説明

採血ホルダー

【課題】特殊な形状の真空採血針を必要とすることなく、採血開始時の血液の泡立ちを確実に抑制することができ、中空針の針先による血管の突き抜けも抑制することができる採血ホルダーを提供する。
【解決手段】一端に真空採血針6が装着される採血針装着部4が設けられており、他端に真空採血管10が挿入される開口2aが設けられており、採血針装着部4において、真空採血針6を装着した状態において、真空採血針6の真空採血管10内に導かれる第2の中空針部分8dの延びる方向が、採血ホルダー1の中心軸方向Xと交叉する方向とされている、採血ホルダー1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空採血管を用いた採血を容易とするために用いられる採血ホルダーに関し、より詳細には、両端に針先を有する両頭針型の採血針またはルアーアダプターが装着される装着部とを有し、装着部が設けられている側とは反対側から採血管が挿入される採血ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
真空採血管を用いた採血に際しては、まず、筒状の採血ホルダーの採血針装着部に両頭型の真空採血針またはルアーアダプターが装着される。両頭型の真空採血針は、血管に挿入される第1の針先と、真空採血管の栓体に刺通される第2の針先とを有する中空針と、該中空針の途中に設けられた採血針被装着部としてのハブとを有する。ルアーアダプターは真空採血管の栓体に刺通される針先を有し、他端は翼付き針または注射針が嵌合可能なようにテーパーになっており、針先とテーパー部の途中に採血ホルダーに装着できるようにハブ部を有する。他方、真空採血管は、一端に開口を有する有底の管状容器と、該管状容器の開口を閉成するように取り付けられた栓体とを有し、内部が減圧されている。
【0003】
採血に際しては、まず、採血ホルダーの採血針装着部に上記真空採血針を、第2の針先が採血ホルダー内に位置するように取り付ける。ルアーアダプターを使用する場合はルアーアダプターをホルダーに取り付けた後、翼付き針または注射針をルアーアダプターに取り付ける。しかる後、第1の針先または、翼付き針または注射針を静脈に穿刺し、他方、真空採血管を採血ホルダーの上記開口側から挿入し、真空採血針の栓体を前記第2の針先により刺通する。その結果、静脈と真空採血管とが連通される。真空採血管内の圧力は、予め低くされているため、静脈と真空採血管内との圧力差により血液が真空採血管に導かれる。
【0004】
採血開始時には、上記圧力差が大きいため、血液が勢いよく真空採血管内に流入する。採血が進行するにつれて圧力差は小さくなる。そして、静脈内の圧力と真空採血管内の圧力とが同等となった時点で採血が終了する。
【0005】
上記のような従来の採血ホルダーは、例えば、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている採血ホルダーは、合成樹脂の一体成形品からなり、筒状の形状を有する。採血針装着部に装着された真空採血針の中空針の延びる方向は、上記筒状の採血ホルダーの中心軸と一致されている。それによって、真空採血管の栓体の内、真空採血針により刺通されることが予定されている薄肉部に確実に真空採血針の第2の針先側を刺通させることができる。また、真空採血針の中空針の延びる方向と、採血ホルダーの中心軸を一致させておくことにより、採血に際しての真空採血針及び採血ホルダーを連結してなる構造における方向性をなくすことができるので、採血操作を無理なく行うことができる。
【0006】
これに対して、下記の特許文献2には、採血針の採血針被装着部から血管に挿入される第1の針先に向かう中空針部分の延びる方向が、採血ホルダーの中心軸と一致されておらず、交叉する方向とされている。そのため、真空採血針のハブから第1の針先に向かう中空針部分の延びる方向と、血管の延びる方向のなす角度を小さくすることが可能とされている。それによって、第1の針先が血管の一方の壁面から管内に挿入され、反対側の血管壁を突き抜け難い。従って、採血に際し、第1の針先を血管内に挿入し、確実に維持することが可能とされている。特許文献2に記載の構造においても、真空採血管が採血ホルダーに装着された状態において、採血ホルダー内に位置している中空針部分、すなわち採血針被装着部としてのハブから第2の針先に向かう中空針部分は、採血ホルダーの中心軸と一致されている。
【特許文献1】特開昭58−183172号公報
