接木苗処理用切断装置
【課題】接木処理用の台木と穂木のそれぞれについて、高精度の切断によって、接合固定時に切断面を正確に密接することができ、接木苗の接合不良を回避して歩留まり率を向上することができる接木苗処理用切断装置を提供する。
【解決手段】接木苗処理用切断装置は、カッター部23L,23Rと苗保持手段14L,14Rとから構成され、上記カッター部23L,23Rは、苗保持手段14L,14Rに近接して胚軸Sを苗保持位置の近傍部位で切断する進出位置から後退移動可能にスライド支持部22L,22Rによって支持するとともに、苗保持位置から見て胚軸Sの切断部位より先の部分を上記進出位置にて押圧する押圧部材32L,32Rを備え、この押圧部材32L,32Rの押圧力により、同苗保持手段14L,14Rの側に押し付けるようにして胚軸の押圧部分を位置決めするものである。
【解決手段】接木苗処理用切断装置は、カッター部23L,23Rと苗保持手段14L,14Rとから構成され、上記カッター部23L,23Rは、苗保持手段14L,14Rに近接して胚軸Sを苗保持位置の近傍部位で切断する進出位置から後退移動可能にスライド支持部22L,22Rによって支持するとともに、苗保持位置から見て胚軸Sの切断部位より先の部分を上記進出位置にて押圧する押圧部材32L,32Rを備え、この押圧部材32L,32Rの押圧力により、同苗保持手段14L,14Rの側に押し付けるようにして胚軸の押圧部分を位置決めするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接木苗処理装置において台木と穂木とを接木接合するためにそれぞれの苗を切断する接木苗処理用切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接木苗処理装置は、特許文献1の例(図1)の如く、左右配置の苗受ホルダである側部供給台にそれぞれ供給保持された台木苗と穂木苗を左右の搬送ハンドが中央の接合固定部まで旋回搬送するそれぞれの搬送行程の途中に左右の切断処理部を配置して構成され、それぞれの切断処理部では、搬送ハンドによって苗が切断処理部に臨んだ位置で回転式カッターが作動するように構成したものが知られている。
【0003】
切断処理部については、台木と穂木のそれぞれについて、回転式カッターのカッター軌跡の調節により、搬送ハンドからの距離、切断面高さ位置、切断面傾斜角度を設定することができる。したがって、左右それぞれ搬送ハンドに挟持した苗の胚軸を拘束端の直近位置で切断し、次の接合固定部において両切断面を合わせた上でクリップで接合固定することにより、全自動接木苗処理が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−7033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、台木と穂木のそれぞれについて、切断処理部のカッター軌跡を細かく調節することによっても、切断面が不安定で台木と穂木の接合固定時に両切断面間が密接せず、接木苗の接合不良を生じるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、台木と穂木のそれぞれについて、高精度の切断によって、接合固定時に切断面を正確に合わせることができ、接木苗の接合不良を回避して歩留まり率を向上することができる接木苗処理用切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
所定のカッター軌跡C,Eによって切断動作する刃31L,31Rを備えるカッター部23L,23Rと、そのカッター軌跡C,E上の所定位置に接木処理用の苗の胚軸Sを縦姿勢で保持する苗保持手段14L,14Rとからなる接木苗処理用切断装置において、上記カッター部23L,23Rは、苗保持手段14L,14Rに近接して胚軸Sを苗保持位置の近傍部位で切断する進出位置から後退移動可能にスライド支持部22L,22Rによって支持するとともに、苗保持位置から見て胚軸Sの切断部位より先の部分を上記進出位置にて押圧する押圧部材32L,32Rを備え、この押圧部材32L,32Rの押圧力により、同苗保持手段14L,14Rの側に押し付けるようにして胚軸の押圧部分を位置決めすることを特徴とする。
所定のカッター軌跡によって切断動作する刃を備えるカッター部と、そのカッター軌跡上の所定位置に接木処理用の苗の胚軸を保持する苗保持手段とからなる接木苗処理用切断装置において、上記カッター部は、苗保持手段に近接して切断動作する進出位置から後退移動可能にスライド支持部によって支持するとともに、胚軸の切断部位より先の部分を上記進出位置にて押圧する押圧部材を備え、この押圧部材の押圧力により、同苗保持手段の側に押し付けるようにして胚軸の押圧部分を位置決めすることを特徴とする。
【0008】
上記カッター部は、所定のカッター軌跡によって切断動作することから、このカッター部に臨んで搬送ハンドにより苗を挟持して保持することにより苗の胚軸がカッター軌跡に交叉する部分で切断され、また、カッター部は、スライド支持部を介して進退移動可能で、かつ、搬送ハンドから延びる胚軸の切断部位より先の部分を上記進出位置で押圧部材によって押圧することから、切断動作に際してカッター部を進出位置まで前進移動させることにより、カッター部に備えた押圧部材が共に搬送ハンドに向かって前進動作し、この押圧部材が進出位置において搬送ハンドから延びる胚軸の切断位置より先の部分を押圧し、搬送ハンド側に胚軸を押し付けるようにして位置決めする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下の効果を奏する。
請求項1の構成により、上記接木苗処理用切断装置は、苗保持手段によって保持された苗の胚軸の切断部位の先の部分がカッター部の前進動作に伴って押圧部材により位置決めされ、この胚軸について苗保持手段から押圧部分までの間でカッター部が切断動作することから、カッター軌跡に沿った高精度の切断面を形成することができる。その結果、台木と穂木の接合固定時に切断面を正確に合わせることができ、接木苗の接合不良を回避して歩留まり率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】接木苗製造装置の要部平面図
【図2】接木苗製造装置の側面図
【図3】中継部の要部拡大平面図
【図4】前後方向(a)および左右方向(b)の整列動作説明図
【図5】別の整列部材の拡大平面図
【図6】前後方向(a)および左右方向(b)の別の整列動作説明図
【図7】事前処理の行程の平面図
【図8】中継部における動作説明図
【図9】把持ハンドの側面図
【図10】取出し動作の開始時(a)と終了時(b)動作図
【図11】中継部の供給ハンド(a)および補助ハンド(b)の構成図
【図12】受け渡し動作の工程図
【図13】受け渡し第2工程の平面図(a)および側面図(b)
【図14】受け渡し第3工程(a)および第4工程(b)
【図15】把持ハンド12の進退動作(a)(b)の平面図
【図16】操作パネル41の外観図
【図17】進退制御処理のフローチャート
【図18】横移送行程の要部平面図
【図19】事前整列部51は、図19の拡大正面図
【図20】動作説明図(a)〜(d)
【図21】中継部の平面図(a)および側面図(b)
【図22】接木苗処理装置の全体構成の平面図(a)および側面図(b)
【図23】接木処理部の保護カバーを外した要部平面図(a)および正面図(b)
【図24】切断部の平面図(a)および正面図(b)
【図25】左の切断部のA矢視図を伴う側面図
【図26】右の切断部のB矢視図を伴う側面図
【図27】台木苗の切断部の動作説明図(a〜e)
【図28】穂木苗の切断部の動作説明図(a〜d)
【図29】穂木苗の苗供給台上半部の拡大平面図(a)および正面図(b)
【図30】穂木苗の苗供給台下半部のS1−S1線断面図を伴う側面図
【図31】台木苗の苗供給台の側面図(a)と正面図(b)
【図32】旋回搬送部の正面図(a)と側面図(b)
【図33】接合固定部の平面図(a)と側面図(b)
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
まず、発明の適用対象となる接木苗処理装置である接木苗製造装置の全体構成について説明する。
図1及び図2は接木苗製造装置1の右半部の平面図と側面図である。
接木苗製造装置1は、穂木と台木を接ぎ木する接木ロボット本体1aを中心に、その両側(図1は右半部のみを手前側に示す)で接木用苗を個別取込みする左右の取込部2,2と、この取込部2,2から受けた接木用苗をそれぞれ前処理する左右の前処理部3,3と、前処理された穂木および台木を受けて接着する接着処理部7および接着された接木苗を機体前側に送出する接木苗送出部8を配置して左右を略対称に構成される。また、左右の取込部2,2と左右の前処理部3,3のそれぞれの間には、接木用苗Wを受け渡しするために一時的に保持する左右の中継部9,9を配置する。
【0012】
機体の左右両側の構成における穂木を取扱う側(図例は右側)について説明すると、取込部2は、穂木苗Wを前側に順次搬入移送する搬入機構11と、この搬入機構11上の穂木苗Wを穂木として個別に把持して取出す把持ハンド12と、この把持ハンド12を左右方向に移動可能に支持する横移送機構13等を備える。
【0013】
詳細には、上記搬入機構11は、接木ロボット本体1aの側方に沿って移送動作するベルトコンベヤ等により構成し、双葉状に子葉を展開する状態まで苗ポットに育成した多数の穂木苗W…を格子配列したセルトレイをその配列ピッチで送り動作することにより、穂木苗Wを所定位置に搬入する。
把持ハンド12は、搬入機構11上の穂木苗Wを個別に把持しつつ胚軸の株元側をカットし、その胚軸を起立姿勢で回動可能に遊間把持動作し、また、搬入機構11や中継部9との受け渡しのために進退機構12bを介設して進退動作可能に構成する。
横移送機構13は、搬入機構11を横断して中継部9の正面に臨む位置までの範囲で把持ハンド12を左右に位置制御可能とするリニアスライダー等により構成する。この横移送機構13により、把持ハンド12は、把持した苗を接木ロボット本体1aに供給する横断移送把持ハンドとして機能する。
【0014】
