説明

接着剤組成物

【課題】無溶媒型2コンポーネント接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)ポリイソシアナートコンポーネントと(b)1種以上のポリオールを含むポリオールコンポーネントとを含む接着剤組成物であって、前記(a)が(i)モノマー系4,4’メチレンジフェニルジイソシアナートおよび(ii)イソシアナート官能性プレポリマーを含み、前記(ii)が(A)モノマー系4,4’メチレンジフェニルジイソシアナートと、(B)1種以上のポリオールとを含むプレポリマー反応物質混合物の反応生成物であり、前記(B)が(B1)1,000以下の平均分子量を有する1種以上のトリオール、および(B2)1,000を超える平均分子量を有する1種以上のトリオールを含み、前記プレポリマー反応物質混合物中及び前記ポリイソシアナートコンポーネント中のモノマー系2,2’メチレンジフェニルジイソシアナートの量が、1重量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
以下は本発明の背景である。
【0002】
有用な種類の接着剤組成物は硬化性ポリウレタン接着剤組成物である。この組成物の有用なカテゴリーは無溶媒型2コンポーネント組成物である。
【0003】
この2コンポーネント組成物においては、一方のコンポーネントはポリイソシアナートコンポーネントであり、他方のコンポーネントは複数の活性水素を有する1種以上の化合物を含むコンポーネントである。この2コンポーネント組成物を接着剤として使用することが望まれる場合には、この2つのコンポーネントは一緒に混合され、そしてその混合物は2以上の基体と接触させられる。
【0004】
接着剤組成物の2つのコンポーネントがまず一緒に混合される場合、流体が基体に容易に適用されうるように、得られる混合物が25℃で充分低い粘度の流体であるのが望ましい。通常、流体の層が基体に適用されたすぐ後で、第2の基体がその層に接触させられて集合体を形成する。その集合体が最初に造られる場合には、硬化反応が起こる前に、接着剤組成物は基体間の接着剤結合を提供しない。この接着剤組成物は、集合体の形成の後で硬化反応を受け、基体間の接着剤結合を形成して、結合した集合体を形成することが望まれる。接着剤組成物は良好な結合強度発現を示すことが望ましい。すなわち、結合した集合体が最初に形成される場合には、その結合の強度が素早く増大することが望ましい。結合した集合体の形成から2〜8時間後にその結合が良好な強度を有することが望ましい。良好な結合強度発現は変換者が、接着剤組成物が硬化するために長期間待つ必要なしに、結合した集合体をさらなる製造工程にかけることを可能にするので、良好な結合強度発現は変換者(すなわち、結合した集合体を作成する人)にとって重要である。
【0005】
ある2コンポーネント接着剤組成物は1種以上のモノマー系芳香族ポリイソシアナート化合物と1種以上のポリオールとを含む。この組成物はウレタンポリマーを形成する化学反応を行うことができ、これは多くの場合有用な硬化反応である。このモノマー系芳香族ポリイソシアナートは最終的には、反応して、接着剤結合を強化するポリマーおよび/または架橋を形成することができる。
【0006】
これら接着剤組成物は場合によっては2以上の基体一緒に保持して、食品を収容する容器の一部分もしくは全部である結合した集合体を形成するために使用される。硬化反応が起こった場合であってさえ、幾分かのモノマー系ポリイソシアナート化合物がその結合した集合体中に存在する場合がある。モノマー系ポリイソシアナート化合物の存在は望ましくないと考えられる。モノマー系ポリイソシアナート化合物のその望ましくなさについての理由の1つはそれが毒性でかつ反応性であると考えられるからである。モノマー系ポリイソシアナート化合物のその望ましくなさについての別の理由は、それが、特に酸性条件下で、水と反応してアミンを形成しうるからである。このアミンは望ましくないと考えられる。このアミンの中で、第一級芳香族アミン(PAA)が特に望ましくないと考えられる。容器が食品を収容する場合には、この容器と食品との間の接触が、感知できる量のPAAが食品中に存在する状況をもたらさないことが望まれる。
【0007】
食品中のPAAの存在に寄与する結合した集合体の能力は一般的に、その結合した集合体を一定時間希酢酸に曝露させることにより試験される。この希酢酸は「模擬物」(すなわち、それは食品の作用を模倣する)として機能する。その時間中に、結合した集合体中に存在しうるPAAはこの模擬物に移動しうる。また、その時間中に、試験下の材料中のモノマー系芳香族イソシアナート化合物がこの模擬物中に移動し、そしてこの模擬物と反応してPAAを形成しうる。その後、この模擬物は、全てのPAAの合計濃度について分析されうる。本明細書においては、その濃度は「PAAレベル」と称される。
【0008】
結合した集合体は低いPAAレベルを有することが望ましい。
【0009】
過去においては、結合した集合体の形成およびこの接着剤の硬化反応が完了したと思われた後でさえ、2コンポーネントポリウレタン接着剤を用いて製造された結合した集合体が感知できる量の存在するモノマー系芳香族ポリイソシアナートを有することが一般的であった。この結合した集合体は高いPAAレベルを有していた。
【0010】
過去においては、低いPAAレベルの結合した集合体を提供する試みの1つは、結合した集合体を作成し、次いでその結合した集合体を使用して最終的に食品を収容する容器を作成する前に、その結合した集合体を貯蔵庫に置くことである。モノマー系ポリイソシアナートの濃度は、結合した集合体が貯蔵庫中にある間に、通常、減少しうる。雰囲気中の水が接着剤中に拡散して、イソシアナート基と反応すると考えられる。これら反応のいくつかは結果的にPAAの形成をもたらすが、これら反応の大部分は尿素型化合物もしくは他の関連する無害な化合物の形成をもたらすであろう。よって、イソシアナート基が反応するにつれて、モノマー系芳香族ポリイソシアナートの量は低下し、かつPAAレベルも低下する。過去においては、PAAレベルが許容可能に低くなるまでに、多くの場合、14日以上の貯蔵時間が必要とされた。
【0011】
