説明

採尿容器、採尿容器作成用の型

【課題】採尿容器の輸送コスト又は梱包コストを削減する。
【解決手段】本発明による採尿容器は、矩形の開口面A1を有し、プラスチックで形成された箱型の採尿容器である。本発明による採尿容器は、側面P2と開口面A1との境界線B2上に形成された舌片部2と、側面P1〜P4に形成された折線L1〜L5とを具備する。折線L1〜L5を折目として折り畳むことで舌片部を収納する領域22が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形によって作製されるプラスチック製の採尿容器、及びその型に関する。
【背景技術】
【0002】
健康診断や各種病気の検査の1つとして尿検査がある。尿検査のための採尿は、病院等の検査機関のみならず自宅においても行なわれる。自宅で採尿する場合、運搬用の容器に尿を入れる必要がある。運搬用容器は、検査に必要最低限の尿が入れば良く、通常小さな容器が用いられる。運搬用容器は小さく、直接採尿することは困難であるため、尿を採取し易い形状及び大きさの採尿容器が必要となる。
【0003】
近年、自宅で尿や血液を採取して検査機関に郵送することで、自宅に居ながら簡易に病気の診断を行なうことができるサービスが普及している。このようなサービスでは、検査機関から運搬用容器と採尿容器が自宅に郵送される。ユーザは、採尿容器を用いて採尿し、運搬用容器に尿を移し入れて検査機関に返送する。
【0004】
採尿容器を郵送する場合、運搬用容器とともに封緘されるが、その大きさが大きいと輸送コストが高くなってしまう。このため、輸送コストや持ち運びの容易性の観点から、採尿容器の大きさは小さいことが好適である。一方、採尿容器は、容易に採尿することができるように、開口部の大きさや容量が所定の大きさ以上であることが求められる。このため、採尿時には所望の大きさの容器として使用でき、輸送時には小さくて嵩張らない大きさとなる採尿容器が利用されている。
【0005】
採尿時には所望の大きさの容器として使用でき、輸送時には小さくて嵩張らない大きさとなる採尿容器の一例が、特開2003−14732号公報に記載されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の採尿容器は、板紙に設けられた罫線に沿って折り畳むことでテーパ−ボックス状となる。輸送時はテーパ−ボックスを展開することで平板となるため嵩張ることはない。このような採尿容器の場合、使用者は、平板から箱状の容器を自ら作り出さなければならない。すなわち、容器を作成する工程が増えるため、採尿を行なう際の手間と時間がかかってしまう。又、板紙に罫線が施されていても、容器を作ることが困難な人がいる場合がある(例えば、子供や高齢者)。自宅で採尿する場合、誰もが一人で簡単に行なえることが要求されているため、このような組み立て式の採尿容器は、自宅採尿用としては不向きである。
【0006】
このため、自宅採尿用としては容器の組み立てを必要としない採尿容器が好適である。組み立てを必要としない採尿容器を輸送する場合、容器を折り畳むことで、その大きさを縮小することができる。
【特許文献1】特開2003−14732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
小さく折り畳むことが可能な採尿容器は、その強度や弾性力の大きさの観点からプラスチック(例えばポリプロピレン)製であることが好ましい。これは、弾性力が弱い紙製の容器の場合、折り畳まれた状態に戻ろうとする力が容器の状態を維持する力を上回り、容器の形状を維持し難くなるからである。プラスチック製の容器の場合、折り畳まれた状態から元の形状(容器の状態)に戻ろうとする力が強いため、使用する際、容器の形状が維持され、支障なく採尿を行なうことができる。
【0008】
しかし、プラスチック製の採尿容器を折り畳む場合、容器の状態に戻ろうとする力が強いため、折り畳まれた状態を維持できず、その力を抑える手段が必要となる。このため、従来では、折り畳まれた採尿容器を小さな袋に入れたり、輪ゴムや紐等によって括ることで、折り畳まれた状態を維持している。このような、容器の形状への復元力を抑制する手段にかかるコストや、この手段を講ずるための人件費は、検尿キッドの輸送費(郵送費)や梱包コストの増大の原因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下に述べられる手段を採用する。その手段を構成する技術的事項の記述には、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]の記載との対応関係を明らかにするために、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号・符号が付加されている。但し、付加された番号・符号は、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲を限定的に解釈するために用いてはならない。
