説明

接合構造

【課題】複数の布地等を自由に組み合わせて接合するために最適な新しい接合構造を提供する。
【解決手段】接合構造1は、2つの単位部材10A,10Bの端部同士を、該端部それぞれに設けられた接合部材20A,20Bにより相互に接合する接合構造であって、接合部材20A,20Bそれぞれは、単位部材10A,10Bの端部に固定された基座部30A,30Bと、該基座部より櫛形状にそれぞれ突出しており、基座部の表面との直交方向に弧状をなす曲部を有する複数のリード部40A,40Bと、該複数のリード部の各先端に設けられる係合部50A,50Bと、を備えるものである。それぞれの係合部50A,50Bが互いに相手の接合部材の隣接する2つの係合部と基座部との空間に挿嵌されることにより、2つの単位部材10A,10Bの端部同士を相互に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単位部材、すなわち、布地(織布、不織布、及び編物を含む)、その他の単位物品や単位構造片(ピース、個品、個片)の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの布地等の端部同士を接合する部材として種々の接合構造、例えば、ホックやスナップ等の形状が凹凸のように異なる2個1組で布地等を接合するもの、ファスナー等の留め具により布地等を接合するもの、マッジックテープ(登録商標)等の面的に着脱可能に布地等を接合するもの(面ファスナー)等が知られており、かかる接合構造により、所望のデザインの衣服、包装具、日用品等が構成される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5592691号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、布地ピースの端部同士を接合するにあたって、複数の布地ピースを自由に組み合わせることには、例えば、上記従来の接合構造では様々な制限が存在していた。
【0005】
例えば、ホックやスナップ等の接合構造は、接合するそれぞれの布地等の特定箇所に形状の異なる部材を取り付けておくものであるため、互いに対応する部材が取り付けられた箇所で接合しなければならず、接合可能箇所が限定されてしまい、複数の布地の自由な組み合わせを提供することができない。また、ファスナー等の接合構造は、線上に並んだ務歯(エレメント)を噛み合わせて両側を固定するスライダー等の補助部材を必要としてしまうとともに、ホックやスナップ等と同様、接合可能箇所が限定されてしまい、複数の布地等の自由な組み合わせを提供することができない。さらに、マジックテープ(登録商標)の接合構造は、接合する2つの布地の端の面(一方を表面、他方を裏面)に1組のマッジックテープを取り付けておくものであって、その構造により、布地同士の接合強度を向上させるためには接着面積(接合面積)を大きくしなければならず、布地の自由な接合として可能な限り小さな面積で実現したいという要求を満たすことができない。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、複数の布地等を自由に組み合わせて接合するために最適な新しい接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明による接合構造は、2つの単位部材の端部同士を、該端部それぞれに設けられた接合部材により相互に接合するための接合構造であって、それら複数の接合部材のそれぞれは、単位部材の端部に固定された基座部と、基座部より櫛形状に突出しており、且つ、基座部の表面と直交する又は略直交する方向に弧状をなす曲部を有する複数のリード部と、複数のリード部のそれぞれの各先端に設けられる係合部と、を備え、複数の接合部材のうちの一方の接合部材のそれぞれの係合部が、(接合の相手方となる)複数の部材のうちの他方の接合部材における隣接する2つの係合部と基座部との空間に挿嵌される(入れ込まれる、遊挿される)ことを特徴とする。なお、「接合構造」は、単位部材の端部の全周(全周縁)に亘って形成されていてもよく、端部の一部にのみ形成されていてもよい。
【0008】