上記中継部9には、その拡大平面図を図3に示すように、把持ハンド12から受けた穂木苗Wを開閉可能に挟持する開閉保持機構である供給ハンド9aを備えるとともに、把持ハンド12から穂木苗Wを受取る際にその子葉L、Lの展開軸線方向を規制する子葉整列部材16を設ける。この子葉整列部材16は、中継部9に対して取付け位置の選択が可能に構成し、把持ハンド12から受ける苗の子葉L、Lと干渉してその展開軸線方向を所定角度に揃える整列部17,18を備える。
【0015】
具体的には、子葉整列部材16は、平面視で90度の角度差を有する2つの取付け位置から選択して取付けビス16aによって中継部9に固定可能に構成し、その取付け位置に応じて子葉の展開軸線方向を中継部9の前後方向に揃える前後方向整列部17と、左右方向に揃える左右方向整列部18を同子葉整列部材16の前後位置に形成する。
【0016】
前後方向整列部17は、中継部9の手前側に離間して位置する傾斜部17aから同中継部9の側部に前後に延びる板状体であり、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に傾斜部17aを案内として子葉L、Lの側端縁を前後方向整列部17と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9のの前後方向に揃えるものである。上記前後方向整列部17は、胚軸Aとの距離を調節可能に構成することにより、子葉の大きさの異なる穂木苗に対応することができる。
【0017】
左右方向整列部18は、中継部9の左右方向に広がる板状体で左右の後退傾斜部18aを中央に突出して構成され、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の傾斜部18aを案内として子葉L、Lの前端縁を左右方向整列部18と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃えるものである。
【0018】
上記構成の子葉整列部材16は、子葉展開軸線方向を中継部9の前後方向に揃える際は、図4(a)の動作説明図に示すように、前後方向整列部17を使用するべく中継部9の側部位置に縦長に取付けることにより、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に、傾斜部17aを案内として子葉Lの側端縁を前後方向整列部17と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の正面方向に揃えることができる。
【0019】
この前後方向整列部17は、穂木と台木の展開軸線関係が90度差の接木処理に適用し、すなわち、胚軸の断面形状が正方形または円形に近い苗、例えば、キュウリ苗、メロン苗について、その子葉展開方向を90度差とすることにより、各子葉に太陽光が当たるように接木苗を製造処理することができる。
【0020】
また、子葉展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃える際は、図4(b)の動作説明図に示すように、左右方向整列部18を使用するべく中継部9の横断位置に取付けることにより、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の傾斜部18aを案内として子葉L、Lの前端縁を左右方向整列部18と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃えることができる。
【0021】
この左右方向整列部18は、穂木と台木の展開軸線関係が一致する接木処理に適用し、すなわち、胚軸の断面形状が楕円形の苗、例えば、スイカ苗について、子葉展開軸線の方向を一致させることにより、穂木と台木の接合面積が最大になるようにして接木苗を製造処理することができる。
【0022】
このように、子葉整列部材16の取付け位置を切替えることによって2つの整列部17,18の一方が選択され、穂木または台木の子葉展開軸線方向を切替えることができるので、上記接木苗製造装置は、取付け位置を選択しうる子葉整列部材による簡易な構成により、双葉状に展開する子葉を有する各種の苗について、揃えるべき展開軸線方向を切替えて汎用的に能率良く接木処理することができる。
【0023】
また、子葉整列部材の別の構成例として、拡大平面図を図5に示すとおり、子葉整列部材21は、平面視で90度の角度差を有する2つの取付け位置から選択して取付けビスによって中継部9に固定可能に構成し、その取付け位置に応じて子葉の展開軸線方向を中継部9の前後方向に揃える前後方向整列部22と、左右方向に揃える左右方向整列部23を同子葉整列部材21の前後の位置に形成する。
【0024】
前後方向整列部22は、中継部9の手前側に離間して位置するローラー22aを備えて同中継部9の側部に延びる板状体であり、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗Wを受ける際にローラー22aを案内として子葉Lの側端縁を前後方向整列部22と接触させることにより、子葉展開軸線方向を中継部9の前後方向に揃えるものである。この前後方向整列部22は、子葉の接触位置を調節可能に構成することにより、子葉の大きさの異なる穂木苗に対応することができる。
【0025】
左右方向整列部23は、中央を突出して中継部9の左右方向に後退傾斜する板状体であり、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の傾斜を案内としつつ子葉の前端縁を同左右方向整列部18と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃えるものである。この左右方向整列部23は、子葉の接触位置を調節可能に構成することにより、子葉の大きさの異なる穂木苗に対応することができる。
【0026】
上記構成の子葉整列部材21は、前記子葉整列部材16と同様に、子葉展開軸線方向を中継部9の正面方向に揃える際は、図6(a)の動作説明図に示すように、前後方向整列部22を使用するべく中継部9の側部位置に縦長に取付けるとともに、把持ハンド12に添うように前後方向に延びる板状体からなる後述の前後方向整列部材14を固定して前後方向のストッパとする。この前後方向整列部材14の先端位置にはローラー14aを設けて子葉を案内する。
【0027】
把持ハンド12を前進させて中継部9がその正面から穂木苗を受ける際は、把持ハンド12の脇位置に固定した前後方向整列部材14をストッパとして子葉L、Lの展開軸線方向を縦方向に案内し、次いで中継部9のローラー22aが案内として子葉L、Lの側端縁を前後方向整列部22と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の正面方向に揃えることができる。
【0028】
また、子葉展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃える際は、図6(b)の動作説明図に示すように、左右方向整列部23を使用するべく中継部9の横断位置に取付けることにより、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の傾斜を案内として子葉Lの前端縁を左右方向整列部23と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃えることができる。
【0029】
このように、上記子葉整列部材21は、前述の子葉整列部材16と同様に、その取付け位置を切替えることによって2つの整列部22,23の一方が選択され、穂木または台木の子葉展開軸線方向を切替えることができるので、上記接木苗製造装置は、取付け位置を選択しうる子葉整列部材による簡易な構成により、双葉状に展開する子葉を有する各種の苗について、揃えるべき展開軸線方向を切替えて汎用的に能率良く接木処理することができる。
【0030】
(中間整列部)
上記中継部9における苗の受け渡しの前段階においては、中間整列部を設けて同中継部9における子葉整列に先立って事前に子葉を前後方向に整列するために事前処理を行う。
この事前処理の行程は、一連の工程の平面図を図7に示すように、中間整列部材31を把持ハンド12の横移送終端位置に設ける。この中間整列部材31は、把持ハンド12の横移送の動作方向から見て左右方向に広がる板状体で左右の後退傾斜部31aを中央に突出して前述の左右方向整列部18と同様に構成し、この中間整列部材31がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の後退傾斜部31aを案内として子葉L、Lの前端縁が接触することによりその展開軸線方向を同中間整列部材31の左右方向、すなわち、中継部9の前後方向に揃えるものである。
【0031】
上記中間整列部材31を使用した穂木苗Wの子葉整列方法は、把持ハンド12の脇位置に子葉L、Lと干渉して前後方向に整列する予備整列用の前後方向整列部材14を固定し、また、前後方向整列部17を選択するように子葉整列部材16を中継部9に取付けた上で、把持ハンド12が搬入機構11上の穂木苗Wを個別に把持して横移送機構13により最高速度で横移送終端位置の中間整列部材31まで横移動P1を行い、次いで中継部9の正面位置まで戻るように横移動P2を行い、そこから、進退機構12bによって把持ハンド12を中継部9まで前進移動P3を行う。
【0032】
この一連の過程において、上記中間整列部材31によって穂木苗の子葉L、Lを中継部9の前後方向に整列することができるので、中継部9においてスムーズに前後方向整列が可能となる。なお、上記横移送機構13は、中間整列部材31の直前で低速に制御し、また、中間整列部材31は、使用しない場合に待避位置まで昇降可能に構成する。
【0033】
(揺動整列)
上記中継部9において子葉を前後方向に整列する際は、図8の動作説明図に示すように、中継部9において前後方向に子葉L、Lを整列するために、2つのガイド板として前後方向整列部材14と前後方向整列部22を配置し、それぞれのローラー14a,22aを近接させた状態で、把持ハンド12の揺動移送動作行い、すなわち、把持ハンド12の前進P11と後退動作P12の後に再度の前進動作P13によって把持ハンド12の穂木苗を中継部9に受け渡す。
【0034】
