説明

接地改修案策定システム

【課題】 接地不良箇所の改修工事に際して、複雑な業務を不要にして、接地改修案の策定を可能にする接地改修案策定システムを提供する。
【解決手段】 この発明は、電柱に設けられている電気設備の接地抵抗値を定期的に測定して測定データとして記録している接地抵抗定期点検システムを利用する接地改修案策定システムである。このシステムは、各地点の土壌の大地抵抗率をそれぞれ記憶しているデータベースサーバ4と、接地抵抗定期点検システムから最新の測定データを読み出して接地抵抗値が規定値を超えているかどうかを調べ、規定値を超えている接地不良箇所があると、この接地不良箇所の大地抵抗率をデータベースサーバ4により調べ、データベースサーバ4から得た大地抵抗率を基にした連結式接地工法で接地不良箇所を改修した場合の改修費を算出すると共に連接式接地工法でこの接地不良箇所を改修した場合の改修費を算出し、これらの改修費の中で最も低価格の改修費の工法を選択する管理端末1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接地が必要な電気設備の接地抵抗を規定値以下に抑えるための接地改修案を策定する接地改修案策定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電柱は、変圧器や避雷器などの電気設備を柱上に備えることができるように設置されている。そのために、電柱には、周辺の地中に埋設され、導電性の棒状の電極である接地極と、電気設備を接地極に電気的に接続するための接地線とが設けられている。電柱に設置されている電気設備を接地する際に、その種類に応じて確保しなければならない接地抵抗値が規定されている。このために、接地抵抗が規定値を満たすように、接地方式毎またはこれらの接地方式を組み合わせて、最低限必要な接地極の設置数が算出されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
接地方式には、連結式接地工法と連接式接地工法とがある。連結式接地工法は、地中に埋設される接地極を電柱周辺に配置し、これらの接地極を連結してアースとする工法である。連接式接地工法は、接地不良の電柱のアースに対して、別の電柱のアースを連接する工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−79400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、接地極が埋設されている地中や周辺地域の、経年による状態変化等で、接地抵抗が規定値より大きくなることがある。そこで、電力会社では、管理している電柱に設置されている電気設備の接地抵抗を定期的に調べている。そして、規定値を満たさない接地不良箇所があると、電力会社の担当者が接地改修案を策定して、対応することになる。
【0006】
しかし、接地改修案を策定するためには、周辺の状況や、接地極が埋設されている土地の大地抵抗率などを把握する必要がある。さらに、改修金額も考慮する必要があり、複雑な業務が必要である。特に、接地不良箇所が複数ある場合、連結式接地工法と連接式接地工法とのどちらを採用するかを決めなければならず、さらに複雑な業務が必要になる。
【0007】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、接地不良箇所の改修工事に際して、複雑な業務を不要にして、接地改修案の策定を可能にする接地改修案策定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、電柱に設けられている電気設備の接地抵抗値を定期的に測定して測定データとして記録している接地抵抗定期点検システムを利用する接地改修案策定システムであって、各地点の土壌の大地抵抗率をそれぞれ記憶している記憶手段と、前記接地抵抗定期点検システムから最新の測定データを読み出して接地抵抗値が規定値を超えているかどうかを調べ、この規定値を超えている接地不良箇所があると、この接地不良箇所の大地抵抗率を前記記憶手段により調べ、前記記憶手段から得た大地抵抗率を基にした連結式接地工法で前記接地不良箇所を改修した場合の改修費を算出すると共に連接式接地工法でこの接地不良箇所を改修した場合の改修費を算出し、これらの改修費の中で最も低価格の改修費の工法を選択する処理手段と、を備えることを特徴とする接地改修案策定システムである。
【0009】