【特許文献2】特開2003−153883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、真空採血に際しては、真空採血管内の圧力と血管内の圧力との圧力差が採血開始時に最も大きいため、採血開始時に血液が勢いよく真空採血管内に流入される。そのため、真空採血管内において血液が泡立つことがあった。
【0008】
近年、臨床検査においては検査時間の短縮が強く求められている。そのため、採血−血液凝固−遠心分離−測定の一連の工程において、各工程の短縮が求められている。そのため、血液が凝固するまでの時間を短縮するために、凝固促進剤が真空採血管内に予め収納されていることがある。上記のように血液が真空採血管内に泡立ち、その状態で凝固促進剤などに接触すると、泡立った状態で凝固が進行することとなる。泡立った状態で血液が凝固すると、遠心分離後に血清中に泡が残存することとなる。そのため、臨床検査装置のノズルにより血清を吸引するに際し、血清を速やかに吸引することができなくなったり、血清とともに凝固した泡の一部が吸引されたりするおそれがあった。さらに赤血球を巻き込んで凝固した泡が血清中に存在すると赤血球の成分が血清中に混入し血液検査の値に影響するおそれがある。
【0009】
そこで、上記のような血液の泡立ちを抑制することが強く求められている。
【0010】
また、特許文献2に記載の真空採血法では、血管に挿入される側の中空針部分が、採血ホルダーの中心軸と交叉する方向に延ばされており、採血管に挿入される中空針部分は採血ホルダーの中心軸と一致されている。従って、真空採血針として、血管に挿入される側の中空針部分と真空採血管に挿入される側の中空針部分とが一直線状に延びている通常の採血針を用いることができず、特殊な真空採血針を用意しなければならなかった。そのため、コストが高くつかざるを得なかった。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、真空採血に際しての採血開始時の血液の泡立ちを確実に抑制することができ、特殊な真空採血針やルアーアダプターを必要しない、採血ホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、中空針の一端に血液を採取するための第1の針先が、他端側に血液を採血管に導くための第2の針先が設けられており、第1,第2の針先間に採血ホルダーに装着される被装着部を有し、被装着部から先端が前記第2の針先である中空針部分が延ばされている両頭型の採血針、または採血ホルダーに装着される被装着部と、被装着部の一端から延ばされてた中空針部分とを有するルアーアダプターが装着される採血ホルダーであって、前記採血針またはルアーアダプターの前記被装着部から前記中空針部分が採血ホルダー内に延ばされるように前記被装着部が固定される装着部が一端側に設けられており、他端側に採血管を挿入するための開口が設けられおり、前記採血針が装着された状態において、前記被装着部から前記中空針部分の延びる方向が、前記筒状の採血ホルダーの中心軸に対して交叉するように、前記装着部が前記採血針またはルアーアダプターを固定するように構成されていることを特徴とする、採血ホルダーが提供される。
【0013】
好ましくは、前記採血針またはルアーアダプターの前記中空針部分と、前記採血ホルダーの中心軸とのなす角度が2度〜25度の範囲とされている。第2の針先に向かう中空針部分の延びる方向と採血ホルダーの中心軸とのなす角度が2度〜25度の範囲内とされている場合には、真空採血管内に導かれる血液がより一層確実に真空採血管の内壁を伝って下方に流下することとなるため、血液の泡立ちをより一層確実に防止することができる。
【0014】
本発明に係る採血ホルダーでは、好ましくは、前記筒状の採血ホルダーが、筒状の側面部と、筒状の側面部の一端側に連ねられた端面部とを有し、前記装着部は、該端面部の略中央からずらされた位置に設けられており、かつ前記被装着部が挿入・保持される開口を有する。好ましくは、前記装着部の前記開口において、前記採血針またはルアーアダプターの被装着部を保持する保持機構が設けられている。
【0015】
本発明の採血ホルダーでは、前記保持機構は、前記被装着部の前記開口の内面から内側に突出している弾性係止片と、前記被装着部において前記弾性係止片が併合される段差部とを有していてもよい。
【0016】
