説明

接合成形品及びその製造方法

【課題】半凝固スラリーの固化物でワークの端部を鋳ぐるんだ接合成形品において、鋳ぐるみ箇所の接合強度を大きくする。
【解決手段】金型装置40の第1ダイ44及び第1パンチ46でワーク42を第2ドア用フレーム部材18の形状に対応する形状に成形した後、第2ダイ50及び第2パンチ52で半凝固スラリー48を押圧する。この押圧によって圧潰された半凝固スラリー48は、該半凝固スラリー48側に向かって突出した第2ドア用フレーム部材18に指向して流動する。流動が進行すると、第2ドア用フレーム部材18の端部が半凝固スラリー48の表面に存在する酸化膜を押し破り、半凝固スラリー48の内部、すなわち、酸化膜が存在しない箇所まで埋入される。この際、半凝固スラリー48が第2ドア用フレーム部材18の両端面を押圧しながら摺動するので、該端面に存在する酸化膜も破壊される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半凝固スラリーの固化物でワークの端部を鋳ぐるんだ接合成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組成が互いに相違する金属材同士を接合して接合成形品を得る手法の1つとして、半凝固スラリーを用いた射出成形が開示されている。すなわち、成形型内にワークを収容し、型締めを行った後に半凝固スラリーを注入して該半凝固スラリーをキャビティの形状に対応する形状に成形するとともに、該半凝固スラリーを前記ワークに接合する手法である(例えば、特許文献1参照)。ここで、「半凝固スラリー」とは、特許文献1にも記載されている通り、固液共存状態の溶湯を指称する。なお、一般的に、半凝固スラリーは、加圧された際にはじめて流動性を示す程度に軟質である。
【0003】
しかしながら、この場合、ワークと半凝固スラリー、換言すれば、金属材同士の強度や接合品質が安定した金属接合を得ることは容易ではない。この理由は、ワークと半凝固スラリーとの間の接合界面に10nm程度の薄い酸化膜等が存在するためであると推察される。
【0004】
そこで、特許文献2記載の発明では、固液共存温度とした金属溶湯でワークを押圧することによって、該ワークの表面の酸化膜を除去することを試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−58253号公報
【特許文献2】特開平10−99961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2記載の発明では、金属溶湯をワークの表面に沿って平行に移動させるようにしている。スタンプ成形を行う場合においてこの手法を適用する場合、ワークの上端面に半凝固スラリーを載置した後、該半凝固スラリーに対してスタンピングを施し、これにより該半凝固スラリーを変形させながらワークの表面に沿って移動させることが想起される。
【0007】
しかしながら、この場合、半凝固スラリーにおけるワークの表面に沿って移動した部位は該ワークに対して比較的容易に接合するものの、ワークの表面に沿って移動しない部位は該ワークに対して接合し難くなる。この理由は、半凝固スラリーが移動しないので、該部位における界面の酸化膜が除去され難くなるためであると推察される。
【0008】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、鋳ぐるみ部位において半凝固スラリーの酸化膜が除去され、このため、ワークと、該ワークの端部を囲繞するように鋳ぐるんだ半凝固スラリーの固化物との接合強度が大きな接合成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、ワークの端部が半凝固スラリーの固化物によって囲繞されるように鋳ぐるまれた接合成形品であって、
前記端部が、前記固化物の表面の酸化膜を押し破り、前記酸化膜が存在しない固化物の内部で前記固化物と接合していることを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明においては、ワークの端部が、半凝固スラリーにおける酸化膜が存在しない部位、換言すれば、半凝固スラリーの材質である金属面が露呈した部位まで埋入し、この露呈した金属面と接触している。半凝固スラリーにおいて、酸化膜が存在しない部位は濡れ性が良好である。従って、ワークの端部に半凝固スラリーが濡れ密着し、この状態で、半凝固スラリーが固化物となる。これに伴い、該固化物とワークとが堅牢に接合する。換言すれば、合金種が異なる金属材同士であっても接合強度が優れた鋳ぐるみ部を有する接合成形品を得ることができる。
【0011】
また、本発明は、成形型内に収容された半凝固スラリーをスタンピングにより変形させてワークの端部を鋳ぐるんだ状態で前記半凝固スラリーを固化させることで接合成形品を得る接合成形品の製造方法であって、
