説明

接着剤組成物

【課題】有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上する接着剤組成物を提供する。
【解決手段】極性基含有単量体をグラフト重合した変性天然ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を含有することを特徴とする接着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用繊維とゴムとの接着に用いられる接着剤組成物に関し、特に、ゴムとの接着に用いられる有機繊維コード用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機繊維コードとゴムとの接着を確保するためには、接着剤組成物(ディップ液)としてレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)が使用されている。(例えば、特許文献1参照)
そして、上記の接着剤組成物で被覆された有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性を改良するため接着剤組成物に天然ゴムラテックスを加えることも試みられている。(例えば、特許文献2及び3参照)
しかしながら、接着剤組成物に天然ゴムラテックスを加えることにより、かえってゴム加硫後の接着力が低下するという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開昭48−11335号公報
【特許文献2】特開平2−91276号公報
【特許文献3】特開平8−325953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下になされたもので、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上する接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、天然ゴムラテックスを改良することにより、本発明の課題を達成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1]極性基含有単量体をグラフト重合した変性天然ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を含有することを特徴とする接着剤組成物、
[2]前記二価フェノール類が、レゾルシンである上記[1]の接着剤組成物、
[3]前記官能基が、アルデヒド基又は第1アミノ基である上記[1]又は[2]の接着剤組成物、
[4]前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物が、ホルムアルデヒドである[1]又は[2]のいずれかの接着剤組成物、
[5]前記極性基が、前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応するものである上記[1]〜[4]のいずれかの接着剤組成物、
[6]前記極性基が、アミノ基、ヒドロキシ基、含窒素複素環基、カルボキシ基、エポキシ基、アミド基又はイソシアネート基である上記[1]〜[5]のいずれかの接着剤組成物、
[7]前記極性基含有単量体のグラフト量が、前記変性天然ゴムラテックスのゴム分に対して、0.01〜5.0質量%である上記[1]〜[6]のいずれかの接着剤組成物、
[8]前記変性天然ゴムラテックスのゴム分と前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスのゴム分との質量比が10/90〜70/30である上記[1]〜[7]のいずれかの接着剤組成物、及び
[9]前記変性天然ゴムラテックスのゴム分及び前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスのゴム分からなるゴム成分100質量部に対して、前記二価フェノール類及び前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物からなる樹脂成分が10〜30質量部含まれる上記[1]〜[8]のいずれかの接着剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上する接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の接着剤組成物は、極性基含有単量体をグラフト重合した変性天然ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明における極性基含有単量体は、分子内に少なくとも一つの極性基を有し、天然ゴム分子とグラフト重合できる単量体である限り特に制限されるものでないが、天然ゴム分子とグラフト重合するために、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、極性基含有ビニル系単量体であることが好ましい。極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ピリジル基、イソシアネート基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、アルコキシシリル基、及びスズ含有基等を挙げることができる。これらの極性基の内、二価フェノール類のヒドロキシ基と反応するものであることがより好ましく、アミノ基、ヒドロキシ基、含窒素複素環基、カルボキシ基、エポキシ基、アミド基又はイソシアネート基であることが特に好ましい。
これら極性基を含有する単量体は、一種単独で用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。
【0010】
本発明において、極性基としてアミノ基を含有する極性基含有単量体としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を含有する重合性単量体が挙げられる。該アミノ基を有する重合性単量体の中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有単量体が特に好ましい。これらアミノ基含有単量体は、一種単独で用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。なお、アミド基含有単量体は、アミノ基含有単量体に包含され、併せて例示される。
【0011】
ここで、第1級アミノ基含有単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、4-ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0012】
また、第2級アミノ基含有単量体としては、(1)アニリノスチレン、β-フェニル-p-アニリノスチレン、β-シアノ-p-アニリノスチレン、β-シアノ-β-メチル-p-アニリノスチレン、β-クロロ-p-アニリノスチレン、β-カルボキシ-p-アニリノスチレン、β-メトキシカルボニル-p-アニリノスチレン、β-(2-ヒドロキシエトキシ)カルボニル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-β-メチル-p-アニリノスチレン、α-カルボキシ-β-カルボキシ-β-フェニル-p-アニリノスチレン等のアニリノスチレン類、(2)1-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン、3-アニリノフェニル-2-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類、(3)N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド等のN-モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0013】
