説明

接着剤

【課題】1液型で基材とプライマー層とを良好に接着させることのできる接着剤を提供する。
【解決手段】(A)アクリルポリオール、(B)ポリカーボネートジオール、有機ジイソシアネートとをウレタン化反応させて得られるウレタン変性アクリル樹脂に、(D)ポリカプロラクトン樹脂を混合して得られる接着剤であって、前記ウレタン変性アクリル樹脂は、(A)アクリルポリオールに対する(B)ポリカーボネートジオール及び(C)有機ジイソシアネートの質量比(A)/((B)+(C))が、50/50〜90/10であり、さらに、前記ウレタン変性アクリル樹脂と前記(D)ポリカプロラクトン樹脂の混合比率(固形分換算)が99.5/0.5〜80/20である接着剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末、パソコン、家電製品、車両内外装などに用いられる転写フィルムにおいて、携帯端末、パソコン、家電製品、車両内外装などの基材であるアクリル・ポリカーボネート・ABSと転写フィルム内プライマー層との接着に好適に使用できる接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
転写フィルムは熱転写・インモールド成型・インサート成型などに使用されるフィルムであり、携帯端末、パソコン、家電製品、車両内外装などに用いられる転写フィルムの一般的な構造としては、図1に示すように、ベースフィルム(離型PET)1、ハードコート層2、意匠層3、プライマー層4、接着層5を積層したフィルム10となっている。
【0003】
ここで、接着層5は、携帯端末、パソコン、家電製品、車両内外装などに用いられる基材であるアクリル、ポリカーボネート、ABS等と、プライマー層4とを接着させるための層である。プライマー層としては、従来、ウレタン系樹脂が使用されてきた。また、接着層としては、従来、塩化ビニル樹脂や、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合物である塩酢ビ樹脂が主に使用されてきた。
【0004】
しかし、この塩化ビニル樹脂や塩酢ビ樹脂は、環境への負荷が大きいため、近年、それに代わる材料として、2液硬化型のアクリルウレタンを使用した接着剤も開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−323263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、2液硬化型のアクリルウレタンは、物性が安定せず、接着力が十分でないという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は、塩化ビニル樹脂や塩酢ビ樹脂を使用せずに、熱転写・インモールド成型転写・インサート成型転写において、1液型で基材とプライマー層とを良好に接着させることのできる接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、アクリルポリオールとポリカーボネートジオールを有機ジイソシアネートでウレタン化することで得られるウレタン変性アクリル樹脂にポリカプロラクトンを混合することで上記課題を解決する手段となることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(4)に示すものである。
【0010】
(1)(A)アクリルポリオールと、(B)ポリカーボネートジオールと、(C)有機ジイソシアネートとをウレタン化反応させて得られるウレタン変性アクリル樹脂に、(D)ポリカプロラクトン樹脂を混合して得られる接着剤であって、前記ウレタン変性アクリル樹脂は、(A)アクリルポリオールに対する(B)ポリカーボネートジオール及び(C)有機ジイソシアネートの質量比(A)/((B)+(C))が、50/50〜90/10であり、さらに、前記ウレタン変性アクリル樹脂と前記(D)ポリカプロラクトン樹脂の混合比率(固形分換算)が99.5/0.5〜80/20である接着剤に関する。
【0011】
また、(2)(A)アクリルポリオールの水酸基価が5〜35mgKOH/gである(1)記載の接着剤に関する。
【0012】
また、(3)(A)アクリルポリオールの重量平均分子量が5000〜30000である(1)又は(2)記載の接着剤に関する。
【0013】
また、(4)(A)アクリルポリオールの樹脂Tgが70〜120℃である(1)乃至(3)記載の接着剤に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塩化ビニル樹脂や塩酢ビ樹脂を使用せず、熱転写・インモールド成型転写・インサート転写時に一液型で基材とプライマー層とを良好に接着させることのできる接着剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、一般的な転写フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の接着剤は、(A)アクリルポリオールと、(B)ポリカーボネートジオールと、(C)有機ジイソシアネートとをウレタン化反応させて得られるウレタン変性アクリル樹脂を使用する。
【0017】
以下、本発明のウレタン変性アクリル樹脂に使用する原料について説明する。
【0018】
<(A)アクリルポリオール>