前記半凝固スラリーに対して前記ワークの端部を当接させ、前記端部で前記半凝固スラリーを相対的に押圧することによって、前記半凝固スラリーの表面の酸化膜を前記端部で押し破り、前記端部を前記半凝固スラリーの内部に埋入することを特徴とする。
【0012】
上記した工程が実施される際、半凝固スラリーの表面の酸化膜がワークの端部で破られるので、該端部は、半凝固スラリーにおける酸化膜が存在しない部位まで埋入する。一方、半凝固スラリーがワークに押圧された状態で該ワークに対して相対的に摺動するとき、摩擦によってワークの酸化膜が破壊される。結局、埋入箇所においては、表面の酸化膜が破壊されることで金属面が露呈したワークが、表面から酸化膜が除去されることで金属面が露呈した半凝固スラリーに対向して接触する。
【0013】
すなわち、上記した工程を経ることにより、半凝固スラリーに埋入して金属面が露呈したワークの端部を、露呈した半凝固スラリーの材質である金属によって濡れ密着させることができる。このようにしてワークの端部に濡れ密着した半凝固スラリーを固化させることにより、該固化物とワークとが堅牢に接合して接合強度が優れた鋳ぐるみ部を有する接合成形品を得ることができる。
【0014】
このような鋳ぐるみ部を形成するには、例えば、半凝固スラリーの高さ方向における下端部と上端部の間に前記ワークの前記端部を配置し、その後、前記半凝固スラリーに対してスタンピングを施すようにすればよい。
【0015】
いずれの場合においても、前記ワークに対してプレス成形を施すようにしてもよい。この場合、所定の形状の接合成形品を容易且つ簡便に、しかも、効率よく作製することができるという利点がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワークの端部を、半凝固スラリーにおける酸化膜が存在しない部位まで埋入し、この部位において露呈した半凝固スラリーの材質である金属に接触させるようにしている。半凝固スラリーにおいて、酸化膜が存在しない部位は濡れ性が良好であり、しかも、この場合、ワークの端部の酸化膜も破壊されているので、濡れ性が一層良好となる。このようにしてワークの端部に良好に濡れ密着した状態の半凝固スラリーが固化物となるため、該固化物とワークとが堅牢に接合する。その結果、合金種が相違する金属材同士であっても、接合強度が優れた鋳ぐるみ部を有する接合成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る接合成形品である自動車乗員室用ドアの全体概略縦断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】図1に示す自動車乗員室用ドアを製造するための金型装置の要部概略縦断面図である。
【図4】図3に示す金型装置によってワークを第2ドア用フレーム部材に成形した状態を示す要部概略縦断面図である。
【図5】図4に続き、半凝固スラリーの流動を開始させた状態を示す要部概略縦断面図である。
【図6】図6A、図6Bは、流動の進行の度合いと、半凝固スラリーと第2ドア用フレーム部材の端部との位置関係を示す要部拡大縦断面図である。
【図7】半凝固スラリーが第1連結部材の形状に成形された状態を示す前記金型装置の要部概略縦断面図である。
【図8】型開きがなされて自動車乗員室用ドアが露呈した状態を示す前記金型装置の要部概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る接合成形品につき、その製造方法との好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る接合成形品としての自動車乗員室用ドア10の全体概略縦断面図である。この自動車乗員室用ドア10は、ドア本体部12を有する。
【0020】
ドア本体部12は、横長の第1ドア用フレーム部材16と、該第1ドア用フレーム部材16の各端部に配置されて該第1ドア用フレーム部材16の長手方向に対して略直交する方向に延在する第2ドア用フレーム部材18及び第3ドア用フレーム部材20と、これら第1ドア用フレーム部材16、第2ドア用フレーム部材18及び第3ドア用フレーム部材20とともに略長方形をなす窓用フレーム部材22で構成される。
【0021】
そして、第1ドア用フレーム部材16の一端部と第2ドア用フレーム部材18の一端部は第1連結部材26を介して連結され、第2ドア用フレーム部材18の他端部と窓用フレーム部材22の一端部は、第2連結部材28を介して連結されている。また、窓用フレーム部材22の残余の他端部は第3連結部材30を介して第3ドア用フレーム部材20の一端部と連結され、該第3ドア用フレーム部材20の他端部は第4連結部材32を介して第1ドア用フレーム部材16の他端部と連結されている。
【0022】
