説明

採水器

【課題】試料水の採取が容易であり、また試料水の汚染が防止される採水器を提供する。
【解決手段】採水器1は、試料水収容器2と、該試料水収容器2に差し込まれるようにして設けられた2本の通水管3,4と、各通水管3,4の先端部に設けられた水封部5,5とを有する。試料水収容器2は、上部に開口が設けられた容器2aと、該容器2aに装着された蓋2bとを有する。この蓋2bを前記通水管3,4が貫いている。通水管3の下端は容器2aの底面近傍に位置している。通水管4の下端は容器2a内の上部に位置している。水封部5は、通水管3又は4が貫通した貫通型異径ジョイント6と、一端が該貫通型異径ジョイント6に装着された大口径管7と、該大口径管7の他端が装着された異径ジョイント8とを有する。超純水などの試料水を通水管3から収容器2内に流入させて採取する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料水を試料水収容器内に採取する採水器に係り、特に超純水を採取するのに好適な採水器に関する。
【背景技術】
【0002】
超純水試料の採取は試料を通水しているラインを試料容器に入れて、十分オーバーフローさせた後に通水ラインを抜いて蓋を閉めるという方法で行われる。(JIS K 0553など)
その際、試料採取環境からの汚染を防止するためにサンプリングブース内で試料採取を行うことがある(特開平8−145983号(特許32844797号))。同号では、直方体形箱状の採取ブース内に採取室を区画形成し、エアフィルタ、気液接触装置及びデミスタを通した清浄な空気を該採取室内に循環供給すると共に、該採取室内に配置した採取容器に対し、ブースを貫通した採取用チューブから試料水を導入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−145983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超純水製造技術の進歩に伴い、より低濃度での分析が必要とされ、0.1ng/Lレベル以下の分析が可能となっている。このレベルの分析を行うためには各工程での汚染防止対策が重要であり、特に様々な環境の現場で行う試料採取工程では十分な汚染対策が必要である。従来の試料採取法でも0.1ng/Lレベルの汚染防止は可能であるが、採取技術の習熟と、採取環境によって対応するノウハウが必要であり、誰もが簡単に行えるものではない。
【0005】
採取する試料を試料容器にオーバーフローさせる方式では、蓋の開閉による汚染が生じるため、蓋を閉じた状態で試料の採取ができるように採取容器から延出した通水管を通して採水する場合がある。この場合でも、採取した試料は、採取容器から延出した通水管を通して分析装置、分析用器具に供されるが、試料容器の移送時に通水管の先端が汚れると、試料水が汚染される。
【0006】
本発明は、試料水の採取が容易であり、また試料水の汚染が防止される採水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の採水器は、試料水を通水させるための2本の通水管を有した試料水収容器と、各通水管の先端部にそれぞれ設けられた水封部とを備えてなるものである。
【0008】
請求項2の採水器は、請求項1において、前記水封部は、前記通水管が差し込まれた貫通型異径ジョイントと、該貫通型異径ジョイントに一端が装着された大口径管と、該大口径管の他端が装着された異径ジョイントとを備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の採水器にあっては、一方の通水管の先端部の水封部及び該通水管を介して試料水を試料水収容器内に流入させて容易に採取することができる。この採水器の各通水管先端部にそれぞれ水封部が設けられているので、各通水管の先端部が外部(例えば大気や各種物体)に直に接触することがなく、通水管の先端部が汚染されることがない。試料水収容器を密閉式としておくことにより、試料水収容器内の試料水が汚染されることも防止される。
【0010】
請求項2の採水器にあっては、試料水の採取後に大口径管を折曲げたり、異径ジョイントに設けておいたバルブを閉めたり、異径ジョイントの先に取り付けたチューブを折り曲げたりすることにより、試料水収容器内を封画することが可能である。大口径管内に水が入っており、大口径管を折り曲げるよりも異径ジョイントの先に取り付けたチューブを折り曲げる方が容易であり、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る採水器の正面図である。
【図2】試料水収容器の正面図である。
【図3】別の試料水収容器の平面図である。
【図4】さらに別の試料水収容器の平面図と断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す実施の形態を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
【0013】
第1図は実施の形態に係る採水器の正面図、第2図はその試料水収容器の正面図である。なお、第1図(a)は試料水の採取前、同(b)は試料水の採取工程を表している。第1,2図において、試料水収容器はその断面が表されている。
【0014】