かかる接合構造によれば、接合部材それぞれの係合部が互いに相手の接合部材の隣接する2つの係合部と基座部との空間に配置され、2つの布地を反対方向に引っ張って引き剥がそうとしても、対向する係合部同士が干渉して係合することにより、2つの単位部材の端部同士が相互に接合される。また、挿嵌されて係合する係合部の組み合わせは任意であることから、端部同士の接合部位の制約を軽減でき、接合可能範囲が大きくなって単位部材の自由な組み合わせを提供することができる。また、複数のリード部において、基座部の表面との直交方向に弧状をなす曲部を有するため、そのことにより、係合部などの接合部分の柔軟な動き(例えば、上下左右に対しての動き)を実現することができ、その接合を行う際、作業者は双方の接合部材の係合部をそれぞれ対応する空間に互い違いに入れ込む作業を簡単に行うことができる。
【0009】
また、2つの単位部材の端部それぞれに設けられた接合部材にそれぞれ備えられる複数のリード部は、互いに同一の形状及びサイズであってもよく、また、複数のリード部の各先端に設けられる係合部も、互いに同一の形状及びサイズであってもよい。
【0010】
このような構成とすることで、この接合部材を端部に有する単位部材であれば、どのような単位部材でも自由に組み合わせて接合することができ、例えば、単位部材が布地ピースであれば、該布地の接合ひいては衣服(服飾)の創作性が更に向上される。
【0011】
さらに、係合部のサイズは、該係合部が相手の接合部材の隣接する2つの係合部と基座部との空間に挿嵌された(入れ込まれた)ときに、当該2つの係合部と基座部とに当接可能なサイズとすることができる。このことにより、1つの係合部が、相手の接合部材の隣接する2つの係合部と基座部とで支持することができ、接合強度の向上を図ることができる。係合部は球体状をなすことが好ましい。係合部が球体状をなすことで、その接合を行う際、作業者は双方の接合部材の係合部をそれぞれ対応する空間に互い違いに入れ込む作業を極めて簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成された本発明による接合構造によれば、接合部材それぞれの係合部が互いに相手の接合部材の隣接する2つの係合部と基座部との空間に入れ込まれる仕組みであるため、端部同士の接合可能範囲が大きくなり、複数の単位部材を自由に組み合わせて接合することができる。また、複数のリード部において、基座部の表面と直交又は略直交する方向に弧状をなす曲部を有するため、そのことにより、係合部などの接合部分の柔軟な動き(例えば、上下左右に対しての動き)を発現させることができ、作業者は双方の接合部材の係合部をそれぞれ対応する空間に互い違いに入れ込む作業を簡単に行うことができるので、作業性及び生産効率を向上させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な一実施形態の布地の接合構造を示す概略的な斜視図である。
【図2】図1の布地の接合構造を示す概略的な横面図(平面図)である。
【図3】図1の布地の接合構造を示す概略的な上面図(平面図)である。
【図4】衣服用ピースを例示する図である。
【図5】本実施形態による布地の接合構造の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0015】
図1は、本発明の好適な一実施形態の布地の接合構造を示す概略的な斜視図であり、図2は、図1の布地の接合構造を示す概略的な横面図(平面図)であり、図3は、図1の布地の接合構造を示す概略的な上面図(平面図)である。なお、本実施形態における単位部材は、布地ピース(布地)を例にとって説明するが、本発明は布地に制限されず、プラスチック製部材や紙地など種々の部材に適用することができる。
【0016】
本実施形態の布地の接合構造(以下、単に「接合構造」と称する)1は、布地10Aの端部に設けられた接合部材20A、及び布地10Bの端部に設けられた接合部材20Bにより、2つの布地の端部同士を相互に接続するものである。以下、図示の都合上、構造をより理解し易くするために、接合部材20Aを例にとって説明し、接合部材20Bの構成要素を一部省略するが、接合部材20Bも接合部材20Aと同様の構造等にすることができる。
【0017】
接合部材20Aは、基座部30A、複数のリード部40A、及び該複数のリード部40Aの各先端にそれぞれ配設される球体部50Aを含んで構成される。接合部材20Aの材料としては、特に制限されないが、柔軟且つ高強度であり、高温に対しても高い耐性を有する材料が望ましく、例えば、エポキシ樹脂製のものを用いることができる。また、接合部材20Aの材料は、基座部30A、複数のリード部40A、及び球体部50Aごとにそれぞれ異なる材料を用いることもでき、例えば、基座部30A及び球体部50Aはエポキシ樹脂製のものとし、複数のリード部40Aは金属製のものとしてもよく、布地の材質、布地の使用方法等によって最適なものを適宜選択して採用することができる。