別のアプローチが米国特許出願公開第2010/0010156号によってなされ、これは第一級芳香族アミンの割合が低減されている結合多層膜をもたらす接着剤を記載する。米国特許出願公開第2010/0010156号は少なくとも1種のNCO−反応性ポリウレタンプレポリマーおよび/またはポリイソシアナートを含むポリウレタン接着剤を記載し、このポリウレタン接着剤は低分子量化合物を含み、この低分子量化合物は、エポキシド基、(メタ)アクリル基もしくはカルボン酸無水物基から選択される、第一級アミノ基と反応性の少なくとも1つの基を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0010156号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(結合した集合体の形成後比較的短時間で)望ましく低いレベルのPAAを有する無溶媒型2コンポーネント接着剤組成物を提供することが望まれる。この2つのコンポーネントが最初に一緒にされる場合に接着剤組成物が望ましく低い粘度を有し、かつ結合強度を望ましく速く発現することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下は本発明の記載である。
本発明の第1の形態においては、
(a)ポリイソシアナートコンポーネントと(b)1種以上のポリオールを含むポリオールコンポーネントとを含む接着剤組成物であって、
前記(a)ポリイソシアナートコンポーネントが(i)モノマー系4,4’メチレンジフェニルジイソシアナートおよび(ii)イソシアナート官能性プレポリマーを含み、
前記(ii)イソシアナート官能性プレポリマーが(A)モノマー系4,4’メチレンジフェニルジイソシアナートと、(B)1種以上のポリオールとを含むプレポリマー反応物質混合物の反応生成物であり、
前記(B)1種以上のポリオールが(B1)1,000以下の平均分子量を有する1種以上のトリオール、および(B2)1,000を超える平均分子量を有する1種以上のトリオールを含み、
前記プレポリマー反応物質混合物中のモノマー系2,2’メチレンジフェニルジイソシアナートの量が、前記プレポリマー反応物質混合物の重量を基準にして1重量%以下であり、
前記ポリイソシアナートコンポーネント中のモノマー系2,2’メチレンジフェニルジイソシアナートの量が、前記ポリイソシアナートコンポーネントの重量を基準にして1重量%以下である、
接着剤組成物が提供される。
【0015】
本発明の第2の形態においては、本発明の第1の形態の接着剤組成物を2以上の基体の双方と接触させることを含む、2以上の基体を結合させる方法が提供される。
【0016】
本発明の第3の形態においては、本発明の第1の形態の接着剤組成物によって一緒に結合された2以上の基体を含む、結合した集合体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下は本発明の詳細な説明である。
【0018】
本明細書において使用される場合、文脈が明らかに他のことを示さない限りは、以下の用語は指定された定義を有する。
【0019】
本明細書において使用される場合、ある化合物が1気圧で100℃以下の沸点を有する場合には、その化合物は「揮発性」である。本明細書において使用される場合、「溶媒」は、1気圧で15℃〜20℃を含む温度範囲にわたって液体である揮発性化合物である。本明細書においては、ある組成物が組成物の全重量を基準にして、合計で2重量%以下の量で全溶媒を含む場合には、その組成物は「無溶媒型(solventless)」と見なされる。本明細書において使用される場合、あるパーセンテージ「以下」の量の溶媒を有する組成物は、溶媒ゼロパーセントの組成物を包含する。本明細書においては、組成物の「全固形分」は組成物の全重量を基準にした、組成物中の揮発性でない化合物の重量での量であると見なされる。
【0020】
本明細書において使用される場合、ポリイソシアナート化合物(本明細書においては、「ポリイソシアナート」とも称される)は2以上のイソシアナート基を含む化合物である。ポリイソシアナート化合物はモノマー系もしくは非モノマー系でありうる。芳香族ポリイソシアナートは1以上の芳香環を含むポリイソシアナートである。芳香環を含まないポリイソシアナートは非芳香族ポリイソシアナートである。本明細書において使用される場合、「ポリイソシアナートコンポーネント」はポリイソシアナート化合物であるか、または混合物中の1種以上の化合物がポリイソシアナート化合物である化合物の混合物である。
【0021】
本明細書において使用される場合、「モノマー系ポリイソシアナート」は2以上のイソシアナート基を有し、1,000未満の分子量を有し、かつウレタン結合も尿素結合も有さない化合物である。モノマー系ポリイソシアナートではないあらゆるポリイソシアナートは非モノマー系ポリイソシアナートである。
【0022】
本明細書において使用される場合、「MDI」はメチレンジフェニルジイソシアナートであり、ジフェニルメタンジイソシアナートとも称される。MDIは3種の異性体(4,4’MDI、2,4’MDI、および2,2’MDI)のうちの1種として存在するか、またはこれら異性体の2種以上の混合物として存在する。本明細書において使用される場合、他に特に示されない限りは、「MDI」はポリマー系MDI(場合によっては、PMDIと称される)を言及しない。ポリマー系MDIはメチレン架橋によって互いに連結された3つ以上のベンゼン環の鎖を有し、各ベンゼン環にイソシアナート基が結合されている化合物である。
【0023】
複数の活性水素を有する化合物は2以上の活性水素基を有する有機化合物である。活性水素基は酸素もしくは窒素に結合した水素を有する基である。2以上のヒドロキシル基を有する化合物はポリオールである。2つだけのヒドロキシルを有するポリオールはジオールである。3つだけのヒドロキシル基を有するポリオールはトリオールである。2以上のアミン基を有する化合物はポリアミンである。複数の活性水素を有するいくつかの化合物は1以上のアミン基と1以上のヒドロキシル基とを有する。
【0024】
本明細書においては、複数原子からなる1つの線状鎖内に2以上のエーテル結合を含む化合物はポリエーテルと称される。本明細書においては、複数原子からなる1つの線状鎖内に2以上のエステル結合を含む化合物はポリエステルと称される。ポリエステルでありかつポリオールである化合物はポリエステルポリオールであり、ポリエーテルでありかつポリオールである化合物はポリエーテルポリオールである。
【0025】
化合物が含む脂肪族炭素原子の数によって化合物を特徴付けることが場合によっては有用である。本明細書において使用される場合、脂肪族炭素原子は以下の種類のいずれかに属する炭素原子である:(i)他の炭素原子もしくは水素原子以外の原子への結合を有しない炭素原子;および(ii)酸素、窒素および硫黄から選択される1つのヘテロ原子への1つの単結合を有し、かつそのほかについては、水素原子もしくはカテゴリー(i)の炭素原子以外の原子への結合を有さない炭素原子。
【0026】