従来のキュウリ苗の整列は、苗を取出した後に横移送機構13により中継部9の位置を通り抜けて搬送方向終点に設けた整列板に移送させて整列を行い、再び中継部9の位置に戻すことによって移送距離が長く、移送回数が増えることによる起動ロス時間もあり、処理速度が遅く、かつ、整列方向が異なるスイカとキュウリで違うプログラムが必要であったが、上記揺動移送制御により、処理速度の向上、プログラムの汎用化、横移送ストロークの短縮によるコストダウンが可能となる。
【0035】
(予備整列)
苗の取出しの際の展開子葉の予備整列の際は、図9に側面図を示すように、引き起こしレバー12uを合わせて把持ハンド12により育苗トレイから苗を取出し、把持ハンド12の側方の上位位置に取付けた前後方向整列部材14とローラー14aとによって葉の方向、高さ制御を行う。その取出し動作の開始時(a)と終了時(b)の状態を図10に示すように、前後方向整列部材14は、回転する子葉L、Lを停止位置決めするストッパとして機能し、その前方位置で把持ハンド12による苗の引き戻し時に子葉Lが当たる位置にローラー14aを配置して穂木苗Wの子葉L、Lの予備整列を行う。
【0036】
従来、キュウリやメロンの穂木の整列は、横移送機構13のリニアアクチュエータへの接触による方法を採用していたが、台木用の揺動工程がなく、低速での接触のため、上記前後方向整列部材14により、ある程度の子葉方向を合わせる予備整列が可能となる。
【0037】
(中継部の受け渡し制御)
上記中継部9における受け渡し動作については、苗の整列方向を維持するために、中継部9について図11(a)(b)にそれぞれ示すように、苗の保持高さ調整可能に胚軸Aを遊間保持する半円形または左右の半円による円形の隙間を形成した供給ハンド9aと、その下方で胚軸Aを接触保持する補助ハンド9bを設け、把持ハンド12とその下方の切断ハンド12aを含めて図12の受け渡し動作工程図に示すように、第1〜第5の工程により動作制御する。
【0038】
すなわち、把持ハンド12、切断ハンド12aにて保持(第1工程)した穂木苗Wを図13の受け渡し時の平面図(a)および側面図(b)に示すように中継部9の供給ハンド9a、補助ハンド9bで把持(第2工程)し、次に、図14(a)に示すように把持ハンド12、切断ハンド12aを開いて苗を受け渡し(第3工程)、その後に図14(b)に示すように補助ハンドの開閉を1度行う(第4工程)ことにより苗の高さ位置決めを行い、再び供給ハンド9a、補助ハンド9bの2個で把持(第5工程)して次工程を待つように動作制御する。
【0039】
従来は、把持ハンド12から供給ハンド9aへの受け渡しの際には、補助ハンド9bを開にしておき、把持ハンド12の開と補助ハンド9bの閉を同期させていた。その場合は、苗の受け渡し時に穂木苗は供給ハンド9aの広いスリットでフリーの状態になり、把持ハンド12に子葉がくっついていた際に、せっかく整列された子葉方向が変動を受ける事態が発生していたが、上記動作手順の制御により子葉方向の揃え精度を向上することができる。
【0040】
また、穂木苗は台木苗ほどシビアな高さ決めが必要がなく、その台木苗については上下のハンドを共に苗に接触して下方のハンドをシリンダによって引き下ろしをする位置決め工程が適用されるが、穂木苗は細く弱いことから適用できないことから、上記方法によって穂木苗の高さ決めが可能となる。
【0041】
(徒長苗の整列制御)
徒長苗や曲がりの多い苗を取扱う場合は、子葉方向を確実に揃えるために、図15に示す把持ハンド12の進退動作(a)(b)を通常より多く、例えば、通常の2回に対して3回とし、その切替えは、図16の操作パネル41の外観図に示すように、「通常」スイッチ41aと「徒長」スイッチ41bのモード選択で行い(スタートスイッチを押すときに、モードが選ばれてないときはスタートスイッチへの入力を不可とする。)、把持ハンド12の受け渡しの前に、図17のフローチャートに示す進退制御処理により、モードに応じて把持ハンド12を「通常」は2回、「徒長」は3回の進退動作をさせる。
【0042】
従来は、胚軸長さに関係なく2回の往復動作による揺動を行っており、その場合は受け渡し時に徒長苗が落ちきらずに供給不良になることがあったが、上記のモード選択により、そのような事態を防止でき、苗適応性の向上、高さ基準の精度向上が可能となる。なお、セル内の苗長さ(胚軸長)が65mm以上である場合に徒長モードの利用とし、その場合に、短い苗について徒長モードで利用したとしても、処理速度の低下を除き、問題は生じない。
【0043】
(左右方向整列の事前整列)
左右方向整列の場合の事前整列については、図18の要部平面図に示すように、横移送機構13による移動方向に添って子葉L、Lを左右方向に整列する事前整列部51を設ける。この事前整列部51は、図19の拡大正面図に示すように、整列板52と反転ローラー53を備え、その反転ローラー53の支点部53aを苗の硬さによって当たり具合を可変させるバネ構成とする。
【0044】
上記構成の事前整列部51は、苗の子葉の位置が整列方向と相違していた場合に、図20の動作説明図(a)〜(d)に示すように、搬送途中で回転させるためのガイド役を担うローラー53に苗の子葉Lが触れると、苗が反転するとともに同ローラー53が斜め後方に揺れるため、反転の力点が支点から遠くなり、苗へのダメージが低減される。
【0045】
特に、方向が90°違っていたり子葉Lがローラー53に向いている苗については、従来の固定ローラー53では移動による力がもろに支点にかかって苗にダメージを受けるという事態を上記構成の事前整列部51によって回避することができる。なお、ローラの後方にストッパを設けることにより、一定の大きさ(揺れ)以上の苗には、ローラを固定化することも可能である。
【0046】
(中継部整列板)
中継部9には、図21の平面図(a)および側面図(b)に示すように、その前後方向に子葉を整列する整列板61を把持ハンド12の高さ位置まで延ばして設け、子葉のガイドとなる面に合成樹脂ラバー62を貼付する。また、苗を移送する把持ハンド12には整列板61に面する先端部12cをR形状とし、把持ハンド12がその開動作途中で停止するようにその高さ位置に合成樹脂ラバー62を配置する。
【0047】
上記構成の整列板61は、従来の構成による把持ハンド12の側方の開閉動作スペースとしての隙間を要しないので、そのような隙間に子葉が入り込んで発生する整列不良や把持ハンド12の前後方向動作時の子葉損傷を防止して子葉の整列精度を向上することができる。
【0048】
次に、上記接木苗処理装置における発明の詳細を示すべく新たに構成した実施の形態について、それぞれの構成部材に新たに付した参照符号により説明する。
接木苗処理装置は、その全体構成の平面図(a)および側面図(b)を図22に示すように、中央に配置されて台木苗と穂木苗の接合を自動的に行う接木ロボットによる接木処理部1と、左右の外側位置で台木苗、穂木苗のセルトレイをそれぞれ搬入するコンベヤによる左右の搬入部2,3と、接木処理部1の後部から接合固定用のクリップを供給するクリップ供給部1aと、接木処理部1の正面から前方に延びて接合処理済の接木苗を排出する接木送出部4とから構成され、左右の搬入部2,3からセルトレイの台木苗、穂木苗を横断移送動作する不図示の横断移送把持ハンドにより接木処理部1に受け、それぞれの切断と両者の接合による接木苗をクリップ供給部1aのクリップで固定することにより、接木送出部4から接木苗を送出する。
【0049】
(接木処理部)
本実施の形態の接木処理部1について詳細に説明すると、保護カバーを外した要部平面図(a)および正面図(b)を図23に示すように、左半側を台木取扱部、右半側を穂木取扱部とし、左右の側端部に搬入部2,3から不図示の横断移送機構を介して台木苗、穂木苗をそれぞれ受けて保持する左右の苗供給台11L,11R、後部のクリップ供給部1aから受けるクリップにより台木と穂木とを中央位置で接合固定する接合固定部13を配置し、この接合固定部13まで各苗供給台11L,11Rからそれぞれ苗を挟持する搬送ハンド14aを先端に備えて旋回移送する左右の旋回アームによる旋回搬送部14L,14Rと、その旋回行程にそれぞれ介設して切断動作するカッターによる左右の切断部16L,16Rを接木処理部1の前端部に配置して構成する。また、台木用の左の切断部16Lの上方に子葉押さえ用のローラアーム17を設ける。符号18L,18Rは第2整列板、符号19L,19Rは昇降シリンダ、符号20は断根装置である。
【0050】
(切断部)
左右の切断部16L,16Rは、図24の平面図(a)および正面図(b)に示すように、それぞれ、左右に並んで起立する2つの支柱21L,21Rに取付けるためのカッターベース22L,22Rと、所定のカッター軌跡で切断動作するカッター部23L,23Rと、このカッター部23L,23Rを切断動作の都度、進退動作させるスライド支持部24L,24Rとから構成する。
【0051】
左右の各切断部のそれぞれについて詳細に説明すると、一方の台木苗を切断する左の切断部16Lは、図25のA矢視図を伴う側面図に示すように、カッター部23Lは、奥側の旋回搬送部14Lの側に傾斜して上昇方向に直線状のカッター軌跡Cで切断動作する剃刀状の刃31Lを先端に備えるとともに、スライド支持部24Lによりカッター部23Lが前進して切断動作をする進出位置において切断対象物を押圧固定するための押圧部材32Lを備える。
【0052】
この押圧部材32Lは、旋回搬送部14Lによって保持された切断対象物の切断部位より先の部分、すなわち、カッター軌跡の交叉部を越える部分を押圧固定する位置に配置する。また、スライド支持部24Lは、高さ調節部24aと角度調節部24bを備えてカッター部23Lの高さ位置と進出方向Dを調節可能に構成する。このカッター部23Lの切断動作に対応して上方からスポンジローラ17aで子葉を押さえるように、ローラアーム17をロータリーアクチュエータによって連動回動可能に構成する。
【0053】
また、刃31Lを挟んで切断対象物と反対側には、切断された不要な葉を受けて一定方向に飛ばすための板ばね状のガイド33と、その落下点の近傍にあるシリンダを保護する透明カバー34とを設け、シリンダへの葉の混入を防止しつつ、同シリンダの動作を目視可能に構成する。前記ガイド33は、苗の胚軸に対して刃31Lの切断軌跡よりも更に傾斜しており、切断により切断方向(上方向)に移動しようとする不要な葉の一部を受けることにより、不要な葉を切断軌跡に対してガイド33とは反対側の斜め下方に排出しようとするものである。
