説明

接点装置及び該接点装置を用いた電磁リレー

【課題】 大電流による接点の開離が抑えられる接点装置及び該接点装置を用いた電磁リレーを提供する。
【解決手段】 それぞれ板ばねからなり可動接点51が固定された複数個の接点保持ばね71を備える。各接点保持ばね71は、それぞれ、可動接点51に対して固定接点52が位置する側(図での右側)に膨出した膨出部71aを有する。大電流が流れたときには、膨出部71aの両端部に互いに略逆向きの電流が流れることによりこれらの間に働く斥力が、可動接点51を固定接点52に押し付ける方向に接点保持ばね71を変形させるように作用する。これにより、接点の開離が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点装置及び該接点装置を用いた電磁リレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、接点装置として、図2に示すように、板ばねからなる接点保持ばね71に可動接点51を保持し、この接点保持ばね71の弾性変形により、固定接点52に対する可動接点61の変位を可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。上記のような接点装置は、例えば、電磁石の磁力によって可動接点51が駆動される電磁リレーに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−37052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、可動接点51と固定接点52との間に大電流が流れた場合、可動接点51と固定接点52との間に斥力が発生する。例えば、図2に矢印A3で示す向きで(つまり固定接点52から可動接点51に)大電流が流れた場合、固定接点52において矢印A4で示すように接触範囲50に流入する電流と、可動接点51において矢印A5で示すように接触範囲50から流出する電流とによって発生する電磁力が、矢印A6で示すように可動接点51を固定接点52から引き離すような斥力として作用する。そして、この斥力が接点保持ばね71のばね力を上回ると、接点の開離(すなわち、固定接点52からの可動接点51の乖離)が発生する可能性がある。
【0005】
さらに、上記のような接点の開離の際に、可動接点51と固定接点52との間にアーク放電が発生した場合、これに伴う高熱によって可動接点51と固定接点52との溶着が発生してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、大電流による接点の開離が抑えられる接点装置及び該接点装置を用いた電磁リレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接点装置は、それぞれ板ばねからなる複数個の接点保持ばねが厚さ方向に重ねられてなり一端部に可動接点を保持した接点保持体と、前記接点保持体の他端部が固定されるとともに前記接点保持体の弾性変形によって前記可動接点が離接可能な位置に固定接点を保持したハウジングとを備え、各接点保持ばねは、前記可動接点に対して前記固定接点が位置する方向に膨出した膨出部を有することを特徴とする。
【0008】
上記の接点装置において、少なくとも1個の前記接点保持ばねについて、前記膨出部と、隣接する他の前記接点保持ばねとの間には、隙間が設けられていることが望ましい。
【0009】
また、上記の接点装置において、各膨出部はそれぞれ角状に曲げられた部位を介して互いに連結された複数個の平坦な部位からなるものであってもよい。
【0010】
さらに、上記の接点装置において、前記固定接点に電気的に接続されて一部が前記ハウジング外に突出する形で前記ハウジングに保持された端子板を備え、前記膨出部は、前記端子板の近傍に位置していてもよい。
【0011】
本発明の電磁リレーは、上記いずれかの接点装置と、前記ハウジングに収納及び保持された電磁石と、前記ハウジングに収納されて前記電磁石の磁力によって駆動されるアーマチュアとを備え、前記可動接点は、前記アーマチュアに連動して前記固定接点に対して離接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大電流が流れたときには、膨出部の一端部と他端部との間に働く斥力が、可動接点を固定接点に押し付ける方向に接点保持ばねを変形させるように作用するから、接点の開離が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を示す、カバーを省略した正面図である。
【図2】本発明が解決すべき課題を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態は、図1に示すように、電磁石1と、電磁石1の磁力により回転駆動されるアーマチュア2と、電磁石1とアーマチュア2とをそれぞれ収納し電磁石1が固定されたハウジング3とを備える。すなわち、本実施形態は、アーマチュア2の回転に伴って可動接点51が動作する電磁リレーである。以下、上下左右は図1を基準とし、図1の紙面手前側を前側と呼ぶ。但し、上記の方向はあくまで説明の便宜上定義するものであって、実際の使用状態での方向とは必ずしも一致しない。
