説明

接着剤を用いた複層式一体成型パイプ

【課題】表面および内面が錆びないパイプで、接触騒音を緩和した金属製パイプを安価に提供する。
【解決手段】ステンレス管1を、鋼管3やプラスチック製パイプと組合わせたうえ、接着剤2を用いて成型加工で複層式パイプとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は農業の栽培施設(ビニールハウス)の支柱や漁業における捕獲施設(定置網)や養殖施設(養殖イカダ)の支柱、および土木建築の足場用支柱など、幅広い分野で使用が可能である。
【背景技術】
【0002】
農業における栽培施設の支柱、漁業における捕獲施設や養殖施設の支柱、土木建築業における足場用支柱などの用途では現在、主に次の二種類が使用されている。錆びを防止するため表面に亜鉛メッキ処理を施した鋼管、そして防錆塗料を塗った鋼管である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明品が解決する課題は、金属製パイプの腐食(錆び)による、様々な被害や損失を無くすことと、騒音を小さくすることである。
【0004】
農業では、ビニールハウスの支柱には亜鉛メッキ鋼管や、防錆塗料を塗った鋼管が使われているが、これらはいずれ腐食し、その錆びがビニールに付着して、ビニールの透明度を著しく悪化させたり、ビニール自体をも劣化させる。その結果、ビニールハウス内の農作物が日照不足により生育不良になったり、比較的新しいビニールでも取り替えなければならなくなる等の被害や損失が出る。またビニールハウスの天井部で、ビニールの張替え作業中に亜鉛メッキ鋼管製または、防錆塗料を塗った支柱が錆びにより破損し、転落事故を招いたりする被害も後を絶たない。水産業では、捕獲施設や養殖施設の支柱には、亜鉛メッキ鋼管や防錆塗料を塗った鋼管が使われているが、捕獲施設や養殖施設で作業をしている際に、それらの支柱が錆びによって破損し、海中への転落事故が発生したり、漁具や漁網が損傷または、紛失する被害も見られる。土木建築業では、亜鉛メッキ鋼管を組上げた足場の支柱が、錆びにより破損して、作業員の転落事故や、建設資材の転落および破損を招く場合がある。
【0005】
本発明品は以上のような錆びが原因で発生する人身事故を未然に防ぎ、作業中の安全性を向上させることが第一の課題である。第二の課題は経済性の改善である。先に述べたように現在使用されている亜鉛メッキ鋼管や、防錆塗料を塗った鋼管は、いずれは錆びて破損する物である。この際、人身事故だけでなく、物損事故も発生する場合が多く見られる。栽培施設が破損すれば農作物が傷付いたり、市場価格の高い時期に農作物を出荷できなくなるなど、経済的な被害が出る。漁業では捕獲施設や養殖施設が錆びにより破損すると、捕らえた魚類を逃がしたり、養殖してきた魚類や貝類を紛失することになる。土木建築業では、足場が部分的にでも錆びて破損すれば、足場から建設資材などが落下して破損する場合もある。本発明品は、以上のような錆びが原因による物損事故の発生を防ぐだけでなく、各施設の修理費用や建替えコストを軽減させることにより、経済性を改善させることが課題である。そして、第三の課題は、各用途に適した、錆びない金属製パイプを消費者にとって、購入し易い価格にすることである。錆びない金属を最初から採用すれば、前説のように錆びによる被害も出ないわけだが、通常ステンレスなどの錆びない金属製パイプは、たいへん高価なため、消費者は非常に購入しにくいのが現状である。最後に第四の課題は金属製パイプの騒音の軽減である。金属製パイプの輸送時や、組立て作業時、そして普段の接触時の高い金属音を低い音にすることによって騒音を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
先に述べた人身事故や物損事故はすべて栽培施設、捕獲施設や養殖施設、足場を形成する支柱の腐食(錆び)による劣化が原因である。したがって錆びない金属を採用すれば、根本的な原因である錆び問題を完全に解消する事ができるわけだが、錆びない金属であるステンレスなどは通常、非常に高価なため農業や漁業および土木建築業の施設用途に採用されることは、ほとんど無いのが現状である。
【0007】
そこで、金属製パイプ自体の強度を損なうことなく、低コストにてステンレス製パイプの生産ができるように工夫をした。高価な金属である、ステンレス層の厚みを極力薄くし、安価な鋼管の表面に一体成型加工で巻付けた。これによりステンレスの使用量が大幅に削減され、安価で表面が錆びない金属製パイプとなった。