この採水器1は、試料水収容器2と、該試料水収容器2に差し込まれるようにして設けられた2本の通水管3,4と、各通水管3,4の先端部に設けられた水封部5,5とを有する。試料水収容器2は、上部に開口が設けられた容器2aと、該容器2aに装着された蓋2bとを有する。この蓋2bを前記通水管3,4が貫いている。通水管3の下端は容器2aの底面近傍に位置している。通水管4の下端は容器2a内の上部に位置している。
【0015】
水封部5は、通水管3又は4が貫通した貫通型異径ジョイント6と、一端が該貫通型異径ジョイント6に装着された大口径管7と、該大口径管7の他端が装着された異径ジョイント8とを有する。
【0016】
異径ジョイント8にノズル9が貫設されている。異径ジョイント8に開閉バルブを設けておいてもよい。
【0017】
これらの収容器2、通水管3,4及び水封部5はいずれもポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂製とされることが好ましい。未使用状態では収容器2内はクリーンエアが入っていることが好ましい。
【0018】
この採水器1を用いて試料水の採取を行うには、第1図(b)のように各水封部5,5のノズル9にチューブ10を接続し、通水管3側のチューブ10を介して試料水(この場合は超純水)を収容器2内に流入させる。収容器2内を試料水で満たした後も、所定時間試料水の流入を継続させ、通水管4及びその先端部の水封部5とチューブ10を介して試料水を流出させるのが好ましい。
【0019】
なお、試料水の採取を開始するときに、通水管3側の水封部5の貫通型異径ジョイント6をゆるめて試料水を少量貫通型異径ジョイント6から外部に流出させ、水封部5の洗浄を行ってもよい。この貫通型異径ジョイント6をゆるめたままとし、試料水の採取を行っているときに継続して試料水を少しずつ通水管3側の貫通型異径ジョイント6から外部に流出(リーク)させ、試料水採取終了時に該貫通型異径ジョイント6を閉め込むようにしてもよい。
【0020】
上記のようにして収容器2内を試料水で満たした後、チューブ10を試料水採取部(図示せず)から切り離し、チューブ10を折り曲げて収容器2内を外部と隔絶し、分析センター等へ搬送する。チューブ10を折り曲げる代りに、異径ジョイント8にバルブを設けておき、このバルブを閉めるようにしてもよい。
【0021】
試料採取時に貫通型異径ジョイント6から大口径管7を外して試料水と同じもしくは同レベルの水で洗浄し、試料採取終了時に試料水で大口径管7内を満たしてから貫通型異径ジョイント6に接続して通水管3,4を水封するようにしてもよい。
【0022】
この採水器1によると、試料水の採取時に収容器2の蓋2bを開閉しないので、汚染物質が収容器2内に入ることがない。この通水管3,4の先端部に水封部5を設けているので、通水管3,4の先端から汚染物質が試料水に混入することが防止される。また、通水管3,4の外面や先端部の汚染が防止されるので、試料水を採取した採水器1を分析装置、分析用器具に供給する際の試料水の汚染が防止される。
【0023】
第1,2図では収容器2の上部から2本の通水管3,4を差し込んでいるが、第3図のように袋型の収容器12の場合であれば、対角線位置に通水管3,4を設けてもよい。
【0024】
また、第4図の袋型の収容器13のように、上辺部の一端側と他端側に通水管3,4を設けた場合、収容器13内のコーナー部等に試料水の滞留部が生じないように収容器13内にシール部13aによってV字状の試料水収容部13bを区画形成してもよい。シール部以外の手段を用いて区画を行ってもよい。なお、第4図の(a)図は収容器13の空の状態における正面図、(b)図及び(c)図はそれぞれ収容器13内に試料水を採取した状態における(a)図のB−B線、C−C線断面図である。
【実施例】
【0025】
実施例1
第1図に示す構成のフッ素樹脂製の採水器を用いて、Na<0.1ppt,Ca<0.1pptの超純水を500mL採取した。なお、試料水の採取後、チューブ10を折り曲げ、分析センターに搬入してNa濃度及びCa濃度を測定したところ、Na<0.1ppt、Ca<0.1pptであった。
【0026】
比較例1
第1図の採水器から水封部5,5を取り外し、収容器2及び通水管3,4のみを有した採水器を用いて同様に超純水の採取を行い、採取後に通水管3,4の先端にキャップを装着して分析センターに搬入し、同様の分析を行ったところ、Na8ppt、Ca5pptであった。
【0027】
この結果より、本発明によると汚染物質の影響が防止されることが認められた。
【符号の説明】
【0028】
1 採水器
2,12,13 試料水収容器
3,4 通水管
5 水封部
6 貫通型異径ジョイント
7 大口径管
8 異径ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水を通水させるための2本の通水管を有した試料水収容器と、
各通水管の先端部にそれぞれ設けられた水封部と
を備えてなる採水器。
【請求項2】
請求項1において、前記水封部は、前記通水管が差し込まれた貫通型異径ジョイントと、
該貫通型異径ジョイントに一端が装着された大口径管と、該大口径管の他端が装着された異径ジョイントとを備えてなることを特徴とする採水器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−209179(P2011−209179A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78519(P2010−78519)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】