説明

接着ガラスの取付構造

【課題】接着ガラスを接着剤により車両本体に固定するときに、接着剤が掻き取られることを抑制することができる接着ガラスの取付構造を得る。
【解決手段】リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aには、リアガラス30の一般部31の裏面とは異なる座面形状となるようにドアインナパネル26側に突出する座面部34が設けられている。座面部34は、ドアインナパネル26の縦壁部26Aと対向して配置される板状の突出部34Aに接着面34Bを備えている。リアガラス30のドアインナパネル26への搭載方向(矢印A方向)と座面部34の接着面34Bに塗布された接着剤40の潰れ方向とがほぼ同じとなり、リアガラス30のドアインナパネル26への搭載時に接着剤40がドアインナパネル26に擦れて掻き取られることが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される接着ガラスの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ウィンドウパネルの車両幅方向両端部が、車両側面まで廻り込んだウィンドウパネルのボデーへの取付構造が開示されている。この構造では、ウィンドウパネルの外周部に接着剤を塗布し、ボデー側の突出部とウィンドウパネルの切り欠き部を合わせながらウィンドウパネルの外周部をボデーに接着固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−99720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、ウィンドウパネルをボデーに組み付けるときに、車両側面まで廻り込んだ部分の接着剤をボデーに擦りながら組み付ける恐れがある。そのため、接着剤がボデーに擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、接着ガラスを接着剤により車両本体に固定するときに、接着剤が掻き取られることを抑制することができる接着ガラスの取付構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る接着ガラスの取付構造は、車両に適用される接着ガラスの端部を車両本体に接着剤により接着する接着面に設けられ、前記接着ガラスの一般部の裏面とは異なる座面形状となるように前記車両本体側に突出する座面部を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の接着ガラスの取付構造において、前記接着ガラスは、車両幅方向に沿って配置されると共に、前記接着ガラスの車両幅方向両端部が車両幅方向中央部よりも車両内側に廻り込むように湾曲して形成されており、前記接着ガラスの車両幅方向両端部に設けられた前記座面部が前記車両本体に接着されているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の接着ガラスの取付構造において、前記座面部の前記接着ガラスの裏面からの高さは、前記接着ガラスの車両幅方向外側よりも車両幅方向内側が高くなるように設定されているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の接着ガラスの取付構造において、前記接着ガラスが樹脂製であり、前記座面部が前記接着ガラスの裏面に2色成形で形成されているものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の接着ガラスの取付構造において、前記接着ガラスが樹脂製であり、前記座面部が前記接着ガラスと一体成形されているものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の接着ガラスの取付構造において、前記接着剤を接着する接着面を前記車両本体側に設け、前記座面部を前記接着剤の受け面としたものである。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、接着ガラスの端部を車両本体に接着剤により接着する接着面に、接着ガラスの一般部の裏面とは異なる座面形状となるように車両本体側に突出する座面部が設けられており、座面部が接着剤により車両本体に接着される。その際、例えば車両本体側に突出する座面部の突出高さを調整することで、接着ガラスの一般部の裏面を接着剤で直接車両本体に接着する場合と比較して、接着ガラスの端部を車両本体に組み付ける軌跡との関係で、座面部等に塗布した接着剤が車両本体等に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することが可能となる。