【0054】
他方の穂木苗を切断する右の切断部16Rは、図26のB矢視図を伴う側面図に示すように、カッター部23Rは、奥側の旋回搬送部14Rの側に傾斜して下降方向に直線状のカッター軌跡Eで切断動作する剃刀状の刃31Rを先端に備えるとともに、スライド支持部24Rによりカッター部23Rが前進して切断動作をする進出位置において切断対象物を押圧固定するための押圧部材32Rを備える。
【0055】
この押圧部材32Rは、旋回搬送部14Rによって保持された切断対象物の切断部位より先の部分、すなわち、カッター軌跡の交叉部を越える部位を押圧固定する位置に配置する。また、スライド支持部24Rは、高さ調節部24aと角度調節部24bを備えてカッター部23Rの高さ位置と進出方向Fを調節可能に構成する。
【0056】
上記構成を有する左右の切断部のそれぞれの切断動作について詳細に説明すると、一方の台木苗の切断部16Lの動作説明図(a〜e)を図27に示すように、手順1(a)は、旋回搬送部14Lが搬送ハンド14aの苗を後退位置のカッター部23Lに臨んで位置決めし、手順2(b)は、スライド支持部24Lによりカッター部23Lが進出位置に前進して押圧部材32Lが切断部位より先の部分を位置決めし、手順3(c)は、ローラアーム17のスポンジローラ17aの回動で胚軸受14bに子葉を押さえ、手順4(d)は、カッター部23Lの刃31Lが胚軸のカッター軌跡の交叉部を切断し、手順5(e)は、スライド支持部24Lによりカッター部23Lが後退することにより切断が終了する。
【0057】
他方の穂木苗の切断部16Rの動作説明図(a〜d)を図28に示すように、手順1(a)は、旋回搬送部14Rが搬送ハンド14aの苗を後退位置のカッター部23Rに臨んで位置決めし、手順2(b)は、スライド支持部24Rによりカッター部23Rが進出位置に前進して押圧部材32Rが切断部位より先の部分を位置決めし、手順3(c)は、カッター部23Rの刃31Rが胚軸のカッター軌跡の交叉部を切断し、手順4(d)は、スライド支持部24Rによりカッター部23Rが後退することにより切断が終了する。
【0058】
このように、上記カッター部23L,23Rは、それぞれスライド支持部24L,24Rを介して進退移動可能で、その進出位置で所定のカッター軌跡C,Eの切断動作をすることにより、このカッター部23L,23Rに臨んで旋回搬送部14L,14Rに挟持した苗について、その胚軸がカッター軌跡に交叉する部分で切断され、この時、カッター部23L,23Rの進出動作によって押圧部材32L,32Rが前進し、旋回搬送部14L,14Rに挟持した苗の切断部位より先の部分を保持側に押し付けるように押圧することにより切断対象物が位置決めされた上で切断が行われる。
【0059】
したがって、上記接木苗処理用切断装置は、旋回搬送部14L,14Rによる苗保持手段によって保持された苗の胚軸の切断部位の先の部分が押圧部材32L,32Rにより位置決めされ、この胚軸Sについて苗保持手段から押圧部分までの間でカッター部の刃31L,31Rが切断動作することから、カッター軌跡C,Eに沿った高精度の切断面を形成することができる。その結果、台木と穂木の接合固定時に切断面を正確に合わせることができ、接木苗の接合不良を回避して歩留まり率を向上することができる。
【0060】
(穂木苗供給台)
右側の穂木苗の苗供給台11Rには、その上半部拡大平面図(a)および正面図(b)を図29に示すように、ハンドの開閉時に可動するシャッター41にウェイト41aを設けることにより、シャッター41に子葉を当てて子葉の向きを修正することにより苗を整列させるとき、苗の子葉の大きさに応じてシャッター41をウエイト41aの重力に抗して上部の支点回りに回動させて苗に適合させることができる。そして、苗が供給されていないときや子葉が小さくて回動する必要がないときは、ウエイト41aによりシャッター41が所望の設定位置に戻る。苗の強度や種類に応じてウエイト41aウエイト41aを着脱又は交換することにより、重量を調整することもできる。
【0061】
また、穂木苗を苗供給台11Rに受け渡す際に実施する子葉方向制御においては、スイカとキュウリのように、90°の角度差で別方向へ子葉整列を行う必要があるので、スイカの場合は、苗供給台11Rに設けた整列板42と、上下動作する接木装置に設けた第二整列板18R(図23参照)との2枚の間で子葉方向を整列し、キュウリは、苗供給台11Rの整列板42のR部への接触によって子葉方向を整列し、その切替えを操作パネルで設定可能に構成する。
【0062】
具体的には、スイカ苗等の両方の整列板18R,42で整列させる場合は、横断移送把持ハンドの左右移動の終端で苗の子葉が第二整列板に当たることで、予備的に子葉が左右方向へ向くように修正され、その後の把持ハンドの前後往復移動で整列板42に子葉が複数回接触して苗の子葉の向きを揃える。
【0063】
キュウリやメロン等の整列板42のみで整列させる場合は、苗の子葉が予めセルトレイの長手方向に向くように予め播種して、育苗された苗は略セルトレイの長手方向に向いているので、昇降シリンダ(図23参照、図23(b)は第二整列板が退避位置を示す。)の作動により第二整列板18Rを上昇させて、把持ハンドの左右移動による苗の移送領域から第二整列板18Rを退避させ、把持ハンドの前後往復移動でシャッター41に子葉が複数回接触して苗の子葉の向きを揃える。操作パネルで前記昇降シリンダ19Rを作動させて、第二整列板18Rを作用位置と退避位置とに切り替える構成である。
【0064】
また、苗供給台に苗を受け渡しする際の苗の姿勢制御のための揺動動作については、穂木は高さ方向、台木は子葉方向を重点にして苗を姿勢制御するために、左右の苗供給台11L,11Rで必要な揺動回数が異なるので、操作パネルによって個別に揺動回数を設定できるように構成する。
【0065】
また、左右の苗供給台11L,11Rの整列板を下部が苗側(横断移送把持ハンド側)で上部がその反対側に位置するよう傾斜させ、苗を受ける際に苗の子葉方向を揃える際に、揺動動作の繰り返しに伴って苗が下方へ移動(高さ制御が実施)されることによって苗の子葉の向きの許容範囲が狭まるように構成してもよい。これにより、揺動動作の繰り返しに伴って徐々に所望の向きに苗の子葉を揃えることができ、整列板で急激に苗の子葉の向きを変更することで苗を損傷させるようなことを防止できる。
【0066】
穂木苗の苗供給台11Rは、その下半部のS1−S1線断面図を伴う側面図を図30に示すように、供給ハンド51と補助ハンド52の2段に構成し、横断移送把持ハンドの揺動動作の後、該横断移送把持ハンドが苗供給台11Rへ供給した苗を供給ハンド51と補助ハンド52が把持するのであるが、その後の旋回搬送部14Rによる苗の移送のために、供給ハンド51と補助ハンド52の把持を旋回搬送部14Rのハンドが苗を把持するために伸長を始めた時点で解除する。従って、供給ハンド51と補助ハンド52の把持を解除してから旋回搬送部14Rの把持ハンドが把持するまでの間に苗の姿勢が不適正になり、胚軸の位置がずれるおそれがある。
【0067】
そこで、旋回搬送部14Rの把持ハンドが苗を受取る時(受け渡しのための補助ハンド52が開放される)に胚軸の位置がずれないように苗の姿勢を制御するための穂木苗ガイド53を設ける。この穂木苗ガイド53は、ハンドが苗を把持する前の旋回搬送部14Rが苗供給台11Rへ向いたときに作用状態となり、旋回搬送部14Rが苗を把持して苗供給台11R部分から完全に離れたときに非作用状態となり、旋回搬送部14Rによる苗の移送の支障とならないように苗に対して旋回搬送部14Rとは反対側から作用し、横断移送把持ハンドから苗供給台11Rへ苗を供給するときにはその支障とならないように非作用状態となる。
【0068】
台木苗の苗供給台11Lは、その側面図(a)と正面図(b)を図31に示すように、一対の引下げハンド61とプレート62にシリンダ63を連結して苗高さを揃える引下ろし機構を備え、台木苗を中心に挟んで近接のシリンダ63の対向側にガイド64を設け、引き下ろしの速度、引き下ろし時に苗に掛かる抵抗を一定化させるように構成する。シリンダ63は苗供給台11Lに供給される台木苗に対してクリップ供給部1a側に設けられているので、その他方側から移動して苗供給台11Lへ苗を供給する横断移送把持ハンドに干渉しないように構成できる。
【0069】
(旋回搬送部)
旋回搬送部14Lは、その正面図(a)と側面図(b)を図32に示すように、搬送ハンド14aの下方にシリンダ72aによって伸縮自在の苗ガイド72を設けた上で、この苗ガイド72は、伸張状態で苗供給台11Lからの受け取り時に苗の胚軸に接触して苗の位置決めガイドとなり、そのまま苗の胚軸に接触した状態で切断時には苗の胚軸の曲がり防止及び位置ズレ防止となり、断根時に苗の胚軸の逃げ防止の当て板となり、接合時に縮小状態となり苗から離れる。
【0070】
(接合固定部)
接合固定部13には、その平面図(a)と側面図(b)を図33に示すように、ロータリーアクチュエータ81の回転を受ける押さえ板82aを介して動作可能のガイド82(台木苗の断根装置20(図23参照)と反対側)を接合センター基準となる穂木側から設けることにより、供給されたクリップの先端にガイド82が接触する構成とし、クリップ掛け時の苗及びクリップの位置ズレを修正および防止する修正ガイドを構成する。
【符号の説明】
【0071】
1 接木処理部
13 接合固定部
14L,14R 旋回搬送部
14a 搬送ハンド
14b 胚軸受
16L,16R 切断部
17 ローラアーム
17a スポンジローラ
21L,21R 支柱
22L,22R カッターベース
23L,23R カッター部
24L,24R スライド支持部
31L,31R 刃
32L,32R 押圧部材
C,E カッター軌跡
D,F 進出方向
S 胚軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、接木苗処理装置において台木と穂木とを接木接合するためにそれぞれの苗を切断する接木苗処理用切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接木苗処理装置は、特許文献1の例(図1)の如く、左右配置の苗受ホルダである側部供給台にそれぞれ供給保持された台木苗と穂木苗を左右の搬送ハンドが中央の接合固定部まで旋回搬送するそれぞれの搬送行程の途中に左右の切断処理部を配置して構成され、それぞれの切断処理部では、搬送ハンドによって苗が切断処理部に臨んだ位置で回転式カッターが作動するように構成したものが知られている。
