説明

掛止装置

【課題】コンパクトな収納状態からアームを回動するという簡単な操作で、アームの先端部に設けた掛止部を被取付体から十分な間隔を保ち、なおかつ高いところに位置させること。
【解決手段】本発明の掛止装置は、壁や柱等の被取付体Wに取り付けられる取付基体1に、アーム2の下端をエンドピース6を介して間接的に移動可能に取り付け、連係具3でアーム2を斜め上向きの使用状態に保持することができるものである。取付基体1は、縦方向に亘る軌道部20を設けると共に、軌道部20に受止部9を設けて成り、アーム2は、基端部に、取付基体1の軌道部20を摺動する摺動部11・11を設けると共に、連係具3によって支持されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁や柱等の被取付体に取り付けられる取付基体に、アームを略垂直の収納状態と前方に突出する使用状態に設定することができる掛止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の掛止装置として、特開2005−46586号公報に記載された発明が提案されており、これは、壁や柱等の取付対象Wに固定するための取付部材1と、該取付部材1にその下端部を起倒自在に連結され、先端部にハンガーHを吊り掛けるための吊掛部3を有する吊掛アーム2と、これらの取付部材1と吊掛アーム2とに両端を連結され、該吊掛アーム2がハンガー吊掛位置Aに延出したときの延出角度を規定する引張部材4とを有する折り畳み式ハンガー掛けである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−46586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の掛止装置においては、洗濯物を干して使用する場合に、壁や柱等の被取付体から十分な間隔を保った方が、風通しがよくなり洗濯物が乾きやすく、また、洗濯物を高い位置に保持した方が、長い洗濯物を干す時に床に接触しにくく、邪魔にもなりにくいため、使用時の吊掛部は、被取付体から十分な間隔を保ち、なおかつ高いところに位置することが望ましい。
【0005】
ところが上記従来例においては、使用時に、吊掛部3を壁や柱等の取付対象Wから十分な間隔を保つには、吊掛アーム2の倒す角度を大きくしなければならず、そうすると、吊掛部3の位置は収納時の位置に比べかなり低くなってしまうという問題や、吊掛アーム2が垂直の収納状態から吊掛部3に洗濯物を掛けたまま、吊掛アーム2が倒れた場合には、加速度的に使用位置まで落ちていくため、危険であると共に、大きな力が掛かって装置自体が壊れてしまうという問題がある。本発明は、これらの問題を解決することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、壁等の被取付体に取り付けられる取付基体に、先端部に掛止部を有するアームを移動可能に支持させて、略垂直上向きの収納状態と斜め上向きに突出する使用状態に設定することができる掛止装置において、取付基体は、縦方向に軌道部を設けると共に、軌道部に受止部を設けて成り、アームは、基端部に、取付基体の軌道部を摺動する摺動部を設けると共に、連係具によって支持されるように成し、略垂直上向きの収納状態から、アーム先端部が前方に回動して傾斜すると共に摺動部が軌道部を摺動して上昇するように構成し、アームは、その基端部が受止部によって上昇を止められると共に連係具によって支持されて、取付基体から斜め上向きに突出する使用状態となることを特徴とする掛止装置である。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明によれば、略垂直の収納状態からアームを前方に倒すと、その下部が取付基体の軌道部を上昇し、アームは、その下部が受止部に当接して上昇を止められると共に、連係具によって支持されて、斜め上向きに突出する使用状態となるので、アーム先端部の掛止部の位置は収納状態と使用状態で高低の差が大きくなることがなく、使用時に邪魔になりにくく、特に長い洗濯物を干して使用する場合に極めて便利であるという効果がある。
【0008】
また、アームが垂直や垂直に近い状態から掛止部に洗濯物等を掛けたまま、アームが倒れた場合でも、アーム先端部の掛止部の位置は収納状態と使用状態で高低の差が大きくないので、安全であり、装置自体が壊れる可能性も少ないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】使用状態を示す斜視図である。
【図2】収納状態を示す斜視図である。
【図3】アームを少し前方へ回動させた状態を示す斜視図である。
【図4】使用状態を示す縦断面図である。
【図5】収納状態を示す縦断面図である。
【図6】アームを少し前方へ回動させた状態を示す縦断面図である。
【図7】全体の分解斜視図である。
【図8】指を挟んだ状態を示す側面図である。
【実施例1】
【0010】
本実施例の掛止装置は、壁や柱等の被取付体Wに取り付けられる取付基体1に、アーム2の下端をエンドピース6を介して間接的に移動可能に取り付け、連係具3でアーム2を斜め上向きの使用状態に保持することができるものである。
【0011】
取付基体1は、断面が、倒コ字状の両先端縁からそれぞれ内方に係合縁21・21を設けた形状として、縦方向に亘る軌道部20を形成してある。軌道部20の上部には左右一対の円柱状の当受部8・8を、中間部には円柱状の受止部9を設け、さらに、上下両端部にはそれぞれ上キャップ15と下キャップ16を取り付けてある。
【0012】