【0016】
ハウジング3は、前面に収納凹部30が開口したボディ31と、ボディ31の前側に結合して収納凹部30を閉塞するカバー(図示せず)とを有する。
【0017】
また、本実施形態は、アーマチュア2をハウジング3に対して回転可能に支持する支持体4を備える。支持体4は、厚さ方向を前後方向に向けた扁平な形状であって左右両端部がそれぞれボディ31に固定された固定部41と、固定部41の前面の中央部から前方へ突設され軸方向を前後方向に向けた円柱形状の軸部42とを有する。固定部41をボディ31に固定する手段としては、例えば嵌合などの周知の手段を用いることができる。また、アーマチュア2には、断面円形状であって内径が軸部42の外径よりも僅かに大きい軸受け穴20が前後に貫設されており、軸受け穴20に軸部42が挿入されることで、アーマチュア2はハウジング3に対して軸部42の中心軸周りに回転可能に支持される。
【0018】
また、電磁石1は、軸方向を上下方向に向けて固定部41の後側においてボディ31に固定されたコイル(図示せず)と、磁性体からなりコイルによって磁化される磁極片11とを有する。磁極片11は、コイルを上下に貫通した本体部(図示せず)と、本体部の上下両端部からそれぞれ前方に突設された可変磁極部11aとを有し、全体としてU字形状となっている。すなわち、各可変磁極部11aはそれぞれコイルへの通電方向に応じた極性に励磁されるのであって、その極性は可変磁極部11a間で互いに異なる。ハウジング3には、それぞれ一端が上記のコイルに電気的に接続されて他端がハウジング3の左方に突出した複数本(図では3本)コイル端子60が保持されており、コイルへの通電はコイル端子60を通じて行うことができる。具体的には、本実施形態の電磁リレーはいわゆる2巻線ラッチング型であって、上記のコイルはタップを有しており、コイル端子60はコイルの両端とタップとに1個ずつが電気的に接続されている。
【0019】
また、アーマチュア2は、それぞれ1個ずつの可変磁極部11aを左右から挟む固定磁極部21aを、上下両端部に1組ずつ有する。固定磁極部21aの各組において、可変磁極部11aの左側の固定磁極部21aと可変磁極部11aの右側の固定磁極部21aとは互いに異なる極性に磁化されている。具体的には、アーマチュア2は、N極を左右方向のうち互いに共通の方向に向けた2個の永久磁石22と、それぞれ磁性体からなり各永久磁石22の一方ずつの極に磁着された2個の接極子21とが、合成樹脂成型体23にインサート成型されたものである。すなわち、各接極子21のうち、それぞれ永久磁石22よりも上下に突出した上下両端部が、それぞれ固定磁極部21aとなっている。そして、電磁石1のコイルに通電されると、可変磁極部11aの左右の固定磁極部21aのうち通電方向に応じた側の一方の固定磁極部21aが可変磁極部11aに吸引されることで、アーマチュア2はハウジング3に対しコイルへの通電方向に応じた方向に回転する。また、コイルにいったん通電されると、コイルに逆方向の電流が流されるまでは、アーマチュア2の位置(及び、これに連動する可動接点51等の位置)は上記の永久磁石22の磁力によって維持(ラッチング)される。
【0020】
さらに、ハウジング3には、上記のようなアーマチュア2の回転に連動する可動接点51と、この可動接点51に離接する固定接点52とが収納されている。さらに、可動接点51と固定接点52とはそれぞれ1個ずつの端子板61,62に電気的に接続されている。すなわち、可動接点51と固定接点52との離接に伴って端子板61,62間の電気的な接続がオンオフされる。各端子板61,62は、それぞれ、厚さ方向を左右方向に向けた金属板からなり、上端部がハウジング3外に突出する形でハウジング3に固定されている。また、本実施形態は、下端部を端子板61の右面に固定され上端部を下端部に対して左右に変位させるように弾性変形可能な接点保持体7を有する。すなわち、可動接点51と固定接点52と接点保持体7とハウジング3とで接点装置が構成されている。可動接点51は、接点保持体7の上端部に固定されることで、固定接点52の左側においてハウジング3に対して左右に弾性的に変位可能となっている。
【0021】
また、本実施形態は、接点保持体7とアーマチュア2とに連結されることにより可動接点51をアーマチュア2に連動させるカード8を備える。可動接点51に接続された端子板61は、カード8の変位を阻害しないように、カード8の進路を避けた形状とされている。アーマチュア2とカード8との連結は、アーマチュア2において右側の接極子21の上端部に連結された連結片24が、カード8において上下方向と前方とに開口したアーマチュア用凹部81に挿入されることで達成されている。また、接点保持体7とカード8との連結は、接点保持体7の上端部が、カード8において上下方向と後方とに開口した接点保持体用凹部(図示せず)に挿入されることで達成されている。