本実施の形態において、第1ドア用フレーム部材16、第2ドア用フレーム部材18、第3ドア用フレーム部材20及び窓用フレーム部材22は同種のアルミニウム合金材であり、第1連結部材26、第2連結部材28、第3連結部材30及び第4連結部材32は、互いに同種であって且つ第1ドア用フレーム部材16、第2ドア用フレーム部材18、第3ドア用フレーム部材20及び窓用フレーム部材22とは合金種が異なるアルミニウム合金材である。第1ドア用フレーム部材16、第2ドア用フレーム部材18、第3ドア用フレーム部材20及び窓用フレーム部材22の材質と、第1連結部材26、第2連結部材28、第3連結部材30及び第4連結部材32の材質の一例としては、それぞれ、A5182、AC4CH(ともにJIS)が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0023】
ここで、図1のII−II線矢視断面の一部を拡大して図2に示す。この図2から諒解されるように、第2ドア用フレーム部材18の端部は第1連結部材26の内部に埋入して該第1連結部材26に接合している。なお、図1から諒解されるように、第1連結部材26の内部には、第1ドア用フレーム部材16の一端部も埋入されて該第1連結部材26に接合している。
【0024】
図2に示すように、第1連結部材26の表面には酸化膜34が存在しており、第2ドア用フレーム部材18は、この酸化膜34を押し破るようにして第1連結部材26の内部に埋入している。すなわち、第2ドア用フレーム部材18は、第1連結部材26の内部における酸化膜34が存在しない箇所、換言すれば、第1連結部材26の材質であるアルミニウム合金等が露呈した箇所で、該第1連結部材26と接合している。
【0025】
一方、第2ドア用フレーム部材18において、第1連結部材26から露呈した部位の表面にも酸化膜36が存在している。なお、第1連結部材26に埋入した部位には酸化膜36は存在しない。後述するように、第1連結部材26となる半凝固スラリーが第2ドア用フレーム部材18の表面を摺動する際、この摺動によって酸化膜36が破壊されるからである。
【0026】
図示は省略するが、第2ドア用フレーム部材18の残余の端部も窓用フレーム部材22の一端部とともに第2連結部材28に鋳ぐるまれており、同様に、窓用フレーム部材22の他端部は第3ドア用フレーム部材20の一端部とともに第3連結部材30に鋳ぐるまれている。さらに、第3ドア用フレーム部材20の他端部及び第1ドア用フレーム部材16の他端部は、第4連結部材32に鋳ぐるまれている。
【0027】
勿論、これらの連結箇所においても、図2と同様に、各部材18、20、22が各連結部材26、28、30、32の表面の酸化膜34を押し破るようにして内部に埋入している。また、各部材18、20、22の表面の酸化膜36が破壊されている。
【0028】
この自動車乗員室用ドア10(接合成形品)は、その要部概略縦断面が図3に示される金型装置40によって作製される。ここで、図3は、図1のII−II線矢視断面に対応する部位を成形する部位を示している。
【0029】
金型装置40は、第2ドア用フレーム部材18となるワーク42を成形する成形型としての第1ダイ44及び第1パンチ46と、第1連結部材26となる半凝固スラリー48に対してスタンプ成形を施すための第2ダイ50及び第2パンチ52とを有する。この中、第1ダイ44及び第2ダイ50は固定盤54上に設けられ、一方、第1パンチ46及び第2パンチ52は、前記固定盤54に対して接近又は離間可能に設けられた可動盤56における前記固定盤54に臨む側の面に設けられる。
【0030】
第1ダイ44は、図示しない複数個のシリンダの各ロッド同士によって構成される第1ロッド列58の先端に支持されている。このため、第1ダイ44は、前記シリンダが同期して動作することによって第1ロッド列58が同時に前進動作・後退動作することに追従し、鉛直方向に沿って変位する。
【0031】
一方の第1パンチ46は、図示しない複数個のシリンダの各ロッド同士によって構成される第2ロッド列60の先端に支持されている。従って、第2パンチ52もまた、前記シリンダが同期して動作することによって第2ロッド列60が同時に前進動作・後退動作することに追従し、鉛直方向に沿って変位することが可能である。
【0032】
第2ダイ50は、固定盤54上において、第1ダイ44に隣接するように設置される。前記半凝固スラリー48は、この第2ダイ50の幅広な上端面に載置される。
【0033】
なお、上端面、及び図3における右端部上面のそれぞれには、第1ノックアウトピン62及び第2ノックアウトピン64(図8参照)が突出・埋没自在に埋設されている。これら第1ノックアウトピン62及び第2ノックアウトピン64が前記上端面及び前記右端部上面から突出することに伴い、接合成形品が離型される。
【0034】
第2パンチ52は、半凝固スラリー48を押圧するための型である。すなわち、半凝固スラリー48は、第2パンチ52から押圧されることによって圧潰されるとともに流動する。
【0035】