請求項1の発明は、電柱に設けられている電気設備の接地抵抗値を定期的に測定して測定データとして記録している接地抵抗定期点検システムを利用する接地改修案策定システムである。そして、記憶手段は、各地点の土壌の大地抵抗率をそれぞれ記憶している。処理手段は、接地抵抗定期点検システムから最新の測定データを読み出して接地抵抗値が規定値を超えているかどうかを調べる。この後、処理手段は、規定値を超えている接地不良箇所があると、この接地不良箇所の大地抵抗率を記憶手段により調べる。この後、処理手段は、記憶手段から得た大地抵抗率を基にした連結式接地工法で接地不良箇所を改修した場合の改修費を算出すると共に連接式接地工法でこの接地不良箇所を改修した場合の改修費を算出する。さらに、記憶手段は、これらの改修費の中で最も低価格の改修費の工法を選択する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の接地改修案策定システムにおいて、前記記憶手段は、各電柱が設置されている地点の緯度と経度とをそれぞれ記憶し、前記処理手段は、接地不良箇所の緯度と経度とを前記記憶手段により調べ、この接地不良箇所の緯度と経度とから、所定範囲に設置されている電柱を前記記憶手段により調べ、この接地不良箇所から所定範囲に設置されている電柱を基に連接式接地工法で改修した場合の改修費を算出する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の接地改修案策定システムにおいて、前記記憶手段は、各地点の緯度と経度とにより土壌の大地抵抗率をそれぞれ記憶し、前記処理手段は、接地不良箇所の緯度と経度とを、前記記憶手段から調べ、調べた地点に対応する大地抵抗率を前記記憶手段から調べ、調べた大地抵抗率を連結式接地工法による改修費を算出する際に用いる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、低い金額の工法を自動で選択するので、接地改修案を策定するための業務を簡素化することが可能である。
【0013】
請求項2の発明によれば、電柱の設置地点が緯度と経度とで表されているので、所定範囲に設置されている電柱の抽出を、容易にかつ正確に行うことができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、緯度・経度で表されている各地点の大地抵抗率を用いるので、連結式接地工法による改修費の算出の際に、大地抵抗率の推測精度をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1による接地改修案策定システムを示す構成図である。
【図2】測定データの一例を示す図である。
【図3】電柱位置データの一例を示す図である。
【図4】単価データの一例を示す図であり、図4(a)は連結式工法単価データを示す図、図4(b)は連接式工法単価データを示す図である。
【図5】大地抵抗率データの一例を示す図である。
【図6】測定箇所一覧データの一例を示す図である。
【図7】接地改修案策定処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】接地改修案策定処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】測定箇所一覧データの一例を示す図である。
【図10】現地改修箇所データと更新ボタンとの一例を示す図である。
【図11】データが入力された現地改修箇所データの一例を示す図である。
【図12】データが入力された測定箇所一覧データの一例を示す図である。
【図13】改修費の一例を示す図である。
【図14】制限を受けた改修費の一例を示す図である。
【図15】連結式接地工法による工事金額の算出例を示す図である。
【図16】金額比較データの一例を示す図である。
【図17】実施の形態2で用いられる大地抵抗率データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0017】
(実施の形態1)
この実施の形態による接地改修案策定システムは、図1に示すように、管理端末1と、接地抵抗定期点検システム2と、配電地図情報システム3と、データベースサーバ4とを備えている。管理端末1と接地抵抗定期点検システム2と配電地図情報システム3とデータベースサーバ4とは、通信ネットワークNWによってデータ通信可能に接続されている。
【0018】
接地抵抗定期点検システム2は、接地抵抗値の定期点検を行うときに使用されるシステムである。接地抵抗定期点検システム2は、定期点検で得られた接地抵抗の測定値を記録していく。例えば、現地で測定された各電柱の接地抵抗値等を記録していく。つまり、接地抵抗定期点検システム2は、接地抵抗の測定値の最新の測定データを記録している。接地抵抗定期点検システム2が記録している測定データの一例を図2に示す。図2の測定データには、接地抵抗の測定値の他にも、測定した日付を表す測定年月、配電線の線路名、配電線を支持する電柱の識別情報である電柱番号、電柱に設置されている電気設備の機器名、接地工事の種別を表す接地種別、接地の方法を表す接地方式、接地抵抗の規定値、接地抵抗の測定値、測定値の良否を表す判定などがある。なお、図2は、測定データの一部を示したものである。