【0008】
しかし、単に鋼管の表面に、一体成型加工で薄いステンレスを巻付けても、表面のステンレス層が内側の鋼管に対して抜ける方向にずれたり、ステンレス層が内側の鋼管に対して空回りすることが判明した。これらを防ぐために、ステンレス層と内側の鋼管を、部分的に溶接したが溶接部分と非溶接部分の境部分に、応力の集中による金属疲労でステンレス層に割れが生じた。また、同時にパイプの両端口に密栓をすることにより、内側の錆びを防止したが、ステンレス層と内側の鋼管との、わずかな隙間に雨などの水分や空気が入るので、パイプの内側ではなくステンレス層と鋼管の隙間で、鋼管の表面に錆びが発生した。
【0009】
本発明品は以上の問題点を一挙に解決するため、表面のステンレス層と内側の鋼管との間に接着剤の層を設けると共に、表面のステンレス層の裏側と、内側の鋼管の表面を全面的に、接着剤で接着した。
【発明の効果】
【0010】
本発明品は、表面のステンレス層と内側の鋼管との間に、接着剤の層を設けると共に、表面のステンレス層の裏側と、内側の鋼管の表面を、全面的に接着した。この結果、表面のステンレス層が、内側の鋼管に対して抜ける方向にずれることもなく、ステンレス層が内側の鋼管に対して空回りする事もなくなった。そして接着剤の層により、ステンレス層と内側の鋼管との隙間が完全に詰まった状態になり、双方の隙間に雨などの水分や空気が入らないので、内側の鋼管の表面が錆びる事もなくなった。以上により表面に薄いステンレスを巻付けた鋼管が、農業や水産業、土木建築の各施設で使用可能となった。
【0011】
この錆びない金属製パイプの使用により、これまでの錆びによる様々な人身事故を未然に防ぐことが可能となり、作業中の安全性が一段と向上する。また同様に、錆びによる物損事故も未然に防ぐことができ、これにともなう修理費用や建替えコストも不要になることから経済的にも改善される事になる。そして高価なステンレスを薄く表面にのみ採用したので、材料コストが安くなり、消費者にとって購入しやすい低価格となった。最後に、金属製パイプの騒音についてはステンレス管と鋼管の間に樹脂性接着剤層があり、この層が金属の振動を抑える働きをするので、金属製パイプの輸送時や、組立て作業時、そして普段の接触時の金属音が従来より低くなるので、騒音の軽減につながった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明品は複層式パイプであり、表面(一番外側)に、ステンレスなどの防食性(錆び難さ)に富んだ金属を採用した場合は、表面と各層の間は極めて防食性に優れているが、パイプの最も内側に鋼管などの、錆び易い素材を採用する場合は、パイプの両端口に密栓をして、内側への水分や酸素の侵入を阻止して、錆びを防ぐ必要がある。そして、パイプの内側に対しても高い防食性が求められる場合は、内側の鋼管のさらにその内側に、ステンレス製パイプを組合わせる。これにより、表面と内側および各層の間も、非常に高い防食性を有することになる。また、より軽量なパイプが求められる場合は、上記の鋼管の代わりに、プラスチック製パイプを採用することによって、軽量化することができる。以上のように、それぞれの用途に合わせて、様々な素材を組合わせて防食性を高めたり、軽量化を計ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】 ステンレス管と鋼管を組合わせたパイプを斜めに切断した断面図
【図2】 ステンレス管と鋼管を組合わせたパイプを縦に切断した断面図
【図3】 ステンレス管とプラスチック管を組合わせたパイプを斜めに切断した断面図
【図4】 ステンレス管とプラスチック管を組合わせたパイプを縦に切断した断面図
【図5】 二つの太さの異なるステンレス管の間に鋼管を組合わせたパイプを斜めに切断した断面図
【図6】 二つの太さの異なるステンレス管の間に鋼管を組合わせたパイプを縦に切断した断面図
【符号の説明】
【0014】
1 ステンレス管層
2 接着剤層
3 鋼管層
4 プラスチック管層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同質または異なる材質の金属製パイプやプラスチック製パイプを、外側と内側に組合わせたうえ、接着剤を用いた一体成型加工により生産した複層式パイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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