また、前記保持機構は、前記装着部の前記開口の内面に形成された雌ねじ部と、前記採血針またはルアーアダプターの被装着部の外表面に形成された雄ねじ部とを有していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る採血ホルダーによれば、真空採血針またはルアーアダプターの採血ホルダー内において中空針部分の延びる方向が、採血ホルダーの中心軸方向に対して交叉する方向とされているため、真空採血に際し、該採血ホルダーに真空採血管を挿入し、真空採血管の栓体を該中空針部分により刺通した場合、該中空針部分の延びる方向が真空採血管の軸方向と交叉する方向とされている。そのため、採血開始時に勢いよく血液が真空採血管に流入してきたとしても、該血液が、直ちに真空採血管の底部に落下せず、真空採血管の内側壁を伝って下方に流下しがちとなる。そのため、真空採血開始時の血液の泡立ちを抑制することができる。
【0018】
よって、本発明に係る採血ホルダーを用いることにより、たとえ、凝固促進剤などが真空採血管に予め収納されていたとしても、血液が泡立ったまま凝固し難い。よって、遠心分離後に、臨床検査装置の吸引ノズルにより血清を吸引しようとした場合、血清を確実に吸引することができ、ノズルの目詰まりが生じたり、血清中に泡立った部分の凝固物が混入するおそれがない。従って、臨床検査に必要な真空採血から測定値を得るまでの時間を短縮できるとともに、検査値の信頼性も高めることが可能となる。
【0019】
加えて、採血被装着部が第1の針先に向かう中空針部分と採血針被装着部から第2の針先に向かう中空針部分とが一直線状に連ねられた通常の真空採血針を用いることができる。ルアーアダプターを装着する場合にも、通常のルアーアダプターを用いることができる。従って、特殊な真空採血針やルアーアダプターを必要としないため、コストの増大も招き難い。
【0020】
さらに、上記被装着部から上記中空針部分の延びる方向が採血ホルダーの中心軸方向と交叉する方向とされているため、通常の真空採血針を用いた場合、被装着部から第1の針先に向かう中空針部分もまた、採血ホルダーの中心軸に対して斜め方向に交叉する方向に延ばされることになる。従って、真空採血針の採血針被装着部から第1の針先に向かう中空針部分と、血管の延びる方向とのなす角度を小さくすることもでき、それによって、第1の針先による血管が突き抜けるおそれを確実に低減することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
図2(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る採血ホルダーの平面図、正面断面図、及び底面図である。
【0023】
採血ホルダー1は、筒状のホルダー本体部2を有する。筒状のホルダー本体部2は、円筒状の形状を有する。もっとも、角筒状などの他の形状であってもよい。
【0024】
ホルダー本体部2の筒状部分の一端には端面部3が連ねられている。端面部3は、その外形が円形の形状を有し、略中央からはずれた位置に装着部4が設けられている。装着部4は、端面部3から上方に突出されており、かつホルダー本体部2よりも小さな径の筒状部5を有する。筒状部5には、開口5aが形成されている。
【0025】
開口5a内には、筒状部5の内面から内側に延びる複数の保持突起5b,5b,5bと、複数の弾性係止片5c,5c,5cとが設けられている。1つの弾性係止片5cと1つの保持突起5bとが開口5a内において対向されている。弾性係止片5cはその先端が自由端であり、弾力性により上下方向に移動し得るように形成されている。先端が上下方向に移動することにより、弾性係止片5cの先端と保持突起5bとの間の距離が大きくなる。
【0026】
筒状本体部2の他端側には、開口2aが形成されている。開口2aは、後述の真空採血管を挿入するために設けられている。
【0027】
また、筒状本体部2においては、開口2aが設けられている側において、周方向外側に延ばされたフランジ部2bが設けられている。フランジ部2bは、採血ホルダー1を立設することを容易とするため、また採血に際し、真空採血管の挿入操作等を容易とするために設けられている。また、採血ホルダーを横にした状態で机上に置いた際に転がることを防止するために楕円形もしくはこれに類似の形状になっている。
【0028】
本実施形態の採血ホルダー1の特徴は、上記装着部4において突出部5に設けられた開口5aの中心軸方向が、採血ホルダー1の中心軸方向Xと交叉する方向とされており、それによって、後述する真空採血針装着状態において、真空採血針の採血被装着部から第2の針先に向かう部分と、上記採血ホルダー1の中心軸方向Xとが交叉する方向とされていることにある。これを、図3及び図1を参照して説明する。
【0029】