つまり、接着ガラスの端部に車両本体側に突出する座面部を設けることで、接着ガラスの意匠に関係なく、目的にあった接着面を管理することができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、接着ガラスの車両幅方向両端部が車両幅方向中央部よりも車両内側に廻り込むように湾曲して形成されており、接着ガラスの車両幅方向両端部に車両本体側に突出する座面部が設けられている。このため、本発明が適用されていない場合、接着ガラスの搭載時に接着剤が擦れ易い。接着ガラスの車両幅方向両端部に座面部を設けることで、接着ガラスの一般部の裏面を接着剤で直接車両本体に接着する場合と比較して、接着ガラスの車両幅方向両端部を車両本体に組み付ける軌跡との関係で、座面部等に塗布した接着剤が車両本体等に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することができる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、座面部の接着ガラスの裏面からの高さは、接着ガラスの車両幅方向外側よりも車両幅方向内側が高くなるように設定されており、接着ガラスの車両幅方向両端部を車両本体に組み付ける軌跡との関係で、座面部等に塗布した接着剤が車両本体等に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことをより確実に抑制することができる。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、接着ガラスが樹脂製で、座面部が接着ガラスの裏面に2色成形で形成されており、座面部の位置精度を確保することができる。また、別部品を接着ガラスの裏面に接着する場合に比べてコストを削減することができる。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、接着ガラスが樹脂製で、座面部が接着ガラスと一体成形されており、座面部の位置精度を確保することができる。また、別部品を接着ガラスの裏面に接着する場合に比べてコストを削減することができる。
【0017】
請求項6記載の本発明によれば、接着剤を接着する接着面を車両本体側に設け、座面部を接着剤の受け面とすることで、接着ガラスの端部を車両本体に組み付ける軌跡との関係で、車両本体に塗布した接着剤が座面部に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る接着ガラスの取付構造によれば、接着ガラスを接着剤により車両本体に固定するときに、接着剤が掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る接着ガラスの取付構造が適用された車両後部のバックドアを示す斜視図である。
【図2】図1中の2−2線に沿った断面図であって、バックドアの車両幅方向端部を示す断面図である。
【図3】図2に示すバックドアの車両幅方向端部に設けられた座面部を車両内側(矢印B方向)から見た図である。
【図4】第2実施形態に係る接着ガラスの取付構造が適用されたバックドアの車両幅方向端部を示す断面図である。
【図5】第3実施形態に係る接着ガラスの取付構造が適用されたバックドアの車両幅方向端部を示す断面図である。
【図6】第4実施形態に係る接着ガラスの取付構造が適用されたバックドアの車両幅方向端部を示す断面図である。
【図7】第5実施形態に係る接着ガラスの取付構造が適用されたバックドアの車両幅方向端部を示す断面図である。
【図8】第6実施形態に係る接着ガラスの取付構造が適用されたバックドアの車両幅方向端部を示す断面図である。
【図9】比較例に係る接着ガラスの取付構造が適用されたバックドアの車両幅方向端部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る接着ガラスの取付構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印RRは車両後方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0021】
図1には、本実施形態に係る接着ガラスの取付構造が適用された車両の後部が斜視図にて示されている。図1に示されるように、車両10のボデー本体11の後端部には、車両背面視にて略矩形状の荷室12が設けられている。ボデー本体11には、車両上部に車両前後方向及び車両幅方向に沿って延在するルーフパネル14と、車両幅方向両サイドに車両前後方向及び車両上下方向に沿って延在するサイドメンバアウタパネル(サイメンアウタ)16と、が配設されている。
【0022】