本発明のウレタン変性アクリル樹脂に使用する(A)アクリルポリオールは、水酸基価5〜35mgKOH/g、重量平均分子量5000〜30000、樹脂Tgが70〜120℃であることが好ましい。
【0019】
前記水酸基価は、6〜30mgKOH/gであることがより好ましく、8〜25mgKOH/gであることが特に好ましい。水酸基価が5mgKOH/g以上だと、得られるウレタン変性アクリル樹脂が透明で、耐候性、耐水性及び密着性に非常に優れる。一方、35mgKOH/g以下だと、ゲル化が起きることがない。水酸基価を上記の範囲とするための方法として、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有モノマーを共重合させることが挙げられ、モノマーの種類、組成、目的とする水酸基価などによって適宜選択されるが、例えばアクリル樹脂を構成する全モノマーの総質量100質量部に対し、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを2〜6質量部を共重合させることが挙げられる。なお、前記水酸基価は、滴定法により求めることができる。
【0020】
前記重量平均分子量は、8000〜20000がより好ましく、10000〜15000であることが特に好ましい。重量平均分子量が5000以上であると、塗膜の強度が優れ、30000以下だと、ゲル化が起こらない。重量平均分子量を上記の範囲とする方法として、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジt−ブチル、クメンハイドロパーオキサイドなどの重合開始剤の添加量を調整することが挙げられ、例えば、アクリル樹脂を構成する全モノマーの総質量100質量部に対し、アゾビスイソブチロニトリルを1.5〜2.5部使用することが挙げられる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0021】
アクリルポリオールは、水酸基含有不飽和モノマーを含む不飽和モノマーを共重合することで得ることができる。前記水酸基含有不飽和モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら水酸基含有不飽和モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記モノマー成分中に占める水酸基含有不飽和モノマーの割合は、モノマー合計100質量部中、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜6質量部である。水酸基含有不飽和モノマーが1質量部以上であると、樹脂が濁ることがなく、一方、10質量部以下だと、合成時ゲル化が起こることがない。
【0022】
前記樹脂Tgは、70〜120℃がより好ましく、90〜110℃であることが特に好ましい。樹脂Tgが70℃以上であると、塗膜の強度が優れ、塗膜の凝集破壊が起こることがなく、120℃以下だと、クラックの発生が起きることがない。
【0023】
アクリルポリオールを得る際のモノマーとしては、水酸基含有不飽和モノマーの他に、これらと共重合可能な他の重合性モノマーを含有していてもよい。共重合可能な他の重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、カルボキシル基末端カプロラクトン変性アクリレート、カルボキシル基末端カプロラクトン変性メタクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどのなどの酸性官能基を有する不飽和モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチルメタクリレートなどの珪素原子を有する重合性不飽和モノマー;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタドデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、トリブロモフェノール3EO付加メタクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン原子を有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N’−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチルメタクリレート硫酸塩、モルホリンEO付加メタクリレート、N−ビニルメチルカルベメート、N,N’−メチルビニルアセトアミド、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物、ジアセトンアクリルアミドなどの窒素原子を有する重合性不飽和モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能重合性不飽和モノマー;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロルエチルビニルエーテル、β−ジフルオロメチルビニルエーテル、ジビニルエーテル、ジビニルアセタールなどのビニルエーテル類などが挙げられる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸エステル類が好適に用いられる。なお、これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記モノマー成分を重合してアクリルポリオールを得る際の重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、エマルション重合等の従来公知の重合方法を採用すればよい。