【0003】
切断処理部については、台木と穂木のそれぞれについて、回転式カッターのカッター軌跡の調節により、搬送ハンドからの距離、切断面高さ位置、切断面傾斜角度を設定することができる。したがって、左右それぞれ搬送ハンドに挟持した苗の胚軸を拘束端の直近位置で切断し、次の接合固定部において両切断面を合わせた上でクリップで接合固定することにより、全自動接木苗処理が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−7033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、台木と穂木のそれぞれについて、切断処理部のカッター軌跡を細かく調節することによっても、切断面が不安定で台木と穂木の接合固定時に両切断面間が密接せず、接木苗の接合不良を生じるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、台木と穂木のそれぞれについて、高精度の切断によって、接合固定時に切断面を正確に合わせることができ、接木苗の接合不良を回避して歩留まり率を向上することができる接木苗処理用切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
所定のカッター軌跡C,Eによって切断動作する刃31L,31Rを備えるカッター部23L,23Rと、そのカッター軌跡C,E上の所定位置に接木処理用の苗の胚軸Sを縦姿勢で保持する苗保持手段14L,14Rとからなる接木苗処理用切断装置において、上記カッター部23L,23Rは、苗保持手段14L,14Rに近接して胚軸Sを苗保持位置の近傍部位で切断する進出位置から後退移動可能にスライド支持部22L,22Rによって支持するとともに、苗保持位置から見て胚軸Sの切断部位より先の部分を上記進出位置にて押圧する押圧部材32L,32Rを備え、この押圧部材32L,32Rの押圧力により、同苗保持手段14L,14Rの側に押し付けるようにして胚軸の押圧部分を位置決めすることを特徴とする。
所定のカッター軌跡によって切断動作する刃を備えるカッター部と、そのカッター軌跡上の所定位置に接木処理用の苗の胚軸を保持する苗保持手段とからなる接木苗処理用切断装置において、上記カッター部は、苗保持手段に近接して切断動作する進出位置から後退移動可能にスライド支持部によって支持するとともに、胚軸の切断部位より先の部分を上記進出位置にて押圧する押圧部材を備え、この押圧部材の押圧力により、同苗保持手段の側に押し付けるようにして胚軸の押圧部分を位置決めすることを特徴とする。
【0008】
上記カッター部は、所定のカッター軌跡によって切断動作することから、このカッター部に臨んで搬送ハンドにより苗を挟持して保持することにより苗の胚軸がカッター軌跡に交叉する部分で切断され、また、カッター部は、スライド支持部を介して進退移動可能で、かつ、搬送ハンドから延びる胚軸の切断部位より先の部分を上記進出位置で押圧部材によって押圧することから、切断動作に際してカッター部を進出位置まで前進移動させることにより、カッター部に備えた押圧部材が共に搬送ハンドに向かって前進動作し、この押圧部材が進出位置において搬送ハンドから延びる胚軸の切断位置より先の部分を押圧し、搬送ハンド側に胚軸を押し付けるようにして位置決めする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下の効果を奏する。
請求項1の構成により、上記接木苗処理用切断装置は、苗保持手段によって保持された苗の胚軸の切断部位の先の部分がカッター部の前進動作に伴って押圧部材により位置決めされ、この胚軸について苗保持手段から押圧部分までの間でカッター部が切断動作することから、カッター軌跡に沿った高精度の切断面を形成することができる。その結果、台木と穂木の接合固定時に切断面を正確に合わせることができ、接木苗の接合不良を回避して歩留まり率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】接木苗製造装置の要部平面図
【図2】接木苗製造装置の側面図
【図3】中継部の要部拡大平面図
【図4】前後方向(a)および左右方向(b)の整列動作説明図
【図5】別の整列部材の拡大平面図
【図6】前後方向(a)および左右方向(b)の別の整列動作説明図
【図7】事前処理の行程の平面図
【図8】中継部における動作説明図
【図9】把持ハンドの側面図
【図10】取出し動作の開始時(a)と終了時(b)動作図
【図11】中継部の供給ハンド(a)および補助ハンド(b)の構成図
【図12】受け渡し動作の工程図
【図13】受け渡し第2工程の平面図(a)および側面図(b)
【図14】受け渡し第3工程(a)および第4工程(b)
【図15】把持ハンド12の進退動作(a)(b)の平面図
【図16】操作パネル41の外観図
【図17】進退制御処理のフローチャート
【図18】横移送行程の要部平面図
【図19】事前整列部51は、図19の拡大正面図
【図20】動作説明図(a)〜(d)
【図21】中継部の平面図(a)および側面図(b)
【図22】接木苗処理装置の全体構成の平面図(a)および側面図(b)
【図23】接木処理部の保護カバーを外した要部平面図(a)および正面図(b)
【図24】切断部の平面図(a)および正面図(b)
【図25】左の切断部のA矢視図を伴う側面図
【図26】右の切断部のB矢視図を伴う側面図
【図27】台木苗の切断部の動作説明図(a〜e)
【図28】穂木苗の切断部の動作説明図(a〜d)
【図29】穂木苗の苗供給台上半部の拡大平面図(a)および正面図(b)
【図30】穂木苗の苗供給台下半部のS1−S1線断面図を伴う側面図
【図31】台木苗の苗供給台の側面図(a)と正面図(b)
【図32】旋回搬送部の正面図(a)と側面図(b)
【図33】接合固定部の平面図(a)と側面図(b)
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
まず、発明の適用対象となる接木苗処理装置である接木苗製造装置の全体構成について説明する。
図1及び図2は接木苗製造装置1の右半部の平面図と側面図である。
接木苗製造装置1は、穂木と台木を接ぎ木する接木ロボット本体1aを中心に、その両側(図1は右半部のみを手前側に示す)で接木用苗を個別取込みする左右の取込部2,2と、この取込部2,2から受けた接木用苗をそれぞれ前処理する左右の前処理部3,3と、前処理された穂木および台木を受けて接着する接着処理部7および接着された接木苗を機体前側に送出する接木苗送出部8を配置して左右を略対称に構成される。また、左右の取込部2,2と左右の前処理部3,3のそれぞれの間には、接木用苗Wを受け渡しするために一時的に保持する左右の中継部9,9を配置する。
【0012】
機体の左右両側の構成における穂木を取扱う側(図例は右側)について説明すると、取込部2は、穂木苗Wを前側に順次搬入移送する搬入機構11と、この搬入機構11上の穂木苗Wを穂木として個別に把持して取出す把持ハンド12と、この把持ハンド12を左右方向に移動可能に支持する横移送機構13等を備える。
【0013】
詳細には、上記搬入機構11は、接木ロボット本体1aの側方に沿って移送動作するベルトコンベヤ等により構成し、双葉状に子葉を展開する状態まで苗ポットに育成した多数の穂木苗W…を格子配列したセルトレイをその配列ピッチで送り動作することにより、穂木苗Wを所定位置に搬入する。
把持ハンド12は、搬入機構11上の穂木苗Wを個別に把持しつつ胚軸の株元側をカットし、その胚軸を起立姿勢で回動可能に遊間把持動作し、また、搬入機構11や中継部9との受け渡しのために進退機構12bを介設して進退動作可能に構成する。
横移送機構13は、搬入機構11を横断して中継部9の正面に臨む位置までの範囲で把持ハンド12を左右に位置制御可能とするリニアスライダー等により構成する。この横移送機構13により、把持ハンド12は、把持した苗を接木ロボット本体1aに供給する横断移送把持ハンドとして機能する。
【0014】
上記中継部9には、その拡大平面図を図3に示すように、把持ハンド12から受けた穂木苗Wを開閉可能に挟持する開閉保持機構である供給ハンド9aを備えるとともに、把持ハンド12から穂木苗Wを受取る際にその子葉L、Lの展開軸線方向を規制する子葉整列部材16を設ける。この子葉整列部材16は、中継部9に対して取付け位置の選択が可能に構成し、把持ハンド12から受ける苗の子葉L、Lと干渉してその展開軸線方向を所定角度に揃える整列部17,18を備える。
【0015】
具体的には、子葉整列部材16は、平面視で90度の角度差を有する2つの取付け位置から選択して取付けビス16aによって中継部9に固定可能に構成し、その取付け位置に応じて子葉の展開軸線方向を中継部9の前後方向に揃える前後方向整列部17と、左右方向に揃える左右方向整列部18を同子葉整列部材16の前後位置に形成する。
【0016】
前後方向整列部17は、中継部9の手前側に離間して位置する傾斜部17aから同中継部9の側部に前後に延びる板状体であり、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に傾斜部17aを案内として子葉L、Lの側端縁を前後方向整列部17と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9のの前後方向に揃えるものである。上記前後方向整列部17は、胚軸Aとの距離を調節可能に構成することにより、子葉の大きさの異なる穂木苗に対応することができる。
【0017】
左右方向整列部18は、中継部9の左右方向に広がる板状体で左右の後退傾斜部18aを中央に突出して構成され、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の傾斜部18aを案内として子葉L、Lの前端縁を左右方向整列部18と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃えるものである。
