説明

採寸用キャップ、採寸方法、ウィッグベースの作製方法

【課題】使用者の頭部にフィットするウィッグベースを容易に作製するために利用される採寸用キャップを提供する。
【解決手段】複数の固定パーツと装着者の頭部形状に対応するようサイズを変更し得る複数の可変パーツとを連結することでウィッグベースを作製する際に、可変パーツのサイズを調整するために装着者の頭部に装着して当該装着者の頭部を採寸する採寸用キャップ1であって、ウィッグベースの複数の固定パーツと複数の可変パーツとに対応した複数の採寸用パーツ11〜19を備え、フロントヘアライン111とこれに連接する左右のサイドヘアライン154,152,18,164,162,19とリアヘアライン172とで外周を画成するよう、複数の採寸用パーツ同士を連結して構成され、フロントヘアライン111の中央位置、左右のサイドヘアラインの耳上部、リアヘアラインの中央位置に目印が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーダーメイドでウィッグを作製する際、装着者の頭部に装着して寸法を計測するために利用する採寸用キャップとその採寸方法、そして、採寸して算出した寸法に従ってウィッグベースを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィッグの毛髪を植設するベースやキャップなど(以下、ウィッグベースと呼ぶ)は、装着者の頭部形状に合わせてサイズが決められる所謂オーダーメイドタイプと、サイズが予め決められている所謂レディメイドタイプ(既製品)とがある。既製品でもウィッグベースのサイズをアジャスター部などで多少調整が可能である。オーダーメイドタイプ及びレディメイドタイプの何れも、脱毛又は薄毛状態の頭部に対して装着して利用に供される。
【0003】
しかし、例えば抗がん剤投与による脱毛の場合には、頭部全体に亘って脱毛が進行しているケースが多いので、レディメイドタイプのウィッグの装着においては、頭髪の抵抗が得られないために十分なフィット感が得られない。例えば、頭部よりウィッグのサイズが大きいとズレたり脱落したりし、かつらのサイズが小さいと頭部を締め付けたり痛みを生じたりするなど不快感が生じ、既製品のサイズ調整を行っても、その効果は十分ではない。このため、オーダーメイドタイプのウィッグが望ましい。
【0004】
オーダーメイドタイプのウィッグは、ウィッグベースを装着者それぞれの頭部形状及びサイズに合うように成形するために、装着者の頭部形状の型取りが必要となり、この型取り方法として特許文献1では、頭部にプラスチックの薄いフィルムを被覆し、そのフィルム上からセロファンテープなどの粘着剤テープを幾重にも貼り付けて頭部雌型を作製する方法が開示されている。また、特許文献1には、50〜60℃の加熱で軟化させた樹脂を頭部に押し当てて引き伸ばした状態で冷却して頭部雌型を作製する方法が開示されている。
これらの方法で作製した頭形雌型に石膏を充填して頭計雄型を作製し、この雄型上で人工皮膚やネット素材のキャップを加工して頭部形状及びサイズに成形する。これにより、個々の装着者に一致したサイズのかつらを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5−12442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1による型取り方法やそれによって得られた型を利用したウィッグベースの加工方法は、非常に手間がかかり、作製コストも嵩む。
【0007】
そこで、本発明者らは、レディメイドではないが、予めウィッグベースを構成する複数のパーツを用意し、装着者の頭部形状に応じてウィッグベース構成要素のパーツを調整して、ウィッグベースを構成する方法を検討した。
【0008】
この手法では、先ずウィッグベースを構成する各パーツの形状及び大きさを規定しておき、サンプル用のウィッグベースを装着した状態で装着者の頭部を採寸する。次に、採寸値に応じてパーツの大きさや形状を一定のルールの下で調整する。次に、複数のパーツを連結させることで、装着者の頭部にフィットするウィッグベースを得ることができる。この手法によれば、作製が簡便になることに加えて、作製コストの低減も期待できる。
【0009】
本発明者らが検討した上記手法は個々の装着者の頭部形状とサイズに沿うウィッグを簡単に得ることができることから、本発明者らは種々に研究を重ねた結果、上記手法の実施に好適なツール、つまり、装着者の頭部を採寸するための採寸用キャップを開発した。
【0010】