【0025】
前記重合の際に用いることのできる溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤;n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶剤;テトラヒドロフラン、N,N―ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、クロロホルムなどが挙げられ、これらは単独あるいは併用して使用することができる。溶剤の使用量は、特に制限されるものではなく、重合反応に応じて適宜設定すればよい。
【0026】
前記重合の際には、必要に応じて重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキサイドなどのパーオキサイド系開始剤などの通常のラジカル開始剤を単独あるいは併用して使用することができる。なお、重合開始剤の使用量は、特に制限されるものではないが、前記モノマー成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部である。
【0027】
前記重合の際には、必要に応じて連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、チオグルコール酸、チオグリセロール、エチレンチオグリコール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール、メルカプトグリセリン、メルカプトコハク酸、メルカプトプロピオン酸などのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロブロモエタン、ブロモホルムなどのハロゲン化合物;ジスルフィド類;第2級アルコール類;イソプロピルアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルベンゾール、α―メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン;などを単独あるいは併用して使用することができる。なお、連鎖移動剤の使用量は、特に制限されるものではないが、前記モノマー成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部である。
【0028】
前記重合の際の重合条件については、特に限定されるものでなく、適宜選択すればよい。具体的には、重合温度は、好ましくは10〜160℃、より好ましくは70〜140℃である。重合時間は、反応の進行状況に応じ、それぞれ、適宜選択すればよい。
【0029】
<(B)ポリカーボネートジオール>
本発明のウレタン変性アクリル樹脂に使用する(B)ポリカーボネートジオールは、水酸基価が30〜400mgKOH/gであることが好ましく、80〜280mgKOH/gであることがより好ましく、150〜250mgKOH/gであることが特に好ましい。水酸基価が30mgKOH/g以上であると、ゲル化が起こることがなく、300mgKOH/g以下だと、塗膜の強度が特に優れる。
【0030】
ポリカーボネートジオールとしては、ジオールと炭酸ジアルキルを反応させたものが挙げられ、エステル交換により反応させたものが好適に用いられる。ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジエタノール、1,3−シクロヘキサンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールが例示される。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもかまわない。
【0031】
炭酸ジアルキルとしては炭酸ジメチル、炭酸ジフェニルなどが挙げられ、これらの中でも、反応性の点から炭酸ジメチルが好ましい。
【0032】
<(C)有機ジイソシアネート>
本発明のウレタン変性アクリル樹脂に使用する(C)有機ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ω,ω′−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;p−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;等及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
【0033】
<ウレタン変性アクリル樹脂>
本発明のウレタン変性アクリル樹脂は、前記(A)〜(C)成分をウレタン化反応することにより得ることが出来る。ウレタン化反応は、ワンショット法、プレポリマー化法等の公知の方法によって行われる。
【0034】
ウレタン化反応させる際の溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、ジクロルエタン等の塩化物類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒類;等及びこれらの2種類以上の混合物が用いられる。
【0035】