以上の構成において、可動盤56は、図示しない昇降機構の作用下に固定盤54に対して接近又は離間する。可動盤56が固定盤54に対して接近したときに型締めがなされ、一方、可動盤56が固定盤54から離間したときに型開きがなされる。
【0036】
本実施の形態に係る接合成形品の製造方法は、上記のように構成された金型装置40において、以下のようにして実施される。
【0037】
はじめに、図3に示すように、第1ダイ44と第1パンチ46の間にワーク42が挿入される。その一方で、第2ダイ50の上端面に半凝固スラリー48が載置される。半凝固スラリー48は、第1ダイ44に対して所定間隔、好ましくは10mm以上離間した位置に配置される。また、ワーク42の端部は、半凝固スラリーの高さ方向下端部と上端部の間に配置される(図4参照)。
【0038】
上記したように、ワーク42の材料としては、例えば、アルミニウム合金であるA5182を選定すればよく、半凝固スラリー48の材料としては、例えば、A5182とは合金種の異なるアルミニウム合金であるAC4CHを選定すればよい。なお、半凝固スラリー48及びワーク42の表面には、該表面が大気中の酸素によって酸化されて生成した、いわゆる不動態としての酸化膜34、36(図2及び図6参照)がそれぞれ存在する。
【0039】
次に、図4に示すように、前記昇降機構の作用下に可動盤56ごと第1パンチ46及び第2パンチ52を下降させる。この下降に伴って、先ず、第1ダイ44と第2パンチ52によって第1キャビティ66が形成されるとともに、ワーク42が該第1キャビティ66の形状に対応する形状、すなわち、第2ドア用フレーム部材18に対応する形状に成形される。第2ドア用フレーム部材18の端部は、半凝固スラリー48側に向かって延在するように、第1キャビティ66から突出する。
【0040】
なお、この時点では、半凝固スラリー48が圧潰されることはない。
【0041】
次に、図5に示すように、前記昇降機構の作用下に可動盤56をさらに降下させる。これにより第2パンチ52が半凝固スラリー48を押圧しはじめ、その結果、該半凝固スラリー48が圧潰されて流動を開始する。なお、第2ロッド列60は同期して後退動作し、このため、第1キャビティ66及び第2ドア用フレーム部材18の位置が保持される。
【0042】
半凝固スラリー48中、第1ダイ44及び第1パンチ46側に流動した分は、当初は図6Aに示すように第2ドア用フレーム部材18の端部から離間しているものの、流動の進行に伴って端部に当接する。流動がさらに進行すると、図6Bに示すように、端部が酸化膜34を押し破るようにして半凝固スラリー48の内部に埋入する。
【0043】
このとき、半凝固スラリー48は、第2パンチ52を介して付加された押圧力によって第2ドア用フレーム部材18の端部を押圧しながら該第2ドア用フレーム部材18の両端面に沿って摺動する。この摺動に伴う摩擦によって、第2ドア用フレーム部材18の表面に存在する酸化膜36が破壊される。すなわち、第2ドア用フレーム部材18の表面から酸化膜36が除去され、金属面が露呈する。なお、酸化膜36を破壊するためには、第2ドア用フレーム部材18に対する半凝固スラリー48の相対的な摺動距離は、10mm以上であることが好ましい。
【0044】
酸化膜34は、半凝固スラリー48の表面にのみ存在し、内部には存在しない。半凝固スラリー48において、金属面が露呈した内部は、他の金属材、すなわち、第2ドア用フレーム部材18に対する濡れ性が良好である。このように濡れ性が良好な半凝固スラリー48に囲繞された第2ドア用フレーム部材18の端部は、該半凝固スラリー48の内部により濡れ密着される(図5参照)。
【0045】
ここで、半凝固スラリー48に埋入された第2ドア用フレーム部材18の端部も金属面が露呈している。従って、第2ドア用フレーム部材18に対する半凝固スラリー48の濡れ性が一層良好となる。
【0046】
図7に示すように、可動盤56がさらに下降されると、半凝固スラリー48が第1ダイ44及び第1パンチ46、及び第2パンチ52のシール部68によって堰止される。すなわち、半凝固スラリー48は、第1ダイ44、第1パンチ46、第2ダイ50及び第2パンチ52によって形成される第2キャビティ70に対応する形状に成形される。この際には、第1ロッド列58が若干後退動作し、第1ダイ44を下降させる。これにより、可動盤56が容易に下降することができるようになる。
【0047】
この状態で半凝固スラリー48を冷却固化させて第1連結部材26とすれば、第2ドア用フレーム部材18の端部と半凝固スラリー48との間に新たな酸化膜が生成することを回避しながら、第1連結部材26に対して該端部を連結することができる。
【0048】
同様にして、金型装置40の別の箇所で第1ドア用フレーム部材16、第3ドア用フレーム部材20が成形され、且つ窓用フレーム部材22とともに第1連結部材26、第2連結部材28、第3連結部材30又は第4連結部材32中の所定の連結部材に鋳ぐるまれる。以上により、部材16、18、20、22の端部同士が連結部材26、28、30、32を介して接合された接合成形品としての自動車乗員室用ドア10が得られる。
