説明

掘削土の揚土装置

【課題】作業員の安全を確保しつつバケットで揚土できる装置を提供する。
【解決手段】地盤Gに掘削した縦穴Hの内側面にバケット30の昇降を案内するガイドレール40を固定する。バケット30はホイスト20のフック25に支持索31で吊り下げ支持されており、レールキャッチャー44をガイドレール40に連結し、ガイドレール40に沿って昇降する。ガイドレール40からレールキャッチャー44が抜き取られてしまえば、バケット30はホイスト20と共にモノレール14に沿って移動する。支持索31の一端はバケット30に取り付けられたベルクランク状の制動部材33に連結されている。支持索31が切れたときは制動部材33が制動姿勢に姿勢変換し、梯子状のガイドレール40の横棒42に係合してバケット30の落下をくい止める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縦穴の底部から掘削土を引き上げる掘削土の揚土装置に関する。
【背景技術】
【0002】
深礎工法やケーソン工法など、大きな縦穴を掘り進める工法では、掘削スピードに負けないように掘削土を揚土し、排出しなければならない。そのような掘削土の揚土装置の例を特許文献1、2に見ることができる。
【0003】
特許文献1には、建物の内部からその地下部を掘削して揚土する装置が記載されている。揚土にはクラムシェル型のバケットを用いる。特許文献2にもクラムシェルで揚土する装置が記載されている。但しクラムシェル型のバケットは大きく開いた状態で降ろす必要があり、穴底で作業員が削岩機や小型建機を用いて掘削作業を行っているような状況では使いづらい。このような状況ではクラムシェル型でないバケットが用いられることも多い。
【特許文献1】特開2005−336713号公報(第4−5頁、図1−3)
【特許文献2】特開平7−97189号公報(第2−5頁、図1−5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
掘削土を入れたバケットを引き上げるとき、バケットは必ず揺れる。重いバケットが頭上で揺れているのを見るのは穴底の作業員にとって気持ちの良いものではない。揺れがひどくなればバケットが穴の内面にぶつかって掘削土がこぼれ、作業員に降りかかるおそれも生じる。本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、作業員の安全を確保しつつバケットで揚土できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するために本発明は、揚重装置に連結されたバケットにより縦穴の底部から掘削土を引き上げる掘削土の揚土装置において、前記縦穴の内側面に前記バケットの昇降を案内するガイドレールを固定するとともに、前記バケットには前記ガイドレールに着脱可能に連結するレールキャッチャーを設けたことを特徴としている。
【0006】
この構成によると、バケットはガイドレールに沿って昇降し、揺れが防がれるので、作業員に安心感を与えるとともに、バケットが穴の内面にぶつかって土砂が降ってくる懸念もない。またガイドレールの延長上にバケットの着地点があるということがはっきりしているので、バケットが降りてきたとき、作業員が待避場所を求めて逃げまどう必要がない。
【0007】
(2)また本発明は、上記構成の掘削土の揚土装置において、前記バケットはその開口部に張り渡した支持索を前記揚重装置のフックに引っ掛けて吊り下げ支持されるものであり、前記支持索の一端はバケットに取り付けられた制動部材に連結され、この制動部材は、支持索によるバケット支持が正常状態である間は非制動姿勢を保ち、支持索によるバケット支持が異常状態に転じたときは制動姿勢に姿勢変換することを特徴としている。
【0008】
この構成によると、バケットの支持索が外れたり切れたりしたときには制動部材が制動姿勢に姿勢変換してバケットの落下をくい止めるから、バケットが穴底まで落下して作業員に危害を加えることがない。
【0009】
(3)また本発明は、上記構成の掘削土の揚土装置において、前記ガイドレールは梯子状、前記制動部材はベルクランク状であって、制動部材はガイドレールの横棒に対し、非制動姿勢では干渉せず、制動姿勢では干渉することを特徴としている。