【0010】
本発明による採尿容器は、矩形の開口面(A1)を有し、プラスチックで形成された箱型の採尿容器である。本発明による採尿容器は、側面(P2)と開口面(A1)との境界線(B2)上に形成された第1舌片部(2)と、側面(P1〜P4)に形成された折線(L1〜L5)とを具備する。折線(L1〜L5)を折目として折り畳むことで舌片部を収納する領域(22)が形成される。
【0011】
第1舌片部(2)は、採尿時や尿を運搬用容器に移し替える際に容器を支持するために利用できる。又、折線(L1〜L5)に従って容器を折り畳むことで、嵩張りの原因となる第1舌片部(2)を収納することができるため、容器の嵩張りを抑える手段を必要せずに、小さく折り畳むことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、採尿が容易な採尿用容器の輸送コストを削減できる。
【0013】
又、採尿が容易な採尿用容器の梱包コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態が説明される。図面において同一、又は類似の参照符号は、同一、類似、又は等価な構成要素を示している。本発明による採尿容器は、製造時及び採尿時の形状は、図1に示すような容器状(箱型)であるが、折り畳むことで、図2に示すような郵送(輸送)に適した大きさに変形する。以下、図1に示すような採尿時の形状を「容器形状」、図2に示すように折り畳まれた形状を「折り畳み形状」と称して説明する。
【0015】
(容器形状)
図1、及び図3から図11を参照して、本発明による採尿容器の実施の形態における容器形状を説明する。図1は、本発明による採尿容器の容器形状を示す図である。図3は、本発明による採尿容器の使用状態を示す参考斜視図である。図4は、本発明による採尿容器の正面図である。図5は、本発明による採尿容器の背面図である。図6は、本発明による採尿容器の右側面図である。図7は、本発明による採尿容器の左側面図である。図8は、本発明による採尿容器の平面図である。図9は、本発明による採尿容器の底面図である。
【0016】
図1を参照して、本発明による採尿容器は、側面P1〜P4及び底面P5によって囲まれた箱型であり、底面P5に対向した領域は開口している。以下では、側面P1〜P4と、開口した領域との境界線B1〜B4によって囲まれた領域を開口面A1と称す。図6を参照して、上方(図1におけるZ方向正側)から見た開口面A1の形状は、正方形あるいは長方形であることが好適である。又、開口面A1の形状が長方形の場合、後述する舌片部1、2を有する辺(境界線B1、B2)の長さは、他の辺(境界線B3、B4)よりも長いことが好ましい。
【0017】
側面P2と開口面A1との境界線B2には、舌片部2が設けられる。又、側面P1と開口面A1との境界線B1には、舌片部1が設けられることが好ましい。ユーザは、舌片部1、2をX軸に沿って互いに反対方向に引っ張ることで、折り畳み形状から容器形状に容易に展開することができる。又、舌片部1、2は、採尿時に容器を保持する取っ手(つまみ)として利用される。更に、図3に示すように、採尿容器から運搬用容器に尿を入れる際、容器を支持し、落下防止のすべり止めとして利用される。
【0018】
図1及び図4を参照して、側面P1には、境界線B1に対して概平行な折線L1が設けられている。折線L1は、側面P1に形成された段差の境によって形成される。詳細には、側面P1は、折線L1を境として開口面A1側の平面P11と底面側の平面P12を有する。側面P1の鉛直外側方向(図1X軸正方向)の高さが、平面P11より平面P12の方が低くなるように形成されている。このように、段差の境界である折線L1によって、側面P1は2つに谷折りされ易くなる。
【0019】