真空採血に際しては、まず図3に示すように、真空採血針6を採血ホルダー1に装着する。真空採血針6は、被装着部としての採血針被装着部7を有する。採血針被装着部7は、本実施形態では、合成樹脂からなるハブである。採血針被装着部7を中空針8が挿通しており、該中空針8が、採血針被装着部7に固定されている。中空針8は、一端に第1の針先8aを有し、他端に第2の針先8bを有する。第1の針先8aが、血管に挿入される針先であり、第2の針先8bが真空採血管の栓体を刺通する側の針先である。
【0030】
従って、中空針8は、採血針被装着部7から第1の針先8aに向かう第1の中空針部分8cと、採血針被装着部7から第2の針先8bに向かう第2の中空針部分8dとを有する。また、第2の中空針部分8dを覆うようにゴム鞘9が取り付けられている。ゴム鞘9は、真空採血開始時に中空針8に流入してきた血液の外部への漏洩を防止するため設けられている。
【0031】
上記真空採血針6は、一本の中空針8を有し、第1,第2の中空針部分8c,8dは連ねられている。もっとも、第1,第2の中空針部分8c,8dは別体であってもよい。いずれの場合においても、第1の中空針部分8cと第2の中空針部分8dが一直線状に延ばされている汎用の真空採血針であるため、高価な特別な真空採血針を用意する必要がない。
【0032】
図3に示すように、真空採血針6は、第2の針先8b側から採血ホルダー1の上記開口5aに挿入され、採血針被装着部7が装着部4に装着され、それによって真空採血針6が採血ホルダー1に装着され、固定される。
【0033】
本実施形態では、上記開口5aの延びる方向が採血ホルダー1の中心軸方向Xと交叉されている。従って、真空採血針6が採血ホルダー1に装着された状態では、第1の中空針部分8c及び第2の中空針部分8dが延びる方向は、上記採血ホルダー1の中心軸方向Xと角度θをなしている。
【0034】
よって、図1に示すように、真空採血針6を装着した後、真空採血針6の中空針8の第1の針先8aを血管に刺通し、しかる後、真空採血管10を採血ホルダー1内に導き、採血を開始した場合、血液が泡立ち難い。すなわち、真空採血管10は、有底の一端に開口を有する管状容器11と、管状容器11の開口11aを閉成している栓体からなる栓体12とを有する。真空採血管10内は、予め減圧されている。上記栓体12は、中央に肉圧が薄く、中空針による刺通が容易に薄肉部12aを有する。
【0035】
真空採血に際しては、上記真空採血管10が、栓体12側から採血ホルダー1の開口2aから挿入される。その結果、第2の針先8bにより栓体12が刺通される。ここでは、薄肉部12aにおいて、栓体12が刺通されるため、刺通抵抗は低く、速やかにかつ容易に栓体12を針先b側から刺通することができる。その結果、第2の中空針部分8dが真空採血管10内に導かれる。
【0036】
上記開口5aの延びる方向が、採血ホルダー1の中心軸方向Xと交叉されているため、第2の中空針部分8dの延びる方向は、真空採血管11の中心軸方向と交叉する方向とされている。言い換えれば、第2の中空針部分8dが、真空採血管10内において、真空採血管10の中心軸方向に対して斜め方向に延ばされている。よって、真空採血開始時に勢いよく流入してきた血液は、真空採血管11の管状容器10の底部に直ちに流下せず、管状容器11の内側壁に接触し、内側壁をつたいつつ、下方に貯留されることとなる。従って、血液の泡立ちを確実に抑制することが可能とされている。
【0037】
よって、真空採血管10内に、予め凝固促進剤が収納されていたとしても、血液が管状容器11の管壁をつたって下方に流下するため、血液が泡立ち難いため、泡立ったまま血液が凝固するおそれがない。従って、後の工程において、遠心分離後に、臨床検査装置の吸引ノズルで血清を吸引しようとした場合、吸引ノズルが目詰まりするおそれがなく、また誤って血清中に泡立った部分の凝固物が混入するおそれもない。
【0038】
上記のように、流入された血液が真空採血管10の管状容器11の内壁に接触して流下させるには、上記第2の中空針部分8dと、真空採血管10の管状容器11の中心軸方向とがある程度の角度をなす必要がある。すなわち、図4に一点鎖線Aで示す方向に血液が落下した場合には、血液は管状容器11の内壁に接触することなく底部に向かうことになり、泡立ちが生じる。すなわち、一点鎖線Aと、真空採血管10の中心軸方向Yとのなす角度θaが小さすぎると、泡立ちを確実に抑制することができない。もっとも、一点鎖線Bで示す方向に第2の中空針部分8dが延ばされている場合には、針先8bが栓体12から確実に露出しない。また、針先8bが管状容器11の内側壁に衝突するおそれがある。場合によっては、採血を行うことができないことがある。
【0039】