【0018】
上記構成の子葉整列部材16は、子葉展開軸線方向を中継部9の前後方向に揃える際は、図4(a)の動作説明図に示すように、前後方向整列部17を使用するべく中継部9の側部位置に縦長に取付けることにより、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に、傾斜部17aを案内として子葉Lの側端縁を前後方向整列部17と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の正面方向に揃えることができる。
【0019】
この前後方向整列部17は、穂木と台木の展開軸線関係が90度差の接木処理に適用し、すなわち、胚軸の断面形状が正方形または円形に近い苗、例えば、キュウリ苗、メロン苗について、その子葉展開方向を90度差とすることにより、各子葉に太陽光が当たるように接木苗を製造処理することができる。
【0020】
また、子葉展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃える際は、図4(b)の動作説明図に示すように、左右方向整列部18を使用するべく中継部9の横断位置に取付けることにより、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の傾斜部18aを案内として子葉L、Lの前端縁を左右方向整列部18と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃えることができる。
【0021】
この左右方向整列部18は、穂木と台木の展開軸線関係が一致する接木処理に適用し、すなわち、胚軸の断面形状が楕円形の苗、例えば、スイカ苗について、子葉展開軸線の方向を一致させることにより、穂木と台木の接合面積が最大になるようにして接木苗を製造処理することができる。
【0022】
このように、子葉整列部材16の取付け位置を切替えることによって2つの整列部17,18の一方が選択され、穂木または台木の子葉展開軸線方向を切替えることができるので、上記接木苗製造装置は、取付け位置を選択しうる子葉整列部材による簡易な構成により、双葉状に展開する子葉を有する各種の苗について、揃えるべき展開軸線方向を切替えて汎用的に能率良く接木処理することができる。
【0023】
また、子葉整列部材の別の構成例として、拡大平面図を図5に示すとおり、子葉整列部材21は、平面視で90度の角度差を有する2つの取付け位置から選択して取付けビスによって中継部9に固定可能に構成し、その取付け位置に応じて子葉の展開軸線方向を中継部9の前後方向に揃える前後方向整列部22と、左右方向に揃える左右方向整列部23を同子葉整列部材21の前後の位置に形成する。
【0024】
前後方向整列部22は、中継部9の手前側に離間して位置するローラー22aを備えて同中継部9の側部に延びる板状体であり、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗Wを受ける際にローラー22aを案内として子葉Lの側端縁を前後方向整列部22と接触させることにより、子葉展開軸線方向を中継部9の前後方向に揃えるものである。この前後方向整列部22は、子葉の接触位置を調節可能に構成することにより、子葉の大きさの異なる穂木苗に対応することができる。
【0025】
左右方向整列部23は、中央を突出して中継部9の左右方向に後退傾斜する板状体であり、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の傾斜を案内としつつ子葉の前端縁を同左右方向整列部18と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃えるものである。この左右方向整列部23は、子葉の接触位置を調節可能に構成することにより、子葉の大きさの異なる穂木苗に対応することができる。
【0026】
上記構成の子葉整列部材21は、前記子葉整列部材16と同様に、子葉展開軸線方向を中継部9の正面方向に揃える際は、図6(a)の動作説明図に示すように、前後方向整列部22を使用するべく中継部9の側部位置に縦長に取付けるとともに、把持ハンド12に添うように前後方向に延びる板状体からなる後述の前後方向整列部材14を固定して前後方向のストッパとする。この前後方向整列部材14の先端位置にはローラー14aを設けて子葉を案内する。
【0027】
把持ハンド12を前進させて中継部9がその正面から穂木苗を受ける際は、把持ハンド12の脇位置に固定した前後方向整列部材14をストッパとして子葉L、Lの展開軸線方向を縦方向に案内し、次いで中継部9のローラー22aが案内として子葉L、Lの側端縁を前後方向整列部22と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の正面方向に揃えることができる。
【0028】
また、子葉展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃える際は、図6(b)の動作説明図に示すように、左右方向整列部23を使用するべく中継部9の横断位置に取付けることにより、中継部9がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の傾斜を案内として子葉Lの前端縁を左右方向整列部23と接触させることにより、その展開軸線方向を中継部9の左右方向に揃えることができる。
【0029】
このように、上記子葉整列部材21は、前述の子葉整列部材16と同様に、その取付け位置を切替えることによって2つの整列部22,23の一方が選択され、穂木または台木の子葉展開軸線方向を切替えることができるので、上記接木苗製造装置は、取付け位置を選択しうる子葉整列部材による簡易な構成により、双葉状に展開する子葉を有する各種の苗について、揃えるべき展開軸線方向を切替えて汎用的に能率良く接木処理することができる。
【0030】
(中間整列部)
上記中継部9における苗の受け渡しの前段階においては、中間整列部を設けて同中継部9における子葉整列に先立って事前に子葉を前後方向に整列するために事前処理を行う。
この事前処理の行程は、一連の工程の平面図を図7に示すように、中間整列部材31を把持ハンド12の横移送終端位置に設ける。この中間整列部材31は、把持ハンド12の横移送の動作方向から見て左右方向に広がる板状体で左右の後退傾斜部31aを中央に突出して前述の左右方向整列部18と同様に構成し、この中間整列部材31がその正面から把持ハンド12によって穂木苗を受ける際に左右の後退傾斜部31aを案内として子葉L、Lの前端縁が接触することによりその展開軸線方向を同中間整列部材31の左右方向、すなわち、中継部9の前後方向に揃えるものである。
【0031】
上記中間整列部材31を使用した穂木苗Wの子葉整列方法は、把持ハンド12の脇位置に子葉L、Lと干渉して前後方向に整列する予備整列用の前後方向整列部材14を固定し、また、前後方向整列部17を選択するように子葉整列部材16を中継部9に取付けた上で、把持ハンド12が搬入機構11上の穂木苗Wを個別に把持して横移送機構13により最高速度で横移送終端位置の中間整列部材31まで横移動P1を行い、次いで中継部9の正面位置まで戻るように横移動P2を行い、そこから、進退機構12bによって把持ハンド12を中継部9まで前進移動P3を行う。
【0032】
この一連の過程において、上記中間整列部材31によって穂木苗の子葉L、Lを中継部9の前後方向に整列することができるので、中継部9においてスムーズに前後方向整列が可能となる。なお、上記横移送機構13は、中間整列部材31の直前で低速に制御し、また、中間整列部材31は、使用しない場合に待避位置まで昇降可能に構成する。
【0033】
(揺動整列)
上記中継部9において子葉を前後方向に整列する際は、図8の動作説明図に示すように、中継部9において前後方向に子葉L、Lを整列するために、2つのガイド板として前後方向整列部材14と前後方向整列部22を配置し、それぞれのローラー14a,22aを近接させた状態で、把持ハンド12の揺動移送動作行い、すなわち、把持ハンド12の前進P11と後退動作P12の後に再度の前進動作P13によって把持ハンド12の穂木苗を中継部9に受け渡す。
【0034】
従来のキュウリ苗の整列は、苗を取出した後に横移送機構13により中継部9の位置を通り抜けて搬送方向終点に設けた整列板に移送させて整列を行い、再び中継部9の位置に戻すことによって移送距離が長く、移送回数が増えることによる起動ロス時間もあり、処理速度が遅く、かつ、整列方向が異なるスイカとキュウリで違うプログラムが必要であったが、上記揺動移送制御により、処理速度の向上、プログラムの汎用化、横移送ストロークの短縮によるコストダウンが可能となる。
【0035】
(予備整列)
苗の取出しの際の展開子葉の予備整列の際は、図9に側面図を示すように、引き起こしレバー12uを合わせて把持ハンド12により育苗トレイから苗を取出し、把持ハンド12の側方の上位位置に取付けた前後方向整列部材14とローラー14aとによって葉の方向、高さ制御を行う。その取出し動作の開始時(a)と終了時(b)の状態を図10に示すように、前後方向整列部材14は、回転する子葉L、Lを停止位置決めするストッパとして機能し、その前方位置で把持ハンド12による苗の引き戻し時に子葉Lが当たる位置にローラー14aを配置して穂木苗Wの子葉L、Lの予備整列を行う。
【0036】
従来、キュウリやメロンの穂木の整列は、横移送機構13のリニアアクチュエータへの接触による方法を採用していたが、台木用の揺動工程がなく、低速での接触のため、上記前後方向整列部材14により、ある程度の子葉方向を合わせる予備整列が可能となる。
【0037】
(中継部の受け渡し制御)
上記中継部9における受け渡し動作については、苗の整列方向を維持するために、中継部9について図11(a)(b)にそれぞれ示すように、苗の保持高さ調整可能に胚軸Aを遊間保持する半円形または左右の半円による円形の隙間を形成した供給ハンド9aと、その下方で胚軸Aを接触保持する補助ハンド9bを設け、把持ハンド12とその下方の切断ハンド12aを含めて図12の受け渡し動作工程図に示すように、第1〜第5の工程により動作制御する。
【0038】