【0010】
この構成によると、ガイドレールを梯子状とし、その横棒にベルクランク状の制動部材を干渉させてバケットの制動をなすものであるから、制動の仕組みが単純で、掘削中の穴の中という悪環境で使用しても故障の懸念がなく、信頼性が高い。
【0011】
(4)また本発明は、上記構成の掘削土の揚土装置において、前記揚重装置はトロリーに支持され、前記バケットが前記ガイドレールから離れた後、前記縦穴に重ならない位置への移動が可能であることを特徴としている。
【0012】
この構成によると、縦穴に重ならない位置までバケットを移動して掘削土を排土できるから、縦穴に掘削土が戻されないような排土が可能となる。
【0013】
(5)また本発明は、上記構成の掘削土の揚土装置において、前記バケットの外側面に、下降して固定部材に当たることによりバケットを排土姿勢に姿勢変換する姿勢変更用突部を形成したことを特徴としている。
【0014】
この構成によると、バケットを下げて姿勢変更用突部を固定部材に当てるだけで排土を行うことができ、排土作業が容易である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、揚重装置に連結されたバケットが縦穴の内側面に固定されたガイドレールに案内される形で昇降するから、バケットの揺れは防がれ、作業員が安心感を覚える。バケットが穴の内面にぶつかって土砂が降ってくる懸念もない。またガイドレールの延長上にバケットの着地点があるということがはっきりしているので、バケットが降りてきたとき、作業員が待避場所を求めて逃げまどう必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図1−7に示す。図1は揚土装置の正面図、図2は揚土装置の側面図、図3はガイドレールとレールキャッチャーの箇所の水平断面図、図4は図1と異なる状態の揚土装置の正面図、図5は図4の状態の揚土装置の側面図、図6は図4と異なる状態の揚土装置の正面図、図7は制動部材作動時の状況を示す縦穴の断面図である。
【0017】
図は、地盤Gに縦穴Hを掘削しつつある状況を示す。縦穴Hの内面にはなまこ板やライナープレートによる内張Lが施される。内張Lは縦穴Hが深くなるにつれ順次下へと継ぎ足されて行く。図示しない穴底では作業員により掘削作業が進められており、その時に出る掘削土の排出に揚土装置1が使用される。
【0018】
揚土装置1は型鋼(主にH型鋼)を組み合わせて構成した支持枠10を備える。支持枠10の基礎となるのは地盤Gの上に2本平行して横たえられる根太11である。根太11の上には計4本の支柱12が立てられる。支柱12は2本1組とし、その頂きに梁13を載置固定して図2に見られるような門型構造を形成する。門型構造は図2において紙面の奥行き方向に間隔を置いて2組並ぶことになる。その2組の門型構造でH型鋼からなるモノレール14を吊り下げ支持する。
【0019】
モノレール14は揚重装置を支持する。本実施形態で揚重装置として用いられるのはホイスト20である。ホイスト20はトロリー21でモノレール14に懸垂支持される。図2に見られるように、ホイスト20は電動機22、23を備える。電動機22は、ホイスト20の本体から鋼索24を繰り出したり、鋼索24を巻き込んだりするためのものである。電動機23は、トロリー21の車輪を駆動してホイスト20をモノレール14沿いに移動させるためのものである。鋼索24は下端にフック25を備える。フック25はスイベル26を介して鋼索24に連結されており、水平面内で自由に角度を変えることができる。
【0020】
フック25には掘削土を揚土するバケット30が吊り下げられる。縦穴Hの内側面にはバケット30の昇降を案内するガイドレール40が固定されている。
【0021】
ガイドレール40は梯子状であって、断面円形のパイプからなる2本の縦棒41を複数の横棒42で連結した構造である。ガイドレール40は縦穴Hの内張Lに複数のステー43で固定される。内張Lと同様、ガイドレール40は縦穴Hが深くなるにつれ下へと継ぎ足されて長さが延びて行く。
【0022】