【0022】
ここで、接点保持体7は、それぞれ全体として上下に長い板ばねからなる複数枚の接点保持ばね71が、厚さ方向に重ねられるとともに上端部と下端部とにおいて互いに接合されたものである。各接点保持ばね71は、それぞれ、右方向(すなわち可動接点51に対して固定接点52が位置する方向)に膨出する膨出部71aを、上下方向の中央部に有し、膨出部71aの上下両側の部位はそれぞれ平坦であって厚さ方向を左右方向に向けている。各膨出部71aはそれぞれ曲げ加工により形成されている。また、各膨出部71aはそれぞれ鈍角に曲げられた部位を介して3個の平坦な部位が互いに連結された台形状である。さらに、右側の接点保持ばね71の膨出部71aの左側に形成される凹部に左側の接点保持ばね71の膨出部71aが収納されるといったように、膨出部71a同士は入れ子状となっている。また、互いに隣接する接点保持ばね71の膨出部71a同士の間にはそれぞれ隙間が設けられており、特に、左端の接点保持ばね71の膨出部71aとその右側の接点保持ばね71の膨出部71aとの間の隙間は比較的に大きくされている。
【0023】
上記構成によれば、大電流が流れたときには、膨出部71aの上端部と下端部とに互いに略逆向きの電流が流れることにより、膨出部71aの上端部と下端部との間に矢印A1で示すような斥力が発生する。この斥力は、接点保持体7の上端部を矢印A2で示すように下端部に対して右方に変位させる方向、すなわち、可動接点51を固定接点52に押し付ける方向に接点保持体7を変形させるように作用する。これにより、接点の開離が抑えられる。
【0024】
また、接点保持ばね71間(膨出部71a間)に隙間が設けられているので、各接点保持ばね71(例えば、左端の接点保持ばね71)を適宜塑性変形させることで動作特性を調整することができる。
【0025】
なお、膨出部71aは、上記のように台形状とするよりも、上下両端部が互いに平行となる形状(例えば矩形状)としたほうが、上下両端部で流れる電流が完全に逆向きとなることで、上記の斥力がより強くなるから望ましい。
【0026】
また、固定接点52側の端子板62と、膨出部71aとの距離は、絶縁が確保される範囲内で可能な限り小さくすることが望ましい。例えば、膨出部71aの寸法をより大きくすれば接点保持ばね71を長くすることができ、上記の端子板62の位置をより接点保持体7に近くすれば全体としての小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0027】
3 ハウジング
7 接点保持体
51 可動接点
52 固定接点
62 端子板
71 接点保持ばね
71a 膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ板ばねからなる複数個の接点保持ばねが厚さ方向に重ねられてなり一端部に可動接点を保持した接点保持体と、
前記接点保持体の他端部が固定されるとともに前記接点保持体の弾性変形によって前記可動接点が離接可能な位置に固定接点を保持したハウジングとを備え、
各接点保持ばねは、前記可動接点に対して前記固定接点が位置する方向に膨出した膨出部を有することを特徴とする接点装置。
【請求項2】
少なくとも1個の前記接点保持ばねについて、前記膨出部と、隣接する他の前記接点保持ばねとの間には、隙間が設けられていることを特徴とする請求項1記載の接点装置。
【請求項3】
各膨出部はそれぞれ角状に曲げられた部位を介して互いに連結された複数個の平坦な部位からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の接点装置。
【請求項4】
前記固定接点に電気的に接続されて一部が前記ハウジング外に突出する形で前記ハウジングに保持された端子板を備え、
前記膨出部は、前記端子板の近傍に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接点装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の接点装置と、
前記ハウジングに収納及び保持された電磁石と、
前記ハウジングに収納されて前記電磁石の磁力によって駆動されるアーマチュアとを備え、
前記可動接点は、前記アーマチュアに連動して前記固定接点に対して離接することを特徴とする電磁リレー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−30310(P2013−30310A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164192(P2011−164192)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】