説明

採血器具

【課題】 逆流の勢いが弱い場合であっても逆流を確実に防止することができ、切削くず等による血液検体の汚染等が生じ難く、万が一逆流が起こっても切り屑が人体に入ることがないような採血器具を提供する。
【解決手段】 流路形成部材としての筒状部材3内に流路3aが形成されており、該流路3aに逆流防止弁6が収納されており、逆流防止弁6の第1の端部6a側が開口されており、第1の端部とは反対側の第2の端部6b側が閉じられており、逆流防止弁の弾力性により、第1の端部6aの外周面が流路の内周面に密着されて血液の逆流を防止する逆流防止状態と、第1の端部6aの外周面が流路内壁から少なくとも部分的に分離された血液流通可能状態とをとり得るように構成されている、採血器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空採血などに用いられる採血器具に関し、より詳細には、ゴムなどの柔軟性を有する材料を用いた逆流防止弁が備えられた採血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空採血などの採血に際しては、採血針の先端が被採血者の血管に挿入される。そして、採血針の他端が採血器具を用いて真空採血管に接続される。このような採血に際しては、真空採血管内が減圧されているため、圧力差により血液が被採血者の血管から真空採血管に導かれる。
【0003】
しかしながら、採血終了時に近づくと圧力差が小さくなり、その場合に真空採血管の位置が高かったり、あるいは被採血者の血管内の圧力が低下した場合には、逆流が生じるおそれがある。逆流が生じると、真空採血管内の血液抗凝固剤、あるいは凝固促進剤などの他、薬剤が採血者側に流れるおそれがある。そのため、このような逆流を防止することが強く求められている。
【0004】
上記逆流を防止する構造として、弾力性を有する材料からなる逆流防止弁を用いたものが種々提案されている。
【0005】
例えば、下記の特許文献1には、図6に示す採血針が開示されている。採血針101には、被採血者の血管に挿入される第1の中空針102と、真空採血管の栓体を刺通し、真空採血管内に挿入される第2の中空針103とが設けられている。第1,第2の中空針102,103の針先とは反対側の基部がハブ104に固定されている。ハブ104内には、空間104aが設けられており、空間104aに中空針102,103が連通されている。そして、空間104a内に、弾性材料からなる逆止め弁105が設けられている。逆止め弁105は、第1の中空針102側から第2の中空針103側に向かってテーパが付けられた略円錐状の形状を有する。そして、先端105aが、血流により開かれるように構成されている。もっとも、略円錐状の逆止め弁105の先端は、血液の出口として非常に狭いため、場合によっては溶血を起こすおそれがあるという問題があった。また、上記逆止め弁105を、アヒルのくちばし形状のように、2枚の弁部材により構成した場合には、先端の血液の出口が幅広にならざるを得ず、採血針101が大型化せざるを得なかった。
【0006】
また、常時は密着し、第1の中空針102から第2の中空針103側に血液が流れているときにのみ開口するように逆止め弁105の先端を形成する必要があった。そのため、一体成形で構成された弁部材に後から切り込み等を形成する方法により逆止め弁105を形成する場合には、切削くずが生じざるを得ない。このような切削くずが逆止め弁105の上流側に残存すると、血管内に切削くずが入るおそれがあるという問題があった。また、血管側に切削くずが入らなくとも、採血管側に流れ込んだ場合には、検査値に影響を及ぼしたり、分析機のトラブルの原因になるおそれがあった。
【0007】
他方、下記の特許文献2には、図7に示す構造を備えた留置針セットが開示されている。留置針セット111では、中空の外針112が基端側でハブ113に取り付けられている。ここでは、ハブ113内に、筒状弁114が配置されている。筒状弁114は円筒状の形状を有し、その先端に十字状のスリット114aを有する。ここでは、薬液が、筒状弁114の上方から先端側に向かって流れる際には、スリット114aが開き、薬液が外針112側に流れるように構成されている。逆に、外針112側からハブ113に逆流が
生じた場合には、スリット114aが該逆流の圧力により閉じられ、筒状弁114より上方への薬液等の逆流が防止される。すなわち、先端にスリット114aを有する弾性体で筒状弁114を構成することにより、逆流が防止されている。
【0008】