このように、本発明は、ウィッグベースを容易に作成するために利用される採寸用キャップと、この採寸用キャップを利用した採寸方法と、採寸用キャップを利用してウィッグベースを作成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の固定パーツと装着者の頭部形状に対応するようサイズを変更し得る複数の可変パーツとを連結することでウィッグベースを作製するに際して、可変パーツのサイズを調整するために装着者の頭部に装着して当該装着者の頭部を採寸する採寸用キャップであって、ウィッグベースの複数の固定パーツと複数の可変パーツとに対応した複数の採寸用パーツを備え、フロントヘアラインとこれに連接する左右の襟足サイドヘアラインとリアヘアラインとで外周を画成するよう、該複数の採寸用パーツ同士を連結して構成され、フロントヘアラインの中央位置、左右のサイドヘアラインの耳上部、リアヘアラインの中央位置に目印が設けられていることを特徴としている。なお、本願において、ヘアラインとは、装着者の頭部の毛によって構成されるヘアライン自体に加えて、例えば脱毛して実際には頭部の全体或いは部分的にヘアラインが存在しない場合には、脱毛して毛が存在しない領域における仮想のヘアラインを含む意義で使用している。
【0012】
本発明の採寸用キャップにおいて、採寸用パーツは、前額部のフロントヘアラインから頭頂部領域までを覆うフロント・センタパーツと、左右の側頭部を覆う各サイドパーツと、後頭部を覆うリアパーツと、左右の揉み上げ部を覆う各サイドバーンパーツと、襟足部を覆うネープパーツと、長さ可変のアジャスタパーツと、から構成され、フロント・センタパーツは前額縁部のフロントヘアラインと頭頂部に向かう左右の縁部と後縁部とから略矩形に形成され、サイドパーツは、フロントヘアラインの各端部から耳上部に亘る直線部とこの直線部から後側へ凹状に延びる後縁部と直線部の前端及び後縁部の後端を結ぶ円弧縁部とから扇型に形成され、リアパーツは、前側へ湾曲した前縁部と後側へ湾曲し該前縁部の両端を結ぶ後縁部とから楕円型に形成されており、フロント・センタパーツの左右の縁部とサイドパーツの円弧縁部とが連結され、リアパーツの前縁部にフロント・センタパーツの後縁部と左右のサイドパーツの後縁部とが連結され、左右のサイドパーツの直線部にサイドバーンパーツが連結され、リアパーツの後縁部にネープパーツ及びアジャスタパーツが連結されている。
【0013】
本発明の採寸用キャップは、フロント・センタパーツの前縁部がフロントヘアラインを構成し、サイドバーンパーツの縁部及びアジャスタパーツの縁部がサイドヘアラインを構成し、ネープパーツの後縁がリアヘアラインを構成している。
【0014】
本発明の採寸用キャップにおいて、好ましくは、目印は、フロントヘアラインの中央位置からの耳上部とリアヘアラインの中央位置と右側の耳上部とを経て当該フロントヘアラインの中央位置までの第1目印ラインと、フロントヘアラインの中央位置からゴールデンポイントを経てリアヘアラインの中央位置までの第2目印ラインと、右側の耳上部からゴールデンポイントを通って左側耳上部までの第3目印ラインと、から構成されている。リアパーツが、他のパーツより高い伸長特性を有する。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の採寸方法は、前述の採寸用キャップを装着する第1工程と、下記(1)〜(3)の3箇所の寸法を計測する第2工程と、を含む。
(1)前記フロントヘアラインの中央位置から左側の耳上部と前記リアヘアラインの中央位置と右側の耳上部とを経て当該フロントヘアラインの中央位置までの頭部外周の長さ。
(2)フロントヘアラインの中央位置からゴールデンポイントを経て前記リアヘアラインの中央位置までの長さ。
(3)右側の耳上部からゴールデンポイントを通って左側の耳上部までの長さ。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の固定パーツと装着者の頭部形状に対応するようサイズを変更し得る複数の可変パーツとを連結させて構成されるウィッグベースの作製方法であって、前述の採寸用キャップを装着者に装着させて寸法を計測する採寸工程と、採寸工程で計測した寸法に基づいて上記ウィッグベースを構成する複数の可変パーツの形状を変更する調整工程と、複数の固定パーツと上記複数の可変パーツとを繋ぎ合わせる縫製工程と、を含み、採寸工程が下記(1)〜(3)の3箇所の寸法を計測する。
(1)前記フロントヘアラインの中央位置から左側の耳上部と前記リアヘアラインの中央位置と右側の耳上部とを経て当該フロントヘアラインの中央位置までの頭部外周の長さ。
(2)フロントヘアラインの中央位置からゴールデンポイントを経て前記リアヘアラインの中央位置までの長さ。