折線L1は、境界線B1からの距離がa、底面との境界線からの距離がbとなる位置に形成される。このとき、側面P3側面及び側面P4側面のそれぞれの近傍に位置する舌片部2の端部21において、境界線B2に対して垂直方向の幅cは、a−b<cとなる大きさであることが好ましい。このような寸法とすることで、折り畳み形状とする過程において形成される袋部22に、舌片部2の端部21を差し入れることが可能となる(図14D及び図14Eを参照)。端部21以外の領域の幅は、このような寸法条件(a−b<c)を満足しなくても構わない。例えば、舌片部2の中央部の幅をa−b以上とすることで、舌片部2の掴み易さが向上し、容器形状へ展開することが容易となる。
【0020】
図1及び図6を参照して、側面P3には、開口面A1との境界線B3における中点と、底面P5との境界線B5の中点とを結ぶ直線上の一点(点N1)から、折線L1に向かって延びる折線L2が設けられることが好ましい。又、側面P3には、底面P5との境界線B5と、側面P1及び側面P2のそれぞれとの交点から点N1に延びる折線L4が設けられることが好ましい。
【0021】
点N1の位置は、図14Bに示すように平面P1と平面P2が接触するように容器を折り畳むとき、折線L1と折線L2が同一直線の折り目(谷折り)となるように設定されることが好ましい。この場合、点N1の位置は、境界線B3と境界線B5の中間付近であり、境界線B5から点N1への距離が距離bより少し長い位置に設定される。
【0022】
折線L2及び折線L4は、折線L1と同様に側面P3に形成された段差の境によって形成される。詳細には、側面P3は、折線L2を境として開口面A1側で、且つ折線L4を境として開口面A1側の平面P31と、折線L2を境として底面P5側で、且つ折線L4を境として開口面A1側の平面P32と、折線L4を境として底面P5側の平面P33を有する。側面P3の鉛直外側方向(図1Y軸正方向)の高さが、平面P31より平面P32の方が低く、平面32より平面33の方が低くなるように形成されている。折り畳み形状において、折線L2を境に側面P3の一部は谷折りされ、折線L4を境に、側面P3は山折りされる。
【0023】
図1及び図7を参照して、側面P4には、開口面A1との境界線B4における中点と、底面P5との境界線B6の中点とを結ぶ直線上の一点(点N2)から、折線L1に向かって延びる折線L3が設けられることが好ましい。又、側面P4には、底面P5との境界線B6と、側面P1及び側面P2のそれぞれとの交点から点N2に延びる折線L5が設けられることが好ましい。
【0024】
点N2の位置は、図14Bに示すように平面P1と平面P2が接触するように容器を折り畳むとき、折線L1と折線L3が同一直線の折り目(谷折り)となるように設定されることが好ましい。この場合、点N2の位置は、境界線B4と境界線B6の中間付近であり、境界線B6から点N2への距離が距離bより少し長い位置に設定される。
【0025】
折線L3及び折線L5は、折線L1と同様に側面P4に形成された段差の境によって形成される。詳細には、側面P4は、折線L3を境として開口面A1側で、且つ折線L5を境として開口面A1側の平面P41と、折線L3を境として底面P5側で、且つ折線L5を境として開口面A1側の平面P42と、折線L5を境として底面P5側の平面P43を有する。側面P4の鉛直外側方向(図1Y軸負方向)の高さが、平面P41より平面P42の方が低く、平面42より平面43の方が低くなるように形成されている。折り畳み形状において、折線L3を境に側面P4の一部は谷折りされ、折線L5を境に、側面P4は山折りされる。
【0026】
後述するように、プラスチック製の採尿容器は、真空成形に例示される熱成形によって作製される。この際、側面P1、P3、P4において折り目となる折線を凹状又は凸状の構造によって形成すると、この構造により金型と製品とが嵌合するため、金型から製品を抜き出し難くなる。本発明では、側面における底面側が開口面側より低くなるような段差の境界によって折線L1〜L5が形成されている。このため、金型は製品に対して抜きテーパ状の構造となり、金型から製品を抜き出し易くなる(離型容易)。
【0027】