本明細書においては、アルキル化合物に結合した2以上のヒドロキシル基を有する当該アルキル化合物はアルキルポリオールと称され、アルキルポリオールはヒドロキシル基以外の置換基を有さない。アルキルポリオールにおける原子の全ては、ヒドロキシル基内の酸素原子を除いて炭素および水素である。
【0027】
いくつかの非モノマー系ポリイソシアナートは1種以上のポリイソシアナートと、複数の活性水素化合物を有する1種以上の化合物との反応生成物であり、この反応生成物は2以上の未反応イソシアナート基を有する。この非モノマー系ポリイソシアナートは、例えば、1種以上のポリイソシアナートと1種以上のポリオールとの反応生成物、または1種以上のポリイソシアナートと1種以上のポリアミンとの反応生成物、またはこの混合物であり得る。1種以上のポリイソシアナートと複数の活性水素化合物を有する1種以上の化合物との反応生成物であって、かつ1,000以上の分子量を有するポリイソシアナートは、本明細書においては、プレポリマーと称される。このプレポリマーはポリイソシアナートなので、本明細書においては、それはイソシアナート官能性プレポリマーと称される。
【0028】
組成物中のイソシアナート基の量を特徴付ける有用な方法は「%NCO」であり、これは組成物中に存在する全てのイソシアナート基の全重量を組成物の全重量で割ったものであって、パーセンテージで表される。
【0029】
本明細書において使用される場合、可塑剤はイソシアナート基を有さず、かつ活性水素基を有さない化合物である。可塑剤としての資格を有するためには、化合物は本発明の接着剤組成物中に25℃で可溶性でもなければならない。
【0030】
本明細書において使用される場合、「ポリウレタン」はウレタン結合および尿素結合から選択される3つ以上の結合を含む複数原子の線状鎖を含む化合物である。
【0031】
本明細書においては、組成物の特性を向上させるように、望ましく、組成物の分子量の増大をもたらすおよび/または組成物の架橋をもたらす化学反応が起こる場合、組成物が「硬化する」と称される。この化学反応は「硬化反応」と称される。この反応が完了するかまたは硬化反応が、組成物の特性が有用でありかつ時間の経過と共に目立った変化をしないほど充分に進展した場合には、組成物は「硬化した」と称される。1種以上の硬化反応を受けうる組成物は硬化性組成物である。
【0032】
本明細書において使用される場合、組成物がある材料の量について「ほとんどもしくは全く」有し「ない」と称される場合、それはその材料の量が0であるか、または組成物の重量を基準にして0.1重量%以下であることを意味する。
【0033】
本明細書において、ある材料が接着剤組成物の液体部分に「不溶性」であると称される場合、それは接着剤組成物の液体部分の重量を基準にして1重量%以上の量でその材料がその接着剤組成物の液体部分に溶解されうる温度が、20℃〜50℃の範囲に存在しないことを意味する。
【0034】
ポリマー膜はポリマーもしくはポリマーの混合物から製造され、かつ1つの寸法が0.5mm以下であり、かつ他の2つの寸法の双方が1cm以上である構造体である。ポリマー膜の組成は膜の重量を基準にして80重量%以上が1種以上のポリマーである。
【0035】
本明細書において、ある量が「X〜Y」と記載される場合には、その量はXより大きいかまたはXに等しく、かつYより小さいかまたはYに等しい数であることを意味する。本明細書において、ある比率が「R以上:1」と記載される場合には、その比率はS:1であって、ここでSはR以上の数であることを意味する。同様に、本明細書において、ある比率が「T以下:1」と記載される場合には、その比率はU:1であって、ここでUはT以下の数であることを意味する。
【0036】
イソシアナート基と活性水素を有する化合物との双方を含む組成物中のイソシアナートの量は、本明細書において「イソシアナート指数」と称される量によって有用に特徴付けられることができ、これは組成物中に存在する材料および量に基づいて計算される量である。この値は、イソシアナート基のモル数を活性水素基のモル数で割って得られた割合である。
【0037】
本発明の組成物はポリイソシアナートコンポーネントを含み、このポリイソシアナートコンポーネントは4,4’MDIおよびイソシアナート官能性プレポリマーを含む。ポリイソシアナートコンポーネントは好ましくは2,4’MDIも含む。本発明のポリイソシアナートコンポーネントは2,2’MDIを含まないか、または幾分かの2,2’MDIが存在する場合には2,2’MDIの量はポリイソシアナートコンポーネントの重量を基準にして1重量%以下である。好ましくは、ポリイソシアナートコンポーネント中の2,2’MDIの量は、ポリイソシアナートコンポーネントの重量を基準にして、0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。
【0038】
本発明のポリイソシアナートコンポーネントは1種以上のイソシアナート官能性プレポリマーも含む。イソシアナート官能性プレポリマーを製造するのに使用される反応物質混合物は本明細書においてはプレポリマー反応物質混合物と称される。このプレポリマー反応物質混合物は好ましくは1種以上のモノマー系ポリイソシアナートと、複数の活性水素を有する1種以上の化合物とを含む。プレポリマー反応物質混合物中のモノマー系ポリイソシアナートの量は好ましくは、プレポリマー反応物質混合物の重量を基準にして15重量%以上、より好ましくは25重量%以上である。プレポリマー反応物質混合物中のモノマー系ポリイソシアナートの量は、プレポリマー反応物質混合物の重量を基準にして75重量%以下、または60重量%以下である。
【0039】
好ましいプレポリマー反応物質混合物は非芳香族モノマー系ポリイソシアナートをほとんどもしくは全く有さない。より好ましいプレポリマー反応物質混合物は非芳香族モノマー系ポリイソシアナートを有さない。より好ましいプレポリマー反応物質混合物は4,4’MDI、2,4’MDI、2,2’MDIおよびこれらの混合物以外のモノマー系ポリイソシアナートを有さない。
【0040】
プレポリマー反応物質混合物中の複数の活性水素を有する化合物の量は好ましくは、プレポリマー反応物質混合物の重量を基準にして25重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。プレポリマー反応物質混合物中の複数の活性水素を有する化合物の量は好ましくは、プレポリマー反応物質混合物の重量を基準にして75重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0041】