更に、第3級アミノ基含有単量体としては、N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられ、これらの中でも、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が特に好ましい。
【0014】
また、上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物等が挙げられ、これらの中でも、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が特に好ましい。
【0015】
本発明において、極性基としてヒドロキシ基を含有する極性基含有単量体としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級及び第3級ヒドロキシ基を有する重合性単量体が挙げられる。かかる単量体としては、ヒドロキシ基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシ基含有ビニルエーテル系単量体、ヒドロキシ基含有ビニルケトン系単量体等が挙げられる。
【0016】
ここで、ヒドロキシ基含有単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば、2〜23である)のモノ(メタ)アクリレート類;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有不飽和アミド類;o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、m-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシ基含有ビニル芳香族化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシ基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、ヒドロキシ基含有不飽和カルボン酸系単量体が特に好ましい。ここで、ヒドロキシ基含有不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエステルが特に好ましい。これらヒドロキシ基含有単量体は、一種単独で用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。
【0017】
本発明において、極性基として含窒素複素環基を含有する極性基含有単量体において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいても良い。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有する単量体が好ましく、具体的には、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等のピリジル基含有ビニル化合物等が挙げられ、これらの中でも、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が特に好ましい。これら含窒素複素環基含有単量体は、一種単独で用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。
【0018】
本発明において、極性基としてカルボキシ基を含有する極性基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;フタル酸、コハク酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。これらカルボキシル基含有単量体は、一種単独で用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。
【0019】
本発明において、極性基としてエポキシ基を含有する極性基含有単量体としては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらエポキシ基含有単量体は、一種単独で用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。
【0020】
本発明において、極性基としてアルコキシシリル基を含有する極性基含有単量体としては、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6-トリメトキシシリル-1,2-ヘキセン、p-トリメトキシシリルスチレン等が挙げられる。これらアルコキシシリル基含有オレフィンは、一種単独で用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。
【0021】
本発明において、極性基としてスズ含有基を含有する極性基含有単量体としては、アリルトリ-n-ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ-n-オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ-n-ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ-n-オクチルスズ、ビニルトリ-n-ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ、ビニルトリ-n-オクチルスズ等のスズ含有単量体を挙げることができる。これらスズ含有オレフィンは、一種単独で用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。
【0022】
上記変性天然ゴムラテックスの製造に用いる天然ゴムラテックスとしては、特に限定されず、例えば、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱タンパク質ラテックス、及びこれらを組み合せたもの等を用いることができる。
【0023】
また、ここで、上記極性基含有単量体の天然ゴムラテックスへの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えても良いし、極性基含有単量体を乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックス中に加えても良い。なお、天然ゴムラテックス及び/又は極性基含有単量体の乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0024】
本発明に用いられる変性天然ゴムラテックスは、天然ゴムラテックスに上述の極性基含有単量体を添加し、例えば、重合開始剤としてtert−ブチルヒドロペルオキシドとテトラエチレンペンタミンとを用いて、該極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させれば良い。
上述した各成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜24時間反応させることで、天然ゴム分子に上記極性基が導入された変性天然ゴムラテックスが得られる。
【0025】