側面P1〜P4には、容器の強度を高めるため、開口面A1側と底面P5とを結ぶ方向(Z方向)に延びる複数の溝構造3が設けられる。溝構造3は、開口面A1側と底面P5とを結ぶ方向に形成されているため、製品を金型から抜き出す際の障害となることはない。又、側面P3、P4には、点N1、N2を通り、Z方向に延びる溝構造31、32が形成されることが好ましい。溝構造31、32は、容器の強度を高める機能を有する他、折り畳み形状となる際に山折りされる折り目としての機能を有する。又、溝構造31、32は、指で支持され得る舌片部1、2と異なる側面P3、P4に形成され、山折りの折目となる。このため、図3に示すように、舌片部1、2が設けられた側面を保持した場合、溝構造31、32によって折り曲げられた領域は、尿の注ぎ口となる。このため、溝構造31、32は、尿を採尿容器から運搬用容器100に移す際の注ぎ口(誘導路)としても機能する。
【0028】
図10は、図8に示す採尿容器のA−A’断面図である。図11は、図8に示す採尿容器のB−B’断面図である。図10及び図11を参照して、底面P5の形状は、容器内部に向けて凸となる四角錘であることが好ましい。底面P5を錘状に形成することで、採尿時、底面P5に注がれた尿は四角錘の側面で反射し、側面P1〜P4の内壁方向に飛散する。これにより、採尿時に、尿が容器外に飛び散るのを防ぐことができる。このため、四角錘の頂点の角度α及びβは、底面P5に注がれた尿が側面P1〜P4の内壁方向に飛散するような角度に設定することが好ましい。又、図2及び図14Fに示すように、折り畳み形状における採尿容器の厚さは、底面P5の厚さに依存する。このため四角錘の頂点の角度α、βは、折り畳み時の厚さを考慮して、尿の飛散防止が可能な最低限の角度に設定されることが好ましい。
【0029】
(製造方法)
図12、図13を参照して、本発明による採尿容器の製造方法と、製造に使用される金型について説明する。
【0030】
本発明による採尿容器は、容器の形状を維持する強度(弾性力)や、折り曲げた状態からの復元性の観点からプラスチック製であることが好ましい。特に、熱成形により製造が容易な熱可塑性樹脂が好適である。すなわち、採尿容器は、真空成形、圧空成形、真空圧空成形のいずれかによって作製され得る。以下では、真空成形による採尿容器の製造方法を一例に説明する。
【0031】
真空成形によって製造される採尿容器として利用可能な材料は、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(非晶性ポリエステル系シート)がある。特に、折り畳み可能な採尿容器としては、PP(ポリプロピレン)やフィラー入りPPが好適である。
【0032】
図12は、雄型の金型20を用いたドレープ成形法による真空成形の工程を示す図である。先ず、材料となるPPフィラシート10(厚さ約0.3〜0.6mm)を加熱して軟化させる(図12(a))。そして、金型20とPPフィラシート10とを接触させる(図12(b))。このとき、金型20とPPフィラシート10との間に空隙ができる。この空隙を、図示しない真空ポンプによって減圧することで、金型20の外側とPPフィラシート10とを密着させる(図12(c))。尚、空隙内の空気は金型20に設けられた真空孔(0.5〜1φ)から排気される。金型20に密着したPPフィラシート10は、金型20の外側表面の形状である容器形状に成形される。又、この状態で冷却固化されることで、PPフィラシート10は容器形状に固定される。最後に、容器形状となったPPフィラシート10から金型20が引き抜かれ、余剰部分が切断されることで図1に示すような採尿容器が完成する(図12(d))。この際、金型20の側面は、段差構造による抜きテーパ状となっているため、金型を採尿容器から容易に引き抜くことができる。材料となるPPフィラシート10は、強度及び加工容易性から厚さ0.4mmのPPフィラシートが特に好適である。
【0033】
図13は、雌型の金型21を用いたストレート成形法による真空成形の工程を示す図である。先ず、材料となるPPフィラシート10(厚さ約0.3mm〜0.6mm)を加熱して軟化させる(図13(a))。そして、金型21とPPフィラシート10とを接触させる(図13(b))。このとき、金型21とPPフィラシート10との間に空隙ができる。この空隙を、図示しない真空ポンプによって減圧することで、金型21の内側とPPフィラシート10とを密着させる(図13(c))。尚、空隙内の空気は金型21に設けられた真空孔(0.5〜1φ)から排気される。金型21に密着したPPフィラシート10は、金型21の内側表面の形状である容器形状に成形される。又、この状態で冷却固化されることで、PPフィラシート10は容器形状に固定される。最後に、容器形状となったPPフィラシート10から金型21が引き抜かれ、余剰部分が切断されることで図1に示すような採尿容器が完成する(図13(d))。この際、採尿容器の外側表面は金型21に対し、段差構造による抜きテーパ状となっているため、金型を採尿容器から容易に引き抜くことができる。