プレポリマー反応物質混合物は1種以上のポリオールを含む。より好ましくは、プレポリマー反応物質混合物中の複数の活性水素を有する全ての化合物がポリオールである。プレポリマー反応物質混合物中のトリオールの量は好ましくは、プレポリマー反応物質混合物中の全てのポリオールの合計重量を基準にして25重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。プレポリマー反応物質混合物中のトリオールの量は好ましくは、プレポリマー反応物質混合物中の全てのポリオールの合計重量を基準にして75重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0042】
プレポリマー反応物質混合物は好ましくは1,000を超える平均分子量を有する1種以上のトリオールを含む。より好ましくは、プレポリマー反応物質混合物は2,500を超える平均分子量を有する1種以上のトリオールを含む。
【0043】
プレポリマー反応物質混合物は好ましくはさらに1種以上のジオールを含む。好ましくは、プレポリマー反応物質混合物は1,000以下の平均分子量を有する1種以上のジオールを含む。好ましくは、プレポリマー反応物質混合物は1,000を超える平均分子量を有する1種以上のジオールも含む。好ましいプレポリマー反応物質混合物はB1(1,000以下の平均分子量を有する1種以上のトリオール)およびB2(2,000を超える平均分子量を有する1種以上のトリオール)を含む。より好ましいプレポリマー反応物質混合物はB1、B2およびB3(1,000以下の平均分子量を有する1種以上のジオール)を含む。より好ましいプレポリマー反応物質混合物はB1、B2、B3およびB4(1,000を超える平均分子量を有する1種以上のジオール)を含む。好ましくは、B1、B2、B3およびB4(存在する場合には)のそれぞれはポリエーテルポリオールもしくはポリエステルポリオールである。好ましくは、B1およびB2は両方ともポリエーテルトリオールである。
【0044】
ポリオールはその「OH当量」によって有用に特徴付けられ、この「OH当量」はポリオールの分子量をヒドロキシル基の数で割った値である。好ましいプレポリマー反応物質混合物は1種以上の「低当量」ジオール(すなわち、200以下のOH当量を有するジオール);1種以上の「中当量」トリオール(すなわち、141〜342のOH当量を有するトリオール);および「高当量」トリオール(すなわち、1,500以上のOH当量を有するトリオール)を含む。より好ましいプレポリマー反応物質混合物は1種以上の低当量ポリエーテルジオール、1種以上の中当量ポリエーテルトリオール、および1種以上の高当量ポリエーテルトリオールを含む。
【0045】
好ましくは、プレポリマー反応物質混合物中では、複数の活性水素を有する全ての化合物がポリオールである。好ましくは、プレポリマー反応物質混合物中では、1以上の活性水素を有する全ての化合物がポリオールである。
【0046】
プレポリマー反応物質混合物はモノマー系4,4’MDIを含む。好ましくは、プレポリマー混合物は2,4’MDIも含む。好ましくは、プレポリマー反応物質混合物中の2,2’MDIの量は、プレポリマー反応物質混合物中の全てのポリイソシアナート化合物の重量を基準にして0重量%〜1重量%、より好ましくは0重量%〜0.5重量%である。好ましくは、プレポリマー反応物質混合物中の2,4’MDIの量は、プレポリマー反応物質混合物中の全てのポリイソシアナート化合物の重量を基準にして0重量%〜50重量%である。
【0047】
好ましくは、プレポリマー反応物質混合物のイソシアナート指数は2.0以上、より好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上である。好ましくは、プレポリマー反応物質混合物のイソシアナート指数は7以下、より好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。
【0048】
本発明の組成物のポリイソシアナートコンポーネントは4,4’MDIおよび1種以上のイソシアナート官能性プレポリマーを含む。ポリイソシアナートコンポーネントの%NCOは好ましくは7%以上、より好ましくは10%以上である。ポリイソシアナート化合物の%NCOは好ましくは25%以下、より好ましくは17%以下である。
【0049】
接着剤組成物中のポリイソシアナートの量を特徴付けることが有用である。その量は全てのポリイソシアナート化合物の重量の合計を接着剤組成物の全重量で割った割合であり、パーセンテージで表される。本発明の接着剤組成物中のポリイソシアナートの好ましい量は接着剤組成物の重量を基準にして10重量%以上である。本発明の接着剤組成物中のポリイソシアナートのより好ましい量は接着剤組成物の重量を基準にして20重量%以上であり、より好ましいのは30重量%以上である。また、本発明の接着剤組成物中のポリイソシアナートの好ましい量は接着剤組成物の重量を基準にして90重量%以下であり、本発明の接着剤組成物中のポリイソシアナートのより好ましい量は接着剤組成物の重量を基準にして80重量%以下である。
【0050】
本発明の組成物の好ましい%NCOは4%以上、より好ましくは6%以上、より好ましくは8%以上である。本発明の組成物の好ましい%NCOは20%以下、より好ましくは17%以下、より好ましくは14%以下である。
【0051】
本発明の接着剤組成物はポリオールコンポーネントを含む。好ましくはポリオールコンポーネントは100〜1,000の分子量を有する1種以上のトリオールを含む。より好ましくは、ポリオールコンポーネントは400未満の平均分子量を有する1種以上のトリオールを含み、かつ400を超える平均分子量を有する1種以上のトリオールも含む。
【0052】
好ましいポリオールコンポーネント中の全てのトリオールの合計量は、ポリオールコンポーネント中に存在する全てのポリオールの合計重量を基準にして60重量%〜100重量%、より好ましくは75重量%〜100重量%、より好ましくは90重量%〜100重量%、より好ましくは100重量%である。
【0053】
好ましいポリオールコンポーネントはアルキルポリオール、ヒマシ油、ポリプロピレングリコールトリオールおよびこれらの混合物から選択される1種以上のポリオールを含む。アルキルトリオールが存在する場合には、好ましいアルキルトリオールは3個以上の炭素原子、より好ましくは4個以上の炭素原子を有する。アルキルトリオールが存在する場合には、好ましいアルキルトリオールは10個以下の炭素原子、より好ましくは8個以下の炭素原子を有する。アルキルトリオールが存在する場合には、最も好ましいアルキルポリオールはトリメチロールプロパンである。好ましいポリオールコンポーネントは2種以上のポリプロピレングリコールトリオールを含み、ここで、1種以上のポリプロピレングリコールトリオールは400以下の平均分子量を有し、かつ1種以上のポリプロピレングリコールトリオールは400を超える平均分子量を有する。