ボデー本体11の荷室12は、バックドア20によって開閉される。ボデー本体11は、ルーフパネル14の後端部の車両内側に配置されて荷室12の上端周りを構成するリアルーフヘッダ(図示省略)を備えており、バックドア20は、リアルーフヘッダに取り付けられたヒンジ(図示省略)によって支持されている。バックドア20がヒンジを中心にして上下方向に回転されることで、荷室12が開閉される。つまり、跳ね上げ式のバックドア20となっている。このバックドア20に本実施形態の接着ガラスの取付構造22が適用されている。
【0023】
図2には、図1中の2−2線に沿った断面図であって、バックドア20の車両幅方向端部の構成が示されている。なお、図2では、バックドア20の車両幅方向の一方の端部のみが図示されているが、バックドア20の車両幅方向端部は左右対称であるので、バックドア20の車両幅方向の他方の端部は図示を省略する。図1及び図2に示されるように、バックドア20は、ドア外側(車両外側)及びドア下部側に配置されたドアアウタパネル24(図1参照)と、ドア内側(車両内側)に配置された車両本体の一例としてのドアインナパネル26(図2参照)と、を備えている。ドアインナパネル26の上部側には開口部27が設けられており、開口部27を覆うように接着ガラスの一例としてのリアガラス(固定ガラス)30が取り付けられている。
【0024】
リアガラス30は、車両幅方向に沿って配置されており、車両平面視にて車両幅方向外側の端部30Aが車両幅方向中央部30Bよりも車両内側(車両前方側)に廻り込むように湾曲して形成されている。言い換えると、リアガラス30は、車両平面視にて車両幅方向外側の端部30Aがボデー本体11の側面側に廻り込むように配置されており、リアガラス30の端部30Aの外周面の湾曲度合いが大きい構成とされている。図2に示されるように、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面には、リアガラス30の一般部31の裏面とは異なる座面形状となるように、ドアインナパネル26側に突出する座面部34が設けられている。ここで、リアガラス30の一般部31とは、リアガラス30の板厚がほぼ同じに形成された部位を意味している。
【0025】
図3には、リアガラス30に設けられた座面部34を車両内側(図2の矢印B方向)から見た図が示されている。なお、図3では、座面部34の構成を分りやすくするため、ドアインナパネル26及び接着剤40を省略している。図2及び図3に示されるように、座面部34は、リアガラス30の裏面から車両幅方向及び車両上下方向に沿って突出する板状の突出部34Aを備えており、突出部34Aのドアインナパネル26と対向する面に略平面状の接着面34Bが形成されている。板状の突出部34Aの背面(接着面34Bと反対側)には、突出部34Aとリアガラス30の端部30Aとを繋ぐ複数のリブ36が車両前後方向に沿って形成されている。複数のリブ36は、座面部34を補強するために、座面部34(突出部34A)の背面とリアガラス30の裏面との間に車両上下に所定の間隔をあけて配置されている(図3参照)。
【0026】
図2に示されるように、座面部34の接着面34Bのリアガラス30の裏面(リアガラス30の板厚がほぼ同じ一般部31の裏面)からの高さは、リアガラス30の車両幅方向外側よりも車両幅方向内側が高くなるように設定されている。なお、座面部34の接着面34Bのリアガラス30の裏面からの高さとは、図2に示す車両平面視では、座面部34の接着面34Bの車両前後方向の高さを意味している。
【0027】
これにより、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aが、車両幅方向中央部30B(図1参照)に対して車両前方側に廻り込むように配置されていても、座面部34の接着面34Bが車両幅方向及び車両上下方向に沿って配置されるようになる。本実施形態では、ドアインナパネル26へのリアガラス30の搭載方向(矢印A方向)に対して座面部34の接着面34Bが略直交するように配置されている。接着面34Bには、リアガラス30をドアインナパネル26に接着固定するための接着剤40が塗布される(付着される)。接着剤40としては、例えば、ウレタン樹脂などの接着剤が用いられる。接着剤40は、粘度がある程度高いため、図2に示されるように、接着面34Bに塗布した際に車両平面視にて断面が略三角形状に盛り上がった状態となる。なお、図2では、接着剤40の状態を分りやすくするため、接着剤40を模式的に表している。
【0028】
本実施形態では、リアガラス30は樹脂製であり、座面部34及びリブ36がリアガラス30の裏面に2色成形で形成されている。ここで、2色成形とは、例えば色の異なる2つの同種材料、又は材質の異なる2種類の材料を成形工程で接着させることにより、互いに異なる2色の材料又は2種類の材料を1つの成形品に共存させる成形法をいう。座面部34及びリブ36を2色成形によりリアガラス30の裏面に形成することで、別部品の座面部をリアガラス30の裏面に接着させる場合と比較して座面部34の位置精度が向上するとともに、接着作業などの後工程が不要となり、低コスト化が可能となる。