しかしながら、このようなスリット114aを弾性体からなる筒状弁114に形成する場合、やはり、弾性材料に切削等によりスリット114aを形成する必要があった。そのため、前述した採血針101の場合と同様に、切削くずが血管内に入ったり、あるいは採血管側に切削くずが流れ込むおそれがあった。
【0009】
なお、特許文献2には、上記筒状弁114に代えて、ボール弁を用いる方法も開示されているが、ボール弁の比重が小さすぎたり、あるいは大きすぎたりすると、逆流を確実に防止することはできなかった。また、ボール弁の比重を適切な大きさとしても、逆流の勢いが弱い場合には、ボール弁が作用しないという問題もあった。
【特許文献1】実開平3−129111号公報
【特許文献2】特開2003−260132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来技術の欠点を解消し、採血時に用いられる採血器具であって、逆流の勢いが弱い場合であっても、確実に逆流を防止することができ、しかも切削くず等による汚染等が生じ難い、安全性に優れた採血器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、採血に際して用いられる採血器具であって、血液が流れる流路を内部に有する流路形成部材と、前記流路形成部材の流路内に配置されており、柔軟性を有する材料からなる逆流防止弁とを備え、前記逆流防止弁が、前記流路の延びる方向において一端側の第1の端部が開口されており、第1の端部とは反対側の端部である第2の端部が閉じられており、逆流防止弁を構成している材料の弾力性により第1の端部の外周面が前記流路の内周面に密着されて血液の逆流を防止する逆流防止状態と、血流もしくは前記逆流防止弁を挟んだ流路の一方側と反対側の圧力差により前記逆流防止弁の第1の端部の外周面の少なくとも一部が流路の内周面から分離された血液流通可能状態とをとり得るように形成されていることを特徴とする、採血器具が提供される。
【0012】
本発明に係る採血器具のある特定の局面では、前記流路形成部材の内周面に周方向に延びる段差部が形成されており、該段差部の一方側において流路の径が相対的に大きくされており、他方側において流路の径が相対的に小さくされており、前記逆流防止弁が相対的に径の大きな流路部分側に収納されており、かつ前記逆流防止弁の第1の端部が、前記段差部によって係止されるように構成されている。
【0013】
本発明に係る採血器具の他の特定の局面では、前記流路形成部材が筒状部材であり、前記逆流防止弁がドーム型の形状を有する。
【0014】
本発明に係る採血器具のさらに別の特定の局面では、真空採血管が挿入される開口を一端に有し、他端が閉じられている採血ホルダーをさらに備え、該採血ホルダーの閉じられている他端側に前記筒状部材が連ねられており、かつ筒状部材内の流路から採血ホルダー内に延びる中空針が筒状部材に連結されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る採血器具では、流路形成部材の流路内に逆流防止弁が配置されており、該逆流防止弁が、柔軟性を有する材料からなり、流路の延びる方向において第1の端部側が
開口されており、第1の端部と反対側の第2の端部側が閉じられている構造を有する。そして、逆流防止弁を構成している材料の弾力性により、第1の端部の外周面が流路の内周面に密着され、それによって血液の逆流が防止される。そして、血流もしくは逆流防止弁を挟んだ流路の一方側と反対側との圧力差により、第1の端部の外周面の少なくとも一部が流路の内周面から分離された血液流通可能状態とされ得るため、血液の流れにより、また上記圧力差が生じている場合には、該圧力差により血液が正しい方向に確実に流れ得る。そして、逆流を防止すべき状態では、逆流の力と、逆流防止弁を構成している材料の弾力性とにより、該逆流防止弁の第1の端部の外周面が流路を構成している流路形成部材の内周面に密着されるので、確実に逆流を防止することができる。しかも、逆流防止弁に切り込み等を形成する必要がないため、切削くずによる血液や血管の汚染も生じ難い。
【0016】
よって、本発明によれば、逆流の勢いが弱い場合であっても確実に逆流を防止することができ、しかも切削くず等による汚染が生じ難い、安全性に優れた採血器具を提供することができる。
【0017】
流路形成部材の流路を構成している部分の内周面において周方向に延びる段差部が形成されており、該段差部の一方側において流路の径が相対的に大きくされており、他方側が相対的に小さくされており、逆流防止弁が相対的に径の大きな流路部分側に収納されており、かつ上記第1の端部が段差部によって係止されるように構成されている場合には、段差部を越えて相対的に径が小さな流路部分側への逆流防止弁の移動を防止することができる。従って、逆流防止弁の所望でない移動を抑制することができるとともに、上記血液の流れによる逆流防止状態と、血液流通可能状態とをより確実に実現することができる。
