び閉状態へ移行する様子を示す側面図、図6は本発明の排藁集束装置が閉状態から再び閉状態へ移行する様子を示す側面図、図7は別実施例における排藁集束装置の閉状態を示す側面図、図8は別実施例における排藁集束装置の開状態を示す側面図、図9は別実施例における排藁集束装置の背面図、図10は本発明の一実施例に係る排藁集束装置を装着したコンバインの後方斜視図である。
【実施例1】
【0014】
図1、図2、図10に示すように、コンバイン1の機体後部には脱穀済の排藁をフィードチェンから排藁搬送チェン3及び挟扼杆4に受け継ぎ後方に搬送する排藁搬送装置2と、排藁搬送装置2により搬送されてくる排藁を回転刃6・7にて切断して外部に排出可能とする排藁切断装置5とが備えられている。そして、排藁搬送装置2の後下方で排藁切断装置5の後方に排藁集束装置10が設けられ、排藁搬送装置2の挟扼杆4の伸縮と排藁切断装置5の排藁投入口を覆うカバー8の開閉とによって、排藁搬送装置2からの排藁が排藁切断装置5又は排藁集束装置10のどちらかに択一的に搬送されるように構成されている。
【0015】
前記排藁集束装置10は、排藁搬送装置2で搬送されてくる排藁を所定量ごとに集束して外部に放出するものであり、排藁切断装置5後部の左右一側または両側に上下方向に延設された支持フレーム15を介して取り付けられた集束杆11と、集束杆11の後方に配置される案内杆12と、集束杆11と案内杆12との間に配置された駆動手段13などから構成されている。
【0016】
すなわち、排藁集束装置10が図1に示す集束位置(閉状態)の時に、前記排藁切断装置5又は機体に取り付けられた支持フレーム15の下端部に軸16が回転可能に左右水平方向に支持され、該軸16上に回動アーム17が左右方向所定間隔をあけて複数本斜め後下方に突出して固定されて一体回動可能に設けられている。但し、支持フレーム15に対して軸16を片持ち支持として、支持フレーム15を上下方向の軸を中心として排出方向に合わせて左右回動可能に構成することもできる。そして、該回動アーム17に集束杆11の其端部が固着されて、集束杆11が軸16を中心にして上下方向に回動可能とされている。
【0017】
さらに、軸16の左右一側端にはアーム18が後方に突出するように固定され一体回動可能に設けられて、該アーム18が回動される際に軸16上の回動アーム17も同時に回動されるように構成されている。
【0018】
また、前記支持フレーム15は側面視逆L字状または逆「レ」状となるように上部が後方に折り曲げられて、上後端部に軸21が回転自在に支持され、該軸21上に所定間隔をあけて複数の回動アーム22が一体回動可能に設けられている。そして、該回動アーム22に案内杆12の基端部が固着されて、案内杆12が集束杆11の後方で軸21を中心にして上下方向に回動可能とされている。なお、集束杆11と案内杆12は同じ本数にしてもよい。また、稈の長さによって隣り合う案内杆12と案内杆12との間隔を調節することもできる。
【0019】
前記案内杆12はその中途部が後方へ突出するように折り曲げられて側面視略「へ」字状又は円弧状に形成されて、先端部12aが機体進行方向を向くように配置されている。つまり、側面視において案内杆12の下部は後方に膨らむように湾曲して形成されて前下端は斜め下前方を向くように構成されて、集束杆11の前後中途部又は後部と側面視で略X状に交差するように配設されている。こうして、集束杆11と案内杆12とによってできるだけ多くの排藁を集められるようにし、かつ、できるだけ下方の空間で小さなスペースで多くの排藁を集められるようにしている。
一方、前記集束杆11は後下方に向けて突出しており、その中途部で折り曲げられて円弧状(またはクランク状)に形成されて、先端部11aは略直下方を向くように配置されている。
従来の集束杆は略後水平方向に突出され、案内杆は直線状であったために、排藁の集束量を多くすると上方に堆積するものであり、その重心も上方にあったが、本発明では重心が低く断面視略円状に集束させるため断面積を従来よりも小さくできるのである。
【0020】
そして、図1に示すように、閉状態のとき、集束杆11の後端が水平面と成す角度θ1は略直角となるように設定され、案内杆12の先端部12aと水平面となす角度をθ2とすると、角度θ2は前下がりの鋭角となるように設定している。そして、閉状態では集束杆11と案内杆12とが側面視で交差され、その状態で排藁を集束するように構成されている。