【0029】
ドアインナパネル26は、座面部34の接着面34Bに沿って(座面部34の接着面34Bに対向して)車両幅方向及び車両上下方向に延在される縦壁部26Aと、縦壁部26Aの車両幅方向外側端部から車両後方側に突出した突起部26Bと、縦壁部26Aの車両幅方向内側端部から車両後方側に延びた内壁部26Cと、を備えている。縦壁部26Aの後面には、座面部34の接着面34Bに塗布された接着剤40を受ける略平面状の受け面26Dが形成されている。
【0030】
このような接着ガラスの取付構造22では、ドアインナパネル26へのリアガラス30の搭載方向(矢印A方向)に対して、座面部34の接着面34Bの角度がリアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面と異なる角度とされている。本実施形態では、ドアインナパネル26へのリアガラス30の搭載方向(矢印A方向)に対して、座面部34の接着面34Bが直交する方向に配置されている。さらに、リアガラス30をドアインナパネル26に組み付ける(搭載する)ときに、座面部34の接着面34Bが、ドアインナパネル26の縦壁部26Aの受け面26Dとほぼ平行に配置されている。このため、リアガラス30をドアインナパネル26に組み付けるときに、リアガラス30の搭載方向(矢印A方向)が、座面部34の接着面34Bに塗布された接着剤40の潰れ方向とほぼ同じになる。
【0031】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0032】
リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aが車両幅方向中央部30Bよりも車両前方側に廻り込むように湾曲して形成されており、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面には、ドアインナパネル26の縦壁部26A側に突出する座面部34が設けられている。これにより、図2に示されるように、車両平面視にてドアインナパネル26へのリアガラス30の搭載方向(矢印A方向)に対する座面部34の接着面34Bの角度が、リアガラス30の端部30Aの裏面の角度と異なるものとなる。
【0033】
すなわち、図2に示されるように、リアガラス30をドアインナパネル26に組み付ける(搭載する)ときは、座面部34の接着面34Bと縦壁部26Aの受け面26Dとがほぼ平行となり、リアガラス30の搭載方向(矢印A方向)と座面部34の接着面34Bに塗布された接着剤40の潰れ方向がほぼ同じになる。このため、リアガラス30の端部30Aをドアインナパネル26の縦壁部26Aに組み付ける軌跡との関係で、座面部34の接着面34Bに塗布された接着剤40がドアインナパネル26に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことが抑制される。これにより、座面部34の接着面34Bに塗布された接着剤40がドアインナパネル26の縦壁部26Aの受け面26Dに当たって搭載方向に沿って潰れ、リアガラス30の接着面34Bとドアインナパネル26の受け面26Dが接着剤40により接着固定される(図2中の二点鎖線で示す接着剤40を参照)。
【0034】
このため、リアガラス30をドアインナパネル26に組み付けるときの接着作業性を向上することができる。また、リアガラス30の端部30Aに、ドアインナパネル26側に突出する座面部34を設けることで、リアガラス30の意匠に関係なく、目的にあった接着面34Bを管理することができる。
【0035】
また、座面部34の接着面34Bのリアガラス30の裏面からの高さは、リアガラス30の車両幅方向外側よりも車両幅方向内側が高くなるように設定されている。これにより、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aをドアインナパネル26の縦壁部26Aに組み付ける軌跡との関係で、接着剤40がドアインナパネル26に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことをより確実に抑制することができる。
【0036】
さらに、リアガラス30は樹脂製であり、座面部34及びリブ36がリアガラス30の裏面に2色成形で形成されている。これにより、別部品の座面部をリアガラス30の裏面に接着させる場合と比較して座面部34の位置精度を確保できるとともに、接着作業などの後工程が不要となり、コストを削減することができる。
【0037】