採血ホルダー1の筒状本体部2の内径に比べて、真空採血管10の最大外径部分が比較的小さい場合、図5に示すように、真空採血管10の中心軸方向Yが、採血ホルダー1の中心軸方向Xと略一致せず、斜め方向に交叉する方向となることがある。この場合、真空採血針6の第2の中空針部分8dが、採血ホルダー1の中心軸方向Xと適度な角度をなしていたとしても、挿入された真空採血管10の中心軸方向Yと図4の一点鎖線Bで示したように大きな角度をなすおそれがある。このような場合、前述したように針先8bにより、管状容器11の内面が変形したり、針先8bが変形したり、あるいは管状容器11の内面が損傷したりし、血液に異物が混入するおそれがある。
【0040】
図6(a)〜(d)は、様々な寸法の真空採血管13〜16における真空採血管13〜16の中心軸方向Yと、中空針部分8dが延びる方向Zとのなす角度との関係を示す図である。図6(a)〜(d)から明らかなように、これらの寸法の真空採血管を用いた場合には、すなわち通常使用されている寸法の真空採血管13〜16を用いた場合、上記角度θは2度〜25度の範囲とすることが望ましい。
【0041】
この範囲内であれば、通常のサイズの採血ホルダー1及び採血ホルダー1に対応した真空採血管10を用いる場合、真空採血管10の管状容器11の内側壁に確実に血液を接触させて流下させ、血液の泡立ちを確実に防止することができる。
【0042】
もっとも、上記角度θは採血ホルダー1の寸法及び真空採血管11の寸法によっても異なるため、特に限定されるものではない。すなわち、本発明においては、真空採血針6が採血ホルダー1に装着された状態において、第2の中空針部分8dの延びる方向が採血ホルダーの中心軸方向と斜め方向に交叉し、従って挿入された真空採血管の中心軸方向と斜め方向に交叉し、血液が真空採血管の内側壁に接触して流下し得るように構成されておればよく、上記角度θは、場合によっては、2度未満であってもよく、25度を超えてもよい。
【0043】
また、上記採血ホルダー1を用いた場合、第1の中空針部分8cの延びる方向は、上記採血ホルダー1の中心軸方向Xと角度θをなしているため、第1の中空針部分8cの向きを血管に沿わせることにより、第1の針先8aによる血管の突き抜けを確実に防止することができる。すなわち、第1の中空針部分8cと、血管のなす角度を小さくするようにして、第1の針先8aを血管に挿入することができるので、第1の針先8aによる血管の突き抜けも生じ難い。
【0044】
すなわち、特殊の真空採血針を用いずとも、第1の針先による血管の突き抜けを確実に防止することができる。
【0045】
なお、装着部4による真空採血針6の固定は以下のようにして行われる。
【0046】
採血ホルダー1の装着部4の開口5aに、真空採血針6の第2の針先8b側から真空採血針6の第2の中空針部分8dを挿入する。採血針被装着部7は、相対的小さな径の小径部7aと、小径部7aよりも径が大きな大径部7bとを有する。小径部7aが大径部7bの第2の針先8b側に位置している。上記大径部7bが、開口5aに嵌合し得るように構成されている。また、上記小径部7aの下方に、小径部7aよりも径の大きなフランジ部7cが設けられている。フランジ部7cは、真空採血針6を開口5に挿入するにつれて、上記弾性係止片5cの先端を押し広げ、弾性係止片5cが設けられている部分を通過する。この状態で、大径部7bが開口5aに嵌合されるとともに、弾性係止片5cと保持突起5bとにより、小径部7aが保持される。
【0047】
図7(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る採血ホルダーを示す平面図、正面断面図及び底面図である。
【0048】
第2の実施形態の採血ホルダー21は、装着部4の形状が異なることを除いては、採血ホルダー1と同様に構成されている。従って、同一部分については、同一の参照番号を付することにより、その説明を省略する。
【0049】
第2の実施形態の採血ホルダー21では、突出部5に、開口5aが設けられているが、この開口5aの内周面に雌ねじ5dが形成されている。この雌ねじにより保持されるように取り付けられる真空採血針の採血針装着部の外周面には雌ねじ5dにより固定される雄ねじ部が形成されることになる。従って、真空採血針を第2の針先側から採血ホルダー1の開口5aに挿入し、上記真空採血針の真空採血針被装着部を上記雌ねじが形成されている開口5aにねじ込むことにより、真空採血針を採血ホルダー21に装着し、固定することができる。
【0050】
本実施形態においても、開口5aの延びる方向は、上記採血ホルダー1の中心軸方向Xと角度θをなすように形成されている。従って、本実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様に、真空採血に際し、血液の泡立ちを確実に防止することができるとともに、第1の針先側における欠陥の突き抜けも確実に防止することができる。また、第1の中空針部分と第2の中空針部分が一直線状になる汎用の真空採血針を用いた採血を行い得るため、コストの増大も招きがたい。