また、前記軸21にはアーム23が前方に突出するように一体回動可能に設けられて、該アーム23が回動される際に軸21上の回動アーム22も同時に回動されるように構成されている。
【0021】
そして、前記支持フレーム15の下部側方に駆動手段13が集束杆11と案内杆12との間に位置するように支持されている。駆動手段13はアクチュエータである電動モータ31と、電動モータ31の出力軸31aに一体回転可能に設けられた回転板32と、該回転板32と前記軸16に固設したアーム18とを連係する連係リンク33と、回転板32と前記軸21に固設したアーム23とを連係する連係リンク34などからなり、電動モータ31の駆動によって集束杆11と案内杆12とをそれぞれ回動することができるように構成されている。なお、駆動手段13にて回動される集束杆11と案内杆12の回動ストロークに関しては、案内杆12の回動角度が集束杆11の回動角度よりも小さくなるようにアーム18とアーム23や連係リンク33・34の枢支位置が設定されている。
【0022】
このような駆動手段13において、電動モータ31が駆動され、図1において回転板32がX1方向に回動されると、両連係リンク33・34がクランク運動してアーム18・23がそれぞれ軸16・21を中心として下方へ回動されて、一方のアーム18の回動に伴って集束杆11が前下方へ回動され、他方のアーム23の回動に伴って案内杆12が後上方へ回動される。そして、集束杆11と案内杆12とが互いに離れる方向に予め設定された回動ストロークだけ回動されて、図2に示すように、「開」位置(放出位置)において、集束杆11の先端が略鉛直下方向を向き、案内杆12の先端部12aが斜め前下方(機体進行方向)を向くようにする。
【0023】
こうして、集束杆11と案内杆12は強制駆動されて、集束杆11上に載置された排藁は下方に落下し、案内杆12上に載置された排藁は斜め前方へ落下され、排藁は略塊の状態で落下されることになり、収穫量が多くなっても、集束して落下した排藁とその前に落下した排藁との間には確実に境目ができ、容易に分離することができる。これに対して従来の集束装置では、集束杆上に殆どの藁が載置されて、バネ力に抗して下方へ回動し、開放状態のときは真下まで下がらずに斜め後下方となっていたので、排藁はズルズルと斜め後下方へ滑り落ちるようになり、案内杆は後方へ回動して開放口を開けるだけの作用であり、排藁は進行方向に長く連なって落下することにより、境目がない状態が生じることがあった。
【0024】
逆に電動モータ31が駆動され、図2において、回転板32がX2方向に回動されると、両連係リンク33・34によりアーム18・23がそれぞれ軸16・21を中心として上方へ回動されて、一方のアーム18の回動に伴って集束杆11が上方へ回動され、落下してくる排藁を受け止めるように回動し、他方のアーム23の回動に伴って案内杆12が下方へ回動されて、落下してくる排藁の流れを断ち切るように回動する。つまり、本発明では集束杆11と案内杆12の両方が開閉駆動されて、排藁集束装置10の前後略中央位置で閉じることになるので、従来のように後端で閉じる構成に比べて開放にかかる時間及び閉じるにかかる時間も短くすることができ、刈取量が多く大量の排藁が落下されても、前記短くなった分、落下した排藁の塊と塊の間を長くすることができるのである。但し、連係リンク33・34の一端を同一軸上に枢支して回転板32またはクランクアームに支持するように構成して、電動モータ31を逆転させることなく同一方向に回転させるように構成することもできる。
【0025】
そして更に、図1に示すような閉状態において、集束杆11の後部は後方へせり出すように湾曲して形成されて、先端部11aは鉛直下方向を向いて、略垂直な面を形成している。前記案内杆12とは垂直な面となる直前の傾斜面で交差しており、排藁は前記集束杆11及び案内杆12によって囲まれたスペースに堆積する。
【0026】
次に、図5及び図6を用いて、排藁集束装置10が閉状態から再び閉状態に移行するまでの様子を示す。図5及び図6において、(a)は排藁を貯留している閉状態、(b)は閉状態から開状態へ移行している状態、(c)は開状態、(d)は開状態から閉状態へ移行している状態、(e)は排藁を排出した後の閉状態をそれぞれ示している。