ウレタン変性アクリル樹脂を製造する際の触媒としては通常のウレタン化反応触媒を用いることができる。例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の錫系化合物;鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄系化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の三級アミン系化合物;等が挙げられる。
【0036】
ウレタン化反応は、30〜100℃、好ましくは50〜80℃にて1〜10時間行なわれる。
【0037】
本発明において前記ウレタン変性アクリル樹脂に使用される(A)アクリルポリオールと((B)ポリカーボネートジオール+(C)有機ジイソシアネート)の質量比(A)/((B)+(C))は、50/50〜90/10、好ましくは60/40〜80/20、より好ましくは65/35〜75/25である。前記(A)/((B)+(C))が50/50以上だと基材(アクリル・ポリカーボネート・ABS)との密着性に特に優れ、90/10以下だとプライマー層との密着性が特に優れる。
【0038】
(A)アクリルポリオール及び(B)有機ポリオールの水酸基の合計に対して、(C)有機ジイソシアネートのイソシアネート基が当量比(NCO/OH)にして(60/100)〜(98/100)になるように配合されるのが好ましい。当量比が(60/100)以上だと密着性に特に優れ、(98/100)以下だと合成時の高粘度化・ゲル化が起こることがない。
【0039】
<(D)ポリカプロラクトン樹脂>
本発明の接着剤に使用するポリカプロラクトン樹脂としてはポリカプロラクトンポリオールが挙げられ、多価アルコールを開始剤として、ε−カプロラクタムの開環重合で得られる化合物であり、そのジオール又はトリオール等を使用する。
【0040】
<接着剤>
本発明の接着剤は、前記ウレタン変性アクリル樹脂に(D)ポリカプロラクトン樹脂を混合して得られるものであり、ウレタン変性アクリル樹脂と前記(D)ポリカプロラクトン樹脂の混合比率(固形分換算)が99.5/0.5〜80/20(ウレタン変性アクリル樹脂/(D)ポリカプロラクトン樹脂)である。
【0041】
混合比率が99.5/0.5以下だと、クラック性に特に優れ、80/20以上だと、密着性に特に優れる。
【0042】
本発明の接着剤は、その他の成分として難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、補強材、艶消し剤、導電性付与剤、帯電制御剤、帯電防止剤、滑剤などを配合して用いられる。
【0043】
本発明の接着剤は、通常、有機溶剤に希釈して用いられる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等の一塩基酸エステル系溶剤;アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、フタル酸ジオクチル等の二塩基酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0044】
以下、本発明の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
<実施例1>
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4ツ口フラスコ中に溶媒としてメチルイソブチルケトンを100質量部仕込み、110℃に昇温させた。この溶媒中に、メタクリル酸メチル98質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2.0質量部を混合させた溶液を2時間かけて滴下した。その後、110℃で2時間保温し、メチルイソブチルケトン50質量部で希釈し、アクリルポリオールを合成した。得られたアクリルポリオールの水酸基価を滴定法により測定したところ、8.6mgKOH/gであり、GPCを用いて重量平均分子量を測定した結果、ポリスチレン換算で、12000であった。GPCの条件を以下に示す。ガラス転移点(Tg)については、DSC(示差走査熱量計)により測定した結果、100℃であった。
【0046】
<GPC条件>
使用機器:東ソー株式会社製、HCL−8320
カラム:東ソー株式会社製、TSK gel SuperMultipore HZ−H
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
このアクリルポリオール250質量部に、ETERNACOLL UM90(1/3)(1,6−ヘキサンジオール/1,4−ジメタノールシクロヘキサン(=3/1(モル比))と炭酸ジメチルから合成した分子量約900のポリカーボネートジオール、宇部興産株式会社製、水酸基価125mgKOH/g)35質量部及びウレタン化触媒(ジブチル錫ジラウレート)0.2質量部を添加し、80℃に昇温した。次いで、イソホロンジイソシアネート10質量部を30分かけて滴下し、80℃で2時間保温した。メチルイソブチルケトン200質量部で希釈し、ウレタン変性アクリル樹脂を得た。さらにカプロラクトン樹脂(プラクセルL205AL、ダイセル化学工業株式会社製)を5質量部添加し、転写フィルム接着層用樹脂を得た。
【0047】
<実施例2〜14,比較例1〜4>
樹脂作製方法は実施例1と同様とし、配合量は表1及び2に示す質量部使用した。
【0048】
次に、実施例1〜14及び比較例1〜4で得られた転写フィルム接着層用樹脂を用いて、以下の試験を行い、結果を表1及び2に示す。