(3)右側の耳上部からゴールデンポイントを通って左側の耳上部までの長さ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれは、使用者の頭部にフィットするウィッグベースを容易に製造することができる。採寸用キャップを複数のパーツの接ぎ合せにより構成していること、採寸用キャップに一定の伸長性を持たせたこと、採寸個所に目印を付設したことで、より精度の高い採寸が可能になりウィッグ装着時のフィット感を向上させることができる。また、採寸用キャップに目印を付設したことで採寸が短時間で容易になり、装着者の採寸による負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る採寸用キャップの左側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図1のB矢視図である。
【図4】図1のキャップを構成する各パーツの展開図である。
【図5】(A)は本発明の実施形態に係る採寸用キャップの概略左側面図、(B)は(A)の概略A矢視図、(C)は(A)の概略B矢視図である。
【図6】(A)は図5(A)の概略A矢視図、(B)は図5(A)の概略B矢視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る採寸用キャップの概略左側面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る型紙を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施形態に係る採寸用キャップ1(以下、キャップと呼ぶ場合がある。)の左側面図であり、図2は図1のA矢視図であり、図3は図1のB矢視図である。図4は図1のキャップ1を構成する各パーツの展開図である。
【0020】
本実施形態に係るキャップ1は、ウィッグベース(図示省略)を作製する際に、装着者の頭部に装着して当該装着者の頭部を採寸するための採寸用のキャップである。
【0021】
本実施形態の採寸用キャップ1を利用する理由は、以下の事由による。
先ず、ウィッグベースは、図示省略するが、複数のパーツを連結させて構成されている。ウィッグベースが装着者の頭部にフィットするようウィッグベースのパーツ全てを装着者の頭部のサイズに応じて変形させたのでは、作製に時間がかかりすぎてしまう。そこで、本発明者らはウィッグベースを構成するパーツを、装着者の頭部の形状にかかわらず一定のサイズのものとした複数の固定パーツと、装着者の頭部に応じてサイズを変更し得る可変パーツとで、構成し、これらを連結、例えば縫着して、ウィッグベースを構成することを考えた。
次に、可変パーツのサイズの調整が重要である。測定者が装着者の頭部の任意の箇所を採寸するのであれば、同じ装着者であっても採寸値にばらつきが出てしまう。
以上の問題を考慮して、何れの測定者が採寸しても同じ或いは同等の採寸結果を得られるように、本発明者は採寸用のキャップ(本実施形態)1を開発した。この採寸用キャップ1は、可変パーツのサイズを調整するために装着者の頭部に装着して当該装着者の頭部を採寸するためのものである。
以下、本実施形態に係るキャップ1について詳述する。
【0022】
キャップ1は、9つのネット状パーツ部材を連結、例えば縫着して構成されている。具体的には、本実施形態では、図4に示すように、ネット状パーツとして、装着者の前額部のフロントヘアラインから頭頂部領域までを覆う第1パーツ11(フロント・センタパーツ)と、左側頭部を覆う第2パーツ12(サイドパーツ)と、右側頭部を覆う第3パーツ13(サイドパーツ)と、後頭部を覆う第4パーツ14(リアパーツ)と、揉み上げ部を覆う第5パーツ15及び第6パーツ16(サイドバーンパーツ)と、襟足部、つまりネープ部を覆う第7パーツ17(ネープパーツ)と、第8パーツ18及び第9パーツ19(アジャスタパーツ)と、から構成されている。
なお、キャップ1を構成するパーツの内、ウィッグベースの複数の固定パーツに対応した部材が、第4パーツ14(リアパーツ)と、第5パーツ15及び第6パーツ16(サイドバーンパーツ)と、第7パーツ17(ネープパーツ)とであり、ウィッグベースの複数の可変パーツに対応した部材が、第1パーツ11(フロント・センタパーツ)と、第2パーツ12(サイドパーツ)及び第3パーツ13(サイドパーツ)と、第8パーツ18及び第9パーツ19(アジャスタパーツ)とである。
【0023】
これらの採寸用パーツ、即ち第1パーツ11〜第9パーツ19同士は、フロントヘアラインFL(図2)とこれを連接する左右のサイドヘアラインSL(図1)とリアヘアラインRL(図3)とで外周を構成するよう、連結される。