【0051】
第1,第2の実施形態から明らかなように、本発明においては、真空採血針が採血ホルダーに装着された状態において、第2の中空針部分の延びる方向が採血ホルダーの中心軸方向Xとある角度をなすように交叉している限り、該採血針装着部の構造については特に限定されるものではない。
【0052】
また、真空採血針についても、第1の中空針部分8cと第2の中空針部分8dとが一直線状に並んでいる汎用の真空採血針を適宜用いることができる。
【0053】
なお、上記採血ホルダーの採血針装着部の構造に特徴を有するものであるため、本発明においては、採血ホルダーを構成する材料については特に限定されない。すなわち、採血ホルダー1については、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどの適宜の合成樹脂を用いて形成することができる。また、場合によっては、金属などの合成樹脂以外の材料により採血ホルダー1を形成してもよい。
【0054】
また、採血ホルダーに組み合わされる真空採血針についても、市販の汎用されている適宜の真空採血針を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0055】
採血ホルダー1に挿入される真空採血管についても特に限定されず、適宜の合成樹脂やガラス等からなる管状容器11と、栓体からなる栓体12とを備えた適宜の真空採血管を用いることができる。なお、栓体12を覆うようにカバー12bが取り付けられている。
【0056】
なお、第1の実施形態では、採血ホルダー1に両頭型の真空採血針6が装着されていたが、上記実施形態の採血ホルダー1には、ルアーアダプターが装着されてもよい。このような使用方法を、図8(a)及び(b)に模式的正面図で示す。
【0057】
採血ホルダー1は、第1の実施形態の採血ホルダー1と同様に構成されている。従って、採血ホルダー1の構造の詳細については、第1の実施形態の説明を援用することにより省略する。
【0058】
ここでは、採血ホルダー1の装着部4に、ルアーアダプター22が挿入され、装着される。ルアーアダプター22を、図9(a)に拡大正面図で、(b)に拡大正面断面図で示す。
【0059】
図9(a)及び(b)に示すように、ルアーアダプター22は、前述した真空採血針6
と同様の形状を有する被装着部23を有する。被装着部23の内部には、貫通孔が形成されており、該貫通孔に、中空針24が挿入され、かつ固定されている。中空針24は、先端に針先24aを有する。この針先24aを先端に有する中空針部分24bは、筒状の採血ホルダー1内に挿入される部分である。ここでは、中空針24を覆うように、真空採血針6と同様にゴム鞘25が取り付けられている。
【0060】
従って、上記被装着部23、中空針24及びゴム鞘25が設けられてる部分は、真空採血針6の被装着部4から第2の針先8bに向かう部分と同様に構成されている。異なるところは、被装着部23の中空針24が延ばされている側と反対側に、被装着部23と一体に筒状部23aが延ばされていることにある。筒状部23aの内径は、先端にいくにつれて大きくなるように傾斜されている。この筒状部23aに、翼付き採血針26にチューブ27により接続されたコネクター28が挿入され、固定される。
【0061】
なお、上記翼付き採血針27に限らず、上記ルアーアダプター22の筒状部23aには、注射針が接続されてもよく、それによって採血を行ってもよい。
【0062】
上記ルアーアダプター22は、上記第1の実施形態で用いられた真空採血針6と同様の構造の被装着部23と、中空針部分24bとを有するため、採血ホルダー1に、真空採血針6と同様に装着することができる。よって、真空採血針6を用いた真空採血の場合と同様に、採血ホルダー1内に真空採血管を挿入し、ルアーアダプター22の上記中空針24により真空採血管の栓体を刺通し、真空採血を開始した場合、該中空針部分24bの延びる方向が採血ホルダーの中空針軸方向に対して交差する方向とされているため、中空針部分24bが真空採血管の軸方向と交差する方向となり、血液が、真空採血管の底部に落下せず、内側壁を伝って下方に流下することとなる。そのため、同様に、真空採血時の血液の泡立ちを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態の採血ホルダーに真空採血針及び真空採血管が取り付けられた状態を示す模式的正面断面図である。