図9には、比較例に係る接着ガラスの取付構造200が適用されたバックドア202が示されている。この図に示されるように、接着ガラスの取付構造200では、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面に接着剤40が直接塗布される。ドアインナパネル210には、リアガラス30の端部30Aの裏面と対向する位置に略車両前後方向に沿って縦壁部210Aが形成されており、縦壁部210Aの外側面には略平面状の受け面210Eが形成されている。また、ドアインナパネル210は、縦壁部210Aの車両前端部から車両幅方向外側に突出した突起部210Bと、縦壁部210Aの車両後端部から車両幅方向内側に延びた壁部210Cと、壁部210Cの車両幅方向内側端部から車両後方側に延びた内壁部210Dと、を備えている。
【0038】
このような接着ガラスの取付構造200では、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面に接着剤40が塗布され、ドアインナパネル210の縦壁部210Aの受け面210Eに接着される。その際、リアガラス30のドアインナパネル210への搭載方向(矢印A方向)と、リアガラス30の端部30Aの接着剤40の潰れ方向が異なるため、リアガラス30をドアインナパネル210に組み付ける軌跡との関係で、リアガラス30の端部30Aの接着剤40がドアインナパネル210の縦壁部210A等に擦れて接着剤40が掻き取られる(又は剥ぎ取られる)可能性がある(図9中の二点鎖線で示す接着剤40を参照)。
【0039】
これに対して、本実施形態の接着ガラスの取付構造22では、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面に座面部34を設けることで、リアガラス30の端部30Aをドアインナパネル26の縦壁部26Aに組み付ける軌跡との関係で、座面部34の接着面34Bに塗布された接着剤40がドアインナパネル26に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することができる。
【0040】
次に、図4を用いて、本発明に係る接着ガラスの取付構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0041】
図4に示されるように、接着ガラスの取付構造50では、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面に、ドアインナパネル60側に突出する座面部52を備えている。座面部52は、車両平面視にて断面が略「コ」字状に形成された突出部52Aを備えている。突出部52Aは、ドアインナパネル60の縦壁部26Aと対向する面が凹状に窪んでおり、この窪み部に接着面52Bが形成されている。突出部52Aの窪み部の奥側面(接着面52B)に接着剤40が塗布されている。突出部52Aの背面(接着面52Bと反対側)には、突出部52Aとリアガラス30の裏面とを繋ぐ複数のリブ54が車両上下に所定の間隔をあけて設けられている。
【0042】
本実施形態では、座面部52及びリブ54が樹脂製のリアガラス30の裏面に2色成形で形成されている。また、接着面52Bの車両幅方向の線長は、第1実施形態の接着面34B(図2参照)の車両幅方向の線長とほぼ同じに設定されており、窪み部を備えた突出部52Aとすることで、突出部52Aの幅(車両幅方向の寸法)を突出部34A(図2参照)の幅よりも狭くすることができる。
【0043】
ドアインナパネル60は、車両幅方向及び車両上下方向に配置される縦壁部26Aの後面に、座面部52の窪み部(接着面52B)側に突出する突起部62が設けられている。突起部62は、座面部52の接着面52Bと対向するように車両上下方向に沿って配置されている。突起部62の外面が接着剤40の受け面となる。
【0044】
このような接着ガラスの取付構造50では、リアガラス30をドアインナパネル60に組み付ける(搭載する)ときは、リアガラス30の搭載方向(矢印A方向)と座面部52の接着面52Bに塗布された接着剤40の潰れ方向がほぼ同じになる。このため、リアガラス30の端部30Aをドアインナパネル60の縦壁部26Aに組み付ける軌跡との関係で、座面部52の接着面52Bに塗布された接着剤40がドアインナパネル60に擦れることが抑制される。このため、座面部52の接着面52Bに塗布された接着剤40がドアインナパネル60の突起部62に当たって潰れ、リアガラス30の接着面52Bとドアインナパネル26の突起部62付近が接着剤40により接着固定される(図4中の二点鎖線で示す接着剤40を参照)。
【0045】
したがって、リアガラス30をドアインナパネル60に組み付ける(搭載する)ときに、接着剤40がドアインナパネル60に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することができ、接着作業性を向上することができる。
【0046】
また、座面部52の窪み部を接着面52Bとし、ドアインナパネル60の縦壁部26Aに突起部62を設けることで、座面部52の車両幅方向の寸法を小さくすることができ、省スペース化が可能である。