【0018】
流路形成部材が筒状部材であり、逆流防止弁がドーム型の形状を有する場合には、汎用の筒状部材により流路形成部材を構成することができ、かつドーム型の弾性材料により逆流防止弁を容易に形成することができる。
【0019】
真空採血管が挿入される開口を一端に有し、他端が閉じられている採血ホルダーをさらに備え、該採血ホルダーの閉じられている他端側に上記筒状部材が連ねられており、かつ筒状部材内の流路から採血ホルダー内に延びる中空針が筒状部材に連結されている場合には、本発明に従って逆流を確実に防止することができるとともに、切削くずによる汚染が生じ難い逆流防止構造が備えられた採血ホルダーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0021】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る採血器具としての採血ホルダーを示す正面断面図である。採血ホルダー1は、略円筒状のホルダー本体2を有する。ホルダー本体2は、一端に開口2aを有し、開口2aと反対側の端部2bが閉じられている。そして、端部2bの中央には、筒状部材3が一体にかつ外側に突出するように設けられている。筒状部材3は、その外径がホルダー本体2の外径よりも小さくされており、かつ内部に血液が流れる流路3aが形成されている。流路3aは、筒状部材3の上端から下端に至るように延ばされている。そして、流路3aの下端側においては、中空針4が取り付けられている。中空針4の先端4aは筒状部材3の下方に延ばされており、ホルダー本体2内に至っている。中空針4の先端4aは、鋭利な刃先を有するように構成されており、該先端4aが図示しない採血管の栓体を刺通し得るように構成されている。
【0022】
なお、中空針4を覆うように、弾性材料からなる鞘5が取り付けられている。鞘5は、中空針4により真空採血管の栓体を刺通し、採血を行う際の血液の漏洩を防止するために
設けられている。
【0023】
ところで、本実施形態の特徴は、上記筒状部材3の流路3a内に、逆流防止弁6が収納されていることにある。図1(b)及び(c)に拡大して示すように、流路3aにおいては、途中に段差3bが設けられている。ここでは、段差3bの上方における流路3aの径が、段差3bよりも下方における流路部分の径よりも大きくされている。
【0024】
他方、逆流防止弁6は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料からなる。そして、逆流防止弁6の第1の端部6aは開かれており、第1の端部6aとは反対側の第2の端部6bが閉じられている。ここでは、逆流防止弁6はドーム状の形状を有する。逆流防止弁6の第1の端部6aは開かれた筒状部であり、弾性材料の弾発力により、常時は図1(c)に示すように、流路3aの内周面に第1の端部6aの外周面が密着するように構成されている。このような状態を実現するように、逆流防止弁6を構成する弾性材料の材質と、第1の端部6aの外径と、流路3aの内径とが選ばれている。
【0025】
他方、採血に際しては、図1(b)に矢印Bで示すように、血液は筒状部材3の流路3a外から流路3aに流れ込んでくる。この場合には、血流の勢いにより、逆流防止弁6の径が狭められ、第1の端部6aの外周面と流路3aの内周面との密着状態が部分的に解除されることになる。そのため、隙間Cが段差部3b部分において形成され、血液が中空針4側に向かって流れる。
【0026】
上記のように、本実施形態の採血ホルダー1では、上記筒状部材3及び逆流防止弁6からなる逆流防止構造が備えられているため、真空採血に際しては、図1(b)に示したように血液を確実に中空針4側に導き、真空採血管に採取することができる。このときに、真空採血管を用いた場合には、逆流防止弁6の図1(b)の下方側と、逆流防止弁6の上方側とに圧力差が生じ、該圧力差によっても、逆流防止弁6の第1の端部6aの外周面が流路3aの内周面から部分的に分離することとなる。そのため、速やかに血液を真空採血管側に導くことができる。
【0027】
また、図1(c)に示すように、中空針4側から矢印Aで示すように血液が逆流してきた場合には上記弾発力と、逆流の力とが相まって血液の逆流が確実に防止される。すなわち、逆流が生じた場合には、逆流によって、第1の端部6aが、その径が広がるように変形される。そして、逆流防止状態では、この逆流の力と、上記逆流防止弁6の第1の端部6a側における弾発力の双方により第1の端部6aの外周面が流路の内周面に密着されることとなる。従って、たとえ逆流の勢いが弱い場合であっても、確実に逆流を防止することができる。