アーム2は、断面矩形状の縦長の中空材で、先端部に固定掛止具4及び開く方向に付勢されている可動掛止具5が取り付けられ、開いている可動掛止具5と固定掛止具4とで掛止部22を形成する。また、基端部にはエンドピース6がねじ28・28で回動可能に取り付けられ、その先端部の左右両面には回転自在の車輪である摺動部11・11を設けてあり、この摺動部11・11は、取付基体1の軌道部20に摺動可能に収容されている。この実施例では、摺動部11・11は、アーム2の基端部にエンドピース6を介して設けられているが、何も介さずに直接摺動部を設けてもよい。
【0013】
また、エンドピース6には、ばね25が収容されその先端のボール26を外方に付勢し、ボール26は、アーム2基端部の孔27に係合している。そして図8に示すように、アーム2の基端部と取付基体1との間に指Fを挟んだ時には、ばね25で付勢されたボール26が引っ込んでアーム2の孔27から外れて、アーム2はねじ28・28を中心として回動し、指Fにかかる圧力を逃がし怪我を防止し、その後アーム2を戻せば真っ直ぐに復元できるようになっている。
【0014】
連係具3は、細長い長方形の板状で、一端部の左右両面には、回転自在の車輪である摺動部10・10を設けてあると共に、他端部には、3つの平面である第1カム面17、第2カム面18及び第3カム面19を設けてある位置決めカム7を固定してあり、摺動部10・10は、取付基体1の軌道部20の上部に摺動可能に収容され、位置決めカム7は、アーム2に回動可能に取り付けられ、取付基体1とアーム2は、連係具3によって連動するようになっている。
【0015】
アーム2の内部には、先端部にばね受具13が固定され、その先端部に前述の可動掛止具5が回動可能に取り付けられ、また中間部に押圧体12が摺動可能に取り付けられ、ばね受具13と押圧体12との間には、圧縮ばね14が設けられ、押圧体12を後方(基端部方向)へ付勢しており、押圧体12の後面と、位置決めカム7の第1カム面17、第2カム面18及び第3カム面19のいずれかの平面とが圧縮ばね14の力で安定的に接触して、アーム2を3つの角度に設定できるようになっている。なお、本実施例では、ばね受具13と固定掛止具4は一体形成されている。
【0016】
本実施例の掛止装置は、取付基体1を取付ねじで壁や柱等の被取付体Wに固定して使用するもので、2つを一組として間隔をおいて設置し、掛止部22・22に物干竿Pを掛け渡して使用してもいいし、1つでピンチハンガー等を掛けて使用してもいい。
【0017】
図2及び図5に示すように、押圧体12の後面が位置決めカム7の第1カム面17に接触して、アーム2が取付基体1と平行に一部重なり合うようにコンパクトに収納された状態から、アーム2を少し前方へ回動させると、連係具3基端部の摺動部10・10が下方へ移動し、当受部8・8に当接し、位置決めカム7が回動して、押圧体12の後面が第2カム面18に接触すると共に可動掛止具5が開いた状態(図3及び図6参照)となり、固定掛止具4と可動掛止具5で掛止部22を形成し、物干竿Pを掛け渡したままの状態で維持することができる。
【0018】
この状態から、さらにアーム2を前下方へ回動させると、アーム2基端部の摺動部11・11が軌道部20を上方へ移動して受止部9に当接し、同時に位置決めカム7が回動して、押圧体12の後面が第3カム面19に接触した状態(図1及び図4参照)となる。アーム2は、その基端部が上方へ移動しつつ回動してこの状態になるので、掛止部22の位置は大きく下がることはない。また、押圧体12の後面が第3カム面19に接触してこの状態を維持しているが、さらに摺動部11・11と受止部9が磁着するようにしてもよい。
【0019】
使用状態からアーム2を収納するには、アーム2を上方へ回動して折り畳むと、アーム2基端部の摺動部11・11が軌道部20を下方へ移動して下キャップ16に当接し、同時に位置決めカム7が回動して、押圧体12の後面が第2カム面18に接触し(図3及び図6参照)、さらにアーム2を上方へ回動すると、連係具3基端部の摺動部10・10が上方へ移動し、押圧体12の後面が位置決めカム7の第1カム面17に接触して、アーム2が取付基体1と平行に一部重なり合うようにコンパクトな収納状態(図2及び図5)に保持される。この状態で可動掛止具5は取付基体1の底面に当接して回動し閉じた状態となるので、アーム2をコンパクトに収納し、収納時の外観を良好にしている。また、押圧体12の後面が第1カム面17に接触してこの状態を維持しているが、固定掛止具4が上キャップ15に係合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 取付基体
2 アーム
3 連係具
11 摺動部
20 軌道部
22 掛止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁等の被取付体に取り付けられる取付基体に、先端部に掛止部を有するアームを移動可能に支持させて、略垂直上向きの収納状態と斜め上向きに突出する使用状態に設定することができる掛止装置において、取付基体は、縦方向に軌道部を設けると共に、軌道部に受止部を設けて成り、アームは、基端部に、取付基体の軌道部を摺動する摺動部を設けると共に、連係具によって支持されるように成し、略垂直上向きの収納状態から、アーム先端部が前方に回動して傾斜すると共に摺動部が軌道部を摺動して上昇するように構成し、アームは、その基端部が受止部によって上昇を止められると共に連係具によって支持されて、取付基体から斜め上向きに突出する使用状態となることを特徴とする掛止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27490(P2013−27490A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164744(P2011−164744)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000148070)株式会社川口技研 (48)