【0047】
次に、図5を用いて、本発明に係る接着ガラスの取付構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0048】
図5に示されるように、接着ガラスの取付構造70では、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面に、ドアインナパネル80側に突出する座面部72を備えている。
【0049】
ドアインナパネル80は、車両平面視にて断面が略「コ」字状に形成された縦壁部80Aを備えている。縦壁部80Aは、リアガラス30の座面部72と対向する面が凹状に窪んでおり、この窪み部に接着面80Bが形成されている。縦壁部80Aの窪み部の奥側面(接着面80B)に接着剤40が塗布されている。
【0050】
座面部72は、車両平面視にて断面が略L字状に形成されており、車両上下方向及び車両幅方向に沿って配置された縦壁部72Aと、縦壁部72Aの車両内側端部から車両前方側に屈曲された突起部72Bと、を備えている。突起部72Bは、縦壁部80Aの窪み部(接着面80B)側に突出している。突起部72Bの外面が、ドアインナパネル80の縦壁部80Aの接着面80Bに塗布された接着剤40を受ける受け面となる。本実施形態では、座面部72及びリブ54が樹脂製のリアガラス30の裏面に2色成形で形成されている。
【0051】
このような接着ガラスの取付構造70では、リアガラス30をドアインナパネル80に組み付ける(搭載する)ときは、リアガラス30の搭載方向(矢印A方向)とドアインナパネル80の縦壁部80Aの接着面80Bに塗布された接着剤40の潰れ方向がほぼ同じになる。このため、リアガラス30の端部30Aの座面部72をドアインナパネル80の縦壁部80Aに組み付ける軌跡との関係で、縦壁部80Aの接着面80Bに塗布された接着剤40がリアガラス30に擦れることが抑制される。このため、リアガラス30の座面部72の突起部72Bが縦壁部80Aの接着面80Bの接着剤40に当たることで、接着剤40が潰れ、リアガラス30の座面部72とドアインナパネル80の縦壁部80Aの接着面80Bとが接着剤40により接着固定される(図5中の二点鎖線で示す接着剤40を参照)。
【0052】
このため、リアガラス30をドアインナパネル80に組み付ける(搭載する)ときに、ドアインナパネル80の接着面80Bの接着剤40がリアガラス30に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することができ、接着作業性を向上することができる。
【0053】
また、ドアインナパネル80の縦壁部80Aの窪み部を接着面80Bとし、リアガラス30の座面部72に突起部72Bを設けることで、縦壁部80Aの車両幅方向の寸法を小さくすることができ、省スペース化が可能である。
【0054】
次に、図6を用いて、本発明に係る接着ガラスの取付構造の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0055】
図6に示されるように、接着ガラスの取付構造90では、リアガラス92の車両幅方向外側の端部30Aの裏面に、ドアインナパネル100側に突出する座面部94を備えている。座面部94の前面には、略平面状の接着面94Aが形成されている。接着面94Aは、車両平面視にて車両幅方向外側端面が車両前方側で車両幅方向内側端面が車両後方側となるように傾斜して配置されている。本実施形態では、ドアインナパネル100へのリアガラス92の搭載方向(矢印A方向)に対して接着面94Aが交差するように配置されている。リアガラス92の一般部31と座面部94とは樹脂(例えば、ポリカーボネートなど)により一体成形されている。
【0056】
ドアインナパネル100は、リアガラス92の接着面94Aと対向するように配置された縦壁部100Aと、縦壁部100Aの車両幅方向外側端部から車両斜め後方側に突出するように形成された突起部100Bと、縦壁部100Aの車両幅方向内側端部から車両幅方向内側に延びた壁部100Cと、壁部100Cの車両幅方向内側端部から車両後方側に延びた内壁部26Cと、を備えている。縦壁部100Aの後面には、リアガラス92の接着面94Aに塗布された接着剤40を受ける略平面状の受け面100Dが形成されている。
【0057】