得られた変性天然ゴムラテックス中の極性基含有単量体のグラフト量は、前記変性天然ゴムラテックスのゴム分に対して、0.01〜5.0質量%であることが好ましい。グラフト量がこの範囲であれば、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上するので好ましい。
【0026】
本発明の接着剤組成物に用いられるブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスは、ブタジエン化合物と、ビニルピリジン系化合物と、スチレン系化合物とを三元共重合させたものである。ここで、ブタジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらブタジエン化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0027】
上記ビニルピリジン系化合物は、ビニルピリジンと、該ビニルピリジン中の水素原子が置換基で置換された置換ビニルピリジンとを包含する。該ビニルピリジン系化合物としては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられ、これらの中でも、2−ビニルピリジンが好ましい。これらビニルピリジン系化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
上記スチレン系化合物は、スチレンと、該スチレン中の水素原子が置換基で置換された置換スチレンとを包含する。該スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。これらスチレン系化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0029】
上記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスは、ブタジエン由来の構成単位、ビニルピリジン由来の構成単位及びスチレン由来の構成単位の質量比が、80/10/10〜30/20/50であることが好ましい。
このブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスは市販品として入手することが可能であり、例えば、日本A&L社製、商品名「PYRATEX」、固形分41質量%のものが挙げられる。
本発明の接着剤組成物においては、上記変性天然ゴムラテックスのゴム分と上記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスのゴム分との質量比が10/90〜70/30であることが好ましい。質量比がこの範囲であれば、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上するので好ましい。
【0030】
本発明においては、上述の変性天然ゴムラテックス及びブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスに加えて、本発明の効果が損なわれない範囲で、他のゴムラテックス1種以上を適宜併用することができる。
他のゴムラテックスとしては、例えばブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体をカルボキシ基等で変性した変性ラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス及びその変性ラテックス、アクリル酸エステル共重合体系ラテックス、ブチルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスの他、被着ゴムに配合されるゴム成分と同種のゴム成分を水又は有機溶媒に分散させて調製したラテックス等を用いることができる。
【0031】
本発明の接着剤組成物に用いられる二価フェノール類としては、無置換の二価フェノール及び炭素数1〜10のアルキル基等で置換された置換二価フェノールが好ましい。二価フェノールとしては、レゾルシン、カテコール及びヒドロキノンが挙げられ、置換二価フェノールとしては、3−メチルレゾルシン、3−エチルレゾルシン、3−プロピルレゾルシン、3−ブチルレゾルシン、3−t−ブチルレゾルシン等が挙げられる。これらの内、レゾルシンが好ましい。
本発明の接着剤組成物に二価フェノール類が存在すると、この二価フェノール類と変性天然ゴムラテックスのグラフト重合した極性基含有単量体とが結合できるため、ゴム加硫後の接着力が改良されることとなる。
本発明の接着剤組成物においては、二価フェノール類に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、所望によりレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を配合しても良い。
レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂としては、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物を用いることができる。このレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物は、ホルムアルデヒド由来の構成単位とレゾルシン由来の構成単位とを含有し、ホルムアルデヒド由来の構成単位が化学量論的に不足する状態を維持することが重要である。即ちこれにより樹脂を低分子量で可溶性に維持することができる。
【0032】
本発明の接着剤組成物に用いられる、二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物としては、二価フェノール類のヒドロキシ基と反応し樹脂を生成するものであれば何でも良い。官能基としては、アルデヒド基又は第1アミノ基が好ましい。二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物としては、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0033】
本発明の接着剤組成物においては、上記変性天然ゴムラテックスのゴム分及び上記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスのゴム分からなるゴム成分100質量部に対して、前記二価フェノール類及び前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物からなる樹脂成分が10〜30質量部含まれることが好ましい。樹脂成分の含有量がこの範囲であれば、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上するので好ましい。
なお、所望により他のゴムラテックスが加えられる場合は、そのゴム分もゴム成分に加えられ、所望によりレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂等の樹脂が加えられる場合は、その樹脂分も樹脂成分に加えられる。
【0034】
本発明の接着剤組成物においては、上記の変性天然ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を熟成させる際に触媒として塩基性化合物を用いることが好ましい。この塩基性化合物としては、例えばアンモニアや水酸化ナトリウム等を用いることができる。この当該塩基性化合物の配合量は、塩基性化合物の種類にもよるが、アンモニアの場合、固形分換算で、上記の変性天然ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物の合計量100質量部に対して、通常1〜8質量部程度、好ましくは2〜6質量部である。一方、水酸化ナトリウムの場合は、固形分換算で、上記の変性天然ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物の合計量100質量部に対して、通常0.1〜2質量部程度、好ましくは0.2〜1質量部である。