すなわち、把持ハンド12、切断ハンド12aにて保持(第1工程)した穂木苗Wを図13の受け渡し時の平面図(a)および側面図(b)に示すように中継部9の供給ハンド9a、補助ハンド9bで把持(第2工程)し、次に、図14(a)に示すように把持ハンド12、切断ハンド12aを開いて苗を受け渡し(第3工程)、その後に図14(b)に示すように補助ハンドの開閉を1度行う(第4工程)ことにより苗の高さ位置決めを行い、再び供給ハンド9a、補助ハンド9bの2個で把持(第5工程)して次工程を待つように動作制御する。
【0039】
従来は、把持ハンド12から供給ハンド9aへの受け渡しの際には、補助ハンド9bを開にしておき、把持ハンド12の開と補助ハンド9bの閉を同期させていた。その場合は、苗の受け渡し時に穂木苗は供給ハンド9aの広いスリットでフリーの状態になり、把持ハンド12に子葉がくっついていた際に、せっかく整列された子葉方向が変動を受ける事態が発生していたが、上記動作手順の制御により子葉方向の揃え精度を向上することができる。
【0040】
また、穂木苗は台木苗ほどシビアな高さ決めが必要がなく、その台木苗については上下のハンドを共に苗に接触して下方のハンドをシリンダによって引き下ろしをする位置決め工程が適用されるが、穂木苗は細く弱いことから適用できないことから、上記方法によって穂木苗の高さ決めが可能となる。
【0041】
(徒長苗の整列制御)
徒長苗や曲がりの多い苗を取扱う場合は、子葉方向を確実に揃えるために、図15に示す把持ハンド12の進退動作(a)(b)を通常より多く、例えば、通常の2回に対して3回とし、その切替えは、図16の操作パネル41の外観図に示すように、「通常」スイッチ41aと「徒長」スイッチ41bのモード選択で行い(スタートスイッチを押すときに、モードが選ばれてないときはスタートスイッチへの入力を不可とする。)、把持ハンド12の受け渡しの前に、図17のフローチャートに示す進退制御処理により、モードに応じて把持ハンド12を「通常」は2回、「徒長」は3回の進退動作をさせる。
【0042】
従来は、胚軸長さに関係なく2回の往復動作による揺動を行っており、その場合は受け渡し時に徒長苗が落ちきらずに供給不良になることがあったが、上記のモード選択により、そのような事態を防止でき、苗適応性の向上、高さ基準の精度向上が可能となる。なお、セル内の苗長さ(胚軸長)が65mm以上である場合に徒長モードの利用とし、その場合に、短い苗について徒長モードで利用したとしても、処理速度の低下を除き、問題は生じない。
【0043】
(左右方向整列の事前整列)
左右方向整列の場合の事前整列については、図18の要部平面図に示すように、横移送機構13による移動方向に添って子葉L、Lを左右方向に整列する事前整列部51を設ける。この事前整列部51は、図19の拡大正面図に示すように、整列板52と反転ローラー53を備え、その反転ローラー53の支点部53aを苗の硬さによって当たり具合を可変させるバネ構成とする。
【0044】
上記構成の事前整列部51は、苗の子葉の位置が整列方向と相違していた場合に、図20の動作説明図(a)〜(d)に示すように、搬送途中で回転させるためのガイド役を担うローラー53に苗の子葉Lが触れると、苗が反転するとともに同ローラー53が斜め後方に揺れるため、反転の力点が支点から遠くなり、苗へのダメージが低減される。
【0045】
特に、方向が90°違っていたり子葉Lがローラー53に向いている苗については、従来の固定ローラー53では移動による力がもろに支点にかかって苗にダメージを受けるという事態を上記構成の事前整列部51によって回避することができる。なお、ローラの後方にストッパを設けることにより、一定の大きさ(揺れ)以上の苗には、ローラを固定化することも可能である。
【0046】
(中継部整列板)
中継部9には、図21の平面図(a)および側面図(b)に示すように、その前後方向に子葉を整列する整列板61を把持ハンド12の高さ位置まで延ばして設け、子葉のガイドとなる面に合成樹脂ラバー62を貼付する。また、苗を移送する把持ハンド12には整列板61に面する先端部12cをR形状とし、把持ハンド12がその開動作途中で停止するようにその高さ位置に合成樹脂ラバー62を配置する。
【0047】
上記構成の整列板61は、従来の構成による把持ハンド12の側方の開閉動作スペースとしての隙間を要しないので、そのような隙間に子葉が入り込んで発生する整列不良や把持ハンド12の前後方向動作時の子葉損傷を防止して子葉の整列精度を向上することができる。
【0048】
次に、上記接木苗処理装置における発明の詳細を示すべく新たに構成した実施の形態について、それぞれの構成部材に新たに付した参照符号により説明する。
接木苗処理装置は、その全体構成の平面図(a)および側面図(b)を図22に示すように、中央に配置されて台木苗と穂木苗の接合を自動的に行う接木ロボットによる接木処理部1と、左右の外側位置で台木苗、穂木苗のセルトレイをそれぞれ搬入するコンベヤによる左右の搬入部2,3と、接木処理部1の後部から接合固定用のクリップを供給するクリップ供給部1aと、接木処理部1の正面から前方に延びて接合処理済の接木苗を排出する接木送出部4とから構成され、左右の搬入部2,3からセルトレイの台木苗、穂木苗を横断移送動作する不図示の横断移送把持ハンドにより接木処理部1に受け、それぞれの切断と両者の接合による接木苗をクリップ供給部1aのクリップで固定することにより、接木送出部4から接木苗を送出する。
【0049】
(接木処理部)
本実施の形態の接木処理部1について詳細に説明すると、保護カバーを外した要部平面図(a)および正面図(b)を図23に示すように、左半側を台木取扱部、右半側を穂木取扱部とし、左右の側端部に搬入部2,3から不図示の横断移送機構を介して台木苗、穂木苗をそれぞれ受けて保持する左右の苗供給台11L,11R、後部のクリップ供給部1aから受けるクリップにより台木と穂木とを中央位置で接合固定する接合固定部13を配置し、この接合固定部13まで各苗供給台11L,11Rからそれぞれ苗を挟持する搬送ハンド14aを先端に備えて旋回移送する左右の旋回アームによる旋回搬送部14L,14Rと、その旋回行程にそれぞれ介設して切断動作するカッターによる左右の切断部16L,16Rを接木処理部1の前端部に配置して構成する。また、台木用の左の切断部16Lの上方に子葉押さえ用のローラアーム17を設ける。符号18L,18Rは第2整列板、符号19L,19Rは昇降シリンダ、符号20は断根装置である。
【0050】
(切断部)
左右の切断部16L,16Rは、図24の平面図(a)および正面図(b)に示すように、それぞれ、左右に並んで起立する2つの支柱21L,21Rに取付けるためのカッターベース22L,22Rと、所定のカッター軌跡で切断動作するカッター部23L,23Rと、このカッター部23L,23Rを切断動作の都度、進退動作させるスライド支持部24L,24Rとから構成する。
【0051】
左右の各切断部のそれぞれについて詳細に説明すると、一方の台木苗を切断する左の切断部16Lは、図25のA矢視図を伴う側面図に示すように、カッター部23Lは、奥側の旋回搬送部14Lの側に傾斜して上昇方向に直線状のカッター軌跡Cで切断動作する剃刀状の刃31Lを先端に備えるとともに、スライド支持部24Lによりカッター部23Lが前進して切断動作をする進出位置において切断対象物を押圧固定するための押圧部材32Lを備える。
【0052】
この押圧部材32Lは、旋回搬送部14Lによって保持された切断対象物の切断部位より先の部分、すなわち、カッター軌跡の交叉部を越える部分を押圧固定する位置に配置する。また、スライド支持部24Lは、高さ調節部24aと角度調節部24bを備えてカッター部23Lの高さ位置と進出方向Dを調節可能に構成する。このカッター部23Lの切断動作に対応して上方からスポンジローラ17aで子葉を押さえるように、ローラアーム17をロータリーアクチュエータによって連動回動可能に構成する。
【0053】
また、刃31Lを挟んで切断対象物と反対側には、切断された不要な葉を受けて一定方向に飛ばすための板ばね状のガイド33と、その落下点の近傍にあるシリンダを保護する透明カバー34とを設け、シリンダへの葉の混入を防止しつつ、同シリンダの動作を目視可能に構成する。前記ガイド33は、苗の胚軸に対して刃31Lの切断軌跡よりも更に傾斜しており、切断により切断方向(上方向)に移動しようとする不要な葉の一部を受けることにより、不要な葉を切断軌跡に対してガイド33とは反対側の斜め下方に排出しようとするものである。
【0054】
他方の穂木苗を切断する右の切断部16Rは、図26のB矢視図を伴う側面図に示すように、カッター部23Rは、奥側の旋回搬送部14Rの側に傾斜して下降方向に直線状のカッター軌跡Eで切断動作する剃刀状の刃31Rを先端に備えるとともに、スライド支持部24Rによりカッター部23Rが前進して切断動作をする進出位置において切断対象物を押圧固定するための押圧部材32Rを備える。
【0055】
この押圧部材32Rは、旋回搬送部14Rによって保持された切断対象物の切断部位より先の部分、すなわち、カッター軌跡の交叉部を越える部位を押圧固定する位置に配置する。また、スライド支持部24Rは、高さ調節部24aと角度調節部24bを備えてカッター部23Rの高さ位置と進出方向Fを調節可能に構成する。
【0056】
上記構成を有する左右の切断部のそれぞれの切断動作について詳細に説明すると、一方の台木苗の切断部16Lの動作説明図(a〜e)を図27に示すように、手順1(a)は、旋回搬送部14Lが搬送ハンド14aの苗を後退位置のカッター部23Lに臨んで位置決めし、手順2(b)は、スライド支持部24Lによりカッター部23Lが進出位置に前進して押圧部材32Lが切断部位より先の部分を位置決めし、手順3(c)は、ローラアーム17のスポンジローラ17aの回動で胚軸受14bに子葉を押さえ、手順4(d)は、カッター部23Lの刃31Lが胚軸のカッター軌跡の交叉部を切断し、手順5(e)は、スライド支持部24Lによりカッター部23Lが後退することにより切断が終了する。
【0057】
他方の穂木苗の切断部16Rの動作説明図(a〜d)を図28に示すように、手順1(a)は、旋回搬送部14Rが搬送ハンド14aの苗を後退位置のカッター部23Rに臨んで位置決めし、手順2(b)は、スライド支持部24Rによりカッター部23Rが進出位置に前進して押圧部材32Rが切断部位より先の部分を位置決めし、手順3(c)は、カッター部23Rの刃31Rが胚軸のカッター軌跡の交叉部を切断し、手順4(d)は、スライド支持部24Rによりカッター部23Rが後退することにより切断が終了する。