【0024】
第1パーツ11は、図4に示すように、前縁部111と左右の縁部112,113と後縁部114とから長方形型(略矩形)に形成されている。前縁部111が前額部のフロントヘアラインFLを構成する。左右の縁部112,113は、フロントヘアラインFLの両端から頭頂部へ向かっている。
【0025】
第2パーツ12及び第3パーツ13は、図4に示すように、フロントヘアラインFLの各端部から耳上部(図1の符号C2のポイント)に亘る直線部121,131と、この直線部121,131から後側へ凹状に延びる後縁部122,132と、前縁部121,131の前端と後縁部122,132の後端とを結ぶ円弧縁部123,133と、から扇型に形成されている。
なお、直線部121,131と後縁部122,132とがなす角度θは、例えば100〜150°程度に設定されている。
第2パーツ12及び第3パーツ13の円弧縁部123,133は、第1パーツ11の左右の縁部112,113に縫い付けられる。第2パーツ12及び第3パーツ13の円弧縁部123,133の長さは、第1パーツ11の左右の縁部112,113の長さに対応するように、各パーツ11,12,13の寸法が選定されている。
【0026】
第4パーツ14は、図4に示すように、前方側へ張り出した円弧状の前縁部141と、この前縁部141とは逆側へ張り出して円弧状に形成され、前縁部141の両端を結ぶ後縁部142と、から楕円型に形成されている。この第4パーツ14は、伸長性を有する。他のパーツ11〜13、15〜19で使用するネットよりも伸長特性が高く、例えば一方向は100g加重時の伸度が40%程度、他方向は100g加重時の伸度が15%程度であることが好ましい。この部位にこのようなネットを用いることで、頭部に残毛がある状態で採寸してウィッグを作製して、脱毛後にウィッグを装着してもフィット感が十分得られる。
この第4パーツ14の前縁部141には、中央に第1パーツ11の後縁部114が縫い付けられ、その左右側に第2パーツ12及び第3パーツ13の後縁部122,132が縫い付けられる。
第4パーツ14の前縁部141の長さは、第1パーツ11の後縁部114の長さと、第2パーツ12及び第3パーツ13の各後縁部122,132の長さとを合わせた長さになるように、各パーツ14,12,13の寸法が選定されている。
【0027】
第5パーツ15及び第6パーツ16は、本実施形態では、前縁部151,161と、これに平行な後縁部152,162と、前縁部151,161と後縁部152,162の両端部をそれぞれ結ぶ一対の側縁部153,154,1613,164と、から台形状に形成されている。
内側の側縁部153,164は、前縁部151,161と後縁部152,162とに対して直角である。後縁部152,162が前縁部151,161よりも長いため、外側の側縁部154,164は内側の側縁部153,163に対して非平行である。
第5パーツ15及び第6パーツ16の内側の側縁部153,163は、左右の第2パーツ12及び第3パーツ13の直線部121,131に縫い付けられる。
第5パーツ15及び第6パーツ16の側縁部153,163の長さは、第2パーツ12及び第3パーツ13の直線部121,131の長さに対応するように、各パーツ15,16,12,13の寸法が選定されている。
第5パーツ及び第6パーツの外側の側縁部154,164と後縁部152,162とは、第8パーツ18及び第9パーツ19と共に、サイドヘアラインSLを構成する。
【0028】
第7パーツ17は、弧状の前縁部171と、後側へ張り出した二つの凸部172L,172Rを左右対称位置に有する後縁部172と、から構成されている。
第7パーツ17の前縁部171は、第4パーツ14の後縁部142に対応して中央が窪むように形成されており、第4パーツ14の後縁部中央側に縫い付けられる。
第7パーツ17の後縁部172は、リアヘアラインRLを構成する。
【0029】
第8パーツ18及び第9パーツ19は、細長い切れ片状に形成されており、例えば線状のゴムが取り付けられている。
第8パーツ18及び第9パーツ19は、その長辺181,191を第4パーツ14の左右位置に沿わせて、縫い付けられる。
第8パーツ18及び第9パーツ19の長辺部181,191の長さと第7パーツ17の前縁部171の長さとを合わせた長さが、第4パーツ14の後縁部142の長さに対応するように、各パーツ18,19,14の長さが選定されている。
第8パーツ18及び第9パーツ19の縁部は前述の第5パーツ及び第6パーツと共にサイドヘアラインSLを、構成する。
【0030】
これらの第1パーツ11〜第9パーツ19が連結されて、ボウル型のキャップ1が構成される。このようにしてキャップ外周には、フロントヘアラインFLとサイドヘアラインSLとリアヘアラインRLとが画成される。