集束杆11を図5に示すように、直線状に構成した場合には、排出速度(回転数)を上げると排出時に集束杆11に堆積した排藁が完全に落下する前に閉状態へと移行するために、図5(e)に示すように、排藁の一部分が残留して間断なく落下し、集束杆11の先端に残った藁が後方へ飛ばされて集束していた排藁が乱れる場合があった。この問題を解決するため、集束杆11を短くすると、今度は集束幅(前進方向の落下幅)が広がってしまうために低速時に排藁をダラダラと垂れ流すこととなり境目がなくなる場合が生じた。
【0027】
そこで、前記のように集束杆11の中途部を側面視で後方にせり出すように湾曲させることにより、閉状態においては、集束杆11の湾曲した部分と案内杆12の交差する部分によって区切られたスペースに排藁が堆積する。案内杆12が放出位置へと移動して開状態となると、図6(e)に示すように、集束杆11上に堆積した排藁は斜め後方に落下するのではなく先端部11aの垂直な面に沿ってほぼ鉛直下方に落下するため、飛散したり、集束が解けたりすることを防止できる。そして、閉じる直前においても集束杆11の先端部11aは下方を向いているため集束杆11上に残る残稈が殆どなく、集束杆11の先端部11aで飛ばされることもないのである。
【0028】
また、図3に示すように、前記駆動手段13の電動モータ31は制御装置35と接続されて、制御装置35にて制御されるように構成されている。制御装置35は機体の任意位置に設けられ、電動モータ31の出力軸31aの回転量に基づいて排藁集束装置10の開閉状態を検出する手段である開閉検出センサ41と接続されて、該開閉検出センサ41の検出値に基づいて排藁集束装置10の開閉状態を判断することができるように構成されている。
【0029】
制御装置35は脱穀クラッチの切状態を検出する手段である脱穀クラッチセンサ36や排藁搬送装置2で搬送される排藁量を検出する手段である排藁量センサ37と接続されて、各センサ36・37の検出値に基づいて排藁集束装置10の開閉状態を制御するように構成されている。つまり、制御装置35は脱穀クラッチセンサ36により脱穀クラッチの切状態が検出される場合や排藁量センサ37により排藁搬送装置2で排藁が搬送されていないことが検出される場合には、電動モータ31を一定時間のみ駆動を停止させて、排藁集束装置10が閉状態に保持されるよう構成されている。
【0030】
そして、前記制御装置35はフィードチェンの駆動軸の回転数を検出する手段である回転数センサ38とも接続され、この回転数センサ38の検出値と予め設定した設定値との比較を行い、その結果で電動モータ31の駆動間隔を適宜調整して、排藁集束装置10の開閉状態を制御するように構成されている。つまり、制御装置35は電動モータ31をフィードチェンの駆動に同調して駆動させることで、フィードチェンの駆動軸の回転数が増大するに従って、その回転数に比例して、または段階的に、排藁集束装置10が開状態で停止する時間と閉状態で停止する時間を長くするようにして、大量の排藁が排出されても対応できるようにしている。逆に、刈取量が減少してフィードチェンの駆動軸の回転数が減少すると、排藁集束装置10の開状態で停止する時間と閉状態で停止する時間を短くするように構成されている。こうして、排藁集束装置10の閉状態における排藁の集束量が略一定量とされている。
【0031】
前記制御装置35は回転数センサ38の代わりに排藁搬送装置2に設けた排藁量センサ37の検出値に基づいて排藁集束装置10の開閉状態を制御し、前記同様に排藁集束装置10の閉状態における排藁の集束量を略一定量に維持するように構成することもできる。この場合には、制御装置35は、排藁搬送装置2にて搬送される排藁量が増大すると、電動モータ31の駆動間隔を短くして、排藁集束装置10の開状態と閉状態の時間を短くする一方、排藁搬送装置2にて搬送される排藁量が減少すると、電動モータ31の駆動間隔を長くして、排藁集束装置10の開状態と閉状態を長くするように構成される。
【0032】
前記排藁量センサ37は、排藁搬送装置2の排藁搬送チェン3の下方に配置した挟扼杆4の上下方向の移動量を測定する装置である。具体的には前記排藁量センサ37はリニアポテンショメータなどにより構成されており、排藁の多少によって上下する挟扼杆4の位置を計測してそのデータを制御装置35へ伝達する。前記制御装置35へ送られたデータに基づいて排藁集束装置10の開閉時間を設定する。但し、排藁量を検出する手段は排藁搬送装置2に配設する代わりにフィードチェーンや縦搬送装置等に配置することも可能であり、また、挟扼杆の移動量を検出する代わりに搬送される稈に直接当検知部材を当接させて、稈の量を検出する構成とすることも可能である。