【0049】
最後に、図8に示すように、前記昇降機構の作用下に可動盤56が上昇することに伴って第1ダイ44、第2ダイ50から第1パンチ46、第2パンチ52が離間し、これにより型開きがなされる。そして、第1ノックアウトピン62及び第2ノックアウトピン64が第2ダイ50から突出し、自動車乗員室用ドア10が離型される。
【0050】
このようにして得られた自動車乗員室用ドア10(接合成形品)においては、部材16、18、20、22の端部と連結部材26、28、30、32のいずれかとの接合強度が大きい。上記から諒解されるように、部材16、18、20、22の端部と連結部材26、28、30、32との間に酸化膜34、36が介在することが回避されているからである。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば、流動する半凝固スラリー48を所定の部材16、18、20、22の端部に当接させ、この端部で該半凝固スラリー48の表面に存在する酸化膜34を押し破り、該端部を半凝固スラリー48の内部、すなわち、酸化膜34が存在しない箇所に埋入させることに加え、半凝固スラリー48で部材16、18、20、22の端面を押圧しながら該端面に沿って摺動させ、この際の摩擦によって該部材16、18、20、22の表面の酸化膜36を破壊するようにしている。これにより、合金種が相違する金属材同士である部材16、18、20、22と半凝固スラリー48(連結部材26、28、30、32)とを堅牢に接合させることができる。
【0052】
なお、上記した実施の形態では、半凝固スラリー48を流動させることによって、該半凝固スラリー48を所定の部材16、18、20、22の端部で押圧するようにしているが、例えば、シリンダ等によって部材16、18、20、22を移動させることで該部材16、18、20、22の端部を半凝固スラリー48に埋入させ、その後、半凝固スラリー48に対してスタンピング成形を行うようにしてもよい。この場合においても、部材16、18、20、22の移動距離は10mm以上に設定することが好ましい。
【0053】
また、この実施の形態では、ワーク42に対してプレス成形を施すことで第2ドア用フレーム部材18に成形する場合を例示して説明しているが、ワーク42に対するプレス成形を行うことなく、半凝固スラリー48に対するスタンプ成形のみを行うようにしてもよい。
【0054】
さらに、接合成形品が自動車乗員室用ドア10に特に限定されるものでないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
10…自動車乗員室用ドア 16、18、20…ドア用フレーム部材
22…窓用フレーム部材 26、28、30、32…連結部材
34、36…酸化膜 40…金型装置
42…ワーク 44、50…ダイ
46、52…パンチ 48…半凝固スラリー
58、60…ロッド列 66、70…キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの端部が半凝固スラリーの固化物によって囲繞されるように鋳ぐるまれた接合成形品であって、
前記端部が、前記固化物の表面の酸化膜を押し破り、前記酸化膜が存在しない固化物の内部で前記固化物と接合していることを特徴とする接合成形品。
【請求項2】
成形型内に収容された半凝固スラリーをスタンピングにより変形させてワークの端部を鋳ぐるんだ状態で前記半凝固スラリーを固化させることで接合成形品を得る接合成形品の製造方法であって、
前記半凝固スラリーに対して前記ワークの端部を当接させ、前記端部で前記半凝固スラリーを相対的に押圧することによって、前記半凝固スラリーの表面の酸化膜を前記端部で押し破り、前記端部を前記半凝固スラリーの内部に埋入することを特徴とする接合成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の製造方法において、前記半凝固スラリーの高さ方向における下端部と上端部の間に前記ワークの前記端部を配置し、前記半凝固スラリーに対してスタンピングを施すことを特徴とする接合成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の製造方法において、前記ワークに対してプレス成形を施すことを特徴とする接合成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−253523(P2010−253523A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108382(P2009−108382)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)