【0034】
上述の真空成形において金型とシートを密着させる際、金型と対向する方向からPPフィラシート10に対して送風(ブロー)しても良い(真空圧空成形)。又、圧空成形によって採尿容器を成形しても良い。更に、プラグアシスト法やエアースリップ法等を組み合せて成形しても良い。更に、金型20、21は、精度及び耐久性の優れた金属製(例えばアルミ、ZAS<亜鉛合金)でも、量産性に優れた樹脂製の型でも良い。
【0035】
(折り畳み形状)
図2、及び図14A〜図14Fを参照して、本発明による採尿容器の実施の形態における折り畳み形状を説明する。図2は、本発明による採尿容器の折り畳み形状を示す図である。図14A〜図14Fは、容器形状から折り畳み形状へ移行する際の折り畳み工程を示す図である。
【0036】
先ず、平面P11の内側と側面P2の内側を接触させながら、容器形状の採尿容器の折線L1を谷折りにする。このとき、点N1より開口面A1側の溝構造31と、点N2より開口面A1側の溝構造32は山折りされ、折線L2、L3は谷折りされる(図14A)。折線L1を境に谷折りする際、側面P1と側面P2の内側の概全面が接触するように折り畳まれることが好ましい。このため、底面P5と側面P3との境界線B5の長さdと、底面P5と側面P4との境界線B6の長さeは等しく、2b以下であることが好ましい。
【0037】
折線L1、L2、L3は谷折された折り目となり、平面P11と平面P12、平面P31と平面P32、及び平面41と平面42とがそれぞれ接触するように折り畳まれる(図14B、図14C)。このとき、舌片部1は、平面P11と平面P12の間に挟まれるように収納されることが好ましい。図1及び図14Bを参照して、舌片部1を平面P11と平面P12の間に挿入する場合、境界線B1に対して垂直方向における舌片部1の幅fは、長さe及びdの半分以下であることが好ましい。尚、舌片部1は、平面P11と平面P12の間に収納されなくても良い。この場合、折り畳み形状となっても舌片部1が側面に対し概垂直な状態で維持される。これにより、舌片部1の表面に文字や記号、図形等を記載することで、舌片部1に表示された情報(例えば、採尿容器の材質やメーカー名)が、折り畳み状態においても容易に視認することができる。
【0038】
次に、平面P31、P41と側面P2との境界を谷折にして、平面P31、P41と側面P2とを接触させるように折り畳む(図14D)。最後に、平面P31と平面P33、及び平面P41と平面P43とによって形成された袋部22に、舌片部2の端部21を挿入する(図14E、図14F)。舌片部2の端部21の長さcは、袋部22の幅a−bよりも大きいため、端部21を袋部22に挿入することができる。
【0039】
舌片部1、2は、図1に示すように、側面P1、P2に対して直角方向に延びるように形成される。このため、舌片部1、2は、採尿容器を折り畳んだ際の嵩張りの原因となる。しかし本発明では、採尿容器に形成された折線L1〜L5に従って折り畳むことで、舌片部1を収納可能な側面P1とP5との間隙や、舌片部2を収納可能な袋部22が形成される。舌片部1、2をこれらの部分に挿入することで、舌片部1、2は元の形に復元されないように抑え込まれるとともに、折り畳まれた平面P33、P43も展張しないように抑えこまれる。従って、採尿容器の折り畳み形状を従来より小さく(薄く)することができる。この結果、郵送物の体積(厚み)は小さく(薄く)なるため、輸送費用(例えば郵送料)を削減することができる。又、折り畳まれた採尿容器を輪ゴム等で括るための労力や、輪ゴム等に例示される容器を小さくするための手段を要しないため、採尿容器の梱包コストを削減することができる。更に、本発明では、段差による折線によって、容易に折り畳むことが可能となるため、梱包作業時間が短縮される。
【0040】
以上のように、本発明による採尿容器は、舌片部1、2を有しているため、採尿、及び尿の移し替えが容易となる。この舌片部1、2は、折線に応じて折り畳むことで収納されるため、嵩張りを抑える手段を必要とせずに、小さなサイズで梱包することができる。又、山折りされる溝機構31、32が尿の誘導路となるため、尿の移し替えが更に容易となる。更に、折線が、開口側が高い段差によって形成されているため、製造過程において、型から製品を容易に抜き出すことできる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。本実施の形態では、一例として、真空成形、圧空成形、真空圧空成形のいずれかによる採尿容器の作製方法を説明したが、これに限らず、射出成形によっても作製することができる。