また、前記排藁量センサ37は、排藁の重量を感知するセンサによって構成することも可能である。この場合、集束杆11上に載置される排藁重量を検知し、排藁の多少を計測し、そのデータを制御装置へ伝達することとなる。このように搬送される稈の量を検出することにより、変形圃場の刈取や3条刈のコンバインで1条または2条刈り取る場合等、刈り取る穀稈の量が変化した場合であっても、その穀稈量に応じて集束して排出することができるため、排出された塊毎の排藁量のバラツキを小さくすることができるのである。
【0033】
また、制御装置35は排藁集束装置10の開閉状態を切り替える電動モータ31の駆動間隔を設定器39を用いて手動で変更し、排藁集束装置10における排藁の集束量を任意に調節することができるように構成されている。なお、排藁集束装置10における排藁の集束量は、電動モータ31の回転速度でも調整が可能である。
すなわち、排藁搬送チェン3の速度や排藁の集束量の設定に合わせて電動モータ31の回転速度を変化させることにより集束量を一定にすることができる。例えば、回転数センサ38で検出した排藁搬送チェン3の駆動軸の回転数が1.5倍となった際には、電動モータ31の回転速度も1.5倍とすることにより、排藁の集束量は一定となる。
また、前記設定器39により、集束量を2倍に設定した場合は電気モータの速度を2分の1とすることにより、設定に応じた集束量を集めることができる。こうして、車速が高速になっても集束量を安定させることができる。
【0034】
さらに、制御装置35は運転操作部などの機体の任意位置に設けられた操作スイッチ40が入状態になると、電動モータ31を強制的に駆動して、排藁集束装置10を開状態に保持するように構成されている。これにより、排藁搬送装置2で搬送されてくる排藁を排藁切断装置5で切断することもなく、また排藁集束装置10で集束することもなく垂れ流し的に排出することができるようにしている。
【0035】
このように構成することにより、制御装置35により回転数センサ38の検出値に基づいて設定された設定時間の間は排藁集束装置10が閉状態とされて、集束杆11と案内杆12とが互いに交差する排藁受止位置で保持され、排藁搬送装置2から搬送されてくる排藁が案内杆12で案内されながら集束杆11で受け止められて、集束杆11と案内杆12との間に積み重ねられて集束される。そして、設定時間経過後に集束杆11と案内杆12とが駆動手段13の電動モータ31の駆動により互いに離れる方向に回動されて排藁放出位置に保持されて、排藁集束装置10が開状態とされ、この状態で集束杆11と案内杆12との間から所定量の排藁が集束杆11及び案内杆12で案内されながら地面上に先に放出された所定量の排藁と所定間隔をあけて放出される。
【0036】
さらに、設定時間が経過すると、駆動手段13の電動モータ31が再度駆動され、この電動モータ31の駆動により集束杆11と案内杆12とが互いに近づく方向に回動されて交差する排藁受止位置で保持されて、排藁集束装置10が閉状態とされて、再び排藁集束装置10で排藁搬送装置2からの排藁が集束杆11と案内杆12とで集束される。こうして、コンバインの刈取脱穀作業時に、排藁集束装置10による排藁の集束と放出とが繰り返されて、排藁が所定量ずつの束となって地面上に所定間隔ごとに配置されることになる。
【0037】
そして、前記排藁集束装置10の開閉状態の切換は制御装置35によって次のように制御される。すなわち、図4に示すように、まず、前記脱穀クラッチセンサ36の検出値に基づいて脱穀クラッチがオフ状態か否かが判断(ステップS1)される。脱穀クラッチがオフ状態ではない場合、前記操作スイッチ40がオン状態か否かが判断(ステップS2)され、操作スイッチ40がオン状態であれば、前記開閉検出センサ41の検出値に基づいて排藁集束装置10が開状態であるか否かが判断(ステップS3)される。そして、排藁集束装置10が開状態でなければ、電動モータ31が駆動(ステップS4)されて、排藁集束装置10は開状態とされ、逆に排藁集束装置10が開状態であれば、電動モータ31の駆動は停止(ステップS5)されて、開状態を示すフラグが立ち(ステップS6)、排藁集束装置10は開状態に保持される。
【0038】