【0018】
基座部30Aは、布地10Aの端部(表面上の一端)に固定されたものであって、布地10Aの端部に沿って延在した形状(例えば、長方形)からなる。基座部30Aは、例えば、その長手方向に沿って布地10Aと縫合したり、又は熱接着したりして布地10Aと一体化して固定される。また、基座部30Aは、該基座部30Aを備える接合部材20Aと対向する接合部材20Bの方向に突出した複数のリード部40Aを有する。
【0019】
リード部40Aは、図2及び図3に示すように、基座部30Aより櫛形状にそれぞれ突出しており、基座部30Aの表面との直交方向に弧状をなす曲部41Aを有し、その先端には球体部50Aが設けられる。隣接するリード部40A同士の各間隔は、隣接する2つのリード部40Aと基座部30Aとの空間に挿嵌・収容される接合部材20Bの球体部50Bの直径又は略直径程度が望ましく、或いは、その直径以上で、且つ、例えば、その直径の2倍より小さい間隔であってもよく、布地や球体部50A,50Bの種類・用途・性状に応じて適宜調整することができる。
【0020】
曲部41Aは、上下左右等の各方向に球体部50Aの揺動を容易にするために設けられるものであって、その形状及び大きさは、布地の種類・用途に応じて適宜調整することができる。曲部41Aが、基座部の表面と直交又は略直交する方向に弧状(カーブ形状)をなすことにより、球体部50Aなどの接合部分の柔軟な動き(例えば、上下左右に対しての動き)が容易に実現され、作業者は双方の接合部材の球体部をそれぞれ対応する空間に互い違いに入れ込む作業を至極簡単に行うことができる。
【0021】
球体部50Aは、複数のリード部40Aの各先端に設けられ、接合部材20Bの隣接する2つの球体部50Bと基座部30Bとの空間に入れ込まれ(嵌め込まれ)、接合部材20A,20B同士を相互に接合するためのストッパーの役割を担う係合部である。球体部50Aのサイズは、上述の如く、リード部40A同士の間隔等によって変わり得るが、例えば、リード部40A同士の間隔をD(mm)とした場合、球体部50Aの直径をその間隔(D)と同等程度又はそれ以上の適宜の寸法とすることができる。なお、球体部50Aは、完全な球の形状に制限されず、例えば、その断面形状が楕円であっったり、又は、他の接合部材20Bの球体部50Bと当接する側の形状が球状で且つ基座部30Bと対面する側の形状が四角状であってもよく、全体が角状をなす例えば多面体からなっていても構わない。
【0022】
このような接合部材20A及び接合部材20Bを用いる接合構造1は、接合部材それぞれの球体部が互いに相手の接合部材における隣接する2つの球体部と基座部との空間に挿嵌される構造であるため、端部同士を任意の所望位置で接合させることが簡易である、これにより、端部同士の接合可能範囲が大きくなり、布地の自由な組み合わせを簡便に実現することが可能となる。
【0023】
ここで、布地の組み合わせは、特に制限されず、例えば、本出願人が以前に出願した特願2008−45370(特開2009−203570号公報)に記載した衣服用ピースに適用することができる。具体的には、図4に示す衣服を構成する各衣服用ピースにおいて、接合する各端部に本実施形態の接合構造を利用することで、細分化された衣服用ピースを柔軟に且つ手軽にピース同士を接合させることができる。
【0024】
また、本実施形態の接合構造1によれば、マジックテープ(登録商標)等の面ファスナーや他の接合テープのように布地同士の接合強度を向上させるために接着面積(接合面積)を大きくする必要はないので、十分な強度を有する接合領域を可能な限り小さな面積で実現することができる。よって、接合部位をより目立たなくして、衣服の外観やファション性を向上させることも可能となる。さらに、本実施形態の接合構造1によれば、ファスナー等のようにスライダーのような補助部材を設ける必要がないため、接合する端部の長さが異なる布地同士でも、所望の位置で自由に接合させることができるので、衣服の設計自由度を一段と高めることができる。
【0025】