バケット30の側面にはガイドレール40を把握するレールキャッチャー44が上下2段に設けられる。レールキャッチャー44は、ガイドレール40の2本の縦棒41を外側から抱く2個の半割パイプ45(図3参照)を水平なステー46でバケット30に固定したものである。向かい合わせに配置された2個の半割パイプ45にガイドレール40を下から通せば、レールキャッチャー44はガイドレール40と連結状態になり、ガイドレール40から水平方向に離れることはない。この状態でバケット30をガイドレール40に沿って上下にスライドさせることができる。なお2本の縦棒41の上端は図5に見られるように互いに接近する方向に曲げられてテーパー部を構成し、レールキャッチャー44をかぶせやすくなっている。
【0023】
バケット30は、その上面の開口部に張り渡した支持索31をフック25に引っ掛けて吊り下げ支持される。支持索31の一端はバケット30の外面上部に固定した有頭ピン32に連結される。支持索31の他端は、有頭ピン32から180゜隔たった箇所に配置された制動部材33に連結される。
【0024】
制動部材33はベルクランク状の部材であり、バケット30の口縁から立ち上がる支柱34の上端に垂直面内で回転可能に取り付けられている。支持索31は制動部材33の短い方の腕に連結される。この短い方の腕にはウェイト35が固定されている。
【0025】
フック25に引っ掛けられた支持索31が正常にバケット30を支える状況では、支持索31にかかる張力により制動部材33は図1の角度を保つ。すなわちその長い方の腕は真下を向き、ガイドレール40の横棒42に干渉しない。これが制動部材33の非制動姿勢である。何らかの異常状態が生じ、支持索31の張力がなくなると、ウェイト35によって与えられるモーメントで制動部材33は図1の角度から時計まわりに回転し、長い方の腕がバケット30の外側に水平に突き出す、図7の角度に至る。これが制動部材33の制動姿勢である。制動部材33には図示しない回転ストッパーが設けられており、図7の角度を超えて時計回りに回転することはない。
【0026】
バケット30の外面下部には姿勢変更用突部が形成される。姿勢変更用突部を構成するのはバケット30の本体下部から互いに反対向きに突き出す2本の水平なピン36である。2本のピン36は一直線上に整列するが、その直線はバケット30の中心線から所定距離だけ横にずれている。
【0027】
支持枠10の中で、縦穴Hに近い方の2本の支柱12には、互いに向き合う面にブラケット15が固定される。またブラケット15から少し支持枠10の内側に入り込んだ箇所には2本の根太11の間に梁16が掛け渡され、その上に2本の支柱17が立てられる。1個のブラケット15と1本の支柱17の組み合わせはピン36を下から受ける固定部材となる梁18を支持する。2本の梁18はガイドレール14と平行であり、互いの間隔は、バケット30の本体下部は上方から入り込めるが、本体下部から外側に突き出したピン36は通れないという幅に設定されている。梁18の先端にはピン36を引っ掛けて止めるストッパー19が固定されている。
【0028】
揚土装置1による揚土作業は次のように進行する。まずレールキャッチャー44をガイドレール40に嵌合し、ホイスト20から鋼索24を繰り出してバケット30をガイドレール40に沿ってバケット30を穴底に降ろす。そしてバケット30の中に掘削土を入れる。入れ終わったらバケット30を図4の高さまで引き上げる。すなわちレールキャッチャー44をガイドレール40から引き抜き、さらにピン36が片持梁16より上のレベルになるところまで引き上げる。ここまで引き上げた後、バケット30を90゜回転させ、有頭ピン32と支柱34を結ぶ直線がモノレール14と直角をなすようにする。それからホイスト20の電動機23を運転し、ホイスト20を図4において左方に移動させる。
【0029】
ホイスト20とバケット30を左方に移動させて行くと、やがてピン36がストッパー19に引っ掛かる。その時点でホイスト20の移動を止め、バケット30を降ろす(図6参照)。ピン36が梁18に当たってからもバケット30を降ろし続けると、ピン36は図においてバケット30の中心より右側にあるため、バケット30は次第に左に傾き、遂には図6に示す排土姿勢に姿勢変換する。ここに至って掘削土はバケット30から排出される。
【0030】