【0054】
好ましい接着剤組成物は、複数の活性水素を有する化合物をポリオール以外に、ほとんどもしくは全く含まない。より好ましい接着剤組成物は複数の活性水素を有する化合物をトリオール以外に、ほとんどもしくは全く含まない。
【0055】
本発明の組成物は好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上のイソシアナート指数を有する。本発明の組成物は1.8以下、より好ましくは1.7以下、より好ましくは1.6以下のイソシアナート指数を有する。
【0056】
本発明の組成物は無溶媒型である。本発明の好ましい組成物は組成物の重量を基準にして1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下の量で溶媒を含む。本発明の組成物の全固形分は好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、より好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.8%以上である。
【0057】
好ましくは、本発明の組成物中の全てのイソシアナート化合物はポリイソシアナートコンポーネント中に含まれる。好ましくは、本発明の組成物中の、1以上の活性水素を有する全ての化合物はポリオールコンポーネント中に含まれる。本発明の好ましい接着剤組成物は非芳香族モノマー系ポリイソシアナートをほとんどもしくは全く有さない。より好ましい接着剤組成物は非芳香族モノマー系ポリイソシアナートを有さない。より好ましい接着剤組成物は4,4’MDI、2,4’MDI、2,2’MDIおよびこれらの混合物以外のモノマー系ポリイソシアナートを有さない。
【0058】
本発明の組成物においては、ポリオールコンポーネント:イソシアナートコンポーネントの重量比は0.1以上:1、より好ましくは0.2以上:1、より好ましくは0.4以上:1である。本発明の組成物においては、ポリオールコンポーネント:イソシアナートコンポーネントの好ましい重量比は2以下:1、より好ましくは1.2以下:1、より好ましくは0.8以下:1である。
【0059】
本発明の接着剤組成物は場合によっては1種以上の可塑剤を含む。可塑剤が存在する場合には、好ましい可塑剤は8個以上の脂肪族炭素原子を有する。可塑剤が存在する場合には、可塑剤の好ましい量は接着剤組成物の重量を基準にして0.5重量%〜15重量%である。
【0060】
触媒、例えば、第三級アミンもしくはスズベースの触媒またはこれらの混合物は場合によっては、接着剤組成物の材料と混合される。好ましい実施形態においては、触媒はほとんどもしくは全く存在しない。より好ましい実施形態においては、触媒は存在しない。
【0061】
接着剤組成物は追加の従来の材料、例えば、充填剤、顔料、粘着付与剤、可塑剤、レオロジー調節剤、ポリマー(例えば、本明細書において上で論じられたもの以外の熱可塑性樹脂など)、脱水剤(例えば、シランなど)、塩化ベンゾイル、他のポリオール(例えば、脂肪ポリオールなど)、紫外線指示剤などを混合することによって配合されうる。この追加の従来の材料が使用される場合には、それらは望ましく維持されるイソシアナート基の反応性に配慮しつつ選択され使用される。この追加の従来の材料が使用される場合には、それらは個々にもしくはいずれかの組み合わせで、他の材料の前に、他の材料の後に、または接着剤組成物の形成の段階もしくは段階の組み合わせの際に、この組成物に添加されうる。
【0062】
好ましい実施形態においては、本発明の接着剤組成物はエポキシド基、アクリル基、メタクリル基およびカルボン酸無水物基から選択される1種以上の反応性基を有する化合物をほとんどもしくは全く含まない。より好ましいのは、本発明の接着剤組成物が、エポキシド基、アクリル基、メタクリル基およびカルボン酸無水物基から選択される1種以上の反応性基を有する化合物を含まない実施形態である。
【0063】
本発明の硬化性接着剤組成物は、組成物の特性を向上させるように、望ましく、組成物の分子量の増大をもたらすおよび/または組成物の架橋をもたらす1種以上の化学反応を受ける。
【0064】
本発明の硬化性接着剤組成物の少なくとも1つの基体への適用を伴う実施形態においては、この適用は、例えば、スプレーアプリケータ、ビーズアプリケータ、ノズル、ドクターブレード、押出しもしくはロールコーターのような従来の手段によって好ましくはもたらされて、望まれるように、接着剤の連続もしくは不連続膜を形成する。
【0065】
組成物は手作業によって、例えば、携帯型ツール、例えば、スパチュラ、携帯型計量装置もしくは他のアプリケータなどを用いて、択一的にもしくは追加的に基体に適用されうる。組成物は好ましくは0.5グラム/平方メートル以上、より好ましくは1グラム/平方メートル以上のレベルで適用される。組成物は好ましくは、5グラム/平方メートル以下、より好ましくは3グラム/平方メートル以下のレベルで適用される。
【0066】
ある実施形態においては、本発明の硬化性接着剤組成物は第1の基体を少なくとも1つの次の基体に結合させる接着剤として使用される。この実施形態においては、接着剤組成物は第1の基体に適用され、そしてその後でもしくは同時に、その適用された接着剤組成物が少なくとも1つの次の基体に接触させられて、結合した集合体を提供する。
【0067】
本発明の硬化性接着剤組成物が第1の基体を少なくとも1つの次の基体に結合させるための接着剤として使用されるある実施形態においては、このように形成された構造体は、場合によっては、例えば、その構造体をローラー間に通過させることによって適用される圧力にかけられて、基体と硬化性接着剤組成物との接触の増大をもたらす。この圧力が適用される場合には、それは比較的短期間でもしくは比較的長期間で適用されることができ、かつそれは一定、増加、減少もしくはその組み合わせであることができる。構造体が室温より高い温度にある場合には、それは次いで冷却されるか、または冷却できるようにされる。圧力が適用される場合には、圧力の適用中に、圧力の適用後にまたはその組み合わせで冷却が起こりうる。
【0068】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明の接着剤組成物は、本発明の接着剤組成物の液体部分に不溶性の固体ポリマーをほとんどもしくは全く含まない。より好ましいのは、このようなポリマーを含まない接着剤組成物である。
【0069】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明の接着剤組成物は、本発明の接着剤組成物の液体部分に不溶性のあらゆる組成の固体材料をほとんどもしくは全く含まない。より好ましいのは、このような固体材料を含まない接着剤組成物である。