本発明においては、塩基性化合物は、水溶液の形態で、前記上記の変性天然ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物の混合液に加えても良いし、他の成分と同時に加えても良い。
【0035】
本発明の接着剤組成物が適用される工業用繊維については特に制限はなく、種々の有機繊維コードや無機繊維コードに適用されるが、有機繊維コードに適用されることが好ましい。有機繊維コードとしては、木綿、レーヨン、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−6,6)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、アラミド(m−フェニレンイソフタルアミド、p−フェニレンテレフタルアミド)等のコードを挙げることができる。これらのコードはゴム製品の補強材として本発明の接着剤組成物にて処理される。
【0036】
本発明の接着剤組成物の使用方法は特に制限がなく、繊維材料を接着剤組成物に浸漬する方法、ドクターナイフ又はハケで塗布する方法、スプレー塗布する方法、粉体化して吹き付け塗布する方法等のいずれの方法でも良い。具体的には、例えば、有機繊維コードに含浸付着させた後、加熱処理し、その後に上記有機繊維コードを未加硫ゴムに埋設し、次いで該未加硫ゴムを加硫処理、又は電子線、マイクロ波もしくはプラズマによる処理をして有機繊維コードとゴムとを一体化することにより、有機繊維コードで補強されたゴム製品を製造する。
上記の加熱処理をする温度としては、該有機繊維コードに、接着性を効果的に付与する観点から、100〜260℃が好ましく、220〜255℃がより好ましく、230〜250℃が特に好ましい。
【0037】
また、該有機繊維コードに対する接着剤組成物の付着量(乾燥後の含浸処理済コードの質量を基準として、接着剤組成物による増加質量)は1〜15質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることが更に好ましい。更に、未加硫ゴムは、得られるゴム製品の用途に応じて、適宜選定される。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、接着力及び密着力の評価法は下記の方法に基づいて行った。
<接着力>
供試接着剤組成物により接着剤処理した繊維コードを第1表に示す配合組成の接着試験用の未加硫ゴム組成物の表面近傍に埋め込み、加硫条件155℃×20分、2MPaの加圧下で加硫し、短冊状の形状を有するサンプルを作製した。得られた加硫物サンプルから繊維コードを掘り起こし、JIS K 6256:1999のa)に準拠して、毎分30cmの速度で繊維コードを加硫ゴムから剥離した。このときの剥離強さを室温(23℃)で測定し、コード1本当りの接着力(kg/本)を算出した。
【0039】
【表1】

[注]
*1:JSR株式会社製、商品名「IR2200」
*2:N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、精工化学(株)製、商品名「オゾノン3C」
*3:HAF、東海カーボン(株)製、商品名「シースト3」
*4:富士興産(株)製、商品名「フツコールAROMAX#1」
*5:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ」
【0040】
<密着力>
上記接着力の評価試験の手順において、加硫を実施せずに、繊維コードを剥離した場合の剥離強さからコード1本当りの密着力(kg/本)を算出した。
【0041】
実施例1
<変性天然ゴムラテックスの製造>
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製など]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60質量%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル[エマルゲン108,花王株式会社製]をN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次いで、重合開始剤としてtert−ブチルヒドロペルオキシド 1.2gとテトラエチレンペンタミン 1.2gとを添加し、40℃で30分間反応させ、その後、水を添加することにより固形分を41質量%に調整し、目的とする変性天然ゴムラテックスを得た。
【0042】
得られた変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して得られた固形ゴムから、単量体として加えたN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率が100%であることが確認された。また、この固形ゴムを石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することによりホモポリマーの分離を試みたが、抽出物を分析したところホモポリマーは検出されず、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、得られた変性天然ゴムラテックスAの極性基含有量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.027mmol/gである。
【0043】
<接着剤組成物の製造>
第2表の組成内容の内、軟水にレゾルシンを溶解させ、これに水酸化ナトリウム水溶液を加え、ついでホルムアルデヒドを加え、27℃、8時間熟成し、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂液を得た。得られたレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂液に、上記の変性天然ゴムラテックス(固形分41質量%)及びブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス(固形分41質量%)[日本A&L社製、商品名「PYRATEX」など]の第2表に示す質量部を第3表に示す質量比にて加えた後、更に、23℃で16時間熟成して、実施例1の接着剤組成物を得た。
【0044】
【表2】

【0045】
<繊維コードの製造と接着剤処理>
繊維コードとして、6−ナイロンの1400dtexの原糸を下撚り39回/10cm、上撚り39回/10cmで撚り、撚り構造1400dtex/2として、実施例1の接着剤組成物に浸漬し、160℃で60秒間乾燥し、更に240℃で60秒間熱処理して、接着剤処理した繊維コードを得た。この繊維コードについて、接着力及び密着力を評価した。結果を第3表に示す。
【0046】
実施例2〜8
実施例1における3.0gのN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートの代わりに、実施例2では2−ヒドロキシエチルメタクリレートを2.1g、実施例3では4−ビニルピリジンを1.7g、実施例4ではイタコン酸を2.1g、
実施例5ではメタクリル酸を1.4g、実施例6ではアクリルニトリルを1.7g、実施例7ではグリシジルメタクリレートを2.3g、実施例8ではメタクリルアミドを2.8g用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜8に用いられる変性天然ゴムラテックスを得た。実施例1と同じ方法により天然ゴムラテックスを分析した所、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることを確認した。