【0019】
配電地図情報システム3は、配電系統の情報を地図および航空写真上で表すデータ(以下、「地図データ」という)を記憶している。この地図データには、配電線の情報や電柱の位置の情報を含む、配電線に関連する各種の情報が示されている。そして、例えば、緯度・経度を指定することにより、配電地図情報システム3は、管理端末1により指定された緯度・経度周辺の地図および航空写真を表す地図データを、この管理端末1に出力することもできる。
【0020】
データベースサーバ4は、配電線等に関する各種のデータを記録している。データベースサーバ4が記憶しているデータには、電柱位置データがある。電柱位置データは、電柱が設置されている位置を、緯度・経度で表したものである。この電柱位置データの一例を図3に示す。図3の電柱位置データには、電柱が設置されている電線の線路名、電柱の電柱番号、電柱の位置を表す緯度および経度が記録されている。なお、図3は、電柱位置データの一部を示したものである。
【0021】
データベースサーバ4が記憶しているデータには、単価データがある。単価データには、連結式工法単価データと連接式工法単価データとがある。連結式工法単価データは、各地質や連結式接地工法に応じた工事の単価が記録されている。連結式工法単価データの一例を図4(a)に示す。図4(a)の連結式工法単価データには、粘土等の地質と、連結式接地工法等の工法に応じた、接地極が1極当たりの工事単価が1極単価として記録されている。また、連接式工法単価データの一例を図4(b)に示す。図4(b)の連接式工法単価データには、1つの架空共同地線を使用する場合の径間の単価や、接地極打増の場合における1極の単価が記録されている。
【0022】
データベースサーバ4が記憶しているデータには、大地抵抗率データがある。大地抵抗率データは、土壌の固有抵抗の値を表している。大地抵抗率データの一例を図5に示す。図5の大地抵抗率データには、粘土等の地質の大地抵抗率が、平野部等の地域に応じて記録されている。つまり、平野部は固有抵抗値が低く、中山間部は固有抵抗値が高く、山間部は固有抵抗値が特に高い。また、地質によっても、固有抵抗値が異なるので、大地抵抗率データでは、地域毎に地質が定義されて、大地抵抗率の推測精度が向上されている。
【0023】
管理端末1は、各種のデータから接地改修案を策定するためのコンピュータである。管理端末1は、入力部11と、表示部12と、処理部13と、記憶部14と、通信部15とを備えている。入力部11は、担当者により操作されるキーボードのような、データを入力するための装置である。表示部12は、処理部13の制御により、接地改修案の策定に関連する各種のデータを表示するLCD(液晶ディスプレイ)などのような表示装置である。通信部15は、処理部13の制御によって、通信ネットワークNWを経て、接地抵抗定期点検システム2、配電地図情報システム3およびデータベースサーバ4とデータの送受信を行う通信装置である。
【0024】
記憶部14は、各種のデータを記憶する記憶装置である。記憶部14は、接地改修案策定処理のプログラムをあらかじめ記憶している。また、記憶部14は、前回作成した測定箇所一覧データを記憶している。測定箇所一覧データは、各電柱におけるデータを一覧にしたものである。この測定箇所一覧データの一例を図6に示す。この測定箇所一覧データには、データの測定年月日、配電線の線路名、線路に設置されている電柱の電柱番号、電柱に設置されている機器名、接地種別、接地方式、接地抵抗の規定値、接地抵抗の測定値、接地抵抗の判定結果、電柱が設置されている箇所の地目および地質などが記録されている。
【0025】
処理部13は、記憶部14に記憶されているプログラムを実行する。処理部13が実行するプログラムには、測定箇所一覧データ(例えば図6)を更新する更新処理がある。処理部13は更新処理を定期的に行う。このときに更新されるデータは、測定箇所一覧データの中の、地目や地質などのような、電柱の設置箇所に関するデータである。
【0026】
処理部13が実行するプログラムには、接地改修案策定処理がある。処理部13は、このプログラムを実行すると、図7および図8に示す接地改修案策定処理を開始する。以下では、接地改修案策定処理について、この実施の形態による作用と併せて説明する。
【0027】