【0070】
好ましい実施形態においては、本発明の接着剤組成物はアクリルポリマーをほとんどもしくは全く含まない。アクリルポリマーは、ポリマーの重量を基準にして25重量%以上の重合されたモノマー単位がアクリル酸もしくはメタクリル酸、その置換および非置換エステル、並びにその置換および非置換アミドから選択されるポリマーである。より好ましいのは本発明の接着剤組成物がアクリルポリマーを含まない実施形態である。
【0071】
好ましい実施形態においては、本発明の接着剤組成物はポリウレタンではないポリマーをほとんどもしくは全く含まない。より好ましいのは、本発明の接着剤組成物がポリウレタンではないポリマーを含まない実施形態である。
【0072】
好ましい実施形態においては、本発明の接着剤組成物はイソシアナートおよびヒドロキシル以外の反応性基を有する化合物をほとんどもしくは全く含まない。より好ましいのは、イソシアナート、ヒドロキシルおよびアミン以外の反応性基を有する化合物を含まない接着剤組成物である。さらにより好ましいのは、イソシアナートおよびヒドロキシル以外の反応性基を有する化合物を含まない接着剤組成物である。
【0073】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明の硬化性接着剤組成物は1以上の基体に適用されるか、またはそうでなければ1以上の基体に接触させられる。いくつかの好適な基体には、例えば、木材、金属、プラスチック、複合材料、布(織物および不織物など)、紙並びにその組み合わせが挙げられる。好適な基体には、例えば、天然木材、合板、ラワン木材、パーティクルボード、配向ストランドボード、剛性プラスチック、可撓性プラスチック、プラスチック膜、プラスチック発泡体およびこれらの組み合わせが挙げられる。1種より多い基体が使用される場合には、好適な基体の組み合わせも好適である。ある実施形態においては、全ての基体は同じ材料から製造されることができ、別の実施形態においては、2種以上の異なる材料が基体として使用されることができる。
【0074】
好ましい実施形態においては、1以上の基体はポリマー膜である。より好ましいのは、硬化性接着剤組成物が2枚のポリマー膜を一緒に結合させるために使用される実施形態である。好ましいポリマー膜は有機ポリマーを含む。好ましい有機ポリマーは、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、オレフィンと他のモノマーとのコポリマー)、ポリアミド、およびこれらのブレンドである。より好ましい有機ポリマーはポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびナイロンである。
【0075】
本明細書において、「普通硬化」実施形態と称される実施形態を考慮することが有用である。普通硬化実施形態においては、本発明の硬化性接着剤組成物を用いて、2枚のポリマー膜が一緒に結合されて積層物を形成する。硬化反応は接着剤特性が許容可能であり、かつ接着剤特性が時間の経過によって目立って変化しない時点(本明細書においては「T1」)まで進行させられる。普通硬化のプロセス中に時間の関数としてPAAレベルを評価することが有用である。通常、T1に到達した後で、その積層物が貯蔵されるにつれて、PAAレベルは時間の経過と共に低下する。PAAレベルはできるだけ短い時間で許容可能に低くなることが望ましい。
【0076】
いくつかの種類の膜は他の種類の膜よりも水の拡散をより容易にする。膜の種類のいくつかの選択に関して、積層物(本発明より前の)は、積層物形成後PAAレベルが許容可能に低くなるまでに、14日以上、またはさらには20日以上の貯蔵を必要とする場合があった。本発明の接着剤組成物を用いて製造された積層物は、同等の以前に知られていた接着剤よりも短い時間で許容可能な低いPAAレベルを達成することができると考えられる。
【0077】
2枚の膜から製造される積層物は互いに同じ2枚の膜から製造されることができ、または互いに異なる2枚の膜から製造されることができる。
【0078】
硬化性接着剤組成物の望まれる特性は結合強度発現である。2つの基体を一緒に結合させるために水分反応性組成物が使用される場合には、結合強度発現は硬化反応の完了前の結合強度を測定することにより評価される。特に、結合強度発現は結合した集合体の形成後2〜8時間で結合強度を測定することにより評価される。
【0079】
以下の事項は、積層物を製造するために意図される接着剤組成物のいくつかの望ましい特徴の論述である。比較的低い含有量のモノマー系ポリイソシアナートを有するプレポリマーはより低いレベルのPAAを生じさせる接着剤組成物を作成するのに有用である。しかし、2コンポーネント無溶媒型ウレタン接着剤を考える場合に、粘度(23℃での)および接着剤可使時間(working time)を考慮することも多くの場合、有用である。比較的高濃度のモノマー系ポリイソシアナートは溶媒を含まないウレタンプレポリマーにおいて粘度抑制剤として機能する。典型的には、比較的低含有量のモノマー系ポリイソシアナートを含む有用なイソシアナート末端化プレポリマーの粘度は23℃で、ブルックフィールド粘度計モデルDVII+によって、#27スピンドルを用いて20rpmで測定して、14,000mPasより大きい。比較的高い含有量のモノマー系ポリイソシアナートを有する積層のために意図される有用なプレポリマーは、典型的には、ポリオールコンポーネントと一緒にされる場合に、比較的高い混合粘度を示す。より高い混合粘度は、市販の無溶媒型積層装置における適用ライン速度を制限する。ポットライフもしくは可使時間は、適用プロセス中に適切な接着剤ぬれ特性を維持するために必要である。好適なポットライフは適切に混合されたコンポーネントの粘度が二倍になるのにかかる時間と見なされる。2コンポーネント積層接着剤について適切なポットライフは適用温度で約16分以上である。積層接着剤の適用温度は、適切な温度制御を可能にするために、周囲(すなわち、23℃)よりも高くあるべきであり、それは最適な機械制御のために40〜50℃に設定される。適切な適用特性を可能にするために、この2つのコンポーネントの混合粘度は、適用温度で、好ましくは1500mPas未満、より好ましくは1200mPas以下である。
【0080】
本実施例の目的のために、本明細書において開示される各操作は他に特定されない限りは25℃で行われるものと理解される。「周囲条件」は約23℃である。
【実施例】
【0081】
以下は本発明の実施例である。
【0082】
以下の略語が使用される。
【表1】