【0031】
本実施形態では、採寸用の目印、つまりどの位置に沿って採寸するかを示す目印が設けられている。
図5(A)は本発明の実施形態に係るキャップの概略左側面図であり、図5(B)は図5(A)のA矢視図であり、図5(C)は図5(A)のB矢視図である。
これらの図で、太線で示すように、キャップ1の外周を一周した第1目印ラインL1が設けられている。
具体的には、第1目印ラインL1は、第1パーツ11の前縁部111と、第2パーツ12及び第3パーツ13の直線部121,131と、第4パーツ14の後縁部142とに沿って、キャップ1を一周するように設けられている。
この第1目印ラインL1は、装着者のフロントヘアラインFLの中央位置C1、左側のサイドヘアラインSLの耳上部C2、装着者のリアヘアラインRLの中央位置C3、右側のサイドヘアラインSLの耳上部C2を通っている。
【0032】
さらに、本実施形態では、目印として、図6に示すように第1パーツ11の前縁部中間位置から正中線を通って後頭部ぼんの窪みまでに沿って設けられた第2目印ラインL2と、図7に示すように右側の耳上部C2からゴールデンポイントC4を通って左側の耳上部C2までの第3目印ラインL3と、が設けられている。ここで言うゴールデンポイントC4とは、前頭縁部の中心点、つまり前述の中心位置C1を起点として後頭部にかけて正中線上の16cmの位置をゴールデンポイントと定義している。
第2目印ラインL2は、装着者のフロントヘアラインFLの中央位置C1からゴールデンポイントC4を経て装着者のリアヘアラインRLの中央位置C3までを結んでいる。
【0033】
以上のように本実施形態に係る採寸用キャップ1は構成されている。この採寸用キャップ1を利用して装着者頭部の採寸が行われる。この手法を、以下、「採寸方法」と呼ぶ。
【0034】
本実施形態に係る採寸方法では、1種類の採寸用キャップ1だけを利用するのではなく、サイズの異なる複数の採寸用キャップ1を用意しておき、それらの内で装着者の頭部の大きさに応じたサイズの採寸用キャップ1を選択して、装着者の頭部を採寸する。
【0035】
例えば、表1に示すように、サイズの異なる5種類の採寸用キャップ1(表中のタイプI〜V)を用意しておく。
【表1】

【0036】
表中のs1はキャップ外周の寸法値である。第1パーツ11の前縁部111の寸法と、第2パーツ12及び第3パーツ13の各直線部121,131の寸法と、第4パーツ14の後縁部142の寸法との合算値がs1である。
s2は、図6に示すように、第1パーツ11の前縁部中間位置からゴールデンポイントを通って盆の窪までの長さ(第2目印ラインL2に沿った長さ)である。
s3は図7に示すように、左耳上の位置からゴールデンポイントを通って右耳上の位置までの長さ(第3目印ラインL3に沿った長さ)である。
s4は、図5(B)に示すように、第1パーツ11の前縁部111の幅である。
s5は、図5(A)に示すように、第5パーツ15及び第6パーツ16の各側縁部153,163の長さである。
s6は、第5パーツ15及び第6パーツ16の後縁部152,162の長さである。
s7は、第7パーツ17の前縁部171の長さである。
s8は、第8パーツ18及び第9パーツ19の長辺部181,191の長さである。
【0037】
表1のように、各キャップ間のサイズは0.5〜3.0cm程度の差にすると精度の高い採寸ができるので好ましく、各キャップ間のサイズ差が大き過ぎると、キャップ装着時に頭部とキャップとの隙間、或いは当接部分の調整が難しく、採寸精度を低下させる。一方各キャップ間のサイズ差が小さいと、どのキャップを装着しても殆ど変らないために頭部の正確なサイズを把握できなくなる。
【0038】
第4パーツ14として例えば縦方向は100g加重時の伸度が40%程度、横方向100g加重時の伸度が15%程度のネット部材を使用し、他のパーツとして縦方向100g加重時の伸度が30%程度、横方向100g加重時の伸度が10%程度のネット部材を使用することで、各キャップのサイズ差と同程度の伸張ができるように、各キャップ1は構成されている。これは、一つのキャップを装着することで、次のサイズのキャップまでの範囲をカバーできるため、より精度の高い採寸が可能となる。キャップの伸張が十分でない場合には、サイズが合わずに装着可能なキャップが存在しない事態が発生したり、採寸した結果が装着したキャップのサイズと全て同一になる可能性が高く、装着者頭部のサイズが不正確になる。
【0039】