また、前記ステップS2で操作スイッチ40がオン状態ではない場合、前記回転数センサ38によりフィードチェンの回転数(B)が検出(ステップS7)され、該検出値に基づいてフィードチェンが停止しているか否かが判断(ステップS8)される。フィードチェンが停止していない場合には、前記排藁量センサ37により排藁搬送装置2で搬送される排藁量(A)が検出(ステップS9)され、該検出値に基づいて排藁搬送装置2で排藁が搬送されているか否かが判断(ステップS10)される。排藁搬送装置2で排藁が搬送されている場合には、前記設定器39により設定された集束量が読み込まれ(ステップS11)、排藁集束装置10を閉状態に保持する時間(Tclose)が算出(ステップS12)される。
【0039】
排藁集束装置10を閉状態に保持する時間(Tclose)は、排藁集束装置10の開閉状態を切り替える電動モータ31をフィードチェンに同調させる場合には、数式1
【0040】
【数1】

【0041】
で示され、排藁量センサ37に同調させる場合には、数式2
【0042】
【数2】

【0043】
で示される。
【0044】
そして、排藁集束装置10を閉状態に保持する時間(Tclose)の算出後、排藁集束装置10の開状態を示すフラグが立っているか否かが判断(ステップS13)され、開状態を示すフラグが立っている場合には、排藁集束装置10が開状態か否かが判断(ステップS14)される。排藁集束装置10が開状態でなければ、電動モータ31が駆動(ステップS15)されて、排藁集束装置10が開状態とされ、その保持時間(T1)が定数からなる排藁集束装置10を開状態に保持する時間(Topen)と等しくなるように設定(ステップS16)されて、開状態を示すフラグが立ち(ステップS17)、排藁集束装置10が開状態に保持される。一方、ステップS14で排藁集束装置10が開状態であれば、電動モータ31の駆動は停止(ステップS18)され、保持時間(T1)が所定時間(Δt)だけ減算されて再度算出(ステップS19)され、該開状態保持時間(T1)が経過したか否かが判断(ステップS20)される。そして、開状態保持時間(T1)が経過していなければ、排藁集束装置10は開状態に保持され、該開状態保持時間(T1)が経過していれば、閉状態を示すフラグが立ち(ステップS21)、排藁集束装置10が閉状態とされる。
【0045】
また、ステップS13で排藁集束装置10の開状態を示すフラグが立っていない場合には、排藁集束装置10が閉状態か否かが判断(ステップS22)される。排藁集束装置10が閉状態でなければ、電動モータ31が駆動(ステップS23)されて、排藁集束装置10が開状態とされ、その保持時間(T2)が排藁集束装置10を閉状態に保持する時間(Tclose)と等しくなるように設定(ステップS24)されて、閉状態を示すフラグが立ち(ステップS25)、排藁集束装置10が閉状態に保持される。一方、ステップS22で排藁集束装置10が閉状態であれば、電動モータ31の駆動は停止(ステップS26)され、保持時間(T2)が所定時間(Δt)だけ減算されて再度算出(ステップS27)され、該保持時間(T2)が経過したか否かが判断(ステップS28)される。そして、保持時間(T2)が経過していなければ、排藁集束装置10は閉状態に保持され、保持時間(T2)が経過していれば、開状態を示すフラグが立ち(ステップS29)、排藁集束装置10が開状態とされる。
【0046】
また、ステップS1で脱穀クラッチがオフ状態である場合、ステップS8でフィードチェンが停止している場合、ステップS10において排藁搬送装置2で排藁が搬送されていない場合には、排藁集束装置10が閉状態か否かが判断(ステップS30)される。排藁集束装置10が閉状態でなければ、電動モータ31が駆動(ステップS31)されて、排藁集束装置10が閉状態とされ、一方排藁集束装置10が閉状態であれば電動モータ31の駆動は停止(ステップS32)されて、閉状態を示すフラグが立ち(ステップS33)、排藁集束装置10は閉状態に保持される。
【0047】
また、前記集束杆11と案内杆12を回動させる駆動手段は、以下に述べる駆動手段50・70のように構成することも可能である。駆動手段50は、図7、図8に示すように、排藁切断装置5(高速軸または低速軸)からベルト49を介して動力を得て駆動回転する軸51上の駆動プーリ52と、駆動プーリ52と軸53上にワンウェイクラッチを介して設けられたカム54に固設されたアーム55とを連係する連係リンク56と、カム54と当接可能に軸57上に設けられた回転板58と、回転板58と軸59上のアーム60とを連係する連係リンク61と、カム54と当接可能に軸62上に設けられた回転板63などからなり、駆動プーリ52の駆動回転によって軸59上にアーム64を介して一体回動可能に設けられた集束杆11と回転板63に固着された案内杆12とをそれぞれ回動することができるように構成される。