【0083】
以下の材料が使用された。
【表2】

【0084】
以下の膜基体が使用された。
【表3】

【0085】
実施例1:接着剤組成物の製造
プレポリマーのための材料は以下の通りであった:
【表4】

【0086】
プレポリマー(イソシアナートコンポーネント)の製造:
0.5m/hrの窒素スイープが維持された。反応器温度は35℃であった。I−AおよびI−Bが添加され、攪拌装置が運転開始され、約62rpmで運転された。一回ずつ、ポリオールが次の順に添加された:P−A、P−B、P−C、P−DおよびP−E。必要な場合には冷却を使用して、2.5時間の間、反応器は80℃〜84℃に維持された。生成物は窒素ブランケット下で密閉容器内に入れられた。
【0087】
ポリオールコンポーネントのための材料は以下の通りであった:
【表5】

【0088】
ポリオールコンポーネントの製造:
上述のように反応器内で窒素スイープが維持された。ひまし油がこの反応器に入れられ、攪拌装置が60〜65rpmの設定で作動させられた。P−F、P−GおよびTMPが添加された。反応器は80℃〜84℃に設定された。反応器は密閉され、窒素スイープが遮断された。この反応器は80℃〜84℃に60分間保持された。生成物は窒素ブランケット下で密閉容器内に入れられた。
【0089】
100pbwのイソシアナートコンポーネントと45pbwのポリオールコンポーネントとを混合することによって接着剤組成物が製造された。
【0090】
例2C:比較接着剤の製造
以下の材料を用いて、実施例1におけるようにポリイソシアナートコンポーネントが製造された:
【表6】

【0091】
以下の材料を用いて、実施例1におけるようにポリオールコンポーネントが製造された:
【表7】

【0092】
実施例1におけるように、ポリイソシアナートコンポーネントとポリオールコンポーネントとが混合された。
【0093】
実施例3:積層物が以下のように製造された:
ポリイソシアナートコンポーネントとポリオールコンポーネントとを一緒にした直後に、次いで、接着剤(周囲温度で)はポリタイプ(Polytype商標)ロールコーター上に供給された(40℃〜45℃に設定された計量ロール)。次いで、混合された接着剤は1.6〜2.2グラム/平方メートル、すなわち、1〜1.2 lbs./リームのカバレッジで、インラインコロナ処理された第1のウェブに適用され、次いで、接着剤でコーティングされた第1のウェブは第2のウェブと一体にされ、次いでこの積層膜はニップされ、ポリタイプ商標ラミネーター上で仕上げロールに巻き取られた。
【0094】
結合データのための積層物の製造:
適切な硬化時間の後で、15mm幅のストリップが仕上げロールから切り出され、そしてインストロン(Instron商標)引張試験機において、100mm/分(4インチ/分)の分離速度を用いて結合データが得られた。結果は積層物を剥離させるのに必要な力、グラム重として報告される(「f(g)」と略される)。
【0095】
実施例4:試験
PAA試験のための積層物は上述のように製造された。第1の基体はナイロンであり、第2の基体はEVA修飾PEであった。EVA修飾PEは、VA修飾のないPEよりも望ましくない移動性物質に対してより多孔性なので、EVA修飾PEがPAA試験のために選択される。EVA修飾PE以外の基体を用いて製造された積層物は概して、EVA修飾PEを用いて製造された積層物が行うよりも速いPAA低下を示す。よって、積層物がある接着剤組成物を用いて製造され、EVA修飾PEである少なくとも1つの基体を有し、かつ許容可能な素早いPAA低下を示す場合には、同じ特定の接着剤組成物を用いて製造された他の積層物も、許容可能なように少なくとも充分に素早いPAA低下を示すであろう。
【0096】
PAAレベルは以下のように測定された。実験台上で約23℃および50%相対湿度で7日間硬化した後で、PAAが測定された。積層物は模擬物(水中3重量%酢酸)に70℃で2時間曝露された。模擬物中のPAAはジアゾ化することにより誘導体化され、その結果PAAの濃度が比色分析で決定されることができた。PAAの濃度はアニリン塩酸塩当量として、アニリン塩酸塩のマイクログラム/100mlの模擬物で報告される。手順は以下の通りであった。全ての溶液は水性である。100mlの模擬物が12.5mlの塩酸溶液(1N)および亜硝酸ナトリウム溶液(0.5g/100mlの溶液)2.5mlと混合され、10分間反応させられた。スルファミン酸アンモニウム(2.5g/100mlの溶液)5mlが添加され、10分間反応させられた。5mlのカップリング剤(1gのN−(1−ナフチル)−エチレンジアミン二塩酸塩/100gの溶液)が添加され、120分間反応させられた。この溶液はODS固相抽出カラムを通した溶離によって濃縮され、550nmで吸光係数が測定された。PAAの濃度を決定するために、この吸光係数がブランクサンプルおよび既知の濃度のアニリン塩酸塩の様々なサンプルの吸光係数と比較された。
【0097】
ASTM D1876(ASTMインターナショナル、米国ペンシルベニア州ウェストコンショホケン)を用いて引張試験が行われた。分離速度は100mm/分であり、サンプル幅は15mmであった。報告される結合データは適切な条件下で試験された2つの標本の平均である。3〜8時間での基体を分離させるのに必要な力がその積層物の「結合強度発現」の評価であると見なされる。「FF」は基体が破壊したこと、すなわち、接着剤組成物の層および接着剤組成物と基体との間の結合が基体自体よりも強かったことを意味する。
【0098】
PAA分析の結果:
【表8】