掘削土排出後、鋼索24を巻き込んでバケット30の姿勢と高さを元に戻し、ホイスト20を逆方向に移動させてバケット30を縦穴Hの上に位置させる。そしてレールキャッチャー44をガイドレール40に嵌合させつつバケット30を降ろし、新たな揚土作業を開始する。排出した掘削土は適宜小型建機などを使用して支持枠10の中の地盤Gからかき出す。
【0031】
支持索31によるバケット30の支持が異常状態に転じた場合、例えば図7のように支持索31が切れてバケット30が落下した場合、支持索31の張力がなくなるので、ウェイト35によって与えられるモーメントで制動部材33は回動し、制動姿勢に姿勢変換する。そしてガイドレール40の横棒42に係合し、バケット30を強制的に停止させる。従ってバケット30がガイドレール40の下端まで落下し、作業者に危害を加えることがない。
【0032】
ウェイト35に代え、ばねを用いて制動部材33にモーメントを与えるようにしてもよい。ウェイトとばねを併用することも可能である。
【0033】
以上本発明の実施形態につき説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は掘削土の揚土装置に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】揚土装置の正面図
【図2】揚土装置の側面図
【図3】ガイドレールとレールキャッチャーの箇所の水平断面図
【図4】図1と異なる状態の揚土装置の正面図
【図5】図4の状態の揚土装置の側面図
【図6】図4と異なる状態の揚土装置の正面図
【図7】制動部材作動時の状況を示す縦穴の断面図
【符号の説明】
【0036】
G 地盤
H 縦穴
1 揚土装置
10 支持枠
14 モノレール
18 梁(固定部材)
19 ストッパー
20 ホイスト(揚重装置)
25 フック
30 バケット
31 支持索
33 制動部材
36 ピン(姿勢変更用突部)
40 ガイドレール
41 縦棒
42 横棒
44 レールキャッチャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚重装置に連結されたバケットにより縦穴の底部から掘削土を引き上げる掘削土の揚土装置において、
前記縦穴の内側面に前記バケットの昇降を案内するガイドレールを固定するとともに、前記バケットには前記ガイドレールに着脱可能に連結するレールキャッチャーを設けたことを特徴とする掘削土の揚土装置。
【請求項2】
前記バケットはその開口部に張り渡した支持索を前記揚重装置のフックに引っ掛けて吊り下げ支持されるものであり、前記支持索の一端はバケットに取り付けられた制動部材に連結され、この制動部材は、支持索によるバケット支持が正常状態である間は非制動姿勢を保ち、支持索によるバケット支持が異常状態に転じたときは制動姿勢に姿勢変換することを特徴とする請求項1に記載の掘削土の揚土装置。
【請求項3】
前記ガイドレールは梯子状、前記制動部材はベルクランク状であって、制動部材はガイドレールの横棒に対し、非制動姿勢では干渉せず、制動姿勢では干渉することを特徴とする請求項2に記載の掘削土の揚土装置。
【請求項4】
前記揚重装置はトロリーに支持され、前記バケットが前記ガイドレールから離れた後、前記縦穴に重ならない位置への移動が可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の掘削土の揚土装置。
【請求項5】
前記バケットの外側面に、下降して固定部材に当たることによりバケットを排土姿勢に姿勢変換する姿勢変更用突部を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の掘削土の揚土装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−291727(P2007−291727A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120885(P2006−120885)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【特許番号】特許第3904588号(P3904588)
【特許公報発行日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(505404471)美和産業株式会社 (10)