【0042】
又、側面P1、P2のどちらからも折り畳みが容易にできるように、折線L1と同様な構造の折線が側面P2に設けられても良い。この場合、折線L2、L3は、側面P2に設けられた折線に向けて延設されることが好ましい。更に、舌片部1の端部の幅fは、舌片部2の端部の幅cと同様な条件(a−b<f)で形成されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明による採尿容器の容器形状を示す図である。
【図2】図2は、本発明による採尿容器の折り畳み形状を示す図である。
【図3】図3は、本発明による採尿容器の使用状態を示す参考斜視図である。
【図4】図4は、本発明による採尿容器の正面図である。
【図5】図5は、本発明による採尿容器の背面図である。
【図6】図6は、本発明による採尿容器の右側面図である。
【図7】図7は、本発明による採尿容器の左側面図である。
【図8】図8は、本発明による採尿容器の平面図である。
【図9】図9は、本発明による採尿容器の底面図である。
【図10】図10は、図8に示す採尿容器のA−A’断面図である。
【図11】図11は、図8に示す採尿容器のB−B’断面図である。
【図12】図12は、雄型の金型を用いたドレープ成形法による真空成形の工程を示す図である。
【図13】図13は、雌型の金型を用いたストレート成形法による真空成形の工程を示す図である。
【図14A】図14Aは、容器形状から折り畳み形状へ移行する際の折り畳み工程を示す図である。
【図14B】図14Bは、容器形状から折り畳み形状へ移行する際の折り畳み工程を示す図である。
【図14C】図14Cは、容器形状から折り畳み形状へ移行する際の折り畳み工程を示す図である。
【図14D】図14Dは、容器形状から折り畳み形状へ移行する際の折り畳み工程を示す図である。
【図14E】図14Eは、容器形状から折り畳み形状へ移行する際の折り畳み工程を示す図である。
【図14F】図14Fは、容器形状から折り畳み形状へ移行する際の折り畳み工程を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1、2:舌片部
3、31、32:溝構造
21:端部
22:袋部
L1〜L5:折線
B1〜B6:境界線
P1〜P4:側面
P11、P12、P31〜P33、P41〜P43:平面
P5:底面
A1:開口面
N1、N2:点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の開口面を有し、プラスチックで形成された箱型の採尿容器において、
側面と前記開口面との境界線上に形成された第1舌片部と、
側面に形成された折線と、
を具備し、
前記折線を折目として折り畳むことで前記第1舌片部を収納する領域が形成される
採尿容器。
【請求項2】
請求項1に記載の採尿容器において、
前記開口面との第1境界線に対し概平行な第1折線を有する第1側面と、
前記第1側面に対向する位置に設けられ、前記開口面との第2境界線上に形成された第1舌片部を有する第2側面と、
を具備し、
容器形状から折り畳み形状に変形する際、前記第1折線は外側から見て谷折りされる折目となる
採尿容器。
【請求項3】
請求項2に記載の採尿容器において、
前記第1側面は、前記第1折線を境として、前記開口面側の第1面と、前記開口面に対向する底面側の第2面とを有し、
前記第1側面の鉛直外側方向に対して、前記第1面は前記第2面より高い位置に設けられる
採尿容器。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の採尿容器において、
前記第1側面と前記第2側面とを接続する第3側面及び第4側面を更に具備し、
前記第1折線は、前記開口面に対向する底面との境界線からの距離が、第1境界線からの距離がaより短いbとなる位置に設けられ、
前記第3側面及び前記第4側面のそれぞれの近傍に位置する前記第1舌片部の端部において、前記第2境界線に対して垂直方向の幅cは、a−b<cであり、
前記底面と前記第3側面との第3境界線の長さdと、前記底面と前記第4側面との第4境界線の長さeは等しく、2b以下である
採尿容器。
【請求項5】
請求項4に記載の採尿容器において、