注(2):マイクログラム アニリンHCl/100mlの模擬物
【0099】
本発明の実施例は比較例よりもかなり低いPAAを示した。
【0100】
引張試験の結果は以下の通りであった。示される時間は積層物の形成から試験までの間隔の長さである。
【表9】

【0101】
それぞれの種類の積層物に対して、本発明の実施例1は良好な結合強度発現を示した。
【0102】
実施例5:接着剤組成物の製造
実施例1におけるようにプレポリマーが製造された。このプレポリマーのための材料は以下の通りであった:
【表10】

【0103】
ポリオールコンポーネントは実施例1におけるように製造された。ポリオールコンポーネントのための材料は以下の通りであった:
【表11】

【0104】
100pbwのイソシアナートコンポーネントと35pbwのポリオールコンポーネントとを混合することによって接着剤組成物が製造された。
【0105】
例6C:比較接着剤組成物の製造
実施例1におけるようにプレポリマーが製造された。このプレポリマーのための材料は以下の通りであった:
【表12】

【0106】
ポリオールコンポーネントは実施例1におけるように製造された。ポリオールコンポーネントのための材料は以下の通りであった:
【表13】

【0107】
100pbwのイソシアナートコンポーネントと35pbwのポリオールコンポーネントとを混合することによって接着剤組成物が製造された。
【0108】
実施例7:実施例5および比較例6Cの測定
PAAの結果は以下の通りであった:
【表14】

注(2):マイクログラム アニリンHCl/100mlの模擬物
【0109】
実施例5は比較例6Cよりもかなり低いPAAを示した。この2つのサンプルのPAAの差はこの2つの異なるポリイソシアナートコンポーネント中に使用されたMDI異性体の差のせいであると考えられる。
【0110】
さらに、サンプル5は許容可能な結合強度発現を有していた。積層物は接着剤として実施例5を用いて製造され、試験された。適切な硬化時間の後で、2.54cm(1インチ)幅のストリップが仕上げロールから切り出され、そしてインストロン商標引張試験機において、25.4cm/分(10インチ/分)の分離速度を用いて結合データが得られた。結果は積層物を剥離させるのに必要な力、グラム重として報告される(「f(g)」と略される)。
破壊モードは以下のように報告される:
Sub=基体破壊
Coh=凝集破壊;接着剤組成物は両方の基体上に残る
At=接着剤移動
【0111】
示された結果は積層物が製造され、次いで約23℃で貯蔵された後で、示される時間間隔で測定された。単位は2.54cm(1インチ)幅のサンプルを剥離するための力、グラム重である。
【0112】
【表15】

【0113】
いずれの積層物も良好な結合強度発現を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリイソシアナートコンポーネントと(b)1種以上のポリオールを含むポリオールコンポーネントとを含む接着剤組成物であって、
前記(a)ポリイソシアナートコンポーネントが(i)モノマー系4,4’メチレンジフェニルジイソシアナートおよび(ii)イソシアナート官能性プレポリマーを含み、
前記(ii)イソシアナート官能性プレポリマーが(A)モノマー系4,4’メチレンジフェニルジイソシアナートと、(B)1種以上のポリオールとを含むプレポリマー反応物質混合物の反応生成物であり、
前記(B)1種以上のポリオールが(B1)1,000以下の平均分子量を有する1種以上のトリオール、および(B2)1,000を超える平均分子量を有する1種以上のトリオールを含み、
前記プレポリマー反応物質混合物中のモノマー系2,2’メチレンジフェニルジイソシアナートの量が、前記プレポリマー反応物質混合物の重量を基準にして1重量%以下であり、
前記ポリイソシアナートコンポーネント中のモノマー系2,2’メチレンジフェニルジイソシアナートの量が、前記ポリイソシアナートコンポーネントの重量を基準にして1重量%以下である、
接着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリオールコンポーネントが、100〜1,000の平均分子量を有する1種以上のトリオールを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記プレポリマー反応物質混合物が2,4’メチレンジフェニルジイソシアナートをさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記プレポリマー反応物質混合物中の、複数の活性水素を有する全ての化合物がポリオールである請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記プレポリマー反応物質混合物中の全てのトリオールの合計重量が前記プレポリマー反応物質混合物中の全てのポリオールの合計重量を基準にして25%〜75%である、請求項5に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリオールコンポーネントが、400未満の平均分子量を有する1種以上のトリオールおよび400を超える平均分子量を有する1種以上のトリオールを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリオールコンポーネント中の全てのトリオールの合計重量が前記ポリオールコンポーネント中の全てのポリオールの重量を基準にして60重量%〜100重量%である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
請求項1の接着剤組成物を2以上の基体の双方と接触させることを含む、2以上の基体を結合させる方法。
【請求項9】
請求項1の接着剤組成物によって一緒に結合された2以上の基体を含む、結合した集合体。

【公開番号】特開2012−131980(P2012−131980A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−249202(P2011−249202)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】