処理部13は、接地改修案策定処理を開始すると、接地抵抗定期点検システム2から接地抵抗の測定データを取得する(ステップS1)。ステップS1で、処理部13は、通信部15を制御し、通信ネットワークNWを経て、接地抵抗定期点検システム2を参照することで、接地抵抗の測定データを読み出す。この後、取得した測定データを基に測定箇所一覧データを更新して新たな測定箇所一覧データを作成する(ステップS2)。ステップS2で作成される測定箇所一覧データは、例えば記憶部14に記憶されている前回の測定箇所一覧データを、ステップS1で取得した測定データで、処理部13が更新したものである。更新された測定箇所一覧データの一例を図9に示す。この測定箇所一覧データには、記憶部14が記憶している前回の測定箇所一覧データ(図6)に対して、接地群工事で改修する範囲である「接地群」を表す欄が設けられている。そして、測定箇所一覧データの測定年/月〜判定までのデータが、ステップS1で取得した測定データで更新され、図9の測定箇所一覧データが作成されている。
【0028】
処理部13は、ステップS2の後、測定箇所一覧データ中の判定の欄に、不良があるかどうかを判断する(ステップS3)。もし、測定箇所一覧データの判定の欄に不良がないと、処理部13は接地改修案策定処理を終了する。
【0029】
ステップS4で判定に不良があると、処理部13は、不良と判定された電柱、つまり接地不良箇所を中心とした周辺の電柱を抽出する(ステップS4)。ステップS4で、処理部13は、最新の測定箇所一覧データを参照して、接地不良箇所の電柱の電柱番号を調べる。処理部13は、電柱番号を調べると、通信ネットワークNWを経てデータベースサーバ4の電柱位置データを参照し、接地不良箇所の電柱番号を基に、この電柱番号に対応する緯度・経度を調べる。処理部13は、緯度・経度を調べると、所定範囲に設置されている電柱として、接地不良箇所の緯度・経度を中心にして、所定半径以内に設置されている電柱の緯度・経度を、電柱位置データを参照して調べる。処理部13は、所定半径内に設置されている電柱の緯度・経度を調べると、緯度・経度に対応する電柱の電柱番号を調べて、電柱を抽出する。これにより、電柱の抽出を容易にかつ正確に行うことができる。
【0030】
ステップS4が終了すると、処理部13は、所定半径以内に設置されている電柱に対応する部分を強調するために、さらに、接地不良箇所を強調するために、測定箇所一覧データに対して強調処理を行う(ステップS5)。ステップS5では、強調処理として、例えば、所定半径以内に設置されている電柱に対応する行の色と、接地不良箇所の色とを異なるようにする等のように、各種の方法がある。こうした強調処理により、測定箇所一覧データが表示されたときに、所定半径以内に設置されている電柱を含む行と、接地不良箇所の電柱を含む行とを、可視化することができる。なお、この実施の形態では、行番号は、上から順に、測定箇所一覧データの行に対して付けられた番号である。先の図9の場合には、電柱番号が002である電柱を含む行が、最初の行番号1となる。
【0031】
この後、処理部13は、表示部12を制御して、測定箇所一覧データを表示する(ステップS6)。ステップS6では、例えば先に示した図9による測定箇所一覧データが表示部12に表示される。ステップS6の後、処理部13は表示された接地不良箇所についての、現地改修箇所データに対する入力を待つ(ステップS7)。ステップS7で、処理部13は、例えば図10に示す現地改修箇所データと更新ボタンとを表示部12に表示する。図10の現地改修箇所データでは、接地不良箇所の行の番号を入力する欄が行番号であり、接地不良箇所である電柱が設置されている場所を入力する欄が地域である。さらに、現地改修箇所データにより、電柱に設置されている電気設備、種別、規定値、測定値、電柱が設置されている箇所の地目、地質、工法が連結式接地である場合の打増可能距離、極間隔を表示する欄である。そして、ステップS7で、現地改修箇所データの行番号の欄に対する入力を待つ。
【0032】
さらに、ステップS7で、処理部13は次のようにしてもよい。処理部13は、通信ネットワークNWを経て配電地図情報システム3を参照し、ステップS7で入力された行番号に対応する電柱の緯度・経度により、この緯度・経度周辺の地図データを、配電地図情報システム3から取得する。そして、処理部13は、取得した地図データを基に、配電線や電柱が示されている地図や航空写真を、表示部12を制御して表示する。こうした地図データを表示することにより、担当者による接地不良箇所の視認およびデータの変更を容易にすることができる。
【0033】