採寸方法は、上記のように所定のパーツのサイズを変えた複数の採寸用キャップ1の中から大まかにフィットするキャップを複数個選び、各々装着して10〜15分経過後に頭部への締め付けが一番少ないキャップを頭部サイズ採寸キャップとして、頭部に装着した状態で採寸を行う。キャップ装着時に、装着者のヘアラインを設定し、例えばフロントヘアラインFLを設定し、その中央位置を決定する。
【0040】
実際の採寸はキャップ1を構成する各パーツ11〜19の寸法を測定するのではなく、目印ラインのある以下の3箇所の長さを測定する。
第1測定箇所:図5に示すように、前頭縁から右又は左側頭縁部を通り、アジャスター部(第8パーツ18及び第9パーツ19)を通り、後頭縁部から、再びアジャスター部及び側頭縁部を通り、前頭縁8に至る外周。つまり、第1目印ラインL1に沿った長さである。
第2測定箇所:図6に示すように、前頭縁部の中心点から正中線を通って後頭部ぼんの窪みまでの長さ。つまり、第2目印ラインL2に沿った長さである。
第3測定箇所:図7に示すように、右側耳上部からゴールデンポイントを通って左側耳上部までの長さ。つまり、第3目印ラインL3に沿った長さである。
【0041】
本実施形態で、採寸を3箇所に限定しているのは以下の理由による。
採寸にあたり、採寸個所を多くすると、各パーツ間での歪みが大きくなり、その歪みを解放しようとすると、各パーツの形状変更が必要になり相当な熟練を必要とすること、サイズ採寸のために装着した採寸用キャップと比べて形状が変形してしまい、結果としてフィット感が低下する傾向にある。
本実施形態では、全頭用ウィッグの装着時のフィット感及び装着者の安心感を得るために必要とされる部位の寸法に絞込んで、上記の3個所とした。
【0042】
これらの採寸値に基づいて、実際のウィッグキャップつまりウィッグベースが作製される。実際の毛部材が取り付けられて使用に供されるウィッグベースは、前述したように、採寸用キャップ1と同様、第1パーツ11〜第9パーツ19から構成されている。本実施形態では、採寸値に基づいて、第1パーツ11〜第9パーツ19の全ての大きさや形状を変えるのではなく、一部のパーツ、つまり可変パーツだけ大きさや形状を変えて、各第1パーツ11〜第9パーツ19を連結させて、ウィッグベースを作製する
【0043】
次に上記の通り採寸した3個所の頭部サイズを元に、実際のウィッグベースを作製する方法について説明する。
【0044】
第1測定箇所の採寸値は、第1目印ラインL1に沿った長さで、第1パーツ11の前縁部111、第2パーツ12及び第3パーツ13の直線部121及び131、第4パーツ14の後縁部142の長さを足した長さに相当しており、この採寸値は表1のs1と比較される。S1に対する採寸値の差分を、第8パーツ18及び第9パーツ19の長さで調整する。例えば、採寸値がS1よりも短い場合は、その差分だけ第8パーツ18及び第9パーツ19を等しく短くする。
【0045】
ここで、第1目印ラインL1に沿った、各パーツの部位の寸法を変更しようとした場合には、縫製してキャップにした時に歪みが出ないようにするために、各パーツの変更する割合を決める事は困難である。このために、ウィッグの装着時にフィット感を調節できる第8パーツ18及び第9パーツ19(所謂アジャスター部)の長さを変更すれば、各パーツ11〜19の形状を変更することなく歪みの発生を防止できる。
【0046】
第2測定箇所の採寸値は、第2目印ラインL2に沿った長さで、第1パーツ11の長手方向、第4パーツ14の短手方向の長さを足した長さに相当しており、この採寸値は表1のs2と比較される。S2に対する採寸値の差分を、第1パーツ11の長さで調整する。具体的には、第1パーツ11の前縁部111から後縁部112までの長さを変更する。
【0047】
このように第1パーツ11のみを変更し、第4パーツ14の変更は行わない。第4パーツ14の変更を行わない理由は、フィット感が急激に低下するので好ましくないことに拠る。全頭を覆うウィッグで装着時のフィット感、装着者の安心感を得る場所は、頭頂部と側頭部のフィット感や締め付け感であり、これらは第4パーツ14に起因する。
【0048】
第3測定箇所の採寸値は、第3目印ラインL3に沿った長さで、第2パーツ12及び第3パーツ13の直線部121及び後縁部122の長さ(後述の半径R)、第1パーツ11の短手方向の長さを足した長さに相当しており、この採寸値は表1のs3と比較される。S3に対する採寸値の差分を、第2パーツ12及び第3パーツ13で調整する。具体的には、第2パーツ12及び第3パーツ13は半径Rで角度θの扇型に形成されているため、角度θを一定にした状態で、半径Rを変えて、第2パーツ12及び第3パーツ13の各サイズを調整する。
【0049】