【0058】
このように、上記カッター部23L,23Rは、それぞれスライド支持部24L,24Rを介して進退移動可能で、その進出位置で所定のカッター軌跡C,Eの切断動作をすることにより、このカッター部23L,23Rに臨んで旋回搬送部14L,14Rに挟持した苗について、その胚軸がカッター軌跡に交叉する部分で切断され、この時、カッター部23L,23Rの進出動作によって押圧部材32L,32Rが前進し、旋回搬送部14L,14Rに挟持した苗の切断部位より先の部分を保持側に押し付けるように押圧することにより切断対象物が位置決めされた上で切断が行われる。
【0059】
したがって、上記接木苗処理用切断装置は、旋回搬送部14L,14Rによる苗保持手段によって保持された苗の胚軸の切断部位の先の部分が押圧部材32L,32Rにより位置決めされ、この胚軸Sについて苗保持手段から押圧部分までの間でカッター部の刃31L,31Rが切断動作することから、カッター軌跡C,Eに沿った高精度の切断面を形成することができる。その結果、台木と穂木の接合固定時に切断面を正確に合わせることができ、接木苗の接合不良を回避して歩留まり率を向上することができる。
【0060】
(穂木苗供給台)
右側の穂木苗の苗供給台11Rには、その上半部拡大平面図(a)および正面図(b)を図29に示すように、ハンドの開閉時に可動するシャッター41にウェイト41aを設けることにより、シャッター41に子葉を当てて子葉の向きを修正することにより苗を整列させるとき、苗の子葉の大きさに応じてシャッター41をウエイト41aの重力に抗して上部の支点回りに回動させて苗に適合させることができる。そして、苗が供給されていないときや子葉が小さくて回動する必要がないときは、ウエイト41aによりシャッター41が所望の設定位置に戻る。苗の強度や種類に応じてウエイト41aウエイト41aを着脱又は交換することにより、重量を調整することもできる。
【0061】
また、穂木苗を苗供給台11Rに受け渡す際に実施する子葉方向制御においては、スイカとキュウリのように、90°の角度差で別方向へ子葉整列を行う必要があるので、スイカの場合は、苗供給台11Rに設けた整列板42と、上下動作する接木装置に設けた第二整列板18R(図23参照)との2枚の間で子葉方向を整列し、キュウリは、苗供給台11Rの整列板42のR部への接触によって子葉方向を整列し、その切替えを操作パネルで設定可能に構成する。
【0062】
具体的には、スイカ苗等の両方の整列板18R,42で整列させる場合は、横断移送把持ハンドの左右移動の終端で苗の子葉が第二整列板に当たることで、予備的に子葉が左右方向へ向くように修正され、その後の把持ハンドの前後往復移動で整列板42に子葉が複数回接触して苗の子葉の向きを揃える。
【0063】
キュウリやメロン等の整列板42のみで整列させる場合は、苗の子葉が予めセルトレイの長手方向に向くように予め播種して、育苗された苗は略セルトレイの長手方向に向いているので、昇降シリンダ(図23参照、図23(b)は第二整列板が退避位置を示す。)の作動により第二整列板18Rを上昇させて、把持ハンドの左右移動による苗の移送領域から第二整列板18Rを退避させ、把持ハンドの前後往復移動でシャッター41に子葉が複数回接触して苗の子葉の向きを揃える。操作パネルで前記昇降シリンダ19Rを作動させて、第二整列板18Rを作用位置と退避位置とに切り替える構成である。
【0064】
また、苗供給台に苗を受け渡しする際の苗の姿勢制御のための揺動動作については、穂木は高さ方向、台木は子葉方向を重点にして苗を姿勢制御するために、左右の苗供給台11L,11Rで必要な揺動回数が異なるので、操作パネルによって個別に揺動回数を設定できるように構成する。
【0065】
また、左右の苗供給台11L,11Rの整列板を下部が苗側(横断移送把持ハンド側)で上部がその反対側に位置するよう傾斜させ、苗を受ける際に苗の子葉方向を揃える際に、揺動動作の繰り返しに伴って苗が下方へ移動(高さ制御が実施)されることによって苗の子葉の向きの許容範囲が狭まるように構成してもよい。これにより、揺動動作の繰り返しに伴って徐々に所望の向きに苗の子葉を揃えることができ、整列板で急激に苗の子葉の向きを変更することで苗を損傷させるようなことを防止できる。
【0066】
穂木苗の苗供給台11Rは、その下半部のS1−S1線断面図を伴う側面図を図30に示すように、供給ハンド51と補助ハンド52の2段に構成し、横断移送把持ハンドの揺動動作の後、該横断移送把持ハンドが苗供給台11Rへ供給した苗を供給ハンド51と補助ハンド52が把持するのであるが、その後の旋回搬送部14Rによる苗の移送のために、供給ハンド51と補助ハンド52の把持を旋回搬送部14Rのハンドが苗を把持するために伸長を始めた時点で解除する。従って、供給ハンド51と補助ハンド52の把持を解除してから旋回搬送部14Rの把持ハンドが把持するまでの間に苗の姿勢が不適正になり、胚軸の位置がずれるおそれがある。
【0067】
そこで、旋回搬送部14Rの把持ハンドが苗を受取る時(受け渡しのための補助ハンド52が開放される)に胚軸の位置がずれないように苗の姿勢を制御するための穂木苗ガイド53を設ける。この穂木苗ガイド53は、ハンドが苗を把持する前の旋回搬送部14Rが苗供給台11Rへ向いたときに作用状態となり、旋回搬送部14Rが苗を把持して苗供給台11R部分から完全に離れたときに非作用状態となり、旋回搬送部14Rによる苗の移送の支障とならないように苗に対して旋回搬送部14Rとは反対側から作用し、横断移送把持ハンドから苗供給台11Rへ苗を供給するときにはその支障とならないように非作用状態となる。
【0068】
台木苗の苗供給台11Lは、その側面図(a)と正面図(b)を図31に示すように、一対の引下げハンド61とプレート62にシリンダ63を連結して苗高さを揃える引下ろし機構を備え、台木苗を中心に挟んで近接のシリンダ63の対向側にガイド64を設け、引き下ろしの速度、引き下ろし時に苗に掛かる抵抗を一定化させるように構成する。シリンダ63は苗供給台11Lに供給される台木苗に対してクリップ供給部1a側に設けられているので、その他方側から移動して苗供給台11Lへ苗を供給する横断移送把持ハンドに干渉しないように構成できる。
【0069】
(旋回搬送部)
旋回搬送部14Lは、その正面図(a)と側面図(b)を図32に示すように、搬送ハンド14aの下方にシリンダ72aによって伸縮自在の苗ガイド72を設けた上で、この苗ガイド72は、伸張状態で苗供給台11Lからの受け取り時に苗の胚軸に接触して苗の位置決めガイドとなり、そのまま苗の胚軸に接触した状態で切断時には苗の胚軸の曲がり防止及び位置ズレ防止となり、断根時に苗の胚軸の逃げ防止の当て板となり、接合時に縮小状態となり苗から離れる。
【0070】
(接合固定部)
接合固定部13には、その平面図(a)と側面図(b)を図33に示すように、ロータリーアクチュエータ81の回転を受ける押さえ板82aを介して動作可能のガイド82(台木苗の断根装置20(図23参照)と反対側)を接合センター基準となる穂木側から設けることにより、供給されたクリップの先端にガイド82が接触する構成とし、クリップ掛け時の苗及びクリップの位置ズレを修正および防止する修正ガイドを構成する。
【符号の説明】
【0071】
1 接木処理部
13 接合固定部
14L,14R 旋回搬送部
14a 搬送ハンド
14b 胚軸受
16L,16R 切断部
17 ローラアーム
17a スポンジローラ
21L,21R 支柱
22L,22R カッターベース
23L,23R カッター部
24L,24R スライド支持部
31L,31R 刃
32L,32R 押圧部材
C,E カッター軌跡
D,F 進出方向
S 胚軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のカッター軌跡(C,E)によって切断動作する刃(31L,31R)を備えるカッター部(23L,23R)と、そのカッター軌跡(C,E)上の所定位置に接木処理用の苗の胚軸(S)を縦姿勢で保持する苗保持手段(14L,14R)とからなる接木苗処理用切断装置において、
上記カッター部(23L,23R)は、苗保持手段(14L,14R)に近接して胚軸(S)を苗保持位置の近傍部位で切断する進出位置から後退移動可能にスライド支持部(22L,22R)によって支持するとともに、苗保持位置から見て胚軸(S)の切断部位より先の部分を上記進出位置にて押圧する押圧部材(32L,32R)を備え、この押圧部材(32L,32R)の押圧力により、同苗保持手段(14L,14R)の側に押し付けるようにして胚軸の押圧部分を位置決めすることを特徴とする接木苗処理用切断装置。
【請求項1】
所定のカッター軌跡(C,E)によって切断動作する刃(31L,31R)を備えるカッター部(23L,23R)と、そのカッター軌跡(C,E)上の所定位置に接木処理用の苗の胚軸(S)を縦姿勢で保持する苗保持手段(14L,14R)とからなる接木苗処理用切断装置において、
上記カッター部(23L,23R)は、苗保持手段(14L,14R)に近接して胚軸(S)を苗保持位置の近傍部位で切断する進出位置から後退移動可能にスライド支持部(22L,22R)によって支持するとともに、苗保持位置から見て胚軸(S)の切断部位より先の部分を上記進出位置にて押圧する押圧部材(32L,32R)を備え、この押圧部材(32L,32R)の押圧力により、同苗保持手段(14L,14R)の側に押し付けるようにして胚軸の押圧部分を位置決めすることを特徴とする接木苗処理用切断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2011−135801(P2011−135801A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296900(P2009−296900)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
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