またさらに、2つの布地10A,10Bの端部それぞれに設けられた接合部材20A,20Bにそれぞれ備えられる複数のリード部40A,40B及び球体部50A,50Bは、互いに同一の形状及びサイズとすることができる。このように、接合する部分の形状及びサイズを双方で同一とすれば、作業者は双方の接合部材の球体部をそれぞれ対応する空間に互い違いに入れ込む作業を極めて簡便に行うことができる。なお、本実施形態の接合構造は、かかる接合部分の形状及びサイズが双方で同一である場合に制限されず、接合部材それぞれの球体部が互いに相手の接合部材の隣接する2つの球体部と基座部との空間に入れ込む仕組み(挿嵌状態)が生起されれば、それらの接合する部分の形状及びサイズを適宜調整することもできる。
【0026】
<変形例>
なお、上述したとおり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、図1に示す本実施形態の接合構造1は、接合する場合、球体部同士が当接している場合を例に挙げて説明したが、本発明の接合構造はこれに限られず、図5に示すように、互いの球体部が他方の基座部に当接するようにしてもよい。すなわち、球体部50A(50B)のサイズを、該球体部50A(50B)が相手の接合部材20B(20A)の隣接する2つの球体部50B(50A)と基座部30B(30A)との空間に嵌入されたときに、当該2つの球体部と基座部とに当接可能なサイズとすることができる。特に、隣接する2つの球体部50Bと基座部30Bとで球体部50Aを挟みこむように固定することもでき、この場合、各部材の当接面積がより増大されてより強い接合強度を保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、2つの布地を接合する種々の場合において適用可能であり、上述の如く、特に、本出願人による特願2008−45370(特開2009−203570号公報)に記載の衣服用ピースの布地の接合に有効(有用)である。すなわち、本発明による接合構造によれば、衣服用ピースごとにクリーニングや保管、また、接合して着用をする場合に、作業者がより手軽に各衣服用ピースを接合したり、その接合部を取り外したりすることを極めて簡便に実行することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…接合構造、10A,10B…布地(単位部材)、20A,20B…接合部材、30A,30B…基座部、40A,40B…リード部、41A,41B…曲部、50A,50B…球体部(係合部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの単位部材の端部同士を、該端部のそれぞれに設けられた接合部材により相互に接合するための接合構造であって、
前記複数の接合部材のそれぞれは、
前記単位部材の端部に固定された基座部と、
前記基座部より櫛形状に突出しており、且つ、前記基座部の表面と直交又は略直交する方向に弧状をなす曲部を有する複数のリード部と、
前記複数のリード部のそれぞれの各先端に設けられる係合部と、を備え、
前記複数の接合部材のうちの一方の接合部材のそれぞれの係合部が、前記複数の接合部材のうちの他方の接合部材における隣接する2つの前記係合部と前記基座部との空間に挿嵌されることにより、前記2つの単位部材の端部同士が相互に接合される、
接合構造。
【請求項2】
前記複数のリード部は、互いに同一の形状及びサイズからなり、
前記複数の係合部は、互いに同一の形状及びサイズからなる、
請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記係合部は、該係合部の接合の相手方となる前記接合部材の隣接する2つの前記係合部と前記基座部との空間に挿嵌されたときに、当該2つの前記係合部と前記基座部とに当接可能なサイズである、
請求項1又は2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記単位部材は、布地であり、
前記係合部は、球体状をなす、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40162(P2012−40162A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183722(P2010−183722)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【特許番号】特許第4630950号(P4630950)
【特許公報発行日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(508060988)
【Fターム(参考)】