このような接着ガラスの取付構造90では、ドアインナパネル100へのリアガラス92の搭載方向(矢印A方向)に対する座面部94の接着面94Aの角度を適切に調整することで、リアガラス92の端部30Aの座面部94をドアインナパネル100の縦壁部100Aに組み付ける軌跡との関係で、座面部94の接着面94Aに塗布された接着剤40がドアインナパネル100に擦れることが抑制される。すなわち、ドアインナパネル100へのリアガラス92の搭載方向(矢印A方向)と、座面部94の接着面94Aの接着剤40の潰れ方向とは交差しているが、ドアインナパネル100へのリアガラス92の搭載方向(矢印A方向)に対する座面部94の接着面94Aの角度を適切に調整することで、接着剤40がドアインナパネル100に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことが抑制される。これにより、座面部94の接着面94Aに塗布された接着剤40がドアインナパネル100の縦壁部100Aの受け面100Dに当たって潰れ、リアガラス92の接着面94Aとドアインナパネル100の縦壁部100Aの受け面100Dが接着剤40により接着固定される(図6中の二点鎖線で示す接着剤40を参照)。
【0058】
このような接着ガラスの取付構造90では、リアガラス92をドアインナパネル100に組み付ける(搭載する)ときに、座面部94の接着面94Aに塗布された接着剤40がドアインナパネル100に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することができ、接着作業性を向上することができる。
【0059】
次に、図7を用いて、本発明に係る接着ガラスの取付構造の第5実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第4実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0060】
図7に示されるように、接着ガラスの取付構造110では、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面に、ドアインナパネル100側に突出する座面部112を備えている。座面部112は、リアガラス30の端部30Aの縁部側に配置された突出部112Aと、突出部112Aの車両幅方向内側にリアガラス30の端部30Aの裏面に沿って配置された壁部112Bと、を備えている。
【0061】
突出部112Aの前面には、略平面状の接着面112Cが形成されており、接着面112Cは、車両平面視にて車両幅方向外側端面が車両前方側で車両幅方向内側端面が車両後方側となるように傾斜して配置されている。本実施形態では、ドアインナパネル100へのリアガラス30の搭載方向(矢印A方向)に対して接着面112Cが交差するように配置されている。本実施形態では、座面部112が樹脂製のリアガラス30の裏面に2色成形で形成されている。
【0062】
このような接着ガラスの取付構造110では、ドアインナパネル100へのリアガラス30の搭載方向(矢印A方向)に対する座面部112の接着面112Cの角度を適切に調整することで、リアガラス30の端部30Aの座面部112をドアインナパネル100の縦壁部100Aに組み付ける軌跡との関係で、座面部112の接着面112Cに塗布された接着剤40がドアインナパネル100に擦れることが抑制される。
【0063】
このため、リアガラス30をドアインナパネル100に組み付ける(搭載する)ときに、座面部112の接着面112Cに塗布された接着剤40がドアインナパネル100に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することができ、接着作業性を向上することができる。
【0064】
次に、図8を用いて、本発明に係る接着ガラスの取付構造の第6実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第5実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0065】
図8に示されるように、接着ガラスの取付構造120では、リアガラス30の車両幅方向外側の端部30Aの裏面に、ドアインナパネル100側に突出する座面部122を備えている。座面部122は、リアガラス30の端部30Aの裏面に沿って配置された壁部122Aと、壁部122Aの車両幅方向外側端部から車両幅方向に延びた縦壁部122Bと、縦壁部122Bの車両幅方向内側端部から車両斜め内側方向に延びた突出部122Cと、を備えている。
【0066】
突出部122Cの前面には、略平面状の接着面122Dが形成されており、接着面122Dは、車両平面視にて車両幅方向外側端面が車両前方側で車両幅方向内側端面が車両後方側となるように傾斜して配置されている。本実施形態では、ドアインナパネル100へのリアガラス30の搭載方向(矢印A方向)に対して接着面122Dが交差するように配置されている。本実施形態では、座面部122が樹脂製のリアガラス30の裏面に2色成形で形成されている。なお、座面部122の突出部122Cを補強するために、突出部122Cと壁部122Aとの間に複数のリブを設けてもよい。
【0067】