【0048】
そして、前記駆動手段50を支持する、排藁切断装置5の後部に取り付けられた支持フレーム65と回転板58に枢支される連係リンク61との間にバネ66が設けられ、該バネ66にて連係リンク61を介して回転板58がその当接部58aでカム54の外周に当接されるように付勢される。また、支持フレーム65と回転板63との間にもバネ67が設けられ、該バネ67にて回転板63がその当接部63aでカム54の外周に当接されるように付勢される。
【0049】
このように構成することにより、図7において、駆動プーリ52が回転されると、連係リンク56のクランク運動によりアーム55が上下方向に揺動されてワンウェイクラッチを介してカム54が一方向に回動され、該カム54の回動に伴ってカム54の傾斜部が当接部58a・63aと当接して一方の回転板63がバネ67に抗して回動されて、案内杆12が上方へ回動される。同時に他方の回転板58もバネ66に抗して回動され、連係リンク61によりアーム60が下方へ回動され、該アーム60の回動に伴って軸59上の集束杆11が下方へ回動される。そして、当接部58a・63aがカム54の大径部に至ると、集束杆11と案内杆12とがカム54のアーム55が下方へ回動された状態となりその間は排藁放出位置で保持されて、排藁集束装置10が開状態とされる。
【0050】
そしてさらに、前記駆動プーリ52が更に回転してカム54が回動されると、一方の回転板63がバネ67により付勢されて回動され、案内杆12が下方へ回動される。同時に回転板58もバネ66により付勢されて回動されて、連係リンク61によりアーム60が上方へ回動され、該アーム60の回動に伴って軸59上の集束杆11が上方へ回動される。そして、集束杆11と案内杆12とがカム54のアーム55が上方へ回動されている間は互いに交差する排藁受止位置で保持されて、排藁集束装置10が開状態とされる。こうして、駆動手段50でも集束杆11と案内杆12を回動させて、排藁集束装置10の開閉状態を一定時間ごとに切り替えることが可能になる。
【0051】
また、別実施例の駆動手段70は、図9に示すように、排藁切断装置5からベルト71を介して動力を得て駆動回転する軸72上の駆動プーリ73と、該駆動プーリ73と同軸上に設けられて一体回転する回転板74と、支持フレーム15に回転可能に支持された軸75上にワンウェイクラッチ76を介して設けられたアーム77と、該アーム77と回転板74とを連係する連係リンク78と、該アーム77と同軸上に設けられて一体回動する回動板79と、該回動板79に側方へ突出するように設けられた軸80に固設されたアーム81と、該アーム81と前記軸16に固設したアーム18とを連係する連係リンク82と、軸80に支持される軸受83と前記軸21に固設したアーム23とを連係する連係リンク84とから構成される。
【0052】
この場合、駆動プーリ73が回転されると、回転板74が駆動プーリ73と一体回転され、連係リンク78のクランク運動により軸75上のアーム77が上下方向に揺動されてワンウェイクラッチ76を介して回動板79が一方向に回動される。そして、該回動板79の回動によって両連係リンク82・83がクランク運動して、アーム18・23がそれぞれ軸16・21を中心として回動され、該アーム18・23の回動に伴って軸16に回動アーム17を介して固設された集束杆11と、軸21に回動アーム22を介して固設された案内杆12とが排藁放出位置又は排藁受止位置となるように回動される。こうして、駆動手段70でも集束杆11と案内杆12を回動させて、排藁集束装置10の開閉状態を一定時間ごとに切り替えることが可能となる。
【0053】
また、前記駆動手段50・70においては、駆動プーリ52・73を固設した軸51・72に電磁クラッチを設けて制御装置と接続し、該制御装置により排藁搬送装置2で搬送される排藁量を検出する排藁量センサの検出値に基づいて排藁切断装置5から駆動プーリ52・73へ伝達される動力を断切できるようにしてもよい。これにより、排藁搬送装置2で排藁が搬送されない場合には、電磁クラッチを切状態として、排藁切断装置5から駆動プーリ52・73へ伝達される動力を断ち、排藁集束装置10の動作を停止させることも可能となる。なお、電磁弁を設ける代わりに駆動プーリ52・73に巻回されるベルト49・71にベルトテンションクラッチを設け、該ベルトテンションクラッチのテンションアームに枢設されるテンションプーリによって、該ベルト49・71を緊張状態又は弛緩状態に択一的に切換可能として、排藁切断装置5から駆動プーリ52・73へ伝達される動力を断接可能とすることもできる。