ステップS7の後、行番号や地域が入力部11に入力されると、処理部13は、測定箇所一覧データの該当する接地不良箇所のデータを基に、現地改修箇所データの電気設備〜極間距離の各欄に、データを記録して現地改修箇所データを測定箇所一覧データと共に表示する(ステップS8)。ステップS8により表示される現地改修箇所データの一例を図11に示す。なお、データの手動による変更も可能である。処理部13は、ステップS8で接地不良箇所の行番号と地域が入力されて、更新ボタンが選択されると、現地改修箇所データを記憶部14に保存し(ステップS9)、未選択の接地不良箇所があるかどうかを判断する(ステップS10)。ステップS10で未選択の接地不良箇所があると、処理部13は処理をステップS7に戻す。また、ステップS10で未選択の接地不良箇所がなければ、処理部13は現地改修箇所データの表示を終了する(ステップS11)。ステップS11により、表示部12には測定箇所一覧データだけが表示される。
【0034】
ステップS11が終了すると、処理部13は、測定箇所一覧データの接地群の欄に対する入力を待つ(ステップS12)。ここで、例えば図12に示すように、番号13の入力で指定された各列に対応する電柱を、1つの接地群とする。接地群が入力されると、処理部13は、接地群が入力された測定箇所一覧データを基に、連接式接地工法による接地抵抗値を計算すると共に改修費を計算する(ステップS13)。例えば図12の測定箇所一覧データでは、判定で不良とされた電柱のアースが2箇所ある。処理部13は、測定箇所一覧データの接地種別や接地方式などを参照して、この2つの接地不良箇所を含む接地群の電柱のアースを連接した場合の改修費を、データベースサーバ4の連接式工法単価データ(例えば図4(b))を参照して算出する。この場合、接地群の4つの電柱には、接地方式が共用であるものが2つあるので、連接する箇所は2箇所となる。この2箇所を連接した場合の接地抵抗値が規定値以下であると、処理部13は、改修費を連接式工法単価データ(例えば図4(b))の径間の単価から算出する。
【0035】
ステップS13が終了すると、処理部13は、連結式接地工法による改修費を計算する(ステップS14)。ステップS14で、処理部13は、ステップS9で保存した現地改修箇所データを基に、連結式工法単価データや大地抵抗率データを用いて、改修費を計算する。例えば、処理部13は、現地改修箇所データ(例えば図11)の地域や地質により、大地抵抗率データ(例えば図5)から大地抵抗率を調べる。この後、この大地抵抗率、接地極である電極の長さや直径から、1極当たりの接地抵抗を算出する。算出した接地抵抗から、接地極を連結した場合の合成接地抵抗を算出し、合成接地抵抗が規定値以下の改修費を算出する。この実施の形態では、あらかじめ、極数が5極以下に設定されている。
【0036】
こうして、連結式接地工法の各工法、例えば接地抵抗低減のための薬剤を使用しない工法や薬剤を使用する工法等において、合成抵抗が規定値以下の改修費が算出される。この算出された改修費の一例を図13に示す。さらに、処理部13は、現地改修箇所データ(図11)による制約があれば、この制約を図13の改修費に反映して、図14の改修費を得る。この場合、現地改修箇所データの地目の欄が田であるので、接地抵抗低減のための薬剤を使用する低減有の改修費(ハッチング部分)が制約される。こうして算出した改修費を基に、連結式接地工法により算出された工事金額の例を図15に示す。図15では、電柱番号008の極数が5とされ、電柱番号021の極数が3とされている。
【0037】
この後、処理部13は、ステップS13とステップS14とで計算した改修費を表す金額比較データを作成する(ステップS15)。金額比較データは、連接式接地工法による改修費と、連結式接地工法による合計の改修費とを表すデータであり、その一例を図16に示す。図16の金額比較データは、ステップS13で算出した、連接式接地工法による工事金額、つまり、連接式工法単価データ(図4(b))を基に算出した工事金額と、ステップS14で測定箇所一覧データ(図15)に記録された、連結式接地工法による工事金額とを表している。
【0038】
ステップS15が終了すると、処理部13は、連接式接地工法による改修費と、連結式接地工法による改修費とを比較し(ステップS16)、価格の低い改修費の工法を推奨工法として選択する(ステップS17)。処理部13は、ステップS17で、例えば推奨工法の強調表示を行って、推奨工法であることを示す。先の図16の金額比較データの場合には、連接式接地工法による改修費が40000円であり、連結式接地工法による改修費が72000円であるので、処理部13は、価格の低い連接式接地工法を推奨工法とする。ステップS17が終了すると、処理部13は、表示部12を制御して、ステップS15〜S17で作成した金額比較データを表示して(ステップS18)、接地改修案策定処理を終了する。