前記第3側面には、前記開口面との第5境界線と前記3境界線とを2等分する直線上の一点である第1点から、前記第1折線に延びる第2折線が設けられ、
前記第4側面には、前記開口面との第6境界線と前記4境界線とを2等分する直線上の一点である第2点から、前記第1折線に延びる第3折線が設けられ、
容器形状から折り畳み形状に変形する際、前記第2折線及び前記第3折線は外側から見て谷折りされる折目となる
採尿容器。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の採尿容器において、
前記第3側面には、前記第3境界線と、前記第1側面及び前記第2側面のそれぞれとの交点から、前記第1点に延びる第4折線が設けられ、
前記第4側面には、前記第4境界線と、前記第1側面及び前記第2側面のそれぞれとの交点から、前記第2点に延びる第5折線が設けられ、
容器形状から折り畳み形状に変形する際、前記第4折線及び前記第5折線は外側から見て山折りされる折目となる
採尿容器。
【請求項7】
請求項6に記載の採尿容器において、
前記第3側面は、前記第4折線を境として、前記開口面側の第3面と、前記開口面に対向する底面側の第4面とを有し、
前記第3側面の鉛直外側方向に対して、前記第3面は前記第4面より高い位置に設けられ、
前記第4側面は、前記第5折線を境として、前記開口面側の第5面と、前記開口面に対向する底面側の第6面とを有し、
前記第4側面の鉛直外側方向に対して、前記第5面は前記第6面より高い位置に設けられる
採尿容器。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の採尿容器において、
前記第3側面には、前記開口面との第5境界線と前記3境界線とを2等分する直線上において、前記第1点より開口面側の領域に、外側から見て凸状構造が形成され、
前記第4側面には、前記開口面との第6境界線と前記4境界線とを2等分する直線上において、前記第2点より開口面側の領域に、外側から見て凸状構造が形成される
採尿容器。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の採尿容器において、
前記開口面に対向する底面の形状は、前記開口面から見て凸となる四角錘である
採尿容器。
【請求項10】
請求項2から9のいずれか1項に記載の採尿容器において、
前記第1側面は、前記第1境界線上に形成された第2舌片部を有し、
前記第2側面は、前記第2境界線に対し概平行な第6折線を有し、
容器形状から折り畳み形状に変形する際、前記第6折線は外側から見て谷折りされる折目となる
採尿容器。
【請求項11】
請求項10に記載の採尿容器において、
前記第2側面は、前記第6折線を境として、前記開口面側の第7面と、前記開口面に対向する底面側の第8面とを有し、
前記第1側面の鉛直外側方向に対して、前記第7面は前記第8面より高い位置に設けられる
採尿容器。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の採尿容器において、
前記第1側面と前記第2側面とを接続する第3側面及び第4側面を更に具備し、
前記第1折線は、前記開口面に対向する底面との境界線からの距離が、第1境界線からの距離がaより短いbとなる位置に設けられ、
前記第3側面及び前記第4側面のそれぞれの近傍に位置する前記第2舌片部の端部において、前記第1境界線に対して垂直方向の幅fは、a−b<fであり、
前記底面と前記第3側面との第3境界線の長さdと、前記底面と前記第4側面との第4境界線の長さeは等しく、2b以下である
採尿容器。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の採尿容器を熱成形するための型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図14D】
image rotate

【図14E】
image rotate

【図14F】
image rotate


【公開番号】特開2010−127776(P2010−127776A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303046(P2008−303046)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(503087197)有限会社相川合成樹脂工業所 (2)
【Fターム(参考)】