【0054】
以上のように、本実施例の排藁集束装置は、排藁搬送装置2から搬送されてくる排藁を受け止める集束杆11と、該集束杆11の後方に配置されて排藁を集束杆11に向かって案内する案内杆12と、該集束杆11と案内杆12の先端部12aとを交差可能に回動する駆動手段とを備えて、排藁を所定量ごとに集束して放出するように構成した排藁集束装置であって、前記集束杆11の中途部から後方へ湾曲させる構成とし、集束杆11と案内杆12とが交差して閉じた集束状態のときに、集束杆11の後端部11aを略鉛直下方向へ向かうように構成したものである。このように構成することにより、単位時間あたりの排藁量が増加した場合、案内杆と集束杆の回動速度が速くなっても、集束した排藁を垂直に落下させることにより、集束杆に残る排藁をなくして、集束した排藁ごとに放出することができる。また、斜め後下方に放出する場合に比べ、排藁が分散しにくいため、排藁同士の境目を目視することが容易となる。
【0055】
また、前記排藁搬送装置2から搬送されてくる排藁量を測定する手段を排藁搬送装置2に配置し、該排藁量測定手段と前記駆動手段2を制御手段35と接続し、排藁量に応じて前記集束杆11及び案内杆12を開閉駆動するように構成したものである。このように構成することにより、刈取条数が本体の最大刈取可能条数より少ない場合など、排藁量が初期の設定値より少ない場合であっても、排藁の集束を一定に近づけることが可能となる。
【0056】
前記測定手段を排藁搬送装置2の下方に配置した挟扼杆4の上下方向の移動量を測定する装置で構成した。このように構成することにより、実際に搬送される排藁量を検出することが可能となるため、排藁量が初期の設定値より少ない場合であっても、排藁の集束を一定に近づけることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】排藁集束装置の閉状態を示す側面図。
【図2】排藁集束装置の開状態を示す側面図。
【図3】排藁集束装置の制御機構を示すブロック図。
【図4】排藁集束装置の開閉制御方法を示すフローチャート図。
【図5】従来の排藁集束装置が閉状態から再び閉状態へ移行する様子を示す側面図。
【図6】本発明の排藁集束装置が閉状態から再び閉状態へ移行する様子を示す側面図。
【図7】別実施例における排藁集束装置の閉状態を示す側面図。
【図8】別実施例における排藁集束装置の開状態を示す側面図。
【図9】別実施例における排藁集束装置の背面図。
【図10】本発明の一実施例に係る排藁集束装置を装着したコンバインの後方斜視図。
【符号の説明】
【0058】
θ1 水平面に対する集束杆の後端部の角度
θ2 水平面に対する案内杆の角度
2 排藁搬送装置
11 集束杆
12 案内杆
13 駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排藁搬送装置から搬送されてくる排藁を受け止める集束杆と、該集束杆の後方に配置されて排藁を集束杆に向かって案内する案内杆と、該集束杆と案内杆の先端部とを交差可能に回動する駆動手段とを備えて、排藁を所定量ごとに集束して放出するように構成した排藁集束装置であって、前記集束杆は機体後部から斜め後下方へ延出し、その中途部から上後方へ湾曲させる構成とし、集束杆と案内杆とが交差して閉じた集束状態のときに、集束杆の後端部を略鉛直下方向へ向かうように構成したことを特徴とする排藁集束装置。
【請求項2】
前記排藁搬送装置から搬送されてくる排藁量を測定する手段を排藁搬送装置に配置し、該排藁量測定手段と前記駆動手段を制御手段と接続し、排藁量に応じて前記集束杆及び案内杆を開閉駆動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の排藁集束装置。
【請求項3】
前記測定手段を排藁搬送装置の下方に配置した挟扼杆の上下方向の移動量を測定する装置で構成したことを特徴とする請求項2に記載の排藁集束装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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