【図2】(a)は本発明の第1の実施形態の採血ホルダーの平面図、(b)はその正面断面図、(c)はその底面図である。
【図3】第1の実施形態の採血ホルダーに真空採血針を装着した状態を示す正面断面図である。
【図4】本発明において、真空採血管と、挿入される第2の中空針部分とのなす角度が小さすぎる場合及び大きすぎる場合の問題点を説明するための模式的正面断面図である。
【図5】採血ホルダーに真空採血管が交叉する方向に挿入された場合の問題点を説明するための模式的正面断面図である。
【図6】(a)〜(d)は、様々な寸法の真空採血管における真空採血針の第2の中空針部分が挿入される方向と、真空採血管の中心軸とのなす角度との関係を示す各模式的正面断面図である。
【図7】(a)は、本発明の第2の実施形態の採血ホルダーの平面図であり、(b)は正面断面図であり、(c)は底面図である。
【図8】(a),(b)は、第1の実施形態の採血ホルダーの使用方法の変形例を説明するための各模式的正面図である。
【図9】(a),(b)は、図8に示したルアーアダプターの詳細を示す拡大正面図及び拡大正面断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1…採血ホルダー
2…ホルダー本体部
3…端面部
4…採血針装着部
5…突出部
5a…開口
5b…保持突起
5c…弾性係止片
5d…雌ねじ部
6…真空採血針
7…採血針被装着部
8…中空針
8a…第1の針先
8b…第2の針先
8c…第1の中空針部分
8d…第2の中空針部分
10…真空採血管
11…管状容器
12…栓体
12a…薄肉部
12c…カバー
13〜16…真空採血管
21…採血ホルダー
22…ルアーアダプター
23…被装着部
23a…筒状部
24…中空針
24a…針先
24b…中空針部分
25…ゴム鞘
26…翼付き採血針
27…接続チューブ
28…コネクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空針の一端に血液を採取するための第1の針先が、他端側に血液を採血管に導くための第2の針先が設けられており、第1,第2の針先間に採血ホルダーに装着される被装着部を有し、被装着部から先端が前記第2の針先である中空針部分が延ばされている両頭型の採血針、または採血ホルダーに装着される被装着部と、被装着部の一端から延ばされてた中空針部分とを有するルアーアダプターが装着される採血ホルダーであって、
前記採血針またはルアーアダプターの前記被装着部から前記中空針部分が採血ホルダー内に延ばされるように前記被装着部が固定される装着部が一端側に設けられており、他端側に採血管を挿入するための開口が設けられおり、前記採血針が装着された状態において、前記被装着部から前記中空針部分の延びる方向が、前記筒状の採血ホルダーの中心軸に対して交叉するように、前記装着部が前記採血針またはルアーアダプターを固定するように構成されていることを特徴とする、採血ホルダー。
【請求項2】
前記採血針またはルアーアダプターの前記中空針部分と、前記採血ホルダーの中心軸とのなす角度が2度〜25度の範囲とされている、請求項1に記載の採血ホルダー。
【請求項3】
前記筒状の採血ホルダーが、筒状の側面部と、筒状の側面部の一端側に連ねられた端面部とを有し、前記装着部は、該端面部の略中央からずらされた位置に設けられており、かつ前記被装着部が挿入・保持される開口を有する、請求項1または2に記載の採血ホルダー。
【請求項4】
前記装着部の前記開口において、前記採血針またはルアーアダプターの被装着部を保持する保持機構が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の採血ホルダー。
【請求項5】
前記保持機構は、前記被装着部の前記開口の内面から内側に突出している弾性係止片と、前記被装着部において前記弾性係止片が併合される段差部とを有する、請求項4に記載の採血ホルダー。
【請求項6】
前記保持機構は、前記装着部の前記開口の内面に形成された雌ねじ部と、前記採血針またはルアーアダプターの被装着部の外表面に形成された雄ねじ部とを有する、請求項4に記載の採血ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−28079(P2009−28079A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192216(P2007−192216)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】