以上のように、ウィッグベースのパーツの調整を行うが、実際には、装着した採寸用キャップ1の型紙を用意し、この型紙上で採寸したサイズに基づき該当するパーツのサイズの変更を行う。図8は、型紙を示す模式図であり、図中の破線が、サイズを変えられた可変パーツを示し、実線が変更前の形状を示している。
そして、この型紙をネット部材の上に置いて型紙の形状をネット部材に写して、ネット部材を写した形状に沿って裁断する。そして、図4のように各パーツを配置して縫製によりウィッグベースを組み立てる。このとき、ウィッグベースのアジャスター部(つまり、第8パーツ及び第9パーツ)はゴム弾性のある素材をネット部材に包んで形成し、ウィッグベース全体の締め付け具合の調整部分とする。作製したウィッグベースに人毛又は人工毛髪を公知の方法で植設して、全頭用ウィッグが完成する。
【0050】
このように、本実施形態に係る採寸用キャップを、複数のパーツを連結させて構成されるウィッグベースの作製において、当該ウィッグベースに代えて装着者の頭部に装着して採寸するために利用することで、ウィッグベースを容易に作製させることができる。つまり、ウィッグベースを複数のパーツに分割して、なお且つ縫製によって一体化することで、頭部に装着した時に頭部の各部位の形状に応じて伸長させたウィッグベースを、当該ウィッグベースと同様に複数に分割された第1パーツ11〜第9パーツ19で構成された採寸用キャップを利用して採寸し、その一部のパーツだけ寸法を採寸値に応じて調整することで、装着者の頭部にフィットするウィッグベースを作成することができる。
【0051】
また、抗癌剤投与によって頭皮が敏感になっている装着者に対して、特許文献1の型取り方法を実施することは、装着者に与える負担が大きいが、本実施形態では、装着者の頭部に採寸用キャップを緩く装着させて採寸が行えるので、装着者に過度の負担を与えることがない。
【0052】
本実施形態の採寸用キャップ及びウィッグベースでは、第4パーツ14として伸縮性の高いネット部材を利用することで、装着者の盆の窪より下側(首側)部分領域における、十分なフィット感を装着者に与えることができる。特許文献1の型取り方法では装着者の盆の窪より下側(首側)部分の形状を正確に再現することができない。
【0053】
以上説明したが、本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲おいて実施をすることができる。
上記実施形態では、目印としての第1目印ラインL1〜第3目印ラインL3は連続した線(実線)であったが、間欠状の点線(破線)、点、仮想の線などであってもよいことは勿論である。本発明の目印は、例えば糸を縫着して形成されたものの他、他の布片などを縫着させたものであってもよい。また、目印は、フロントヘアラインFLの中央位置C1、左右の襟足サイドヘアラインSLの耳上部C2、リアヘアラインRLの中央位置C3にだけ、例えば点状に設けられていてもよい。
本発明のキャップを構成する各パーツは、ネット製の部材に限らず、布製の部材、又は人工皮膚の何れでもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 採寸用キャップ
11 第1パーツ(フロント・センタパーツ)
12 第2パーツ(サイドパーツ)
13 第3パーツ(サイドパーツ)
14 第4パーツ(リアパーツ)
15 第5パーツ(サイドバーンパーツ)
16 第6パーツ(サイドバーンパーツ)
17 第7パーツ(ネープパーツ)
18 第8パーツ(アジャスタパーツ)
19 第9パーツ(アジャスタパーツ)
L1 第1目印ライン
L2 第2目印ライン
L3 第3目印ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定パーツと装着者の頭部形状に対応するようサイズを変更し得る複数の可変パーツとを連結することでウィッグベースを作製するに際して、上記可変パーツのサイズを調整するために装着者の頭部に装着して当該装着者の頭部を採寸する採寸用キャップであって、
上記ウィッグベースの複数の固定パーツと上記複数の可変パーツとに対応した複数の採寸用パーツを備え、フロントヘアラインとこれに連接する左右のサイドヘアラインとリアヘアラインとで外周を画成するよう、該複数の採寸用パーツ同士を連結して構成され、
上記フロントヘアラインの中央位置、上記左右のサイドヘアラインの耳上部、上記リアヘアラインの中央位置に目印が設けられていることを特徴とする、採寸用キャップ。
【請求項2】
前記採寸用パーツは、前額部のフロントヘアラインから頭頂部領域までを覆うフロント・センタパーツと、左右の側頭部を覆う各サイドパーツと、後頭部を覆うリアパーツと、左右の揉み上げ部を覆う各サイドバーンパーツと、襟足部を覆うネープパーツと、長さ可変のアジャスタパーツと、から構成され、