このような接着ガラスの取付構造120では、ドアインナパネル100へのリアガラス30の搭載方向(矢印A方向)に対する座面部122の接着面122Dの角度を適切に調整することで、リアガラス30の端部30Aの座面部122をドアインナパネル100の縦壁部100Aに組み付ける軌跡との関係で、座面部122の接着面122Dに塗布された接着剤40がドアインナパネル100に擦れることが抑制される。
【0068】
このため、リアガラス30をドアインナパネル100に組み付ける(搭載する)ときに、座面部122の接着面122Dに塗布された接着剤40がドアインナパネル100に擦れて掻き取られる(又は剥ぎ取られる)ことを抑制することができ、接着作業性を向上することができる。
【0069】
なお、第4〜第6実施形態では、座面部94、112、122の接着面に接着剤40を塗布し、ドアインナパネル100の縦壁部100Aで接着剤40を受けたが、これに限定されず、ドアインナパネル100の縦壁部100Aに接着剤40を塗布し、リアガラスの座面部94、112、122で接着剤40を受けるように構成してもよい。
【0070】
なお、第1〜第6実施形態では、樹脂製のリアガラスを用いたが、これに限定されず、例えば、樹脂以外の一般的なガラスを用いてもよい。その場合は、座面部をリアガラスの裏面に接着固定する構成などが用いられる。
また、第1〜第6実施形態では、リアガラスをドアインナパネルに組み付けるバックドア20に本発明の接着ガラスの取付構造を適用したが、これに限定されず、他の接着ガラスを車両本体に組み付ける構造にも本発明の接着ガラスの取付構造を適用することができる。例えば、車両のフロント側のウィンドシールドガラスの車両幅方向端部を車両本体に接着固定する際に本発明の接着ガラスの取付構造を適用することができる。また、車両のサイド側の接着ガラス(固定ガラス)の端部を車両本体に接着固定する際にも本発明の接着ガラスの取付構造を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 車両
20 バックドア
22 接着ガラスの取付構造
26 ドアインナパネル(車両本体)
30 リアガラス(接着ガラス)
30A 端部(車両幅方向両端部)
30B 車両幅方向中央部
31 一般部
34 座面部
34B 接着面
40 接着剤
50 接着ガラスの取付構造
52 座面部
52B 接着面
60 ドアインナパネル(車両本体)
70 接着ガラスの取付構造
72 座面部
72B 突起部(受け面)
80 ドアインナパネル(車両本体)
80B 接着面
90 接着ガラスの取付構造
92 リアガラス(接着ガラス)
94 座面部
94A 接着面
100 ドアインナパネル(車両本体)
110 接着ガラスの取付構造
112 座面部
112C 接着面
120 接着ガラスの取付構造
122 座面部
122D 接着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に適用される接着ガラスの端部を車両本体に接着剤により接着する接着面に設けられ、前記接着ガラスの一般部の裏面とは異なる座面形状となるように前記車両本体側に突出する座面部を有する接着ガラスの取付構造。
【請求項2】
前記接着ガラスは、車両幅方向に沿って配置されると共に、前記接着ガラスの車両幅方向両端部が車両幅方向中央部よりも車両内側に廻り込むように湾曲して形成されており、
前記接着ガラスの車両幅方向両端部に設けられた前記座面部が前記車両本体に接着されている請求項1に記載の接着ガラスの取付構造。
【請求項3】
前記座面部の前記接着ガラスの裏面からの高さは、前記接着ガラスの車両幅方向外側よりも車両幅方向内側が高くなるように設定されている請求項2に記載の接着ガラスの取付構造。
【請求項4】
前記接着ガラスが樹脂製であり、
前記座面部が前記接着ガラスの裏面に2色成形で形成されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の接着ガラスの取付構造。
【請求項5】
前記接着ガラスが樹脂製であり、
前記座面部が前記接着ガラスと一体成形されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の接着ガラスの取付構造。
【請求項6】
前記接着剤を接着する接着面を前記車両本体側に設け、
前記座面部を前記接着剤の受け面とした請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の接着ガラスの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−18346(P2013−18346A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152859(P2011−152859)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)