【0028】
しかも、上記逆流防止弁6の製造に際して切り込みを形成する必要がないため、切削くずによる血液の汚染等も生じ難い。
【0029】
図1に示した実施形態では、採血ホルダー1のホルダー本体2の先端に筒状部材3を一体的に構成したが、本発明の採血器具は、このような採血ホルダーに限定されるものではない。すなわち、図2(a)及び(b)に示すように、採血ホルダーとは別途用意された筒状部材11内に、ドーム型の逆流防止部材12を挿入し、それによって本発明の採血器具を構成してもよい。この場合においても、逆流防止弁12は、第1の端部12a側が開いており、第2の端部12b側が閉じられた形状を有し、かつ弾性材料からなる。従って、第1の実施形態の場合と同様に、初期状態では、図2(b)に示すように、第1の端部12a側の外周面が確実に筒状部材11の内周面に密着されている。
【0030】
そして、図3(a)に示すように、逆流防止弁12の第2の端部12b側の圧力が、第
1の端部12aよりも下方の流路部分の圧力よりも高い場合には、該圧力差により、第1の端部12a側における径が小さくなる。そのため、第1の端部12aの外周面と筒状部材11との内周面との密着が部分的に解かれ、隙間Xが形成される。従って、血液が逆流防止弁12を越えて、第2の端部12bから第1の端部11a側に向かって流路を流れることになる。
【0031】
また、逆流が生じた場合には、逆流防止弁12の弾発力と逆流の勢いとにより、図3(b)に矢印で示すように逆流防止弁12が変形し、逆流防止状態となる。この場合、図3(b)において、逆流防止弁12よりも下方の流路部分の圧力が相対的に高くなった場合には、第1の端部12aの外周面がより強固に筒状部材11の内周面に密着され、それによって逆流をより確実に防止することができる。
【0032】
また、図4に略図的部分切欠断面図で示すように、第1の実施形態の場合と同様に、筒状部材11内に、段差部11aを設けることが好ましい。
【0033】
血液を導く際には、逆流防止弁12の第1の端部12aの外周面と筒状部材11の内周面との密着状態が少なくとも部分的に解かれるため、図3(a)に示す状態に相当する状態となる。従って、血流により逆流防止弁12が図4において矢印方向に移動されることになる。しかしながら、段差部11bが設けられている場合には、段差部11bにより逆流防止弁12の移動を係止することができる。従って、逆流防止弁12の所望でない位置ずれを確実に防止することができる。
【0034】
本実施形態では、血液が流れる状態では、血液の流量が大きい場合には上記隙間を大きく開くことになる。狭い隙間を無理に血液が流れる場合には溶血が生じやすいが、本実施形態では、上記のように、血流量が多い場合には、隙間が大きくなるため、溶血を確実に抑制することができる。また、血液を真空吸引する力が働かなくなると、逆流防止弁12の弾性復帰力により逆流防止状態に復帰する。従って、流路が確実に閉塞される。そして、血管側の圧力が真空採血管側の圧力より低くなった場合に逆流が生じるおそれがあるが、その場合には、該圧力差により、逆流防止弁12の第1の端部12aの外周面が流路の内周面により強く密着することになり、逆流防止弁を確実に防止することができる。
【0035】
上記逆流防止弁12は、その弾発作用により流路壁面に密着されている。従って、血流によって、逆流防止弁12の位置が血流方向にさほど大きくずれることはない。しかしながら、輸送中の衝撃や経年変化による緩みなどにより位置ずれを生じるおそれがある。従って、好ましくは、逆流防止弁12は、流路の内面に、血流方向において移動しないように、接着、溶着もしくは嵌合等によりその血流方向の位置を固定しておいてもよい。また、逆流防止弁12を流路の内面に固定する場合、逆流防止弁12の外径と内径の中心をずらし、逆流防止弁12の厚みを周方向において不均一化してもよい。その場合には、相対的に厚肉部分を筒状部材の内周面に接着または固定することが、相対的に肉厚の薄い部分における変形をより一層容易とすることができ、好ましい。
【0036】
なお、本発明に係る採血器具は、図1に示した採血ホルダー1に限定されず、上記筒状部材11を組み込み得る採血器具に一般的に適用することができる。すなわち、上記筒状部材11を、例えば翼状針、注射針と連結されたハブなどに組み込んでもよく、該筒状部材11を構成する部分は採血器具の任意の位置とされ得る。
【0037】
また、注射針や翼状針自体を筒状部材11として用い、内部に逆流防止弁12を収納することにより本発明の採血器具を構成してもよい。
【0038】
(実施例)