上記フロント・センタパーツは前額部の上記フロントヘアラインと頭頂部に向かう左右の縁部と後縁部とから略矩形に形成され、
上記サイドパーツは、フロントヘアラインの各端部から耳上部に亘る直線部とこの直線部から後側へ凹状に延びる後縁部と直線部の前端及び後縁部の後端を結ぶ円弧縁部とから扇型に形成され、
上記リアパーツは、前側へ湾曲した前縁部と後側へ湾曲し該前縁部の両端を結ぶ後縁部とから楕円型に形成されており、
上記フロント・センタパーツの左右の縁部と上記サイドパーツの円弧縁部とが連結され、
上記リアパーツの前縁部に上記フロント・センタパーツの後縁部と左右のサイドパーツの後縁部とが連結され、
左右のサイドパーツの直線部に上記サイドバーンパーツが連結され、
上記リアパーツの後縁部に上記ネープパーツ及び上記アジャスタパーツが連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の採寸用キャップ。
【請求項3】
前記フロント・センタパーツの前縁部が前記フロントヘアラインを構成し、
前記サイドバーンパーツの縁部及び前記アジャスタパーツの縁部が前記サイドヘアラインを構成し、
前記ネープパーツの後縁が前記リアヘアラインを構成していることを特徴とする、請求項2に記載の採寸用キャップ。
【請求項4】
前記目印は、前記フロントヘアラインの中央位置から左側の耳上部と前記リアヘアラインの中央位置と右側の耳上部とを経て当該フロントヘアラインの中央位置までの第1目印ラインと、前記フロントヘアラインの中央位置からゴールデンポイントを経て前記リアヘアラインの中央位置までの第2目印ラインと、右側の耳上部からゴールデンポイントを通って左側耳上部までの第3目印ラインと、から構成されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の採寸用キャップ。
【請求項5】
前記第1目印ライン〜第2目印ラインが、実線、点線、点、仮想線のいずれかであることを特徴とする、請求項4に記載の採寸用キャップ。
【請求項6】
前記目印が糸で縫着されていることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の採寸用キャップ。
【請求項7】
前記リアパーツが、他のパーツより高い伸長特性を有することを特徴とする、請求項2に記載の採寸用キャップ。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の採寸用キャップを頭部に装着する第1工程と、
下記(1)〜(3)の3箇所の寸法を計測する第2工程と、を含むことを特徴とする、採寸方法。
(1)前記フロントヘアラインの中央位置から左側の耳上部と前記リアヘアラインの中央位置と右側の耳上部とを経て当該フロントヘアラインの中央位置までの頭部外周の長さ。
(2)フロントヘアラインの中央位置からゴールデンポイントを経て前記リアヘアラインの中央位置までの長さ。
(3)右側の耳上部からゴールデンポイントを通って左側の耳上部までの長さ。
【請求項9】
前記第1工程が、装着者のヘアラインを設定しその中央位置を決定する段階を含むことを特徴とする、請求項8に記載の採寸方法。
【請求項10】
複数の固定パーツと装着者の頭部形状に対応するようサイズを変更し得る複数の可変パーツとを連結して構成されるウィッグベースの作製方法であって、
請求項1〜7の何れかに記載の採寸用キャップを装着者の頭部に装着させて寸法を計測する採寸工程と、
上記採寸工程で計測した寸法に基づいて上記ウィッグベースを構成する複数の可変パーツのサイズを調整する調整工程と、
上記複数の固定パーツと上記複数の可変パーツとを連結させる連結工程と、を含み、
上記採寸工程が下記(1)〜(3)の3箇所の寸法を計測することを特徴とする、ウィッグベースの作製方法。
(1)前記フロントヘアラインの中央位置から左側の耳上部と前記リアヘアラインの中央位置と右側の耳上部とを経て当該フロントヘアラインの中央位置までの頭部外周の長さ。
(2)フロントヘアラインの中央位置からゴールデンポイントを経て前記リアヘアラインの中央位置までの長さ。
(3)右側の耳上部からゴールデンポイントを通って左側の耳上部までの長さ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−174192(P2011−174192A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37769(P2010−37769)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000126676)株式会社ユニヘアー (49)