【0049】
なお、ウレタン変性アクリル樹脂と(D)ポリカプロラクトン樹脂の混合比率(固形分換算)については、(成分(A)〜(C)より得られたアクリル変性ウレタン樹脂の質量)/((D)ポリカプロラクトン樹脂の固形分の質量)から求めた。
【0050】
(1)重量平均分子量
使用機器:東ソー株式会社製、HCL−8320、
カラム:東ソー株式会社製、TSK gel SuperMultipore HZ−H、
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)により測定した。
【0051】
(2)密着性試験
各種基材(アクリル板、ポリカーボネート板、ABS板)に実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂を塗布後、50℃で30分乾燥し、試験片を作製した。試験片を2mm幅のマス目にクロスカットし、マス目100個を作り、このマス目にセロテープ(登録商標)を貼付け、角度90度で急速に剥した時の塗膜の剥離の有無を目視で確認した。マス目100個について、剥離がゼロの場合を「○」、1個以上の場合を「×」とした。
【0052】
アクリル板に実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂を塗布後、50℃で30分乾燥し、プライマー層に使用するウレタン樹脂(HKP品)を塗布後、50℃で30分乾燥し、試験片を作製した。試験片を2mm幅のマス目にクロスカットし、マス目100個を作り、このマス目にセロテープ(登録商標)を貼付け、角度90度で急速に剥した時の塗膜の剥離の有無を目視で確認した。マス目100個について、剥離がゼロの場合を「○」、1個以上の場合を「×」とした。
【0053】
(3)耐湿熱性試験
アクリル板に実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂を塗布後、50℃で30分乾燥し、試験片を作製した。試験片を50℃、100%雰囲気下で放置し、外観の変化を確認した。
【0054】
白化・フクレなし「○」,白化・フクレあり「×」
(4)クラック性試験
易接着PETに実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂を塗布後、50℃で30分乾燥し、試験片を作製した。マンドレル5mmでフィルムを折り曲げ、クラックの有無を確認した。
【0055】
クラックなし「○」,クラックあり「×」
(5)熱転写性
離型PETに実施例及び比較例で得られたウレタン変性アクリル樹脂を塗布後、50℃で30分乾燥し、試験片を作製した。
【0056】
アクリル板に転写機で120℃×5m/minで熱転写する。
【0057】
転写可「○」,転写不可「×」
【表1】

【0058】

【表2】

【0059】
試験の結果、実施例1〜14のウレタン変性アクリル樹脂は密着性、耐湿熱性、クラック性、転写性のいずれも良好であった。
【0060】
これに対して、アクリル/ウレタン比率が40/60である比較例1は、ABS板との密着性試験で剥離、耐湿熱性試験で白化が確認された。アクリル/ウレタン比率が95/5である比較例2は、プライマー層との密着性試験で剥離、クラック性試験でクラック、及び転写性試験で転写不可が確認された。カプロラクトン樹脂を配合していない比較例3は、クラック性試験でクラックが確認された。ウレタン変性アクリル樹脂と(D)ポリカプロラクトン樹脂の混合比率(固形分換算)、((A)+(B)+(C))/(D)が75/25の比較例4は、プライマー層との密着性試験で剥離、耐湿熱試験で白化、及び転写性試験で転写不可が確認された。
【符号の説明】
【0061】
1:ベースフィルム
2:ハードコート層
3:意匠層
4:プライマー層
5:接着層
10:転写フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリルポリオールと、
(B)ポリカーボネートジオールと、
(C)有機ジイソシアネートとを、
ウレタン化反応させて得られるウレタン変性アクリル樹脂に
(D)ポリカプロラクトン樹脂
を混合して得られる接着剤であって、
前記ウレタン変性アクリル樹脂は、(A)アクリルポリオールに対する(B)ポリカーボネートジオール及び(C)有機ジイソシアネートの質量比(A)/((B)+(C))が、50/50〜90/10であり、さらに、前記ウレタン変性アクリル樹脂と前記(D)ポリカプロラクトン樹脂の混合比率(固形分換算)が99.5/0.5〜80/20である接着剤。
【請求項2】
(A)アクリルポリオールの水酸基価が5〜35mgKOH/gである請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
(A)アクリルポリオールの重量平均分子量が5000〜30000である請求項1又は2記載の接着剤。
【請求項4】
(A)アクリルポリオールの樹脂Tgが70〜120℃である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−184341(P2012−184341A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48811(P2011−48811)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】