これらの変性天然ゴムラテックスを用い、実施例1と同様にして実施例2〜8の接着剤組成物を得た。これらの接着剤組成物を用い、実施例1と同じ接着剤処理をした実施例1と同じ繊維コードについて、接着力及び密着力を評価した。結果を第3表に示す。
【0047】
実施例9
<変性天然ゴムラテックスの製造>
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製など]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と1.8gの乳化剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル[エマルゲン108,花王株式会社製]をN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 60.0gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次いで、重合開始剤としてtert−ブチルヒドロペルオキシド 0.6gとテトラエチレンペンタミン 0.6gとを加え、40℃で2時間反応させ、その後、水を添加することにより固形分を41質量%に調整し、目的とする変性天然ゴムラテックスを得た。
実施例1と同じ方法により変性天然ゴムラテックスを分析したところ、添加した単量体の転化率は98.2%であることを確認した。また、抽出によりホモポリマーの量を分析したところ、単量体の4.8%であった。
この変性天然ゴムラテックスを用い、実施例1と同様にして実施例9の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を用い、実施例1と同じ接着剤処理をした実施例1と同じ繊維コードについて、接着力及び密着力を評価した。結果を第3表に示す。
【0048】
実施例10
実施例9における60.0gのN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートの代わりに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを60.0g用いた以外は実施例9と同じ操作、条件により変性天然ゴムラテックスを得た。実施例1と同じ方法により変性天然ゴムラテックスを分析したところ、添加した単量体の転化率は98.7%であることを確認した。また、抽出によりホモポリマーの量を分析したところ、単量体の4.1%であった。
この変性天然ゴムラテックスを用い、実施例1と同様にして実施例10の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を用い、実施例1と同じ接着剤処理をした実施例1と同じ繊維コードについて、接着力及び密着力を評価した。結果を第3表に示す。
【0049】
実施例11〜34
実施例1〜8において得られた変性天然ゴムラテックスを第3表記載の組成にて接着剤組成物を調製した。これら実施例11〜34の接着剤組成物を用い、実施例1と同じ接着剤処理をした実施例1と同じ繊維コードについて、接着力及び密着力を評価した。結果を第3表に示す。
【0050】
比較例1〜7
天然ゴムラテックスを変性することなく、固形分調整のみ実施してそのまま使用し、実施例1と同様にして比較例1〜7の接着剤組成物を得た。これらの接着剤組成物を用い、実施例1と同じ接着剤処理をした実施例1と同じ繊維コードについて、接着力及び密着力を評価した。結果を第3表に示す。
【0051】
【表3】

[注]
A:N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート
B:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
C:4−ビニルピリジン
D:イタコン酸
E:メタクリル酸
F:アクリルニトリル
G:グリシジルメタクリレート
H:メタクリルアミド
【0052】
【表4】

[注]
A、B、C、D、E、F、G,Hは、いずれも第3表−1と同じ。
【0053】
【表5】

【0054】
第3表から分かるように、本発明の実施例1〜27の接着剤組成物は、比較例1〜7の接着剤組成物と比較して、いずれも有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の接着剤組成物は、工業用繊維、特に有機繊維コードと硫黄架橋可能なゴムの加硫体との複合体の接着処理に用いられ、タイヤ、コンベアベルト、ホース、空気バネ等のあらゆるゴム製品の製造に好適に用いられる。特にタイヤでは前記複合体としてベルト材、カーカス材、プライ材、キャッププライ材、レイヤー材等として使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性基含有単量体をグラフト重合した変性天然ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記二価フェノール類が、レゾルシンである請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記官能基が、アルデヒド基又は第1アミノ基である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物が、ホルムアルデヒドである請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記極性基が、前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応するものである請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記極性基が、アミノ基、ヒドロキシ基、含窒素複素環基、カルボキシ基、エポキシ基、アミド基又はイソシアネート基である請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記極性基含有単量体のグラフト量が、前記変性天然ゴムラテックスのゴム分に対して、0.01〜5.0質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記変性天然ゴムラテックスのゴム分と前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスのゴム分との質量比が10/90〜70/30である請求項1〜7のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記変性天然ゴムラテックスのゴム分及び前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスのゴム分からなるゴム成分100質量部に対して、前記二価フェノール類及び前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物からなる樹脂成分が10〜30質量部含まれる請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−116472(P2010−116472A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290122(P2008−290122)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】