ブチルゴムからなり、図1に示したドーム型の逆流防止弁6を作製した。逆流防止弁6としては、内径が1.0mm、外径が2.6mmであり、長さが6.0mmの寸法を有し、第2の端部6b側が半球状に閉じられている形状のものを用意し、図1に示した筒状部材3の逆流防止弁6がセットされる部分の流路の内径が2.3mmである採血ホルダー1にセットした。上記筒状部材3の外周面には、注射針21を気密的に装着し、該注射針21の先端21aをビーカー内の血液に浸漬し、真空採血管を採血ホルダー1のホルダー本体2の開口2aから挿入した。その結果、真空採血管内に血液を流入させることができた。血液の流入が停止した段階で真空採血管を取り外し、真空採血管内の血液を遠心分離し、血清を観察した。溶血は認められなかった。
【0039】
なお、吸引終了後の真空採血管内の圧力は大気圧とほぼ同等となっているため、この状態では、血液の流れは停止していた。そして、逆流防止弁6は弾性により、初期状態に復帰し、筒状部材3の流路内壁に密着していることが確認された。しかる後、図5に示すように、上記遠心分離を行った場合と同様にして血液を採取した後に、上下転倒し、加圧治具23を用い、真空採血管22内を+100mmHgに加圧したところ、注射針21の先端21aから血液が漏れ出ることはなかった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)は本発明の一実施形態の採血器具の正面断面図、(b)は血液流通可能状態にある採血器具の要部を示す部分切欠正面断面図、(c)は逆流防止状態にある採血器具の要部を示す部分切欠拡大正面図。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の採血器具の変形例を説明するための各部分切欠正面断面図。
【図3】(a)及び(b)は、図2に示した採血器具において、血液流通状態及び逆流防止状態を示す各部分切欠正面断面図。
【図4】採血器具に段差部を設けた場合及び採血器具内における逆流防止弁の流路の長さ方向への移動を説明するための部分切欠正面断面図。
【図5】実施例において、血液の漏洩確認試験を行う工程を説明するための部分切欠正面断面図。
【図6】従来の逆流防止構造が備えられた採血針の一例を示す縦断面図。
【図7】従来の逆流防止構造が備えられた留置針を説明するための部分切欠正面断面図。
【符号の説明】
【0041】
1…採血ホルダー(採血器具)
2…ホルダー本体
2a…開口
2b…端部
3…筒状部材
3a…流路
4…中空針
5…鞘
6…逆流防止弁
6a…第1の端部
6b…第2の端部
11…筒状部材
11a…流路
12…逆流防止弁
12a…第1の端部
12b…第2の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血に際して用いられる採血器具であって、
血液が流れる流路を内部に有する流路形成部材と、
前記流路形成部材の流路内に配置されており、柔軟性を有する材料からなる逆流防止弁とを備え、
前記逆流防止弁が、前記流路の延びる方向において一端側の第1の端部が開口されており、第1の端部とは反対側の端部である第2の端部が閉じられており、逆流防止弁を構成している材料の弾力性により第1の端部の外周面が前記流路の内周面に密着されて血液の逆流を防止する逆流防止状態と、
血流もしくは前記逆流防止弁を挟んだ流路の一方側と反対側の圧力差により前記逆流防止弁の第1の端部の外周面の少なくとも一部が流路の内周面から分離された血液流通可能状態とをとり得るように形成されていることを特徴とする、採血器具。
【請求項2】
前記流路形成部材の内周面に周方向に延びる段差部が形成されており、該段差部の一方側において流路の径が相対的に大きくされており、他方側において流路の径が相対的に小さくされており、前記逆流防止弁が相対的に径の大きな流路部分側に収納されており、かつ前記逆流防止弁の第1の端部が、前記段差部によって係止されるように構成されている、請求項1に記載の採血器具。
【請求項3】
前記流路形成部材が筒状部材であり、前記逆流防止弁がドーム型の形状を有する、請求項1または2に記載の採血器具。
【請求項4】
真空採血管が挿入される開口を一端に有し、他端が閉じられている採血ホルダーをさらに備え、該採血ホルダーの閉じられている他端側に前記筒状部材が連ねられており、かつ筒状部材内の流路から採血ホルダー内に延びる中空針が筒状部材に連結されている、請求項3に記載の採血器具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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