【0039】
こうして、処理部13は、接地改修案の推奨工法を提示する。
【0040】
この実施の形態によれば、連結式接地工法と連接式接地工法の中から、改修金額を基準にした最適な工法を選択することができる。この結果、低い金額の工法がシステムにより自動で選択されるので、接地改修案を策定するための業務を簡素化することができる。また、管理端末1は、接地抵抗定期点検システム2の測定データを用いて接地改修案を策定する処理を行うので、現地での最新抵抗値を基にした工法の選択を可能にする。さらに、電柱の緯度・経度を利用することにより、連接式接地工法で必要とする電柱であって、接地不良箇所の周辺に設置されている電柱を、自動的に抽出することを可能にする。
【0041】
(実施の形態2)
この実施の形態では、大地抵抗率データとして次のものを用いている。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。この実施の形態で用いる大地抵抗率データは、各地点に対応したものである。この大地抵抗率データの一例を図17に示す。図17の大地抵抗率データでは、緯度・経度で指定される地点の大地抵抗率が記録されている。こうした緯度・経度による大地抵抗率データがデータベースサーバ4に記憶されている。
【0042】
そして、この実施の形態では、接地改修案策定処理のステップS14で、処理部13は、測定箇所一覧データ(例えば図12)に示されている、接地不良箇所の電柱番号に対応する緯度・経度を、データベースサーバ4の電柱位置データを参照して調べる。この後、処理部13は、大地抵抗率データ(例えば図17)を参照して、緯度・経度に対応する大地抵抗率を調べる。処理部13は、こうして得た大地抵抗率を用いて、1極当たりの接地不良箇所周辺の接地抵抗を算出する。
【0043】
この実施の形態によれば、緯度・経度により各地点の大地抵抗率を表しているので、大地抵抗率の推測精度をより一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 管理端末
11 入力部
12 表示部
13 処理部
14 記憶部
15 通信部
2 接地抵抗定期点検システム
3 配電地図情報システム
4 データベースサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱に設けられている電気設備の接地抵抗値を定期的に測定して測定データとして記録している接地抵抗定期点検システムを利用する接地改修案策定システムであって、
各地点の土壌の大地抵抗率をそれぞれ記憶している記憶手段と、
前記接地抵抗定期点検システムから最新の測定データを読み出して接地抵抗値が規定値を超えているかどうかを調べ、この規定値を超えている接地不良箇所があると、この接地不良箇所の大地抵抗率を前記記憶手段により調べ、前記記憶手段から得た大地抵抗率を基にした連結式接地工法で前記接地不良箇所を改修した場合の改修費を算出すると共に連接式接地工法でこの接地不良箇所を改修した場合の改修費を算出し、これらの改修費の中で最も低価格の改修費の工法を選択する処理手段と、
を備えることを特徴とする接地改修案策定システム。
【請求項2】
前記記憶手段は、各電柱が設置されている地点の緯度と経度とをそれぞれ記憶し、
前記処理手段は、接地不良箇所の緯度と経度とを前記記憶手段により調べ、この接地不良箇所の緯度と経度とから、所定範囲に設置されている電柱を前記記憶手段により調べ、この接地不良箇所から所定範囲に設置されている電柱を基に連接式接地工法で改修した場合の改修費を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の接地改修案策定システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、各地点の緯度と経度とにより土壌の大地抵抗率をそれぞれ記憶し、
前記処理手段は、接地不良箇所の緯度と経度とを、前記記憶手段から調べ、調べた地点に対応する大地抵抗率を前記記憶手段から調べ、調べた大地抵抗率を連結式接地工法による改修費を算出する際に用いる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の接地改修案策定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−109615(P2013−109615A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254722(P2011−254722)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】